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過去の粉飾の棚卸商品過大計上損はその後の事業年度の損金にできず
東京地裁、会計上の修正処理をしても当該事業年度の損失とはならず

 過去に棚卸商品を過大に計上する粉飾決算を行った会社(原告)が、その後の事業年度において、棚卸商品過大計上損として損金の額に算入できるかどうかが争われた事案で、東京地方裁判所民事第38部(杉原則彦裁判長)は9月10日、原告である会社の請求をすべて棄却する判決を言い渡した(平成21年(行ウ)第380号)。杉原裁判長は、「棚卸商品過大計上損は、過去の各事業年度において損金算入しなかったものであるから、当期の収益に係る売上原価に該当しない」と判断した。なお、本件は、東京高裁に控訴されている。

損失は過去の粉飾決算によるもの
  今回の事案は、過去に棚卸商品を過大に計上する粉飾決算を行っていた会社が、その後の事業年度の特別損失の項目に棚卸商品過大計上損の科目で当該粉飾決算に係る金額を損金の額に算入して法人税の確定申告を行ったが、処分行政庁から当該金額の損金算入はできないとする更正処分等とされたため、同処分等の取消しを求めたもの。
  行政処分庁は、法人税法22条3項1号の売上原価の額は、当該事業年度の期首商品棚卸高および当期仕入高の合計額から期末商品棚卸高を控除して算定されるが、本件損失は、過去の粉飾決算によるものであり、損金の額に算入できないとしていた。
  東京地裁では、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、当該事業年度の損金に算入すべき金額については、法人税法22条3項が規定しており、同項1号では、「当該事業年度の収益に係る売上原価」を損金に算入すべきものとしていると指摘。
  そのうえで、「本件損失は、過去の各事業年度の売上原価で当該事業年度において損金に算入しなかったものであるから、当該事業年度の収益に係る売上原価には該当しない」「会社が当該事業年度において、本件損失すべてを棚卸商品過大計上損として計上する財務会計上の修正の経理をしたとしても、当該事業年度においてこれに相当する損失が生じているわけではないから、法人税法22条3項3号にいう当該事業年度の損失には該当しない」と判断した。

法人税法22条3項

内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。 
一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額 
二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額 
三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

 

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週刊「T&A master」375号(2010.10.25「今週のニュース」より転載)

(分類:税務 2010.12.6 ビジネスメールUP! 1483号より )

 

 
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