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DESによる取得株式の取得価額は税務上も時価に
金融機関の金融支援への適用を明確化

平成15年3月31日に、「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」が国税庁ホ−ムペ−ジ上に公表されたが、その中で注目されているのが、DES(債務の株式化)の手法により取得した株式の取得価額の取扱いだ。DESによる取得株式の取得価額は、時価(取得の時における価額)となることが明らかにされた。公表された通達は、次のとおりである。


(債権の現物出資により取得した株式の取得価額)
2-3-14 子会社等に対して債権を有する法人が、合理的な再建計画等の定めるところにより、当該債権を現物出資(法第2条第12号の14《適格現物出資》に規定する適格現物出資を除く。)することにより株式を取得した場合には、その取得した株式の取得価額は、令第119条第1項第8号《有価証券の取得価額》の規定に基づき、当該取得の時における価額となることに留意する。
(注) 子会社等には、当該法人と資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者が含まれる。
(注) 子会社等には、当該法人と資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者が含まれる。


取得価額は時価に、債権額面との差額は損金に
 DESについては、会計面を中心に本誌No.009【3月3日号】4ペ−ジ以下で解説してきた。DESは、企業の債務を資本に振替えて、債務者企業を支援する手法として用いられている。DESの手法が用いられて再建計画等が定められた場合に債権者側の税務上の取扱いを明らかにしたのが、上記通達である。
 DESを金融支援として行う場合には、債権者は同時に債権放棄を行ったり、債権額よりも実質的に低い価額の株式の割当てを受けることが多い。DESによる取得株式の取得価額については、会計上、額面振替と時価振替の2通りの考え方があり、会計基準(「DESの実行時における債権者側の会計処理に関する実務上の取扱い」)では、時価振替とされている。
 上記通達により、税務上もDESにより取得した株式の取得価額については、時価となった。課税庁は、これまでDESに関する税務上の取扱いを明確にはしてこなかったが、合理性のある再建計画におけるDESには、金融機関の債権放棄部分について損金算入を認める姿勢を見せていた。すなわち、時価説を容認してきたのであり、今回公表された通達上の取扱いは、これまでの取扱いを確認したものである。

金融機関への適用を明確化
 とはいえ、この通達の取扱いは、時価の算定方法を明らかにしたものではない。時価が算定されてこそ、時価とする取扱いに意義があり、取得株式の時価と債権の帳簿価額との差額が、税務上の損金として認識される。会計上、取得した株式の時価は、市場価格がある場合には、「市場価格に基づく価額」、市場価格がない場合には、「合理的に算定された価額」であるとしている。ただ、再建計画では、市場価格がない優先株の割当てが行われる場合も多いことから、具体的な算定方法が明らかになっているとは言えない。会計上の時価算定では、債務者の再建計画等、個別の事情を斟酌して価額が算定される。税務上も同様のスタンスから判断されるが、課税上の弊害が認められる場合に、税務上否認する余地が生ずることになる。
 なお、この通達では、(注)書きで子会社等の範囲を「資本関係を有する者のほか、取引関係、人的関係、資金関係等において事業関連性を有する者」とし、幅広く認めていくことを明確にしている。法基通9-4-1(子会社等を整理する場合の損失負担等)などにも付されている「(注)」ではあるが、DESは、金融機関を中心として行われることが多いだけに、実質的な意義を明らかにしている部分である。

現物出資以外の場合でも、実質的にDESであれば時価で
 今回の通達は、債権の現物出資について取扱いを明らかにしているが、DESは、債権の現物出資のほかに、手続き上、第三者割当て増資と債権回収を区分して行われることがある。現預金を介在させたDES(債務者が第三者割当増資を行い、債権者がこれを引受け、払込んだ現金により債権を回収する手法、又は、債権回収→増資引受けの手法)と言われるものだ。
 課税庁は、本誌の取材に対して、「現預金を介在させたDESの場合でも、債権者の金銭出資と債権回収が一体とみられる場合には、上記通達の考え方が適用される。」と説明している。
 「有利発行以外の金銭の払込みにより取得をした有価証券については、払込価額が取得価額となる(法令119条1項2号)。」とされているが、債権者の金銭出資と債権回収が一体とみられる場合には、上記2号ではなく、今回の通達にある令119条1項8号(前各号に規定する方法以外の方法により取得をした有価証券)が適用され、「当該取得株式の帳簿価額は、取得時の時価となる。」ということだ。
 増資引受け時の仕訳を考えると、借方が有価証券の時価で、貸方が払込金額となり、債権の譲渡損(DES損失)を計上しないと、貸借が一致しない。増資の引受けと債権の回収とを一体の取引であるとして、借方に債権の譲渡損(DES損失)を計上し、貸借を一致させるのである。
 貸付金の帳簿価額を10,000、取得株式の時価を3,000とすると、次の仕訳になる。
有価証券 3,000   現 金 10,000
DES損失 7,000
現  金 10,000   貸付金 10,000
 
 会計基準では、現預金を介在させたDESについて、現物出資によるDESと同様の効果をもたらす場合には、金銭出資と債権の回収を一体として会計処理(上記の仕訳処理)を行うことにしており、税務上はこの処理を認めていくということになる。

 



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週刊「T&A master」015号(2003.4.14)「最重要ニュース」より転載)

(分類:税務 2003.6.16 ビジネスメールUP! 441号より )

 

 
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