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負担付贈与通達を斥け、相続税評価額は「著しく低い価額」に該当せず
路線価評価額での親族間売買への贈与税課税処分を取消し
東京地裁民事第2部(大門匡裁判長)は8月23日、親族(夫・父)から土地の持分を路線価を基準にして算定した価額(相続税評価額)で買った原告ら(妻・子)に、「著しく低い価額の対価」での譲渡を受けたものとして贈与税の課税処分が行われ、その取消しが求められた事案について、「本件各売買の代金額は、いずれも『著しく低い価額』の対価には当たらない。」などと判示し、請求どおりに課税処分を取り消す判決を言い渡した。
事案の概要
本件は、親族(夫・父)から土地の持分を買った原告ら(妻・子)が、処分行政庁から、当該購入代金額は相続税法7条の規定する「著しく低い価額の対価」であるから、時価との差額に相当する金額は贈与により取得したものとみなされるとして贈与税の決定または更正およびこれに伴い無申告加算税または過少申告加算税の賦課決定を受けたため、当該代金額はいずれも相続税評価額と同額であるから同条は適用されず、したがって各処分はいずれも違法であると主張してその取消しを求めている事案である。
本件の主要な争点は、相続税法7条の解釈(@同条にいう時価の意義、A同条にいう「著しく低い価額」の判定基準)および本件各売買の代金額が当該土地持分の時価より「著しく低い価額」の対価であるか、である。
なお、国税庁は、平成元年3月29日付個別通達「負担付贈与又は対価を伴う取引により取得した土地等及び家屋等にかかる評価並びに相続税法7条及び9条の適用について」(以下「負担付贈与通達」という)を発遣しており、当該通達は、「通常の取引価額」での評価および「著しく低い価額の判定方法」を明らかにしており、本件では、負担付贈与通達の適用関係について争われることになった。
課税の状況
A(夫・父)は、平成15年12月25日、原告X1(Aの妻)および原告X2(AとX1の間の子)に対し、本件土地の持分を売った。売買代金の算出根拠は、本件土地の1m2当たりの価額を@平成15年度路線価×A奥行価格補正率×B(1−借地権割合)の計算式によって算出し、これに面積および持分割合を掛けたものである。
Aは、本件各売買により1億1,611万円余の譲渡損が発生したとして、平成15年分所得税の確定申告書において、他の所得と損益通算している。
X2は、上記の土地持分譲渡(売買)とは別に、本件土地の持分贈与を平成15年8月14日に受けており、平成15年分贈与税の申告書を提出した。
処分行政庁は、平成16年7月2日、X1に対し、平成15年分贈与税の決定をするとともに、無申告加算税の賦課決定をした。
処分行政庁は、同日、X2の平成15年分贈与税の申告について、更正をするとともに、過少申告加算税の賦課決定をした。
相続税法7条の解釈について
大門裁判長は、「相続税法7条にいう時価の意義」について、「客観的交換価値のことを意味すると解すべきである。」としたうえで、「相続税法7条にいう『著しく低い価額』の対価とは、その対価に経済合理性のないことが明らかな場合をいうものと解され、その判定は、個々の財産の譲渡ごとに、当該財産の種類、性質、その取引価額の決まり方、その取引の実情等を勘案して、社会通念に従い、時価と当該譲渡の対価との開差が著しいか否かによって行うべきである。」と判示した。
市街地にある宅地については、相続税評価額が地価公示価格の80%を目途として定められているが、判決は、「80%という割合は社会通念上、基準となる数値と比べて一般に著しく低い割合とは見られていないといえるし、(中略)相続税評価額は、土地を取引するに当たり一つの指標となり得る金額であるというべきであり、これと同水準の価額を基準として土地の譲渡の対価を取り決めることに理由がないものということはできず、少なくとも、そのようにして定められた対価をもって経済合理性のないことが明らかな対価ということはできないというべきである。」と判示した。
本件土地持分売買の代金額は、相続税評価額であることを検証し、「本件各売買の代金額は、いずれも『著しく低い価額』の対価に当たらない。」としている。
通達の硬直的な適用を問題視
国は、「本件土地について取得価額を1億円余も下回る価額で売却したことの合理的な理由は見当たらない。」として、当時の売買の状況からも、Aが原告らに経済的利益を享受させる意思をもって本件各売買を行ったものであるというような主張を行った。
なるほど、Aが原告らに対して平成15年12月に土地持分の譲渡を行ったのは、平成16年度税制改正で土地建物等の譲渡損失が他の所得との損益通算ができなくなるとの改正が行われるため、他の所得との損益通算を実現するために駆け込み譲渡を行ったもののようである。
このような国の主張に対して判決は、「売主側の事情をもって、買主である原告らへの贈与税課税の根拠とすることも疑問である。」と判示して斥けている。
判決は負担付贈与通達の適用関係について、「『実質的に贈与を受けたと認められる金額があるかどうか』という判定基準は、相続税法7条の趣旨にそったものとは言い難いし、基準としても不明確であるといわざるを得ないほか、『著しく低い』という語からかけ離れた解釈を許すものとなっており、その意味で妥当なものということはできない。」と判示し、負担付贈与通達の内容に注文を加えているが、違法・不当とまでは判定せず、本件はまさに硬直的に適用することで違法な課税処分をもたらした事例であると位置付けている。
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(週刊「T&A master」225号(2007.9.3「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2007.10.17 ビジネスメールUP!
1044号より
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