平成29年度税制改正大綱

平成28年12月8日

公  明  党

目    

第一 平成29年度税制改正の基本的考え方 ----------------------  1

第二 平成29年度税制改正の具体的内容 ------------------------  17

 一 個人所得課税 --------------------------------------  17

 二 資産課税 -----------------------------------------  41

 三 法人課税 -----------------------------------------  61

 四 消費課税 -----------------------------------------  92

 五 国際課税 -----------------------------------------  111

 六 納税環境整備 --------------------------------------  121

 七 関税 --------------------------------------------  129

第三 検討事項 ------------------------------------------  131

【補論】今後の国際課税のあり方についての基本的考え方 ------------  134

 

第一 平成29年度税制改正の基本的考え方

 安倍内閣はこの4年間、デフレ脱却と経済再生を最重要課題として取り組んできた。有効求人倍率は25年ぶりの高水準、失業率は21年ぶりの低水準、賃金引上げ率は3年連続で今世紀最高水準(2%水準)となるなど、雇用・所得環境は大きく改善している。他方、個人消費や設備投資は力強さを欠く状況にあるほか、新興国経済に陰りが見え、英国国民投票におけるEU離脱の選択等、世界経済においては需要の低迷、成長の減速リスクが懸念される。
 個人消費や設備投資に力強さを欠いている背景には、人口減少、少子高齢化といった構造的な問題がある。これらの構造的な問題が、将来の経済の持続可能性等に対する国民の不安・悲観につながっている。このため、安倍内閣は、子育てや介護への不安をなくし、女性や若者の活躍を進めることにより、少子高齢化の流れに歯止めをかけ、誰もが生きがいを感じられる「一億総活躍社会」の実現にむけて取り組んでいる。目指すのは、全ての人が挑戦の機会を得て活躍できる全員参加型の社会である。
 「一億総活躍社会」を実現し、日本全体の成長力を底上げしていくためには、「働き方改革」と「イノベーション」が両輪となる。多様な働き方が可能となるよう、社会の発想や制度を大きく転換することが求められている。税制においては、経済社会の構造変化を踏まえた個人所得課税改革の第一弾として、就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点から、配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを行う。また、生産性を抜本的に向上させるために、税制においては、企業による「攻めの投資」を後押しするとともに、コーポレートガバナンスの強化を促すための取組みを進める。「イノベーション」による企業収益の拡大が雇用の増加や賃金上昇につながり、それが消費や投資のさらなる増加に結び付くという経済の「好循環」を強化する。税制としても、賃金の引上げを促すための取組みを進める。
 アベノミクスの恩恵を未だ十分に実感できていない人々にもアベノミクスの効果を波及させるため、地域中核企業向けの設備投資促進税制を創設する等、中堅・中小事業者を支援するとともに、地方拠点強化税制を拡充する等、地方創生を推進するための措置を講ずる。地方創生の推進に向けて、各地方公共団体が自らの発想で特色を持った地域づくりができるよう、地方分権を推進し、その基盤となる地方税の充実確保を図ることが重要である。その際、公共サービスの対価を広く公平に分かち合うという地方税の応益課税の原則を踏まえる必要がある。
 酒税については、類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えてきた。こうした状況を改め、酒類間の税負担の公平性を回復する等の観点から、ビール系飲料等の税率格差の解消など、酒税改革に取り組む。
 アベノミクスの推進による持続的な経済成長の実現には、海外成長市場の果実の日本国内の成長への取込みも重要である。この観点から、日本企業の健全な海外展開を支えつつ、国際的な租税回避には効果的に対応できるよう、国際課税に関する制度の見直しを進める。その際、「BEPS(注)プロジェクト」の合意事項を引き続き着実に実施するとともに、租税回避防止に向けた国際的な取組みを主導する。
(注)Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転
 また、わが国の経済社会の変化や国際的な取組みの進展状況等を踏まえつつ、担税力に応じた新たな課税について検討を進めていく。
 税制改正に当たっては、足下の経済情勢への適切な対応が重要である一方、中長期的課題にも責任をもって取り組まなければならない。税制は経済社会のあり方に密接に関連するものであり、今後とも、格差の固定化につながらないよう機会の平等や世代間・世代内の公平の実現、簡素な制度の構築といった考え方の下、検討を進める。「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針の下、経済再生と財政健全化を両立させることがわが国の最重要課題であり、2020年度の基礎的財政収支黒字化目標との整合性を念頭に置く必要がある。このため、消費税率10%への引上げを平成31年10月1日に確実に実施する。あわせて実施される低所得者への配慮のための軽減税率制度について、事業者の準備状況等を検証し、制度の円滑な導入・運用に万全を期す。

 以下、平成29年度税制改正の主要項目及び今後の税制改正に当たっての基本的考え方を述べる。 

1 経済社会の構造変化を踏まえた個人所得課税改革
 わが国の経済社会は近年において著しい構造変化を遂げている。個人所得課税についても、経済社会の構造変化を踏まえた改革を行っていく必要があるが、平成29年度税制改正においては、喫緊の課題への対応として、就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点から配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを行う。その上で、今後数年をかけて、基礎控除をはじめとする人的控除等の見直し等の諸課題に取り組んでいくこととする。
(1)配偶者控除・配偶者特別控除の見直し
 就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築するためには、税制、社会保障制度、企業の配偶者手当制度などの面で総合的な取組みを進める必要がある。
 税制面においては、このような仕組みとして、配偶者控除を廃止するという考え方や配偶者控除を廃止した上で夫婦世帯を対象に新たな控除を認めるといった考え方がある。しかし、わが国の個人所得課税においては、一定の収入以下の扶養親族を有する場合に、それぞれの事情に応じて納税者の担税力の減殺を調整することとしており、配偶者控除もその調整の仕組みの一つである。また、諸外国においても配偶者の存在を考慮した仕組みが設けられている。こうした点を勘案すれば、配偶者控除を廃止して、配偶者に係る配慮を何ら行わないことには問題がある。また、夫婦世帯を対象に新たな控除を認めるとの考え方もあるが、全ての夫婦世帯を対象とすれば、高所得者の夫婦世帯にまで配慮を行うこととなり、非常に多額の財源を必要とすることから、控除の適用に当たって夫婦世帯の所得に上限を設けることが必要となる。しかし、わが国においては個人単位課税を採用しており、世帯単位で所得を把握することが難しいとの問題がある。また、夫婦世帯を対象に新たな控除を設けることについて、国民の理解が深まっているとは言えない。こうした問題を踏まえると、これらの考え方を具体的な制度改正の案として直ちに採用することは難しい。
 他方で、配偶者が就業時間を調整することによって、納税者本人に配偶者控除が適用される103万円以内にパート収入を抑える傾向があると指摘されている(いわゆる「103万円の壁」)。これについては、配偶者特別控除の導入によって、配偶者の給与収入が103万円を超えても世帯の手取り収入が逆転しない仕組みとなっており、税制上、いわゆる「103万円の壁」は解消している。それにもかかわらず収入を抑える傾向が生じる要因として、「103万円」という水準が企業の配偶者手当制度等の支給基準に援用されていることや、いわゆる「103万円の壁」が心理的な壁として作用していることが指摘されている。生産年齢人口が減少を続け人手不足と感じている企業が多い中、パート収入を一定の範囲内に抑えるために就業時間を抑える傾向は、最低賃金が引き上げられていくにつれ、更に強まるのではないかということが懸念される。
 このような就業調整をめぐる喫緊の課題に対応するため、所得税・個人住民税における現行の配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを行う。具体的には、所得税の場合、配偶者特別控除について、所得控除額38万円の対象となる配偶者の合計所得金額の上限を85万円(給与所得のみの場合、給与収入150万円)に引き上げるとともに、現行制度と同様に、世帯の手取り収入が逆転しないような仕組みを設ける。この給与収入150万円という水準は、安倍内閣が目指している最低賃金の全国加重平均額である1,000円の時給で1日6時間、週5日勤務した場合の年収(144万円)を上回るものである。
 こうした見直しは、働きたい人が就業調整を行うことを意識しないで働くことのできる環境づくりに寄与するものであり、また、人手不足の解消を通じて日本経済の成長にも資することが期待される。
 同時に、配偶者控除・配偶者特別控除について、担税力の調整の必要性の観点から、これらの控除が適用される納税者本人の合計所得金額に所得制限を設けることとし、国・地方を通じた税収中立を確保する。こうした所得制限は、後述する所得再分配機能の回復に資するものであるが、その際、所得に応じた税負担の差をなだらかにする観点から、所得控除額を所得に応じて逓減・消失させていく仕組みとする。今回の配偶者控除・配偶者特別控除の見直しによる個人住民税の減収額については、全額国費で補塡する。
 就業調整を意識しなくて済む仕組みの構築は、税制だけで達成できるものではなく、社会保障制度などの関連する制度・政策における取組みが重要である。本年10月より被用者保険の適用拡大が実施されているが、短時間労働者の就業調整を防ぐなどの観点から今後も更なる適用拡大に向けた検討を着実に進めていくこととしており、今後とも就業調整につながる要因を取り除いていくことが重要である。
 また、配偶者が一定の収入以下であることを要件とする企業の配偶者手当制度等も就業調整の大きな要因の一つである。配偶者手当制度等を有している企業に対しては、今般の配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを踏まえ、労使の真摯な話し合いの下、就業調整問題を解消する観点からの見直しを行うことを強く要請する。
(2)今後の個人所得課税改革の方向性
 上記の配偶者控除・配偶者特別控除の見直しは、個人所得課税改革の第一弾であり、今後も改革を継続していく。
 経済社会の著しい構造変化の中で、近年、結婚や出産をする経済的余裕がない若者が増加しており、こうした若い世代や子育て世帯に光を当てていくことが重要である。そのため、税制、社会保障制度、労働政策等の面で総合的な取組みを進める必要があるが、個人所得課税においては、所得再分配機能の回復を図ることが重要であり、各種控除等の総合的な見直しを丁寧に検討していく必要がある。
 基礎控除をはじめとする人的控除等については、現在、「所得控除方式」を採用しているが、高所得者ほど税負担の軽減効果が大きいことから、主要諸外国における負担調整の仕組みも参考にしつつ、来年度の税制改正において控除方式のあり方について検討を進める。具体的には、収入にかかわらず税負担の軽減額が一定となる「ゼロ税率方式」や「税額控除方式」の導入のほか、現行の「所得控除方式」を維持しつつ高所得者について税負担の軽減額が逓減・消失する仕組みの導入が考えられる。
 雇用の流動化や、労働者に近い形態で働く自営業主の割合の増加など、働き方が様々な面で多様化している。現在の個人所得課税は、所得の種類に応じた負担調整の仕組みを採用しているが、人的な事情に配慮を行いつつ、ライフスタイルに合わせて多様な働き方を自由に選択できるようにすることが重要である。こうした観点から、給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と基礎控除などの「人的控除」のあり方を全体として見直すことを検討していく。
 老後の生活など各種のリスクに備える自助努力を支援するための企業年金、個人年金、貯蓄・投資、保険等に関連する諸制度のあり方について、社会保障制度を補完する観点や働き方の違い等によって有利・不利が生じないようにするなど公平な制度を構築する観点から幅広い検討を行う。
 個人住民税については、地方公共団体が提供する行政サービスの財源確保の面で最も重要な税であるとともに、応益課税の観点から広く住民が負担を分かち合う仕組みとなっていることも踏まえ、制度のあり方を検討していく。その際、個人住民税は、比例税率となっているため、控除方式の選択による税負担調整の効果に制約があることに留意する必要がある。
 これらの改革に当たっては、個人所得課税の税制全体における位置づけや負担構造のあるべき姿について検討する必要があり、丁寧に進めていくこととする。

2 デフレ脱却・経済再生に向けた税制措置
 600兆円経済を実現するため、企業の「攻めの投資」や賃上げの促進など経済の好循環を促す取組みを進める。具体的には、税制としても、「イノベーション」や中堅・中小事業者による設備投資、コーポレートガバナンスの強化を促すための取組みを進めるとともに、賃金の引上げを促していく。昨年度までの法人税改革に引き続き講じたこうした措置を受けて、企業経営者がマインドを変え、賃上げや手元資金を活用した投資拡大などに積極的に取り組むことを期待する。
(1)競争力強化のための研究開発税制の見直し
 600兆円経済を実現するためには、イノベーションを促すことにより、付加価値の高い財・サービスを生み出していくことが重要である。このため、研究開発投資を増加させるインセンティブを強化する観点から、2020年までに官民合わせた研究開発投資を対GDP比4%以上とする政府目標も踏まえ、研究開発税制の見直しを行う。具体的には、総額型の控除率を試験研究費の増減に応じたものとする。また、IoT、ビッグデータ、人工知能等を活用した「第4次産業革命」による新たなビジネス開発を後押しする観点から、研究開発税制の対象に、「第4次産業革命型」のサービス開発のための試験研究に係る一定の費用を新たに追加する。
 「第4次産業革命」が進展する中、オープンイノベーションがますます重要となっている。平成27年度税制改正により拡充したオープンイノベーション型の研究開発に対する措置や私立大学における受託研究の非課税措置について、使い勝手を向上すべく、共同研究等の実態を踏まえ、対象費用の追加・変更の柔軟化や手続きの簡素化など、要件の緩和を図る。
(2)賃上げを促すための所得拡大促進税制の見直し
 企業収益の拡大が雇用の増加や賃金上昇につながり、それが消費や投資の増加に結び付くという経済の「好循環」を強化する必要がある。このため、所得拡大促進税制について、企業に更なる賃上げインセンティブを与える機能を強化する観点から、高い賃上げを行う企業への支援を強化する。
(3)コーポレートガバナンス改革・事業再編の環境整備
 わが国経済の好循環を確かなものとするためには、コーポレートガバナンスを強化することにより、中長期的な企業価値の向上に資する投資など、「攻めの経営」を促進することが重要である。こうした観点を踏まえ、企業と投資家の対話の充実を図るため、上場企業等が株主総会の開催日を柔軟に設定できるよう、法人税等の申告期限の延長可能月数を拡大する。また、経営陣に中長期の企業価値創造を引き出すためのインセンティブを付与することができるよう、業績に連動した報酬等の柔軟な活用を可能とする。併せて、経営戦略に基づく先を見据えたスピード感のある事業再編等を加速するため、特定事業を切り出して独立会社とするスピンオフ等の円滑な実施を可能とする税制の整備を行う。
(4)その他考慮すべき課題
① 租税特別措置については、特定の政策目的を実現するために有効な政策手法となりうる一方で、税負担の歪みを生じさせる面があることから、真に必要なものに限定していくことが重要である。このため、毎年度、期限が到来するものを中心に、各措置の利用状況等を踏まえつつ、必要性や政策効果をよく見極めた上で、廃止を含めてゼロベースで見直しを行う。また、租税特別措置の創設・拡充を行う場合は、財源の確保や、全体の項目数をいたずらに増加させないことに配意する。
② 公益法人等課税については、非収益事業について民間競合が生じているのではないかとの指摘がある一方で、関連制度の見直しが行われており、その効果をよく注視する。あわせて、収益事業への課税において、軽減税率とみなし寄附金制度がともに適用されることが過剰な支援となっていないかといった点について実態を丁寧に検証しつつ、課税のあり方について引き続き検討を行う。
③ 住宅市場に係る対策については、住宅投資の波及効果に鑑み、数次にわたる経済対策を含むこれまでの措置の実施状況や今後の住宅市場の動向等を踏まえ、必要な対応を検討する。
④ 現行のNISAが積立型の投資に利用しにくいことを踏まえ、家計の安定的な資産形成を支援する観点から、少額からの積立・分散投資を促進するための積立NISAを新たに創設する。創設に当たっては、投資初心者でも理解できるよう、複数の銘柄の有価証券等に対して分散投資を行うなどの要件を満たし、特定の銘柄等によるリスクの集中の回避が図られた投資信託に商品を限定するとともに、実践的な投資教育をあわせて推進することが重要である。また、非課税投資の期間が長期にわたることも踏まえ、制度の適正な利用について定期的な点検ができる体制の構築を前提とする。
 また、前述の個人所得課税改革において、老後の生活など各種のリスクに備える自助努力を支援する公平な制度の構築に向けた検討を行う中で、NISA全体に係る整理を行う。こうした方針に沿って、制度の簡素化や税制によって政策的に支援すべき対象の明確化の観点から、複数の制度が並立するNISAの仕組みについて、少額からの積立・分散投資に適した制度への一本化を検討する。
⑤ 金融所得に対する課税のあり方について、税負担の垂直的な公平性等を確保する観点から、諸外国の制度や市場への影響も踏まえつつ、必要な検討を行う。

3 中堅・中小事業者の支援、地方創生の推進
(1)中堅・中小事業者の支援
① 地域中核企業向け設備投資促進税制の創設
 未だアベノミクスの恩恵を十分に実感できていない地域の隅々までアベノミクスの効果を波及させ、地域経済に好循環をもたらすため、「ローカルアベノミクス」に取り組む必要がある。こうした観点から、地域経済を牽引する中核企業等が、地域経済に波及効果のある新たな事業に挑戦するために行う設備投資を対象に、特別償却又は税額控除ができる制度を創設する。
② 中小企業向け設備投資促進税制の拡充
 あらゆる政策を総動員してアベノミクスを一層加速する中で、中小事業者の「攻めの投資」を後押しするとともに、わが国のGDPの約7割を占めるサービス産業の生産性の向上を図るため、サービス産業も含めた中小企業が行う生産性の向上につながる設備投資への支援を拡充する。具体的には、中小企業投資促進税制のうち、生産性の高い先進的な設備や生産ライン等の改善に資する設備への投資を対象に、即時償却又は税額控除ができる上乗せ措置について、中小企業等経営強化法の認定計画に基づく制度に改組した上で、これまで対象外であった器具備品及び建物附属設備を対象設備に追加する。
③ 地域の中小企業による設備投資の支援
 地域の中小企業による設備投資の促進に向け平成28年度税制改正において3年間の時限措置として機械・装置を対象に創設した償却資産に係る固定資産税の特例措置についてはその期限の到来をもって終了するものとし、GDPの約7割を占めるサービス産業の賃金改善と生産性向上に向けて、残余の2年間に限り、市町村財政への影響を最小限にするよう地域・業種を限定した上で、その対象に一定の工具、器具・備品等を追加する。
 なお、固定資産税が市町村財政を支える安定した基幹税であることに鑑み、償却資産に対する固定資産税の制度は堅持する。
④ 中小企業の賃上げを促すための税制上の措置
 中小企業にも賃上げの動きの広がりが見られるものの、依然大企業とは差がある状況である。こうした状況を踏まえ、中小企業による更なる賃上げを後押しし、経済の「好循環」を強化する観点から、所得拡大促進税制について、高い賃上げを行う中小企業に対して、大企業を上回る支援の強化を行う。
⑤ 事業承継税制の見直し
 非上場株式等に係る相続税等の納税猶予制度、いわゆる事業承継税制については、平成25年度税制改正において雇用確保要件の見直し等を行った結果、平成27年の認定件数は改正前に比べ約3倍の水準となっている。他方、中小企業経営者の高齢化が進行していること等を踏まえれば、早期かつ計画的な事業承継の更なる促進が重要であり、今般、制度を更に使いやすくするための見直しを行う。
 具体的には、災害による被害を受けた場合や主要取引先の倒産等により売上が減少した場合には、雇用確保要件等を緩和する。また、相続時精算課税制度との併用を認め、生前贈与を行いやすくする。こうした見直しを行った上で、制度の一層の普及・啓発に努め、活用を促していく。
 また、取引相場のない株式について、相続税法の時価主義の下、より実態に即した評価の見直しを行う。
(2)地方創生の推進
① 地方拠点強化税制の拡充
 東京一極集中の是正等を図るとともに、地方における質の高い雇用を促進するため、地方拠点強化税制について、無期かつフルタイムの新規雇用に対する税額控除額を上乗せする等の拡充を行う。
② 到着時免税店の導入
 旅客の利便性の向上等の観点から、全国各地の空港等の到着エリアにおける免税店(いわゆる到着時免税店)の導入を可能とし、到着時免税店において購入した物品を現行の携帯品免税制度の対象に追加する。
(3)酒税改革
 類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えている状況を改め、酒類間の税負担の公平性を回復する等の観点から、ビール系飲料や「醸造酒類」の税率格差の解消、「ビール」の定義拡大など、酒税改革に取り組む。この改革は、厳しい財政状況や財政物資としての酒類の位置付け等を踏まえ、税収中立で行う。税率の見直しに当たっては、消費者や酒類製造者への影響に配慮して、十分な経過期間を確保しつつ段階的に進めることとし、さらに、見直しの都度、経済状況を踏まえ、酒税の負担の変動が家計に与える影響等を勘案した上で実施する。
 今回の酒税改革により、酒類製造者が消費者にとって真に魅力ある商品の開発に経営資源をシフトすることや、地域の特色を活かした魅力ある商品の開発が進み、地方創生の牽引役となることが期待される。さらに、国際的にも評価される商品の開発が進み、日本産酒類のブランド価値の向上や、日本の酒類産業の国際競争力の強化にもつながる。
① 税率構造の見直し
イ ビール系飲料(「ビール」、「発泡酒」、「新ジャンル」)の税率について、平成38年10月1日に、1㎘当たり155,000円(350㎖換算54.25円)に一本化する。
 これにより、「ビール」の税率(現行1㎘当たり220,000円(350㎖換算77円))は価格比で見て戦後最低水準まで引き下がり、国際的にも遜色の無い水準となる。他方、特に「新ジャンル」の税率(現行1㎘当たり80,000円(350㎖換算28円))が引き上がる中で、消費者の負担が急激に変動することとならないよう、税率見直しは三段階に分けて行い、第一段階は平成32年10月1日に、第二段階は平成35年10月1日に実施する。
ロ ビール系飲料以外の「その他の発泡性酒類」(いわゆるチューハイ等)の税率(現行1㎘当たり80,000円(350㎖換算28円))については、「果実酒」など他の酒類の税率とのバランスや、アルコール健康障害対策基本法の下での不適切飲酒の誘因防止の取組も踏まえ、1㎘当たり100,000円(350㎖換算35円)に引き上げることとし、酒税の税率構造の見直しが完成する平成38年10月1日に実施する。なお、これにあわせて、低アルコール分の「蒸留酒類」及び「リキュール」に係る特例税率等についても、所要の見直しを行う。
ハ 「醸造酒類」については、税負担の公平性の観点から、「清酒」(現行1㎘当たり120,000円)と「果実酒」(現行1㎘当たり80,000円)との間の税率格差を解消することとし、平成35年10月1日に、税率を1㎘当たり100,000円に一本化する。税率見直しは二段階に分けて行い、第一段階は平成32年10月1日に実施する。なお、「果実酒」の税率引上げに当たっては、小規模な果実酒製造者に対する措置を検討する。
ニ 税率の段階的な見直しについては、その都度、経済状況を踏まえ、酒税の負担の変動が家計に与える影響等を勘案して検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
② 酒類の定義の見直し
 現行の「ビール」の定義は、麦芽比率は67%以上とされ、麦芽、ホップ及び水以外に使用できる副原料は、麦、米、とうもろこし等に限定されている。多様な副原料を用いた商品や麦芽比率が若干低い商品は、「ビール」と同じ税率が適用されるものの、分類上は「発泡酒」となり、「発泡酒」と表示して販売することが求められる。今回の改革においては、外国産ビールの実態や、地域の特産品を用いた地ビールの開発を後押しする観点を踏まえ、平成30年4月1日に、麦芽比率50%以上の商品や、副原料として果実(果肉・果皮)や一定の香味料を少量用いている商品を「ビール」の定義に追加する。なお、その際、「ビール」及び「果実酒」の製法の緩和も行う。
また、現行の「発泡酒」の定義は、麦芽又は麦を原料の一部とする商品とされている。今回の改革においては、性質が共通する商品間の税負担の公平性を回復するため、「新ジャンル」、さらには将来的に開発されうる類似商品も「発泡酒」の定義に取り込めるよう、新たに、ホップを原料の一部とする商品や、色度や苦味価(くみか(苦味の程度))が一定以上の商品を「発泡酒」の定義に追加することとし、ビール系飲料の第二段階の税率見直しとあわせて、平成35年10月1日より実施する。
③ 訪日外国人旅行者等向けに製造場で販売した酒類に係る免税制度の創設
 地方創生の推進や日本産酒類のブランド価値向上等の観点から、「酒蔵ツーリズム」の魅力を高めていくため、酒類製造者が輸出酒類販売場(仮称)の許可を受けた製造場において外国人旅行者等向けに販売した酒類について、酒税を免税とする制度を導入する。
④ 構造改革特区における酒類の製造免許に係る最低製造数量基準の緩和
 地域の特色を活かした酒類の製造を後押ししていく観点から、構造改革特区の枠組みを活用して、「単式蒸留焼酎」の製造過程で副次的に製成される少量の初垂れ(はなたれ(酒税法上の「原料用アルコール」))を特区内で提供する場合や、地域の特産品を原料として「単式蒸留焼酎」を少量製造しようとする場合に、各酒類の製造免許に係る最低製造数量基準を適用しないこととする。

4 経済活動の国際化・ICT化への対応と租税回避の効果的な抑制
(1)国際課税に関する制度の見直し
 国際課税については、本大綱の「補論」として盛り込んだ「今後の国際課税のあり方についての基本的考え方」を踏まえ、日本企業の健全な海外展開を支え、その果実の国内経済への還流を促すとともに、租税回避に対してはこれまで以上に効果的に対応していく。個別の制度改正に当たっては、①「BEPSプロジェクト」の合意事項の着実な実施を通じた国際協調の推進、②「経済活動や価値創造の場と税が支払われるべき場所を一致させる」との「BEPSプロジェクト」の基本的考え方を踏まえた、健全な海外展開を歪める誘引の除去、③税に関する透明性の向上に向けた国際的な協調、という3つの基本方針の下で臨む。
 平成29年度税制改正においては、外国子会社を通じた租税回避を抑制することを目的とする「外国子会社合算税制」を総合的に見直す。具体的には、「外国子会社の経済実態に即して課税すべき」との「BEPSプロジェクト」の基本的考え方を踏まえ、経済実体がない、いわゆる受動的所得は合算対象とする一方で、実体ある事業からの所得であれば、子会社の税負担率にかかわらず合算対象外とする。その際、例えば、金融機関が本業から得る金融所得は合算対象から除く等、企業のビジネス実態を十分に踏まえて合算対象を決定するとともに、企業にとっての予見可能性にも留意する。また、租税回避に関わっていない企業の子会社に事務負担が発生しないよう、所要の措置を講ずる。
(2)国外財産に対する相続税等の納税義務の範囲の見直し
 経済のグローバル化に伴い、日本で就労する外国人が増加していることへの対応として、一時的に日本に住所を有する外国人同士の相続等については、国外財産を相続税等の課税対象としないこととする。このことは、高度外国人材等の受入れの促進にもつながる。
 他方、租税回避を抑制するため、相続人等又は被相続人等が10年以内に国内に住所を有する日本人である場合は、国内財産及び国外財産を相続税等の課税対象とする等の見直しを行う。
(3)仮想通貨の消費税非課税化
 資金決済に関する法律の改正により仮想通貨が支払の手段として位置づけられることや、諸外国における課税関係等を踏まえ、仮想通貨の取引について、消費税を非課税とする。

5 車体課税の見直し
 一部の自動車メーカーが燃費性能を偽った今回の不正は、エコカー減税制度の根幹を揺るがす問題である。燃費不正対策を強化するため、道路運送車両法を改正するとともに、税制においても、燃費不正が生じた場合の納税義務者の特例等の措置を講ずる。
 自動車取得税及び自動車重量税に係るエコカー減税については、燃費性能がより優れた自動車の普及を促進する観点から、対象範囲を平成32年度燃費基準の下で見直し、政策インセンティブ機能を強化した上で2年間延長する。その実施に当たっては、段階的に基準を引き上げることとする。なお、自動車重量税については、ガソリン車への配慮等の観点から、時限的・特例的な措置を講ずる。
 エコカー減税は、燃費水準の向上により、見直しを行わないと、政策インセンティブ機能が低下し、税収も減少していくという性質を有する。他方、道路等の維持管理・更新や防災・減災等の推進に、国・地方において多額の財源が必要となることが見込まれる。今後、適用期限の到来にあわせ、見直しを行うに当たっては、政策インセンティブ機能の強化、実質的な税収中立の確保、原因者負担・受益者負担としての性格、応益課税の原則、市場への配慮等の観点を踏まえることとする。また、次のエコカー減税等の適用期限到来に向けて、クリーンディーゼル車について、普及の状況や政策的支援の必要性等を総合的に勘案して、エコカー減税制度等における扱いを引き続き検討し、結論を得る。
 平成28年度末で期限切れを迎える自動車税及び軽自動車税のグリーン化特例(軽課)については、重点化を行った上で2年間延長する。また、環境性能割導入以後のグリーン化特例(軽課)については、平成26年度及び平成28年度与党税制改正大綱に沿って必要な検討を行い、平成31年度税制改正において具体的な結論を得る。
 なお、消費税率10%への引上げの前後における駆け込み需要及び反動減対策に万全を期す必要があり、自動車をめぐるグローバルな環境、自動車に係る行政サービス等を踏まえ、簡素化、自動車ユーザーの負担の軽減、グリーン化、登録車と軽自動車との課税のバランスを図る観点から、平成31年度税制改正までに、安定的な財源を確保し、地方財政に影響を与えないよう配慮しつつ、自動車の保有に係る税負担の軽減に関し総合的な検討を行い、必要な措置を講ずる。
 
6 森林吸収源対策
 2020年度及び2020年以降の温室効果ガス削減目標の達成に向けて、森林吸収源対策及び地方の地球温暖化対策に関する安定的な財源の確保について、以下の措置を講ずる。
(1)エネルギー起源CO2の排出抑制のための木質バイオマスのエネルギー利用や木材のマテリアル利用を普及していくことは、森林吸収源対策の推進にも寄与することから、地球温暖化対策のための税について、その本格的な普及に向けたモデル事業や技術開発、調査への活用の充実を図るため、経済産業省、環境省、林野庁の3省庁は、引き続き連携して取り組む。
(2)森林整備や木材利用を推進することは、地球温暖化防止のみならず、国土の保全や地方創生、快適な生活環境の創出などにつながり、その効果は広く国民一人一人が恩恵を受けるものである。しかしながら、森林現場には、森林所有者の特定困難や境界の不明、担い手の不足といった、林業・山村の疲弊により長年にわたり積み重ねられてきた根本的な課題がある。その対策に当たっては、森林現場に近く所有者に最も身近な存在である市町村の果たす役割が重要となる。
 このため、市町村による林地台帳の整備を着実に進めるとともに、公益的機能の発揮が求められながらも、自然的・社会的条件が不利であることにより所有者等による自発的な間伐等が見込めない森林の整備等に関する市町村の役割を明確にしつつ、地方公共団体の意見も踏まえながら、必要な森林関連法令の見直しを行うこととし、以下のような施策の具体化を進める。
① 市町村から所有者に対する間伐への取組要請などの働きかけの強化 
② 所有者の権利行使の制限等の一定の要件の下で、所有者負担を軽減した形で市町村自らが間伐等を実施
③ 要間伐森林制度を拡充し、所有者が不明の場合等においても市町村が間伐を代行
④ 寄附の受入れによる公的な管理の強化
⑤ 地域における民間の林業技術者の活用等による市町村の体制支援
 このような施策を講じることにより市町村が主体となって実施する森林整備等に必要な財源に充てるため、個人住民税均等割の枠組みの活用を含め都市・地方を通じて国民に等しく負担を求めることを基本とする森林環境税(仮称)の創設に向けて、地方公共団体の意見も踏まえながら、具体的な仕組み等について総合的に検討し、平成30年度税制改正において結論を得る。
 
7 災害に関する税制上の措置
 災害が発生した際の被災者や事業者への対応については、国税通則法、災害減免法や各税法において、申告、納付期限の延長や、税の減免などが措置されている。また、地方税については、地方公共団体による条例減免も行われてきた。その上で、阪神・淡路大震災及び東日本大震災の際には、特別立法等により、追加的な税制上の対応を行ってきた。
 このように、きめ細やかに対応するとの考え方の下、被害の状況や規模などを踏まえ、これまで災害ごとに税制上の対応を検討してきたところである。しかしながら、近年災害が頻発していることを踏まえ、被災者や被災事業者の不安を早期に解消するとともに、復旧や復興の動きに遅れることなく税制上の対応を手当てする観点から、災害への税制上の対応の規定を常設化する。
 
8 円滑・適正な納税のための環境整備
 国税犯則調査手続について、経済活動のICT化の進展等を踏まえ、電磁的記録の証拠収集手続を整備するとともに、関税法に定める犯則調査手続等を踏まえて調査手続等を整備し、あわせて規定を現代語化した上で国税通則法へ編入する等、所要の見直しを行う。地方税犯則調査手続についても、国税犯則調査手続の見直しを踏まえた規定の整備を行う。
 地方税における電子納税の推進のため、地方公共団体が共同で収納を行う方策について、地方公共団体の意向に十分配慮しつつ、検討を行う。
 また、税制を円滑かつ公平に執行するため、必要な定員の確保等の税務執行体制の一層の充実を図る。
 
9 その他
 平成28年度税制改正大綱において「平成29年度税制改正において結論を得る」こととしていた介護保険料等に係る社会保険料控除の見直しについては、世帯主が世帯員の分もまとめて納付することが一般的な国民年金保険料の納付等に影響が及ぶ可能性があることを踏まえ、介護保険制度の見直しにより対応が図られる見込みであることに鑑み、税制改正は行わないこととする。

 
第二 平成29年度税制改正の具体的内容

一 個人所得課税

1 配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し
(国 税)
(1)配偶者控除
 控除対象配偶者又は老人控除対象配偶者を有する居住者について適用する配偶者控除の額を次のとおりとする。なお、合計所得金額が1,000万円を超える居住者については、配偶者控除の適用はできないこととする。

居住者の合計所得金額 控 除 額
控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
900万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 26万円 32万円
950万円超1,000万円以下 13万円 16万円

(2)配偶者特別控除
 配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額を38万円超123万円以下(現行:38万円超76万円未満)とし、その控除額を次のとおりとする。なお、現行制度と同様に、合計所得金額が1,000万円を超える居住者については、配偶者特別控除の適用はできないこととする。
① 合計所得金額900万円以下の居住者

配偶者の合計所得金額 控除額   配偶者の合計所得金額 控除額
38万円超85万円以下 38万円 105万円超110万円以下 16万円
85万円超90万円以下 36万円 110万円超115万円以下 11万円
90万円超95万円以下 31万円 115万円超120万円以下 6万円
95万円超100万円以下 26万円 120万円超123万円以下 3万円
100万円超105万円以下 21万円  

② 合計所得金額900万円超950万円以下の居住者

配偶者の合計所得金額 控除額   配偶者の合計所得金額 控除額
38万円超85万円以下 26万円 105万円超110万円以下 11万円
85万円超90万円以下 24万円 110万円超115万円以下 8万円
90万円超95万円以下 21万円 115万円超120万円以下 4万円
95万円超100万円以下 18万円 120万円超123万円以下 2万円
100万円超105万円以下 14万円  


③ 合計所得金額950万円超1,000万円以下の居住者

配偶者の合計所得金額 控除額   配偶者の合計所得金額 控除額
38万円超85万円以下 13万円 105万円超110万円以下 6万円
85万円超90万円以下 12万円 110万円超115万円以下 4万円
90万円超95万円以下 11万円 115万円超120万円以下 2万円
95万円超100万円以下 9万円 120万円超123万円以下 1万円
100万円超105万円以下 7万円  

(3)給与所得者の扶養控除等申告書等の整備
 上記(1)及び(2)の見直しに伴い、給与所得者の扶養控除等申告書、給与所得者の配偶者特別控除申告書及び公的年金等の受給者の扶養親族等申告書についてその記載事項の見直しを行う等の所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成30年分以後の所得税について適用する。
(地方税)
(1)配偶者控除
 控除対象配偶者又は老人控除対象配偶者を有する所得割の納税義務者について適用する配偶者控除の額を次のとおりとする。なお、合計所得金額が1,000万円を超える所得割の納税義務者については、配偶者控除の適用はできないこととする。

所得割の納税義務者の
合計所得金額
控 除 額
控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
900万円以下 33万円 38万円
900万円超950万円以下 22万円 26万円
950万円超1,000万円以下 11万円 13万円

(2)配偶者特別控除
 配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額を38万円超123万円以下(現行:38万円超76万円未満)とし、その控除額を次のとおりとする。なお、現行制度と同様に、合計所得金額が1,000万円を超える所得割の納税義務者については、配偶者特別控除の適用はできないこととする。
① 合計所得金額900万円以下の所得割の納税義務者

配偶者の合計所得金額 控除額   配偶者の合計所得金額 控除額
38万円超90万円以下 33万円 105万円超110万円以下 16万円
90万円超95万円以下 31万円 110万円超115万円以下 11万円
95万円超100万円以下 26万円 115万円超120万円以下 6万円
100万円超105万円以下 21万円 120万円超123万円以下 3万円

② 合計所得金額900万円超950万円以下の所得割の納税義務者

配偶者の合計所得金額 控除額   配偶者の合計所得金額 控除額
38万円超90万円以下 22万円 105万円超110万円以下 11万円
90万円超95万円以下 21万円 110万円超115万円以下 8万円
95万円超100万円以下 18万円 115万円超120万円以下 4万円
100万円超105万円以下 14万円 120万円超123万円以下 2万円

③ 合計所得金額950万円超1,000万円以下の所得割の納税義務者

配偶者の合計所得金額 控除額   配偶者の合計所得金額 控除額
38万円超95万円以下 11万円 110万円超115万円以下 4万円
95万円超100万円以下 9万円 115万円超120万円以下 2万円
100万円超105万円以下 7万円 120万円超123万円以下 1万円
105万円超110万円以下 6万円  

(3)その他
① 今回の配偶者控除・配偶者特別控除の見直しによる平成31年度以降の個人住民税の減収額については、全額国費で補塡する。
② 上記(1)及び(2)の見直しに伴い、調整控除の適用要件の見直しを行う等の所要の措置を講ずる。
(注)上記(1)、(2)及び(3)②の改正は、平成31年度分以後の個人住民税について適用する。
2 金融・証券税制
(国税・地方税)
〔延長・拡充〕
(1)非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(NISA)について、次の措置を講ずる。
① 非課税累積投資契約に係る非課税措置を次のように創設し、現行の非課税上場株式等管理契約に係る非課税措置と選択して適用できることとする。
イ 居住者等が、金融商品取引業者等の営業所に開設した非課税口座に累積投資勘定を設けた日から同日の属する年の1月1日以後20年を経過する日までの間に支払を受けるべき累積投資勘定に係る株式投資信託(その受益権が金融商品取引所に上場等がされているもの又はその設定に係る受益権の募集が一定の公募により行われたものに限る。以下「公募等株式投資信託」という。)の配当等(当該金融商品取引業者等がその配当等の支払事務の取扱いをするものに限る。)については、所得税及び個人住民税を課さない。
ロ 居住者等が、金融商品取引業者等の営業所に開設した非課税口座に累積投資勘定を設けた日から同日の属する年の1月1日以後20年を経過する日までの間にその累積投資勘定に係る公募等株式投資信託の受益権の譲渡をした場合には、その譲渡による譲渡所得等については、所得税及び個人住民税を課さない。また、当該公募等株式投資信託の受益権の譲渡による損失金額は、所得税及び個人住民税に関する法令の規定の適用上、ないものとみなす。
ハ 非課税累積投資契約とは、上記イ及びロの非課税の適用を受けるために居住者等が金融商品取引業者等と締結した公募等株式投資信託の受益権の定期かつ継続的な方法による買付け及びその管理に関する契約で、その契約書において、次に掲げる事項が定められているものをいう。
(イ)公募等株式投資信託の受益権の管理は、累積投資勘定(当該契約に基づき非課税口座で管理される公募等株式投資信託の受益権を他の取引に関する記録と区分して行うための勘定で、平成30年から平成49年までの各年のうち現行の非課税管理勘定が設定される年以外の年に設けられるものをいう。)において行うこと。
(ロ)当該累積投資勘定は、当該居住者等から提出を受けた非課税適用確認書、勘定廃止通知書又は非課税口座廃止通知書に記載された勘定設定期間においてのみ設けられること。
(ハ)当該累積投資勘定は、原則としてその勘定設定期間内の各年の1月1日において設けられること。
(ニ)当該累積投資勘定には、累積投資に適した商品性を有するものとして次に掲げる事項が投資信託約款に記載されている公募等株式投資信託の受益権のみを受け入れること。
a 信託契約期間の定めがないこと又は20年以上の信託契約期間が定められていること。
b 収益の分配は、原則として信託の計算期間ごとに行うこととされており、かつ、月ごとに行うこととされていないこと。
c 信託財産は、複数の銘柄の有価証券又は複数の種類の特定資産に対して分散投資をして運用を行い、かつ、一定の場合を除いてデリバティブ取引への投資による運用を行わないこと。
d その他一定の事項
(ホ)当該累積投資勘定においては、その居住者等の非課税口座に累積投資勘定が設けられた日から同日の属する年の12月31日までの間に当該金融商品取引業者等への買付けの委託により取得した公募等株式投資信託の受益権(当該期間内の取得対価の額の合計額が40万円を超えないものに限る。)及び公募等株式投資信託の受益権の分割等により取得する公募等株式投資信託の受益権のみを受け入れること。
(ヘ)当該金融商品取引業者等の営業所の長は、非課税口座が開設された日の属する年の1月1日以後10年を経過する日及び同日の翌日以後5年を経過する日ごとに、これらの日において当該非課税口座を開設している居住者等の住所地等を確認することとされていること。
(ト)その他一定の事項
② 非課税口座に設けられた非課税管理勘定に、他の年分の非課税管理勘定又は未成年者口座に設けられた非課税管理勘定から移管がされる上場株式等については、その移管により非課税管理勘定に受け入れる上場株式等の価額(払出し時の金額)の上限額を撤廃する。
(注)上記②の改正については、未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(ジュニアNISA)における非課税管理勘定又は継続管理勘定への上場株式等の移管についても同様とする。
③ その他所要の措置を講ずる。
(2)上場株式等に係る配当所得等又は譲渡所得等の金額を申告する際に確定申告書等に添付する特定口座年間取引報告書の範囲に、金融商品取引業者等から電磁的方法により交付を受けた当該特定口座年間取引報告書に記載すべき事項が記録された電磁的記録を一定の方法により印刷した書面で、真正性を担保するための所要の措置が講じられているものとして国税庁長官が定めるものを加える。
(注)上記の改正は、平成31年分以後の所得税及び平成32年度分以後の個人住民税について適用する。
(3)特定保管勘定又は特定信用取引等勘定の設定又は廃止をする場合に提出する特定口座異動届出書について、当該届出書を提出する者の個人番号の記載を要しないこととする。
(4)エンジェル税制(①特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例、②特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等及び③特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等)について、適用対象となる沖縄振興特別措置法の指定会社に係る同法の規定に基づく指定期限を2年延長する。
3 住宅・土地税制
(国 税)
〔延長・拡充〕
(1)住宅の耐久性向上改修工事について、次の措置を講ずる。
① 特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例
 本特例の適用対象となる工事に特定の省エネ改修工事と併せて行う一定の耐久性向上改修工事を加えるとともに、税額控除率2%の対象となる住宅借入金等の範囲に、特定の省エネ改修工事と併せて行う一定の耐久性向上改修工事の費用に相当する住宅借入金等を加える。
(注1)上記の「一定の耐久性向上改修工事」とは、①小屋裏、②外壁、③浴室、脱衣室、④土台、軸組等、⑤床下、⑥基礎若しくは⑦地盤に関する劣化対策工事又は⑧給排水管若しくは給湯管に関する維持管理若しくは更新を容易にするための工事で次の要件を満たすものをいう。
イ 増築、改築、大規模の修繕若しくは大規模の模様替又は一室の床若しくは壁の全部について行う修繕若しくは模様替等であること。
ロ 認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づくものであること。
ハ 改修部位の劣化対策並びに維持管理及び更新の容易性が、いずれも増改築による長期優良住宅の認定基準に新たに適合することとなること。
ニ 工事費用(補助金等の交付がある場合には、当該補助金等の額を控除した後の金額)の合計額が50万円を超えること。
(注2)耐久性向上改修工事の証明書の発行は、住宅の品質確保の促進等に関する法律に規定する登録住宅性能評価機関、建築基準法に規定する指定確認検査機関、建築士法の規定により登録された建築士事務所に所属する建築士又は特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律の規定による指定を受けた住宅瑕疵担保責任保険法人が行うものとする。下記②において同じ。
(注3)その他の要件等は、現行の本特例と同様とする。
(注4)上記の改正は、増改築等をした居住用家屋を平成29年4月1日から平成33年12月31日までの間に自己の居住の用に供する場合について適用する。
② 既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除
 本特例の適用対象となる工事に一定の耐久性向上改修工事で耐震改修工事又は省エネ改修工事と併せて行うものを加えるとともに、その控除額を耐震改修工事又は省エネ改修工事に係る標準的な工事費用相当額及び耐久性向上改修工事に係る標準的な工事費用相当額の合計額(250万円(省エネ改修工事と併せて太陽光発電装置を設置する場合には、350万円)を限度)の10%に相当する金額とする。
 なお、耐震改修工事及び省エネ改修工事と併せて一定の耐久性向上改修工事を行った場合における控除額は、その耐震改修工事に係る標準的な工事費用相当額、省エネ改修工事に係る標準的な工事費用相当額及び耐久性向上改修工事に係る標準的な工事費用相当額の合計額(500万円(省エネ改修工事と併せて太陽光発電装置を設置する場合には、600万円)を限度)の10%に相当する金額とする。
(注1)上記の「一定の耐久性向上改修工事」とは、①小屋裏、②外壁、③浴室、脱衣室、④土台、軸組等、⑤床下、⑥基礎若しくは⑦地盤に関する劣化対策工事又は⑧給排水管若しくは給湯管に関する維持管理若しくは更新を容易にするための工事で次の要件を満たすものをいう。
イ 認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づくものであること。
ロ 改修部位の劣化対策並びに維持管理及び更新の容易性が、いずれも増改築による長期優良住宅の認定基準に新たに適合することとなること。
ハ 工事に係る標準的な工事費用相当額(補助金等の交付がある場合には、当該補助金等の額を控除した後の金額)が50万円を超えること。
(注2)上記の「標準的な工事費用相当額」とは、耐久性向上改修工事の種類ごとに標準的な工事費用の額として定められた金額に当該耐久性向上改修工事を行った箇所数等を乗じて計算した金額をいう。 
(注3)その他の要件等は、現行の本特例と同様とする。
(注4)上記の改正は、増改築等をした居住用家屋を平成29年4月1日から平成33年12月31日までの間に自己の居住の用に供する場合について適用する。
(2)住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除、特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例及び既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除の適用対象となる省エネ改修工事に、居室の窓の断熱改修工事又は居室の窓の断熱改修工事と併せて行う天井、壁若しくは床の断熱改修工事で、改修後の住宅全体の断熱等性能等級が改修前から一段階相当以上向上し、改修後の住宅全体の省エネ性能が断熱等性能等級4又は一次エネルギー消費量等級4以上及び断熱等性能等級3となること等の要件を満たすものを加える。
 これに伴い、既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除の適用対象となる省エネ改修工事について、その年の前年以前3年内に省エネ改修工事を行い、本税額控除の適用を受けている場合には適用しないこととするほか、標準的な工事費用相当額について所要の措置を講ずる。
(3)住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除、特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例及び既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除の適用対象となる増改築等に該当することを証明する書類(増改築等工事証明書)並びに既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除の適用対象となる耐震改修に該当することを証明する書類(住宅耐震改修証明書)の様式を統一する。
(4)短期所有土地の譲渡等をした場合の土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例について、適用停止措置の期限を3年延長する。
(5)優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用期限を3年延長する。
(6)福島復興再生特別措置法の改正を前提に、一団地の復興再生拠点市街地形成施設に係る都市計画事業の対象区域に特定復興拠点区域(仮称)が加えられた後も引き続き、当該都市計画事業により土地等が買い取られる場合を収用交換等の場合の譲渡所得の5,000万円特別控除等の対象とするとともに、収用交換等の場合の譲渡所得の5,000万円特別控除等に係る簡易証明制度の対象とする(法人税についても同様とする。)。
(7)都市緑地法の改正を前提に、緑地管理機構の指定権者が都道府県知事から市町村長に変更された後も引き続き、同法に規定する特別緑地保全地区内の土地等が同法の規定により緑地管理機構に買い取られる場合を特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の2,000万円特別控除の対象とする(法人税についても同様とする。)。
(8)生産緑地法の改正を前提に、改正後の同法に規定する生産緑地地区内にある土地が同法の規定により地方公共団体等に買い取られる場合について、引き続き特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除の対象とする(法人税についても同様とする。)。
(9)森林法施行規則及び木材の安定供給の確保に関する特別措置法施行規則の改正を前提に、次の措置を講ずる(次の②の措置は、法人税についても同様とする。)。
① 改正後の認定基準により認定を受けた森林経営計画に基づいて山林の伐採又は譲渡をした場合について、引き続き山林所得に係る森林計画特別控除の対象とする。
② 改正後の認定基準により森林経営計画の認定を受けた者について、引き続き森林組合等に委託して土地の譲渡をした場合等における農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の800万円特別控除の譲渡を受ける者の要件を満たすこととする。
(10)農村地域工業等導入促進法の改正を前提に、対象業種の拡大及び対象地域の見直し後も引き続き、実施計画における産業導入地区(仮称)内の一定の土地等を施設の用に供するために譲渡した場合を農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の800万円特別控除の対象とする。
(11)給与所得者等が使用者等から使用人である地位に基づいて貸付けを受けた住宅借入金等のうち、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除及び特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例の対象とならない住宅借入金等に係る利率を0.2%未満(現行:1%未満)に引き下げる。
(注)上記の改正は、平成29年1月1日以後に居住用家屋を自己の居住の用に供する場合について適用する。
〔縮減〕
 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の2,000万円特別控除について、適用対象から都市緑地法に規定する特別緑地保全地区内の土地等が同法の規定により特定緑地管理機構に買い取られる場合を除外する(法人税についても同様とする。)。
(地方税)
〔延長・拡充〕
(1)短期所有土地の譲渡等をした場合の土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例について、適用停止措置の期限を3年延長する。
(2)優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用期限を3年延長する。
(3)福島復興再生特別措置法の改正を前提に、一団地の復興再生拠点市街地形成施設に係る都市計画事業の対象区域に特定復興拠点区域(仮称)が加えられた後も引き続き、当該都市計画事業により土地等が買い取られる場合を収用交換等の場合の譲渡所得の5,000万円特別控除等の対象とするとともに、収用交換等の場合の譲渡所得の5,000万円特別控除等に係る簡易証明制度の対象とする。
(4)都市緑地法の改正を前提に、緑地管理機構の指定権者が都道府県知事から市町村長に変更された後も引き続き、同法に規定する特別緑地保全地区内の土地等が同法の規定により緑地管理機構に買い取られる場合を特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の2,000万円特別控除の対象とする。
(5)生産緑地法の改正を前提に、改正後の同法に規定する生産緑地地区内にある土地が同法の規定により地方公共団体等に買い取られる場合について、引き続き特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除の対象とする。
(6)森林法施行規則及び木材の安定供給の確保に関する特別措置法施行規則の改正を前提に、次の措置を講ずる。
① 改正後の認定基準により認定を受けた森林経営計画に基づいて山林の伐採又は譲渡をした場合について、引き続き山林所得に係る森林計画特別控除の対象とする。
② 改正後の認定基準により森林経営計画の認定を受けた者について、引き続き森林組合等に委託して土地の譲渡をした場合等における農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の800万円特別控除の譲渡を受ける者の要件を満たすこととする。
(7)農村地域工業等導入促進法の改正を前提に、対象業種の拡大及び対象地域の見直し後も引き続き、実施計画における産業導入地区(仮称)内の一定の土地等を施設の用に供するために譲渡した場合を農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の800万円特別控除の対象とする。
(8)給与所得者等が使用者等から使用人である地位に基づいて貸付けを受けた住宅借入金等のうち、住宅借入金等を有する場合の個人住民税額の特別控除の控除額に係る特例の対象とならない住宅借入金等に係る利率を0.2%未満(現行:1%未満)に引き下げる。
(注)上記の改正は、平成29年1月1日以後に居住用家屋を自己の居住の用に供する場合について適用する。
〔縮減〕
 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の2,000万円特別控除について、適用対象から都市緑地法に規定する特別緑地保全地区内の土地等が同法の規定により特定緑地管理機構に買い取られる場合を除外する。
4 災害に関する税制上の措置
(国 税)
(1)住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除について、次の措置を講ずる。
① 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の適用を受ける住宅(以下「従前住宅」という。)が災害により居住の用に供することができなくなった場合には、現行の災害により居住の用に供することができなくなった年に限り本税額控除を適用できることとする措置に代えて、災害により居住の用に供することができなくなった年以後の従前住宅に係る適用年(次に掲げる場合のいずれにも該当しない年までの各年に限る。)について本税額控除の適用を受けることができる措置を講ずる。
イ 従前住宅若しくは従前住宅の敷地の用に供されていた土地等又は当該土地等に新たに建築した建物等を事業の用若しくは賃貸の用又は親族等に対する無償による貸付けの用に供した場合(災害に際し被災者生活再建支援法が適用された市町村の区域内に所在する従前住宅をその災害により居住の用に供することができなくなった者(以下「再建支援法適用者」という。)が当該土地等に新築等をした住宅について、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除又は認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除(以下「住宅ローン控除等」という。)の適用を受ける場合を除く。)
ロ 従前住宅又は従前住宅の敷地の用に供されていた土地等の譲渡をし、その譲渡について居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除又は特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の適用を受ける場合
ハ 災害により従前住宅を居住の用に供することができなくなった者が取得等をした住宅(以下「再建住宅」という。)について住宅ローン控除等の適用を受ける場合(再建支援法適用者が住宅ローン控除等の適用を受ける場合を除く。)
② 上記①により、再建支援法適用者が再建住宅の取得等をした場合には、従前住宅に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除と再建住宅に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除を重複して適用できることとし、その重複して適用できる年における税額控除額は、現行の二以上の居住年に係る住宅の取得等に係る住宅借入金等の金額を有する場合の控除額の調整措置による。
(注1)特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例及び東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例についても同様とする。
(注2)上記の改正は、平成29年分以後の所得税について適用するとともに、所要の経過措置を講ずる。
(2)勤労者につき次に掲げる事由が生じた日から同日以後1年を経過する日までの間に、当該事由が生じたことによりその勤労者が勤労者財産形成住宅(年金)貯蓄(以下「財形非課税貯蓄」という。)の払出しを行う場合(当該事由が生じたことによりその払出しを行うことについて所轄税務署長の確認を受けたときに限る。)には、その払出しをした日に支払われる当該財形非課税貯蓄に係る利子等に対する課税及び同日前5年以内に支払われた当該財形非課税貯蓄に係る利子等に対する遡及課税を行わないこととする。
① 勤労者が居住の用に供している家屋であってその者又はその者と生計を一にする親族が所有しているものについて、災害により全壊、流失、半壊、床上浸水その他これらに準ずる損害を受けたこと。
② 勤労者が支払った医療費で、その者又はその支払の時においてその者と生計を一にする親族のためにその年中に支払ったものの金額の合計額が200万円を超えたこと。
③ 勤労者が配偶者と死別等をし、所得税法の寡婦(扶養親族である子を有する者に限る。)又は寡夫に該当することとなったこと。
④ 勤労者が特別障害者に該当することとなったこと。
⑤ 勤労者が雇用保険法の特定受給資格者又は特定理由離職者に該当することとなったこと。
(注1)上記の改正は、平成29年4月1日以後に生ずる上記①から⑤までの事由による財形非課税貯蓄の払出しについて適用する。
(注2)平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間に生じた上記①から⑤までの事由により財形非課税貯蓄の払出しを行った勤労者で、その払出しの際に当該財形非課税貯蓄に係る利子等について徴収された所得税の額がある者は、平成30年3月31日までに、納税地の所轄税務署長に対し、当該徴収された所得税の額の還付を請求することができることとする。
(3)独立行政法人都市再生機構が施行する次に掲げる事業の用に供される土地等が土地開発公社に買い取られる場合について、優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例を適用する。
① 被災市街地復興推進地域内において施行する被災市街地復興土地区画整理事業
② 住宅被災市町村の区域内において施行する第二種市街地再開発事業
(4)次に掲げる特例の適用を受ける者が、特定非常災害の指定を受けた災害のため、その買換資産等を予定期間等内に取得等をすることが困難となった場合には、税務署長の承認等の一定の要件の下、その予定期間等を2年の範囲内で延長する(次の②及び③の特例は、法人税についても同様とする。)。
① 確定優良住宅地等予定地のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
② 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
③ 交換処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例
④ 特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例
⑤ 既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例
⑥ 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
(5)次に掲げる土地等が次に定める事業の用に供するために地方公共団体又は独立行政法人都市再生機構(土地開発公社を含む。)に買い取られ、対価を取得する場合には、収用交換等の場合の譲渡所得の5,000万円特別控除等を適用する(法人税についても同様とする。)。
① 地方公共団体又は独立行政法人都市再生機構が被災市街地復興推進地域において施行する減価補償金を交付すべきこととなる被災市街地復興土地区画整理事業の施行区域内にある土地等 公共施設の整備改善に関する事業
② 地方公共団体又は独立行政法人都市再生機構が住宅被災市町村の区域において施行する第二種市街地再開発事業の施行区域内にある土地等 当該第二種市街地再開発事業
(6)被災市街地復興土地区画整理事業が施行された場合において、個人が有する土地等に係る換地処分により土地等及び住宅を取得した場合には、取得価額の引継ぎ等により課税を繰り延べる等の措置を適用する。
(7)被災市街地復興推進地域内にある土地等が、次に掲げる場合に該当することとなった場合には、特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500 万円特別控除を適用する(法人税についても同様とする。)。
① 被災市街地復興特別措置法の買取りの申出に基づき都道府県知事等に買い取られる場合
② 被災市街地復興土地区画整理事業に係る換地処分により当該事業の換地計画に定められた公営住宅等の用地に供するための保留地の対価の額に対応する土地等の部分の譲渡があった場合
(地方税)
(1)住宅借入金等を有する場合の個人住民税額の特別控除の適用を受ける住宅(以下「従前住宅」という。)が災害により居住の用に供することができなくなった場合又は災害に際し被災者生活再建支援法が適用された市町村の区域内に所在する従前住宅をその災害により居住の用に供することができなくなった者が住宅の取得等をした場合に、所得税において住宅借入金等特別税額控除の適用がある者のうち、当該年分の住宅借入金等特別税額控除額から当該年分の所得税額(住宅借入金等特別税額控除の適用がないものとした場合の所得税額とする。)を控除した残額があるものについては、翌年度分の個人住民税において、当該残額に相当する額を、次の控除限度額の範囲内で減額する。

居住年 控除限度額
平成11年1月~平成18年12月
平成21年1月~平成26年3月
所得税の課税総所得金額等
×5%(最高9.75万円)
平成26年4月~平成33年12月 所得税の課税総所得金額等
×7%(最高13.65万円)

(注)平成26年4月から平成33年12月までの欄の金額は、住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が8%又は10%である場合(東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合を含む。)の金額であり、それ以外の場合における控除限度額は所得税の課税総所得金額等×5%(最高9.75万円)とする。
また、この措置による個人住民税の減収額は、全額国費で補塡する。
(注)上記の改正は、平成30年度分以後の個人住民税について適用するとともに、所要の経過措置を講ずる。
(2)勤労者につき次に掲げる事由が生じた日から同日以後1年を経過する日までの間に、当該事由が生じたことによりその勤労者が勤労者財産形成住宅(年金)貯蓄(以下「財形非課税貯蓄」という。)の払出しを行う場合(当該事由が生じたことによりその払出しを行うことについて所轄税務署長の確認を受けたときに限る。)には、その払出しをした日に支払われる当該財形非課税貯蓄に係る利子等に対する課税及び同日前5年以内に支払われた当該財形非課税貯蓄に係る利子等に対する遡及課税を行わないこととする。
① 勤労者が居住の用に供している家屋であってその者又はその者と生計を一にする親族が所有しているものについて、災害により全壊、流失、半壊、床上浸水その他これらに準ずる損害を受けたこと。
② 勤労者が支払った医療費で、その者又はその支払の時においてその者と生計を一にする親族のためにその年中に支払ったものの金額の合計額が200万円を超えたこと。
③ 勤労者が配偶者と死別等をし、地方税法の寡婦(扶養親族である子を有する者に限る。)又は寡夫に該当することとなったこと。
④ 勤労者が特別障害者に該当することとなったこと。
⑤ 勤労者が雇用保険法の特定受給資格者又は特定理由離職者に該当することとなったこと。
(注1)上記の改正は、平成29年4月1日以後に生ずる上記①から⑤までの事由による財形非課税貯蓄の払出しについて適用する。
(注2)平成28年4月1日から平成29年3月31日までの間に生じた上記①から⑤までの事由により財形非課税貯蓄の払出しを行った勤労者で、その払出しの際に当該財形非課税貯蓄に係る利子等について徴収された個人住民税の額がある者は、平成30年3月31日までに、当該徴収された利子割に係る地方税法第24条第8項に規定する営業所等所在地の道府県知事に対し、当該徴収された個人住民税の額の還付を請求することができることとする。
(3)独立行政法人都市再生機構が施行する次に掲げる事業の用に供される土地等が土地開発公社に買い取られる場合について、優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例を適用する。
① 被災市街地復興推進地域内において施行する被災市街地復興土地区画整理事業
② 住宅被災市町村の区域内において施行する第二種市街地再開発事業
(4)次に掲げる特例の適用を受ける者が、特定非常災害の指定を受けた災害のため、その買換資産等を取得期間等内に取得等をすることが困難となった場合には、市町村長の承認等の一定の要件の下、その取得期間等を2年の範囲内で延長する。
① 確定優良住宅地等予定地のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
② 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
(5)次に掲げる土地等が次に定める事業の用に供するために地方公共団体又は独立行政法人都市再生機構(土地開発公社を含む。)に買い取られ、対価を取得する場合には、収用交換等の場合の譲渡所得の5,000万円特別控除等を適用する。
① 地方公共団体又は独立行政法人都市再生機構が被災市街地復興推進地域において施行する減価補償金を交付すべきこととなる被災市街地復興土地区画整理事業の施行区域内にある土地等 公共施設の整備改善に関する事業
② 地方公共団体又は独立行政法人都市再生機構が住宅被災市町村の区域において施行する第二種市街地再開発事業の施行区域内にある土地等 当該第二種市街地再開発事業
(6)被災市街地復興推進地域内にある土地等が、次に掲げる場合に該当することとなった場合には、特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500 万円特別控除を適用する。
① 被災市街地復興特別措置法の買取りの申出に基づき都道府県知事等に買い取られる場合
② 被災市街地復興土地区画整理事業に係る換地処分により当該事業の換地計画に定められた公営住宅等の用地に供するための保留地の対価の額に対応する土地等の部分の譲渡があった場合
5 租税特別措置等
(国 税)
〔延長・拡充等〕
(1)肉用牛の売却による農業所得の課税の特例の適用期限を3年延長する(法人税についても同様とする。)。
(2)公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の適用に係る申請書の提出があった日から1月以内に国税庁長官の承認をしないことの決定がなかった場合にその承認があったものとみなす特例(以下「承認に係る特例」という。)について、次の措置を講ずる。
① 承認に係る特例の対象範囲に次に掲げる贈与又は遺贈(以下「贈与等」という。)を加える。
イ 公益社団法人又は公益財団法人に対する贈与等で当該公益社団法人又は公益財団法人の理事、監事、評議員その他これらに準ずるもの(その親族等を含む。以下「役員等」という。)以外の者からのもののうち、その贈与等に係る財産が当該公益社団法人又は公益財団法人の公益目的事業を行うために不可欠な特定の財産とされるもの
ロ 私立大学等を設置する学校法人以外の学校法人に対する贈与等で当該学校法人の役員等以外の者からのもののうち、その贈与等に係る財産が当該学校法人の基本金に組み入れられるもの
ハ 社会福祉法人に対する贈与等で当該社会福祉法人の役員等以外の者からのもののうち、その贈与等に係る財産が当該社会福祉法人の基本金に組み入れられるもの
② 承認に係る特例の対象資産から株式、新株予約権、特定受益証券発行信託の受益権及び社債的受益権等を除外する。
(3)公益法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除について、対象となる社会福祉法人が閲覧対象とすべき書類の範囲に、事業の概要等を記載した書類その他一定の書類を加える。
(地方税)
〔延長・拡充等〕
(1)肉用牛の売却による農業所得の課税の特例の適用期限を3年延長する。
(2)公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の適用に係る申請書の提出があった日から1月以内に国税庁長官の承認をしないことの決定がなかった場合にその承認があったものとみなす特例(以下「承認に係る特例」という。)について、次の措置を講ずる。
① 承認に係る特例の対象範囲に次に掲げる贈与又は遺贈(以下「贈与等」という。)を加える。
イ 公益社団法人又は公益財団法人に対する贈与等で当該公益社団法人又は公益財団法人の理事、監事、評議員その他これらに準ずるもの(その親族等を含む。以下「役員等」という。)以外の者からのもののうち、その贈与等に係る財産が当該公益社団法人又は公益財団法人の公益目的事業を行うために不可欠な特定の財産とされるもの
ロ 私立大学等を設置する学校法人以外の学校法人に対する贈与等で当該学校法人の役員等以外の者からのもののうち、その贈与等に係る財産が当該学校法人の基本金に組み入れられるもの
ハ 社会福祉法人に対する贈与等で当該社会福祉法人の役員等以外の者からのもののうち、その贈与等に係る財産が当該社会福祉法人の基本金に組み入れられるもの
② 承認に係る特例の対象資産から株式、新株予約権、特定受益証券発行信託の受益権及び社債的受益権等を除外する。
(3)福島再開投資等準備金制度について、福島復興再生特別措置法等の改正を前提に、対象地域に認定特定復興拠点区域復興再生計画(仮称)に記載された特定復興拠点区域(仮称)を加える。
(4)沖縄の産業高度化・事業革新促進地域において工業用機械等を取得した場合の特別償却制度の適用期限を2年延長する。
(5)沖縄の国際物流拠点産業集積地域において工業用機械等を取得した場合の特別償却制度の適用期限を2年延長する。
(6)沖縄の経済金融活性化特別地区において工業用機械等を取得した場合の特別償却制度の適用期限を2年延長する。
(7)沖縄の離島の地域において旅館業用建物等を取得した場合の特別償却制度の適用期限を2年延長する。
(8)農業経営基盤強化準備金制度の適用期限を1年延長する。
6 その他
(国 税)
(1)次に掲げる所得税の届出書について、それぞれ次に定める税務署長への提出を不要とする。
① 納税地の変更に関する届出書 その変更後の納税地の所轄税務署長
② 納税地の異動に関する届出書 その異動後の納税地の所轄税務署長
③ 個人事業の開業・廃業等届出書 その個人の納税地の所轄税務署長(その個人が、事業に係る事務所等を移転した場合で、その移転前の事務所等の所在地を納税地としていたときは、その移転前の納税地の所轄税務署長)以外の税務署長
④ 給与支払事務所等の移転届出書 その移転後の給与支払事務所等の所在地の所轄税務署長
(2)確定拠出年金法の老齢給付金として支給される一時金に係る退職所得控除額の計算の基礎となる組合員等であった期間に、確定拠出年金以外の制度から資産又は脱退一時金相当額等の移換があった場合におけるその移換を受けた資産又は脱退一時金相当額等の額の算定の基礎となった期間のうち、加入者の年齢が60歳に達した日の前日が属する月後の期間及び確定拠出年金の運用指図者期間と重複している期間を含めることとする。 
(3)医療費控除又は特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)の適用を受ける者は、現行の医療費の領収書又は医薬品購入費の領収書の添付又は提示に代えて、医療費の明細書又は医薬品購入費の明細書を確定申告書の提出の際に添付しなければならないこととする。
 この場合において、税務署長は、確定申告期限等から5年間、当該適用に係る医療費の領収書(次に掲げるものを除く。)又は医薬品購入費の領収書の提示又は提出を求めることができることとし、当該求めがあったときは、その適用を受ける者は、これらの領収書の提示又は提出をしなければならない。
① 確定申告書の提出の際に、医療保険者から交付を受けた医療費通知書を医療費の明細書として添付した場合における当該医療費通知書に係る医療費の領収書
② 電子情報処理組織を使用して確定申告を行った際に、医療保険者から通知を受けた医療費通知情報でその医療保険者の電子署名及びその電子署名に係る電子証明書が付されたものを医療費の明細書として送信した場合における当該医療費通知情報に係る医療費の領収書
(注1)上記の改正は、平成29年分以後の確定申告書を平成30年1月1日以後に提出する場合について適用する。
(注2)経過措置として、平成29年分から平成31年分までの確定申告については、現行の医療費の領収書又は医薬品購入費の領収書の添付又は提示による医療費控除又はセルフメディケーション税制の適用もできることとする。
(4)国立研究開発法人森林総合研究所法の改正に伴い、国立研究開発法人森林総合研究所の国立研究開発法人森林研究・整備機構への名称変更等の後も、引き続き公共法人等(所得税法別表第一)とする。
(5)独立行政法人教員研修センター法の改正に伴い、独立行政法人教員研修センターの独立行政法人教職員支援機構への名称変更等の後も、引き続き公共法人等(所得税法別表第一)とする。
(6)原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の改正を前提に、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の業務範囲の見直し後も、引き続き公共法人等(所得税法別表第一)とする。
(7)雇用保険法の失業等給付等について、雇用保険法等の改正を前提に、引き続き次の措置を講ずる。
① 所得税を課さない。 
② 国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(地方税)
〈個人住民税〉
(1)確定拠出年金法の老齢給付金として支給される一時金に係る退職所得控除額の計算の基礎となる組合員等であった期間に、確定拠出年金以外の制度から資産又は脱退一時金相当額等の移換があった場合におけるその移換を受けた資産又は脱退一時金相当額等の額の算定の基礎となった期間のうち、加入者の年齢が60歳に達した日の前日が属する月後の期間及び確定拠出年金の運用指図者期間と重複している期間を含めることとする。
(2)個人住民税の申告において、医療費控除又は特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)の適用を受ける者は、現行の医療費の領収書又は医薬品購入費の領収書の添付又は提示に代えて、医療費の明細書又は医薬品購入費の明細書を個人住民税の申告書に添付しなければならないこととする。
 この場合において、市町村長は、法定納期限の翌日から5年間、当該適用に係る医療費の領収書(医療保険者から交付を受けた医療費通知書を医療費の明細書として添付した場合における当該医療費通知書に係る医療費の領収書を除く。)又は医薬品購入費の領収書の提示又は提出を求めることができることとし、当該求めがあったときは、その適用を受ける者は、これらの領収書の提示又は提出をしなければならない。
(注1)上記の改正は、平成30年度分以後の個人住民税の申告書を平成30年1月1日以後に提出する場合について適用する。
(注2)経過措置として、平成30年度分から平成32年度分までの個人住民税の申告については、現行の医療費の領収書又は医薬品購入費の領収書の添付又は提示による医療費控除又はセルフメディケーション税制の適用もできることとする。
(3)雇用保険法の失業等給付等について、雇用保険法等の改正を前提に、引き続き次の措置を講ずる。
① 個人住民税を課さない。 
② 地方税の滞納処分による差押えを禁止する。
(4)国税における法人の支給する役員給与等に係る見直しに伴い、所要の措置を講ずる。
(5)国税における組織再編税制等に係る見直しに伴い、所要の措置を講ずる。
(6)国庫補助金等の総収入金額不算入制度について、対象となる国庫補助金等の範囲に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法に基づく助成金でロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト(仮称)等に係るものを加える。
(7)国税における諸制度の取扱い等を踏まえ、その他所要の措置を講ずる。
(8)県費負担教職員に係る給与負担事務の移譲に伴う指定都市所在道府県から指定都市への税源移譲
① 個人住民税所得割の標準税率等
イ 指定都市に住所を有する者について、個人住民税所得割の標準税率を次のように改める。

  現  行 改 正 案
道府県民税 4% 2%
市民税 6% 8%

ロ 指定都市に住所を有する者について、分離課税等に係る指定都市所在道府県分と指定都市分の税率割合(上場株式等に係る配当所得等の分離課税の税率等)及び税額控除の割合(寄附金税額控除の控除割合等)等を、原則として、税源移譲後の道府県民税(2%)と市民税(8%)の割合に合わせて改める。
(注)上記イ及びロの改正は、平成30年度分以後の個人住民税について適用する。
ハ 平成30年度分個人住民税から税率が変更されるまでの経過措置として、平成29年度の収入となる個人住民税(退職所得の分離課税に係る所得割を除く。)並びに平成30年度の収入となる個人住民税のうち給与所得に係る特別徴収の方法によって徴収されるもので、平成30年4月及び5月に支払われる給与等に係るものについて、指定都市所在道府県から指定都市へ税源移譲相当額を交付する。
② 退職所得の分離課税に係る所得割の税率に関する特例等
イ 退職所得の分離課税に係る所得割の税率については、①にかかわらず、当分の間、現行どおりとする。
ロ 指定都市に住所を有する者に係る道府県民税の税率2%相当分を、指定都市所在道府県から指定都市へ交付する。
(注)交付金の対象は、平成29年4月1日以後に納期限の到来する退職所得の分離課税に係る所得割とする。
③ 個人の道府県民税に係る徴収金の指定都市所在道府県への払込みに関する経過措置
 平成29年度以前に課した個人の道府県民税に係る徴収金を指定都市が指定都市所在道府県に払い込む際のあん分率について、平成30年4月から平成35年3月までの各月において指定都市が指定都市所在道府県に払い込む場合に限り、平成30年3月31日現在によって算定した平成29年度の収入額となるべき個人の道府県民税の課税額の合計額と同年度の収入額となるべき個人の市民税の課税額の合計額の割合によって算定する経過措置を講ずる。
④ その他所要の措置を講ずる。
(9)上場株式等に係る配当所得等について、市町村が納税義務者の意思等を勘案し、所得税と異なる課税方式により個人住民税を課することができることを明確化する。
〈国民健康保険税〉
(10)国民健康保険税の減額の対象となる所得の基準について、次のとおりとする。
① 5割軽減の対象となる世帯の軽減判定所得の算定において被保険者の数に乗ずべき金額を27万円(現行:26.5万円)に引き上げる。
② 2割軽減の対象となる世帯の軽減判定所得の算定において被保険者の数に乗ずべき金額を49万円(現行:48万円)に引き上げる。
(11)国民健康保険法等の改正により国民健康保険制度の見直しが行われることに伴い、国民健康保険税について、市町村が国民健康保険事業費納付金の納付に要する費用等に充てるために徴収する等の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成30年4月1日から適用する。

二 資産課税
1 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し
(1)災害等の被災者等が本制度の適用を受ける場合について、適用対象となる会社の認定等の時期に応じ、次の措置を講ずる。
① 災害等の発生前に相続若しくは遺贈又は贈与により非上場株式等を取得し、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下「円滑化法」という。)の認定を受けている、又は当該認定を受けようとしている会社
 災害等により受けた次に掲げる被害の態様に応じ、その認定承継会社の雇用確保要件の免除(ハの場合については、災害等の発生後の売上高の回復に応じて緩和)等をするとともに、これらの被害を受けた会社が破産等した場合には、経営承継期間内であっても猶予税額を免除する。
イ 災害により被害を受けた資産が総資産の30%以上である場合
ロ 災害により被災した事業所で雇用されていた従業員数が従業員総数の20%以上である場合
ハ 一定の災害等の発生後6月間の売上高が前年同期間の売上高の70%以下である場合
(注)上記の「一定の災害等」とは、中小企業信用保険法第2条第5項第1号から第4号までに掲げる一定の事由をいう。
② 災害等の発生後に相続又は遺贈により非上場株式等を取得し、円滑化法の認定を受けようとしている会社
 上記①の措置に加え、事前役員就任要件を緩和する。
(2)納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件について、相続開始時又は贈与時の常時使用従業員数に100分の80を乗じて計算した数に一人に満たない端数があるときは、これを切り捨てる(現行:切り上げる)こととする。ただし、相続開始時又は贈与時の常時使用従業員数が一人の場合には、一人とする。
(3)相続時精算課税制度に係る贈与を、贈与税の納税猶予制度の適用対象に加える。
(4)非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予制度における認定相続承継会社の要件について、中小企業者であること及び当該会社の株式等が非上場株式等に該当することとする要件を撤廃する。
(5)その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成29年1月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用するとともに、所要の経過措置を講ずる。
2 相続税又は贈与税の納税義務の見直し
(1)国内に住所を有しない者であって日本国籍を有する相続人等に係る相続税の納税義務について、国外財産が相続税の課税対象外とされる要件を、被相続人等及び相続人等が相続開始前10年(現行:5年)以内のいずれの時においても国内に住所を有したことがないこととする。
(2)被相続人等及び相続人等が出入国管理及び難民認定法別表第一の在留資格をもって一時的滞在(国内に住所を有している期間が相続開始前15年以内で合計10年以下の滞在をいう。(3)において同じ。)をしている場合等の相続又は遺贈に係る相続税については、国内財産のみを課税対象とすることとする。
(3)国内に住所を有しない者であって日本国籍を有しない相続人等が国内に住所を有しない者であって相続開始前10年以内に国内に住所を有していた被相続人等(日本国籍を有しない者であって一時的滞在をしていたものを除く。)から相続又は遺贈により取得した国外財産を、相続税の課税対象に加える。
(4)その他所要の措置を講ずる。
(注1)贈与税の納税義務についても同様とする。
(注2)上記の改正は、平成29年4月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用する。
3 居住用超高層建築物に係る課税の見直し
(地方税)
〈固定資産税・都市計画税〉
(1)居住用超高層建築物に対して課する固定資産税について、次の見直しを行う(都市計画税についても同様とする。)。
① 高さが60mを超える建築物(建築基準法令上の「超高層建築物」)のうち、複数の階に住戸が所在しているもの(以下(1)において「居住用超高層建築物」という。)については、当該居住用超高層建築物全体に係る固定資産税額を各区分所有者にあん分する際に用いる当該各区分所有者の専有部分の床面積を、住戸の所在する階層の差違による床面積当たりの取引単価の変化の傾向を反映するための補正率(以下(1)において「階層別専有床面積補正率」という。)により補正する。
② 階層別専有床面積補正率は、最近の取引価格の傾向を踏まえ、居住用超高層建築物の1階を100とし、階が一を増すごとに、これに、10を39で除した数を加えた数値とする。
③ 居住用以外の専有部分を含む居住用超高層建築物においては、まず当該居住用超高層建築物全体に係る固定資産税額を、床面積により居住用部分と非居住用部分にあん分の上、居住用部分の税額を各区分所有者にあん分する場合についてのみ階層別専有床面積補正率を適用する。
④ 上記①から③までに加え、天井の高さ、附帯設備の程度等について著しい差違がある場合には、その差違に応じた補正を行う。
⑤ 上記①から④までにかかわらず、居住用超高層建築物の区分所有者全員による申出があった場合には、当該申し出た割合により当該居住用超高層建築物に係る固定資産税額をあん分することも可能とする。
(注)上記の改正は、平成30年度から新たに課税されることとなる居住用超高層建築物(平成29年4月1日前に売買契約が締結された住戸を含むものを除く。)について適用する。
〈不動産取得税〉
(2)居住用超高層建築物の専有部分の取得があった場合に課する不動産取得税について、次の見直しを行う。
① 高さが60mを超える建築物(建築基準法令上の「超高層建築物」)のうち、複数の階に住戸が所在しているもの(以下(2)において「居住用超高層建築物」という。)にあっては、居住用超高層建築物の居住用の専有部分の取得があった場合において、当該居住用超高層建築物の評価額を当該専有部分の床面積割合によってあん分して得た額に相当する価格の家屋の取得があったものとみなして課する不動産取得税については、当該専有部分の床面積を、住戸の所在する階層の差違による床面積当たりの取引単価の変化の傾向を反映するための補正率(以下(2)において「階層別専有床面積補正率」という。)により補正する。
② 階層別専有床面積補正率は、最近の取引価格の傾向を踏まえ、居住用超高層建築物の1階を100とし、階が一を増すごとに、これに、10を39で除した数を加えた数値とする。
③ 居住用以外の専有部分を含む居住用超高層建築物においては、まず当該居住用超高層建築物全体に係る評価額を、床面積により居住用部分と非居住用部分にあん分の上、居住用部分の評価額を各区分所有者にあん分する場合についてのみ階層別専有床面積補正率を適用する。
④ 上記①から③までに加え、天井の高さ、附帯設備の程度等について著しい差違がある場合には、その差違に応じた補正を行う。
⑤ 上記①から④までにかかわらず、居住用超高層建築物の区分所有者全員による申出があった場合には、当該申し出た割合によりあん分して得た額に相当する価格の家屋の取得があったものとみなして不動産取得税を課することも可能とする。
(注)上記の改正は、平成30年度から新たに課税されることとなる居住用超高層建築物(平成29年4月1日前に売買契約が締結された住戸を含むものを除く。)について適用する。
4 災害に関する税制上の措置
(国 税)
〈相続税・贈与税〉
(1)直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置等について、次の措置を講ずる。
① 住宅取得等資金の贈与を受けて住宅用家屋の新築等をした者が、当該贈与を受けた年の翌年3月15日後遅滞なくその住宅用家屋を居住の用に供することが確実であると見込まれることにより本制度の適用を受けた場合において、その住宅用家屋が災害により滅失等をしたことによってその居住の用に供することができなかったときは、居住要件を免除する。
② 住宅取得等資金の贈与を受けて住宅用家屋の新築等をした者が、当該贈与を受けた年の翌年3月15日後遅滞なくその住宅用家屋を居住の用に供することが確実であると見込まれることにより本制度の適用を受けた場合において、災害に基因するやむを得ない事情によりその住宅用家屋を同年12月31日までにその居住の用に供することができなかったときは、その居住期限を当該贈与を受けた年の翌々年12月31日まで延長する。
③ 贈与により金銭を取得した者が、その金銭を住宅用の家屋の新築等の対価に充てて新築等をする場合においては、災害に基因するやむを得ない事情により当該贈与を受けた年の翌年3月15日までに新築等ができなかったときであっても、当該贈与を受けた年の翌々年3月15日までに新築等をしたときは、本制度の適用を受けることができることとする。
④ 本制度の適用を受けた者の住宅用家屋が被災者生活再建支援法が適用される自然災害により滅失等をした場合において、その者がその直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けて住宅用家屋の新築等をするときは、再度本制度の適用を受けることができることとする。
⑤ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成29年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用するとともに、所要の経過措置を講ずる。
(2)特定非常災害の指定を受けた災害が発生した場合において、当該災害発生日前の相続若しくは遺贈又は贈与により取得した財産に係る相続税又は贈与税で当該災害発生日以後に申告期限が到来するものについて、その課税価格の計算上、当該災害により被災者生活再建支援法が適用される区域内の土地等及び一定の非上場株式等で当該災害発生日に有していたものの価額は、当該災害の発生直後を基準とした価額とすることができることとする。
 この特例の適用を受ける場合において、特定日(国税通則法の規定により延長された申告期限と当該災害発生日の翌日から10月を経過する日とのいずれか遅い日をいう。)の前日までに申告期限が到来するものについては、その申告期限を特定日まで延長する。
(注)上記の改正は、平成29年1月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用するとともに、所要の経過措置を講ずる。
(3)災害等の被災者等が非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の適用を受ける場合について、適用対象となる会社の認定等の時期に応じ、次の措置を講ずる。(再掲)
① 災害等の発生前に相続若しくは遺贈又は贈与により非上場株式等を取得し、円滑化法の認定を受けている、又は当該認定を受けようとしている会社
 災害等により受けた次に掲げる被害の態様に応じ、その認定承継会社の雇用確保要件の免除(ハの場合については、災害等の発生後の売上高の回復に応じて緩和)等をするとともに、これらの被害を受けた会社が破産等した場合には、経営承継期間内であっても猶予税額を免除する。
イ 災害により被害を受けた資産が総資産の30%以上である場合
ロ 災害により被災した事業所で雇用されていた従業員数が従業員総数の20%以上である場合
ハ 一定の災害等の発生後6月間の売上高が前年同期間の売上高の70%以下である場合
(注)上記の「一定の災害等」とは、中小企業信用保険法第2条第5項第4号に規定する災害をいう。
② 災害等の発生後に相続又は遺贈により非上場株式等を取得し、円滑化法の認定を受けようとしている会社
 上記①の措置に加え、事前役員就任要件を緩和する。
(注)上記の改正は、平成29年1月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用するとともに、所要の経過措置を講ずる。
(4)山林に係る相続税の納税猶予制度について、災害による森林被害のため経営の規模の拡大を行うことが困難である場合には、当初認定起算日等から15年(現行:10年)を経過する日までに経営の規模の拡大が完了していれば、納税猶予の取消事由に該当しないこととする。
〈登録免許税〉
(5)被災者生活再建支援法が適用される自然災害の被災者等が当該自然災害により滅失等をした建物に代わるものとして新築等をした建物の所有権の保存登記等及びその敷地の用に供する土地の所有権等の移転登記等並びにこれらの登記と同時に受けるこれらの建物及び土地の取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記で、当該自然災害の発生した日から5年を経過する日までに受けるものに対する登録免許税を免税とする措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成29年4月1日以後に受ける登記に係る登録免許税について適用するとともに、所要の経過措置を講ずる。
〈印紙税〉
(6)被災者生活再建支援法が適用される自然災害の被災者等が、当該自然災害により滅失等をした建物が所在した土地若しくは損壊した建物を譲渡する場合、滅失等をした建物に代わるものの敷地の用に供する土地を取得する場合、滅失等をした建物に代わるものを新築等をする場合又は損壊した建物を修繕する場合に作成する不動産の譲渡に関する契約書又は建設工事の請負に関する契約書のうち、当該自然災害の発生した日から5年を経過する日までに作成されるものについては、印紙税を課さないこととする。
(注)上記の改正は、平成28年4月1日以後に作成された不動産の譲渡に関する契約書及び建設工事の請負に関する契約書について適用する。
(7)公的貸付機関等又は銀行等の金融機関が激甚災害(激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律第12条に規定する措置が適用されるものに限る。)の被災者等に対して行う金銭の特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書のうち、当該激甚災害の発生した日から5年を経過する日までに作成されるものについては、印紙税を課さないこととする。
(注)上記の改正は、平成28年4月1日以後に作成された消費貸借に関する契約書について適用する。
(8)その他所要の措置を講ずる。
(地方税)
〔新設〕
〈固定資産税・都市計画税〉
震災等の事由により滅失・損壊した家屋及び償却資産に代わるものとして当該震災等に際し被災者生活再建支援法が適用された市町村の区域内で取得する家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税について、最初の4年間2分の1減額する措置を、震災等が発生した年から4年を経過する年の3月31日までの間に取得したものに限り講ずる。
(注)上記の改正は、平成28年4月1日以後に生じた震災等の事由による被災代替家屋・償却資産に係る固定資産税及び都市計画税について適用する。
〔拡充〕
〈固定資産税・都市計画税〉
 住宅が震災等の事由により滅失・損壊した土地について、当該土地が被災市街地復興推進地域内に存する場合であって、やむを得ない事情により当該土地を住宅用地として使用できないと認められるときは、震災等の発生後4年度分(現行:2年度分)の固定資産税及び都市計画税に限り当該土地を住宅用地とみなす措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成28年4月1日以後に生じた震災等の事由による被災住宅用地に係る固定資産税及び都市計画税について適用する。
5 租税特別措置等
(国 税)
〔新設等〕
〈相続税・贈与税〉
(1)良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律(以下「平成18年医療法等改正法」という。)の改正を前提に、次の措置を講ずる。
① 平成18年医療法等改正法に規定する移行計画の認定を受けた医療法人の持分を有する個人がその持分の全部又は一部の放棄をしたことにより当該医療法人がその認定移行計画に記載された移行期限までに持分の定めのない医療法人への移行をした場合には、当該医療法人が当該放棄により受けた経済的利益については、贈与税を課さない。
② 上記①の適用を受けた医療法人について、持分の定めのない医療法人への移行をした日以後6年を経過する日までの間に移行計画の認定要件に該当しないこととなった場合には、上記①の経済的利益については、当該医療法人を個人とみなして、贈与税を課する。
③ 医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等の適用期限を3年延長する。
④ その他所要の措置を講ずる。
〈登録免許税〉
(2)農業競争力強化支援法(仮称)の制定を前提に、同法に規定する事業再編計画(仮称)の認定(同法の施行の日から平成31年3月31日までの間にされたものに限る。)を受けた事業再編促進対象事業者(仮称)が、その事業再編計画に基づき行う株式会社の設立等に係る次に掲げる登記に対する登録免許税の税率を、次のとおり軽減する措置を講ずる。
① 株式会社の設立又は増資の登記 1,000分の3.5(本則1,000分の7)
② 合併による株式会社の設立又は増資の登記 1,000分の1(純増部分については、1,000分の3.5)
 (本則1,000分の1.5(純増部分については、1,000分の7))
③ 分割による株式会社の設立又は増資の登記 1,000分の5(本則1,000分の7)
④ 法人の設立等の場合における不動産の所有権の移転登記 1,000分の16(本則1,000分の20)
⑤ 合併による法人の設立等の場合における不動産の所有権の移転登記 1,000分の2(本則1,000分の4)
⑥ 分割による法人の設立等の場合における不動産の所有権の移転登記 1,000分の4(本則1,000分の20)
〔延長・拡充等〕
〈相続税・贈与税〉
(1)直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置における金融機関への領収書等の提出について、書面による提出に代えて電磁的方法により提供することができることとする。
(注)上記の改正は、平成29年6月1日以後に提出する領収書等について適用する。
(2)生産緑地法の改正を前提に、面積要件の緩和された改正後の生産緑地地区内にある農地等については、農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の適用上、現行と同様の取扱いとする。
(3)山林に係る相続税の納税猶予制度について、次の見直しを行う。
① 森林経営計画に定められている区域に存する山林のうち同一の小流域内に存するものの面積が5ha未満である一定の山林を、納税猶予の適用対象に加える。
② 猶予期間中に身体障害等のやむを得ない事情により林業経営の継続が困難となったときは、一定の推定相続人に林業経営の全てを委託した場合であっても、納税猶予の継続を認める。
③ 災害による森林被害のため経営の規模の拡大を行うことが困難である場合には、当初認定起算日等から15年(現行:10年)を経過する日までに経営の規模の拡大が完了していれば、納税猶予の取消事由に該当しないこととする。(再掲)
〈登録免許税〉
(4)土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(5)住宅用家屋の所有権の保存登記若しくは移転登記又は住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を3年延長する。
(6)利用権設定等促進事業により農用地区域内の農用地等を取得した場合の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置について、軽減税率を1,000分の10(現行:1,000分の8)に引き上げた上、その適用期限を2年延長する。
(7)信用保証協会が受ける抵当権の設定登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(8)農業信用基金協会等が受ける抵当権の設定登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(9)日本酒造組合中央会が受ける抵当権の設定登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(10)金融機能の強化のための特別措置に関する法律に規定する経営強化計画に基づき行う登記(東日本大震災の影響により自己資本の充実を図ることが必要となった金融機関等が経営強化計画に基づき行うものを含む。)に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(11)認定民間都市再生事業計画(当該計画に係る認定が国家戦略特別区域法の規定により国土交通大臣の認定があったものとみなされるものである場合における当該計画を含む。(12)において同じ。)に基づき都市再生緊急整備地域内に特定民間都市再生事業の用に供する建築物を建築した場合の所有権の保存登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(12)認定民間都市再生事業計画に基づき特定都市再生緊急整備地域内に特定民間都市再生事業の用に供する建築物を建築した場合の所有権の保存登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(13)特定目的会社が資産流動化計画に基づき特定不動産を取得した場合等の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(14)特例事業者が不動産特定共同事業契約により不動産を取得した場合の所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置について、次の措置を講じた上、その適用期限を2年延長する。
① 不動産特定共同事業法の改正を前提に、小規模不動産特定共同事業(仮称)及び適格特例投資家限定事業(仮称)のうち一定のものを適用対象に加える。
② 特例事業における特定建築物の要件を一定の耐火建築物又は準耐火建築物で耐震基準を満たしたものとする。
〔廃止〕
 認定公社管理道路運営事業に係る公共施設等運営権の設定登録に対する登録免許税の税率の軽減措置は、適用期限の到来をもって廃止する。
(地方税)
〔新設〕
〈固定資産税・都市計画税〉
(1)平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に子ども・子育て支援法に基づく政府の補助を受けた事業主等が、一定の保育に係る施設を設置する場合には、当該施設の用に供する固定資産に係る固定資産税及び都市計画税について、課税標準を最初の5年間次のとおりとする措置を講ずる。
① 土地及び家屋については、価格の2分の1を参酌して3分の1以上3分の2以下の範囲内において市町村の条例で定める割合を乗じて得た額とする。
② 償却資産については、価格に次の割合を乗じて得た額とする。
イ 大臣配分資産又は知事配分資産 2分の1
ロ その他の資産 2分の1を参酌して3分の1以上3分の2以下の範囲内において市町村の条例で定める割合
(2)都市緑地法の改正を前提に、緑地管理機構が土地を所有し又は無償で借り受けて同法に規定する市民公開緑地(仮称)を設置及び管理する場合には、その用に供する土地に係る固定資産税及び都市計画税について、課税標準を最初の3年間価格の3分の2を参酌して2分の1以上6分の5以下の範囲内において市町村の条例で定める割合を乗じて得た額とする措置を平成31年3月31日まで講ずる。
〈不動産取得税〉
(3)不動産特定共同事業法の改正を前提に、同法に規定する小規模不動産特定共同事業者(仮称)、小規模特例事業者(仮称)及び一定の適格特例投資家限定事業者(仮称)が同法に規定する不動産特定共同事業契約に基づき取得する一定の不動産に係る不動産取得税について、当該不動産の価格の2分の1に相当する額を価格から控除する課税標準の特例措置を平成31年3月31日まで講ずる。
〈事業所税〉
(4)平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に子ども・子育て支援法に基づく政府の補助を受けた事業主等が行う一定の保育事業の用に供する施設に係る事業所税について、課税標準を4分の3控除する措置を講ずる。
〔延長・拡充等〕
〈固定資産税・都市計画税〉
(1)家庭的保育事業、居宅訪問型保育事業又は事業所内保育事業(利用定員が1人以上5人以下)の用に直接供する家屋及び償却資産(他の用途に供されていないものに限る。)に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置について、次の見直しを行う。
① 家屋については、価格の2分の1を参酌して3分の1以上3分の2以下の範囲内において市町村の条例で定める割合を乗じて得た額を課税標準とする。
② 償却資産については、価格に次の割合を乗じて得た額を課税標準とする。
イ 大臣配分資産又は知事配分資産 2分の1
ロ その他の資産 2分の1を参酌して3分の1以上3分の2以下の範囲内において市町村の条例で定める割合
(注)上記の改正は、平成30年度以後の年度分の固定資産税及び都市計画税について適用する。
(2)中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金の支給要件の緩和後も引き続き、心身障害者を多数雇用する事業所の事業主が障害者の雇用の促進等に関する法律に規定する重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金等の支給を受けて取得する事業用施設に係る固定資産税の課税標準の特例措置の対象に係る助成金とした上、その適用期限を2年延長する。
(3)中小企業等経営強化法に規定する認定経営力向上計画に基づき、中小事業者等が取得する一定の機械・装置に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、地域・業種を限定した上で、その対象に、測定工具及び検査工具、器具・備品並びに建物附属設備(償却資産として課税されるものに限る。)のうち一定のものを加える。
(注1)上記の「地域・業種を限定」とは、「最低賃金が全国平均未満の地域にあっては全ての業種、最低賃金が全国平均以上の地域にあっては労働生産性が全国平均未満の業種」に限定するもの。
(注2)上記の「測定工具及び検査工具、器具・備品並びに建物附属設備(償却資産として課税されるものに限る。)のうち一定のもの」とは、次の①から③までのいずれにも該当するもの。
① 次に掲げる資産の区分に応じ、それぞれ次に定める販売開始時期であるもの
イ 測定工具及び検査工具 5年以内
ロ 器具・備品 6年以内
ハ 建物附属設備 14年以内
② 旧モデル比で生産性(単位時間当たりの生産量、精度、エネルギー効率等)が年平均1%以上向上するもの
③ 次に掲げる資産の区分に応じ、それぞれ次に定める取得価額であるもの
イ 測定工具及び検査工具並びに器具・備品 それぞれ1台又は1基の取得価額が30万円以上のもの
ロ 建物附属設備 一の取得価額が60万円以上のもの
(4)地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に規定する鉄道事業再構築事業を実施する路線において政府の補助を受けて取得した一定の家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置について、対象に係る補助金の範囲を拡充する。
(5)鉄軌道事業者が政府の補助を受けて取得した車両の運行の安全性の向上に資する一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、対象に係る補助金の範囲を拡充した上、その適用期限を2年延長する。
(6)耐震改修等を行った住宅に係る固定資産税の減額措置について、次の見直しを行う。
① 耐震改修を行った住宅に係る固定資産税の減額措置について、長期優良住宅の認定を受けて改修されたことを証する書類を添付して市町村に申告がされた場合には、改修工事が完了した翌年度分に限り、減額すべき額を3分の2(現行:2分の1)に拡充する。
② 省エネ改修を行った住宅に係る固定資産税の減額措置について、長期優良住宅の認定を受けて改修されたことを証する書類を添付して市町村に申告がされた場合には、改修工事が完了した翌年度分に限り、減額すべき額を3分の2(現行:3分の1)に拡充する。
(7)水防法に規定する浸水防止計画に基づき、地下街等の所有者又は管理者が取得する一定の浸水防止用設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、対象区域に雨水出水浸水想定区域及び高潮浸水想定区域を加えた上、その適用期限を3年延長する。
(8)地震防災対策の用に供する償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
(9)公益社団法人又は公益財団法人が所有する文化財保護法に規定する重要無形文化財に指定された伝統芸能の公演のための専用施設の用に供する家屋及び土地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(10)密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律に規定する防災街区整備事業の施行に伴い従前の権利者が取得する一定の家屋に係る固定資産税の減額措置の適用期限を2年延長する。
(11)都市再生特別措置法に規定する認定事業者が特定都市再生緊急整備地域において、一定の認定事業により取得した公共施設及び一定の都市利便施設の用に供する家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(12)都市再生特別措置法に規定する認定事業者が都市再生緊急整備地域において、一定の認定事業により取得した公共施設及び一定の都市利便施設の用に供する家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(13)市街地再開発事業の施行に伴い従前の権利者が取得する家屋に係る固定資産税の減額措置の適用期限を2年延長する。
(14)都市鉄道等利便増進法に規定する都市鉄道利便増進事業により取得する鉄道施設に対して、次の措置を講ずる。
① 鉄軌道事業者又は一定の第三セクター若しくは独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が取得する駅施設の用に供する一定の家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
② 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が取得する線路設備等のうち市街化区域のトンネルに係る固定資産税の非課税措置の適用期限を2年延長する。
(15)国鉄改革により北海道旅客鉄道株式会社及び四国旅客鉄道株式会社並びに日本貨物鉄道株式会社が承継した本来事業用固定資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を5年延長する。
(16)北海道旅客鉄道株式会社及び四国旅客鉄道株式会社が所有し又は借り受けている固定資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を5年延長する。
(17)鉄軌道事業者が取得する新造車両で高齢者、障害者等の移動等の円滑化に資する一定の構造を有する車両に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(18)国際戦略港湾及び一定の要件を満たす国際拠点港湾において、港湾運営会社が、国の無利子資金の貸付け又は補助を受けて取得した一定の荷さばき施設等に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(19)特定貨物輸入拠点港湾において、特定貨物取扱埠頭の整備を図るため、港湾管理者が作成する特定利用推進計画の一定の事業を実施する者が、政府の補助を受けて取得した荷さばき施設等に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(20)建築物の耐震改修の促進に関する法律により耐震診断を義務付けられ、その結果が所管行政庁に報告された既存家屋(その報告に関する命令又は必要な耐震改修に関する指示の対象となったもの及び住宅を除く。)について、政府の補助を受けて、建築基準法に基づく現行の耐震基準(昭和56年6月1日施行)に適合させるよう改修工事を行い、その旨を市町村に申告した場合に係る固定資産税の減額措置の適用期限を3年延長する。
(21)鉄軌道事業者が首都直下地震・南海トラフ地震に備えた鉄道施設等の耐震補強工事によって新たに取得した一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を1年延長する。
〈不動産取得税〉
(22)家庭的保育事業、居宅訪問型保育事業又は事業所内保育事業(利用定員が1人以上5人以下)の用に直接供する家屋(他の用途に供されていないものに限る。)に係る不動産取得税の課税標準の特例措置について、価格から控除する額を、当該不動産の価格の2分の1を参酌して3分の1以上3分の2以下の範囲内において道府県の条例で定める割合(現行:2分の1)を乗じて得た額に相当する額とする。
(注)上記の改正は、所要の経過措置を講じた上、平成29年4月1日以後の取得について適用する。
(23)中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金の支給要件の緩和後も引き続き、心身障害者を多数雇用する事業所の事業主が障害者の雇用の促進等に関する法律に規定する重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金等の支給を受けて取得する事業用施設に係る不動産取得税の減額措置の対象に係る助成金とした上、その適用期限を2年延長する。
(24)不動産特定共同事業法に規定する特例事業者が不動産特定共同事業契約に基づき取得する一定の不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置について、適用対象となる特定家屋の範囲を見直した上、その適用期限を2年延長する。
(25)信託会社等が投資信託により取得する一定の不動産及び投資法人が取得する一定の不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置について、対象となる不動産にヘルスケア施設を加えた上、その適用期限を2年延長する。
(26)預金保険法に規定する協定銀行が協定の定めにより内閣総理大臣のあっせんを受けて行う破綻金融機関等の事業の譲受け又は預金保険機構の委託を受けて行う資産の買取りにより取得する不動産に係る不動産取得税の非課税措置の適用期限を2年延長する。
(27)保険業法に規定する協定銀行が協定の定めにより保険契約者保護機構の委託を受けて行う破綻保険会社等の資産の買取りにより取得する不動産に係る不動産取得税の非課税措置の適用期限を2年延長する。
(28)公益社団法人又は公益財団法人が取得する文化財保護法に規定する重要無形文化財に指定された伝統芸能の公演のための専用施設の用に供する不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(29)農業経営基盤強化促進法の規定による公告があった農用地利用集積計画に基づき取得する農用地区域内にある土地に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(30)東日本大震災の津波被災区域を含む地域における土地改良法の規定による換地計画に基づき、事業実施地区外の農業者が取得する創設農用地換地に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(31)特定目的会社が資産流動化計画に基づき取得する一定の不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(32)都市再生特別措置法に規定する認定事業者が特定都市再生緊急整備地域において、認定事業により取得する不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(33)都市再生特別措置法に規定する認定事業者が都市再生緊急整備地域において、認定事業により取得する不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(34)宅地建物取引業者が取得した既存住宅について、一定の増改築等を行った上、取得の日から2年以内に耐震基準適合要件を満たすものとして個人に販売し、自己の居住の用に供された場合に係る不動産取得税の減額措置の適用期限を2年延長する。
(35)東日本大震災により被災した鉄道事業法に規定する鉄道事業者が、東日本大震災により鉄道事業の用に供することができなくなった鉄道施設であって、同法に規定する鉄道事業の休止等の届出に係るものに代わるものとして建設する一定の要件を満たす鉄道施設の敷地の用に供するために取得した土地に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を1年延長する。
〈事業所税〉
(36)中小企業障害者多数雇用施設設置等助成金の支給要件の緩和後も引き続き、心身障害者を多数雇用する事業所に対する資産割に係る事業所税の課税標準の特例措置を講ずる。
(37)沖縄振興特別措置法に規定する情報通信産業振興地域における一定の情報通信産業の事業の用に供する施設に対する資産割に係る事業所税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(38)沖縄振興特別措置法に規定する産業高度化・事業革新促進地域における一定の産業の事業の用に供する施設に対する資産割に係る事業所税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(39)沖縄振興特別措置法に規定する国際物流拠点産業集積地域における一定の産業の事業の用に供する施設に対する資産割に係る事業所税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(40)原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の改正を前提に、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の行う収益事業以外の事業に係る事業所税について、非課税とする措置を講ずる。
〔廃止・縮減等〕
〈固定資産税・都市計画税〉
(1)低公害車燃料等供給施設の用に供する一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、対象となる設備要件に政府の補助を受けて取得したことを加えた上、その適用期限を2年延長する。
(2)熱電併給型動力発生装置(コージェネレーション設備)に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、対象となる設備要件に1基当たりの発電容量が10kW以上であることを加えた上、その適用期限を2年延長する。
(3)鉄軌道事業者が取得する新造車両に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、対象車両に係る環境要件を見直した上、その適用期限を2年延長する。
(4)サービス付き高齢者向け賃貸住宅に係る固定資産税の減額措置について、対象となる家屋の戸数要件を10戸以上(現行:5戸以上)とし、床面積要件の上限を210㎡以下(現行:280㎡以下)に引き下げた上、その適用期限を2年延長する。
(5)ノンフロン製品(自然冷媒を利用した一定の冷凍・冷蔵機器)に係る固定資産税の課税標準の特例措置を廃止する。
(6)特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律における一定の基準適合表示の付された特定特殊自動車に係る固定資産税の課税標準の特例措置を廃止する。
(7)都市再生特別措置法に規定する都市再生安全確保計画に基づき整備する都市再生安全確保施設のうち、同法に規定する管理協定の対象となった備蓄倉庫の用に供する家屋に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置を廃止する。
〈不動産取得税〉
(8)農業協同組合等が農業近代化資金等の貸付けを受けて取得する農林漁業経営の近代化又は合理化のための共同利用施設に係る不動産取得税の課税標準の特例措置について、対象から一定の資金の貸付けを受けて取得する共同利用施設を除外し、所要の経過措置を講じた上、その適用期限を2年延長する。
(9)一定の新築のサービス付き高齢者向け賃貸住宅について、一定の新築住宅に係る不動産取得税の課税標準の特例措置及び一定の新築住宅の用に供する土地に係る不動産取得税の減額措置の床面積要件の下限を緩和する特例措置について、対象となる家屋の戸数要件を10戸以上(現行:5戸以上)とし、床面積要件の上限を210㎡以下(現行:240㎡以下)に引き下げた上、その適用期限を2年延長する。
〈事業所税〉
(10)沖縄振興特別措置法に規定する観光地形成促進地域における特定民間観光関連施設に対する資産割に係る事業所税の課税標準の特例措置について、対象となる施設から体育館、遊漁船等利用施設及び釣り場を除外した上、その適用期限を2年延長する。
6 その他
(国 税)
(1)相続税の物納に充てることができる財産の順位について、株式、社債及び証券投資信託等の受益証券のうち金融商品取引所に上場されているもの等を国債及び不動産等と同順位(第一順位)とし、物納財産の範囲に投資証券等のうち金融商品取引所に上場されているもの等を加え、これらについても第一順位とする。
(2)森林法施行規則及び木材の安定供給の確保に関する特別措置法施行規則の改正を前提に、改正後の認定基準により森林経営計画の認定を受けた場合であっても、特定計画山林についての相続税の課税価格の計算の特例、山林に係る相続税の納税猶予制度及び計画伐採に係る相続税の延納等の特例の適用ができることとする。
(3)国立研究開発法人森林総合研究所法の改正に伴い、国立研究開発法人森林総合研究所の国立研究開発法人森林研究・整備機構への名称変更等の後も、引き続き非課税法人(登録免許税法別表第二、印紙税法別表第二)とする。
(4)独立行政法人教員研修センター法の改正に伴い、独立行政法人教員研修センターの独立行政法人教職員支援機構への名称変更等の後も、引き続き非課税法人(登録免許税法別表第二、印紙税法別表第二)とする。
(5)地価税の納税地の異動に関する届出書について、その異動後の納税地の所轄税務署長への提出を不要とする。
(6)相続税等の財産評価の適正化
 相続税法の時価主義の下、実態を踏まえて、次の見直しを行う。
① 取引相場のない株式の評価の見直し
イ 類似業種比準方式について、次の見直しを行う。
(イ)類似業種の上場会社の株価について、現行に課税時期の属する月以前2年間平均を加える。
(ロ)類似業種の上場会社の配当金額、利益金額及び簿価純資産価額について、連結決算を反映させたものとする。
(ハ)配当金額、利益金額及び簿価純資産価額の比重について、1:1:1とする。
ロ 評価会社の規模区分の金額等の基準について、大会社及び中会社の適用範囲を総じて拡大する。
② 杉及びひのきについて、現行評価額を全体的に引き下げるとともに、松について、原則として、標準価額を定めず個別に評価することとする。
③ 広大地の評価について、現行の面積に比例的に減額する評価方法から、各土地の個性に応じて形状・面積に基づき評価する方法に見直すとともに、適用要件を明確化する。
④ 株式保有特定会社(保有する株式及び出資の価額が総資産価額の50%以上を占める非上場会社をいう。)の判定基準に新株予約権付社債を加える。
(注1)上記①及び②の改正は、平成29年1月1日以後の相続等により取得した財産の評価に適用する。
(注2)上記③及び④の改正は、平成30年1月1日以後の相続等により取得した財産の評価に適用する。
(地方税)
(1)国立研究開発法人森林総合研究所法の改正により国立研究開発法人森林総合研究所の名称変更等が行われた後も、現行制度と同様の措置を講ずる。
(2)生産緑地法の改正を前提に、生産緑地地区の面積要件の緩和に伴う所要の措置を講ずる。

三 法人課税
1 競争力強化のための研究開発税制等の見直し
(国 税)
〔延長・拡充等〕
(1)試験研究を行った場合の税額控除制度(研究開発税制)について、次の見直しを行う(所得税についても同様とする。)。
① 試験研究費の総額に係る税額控除制度について、税額控除率(現行:試験研究費割合に応じ8~10%)を次の試験研究費の増減割合に応じた税額控除率(10%を上限とする。)とする制度に改組する。
イ 増減割合が5%超 9%+(増減割合-5%)×0.3
ロ 増減割合が5%以下 9%-(5%-増減割合)×0.1
ハ 増減割合が-25%未満 6%
(注1)上記の「増減割合」とは、試験研究費増減差額の比較試験研究費の額に対する割合をいう。
(注2)上記の「試験研究費増減差額」とは、試験研究費の額から比較試験研究費の額を減算した金額をいう。
② 試験研究費の増加額に係る税額控除又は平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除を選択適用できる制度について、試験研究費の増加額に係る税額控除を廃止した上、その適用期限を2年延長する。
③ 2年間の時限措置として、次の措置を講ずる。
イ 試験研究費の総額に係る税額控除制度の税額控除率の上限を14%(原則:10%)とする。
ロ 中小企業技術基盤強化税制について、試験研究費の増加割合が5%を超える場合には、次のとおりとする。
(イ)税額控除率(12%)に、増加割合から5%を控除した割合に0.3を乗じて計算した率を加算する。ただし、税額控除率の上限は17%とする。
(ロ)控除税額の上限(当期の法人税額の25%)に当期の法人税額の10%を上乗せする。なお、平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除制度との選択適用とする。
(注)上記の「増加割合」とは、試験研究費の額から比較試験研究費の額を控除した残額の比較試験研究費の額に対する割合をいう。
ハ 試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合には、平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除制度の適用に代えて、次の措置を適用できる。
(イ)試験研究費の総額に係る税額控除制度について、控除税額の上限(当期の法人税額の25%)に、当期の法人税額に試験研究費割合から10%を控除した割合を2倍した割合(10%を上限とする。)を乗じて計算した金額を上乗せする。
(ロ)中小企業技術基盤強化税制について、控除税額の上限(当期の法人税額の25%)に、当期の法人税額に試験研究費割合から10%を控除した割合を2倍した割合(10%を上限とする。)を乗じて計算した金額を上乗せする。なお、上記ロ(ロ)との選択適用とする。
(注)上記の「平均売上金額」とは、当期を含む4年間の売上金額の年平均額をいい、上記の「試験研究費割合」とは、試験研究費の額の平均売上金額に対する割合をいう。
④ 試験研究費の範囲について、対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究のために要する一定の費用を加える。
(注)上記の「一定の費用」とは、対価を得て提供する新たな役務(以下「新サービス」という。)の開発を目的として行う次の業務に要する原材料費、人件費(その業務に専ら従事する情報の解析に関する専門的な知識を有すると認められる者(以下「情報解析専門家」という。)に係るものに限る。)及び経費(外注費にあっては、これらの原材料費及び人件費並びに外注費以外の経費に相当する部分に限る。)並びに委託費(これらの原材料費、人件費及び経費に相当する部分に限る。)をいう。
イ 大量の情報を収集する機能を有し、その全部又は主要な部分が自動化されている機器又は技術を用いて行われる情報の収集
ロ その収集により蓄積された情報について、一定の法則を発見するために、情報解析専門家により専ら情報の解析を行う機能を有するソフトウエア(これに準ずるソフトウエアを含む。)を用いて行われる分析
ハ その分析により発見された法則を利用した新サービスの設計
ニ その発見された法則が予測と結果の一致度が高い等妥当であると認められるものであること及びその発見された法則を利用した新サービスがその目的に照らして適当であると認められるものであることの確認
⑤ 特別試験研究費の額に係る税額控除制度について、次の見直しを行う。
イ 特別試験研究費の対象となる共同研究及び委託研究に係る相手方が支出する費用で自己が負担するものについて、その費用の限定(現行:原材料費、人件費、旅費、経費及び外注費)を廃止し、これらの研究に要した費用とする。
ロ 契約変更前に支出した費用について、その契約に係るものであることが明らかであり、かつ、その支出日と契約変更日が同一の事業年度内にある場合には、特別試験研究費の対象となることを明確化する。
ハ その事業年度における特別試験研究費の額であることの相手方による確認について、費用の明細書と領収証等との突合を要しないこととする。
(2)公益法人等の収益事業に係る課税について、収益事業から除外される私立大学が他の者の委託を受けて行う研究に係る請負業の要件を、その委託に係る契約又は協定において、その研究の成果の公表がされること又はその研究の成果がその私立大学に帰属することが定められていること(現行:実施期間が3月以上であること並びに契約又は協定においてその研究の成果の帰属及び公表に関する事項が定められていること)とする。
(地方税)
〔延長・拡充等〕
 中小企業者等の試験研究を行った場合の税額控除制度(研究開発税制)について、次の見直しを行う。
(1)試験研究費の増加額に係る税額控除又は平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除を選択適用できる制度について、試験研究費の増加額に係る税額控除を廃止した上、その適用期限を2年延長する。
(2)2年間の時限措置として、次の措置を講ずる。
① 中小企業技術基盤強化税制について、試験研究費の増加割合が5%を超える場合には、次のとおりとする。
イ 税額控除率(12%)に、増加割合から5%を控除した割合に0.3を乗じて計算した率を加算する。ただし、税額控除率の上限は17%とする。
ロ 控除税額の上限(当期の法人税額の25%)に当期の法人税額の10%を上乗せする。なお、平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除制度との選択適用とする。
② 試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合には、平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除制度の適用に代えて、中小企業技術基盤強化税制について、控除税額の上限(当期の法人税額の25%)に、当期の法人税額に試験研究費割合から10%を控除した割合を2倍した割合(10%を上限とする。)を乗じて計算した金額を上乗せする措置を適用できる。なお、上記①ロとの選択適用とする。
(3)試験研究費の範囲について、対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究のために要する一定の費用を加える。
(4)特別試験研究費の額に係る税額控除制度について、次の見直しを行う。
① 特別試験研究費の対象となる共同研究及び委託研究に係る相手方が支出する費用で自己が負担するものについて、その費用の限定(現行:原材料費、人件費、旅費、経費及び外注費)を廃止し、これらの研究に要した費用とする。
② 契約変更前に支出した費用について、その契約に係るものであることが明らかであり、かつ、その支出日と契約変更日が同一の事業年度内である場合には、特別試験研究費の対象となることを明確化する。
③ その事業年度における特別試験研究費の額であることの相手方による確認について、費用の明細書と領収証等との突合を要しないこととする。
2 賃上げを促すための所得拡大促進税制の見直し
(国 税)
〔拡充等〕
 雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度について、次の見直しを行う(所得税についても同様とする。)。
(1)中小企業者等以外の法人について、平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えることとの要件を、平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額のその比較平均給与等支給額に対する割合が2%以上であることとの要件に見直すとともに、控除税額を、雇用者給与等支給増加額の10%と雇用者給与等支給増加額のうち雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額に達するまでの金額の2%との合計額(現行:雇用者給与等支給増加額の10%)とする。
(2)中小企業者等について、平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額のその比較平均給与等支給額に対する割合が2%以上である場合における控除税額を、雇用者給与等支給増加額の10%と雇用者給与等支給増加額のうち雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額に達するまでの金額の12%との合計額(現行:雇用者給与等支給増加額の10%)とする。
(地方税)
〔拡充等〕
 付加価値割の所得拡大促進税制及び中小企業者等の雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度について、次の見直しを行う。
(1)付加価値割の所得拡大促進税制について、平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えることとの要件を、平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額のその比較平均給与等支給額に対する割合が2%以上であることとの要件に見直す。
(2)中小企業者等の雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度について、平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額のその比較平均給与等支給額に対する割合が2%以上である場合における控除税額を、雇用者給与等支給増加額の10%と雇用者給与等支給増加額のうち雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額に達するまでの金額の12%との合計額(現行:雇用者給与等支給増加額の10%)とする。
3 コーポレートガバナンス改革・事業再編の環境整備
(国 税)
(1)確定申告書の提出期限の延長の特例について、次の見直しを行う。
① 法人が、会計監査人を置いている場合で、かつ、定款等の定めにより各事業年度終了の日の翌日から3月以内に決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合には、その定めの内容を勘案して4月を超えない範囲内において税務署長が指定する月数の期間の確定申告書の提出期限の延長を認めることとする。
② 延長月数の変更手続を定める等の所要の措置を講ずる。
(2)法人の支給する役員給与等について、次の見直しを行う。
① 利益連動給与について、次の見直しを行う。
イ 算定指標の範囲について、株式の市場価格の状況を示す指標及び売上高の状況を示す指標(利益の状況を示す指標又は株式の市場価格の状況を示す指標と同時に用いられるものに限る。)を加えるとともに、当該事業年度後の事業年度又は将来の所定の時点若しくは期間の指標を用いることができることとする。
(注)これに伴い、損金経理要件について所要の見直しを行う。
ロ 利益の状況を示す指標又は上記イの追加された指標(以下「業績連動指標」という。)を基礎として算定される数の市場価格のある株式を交付する給与で確定した数を限度とするものを対象に加える。
ハ 同族会社のうち非同族法人との間に完全支配関係がある法人の支給する給与を対象に加える。
(注)手続に関する要件は、算定方法についてその非同族法人の報酬委員会における決定等の手続を経てその法人の株主総会又は取締役会において決議し、その非同族法人の有価証券報告書等で開示されていることとする。
② 退職給与で利益その他の指標(勤務期間及び既に支給した給与を除く。)を基礎として算定されるもののうち利益連動給与の損金算入要件を満たさないもの及び新株予約権による給与で事前確定届出給与又は利益連動給与の損金算入要件を満たさないものは、その全額を損金不算入とする。これにあわせて、利益連動給与について、業績連動指標を基礎として算定される数の新株予約権を交付する給与で確定した数を限度とするもの及び業績連動指標を基礎として行使できる数が算定される新株予約権による給与を対象に加える。
(注)新株予約権は、その行使により市場価格のある株式が交付されるものに限る。
③ 事前確定届出給与について、次の見直しを行う。
イ 所定の時期に確定した数の株式を交付する給与を対象に加える。
ロ 上記②の改正にあわせて、所定の時期に確定した数の新株予約権を交付する給与を対象に加えるとともに、一定の新株予約権による給与についての事前確定の届出を不要とする。
(注)上記イの株式及び上記ロの新株予約権は、市場価格のある株式又は市場価格のある株式の取得の基因となるもので、役務の提供を受ける法人又はその法人の発行済株式の50%超を直接若しくは間接に保有する法人が発行したものに限る。
ハ 利益その他の指標を基礎として譲渡制限が解除される数が算定される譲渡制限付株式による給与を対象から除外する。
④ 定期同額給与の範囲に、税及び社会保険料の源泉徴収等の後の金額が同額である定期給与を加える。
⑤ 譲渡制限付株式又は新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例について、次の見直しを行う。
イ 役務の提供を受けた法人以外の法人が交付するものを対象に加える。
ロ 譲渡制限付株式を対価とする費用について、原則として、譲渡制限が解除されることが確定した日(現行:譲渡制限が解除された日)の属する事業年度の損金の額に算入する。
ハ 非居住者に対して交付された場合には、その者が居住者であったとした場合に給与所得等が生ずることが確定した日において役務の提供を受けたこととする。
⑥ 定期同額給与の改定期限、事前確定届出給与の届出期限及び利益連動給与における報酬委員会の決定等の手続の期限について、上記(1)の改正に伴う見直しを行う。
⑦ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、退職給与に係る部分、譲渡制限付株式に係る部分及び新株予約権に係る部分は平成29年10月1日以後に支給又は交付に係る決議(その決議がない場合には、その支給又は交付)をする給与について適用し、その他の部分は同年4月1日以後に支給又は交付に係る決議(その決議がない場合には、その支給又は交付)をする給与について適用する。
(3)組織再編税制等について、次の見直しを行う。
① 適格分割の範囲に、分割法人が行っていた事業の一部をその分割型分割により新たに設立する分割承継法人において独立して行うための分割として次の要件に該当するものを加える。ただし、分割に伴って分割法人の株主の持株数に応じて分割承継法人の株式のみが交付されるものに限る。
イ 分割法人が分割前に他の者による支配関係がないものであり、分割承継法人が分割後に継続して他の者による支配関係がないことが見込まれていること。
ロ 分割法人の分割事業の主要な資産及び負債が分割承継法人に移転していること。
ハ 分割法人の分割事業の従業者のおおむね80%以上が分割承継法人の業務に従事することが見込まれていること。
ニ 分割法人の分割事業が分割承継法人において引き続き行われることが見込まれていること。
ホ 分割法人の役員又は重要な使用人が分割承継法人の特定役員となることが見込まれていること。
② 100%子法人株式の全部を分配する現物分配について、分割型分割と同様に取り扱うための措置として、次の措置を講ずる。
イ 現物分配法人の株主において、旧株(現物分配法人の株式)のうちその交付を受けた子法人株式に対応する部分の譲渡を行ったものとみなすとともに、下記ロに該当しない場合には、その子法人株式の価額のうち資本金等の額を超える部分を原資とする金額を配当とする。ただし、現物分配法人の株主の持株数に応じて子法人株式のみが交付される場合には、旧株の譲渡損益の計上を繰り延べる(所得税についても同様とする。)。
ロ 次の要件に該当する100%子法人株式の現物分配を適格組織再編成の一類型とし、現物分配法人における子法人株式の譲渡損益を計上しないこととするとともに、源泉徴収等を行わないこととする。ただし、現物分配により現物分配法人の株主の持株数に応じて子法人株式のみが交付されるものに限る。
(イ)現物分配法人が現物分配前に他の者による支配関係がないものであり、子法人が現物分配後に継続して他の者による支配関係がないことが見込まれていること。
(ロ)子法人の従業者のおおむね80%以上がその業務に引き続き従事することが見込まれていること。
(ハ)子法人の主要な事業が引き続き行われることが見込まれていること。
(ニ)子法人の特定役員の全てがその現物分配に伴って退任をするものでないこと。
③ 内国法人である現物分配法人の100%子法人株式の全部を分配する現物分配により子法人株式の交付を受けた外国法人株主について、分割型分割と同様に取り扱うための措置として、次の措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。
イ 事業譲渡類似の株式等の譲渡益課税について、子法人株式その他の資産が交付される場合の適用要件の整備を行う。
ロ 内国法人である現物分配法人の外国法人株主の持株数に応じて外国子法人株式のみが交付される場合には、旧株(内国法人である現物分配法人の株式)の譲渡益(わが国で課税の対象となる国内源泉所得に該当するものに限る。)に対して課税する。
 ただし、この取扱いは、外国法人株主がその有する恒久的施設において旧株を管理する場合には、適用しない。この場合、外国法人株主がその交付を受けた外国子法人株式をその交付の時にその恒久的施設において管理しなくなったときは、その交付の時に外国法人株主の恒久的施設と本店等との間の内部取引があったものとして、恒久的施設帰属所得に係る所得の金額を計算する。
④ 単独新設分社型分割の後にその交付を受けた分割承継法人株式を分配する上記②ロの現物分配を行うことが見込まれている場合には、その単独新設分社型分割に係る適格要件のうち関係継続要件について、その現物分配の直前の時までの関係により判定することとする。
(注)単独新設現物出資についても同様とする。
⑤ 吸収合併及び株式交換に係る適格要件のうち対価に関する要件について、合併法人又は株式交換完全親法人が被合併法人又は株式交換完全子法人の発行済株式の3分の2以上を有する場合におけるその他の株主に対して交付する対価を除外して判定することとする。
⑥ 全部取得条項付種類株式の端数処理、株式併合の端数処理及び株式売渡請求による完全子法人化について、株式交換と同様に、組織再編税制の一環として位置づけ、次の措置を講ずる。
イ 企業グループ内の株式交換と同様の適格要件を満たさない場合におけるその完全子法人となった法人を、非適格株式交換等に係る完全子法人等の有する資産の時価評価制度等の対象に加える。
ロ 企業グループ内の株式交換と同様の適格要件を満たす場合におけるその完全子法人となった法人を連結納税の開始又は連結グループへの加入に伴う資産の時価評価制度の対象から除外するとともに、その完全子法人となった法人の連結納税の開始等の前に生じた欠損金額をその個別所得金額を限度として、連結納税制度の下での繰越控除の対象に加える。
⑦ 非適格株式交換等に係る完全子法人等の有する資産の時価評価制度及び連結納税の開始又は連結グループへの加入に伴う資産の時価評価制度について、時価評価の対象となる資産から、帳簿価額が1,000万円未満の資産を除外する。
⑧ みなし配当の額が生ずる事由となる自己の株式の取得について、その範囲から全部取得条項付種類株式に係る定めを設ける旨の定款変更に反対する株主からの買取請求に基づく取得を除外する(所得税についても同様とする。)。
(注)買取請求は、株主がその全部取得条項付種類株式の取得決議に係る取得対価の割当てに関する事項を知った後に行った場合で、買取請求をしないとすれば端数となる株式のみの交付を受けることとなる場合に行ったものに限る。
⑨ 組織再編税制における適格要件について、次の見直しを行う。
イ 企業グループ内の分割型分割に係る適格要件のうち関係継続要件について、支配法人と分割承継法人との間の関係(現行:支配法人と分割法人及び分割承継法人との間の関係)が継続することが見込まれていることとする。
ロ 共同事業を行うための合併、分割型分割、株式交換及び株式移転に係る適格要件のうち株式継続保有要件について、被合併法人等の発行済株式の50%超を保有する企業グループ内の株主がその交付を受けた合併法人等の株式の全部を継続して保有することが見込まれていること(現行:株主数50人未満の場合に限り、交付を受けた合併法人等の株式の全部を継続して保有することが見込まれている株主の有する被合併法人等の株式の数が発行済株式の80%以上であること)とする。
ハ 当初の組織再編成の後に他の組織再編成が行われることが見込まれている場合の当初の組織再編成の適格要件について、所要の見直しを行う。
(注)上記⑤から⑨までの改正は、平成29年10月1日以後に行われる組織再編成について適用する。
⑩ 営業権の償却方法について、取得年度の償却限度額の計算上、月割計算を行うこととする(所得税についても同様とする。)。資産調整勘定及び負債調整勘定についても同様とする。
⑪ 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度のうち支配関係がある法人間でみなし共同事業要件を満たさない適格合併等が行われた場合における欠損金の制限措置及び特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入制度について、支配関係発生日の属する事業年度開始の日から支配関係発生日の前日までの間に生じた特定資産の譲渡等損失額を制限の対象に加える。
⑫ 特定株主等によって支配された欠損等法人の資産の譲渡等損失額の損金不算入制度について、特定支配関係が生じた事業年度において一定の事由が生じた場合のその事業年度開始の日から特定支配関係発生日の前日までの間に生じた特定資産の譲渡等損失額を損金不算入の対象に加える。
⑬ 特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の制限措置について、他の者による完全支配関係がある法人が特定支配関係が生じた日以後に解散し、残余財産が確定した場合を制限の対象に加える。
⑭ その他所要の措置を講ずる。
(地方税)
 法人事業税の確定申告書の提出期限の延長の特例について、次の見直しを行う。
(1)法人が、会計監査人を置いている場合で、かつ、定款等の定めにより各事業年度終了の日から3月以内に決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合には、その定めの内容を勘案して各事業年度終了の日から6月を超えない範囲内において都道府県知事が指定する月数の期間の確定申告書の提出期限の延長を認めることとする。
(2)延長月数の変更手続を定める等の所要の措置を講ずる。
4 中堅・中小事業者の支援
(国 税)
〔新設〕
地域中核企業向け設備投資促進税制の創設
 企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律の改正を前提に、青色申告書を提出する法人が、同法の改正法の施行の日から平成31年3月31日までの間に、その法人の特定承認地域中核事業計画に係る地域未来投資促進法(仮称)の同意地域中核事業促進地域(仮称)内において特定地域中核事業施設等を新設し、又は増設した場合において、その特定地域中核事業施設等を構成する機械装置、器具備品、建物及びその附属設備並びに構築物の取得等をして、その地域中核事業(仮称)の用に供したときは、その取得価額の40%(建物及びその附属設備並びに構築物については、20%)の特別償却とその取得価額の4%(建物及びその附属設備並びに構築物については、2%)の税額控除との選択適用ができることとする。ただし、税額控除における控除税額は、当期の法人税額の20%を上限とする(所得税についても同様とする。)。
(注1)上記の「特定承認地域中核事業計画」とは、承認地域中核事業計画(仮称)のうち、地域未来投資促進法による一定の基準に適合することについての国の確認を受けたものをいう。
(注2)上記の「特定地域中核事業施設等」とは、その法人の特定承認地域中核事業計画に定められた施設又は設備で、その計画に従って行う地域中核事業の用に供するもののうち、その取得価額の合計額が2,000万円以上のものをいう。
(注3)対象資産の取得価額の合計額のうち本制度の対象となる金額は100億円を限度とする。
〔延長・拡充等〕
(1)中小企業向け設備投資促進税制の拡充
 中小企業投資促進税制及び特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度について、次の措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。
① 中小企業投資促進税制の上乗せ措置(生産性向上設備等に係る即時償却等)について、次の中小企業経営強化税制として改組し、全ての器具備品及び建物附属設備を対象とする。
 青色申告書を提出する中小企業者等で中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたものが、平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に、生産等設備を構成する機械装置、工具、器具備品、建物附属設備及びソフトウエアで、特定経営力向上設備等に該当するもののうち、一定の規模以上のものの取得等をして、その特定経営力向上設備等を国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合には、その特定経営力向上設備等の普通償却限度額との合計でその取得価額までの特別償却とその取得価額の7%(特定中小企業者等にあっては、10%)の税額控除との選択適用ができることとする。ただし、税額控除における控除税額は当期の法人税額の20%を上限とし、控除限度超過額は1年間の繰越しができる。
(注1)中小企業者等及び特定中小企業者等の範囲は、中小企業投資促進税制及び特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度の対象法人のうち、中小企業等経営強化法の中小企業者等に該当するものとする。
(注2)上記の「生産等設備」とは、その法人の指定事業の用に直接供される減価償却資産で構成されているものをいう。なお、事務用器具備品、本店、寄宿舎等に係る建物附属設備、福利厚生施設に係るもの等は該当しない。
(注3)上記の「特定経営力向上設備等」とは、経営力向上設備等のうち経営力向上に著しく資する一定のもので、その法人の認定を受けた経営力向上計画に記載されたものをいう。
(注4)上記の「経営力向上設備等」とは、中小企業等経営強化法に規定する次の設備をいう。
イ 生産性向上設備
 次の(イ)及び(ロ)の要件を満たす機械装置、工具(測定工具及び検査工具に限る。)、器具備品、建物附属設備及びソフトウエア(設備の稼働状況等に係る情報収集機能及び分析・指示機能を有するものに限る。)をいう。ただし、ソフトウエア及び旧モデルがないものは、次の(イ)の要件を満たすものとする。
(イ)販売が開始されてから、機械装置:10年以内、工具:5年以内、器具備品:6年以内、建物附属設備:14年以内、ソフトウエア:5年以内のものであること。
(ロ)旧モデル比で経営力の向上に資するものの指標(生産効率、エネルギー効率、精度等)が年平均1%以上向上するものであること。
ロ 収益力強化設備
 その投資計画における年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれるものであることにつき経済産業大臣の確認を受けた投資計画に記載された機械装置、工具、器具備品、建物附属設備及びソフトウエアをいう。
(注5)上記の「一定の規模以上のもの」とは、それぞれ次のものをいう。
イ 機械装置 1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの
ロ 工具及び器具備品 それぞれ1台又は1基の取得価額が30万円以上のもの
ハ 建物附属設備 一の取得価額が60万円以上のもの
ニ ソフトウエア 一の取得価額が70万円以上のもの
(注6)指定事業は、中小企業投資促進税制及び特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度のそれぞれの対象事業に該当する全ての事業とする。
② 中小企業投資促進税制について、上記①のほか、対象資産から器具備品を除外した上、その適用期限を2年延長する。
③ 特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度の適用期限を2年延長する。
④ 中小企業投資促進税制、特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度及び上記①の中小企業経営強化税制の控除税額の上限について、これらの制度の税額控除における控除税額の合計で、当期の法人税額の20%を上限とする所要の整備を行う。
(2)中小企業技術基盤強化税制について、試験研究費の総額に係る税額控除制度の改組にかかわらず、一律の税額控除率(現行:12%)を維持した上、2年間の時限措置として、次の措置を講ずる。なお、次の①ロ、②及び平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除制度は、選択適用とする(所得税についても同様とする。)。(再掲)
① 試験研究費の増加割合が5%を超える場合には、次のとおりとする。
イ 税額控除率(12%)に、増加割合から5%を控除した割合に0.3を乗じて計算した率を加算する。ただし、税額控除率の上限は17%とする。
ロ 控除税額の上限(当期の法人税額の25%)に当期の法人税額の10%を上乗せする。
② 試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合には、控除税額の上限(当期の法人税額の25%)に、当期の法人税額に試験研究費割合から10%を控除した割合を2倍した割合(10%を上限とする。)を乗じて計算した金額を上乗せする。
(3)中小企業の賃上げを促すための税制上の措置
 雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度について、平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額のその比較平均給与等支給額に対する割合が2%以上である場合における控除税額を、雇用者給与等支給増加額の10%と雇用者給与等支給増加額のうち雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額に達するまでの金額の12%との合計額(現行:雇用者給与等支給増加額の10%)とする(所得税についても同様とする。)。(再掲)
(4)中小企業者等に係る軽減税率の特例の適用期限を2年延長する。
(地方税)
〔新設〕
地域中核企業向け設備投資促進税制の創設
 企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律の改正を前提に、同法の改正法の施行の日から平成31年3月31日までの間に、特定承認地域中核事業計画に係る地域未来投資促進法(仮称)の同意地域中核事業促進地域(仮称)内において特定地域中核事業施設等を新設し、又は増設した法人が、その特定地域中核事業施設等を構成する機械装置、器具備品、建物及びその附属設備並びに構築物の取得等をして、その地域中核事業(仮称)の用に供した場合に選択適用できることとされる法人税の特別償却を法人住民税及び法人事業税に、税額控除を中小企業者等に係る法人住民税に適用する。
〔拡充〕
(1)中小企業技術基盤強化税制について、一律の税額控除率(現行:12%)を維持した上、2年間の時限措置として、次の措置を講ずる。なお、次の①ロ、②及び平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除制度は、選択適用とする。(再掲)
① 試験研究費の増加割合が5%を超える場合には、次のとおりとする。
イ 税額控除率(12%)に、増加割合から5%を控除した割合に0.3を乗じて計算した率を加算する。ただし、税額控除率の上限は17%とする。
ロ 控除税額の上限(当期の法人税額の25%)に当期の法人税額の10%を上乗せする。
② 試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合には、控除税額の上限(当期の法人税額の25%)に、当期の法人税額に試験研究費割合から10%を控除した割合を2倍した割合(10%を上限とする。)を乗じて計算した金額を上乗せする。
(2)中小企業の賃上げを促すための税制上の措置
 中小企業者等の雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度について、平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額のその比較平均給与等支給額に対する割合が2%以上である場合における控除税額を、雇用者給与等支給増加額の10%と雇用者給与等支給増加額のうち雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額に達するまでの金額の12%との合計額(現行:雇用者給与等支給増加額の10%)とする。(再掲)
5 地方創生の推進
(国 税)
〔拡充等〕
 地方活力向上地域において特定建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度並びに特定の地域において雇用者の数が増加した場合の税額控除制度(雇用促進税制)のうち地方事業所基準雇用者数に係る措置及び地方事業所特別基準雇用者数に係る措置について、次の措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。
(1)地方活力向上地域において特定建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度における税額控除率を引き上げる措置の適用期限を1年延長する。
(2)地方事業所基準雇用者数に係る措置における地方事業所税額控除限度額を、次の金額の合計額(現行:20万円(基準雇用者割合が10%以上であることとの要件を満たす場合には、50万円)に地方事業所基準雇用者数を乗じて計算した金額)とする。
① 30万円(基準雇用者割合が10%以上であることとの要件を満たす場合には、60万円)に、地方事業所基準雇用者数のうち無期雇用かつフルタイムの要件を満たす新規雇用者数に達するまでの数を乗じて計算した金額
② 20万円(基準雇用者割合が10%以上であることとの要件を満たす場合には、50万円)に、新規雇用者総数(地方事業所基準雇用者数を超える部分を除く。)から無期雇用かつフルタイムの要件を満たす新規雇用者数を控除した数のうち新規雇用者総数の40%に達するまでの数と地方事業所基準雇用者数から新規雇用者総数を控除した数との合計数を乗じて計算した金額
③ 10万円(基準雇用者割合が10%以上であることとの要件を満たす場合には、40万円)に、新規雇用者総数(地方事業所基準雇用者数を超える部分を除く。)から無期雇用かつフルタイムの要件を満たす新規雇用者数を控除した数のうち新規雇用者総数の40%を超える部分の数を乗じて計算した金額
(注1)地方事業所基準雇用者数は、その地方事業所基準雇用者数がその適用年度の基準雇用者数を超える場合には、その基準雇用者数とする。
(注2)上記の「新規雇用者数」とは、その特定業務施設における新たな雇用者の数をいい、上記の「新規雇用者総数」とは、その特定業務施設における新規雇用者数の合計をいう。
(3)移転型事業の要件のうち特定業務施設における増加従業員の過半数が特定集中地域からの転勤者であることとの要件について、特定集中地域における従業員の減少人数を上限として、特定業務施設における新規雇用者の一部を特定集中地域からの転勤者とみなす。
(地方税)
〔拡充等〕
 地方活力向上地域において特定建物等を取得した場合の特別償却又は中小企業者等の税額控除制度並びに中小企業者等の特定の地域において雇用者の数が増加した場合の税額控除制度(雇用促進税制)のうち地方事業所基準雇用者数に係る措置及び地方事業所特別基準雇用者数に係る措置について、次の措置を講ずる。
(1)地方活力向上地域において特定建物等を取得した場合の特別償却又は中小企業者等の税額控除制度における税額控除率を引き上げる措置の適用期限を1年延長する。
(2)地方事業所基準雇用者数に係る措置における地方事業所税額控除限度額を、次の金額の合計額(現行:20万円(基準雇用者割合が10%以上であることとの要件を満たす場合には、50万円)に地方事業所基準雇用者数を乗じて計算した金額)とする。
① 30万円(基準雇用者割合が10%以上であることとの要件を満たす場合には、60万円)に、地方事業所基準雇用者数のうち無期雇用かつフルタイムの要件を満たす新規雇用者数に達するまでの数を乗じて計算した金額
② 20万円(基準雇用者割合が10%以上であることとの要件を満たす場合には、50万円)に、新規雇用者総数(地方事業所基準雇用者数を超える部分を除く。)から無期雇用かつフルタイムの要件を満たす新規雇用者数を控除した数のうち新規雇用者総数の40%に達するまでの数と地方事業所基準雇用者数から新規雇用者総数を控除した数との合計数を乗じて計算した金額
③ 10万円(基準雇用者割合が10%以上であることとの要件を満たす場合には、40万円)に、新規雇用者総数(地方事業所基準雇用者数を超える部分を除く。)から無期雇用かつフルタイムの要件を満たす新規雇用者数を控除した数のうち新規雇用者総数の40%を超える部分の数を乗じて計算した金額
(3)移転型事業の要件のうち特定業務施設における増加従業員の過半数が特定集中地域からの転勤者であることとの要件について、特定集中地域における従業員の減少人数を上限として、特定業務施設における新規雇用者の一部を特定集中地域からの転勤者とみなす。
6 災害に関する税制上の措置等
(国 税)
(1)法人の災害が発生した日(以下「発災日」という。)から1年を経過する日までの間に終了する各事業年度又は発災日から6月を経過する日までの間に終了する中間期間において生じた災害損失欠損金額(欠損金額のうち、その災害により棚卸資産等について生じた損失の額で一定のものに達するまでの金額)がある場合には、その各事業年度に係る確定申告書(期限後申告書を含む。)又はその中間期間に係る仮決算の中間申告書の提出と同時に、その災害損失欠損金額に係る事業年度又は中間期間開始の日前1年(青色申告書を提出する場合には、2年)以内に開始した事業年度の法人税額のうちその災害損失欠損金額に対応する部分の金額の還付を請求することができる措置を講ずる。
(注)平成29年4月1日前1年以内に終了する事業年度において生じた災害損失欠損金額がある場合において、同日前にその事業年度に係る確定申告書を既に提出しているときは、平成29年4月30日までに納税地の所轄税務署長に対して還付請求書を提出することにより、その災害損失欠損金額について本措置の適用ができることとする。
(2)法人の災害が発生した日から6月を経過する日までの間に終了する中間期間において生じた災害損失金額(その災害により棚卸資産等について生じた損失の額で一定のもの)がある場合には、その中間期間に係る仮決算の中間申告において、その中間期間において課される所得税額で法人税額から控除しきれなかった金額を、その災害損失金額を限度に還付する措置を講ずる。
(3)法人税及び地方法人税の中間申告書の提出について、国税通則法の規定による申告期限の延長により、その提出期限と確定申告書の提出期限とが同一の日となる場合は、その中間申告書の提出を要しないこととする。
(4)法人が、特定非常災害の指定を受けた災害が発生した日(以下「発災日」という。)から5年を経過する日までの期間(以下「指定期間」という。)内に、その災害に基因してその事業の用に供することができなくなった建物(その附属設備を含む。)、構築物若しくは機械装置の代替資産の取得等をしてその事業の用に供した場合又は建物、構築物若しくは機械装置の取得等をして被災区域及びその被災区域である土地に付随して一体的に使用される土地の区域内においてその事業の用に供した場合には、これらの減価償却資産(以下「被災代替資産等」という。)の取得価額に、次の区分ごとに、次の償却率を乗じた金額の特別償却ができる措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。

被災代替資産等の区分\取得等の時期 発災日から3年目まで 発災日から4年目・5年目
建物又は構築物 15%(18%) 10%(12%)
機械装置 30%(36%) 20%(24%)

(注1)上記の「被災区域」とは、その災害に基因して事業又は居住の用に供することができなくなった建物又は構築物の敷地及びその建物又は構築物と一体的に事業の用に供される附属施設の用に供されていた土地の区域をいう。
(注2)上記のカッコ内の率は、中小企業者等が取得等をする場合の償却率である。
(注3)平成29年4月1日前1年以内に終了する事業年度の指定期間内に被災代替資産等の取得等をした場合には、同日以後最初に終了する事業年度において、特別償却相当額の償却ができることとする。
(5)次の租税特別措置の適用を受ける法人が、特定非常災害の指定を受けた災害により、予定期間内に、これらの措置に係る買換資産等の取得等をすることが困難となった場合には、一定の要件の下に、その予定期間を、その末日後2年の範囲内で延長できることとする(次の②の措置は、所得税についても同様とする。)。
① 一般の土地譲渡益に対する追加課税制度に係る適用除外措置(確定優良住宅地等予定地のための譲渡等に係る適用除外)
② 特定の資産の買換えの場合の課税の特例
(6)独立行政法人都市再生機構が施行する次に掲げる事業の用に供される土地等が土地開発公社に買い取られる場合について、一般の土地譲渡益に対する追加課税制度に係る適用除外措置(優良住宅地の造成等のための譲渡等に係る適用除外)を適用する。
① 被災市街地復興推進地域内において施行する被災市街地復興土地区画整理事業
② 住宅被災市町村の区域内において施行する第二種市街地再開発事業
(7)復興産業集積区域等において機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度のうち復興居住区域に係る措置について、その適用期限を4年延長するとともに、平成32年4月1日以後に取得又は建設をされる被災者向け優良賃貸住宅の特別償却率を17%(現行:25%)に、税額控除率を6%(現行:8%)に、それぞれ引き下げる(所得税についても同様とする。)。
(注)福島県の地方公共団体の指定を受けた法人が取得又は建設をする被災者向け優良賃貸住宅については、現行どおりとする。
(8)福島復興再生特別措置法の改正を前提に、次の制度における対象地域に認定特定復興拠点区域復興再生計画(仮称)に記載された特定復興拠点区域(仮称)を加える(所得税についても同様とする。)。
① 企業立地促進区域において機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度
② 避難解除区域等において機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度
③ 企業立地促進区域において避難対象雇用者等を雇用した場合の税額控除制度
④ 避難解除区域等において避難対象雇用者等を雇用した場合の税額控除制度
(9)被災者向け優良賃貸住宅の割増償却制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を4年延長する(所得税についても同様とする。)。
① 割増償却率を40%(平成31年4月1日以後に取得又は建設をされるものは、20%)(耐用年数が35年以上であるものは、56%(同日以後に取得又は建設をされるものは、28%))(現行:50%(耐用年数が35年以上であるものは、70%))に引き下げる。
② 対象地域から復興居住区域を除外する。
③ 確定申告書等への書類添付要件における添付書類に、被災者向け優良賃貸住宅の所在地を管轄する市町村長のその被災者向け優良賃貸住宅の所在地が復興居住区域でない旨を証する書類を加える。
(10)福島再開投資等準備金制度について、福島復興再生特別措置法等の改正を前提に、次の措置を講ずる。
① 対象地域に認定特定復興拠点区域復興再生計画(仮称)に記載された特定復興拠点区域(仮称)を加える(所得税についても同様とする。)。
② 適格分割により準備金を引き継ぐ等の措置を講ずる。
(地方税)
(1)法人の災害が発生した日(以下「発災日」という。)から1年を経過する日までの間に終了する各事業年度又は発災日から6月を経過する日までの間に終了する中間期間において生じた災害損失欠損金額(欠損金額のうち、その災害により棚卸資産等について生じた損失の額で一定のものに達するまでの金額)がある場合における法人税額の還付に係る災害損失欠損金額について、法人住民税及び法人事業税においては、繰越控除制度を適用する措置を講ずる。
(注)平成29年4月1日前1年以内に終了する事業年度において生じた災害損失欠損金額がある場合における法人税額の還付に係る災害損失欠損金額についても適用することとする。
(2)法人事業税の中間申告書の提出について、地方税法の規定による申告期限の延長により、その提出期限と確定申告書の提出期限とが同一の日となる場合は、その中間申告書の提出を要しないこととする。
7 円滑・適正な納税のための環境整備
(国 税)
(1)法人税の納税地に異動があった場合に提出することとされている届出書について、その異動後の納税地の所轄税務署長への提出を不要とする。連結子法人の本店等所在地に異動があった場合に提出することとされている届出書についても同様とする。
(2)法人の設立届出書等について、登記事項証明書の添付を不要とする。
(3)外国税額控除制度及び研究開発税制等について、その適用に係る申告要件につき、納税者の立証すべき事項及び当初申告の要否を明確化し、要件を満たす場合には税額控除額を変更できることを明らかにすることで、税務署長が増額更正をする場合において連動的に税額控除額を増加できるものとする(所得税についても同様とする。)。
(地方税)
 外国税額控除制度、地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)及び付加価値割の所得拡大促進税制等について、その適用に係る申告要件につき、納税者の立証すべき事項及び当初申告の要否を明確化し、要件を満たす場合には控除額を変更できることを明らかにすることで、地方団体の長が増額更正をする場合において連動的に控除額を増加できるものとする。
8 その他の租税特別措置等
(国 税)
〔新設〕
(1)協同組合等の各事業年度において、その保有する連合会等の普通出資につき支払を受ける配当等の額がある場合には、その配当等の額のうち益金の額に算入しない金額は、その出資保有割合にかかわらず、その配当等の額の100分の50相当額とする措置を講ずる。
(注1)上記の「連合会等」とは、各協同組合法、中小企業団体の組織に関する法律、信用金庫法、労働金庫法その他協同組合等の根拠法に定める各連合会及び農林中央金庫をいう。
(注2)上記の「普通出資」とは、その協同組合等が会員たる地位に基づき出資をするものをいい、協同組織金融機関の発行する優先出資を含まない。
(2)農業競争力強化支援法(仮称)の制定を前提に、次の措置を講ずる。
① 青色申告書を提出する法人で農業競争力強化支援法の認定事業再編事業者(仮称)であるもの(同法の施行の日から平成31年3月31日までの間に同法の事業再編計画(仮称)の認定を受けた事業再編促進対象事業者(仮称)であるものに限る。)が、その認定に係る事業再編計画の計画期間内において、その事業再編計画に記載された生産性向上設備等(仮称)を構成する機械装置、建物及びその附属設備並びに構築物の取得等をして、その法人の事業再編促進対象事業(仮称)の用に供した場合には、これらの減価償却資産について、5年間40%(建物及びその附属設備並びに構築物については、45%)の割増償却が適用できることとする(所得税についても同様とする。)。
② 欠損金の繰戻しによる還付の不適用措置について、青色申告書を提出する法人で農業競争力強化支援法の認定事業再編事業者であるものが、同法の施行の日から平成30年3月31日までの間に終了する事業年度において、その有する国内にある減価償却資産でその法人の事業再編促進対象事業の用に供されていたものにつき、その法人の同法の認定を受けた事業再編計画に基づいて行った設備廃棄等に係る設備廃棄等欠損金額を適用対象から除外し、繰戻しによる還付を請求することができることとする。
(注1)上記の「設備廃棄等」とは、事業再編計画に記載された事業再編(仮称)として行う施設の撤去又は設備の廃棄をいう。
(注2)上記の「設備廃棄等欠損金額」とは、その事業年度において生じた欠損金額のうち、設備廃棄等により生じた一定の損失の額に達するまでの金額をいう。
(注3)上記の「設備廃棄等により生じた一定の損失の額」とは、設備廃棄等をした棚卸資産及び減価償却資産のその直前の帳簿価額並びにその設備廃棄等に要した費用の額の合計額として、農林水産大臣が証明した金額をいう。
(3)青色申告書を提出する中小企業者等のうち指定自動車教習所における自動車運転技能等の学習支援業を営むものが、平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に、自動車教習所用の準中型自動車の取得等をして、その事業の用に供した場合には、その取得価額の20%の特別償却ができることとする(所得税についても同様とする。)。
(注)上記の「自動車教習所用の準中型自動車」とは、自動車教習の用に供するための大型自動車等以外の自動車で、車両総重量が3.5t以上7.5t未満のもの又は最大積載量が2t以上4.5t未満のものをいい、専ら貨物を運搬する構造の自動車に限る。
(4)原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の改正を前提に、青色申告書を提出する法人で同法の認定事業者であるものが、同法の改正法の施行の日から平成32年3月31日までの期間内の日を含む各事業年度において、特定原子力施設に係る著しく損傷した炉心等の除去に要する費用(以下「炉心等除去費用」という。)の支出に充てるため、その特定原子力施設ごとに、その特定原子力施設につきその事業年度において原子力損害賠償・廃炉等支援機構に廃炉等積立金(仮称)として積み立てた金額以下の金額を損金経理により準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額は、その事業年度において損金算入できることとする。
 この準備金は、その特定原子力施設に係る炉心等除去費用の支出をした場合には、その支出をした日におけるその特定原子力施設に係る準備金の金額のうちその支出をした金額に相当する金額を取り崩して、益金算入する。
〔拡充等〕
(1)エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(環境関連投資促進税制)について、新エネルギー利用設備等の範囲の適正化を行う(所得税についても同様とする。)。
(2)特定地域における工業用機械等の特別償却制度について、次の措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。
① 過疎地域に係る措置について、過疎地域自立促進特別措置法の改正を前提に、対象事業につき、農林水産物等販売業を加えるとともに、情報通信技術利用事業を除外した上、その適用期限を2年延長する。
② 半島振興対策実施地域に係る措置、離島振興対策実施地域に係る措置、奄美群島に係る措置及び振興山村に係る措置の適用期限を2年延長する。
(3)対外船舶運航事業を営む法人の日本船舶による収入金額の課税の特例(トン数標準税制)について、海上運送法等の改正を前提に、次の措置を講じた上、平成32年3月31日までに日本船舶・船員確保計画について認定を受けた対外船舶運航事業を営む法人に対して適用できることとする。
① 準日本船舶に本邦船主の子会社が所有する一定の要件を満たした外国船舶を加える。
② 取戻し課税の要件(日本船舶・船員確保計画に係る認定の取消し)の前提となる勧告をしない正当な理由に歴史的海運不況が含まれることを明確化する。
③ 日本船舶・船員確保計画において日本船舶及び船員の確保の目標として記載すべきその計画期間における日本船舶の隻数の増加の割合を120%(現行:220%)以上とする等の所要の見直しを行う。
〔延長〕
(1)沖縄の情報通信産業振興地域において工業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除制度の適用期限を2年延長する。
(2)沖縄の産業高度化・事業革新促進地域において工業用機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度の適用期限を2年延長する(特別償却制度は、所得税についても同様とする。)。
(3)沖縄の国際物流拠点産業集積地域において工業用機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度の適用期限を2年延長する(特別償却制度は、所得税についても同様とする。)。
(4)沖縄の経済金融活性化特別地区において工業用機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度の適用期限を2年延長する(特別償却制度は、所得税についても同様とする。)。
(5)沖縄の離島の地域において旅館業用建物等を取得した場合の特別償却制度の適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
(6)沖縄の情報通信産業特別地区における認定法人の所得控除制度の適用期限を2年延長する。
(7)沖縄の国際物流拠点産業集積地域における認定法人の所得控除制度の適用期限を2年延長する。
(8)沖縄の経済金融活性化特別地区における認定法人の所得控除制度の適用期限を2年延長する。
(9)農業経営基盤強化準備金制度の適用期限を1年延長する(所得税についても同様とする。)。
(10)法人の土地譲渡益に対する追加課税制度(一般・短期)の適用停止措置及び適用除外措置(優良住宅地の造成等のための譲渡等に係る適用除外)の期限を3年延長する。
(11)投資法人に係る課税の特例における再生可能エネルギー発電設備に係る措置の再生可能エネルギー発電設備の取得期限を3年延長する。
(12)退職年金等積立金に対する法人税の課税の停止措置の適用期限を3年延長する。
〔廃止・縮減等〕
(1)沖縄の観光地形成促進地域において特定民間観光関連施設を取得した場合の法人税額の特別控除制度について、対象施設から野球場、陸上競技場、蹴球場、スキー場、体育館、釣り場、遊漁船等利用施設、遊覧船発着場及び図書館を除外した上、その適用期限を2年延長する。
(2)公害防止用設備の特別償却制度について、取得価額要件を600万円以上(現行:300万円以上)に引き上げた上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
(3)船舶の特別償却制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
① 内航船舶について、電気推進船に準ずる環境性能を有する船舶の要件につき、航海支援システムを有することを加えた上、推進効率改良型プロペラ等を有することとの選択とするとともに、環境への負荷の低減に係る要件の見直しを行う。
② 外航船舶について、環境への負荷の低減に係る要件の見直しを行う。
(4)関西文化学術研究都市の文化学術研究地区における文化学術研究施設の特別償却制度について、施設規模要件を3億円以上(現行:2億円以上)に引き上げた上、その適用期限を2年延長する。
(5)共同利用施設の特別償却制度について、取得価額要件を200万円以上(現行:100万円以上)に引き上げた上、その適用期限を2年延長する。
(6)医療用機器の特別償却制度について、対象機器の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
(7)サービス付き高齢者向け賃貸住宅の割増償却制度は、適用期限の到来をもって廃止する(所得税についても同様とする。)。
(8)特定都市再生建築物等の割増償却制度について、次の見直しを行う(所得税についても同様とする。)。
① 都市再生特別措置法の認定計画(同法の整備計画及び国家戦略特別区域法の国家戦略民間都市再生事業を定めた区域計画を含む。)に基づく都市再生事業により整備される建築物に係る措置について、特定都市再生緊急整備地域以外の都市再生緊急整備地域内において行われる都市再生事業の要件のうちその都市再生事業の施行される土地の区域内に整備される建築物の延べ面積を75,000㎡以上(現行:50,000㎡以上)に引き上げた上、その適用期限を2年延長する。
② 中心市街地の活性化に関する法律の認定特定民間中心市街地経済活力向上事業計画に基づく特定民間中心市街地経済活力向上事業により整備される建築物及び構築物に係る措置は、適用期限の到来をもって廃止する。
③ 雨水貯留利用施設に係る措置について、対象資産から雨水を貯留する構築物と併せて設置される滅菌装置及びろ過装置を除外した上、その適用期限を2年延長する。
(9)新事業開拓事業者投資損失準備金制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を1年延長する。
① 特定新事業開拓投資事業計画についての認定に係る投資事業有限責任組合の要件について、次の措置を講ずる。
イ その出資規模要件を10億円以上(現行:おおむね20億円以上)に引き下げる。
ロ その総投資額の50%以上が地方(東京都以外)を所在地とする新事業開拓事業者に対するものであって、そのうち50%以上が事業拡張期の地方を所在地とする新事業開拓事業者に対するものであることとする要件を加える。
ハ その無限責任組合員が、地方で活動する新事業開拓事業者に対する投資実績並びに地方で活動する投資先企業に対して経営又は技術の指導等(ハンズオン支援)を行うために必要な知識及び経験を有していることとする要件等を加える。
② 準備金積立率を50%(現行:80%)に引き下げる。
(10)特定事業再編投資損失準備金制度は、適用期限の到来をもって廃止する。
(11)特定船舶に係る特別修繕準備金制度について、対象船舶から対外船舶運航事業を営む法人の日本船舶による収入金額の課税の特例(トン数標準税制)の適用を受ける法人が所有する日本船舶及びその法人の子会社が所有する外国船舶を除外する。
(12)特定の資産の買換えの場合等の課税の特例について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する(次の③及び④イの見直しを除き、所得税についても同様とする。)。
① 市街化区域又は既成市街地等の内から外への農業用資産の買換え及び農用地区域内にある土地等の買換えは、所要の経過措置を講じた上、適用期限の到来をもって適用対象から除外する。
② 既成市街地等の内から外への買換えについて、譲渡資産から事務所及びその敷地の用に供されている土地等を、買換資産から立地適正化計画を作成した市町村のその立地適正化計画に記載された都市機能誘導区域以外の地域内にある誘導施設に該当するものに係る土地等、建物(その附属設備を含む。)及び構築物を、それぞれ除外する。
③ 長期所有の土地、建物等から国内にある土地、建物等への買換えについて、買換資産のうち鉄道事業用車両運搬具を貨物鉄道事業用の電気機関車に限定する。
④ 船舶から船舶への買換えについて、漁船に係る措置につき、所要の経過措置を講じた上、適用期限の到来をもって対象から除外するほか、次の見直しを行う。
イ 外航船舶について、譲渡資産から対外船舶運航事業を営む法人の日本船舶による収入金額の課税の特例(トン数標準税制)の適用を受ける法人が所有する日本船舶及びその法人の子会社が所有する外国船舶を除外する。
ロ 港湾の作業船について、譲渡資産に係る船齢要件を40年未満(現行:45年未満)に引き下げる。
ハ 買換資産のうち総トン数が2,000トン以上の内航船舶について、環境への負荷の低減に係る要件の見直しを行う。
(13)公益法人等又は協同組合等の貸倒引当金の特例について、割増率を10%(現行:12%)に引き下げた上、その適用期限を2年延長する。
(14)法人税関係の中小企業向けの各租税特別措置について、平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年15億円を超える事業年度の適用を停止する措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成31年4月1日以後に開始する事業年度から適用する。
(地方税)
〔新設〕
 株式会社民間資金等活用事業推進機構に係る法人事業税について、資本金等の額を銀行法に規定する銀行の最低資本金の額(20億円)とみなす資本割の課税標準の特例措置を5年間に限り講ずる。
〔延長〕
(1)銀行等保有株式取得機構に係る法人事業税の資本割の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
(2)電気供給業を行う法人の事業税の課税標準である収入金額を算定する場合において控除される収入金額の範囲に、他の電気供給業を行う法人から託送供給を受けて電気の供給を行う場合の当該供給に係る収入金額のうち、電気の供給に係る託送供給の料金として支払うべき金額に相当する収入金額を追加する課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
〔縮減〕
 法人住民税関係の中小企業向けの各租税特別措置について、平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年15億円を超える事業年度の適用を停止する措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成31年4月1日以後に開始する事業年度から適用する。
9 その他
(国 税)
(1)国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度における対象となる国庫補助金等の範囲について、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法に基づく助成金でロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト(仮称)等に係るものを加える(所得税についても同様とする。)。
(2)独立行政法人教員研修センター法の改正に伴い、独立行政法人教員研修センターの独立行政法人教職員支援機構への名称変更等の後も、引き続き公共法人(法人税法別表第一)とする。
(3)原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の改正を前提に、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の業務範囲の見直し後も、引き続き公益法人等(法人税法別表第二)とする。
(4)森林法等の一部を改正する法律の施行に伴い、次の措置を講ずる。
① 国立研究開発法人森林総合研究所法の改正による国立研究開発法人森林総合研究所の国立研究開発法人森林研究・整備機構への名称変更等の後も、引き続き公共法人(法人税法別表第一)とする。
② 森林組合法の改正による生産森林組合から認可地縁団体への組織変更制度の創設に伴い、その組織変更があった場合には解散及び設立があったものとして取り扱う。
(地方税)
(1)法人事業税の分割基準について、次の見直しを行う。
① 電気供給業のうち、発電事業については、課税標準の4分の3を事務所又は事業所の固定資産で発電所の用に供するものの価額により、4分の1を事務所又は事業所の固定資産の価額により、送配電事業については、課税標準の4分の3を事務所又は事業所の所在する都道府県において発電所に接続する電線路(一定の要件を満たすものに限る。下記②において同じ。)の送電容量により、4分の1を事務所又は事業所の固定資産の価額により、小売電気事業については、課税標準の2分の1を事務所又は事業所の数により、2分の1を従業者の数により、それぞれ関係都道府県に分割する。
② 事務所若しくは事業所の固定資産で発電所の用に供するものを有しない場合の発電事業又は発電所に接続する電線路を有しない場合の送配電事業については、上記①にかかわらず、課税標準を事務所又は事業所の固定資産の価額により関係都道府県に分割する。
③ 上記①に伴い、昭和57年度の法人事業税の分割基準の見直しの際に設けられた経過措置を廃止する。
④ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成29年3月31日以後に終了する事業年度から適用する。
(2)独立行政法人教員研修センターの独立行政法人教職員支援機構への改組後も、引き続き非課税独立行政法人とする(非課税独立行政法人の規定があるその他の全ての税目についても同様とする。)。
(3)国税における諸制度の取扱い等を踏まえ、その他所要の措置を講ずる。

四 消費課税
1 酒税改革
(国 税)
(1)税率構造の見直し
① 発泡性酒類、醸造酒類及び混成酒類に係る酒税の税率について、次のとおりとする。

種 類 現 行 改正案
発泡性酒類 220,000円/㎘ 155,000円/㎘
  発泡酒(アルコール分) (10度未満) ( - )
(麦芽比率25%以上
50%未満)
178,125円/㎘
( 麦芽比率25%未満 ) 134,250円/㎘
その他の発泡性酒類(アルコール分) (10度未満) (11度未満)
(ホップを原料の一部と
した酒類で一定のもの)
80,000円/㎘
(ホップ及び一定の苦味
料を原料としない酒類)
80,000円/㎘ 100,000円/㎘
醸造酒類 140,000円/㎘ 100,000円/㎘
  清酒 120,000円/㎘
果実酒 80,000円/㎘
混成酒類(アルコール分20度)
 [アルコール分1度当たりの加算額]
220,000円/㎘ [11,000円/㎘]
200,000円/㎘
 [10,000円/㎘]

(注)上記の「ホップを原料の一部とした酒類で一定のもの」とは、いわゆる「新ジャンル」をいい、平成35年10月1日から発泡酒の品目に分類される(下記(2)②を参照)。
② 上記①の改正は平成32年10月1日から実施するが、発泡性酒類及び醸造酒類については、消費者や酒類製造者への影響に配慮する観点から、次のとおり所要の経過措置を講ずる。
イ 発泡性酒類の税率改正の実施時期
(イ)第一段階 平成32年10月1日
(ロ)第二段階 平成35年10月1日
(ハ)第三段階 平成38年10月1日
ロ 醸造酒類の税率改正の実施時期
(イ)第一段階 平成32年10月1日
(ロ)第二段階 平成35年10月1日
③ 上記①及び②による具体的な税率(1㎘当たり)について、次のとおりとする。

種 類 現 行 改正案
第一段階 第二段階 第三段階
発泡性酒類 220,000円 200,000円 181,000円 155,000円
  発泡酒(アルコール分) (10度未満) (10度未満) (10度未満) ( - )
(麦芽比率25%以上
50%未満)
178,125円 167,125円 155,000円
( 麦芽比率25%未満 ) 134,250円 134,250円 134,250円
(いわゆる「新ジャンル」) 134,250円
その他の発泡性酒類
  (アルコール分)
(10度未満) (10度未満) (10度未満) (11度未満)
(いわゆる「新ジャンル」) 80,000円 108,000円
(ホップ及び一定の苦味
料を原料としない酒類)
80,000円 80,000円 80,000円 100,000円
醸造酒類 140,000円 120,000円 100,000円 100,000円
  清酒 120,000円 110,000円
果実酒 80,000円 90,000円
混成酒類(アルコール分20度)
[アルコール分1度当たりの加算額]
220,000円 [11,000円]
200,000円
[10,000円]
200,000円
[10,000円]
200,000円
[10,000円]

(注)いわゆる「新ジャンル」は、平成35年10月1日から発泡酒の品目に分類される(下記(2)②を参照)。
④ 低アルコール分の蒸留酒類等に係る酒税の税率の特例について、下限税率を100,000円/㎘(現行:80,000円/㎘)に、下限税率の適用範囲のアルコール分を11度未満(現行:9度未満)に、それぞれ引き上げる。
(注)上記の改正は、平成38年10月1日から実施する。
⑤ 上記②及び④の税率改正の実施時期において、手持品課税及び手持品戻税を実施する。
⑥ 上記③の税率の段階的な見直しについては、その都度、経済状況を踏まえ、酒税の負担の変動が家計に与える影響等を勘案して検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
(2)酒類の定義の見直し
① ビールの定義について、次の見直しを行う。
イ ビールの原料の範囲に、次の物品(当該物品の重量の合計が、麦芽の重量の100分の5を超えないものに限る。)を加える。
(イ)果実(果肉・果皮)
(ロ)一定の香味料
ロ 麦芽比率を100分の50以上(現行:100分の67以上)に引き下げる。
ハ ビールの範囲に、「ビールにホップ又は上記イの物品を加えて発酵させたもの」を加える。
② 発泡酒の範囲に、次の酒類で発泡性を有するもの(アルコール分が20度未満のものに限り、ビールに該当するものを除く。)を加える。
イ ホップ又は一定の苦味料を原料の一部とした酒類
ロ 香味、色沢その他の性状がビールに類似するものとして一定の方法により測定した苦味価及び色度の値が一定以上の酒類
③ 果実酒の範囲に、「果実酒に植物(オークチップ)を浸してその成分を浸出させたもの」を加える。
(注)上記①及び③の改正は、平成30年4月1日以後に酒類の製造場から移出し、又は保税地域から引き取るビール及び果実酒について適用し、上記②の改正は、平成35年10月1日以後に酒類の製造場から移出し、又は保税地域から引き取る発泡酒について適用する。
(3)訪日外国人旅行者等向けに製造場で販売した酒類に係る酒税の免税制度の創設
 輸出酒類販売場を経営する酒類製造者が、非居住者に対し、自ら製造等をした一定の酒類で輸出するために一定の方法により購入されるものを販売するため、当該輸出酒類販売場である酒類の製造場から移出する場合には、当該移出に係る酒税を免除する。
(注1)上記の「輸出酒類販売場」とは、消費税の輸出物品販売場の許可を受けた酒類の製造場であることその他の要件に該当する販売場として、当該酒類の製造場の所在地を所轄する税務署長の許可を受けた酒類の販売場をいう。
(注2)上記の「一定の酒類」とは、その販売につき消費税の輸出物品販売場制度の適用により消費税が免除される酒類であることその他の要件に該当する酒類をいう。
(注3)上記の改正は、平成29年10月1日以後に輸出酒類販売場から移出する酒類について適用する。
(注4)輸出酒類販売場の許可については、平成29年4月1日から申請を受け付けることとする。
(4)構造改革特別区域法の改正を前提に、同法における酒税の特例について、次の措置を講ずる。
① 構造改革特別区域内において地域の特産物を原料として単式蒸留機により原料用アルコールを製造しようとする単式蒸留焼酎の製造免許を受けている者が、原料用アルコールの製造免許を申請した場合には、一定の要件の下、最低製造数量基準(現行:6㎘)を適用しない。
② 構造改革特別区域内において地域の特産品を原料とした単式蒸留焼酎を製造しようとする者が、単式蒸留焼酎の製造免許を申請した場合には、一定の要件の下、最低製造数量基準(現行:10㎘)を適用しない。
(5)その他所要の措置を講ずる。
2 車体課税の見直し
(国 税)
(1)排出ガス性能及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい自動車に係る自動車重量税の免税等の特例措置(下記(2)において「自動車重量税のエコカー減税」という。)について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
① 天然ガス自動車(車両総重量が3.5t以下のもの)
本措置の適用対象となる自動車の範囲に、平成30年排出ガス規制に適合するものを加える。
② 乗用自動車
イ 燃費性能に関する要件を次のとおりとする。

現 行 平成29年5月1日以後 平成30年5月1日以後
平成32年度燃費基準値より20%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準値より30%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準値より40%以上燃費性能の良いもの
平成32年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準値より20%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準値より20%以上燃費性能の良いもの
平成32年度燃費基準を満たすもの 平成32年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの
平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの 平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準を満たすもの

ロ 上記イの改正により本措置の対象外となる揮発油自動車(ハイブリッド自動車及び軽自動車を除く。)で次に掲げるものについては、その新車に係る新規検査の際に納付すべき自動車重量税について本則税率を適用する経過措置を講ずる。
(イ)平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良い自動車で平成29年5月1日から平成30年4月30日までの間に新車に係る新規検査を受けるもの
(ロ)平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良い自動車で平成30年5月1日から平成31年4月30日までの間に新車に係る新規検査を受けるもの
ハ 本措置の適用対象となる自動車の範囲に、揮発油自動車で平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いものを加える。
ニ 本措置の適用対象となる自動車の範囲に、石油ガス自動車(液化石油ガスを内燃機関の燃料とする自動車をいう。)で平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車又は平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いものを加える。
ホ 本措置の適用対象となる自動車の範囲に、軽油自動車で平成30年排出ガス規制に適合するものを加える。
ヘ 新車に係る新規検査後に受ける最初の継続検査等の際に納付すべき自動車重量税を免除する措置の対象となる揮発油自動車及び石油ガス自動車は、次に掲げるものとする。
(イ)平成32年度燃費基準値より40%以上燃費性能の良い自動車で平成29年5月1日から平成30年4月30日までの間に新車に係る新規検査を受けるもの
(ロ)平成32年度燃費基準値より50%以上燃費性能の良い自動車で平成30年5月1日から平成31年4月30日までの間に新車に係る新規検査を受けるもの
③ バス・トラック(車両総重量が2.5t以下のもの)
 本措置の適用対象となる自動車の範囲に、揮発油自動車で平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いものを加える。
④ バス・トラック(車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のもの)
イ 本措置の適用対象となる自動車の範囲に、揮発油自動車で次に掲げるものを加える。
(イ)平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすもの
(ロ)平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より25%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの
ロ 本措置の適用対象となる自動車の範囲に、軽油自動車で平成30年排出ガス規制に適合する自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすものを加える。
⑤ バス・トラック(車両総重量が3.5tを超えるもの)
イ 本措置の適用対象となる自動車の範囲から、軽油自動車で平成21年排出ガス規制に適合するもの(平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車を除く。)を除外する。
ロ 本措置の適用対象となる自動車の範囲に、車両総重量が3.5tを超え7.5t以下の軽油自動車で平成28年排出ガス規制に適合し、かつ、平成27年度燃費基準を満たすものを加える。
(2)自動車重量税のエコカー減税の適用を受け、又は本則税率の適用を受けた自動車の自動車重量税について、自動車製作者等の不正行為に起因し納付不足額が発生した場合には、当該自動車製作者等は当該納付不足額を納める義務があるものとする等、所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成29年4月1日以後に法定納期限が到来する自動車重量税について適用する。
(3)その他所要の措置を講ずる。
(地方税)
〈自動車取得税〉
(1)排出ガス性能及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい自動車(新車に限る。)の取得に対して課する自動車取得税に係る特例措置(いわゆる「自動車取得税のエコカー減税」)について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
① 天然ガス自動車(車両総重量が3.5t以下のもの)
 本措置の適用対象となる自動車の範囲に、平成30年排出ガス規制に適合するものを加える。
② 乗用車
イ 燃費性能に関する要件を次のとおりとする。

現 行 平成29年4月1日以後 平成30年4月1日以後
平成32年度燃費基準値より20%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準値より30%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準値より40%以上燃費性能の良いもの
平成32年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準値より30%以上燃費性能の良いもの
平成32年度燃費基準を満たすもの 平成32年度燃費基準値より20%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準値より20%以上燃費性能の良いもの
平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの
平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの 平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準を満たすもの

ロ 本措置の適用対象となる自動車の範囲に、ガソリン自動車で平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いものを加える。
ハ 本措置の適用対象となる自動車の範囲に、石油ガス自動車(液化石油ガスを内燃機関の燃料とする自動車をいう。)で平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車又は平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いものを加える。
ニ 本措置の適用対象となる自動車の範囲に、軽油自動車で平成30年排出ガス規制に適合するものを加える。
③ バス・トラック(車両総重量が2.5t以下のもの)
 本措置の適用対象となる自動車の範囲に、ガソリン自動車で平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いものを加える。
④ バス・トラック(車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のもの)
イ 現行、税率を80%軽減する自動車に係る軽減割合を75%とし、税率を60%軽減する自動車に係る軽減割合を50%とし、税率を40%軽減する自動車に係る軽減割合を25%とする。
ロ 本措置の適用対象となる自動車の範囲に、ガソリン自動車で次に掲げるものを加える。
(イ)平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすもの
(ロ)平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より25%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの
ハ 本措置の適用対象となる自動車の範囲に、軽油自動車で平成30年排出ガス規制に適合する自動車のうち、平成27年度燃費基準を満たすものを加える。
⑤ バス・トラック(車両総重量が3.5tを超えるもの)
イ 現行、税率を80%軽減する自動車に係る軽減割合を75%とし、税率を60%軽減する自動車に係る軽減割合を50%とし、税率を40%軽減する自動車に係る軽減割合を25%とする。
ロ 本措置の適用対象となる自動車の範囲から、軽油自動車で平成21年排出ガス規制に適合するもの(平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車を除く。)を除外する。
ハ 本措置の適用対象となる自動車の範囲に、車両総重量が3.5tを超え7.5t以下の軽油自動車で平成28年排出ガス規制に適合し、かつ、平成27年度燃費基準を満たすものを加える。
(2)排出ガス性能及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい自動車(新車を除く。)の取得に対して課する自動車取得税の課税標準の特例措置について、乗用車に係る燃費性能に関する要件を次のとおり見直した上、その適用期限を2年延長する。

現 行 平成29年4月1日以後 平成30年4月1日以後
平成32年度燃費基準値より20%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準値より30%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準値より40%以上燃費性能の良いもの
平成32年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準値より30%以上燃費性能の良いもの
平成32年度燃費基準を満たすもの 平成32年度燃費基準値より20%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準値より20%以上燃費性能の良いもの
平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの
平成27年度燃費基準値より5%以上燃費性能の良いもの 平成27年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの 平成32年度燃費基準を満たすもの

(3)その他所要の措置を講ずる。
〈自動車税〉
(4)自動車税において講じている燃費性能等の優れた自動車の税率を軽減し、一定年数を経過した自動車の税率を重くする特例措置(いわゆる「自動車税のグリーン化特例」)について、次のとおり適用期限を2年延長する。
① 自動車税のグリーン化特例(軽課)
 平成29年度及び平成30 年度に新車新規登録された自動車について、以下のとおり、当該登録の翌年度に特例措置を講ずる。
イ 次に掲げる自動車について、税率を概ね100分の75軽減する。
(イ)電気自動車
(ロ)天然ガス自動車で平成30年排出ガス規制に適合するもの又は平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物の排出量が少ないもの
(ハ)プラグインハイブリッド自動車
(ニ)平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車又は平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成32年度燃費基準値より30%以上燃費性能の良いもの(揮発油又は液化石油ガスを内燃機関の燃料とする自動車に限る。)
(ホ)平成30年排出ガス規制に適合する乗用車又は平成21年排出ガス規制に適合する乗用車(軽油を内燃機関の燃料とする自動車に限る。)
ロ 平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車又は平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない自動車のうち、平成32年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの(揮発油又は液化石油ガスを内燃機関の燃料とする自動車に限る。)について、税率を概ね100分の50軽減する。
② 自動車税のグリーン化特例(重課)
 現行のグリーン化特例(重課)の適用期限を2年延長し、平成30年度分及び平成31年度分を特例措置の対象とする。
(5)その他所要の措置を講ずる。
〈軽自動車税〉
(6)軽自動車税において講じている、燃費性能等の優れた軽自動車(新車に限る。)を取得した日の属する年度の翌年度分の税率を軽減する特例措置(いわゆる「軽自動車税のグリーン化特例(軽課)」)について、次のとおり適用期限を2年延長する。
① 次に掲げる軽自動車について、税率を概ね100分の75軽減する。
イ 電気軽自動車
ロ 天然ガス軽自動車で平成30年排出ガス規制に適合するもの又は平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物の排出量が少ないもの
② 平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない軽自動車又は平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない軽自動車のうち、乗用のものについては平成32年度燃費基準値より30%以上燃費性能の良いもの(揮発油を内燃機関の燃料とする軽自動車に限る。)について、貨物用のものについては平成27年度燃費基準値より35%以上燃費性能の良いもの(揮発油を内燃機関の燃料とする軽自動車に限る。)について、税率を概ね100分の50軽減する。
③ 平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物等の排出量が少ない軽自動車又は平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物等の排出量が少ない軽自動車のうち、乗用のものについては平成32年度燃費基準値より10%以上燃費性能の良いもの(揮発油を内燃機関の燃料とする軽自動車に限り、②の軽自動車を除く。)について、貨物用のものについては平成27年度燃費基準値より15%以上燃費性能の良いもの(揮発油を内燃機関の燃料とする軽自動車に限り、②の軽自動車を除く。)について、税率を概ね100分の25軽減する。
(7)その他所要の措置を講ずる。
〈自動車取得税・自動車税・軽自動車税〉
(8)自動車製作者等の不正行為に起因し自動車取得税等の納付不足額が発生した場合の対応について、国税における制度の取扱い等を踏まえ、所要の措置を講ずる。
3 災害に関する税制上の措置
(国 税)
(1)特定非常災害の指定を受けた災害の被災者である事業者が、被災した日の属する課税期間から消費税の課税事業者となることを選択する場合等において、その災害の状況等を勘案して国税庁長官が別に定める日(以下「指定日」という。)までに課税事業者選択届出書等を提出したときは、本来の提出時期までに提出したものとみなす。また、この場合等において、課税事業者を選択した場合の2年間の継続適用要件は適用しないこととする等の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成29年4月1日以後に指定日が到来する特定非常災害の指定を受けた災害について適用するとともに、所要の経過措置を講ずる。
(2)消費税の中間申告書の提出について、国税通則法の規定による申告期限の延長により、その提出期限と確定申告書の提出期限とが同一の日となる場合は、その中間申告書の提出を要しないこととする。
(3)被災酒類に係る酒税相当額の還付制度について、国税通則法の規定に基づき申告期限等が延長される地域が指定された災害の場合において、国税庁長官が被災酒類に係る納税義務者に代わる酒類製造者を指定したときには、当該指定された酒類製造者を当該被災酒類に係る酒税の納税義務者とみなすこととする。
(4)自動車検査証の交付等を受けた自動車のうち、使用済自動車の再資源化等に関する法律に規定する使用済自動車であって、当該自動車検査証の有効期間の満了する日前に被災者生活再建支援法が適用される自然災害を原因として滅失し、又は解体されたものについて、当該自然災害の発生した日から5年を経過する日までに還付申請書が提出された場合には、既に納付された自動車重量税の額に相当する金額のうち、当該自然災害の発生した日から当該有効期間の満了する日までの期間の月数に対応する金額を還付する措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成28年4月1日以後に滅失し、又は解体された自動車について適用する。
(5)その他所要の措置を講ずる。
4 租税特別措置等
(国 税)
〔延長・拡充等〕
(1)入国者が輸入するウイスキー等に係る酒税の税率の特例措置の適用期限を撤廃する。
(2)入国者が輸入する紙巻たばこのたばこ税の税率の特例措置の適用期限を1年延長する。
(3)特定の用途に供する石炭に係る石油石炭税の軽減措置の適用期限を3年延長する。
(4)苛性ソーダの製造業者(その子会社等を含む。)が、平成32年3月31日までに、重油、天然ガス等を苛性ソーダの製造に使用する電気の発電の用に供した場合には、当該重油、天然ガス等につき課された石油石炭税(石油石炭税の税率の特例により上乗せされる税率に係る部分に限る。)を還付する等の措置を講ずる。
(5)特定の石油製品を特定の運送又は農林漁業の用に供した場合の石油石炭税の還付措置の適用期限を3年延長する。
(6)輸入・国産農林漁業用A重油に係る石油石炭税の免税・還付措置の適用期限を3年延長する。
(7)非製品ガスに係る石油石炭税の還付措置の適用期限を3年延長する。
(8)航空機燃料税の税率の特例措置の適用期限を3年延長する。
(9)沖縄路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置の適用期限を3年延長する。
(10)特定離島路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置について、適用対象となる路線の範囲に福岡空港と屋久島又は奄美大島との間の路線を加えた上、その適用期限を3年延長する。
(11)車両総重量が12tを超えるバス等(専ら人の運送の用に供する自動車で乗車定員10人以上のもの(立席を有するものを除く。)をいう。)のうち、車線逸脱警報装置(車線からの逸脱に対する安全性の向上を図るための装置をいう。)を装備したものについて平成30年4月30日までの間に新車に係る新規検査を受ける場合には、当該新規検査の際に納付すべき自動車重量税を25%軽減する措置を講ずる。
(地方税)
〔新設〕
〈自動車取得税〉
(1)車両総重量が12tを超えるバス等(専ら人の運送の用に供する自動車で乗車定員10人以上のもの(立席を有するものを除く。)をいう。)のうち、車線逸脱警報装置(車線からの逸脱に対する安全性の向上を図るための装置をいう。)を装備したものについて、当該自動車(新車に限る。)の取得が平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に行われたときに限り、その取得価額から175万円を控除する。
〈軽油引取税〉
(2)重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律、重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律、武力攻撃事態等及び存立危機事態におけるアメリカ合衆国等の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律又は国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律に基づき外国の軍隊等に提供される免税軽油について、軽油引取税のみなす課税を適用しないこととする等の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成29年4月1日以後に行う免税軽油の提供について適用する。
〔延長・拡充等〕
〈自動車取得税〉
(1)都道府県の条例で定める路線の運行の用に供する一般乗合用のバスに係る自動車取得税の非課税措置の適用期限を2年延長する。
(2)公共交通移動等円滑化基準に適合したノンステップバス及びリフト付きバス並びにユニバーサルデザインタクシー(新車に限る。)に係る自動車取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(3)車両安定性制御装置又は衝突被害軽減制動制御装置を装備した自動車に係る自動車取得税の課税標準の特例について、次のとおり、その適用期限を2年延長する。
① 次に掲げる自動車で車両安定性制御装置(横滑り及び転覆に対する安全性の向上を図るための装置をいう。②及び③において同じ。)及び衝突被害軽減制動制御装置(衝突に対する安全性の向上を図るための装置をいう。②及び③において同じ。)を装備したものに係る自動車取得税について、当該自動車(新車に限る。)の取得が平成31年3月31日(車両総重量が8tを超え20t以下のトラック(トラクタ及びトレーラーを除く。①から③までにおいて同じ。)にあっては、平成30年10月31日)までの間に行われたときに限り、その取得価額から525万円を控除する。
イ 車両総重量が5tを超え12t以下のバス等(専ら人の運送の用に供する自動車で乗車定員10人以上のもの(立席を有するものを除く。)をいう。③において同じ。)
ロ 車両総重量が3.5tを超え20t以下のトラック
② 次に掲げる自動車で車両安定性制御装置及び衝突被害軽減制動制御装置を装備したものに係る自動車取得税について、当該自動車(新車に限る。)の取得がイに掲げるトラックにあっては平成30年11月1日から平成31年3月31日までの間に行われたときに限り、ロに掲げるトラックにあっては平成29年4月1日から平成30年10月31日までの間に行われたときに限り、その取得価額から350万円を控除する。
イ 車両総重量が8tを超え20t以下のトラック
ロ 車両総重量が20tを超え22t以下のトラック
③ 次に掲げる自動車で車両安定性制御装置又は衝突被害軽減制動制御装置のいずれか一方の装置(車両総重量が5t以下のバス等にあっては、衝突被害軽減制動制御装置)を装備したものに係る自動車取得税について、当該自動車(新車に限る。)の取得が平成31年3月31日(車両総重量が8tを超え20t以下のトラックにあっては、平成30年10月31日)までの間に行われたときに限り、その取得価額から350万円を控除する。
イ 車両総重量が12t以下のバス等
ロ 車両総重量が3.5tを超え20t以下のトラック
(4)被災代替自動車等の取得に係る自動車取得税の非課税措置の適用期限を2年延長する。
〈航空機燃料譲与税〉
(5)航空機燃料譲与税の譲与割合を引き上げる措置の適用期限を3年延長する。
5 その他
(国 税)
(1)入国旅客が到着時免税店において購入して輸入する外国貨物について、携帯品免税制度の対象として内国消費税を免除する。
(2)仮想通貨に係る課税関係の見直し
① 資金決済に関する法律に規定する仮想通貨の譲渡について、消費税を非課税とする。
② その他所要の措置を講ずる。
(注1)上記の改正は、平成29年7月1日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れについて適用する。
(注2)上記の改正前に譲り受けた仮想通貨について、個別対応方式により仕入控除税額を計算する場合の仕入れ区分は、「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に該当するものとする。
(注3)事業者が、平成29年6月30日に100万円(税抜き)以上の仮想通貨(国内において譲り受けたものに限る。)を保有する場合において、同日の仮想通貨の保有数量が平成29年6月1日から平成29年6月30日までの間の各日の仮想通貨の保有数量の平均保有数量に対して増加したときは、その増加した部分の課税仕入れに係る消費税につき、仕入税額控除制度の適用を認めないこととする。
(3)消費税及び電源開発促進税の納税地に異動があった場合に提出することとされている届出書について、その異動後の納税地の所轄税務署長への提出を不要とする。
(4)行政機関等が行う手数料を対価とする非識別加工情報に係る役務の提供について、消費税を非課税とする。
(5)酒税の未納税引取りの範囲に「酒類製造者が酒類の製造場で容器詰めして更に移出することが明らかな酒類の保税地域からの引取り」を加えるほか、承認、申告手続等の簡素合理化を図る。
(6)沖縄県産酒類に係る酒税の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(7)沖縄県産酒類に係る酒税の差額課税制度について、酒税を軽減された酒類を沖縄県の区域から当該区域以外の本邦の地域へ移出する目的で継続的に船舶又は航空機に積み込む者として税務署長の承認を受けた場合には、当該承認を受けた者がその月中に積み込んだ酒類に係る酒税の申告書の提出期限は、その月の翌月末日(現行:原則として積み込みの時)とする。
(注)上記の改正は、税務署長の承認を受けた日の属する月の翌月以後に積み込んだ酒類に係る酒税の申告書について適用する。
(8)酒類業組合等の成立届出書等について、登記事項証明書の添付を不要とする。
(地方税)
(1)地方消費税の清算基準について、次の見直しを行う。
① 消費に相当する額の75%のウエイトを占める小売年間販売額及びサービス業対個人事業収入額のうち、小売年間販売額について、商業統計の「小売計」のうち「年間商品販売額」の欄の額から、「通信・カタログ販売」及び「インターネット販売」による「年間商品販売額」の欄の額を除外した額とする。
② 消費に相当する額の25%のウエイトを占める人口及び従業者数について、その割合を3:2から7:3に変更する。
(注)上記の改正は、平成29年4月1日以後に行われる地方消費税の清算について適用する。
(2)地方消費税に係る徴収取扱費について、所要の経過措置を講じた上、次の見直しを行う。

現 行 改正案
① 譲渡割に係る徴収取扱費
 徴収取扱費算定期間に各都道府県に払い込むべき譲渡割として納付された額の総額(社会保障財源化分を除く。)× 0.55%
① 譲渡割に係る徴収取扱費
 徴収取扱費算定期間に各都道府県に払い込むべき譲渡割として納付された額の総額(社会保障財源化分を除く。)× 0.60%
② 貨物割に係る徴収取扱費
 徴収取扱費算定期間に各都道府県に払い込むべき貨物割として納付された額の総額(社会保障財源化分を除く。)× 0.55%
② 貨物割に係る徴収取扱費
 徴収取扱費算定期間に各都道府県に払い込むべき貨物割として納付された額の総額(社会保障財源化分を除く。)× 0.60%

(3)軽油引取税における元売業者、仮特約業者又は特約業者の指定の申請を個人が行う場合の申請書に係る添付書類のうち、戸籍抄本については、本籍の記載のある住民票の写しに代えることができることとする。
(注)上記の改正は、平成29年4月1日以後に指定の申請を個人が行う場合について適用する。

五 国際課税
1 外国子会社合算税制等の総合的見直し
(国 税)
 内国法人の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例(いわゆる「外国子会社合算税制」)等について、次の見直しを行う。
(1)合算対象とされる外国法人の判定方法等
① 外国関係会社の判定における間接保有割合について、内国法人等との間に50%超の株式等の保有を通じた連鎖関係がある外国法人の判定対象となる外国法人に対する持分割合等に基づいて算定することとする。
② 居住者又は内国法人と外国法人との間にその居住者又は内国法人がその外国法人の残余財産のおおむね全部を請求することができる等の関係がある場合におけるその外国法人を外国関係会社の範囲に加えるとともに、その居住者又は内国法人を本税制による合算課税の対象となる者に加える。
③ 外国関係会社が特定外国子会社等に該当するかどうかを判定するための租税負担割合基準を廃止する。
(2)会社単位の合算課税制度
① 適用除外基準
 会社単位の合算課税制度における適用除外基準について次の見直しを行った上で同制度の発動基準(以下「経済活動基準」という。)に改め、経済活動基準のうちいずれかを満たさない外国関係会社について、会社単位の合算課税の対象とする。
イ 事業基準
 航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社のうち、本店所在地国においてその役員又は使用人が航空機の貸付けを的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たすものについては、事業基準を満たすものとする。
ロ 実体基準及び管理支配基準
 保険業法に相当する本店所在地国の法令の規定による免許を受けて保険業を営む一定の外国関係会社(以下「保険委託者」という。)の実体基準及び管理支配基準の判定について、その外国関係会社のその免許の申請等の際にその保険業に関する業務を委託するものとして申請等をされた者で一定の要件を満たすもの(以下「保険受託者」という。)が実体基準又は管理支配基準を満たしている場合には、その外国関係会社は実体基準又は管理支配基準を満たすものとする。
ハ 所在地国基準
 製造業を主たる事業とする外国関係会社のうち、本店所在地国において製造における重要な業務を通じて製造に主体的に関与していると認められるものの所在地国基準の判定方法について、所要の整備を行う。
ニ 非関連者基準
(イ)非関連者との間で行う取引の対象となる資産、役務その他のものが、関連者に移転又は提供されることがあらかじめ定まっている場合には、その非関連者との間の取引は、関連者との間で行われたものとみなして非関連者基準の判定を行う等の見直しを行う。
(ロ)保険業を主たる事業とする外国関係会社が保険受託者に該当する場合における非関連者基準の判定について、その外国関係会社がその外国関係会社に係る保険委託者との間で行う取引は関連者取引に該当しないものとする。
(ハ)航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社については、非関連者基準を適用することとする。
ホ 経済活動基準を満たすことを明らかにする書類等の提出等がない場合の推定
 国税当局の当該職員が内国法人にその外国関係会社が経済活動基準を満たすことを明らかにする書類等の提出等を求めた場合において、期限までにその提出等がないときは、その外国関係会社は経済活動基準を満たさないものと推定する。
② 適用対象金額の計算
 適用対象金額から控除する受取配当に係る持分割合要件(25%以上)について、主たる事業が原油、石油ガス、可燃性天然ガス又は石炭(以下「化石燃料」という。)を採取する事業(その採取した化石燃料に密接に関連する事業を含む。)である外国法人でわが国が締結した租税条約の相手国に化石燃料を採取する場所を有するものから受ける配当等にあっては、10%以上とする。
③ 適用免除
 外国関係会社の当該事業年度の所得に対して課される租税の額のその所得の金額に対する割合(以下「租税負担割合」という。)が20%以上である場合には、会社単位の合算課税の適用を免除する。
(3)一定所得の部分合算課税制度
① 部分合算課税の対象所得の範囲
 部分合算課税の対象となる所得は、次のとおりとする。
イ 利子
(注)次の利子については、対象から除外する。
(イ)本店所在地国においてその役員又は使用人が金銭の貸付け等を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たす外国関係会社が関連者等に対して行う金銭の貸付けによって得る利子
(ロ)上記(イ)の要件を満たす外国関係会社の関連者等である他の外国関係会社が上記(イ)の要件を満たす外国関係会社に対して行う金銭の貸付けによって得る利子
(ハ)本店所在地国の法令に準拠して貸金業を営む外国関係会社で、本店所在地国においてその役員又は使用人が貸金業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たすものが金銭の貸付けによって得る利子
(ニ)外国関係会社が行う事業に係る業務の通常の過程で得る預金利子
ロ 配当等
(注)持分割合25%以上等の要件を満たす法人から受ける配当等(その支払を行う法人において損金算入される配当等を除くものとし、主たる事業が化石燃料を採取する事業(その採取した化石燃料に密接に関連する事業を含む。)である外国法人でわが国が締結した租税条約の相手国に化石燃料を採取する場所を有するものから受ける配当等にあっては、持分割合要件を10%以上とする。)については、対象から除外する。
ハ 有価証券の貸付けの対価
ニ 有価証券の譲渡損益
(注)持分割合25%以上等の要件を満たす法人の株式等に係る譲渡損益については、対象から除外する。
ホ デリバティブ取引損益
(注)次のデリバティブ取引損益については、対象から除外する。
(イ)ヘッジ目的で行われることが明らかなデリバティブ取引等に係る損益
(ロ)本店所在地国の法令に準拠して商品先物取引業又はこれに準ずる事業を行う外国関係会社で、本店所在地国においてその役員又は使用人がこれらの事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たすものが行うこれらの事業から生ずる商品先物取引等に係る損益
へ 外国為替差損益
(注)外国関係会社が行う事業(外国為替相場の変動によって生ずる差額を得ることを目的とする事業を除く。)に係る業務の通常の過程で生ずる外国為替差損益については、対象から除外する。
ト 上記イからへまでに掲げる所得を生ずべき資産から生ずるこれらの所得に類する所得
(注)ヘッジ目的で行われることが明らかな取引に係る損益については、対象から除外する。
チ 有形固定資産の貸付けの対価
(注)次の対価については、対象から除外する。
(イ)主として本店所在地国において使用に供される有形固定資産等の貸付けによる対価
(ロ)本店所在地国においてその役員又は使用人が有形固定資産の貸付けを的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たす外国関係会社が行う有形固定資産の貸付けによる対価
リ 無形資産等の使用料
(注)外国関係会社が自己開発した無形資産等及び外国関係会社が相当の対価を支払って取得し、又は使用許諾を得た上で一定の事業の用に供している無形資産等に係る使用料については、対象から除外する。
ヌ 無形資産等の譲渡損益
(注)外国関係会社が自己開発した無形資産等及び外国関係会社が相当の対価を支払って取得し、又は使用許諾を得た上で一定の事業の用に供している無形資産等に係る譲渡損益については、対象から除外する。
ル 外国関係会社の当該事業年度の利益の額から上記イからヌまでに掲げる所得種類の所得の金額及び所得控除額を控除した残額に相当する所得
(注)上記の所得控除額は、外国関係会社の総資産の額、減価償却累計額及び人件費の額の合計額に50%を乗じて計算した金額とする。
② 部分適用対象金額の計算
 部分合算課税の対象となる金額は、外国関係会社の当該事業年度の次に掲げる金額の合計額とする。
イ 上記①イからハまで、チ、リ及びルに掲げる所得の金額の合計額
ロ 上記①ニからトまで及びヌに掲げる所得の金額の合計額(当該合計額が零を下回る場合には、零)
③ 部分適用対象金額に係る欠損金の繰越控除
 外国関係会社の当該事業年度開始の日前7年以内に開始した各事業年度において生じた上記②ロに掲げる金額が零を下回る部分の金額に相当する金額がある場合には、当該事業年度の上記②ロに掲げる金額の計算上、控除する。
④ 金融子会社等に係る部分合算課税
イ 部分合算課税の対象所得の範囲
 本店所在地国の法令に準拠して銀行業、金融商品取引業又は保険業を営む外国関係会社で、本店所在地国においてその役員又は使用人がこれらの事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たすもの(以下「金融子会社等」という。)について、部分合算課税の対象となる所得は、上記①にかかわらず、次のとおりとする。
(イ)金融子会社等の異常な水準の資本に係る所得
(ロ)上記①チに掲げる所得
(ハ)上記①リに掲げる所得
(ニ)上記①ヌに掲げる所得
(ホ)上記①ルに掲げる所得
ロ 部分適用対象金額の計算
 部分合算課税の対象となる金額は、上記②にかかわらず、金融子会社等の当該事業年度の次に掲げる金額のうちいずれか大きい金額とする。
(イ)上記イ(イ)に掲げる所得の金額
(ロ)上記イ(ロ)、(ハ)及び(ホ)に掲げる所得の金額並びに上記イ(ニ)に掲げる所得の金額(当該金額が零を下回る場合には、零)の合計額
ハ 部分適用対象金額に係る欠損金の繰越控除
 金融子会社等の当該事業年度開始の日前7年以内に開始した各事業年度において生じた上記イ(ニ)に掲げる所得の金額が零を下回る部分の金額に相当する金額がある場合には、当該事業年度の上記イ(ニ)に掲げる所得の金額の計算上、控除する。
⑤ 適用免除
イ 外国関係会社の当該事業年度の租税負担割合が20%以上である場合には、部分合算課税の適用を免除する。
ロ 部分合算課税に係る少額免除基準のうち金額基準を2,000万円以下(現行:1,000万円以下)に引き上げる。
ハ 部分合算課税の少額免除に係る適用要件について、少額免除基準を満たす旨を記載した書面の確定申告書への添付要件及びその適用があることを明らかにする資料等の保存要件を廃止する。
(4)特定の外国関係会社に係る会社単位の合算課税制度
① 合算対象となる外国関係会社
 外国関係会社のうち次に掲げるものについて、会社単位の合算課税の対象とする。
イ 次に掲げる要件のいずれも満たさない外国関係会社
(イ)その主たる事業を行うに必要と認められる事務所等の固定施設を有している(保険業を営む一定の外国関係会社にあっては、これらを有している場合と同様の状況にある場合を含む。)こと。
(ロ)その本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っている(保険業を営む一定の外国関係会社にあっては、これらを自ら行っている場合と同様の状況にある場合を含む。)こと。
(注)国税当局の当該職員が内国法人にその外国関係会社が上記(イ)又は(ロ)の要件を満たすことを明らかにする書類等の提出等を求めた場合において、期限までにその提出等がないときは、その外国関係会社は上記(イ)又は(ロ)に掲げる要件を満たさないものと推定する。
ロ 総資産の額に対する上記(3)①イからヌまでに掲げる所得の金額の合計額の割合(金融子会社等にあっては、総資産の額に対する上記(3)④イ(イ)に掲げる所得の金額又は上記(3)④イ(ロ)から(ニ)までに掲げる所得の金額の合計額のうちいずれか大きい金額の割合)が30%を超える外国関係会社(総資産の額に対する有価証券、貸付金及び無形固定資産等の合計額の割合が50%を超える外国関係会社に限る。)
ハ 租税に関する情報の交換に非協力的な国又は地域として財務大臣が指定する国又は地域に本店等を有する外国関係会社
② 合算対象所得の計算
 合算対象所得の計算は、上記(2)の会社単位の合算課税制度における適用対象金額の計算と同様とする。
③ 適用免除
 上記①イからハまでに掲げる外国関係会社の当該事業年度の租税負担割合が30%以上である場合には、会社単位の合算課税の適用を免除する。
(5)外国関係会社に係る財務諸表等の添付
 内国法人は、次に掲げる外国関係会社に係る財務諸表等を確定申告書に添付しなければならない。
① 租税負担割合が20%未満の外国関係会社
② 租税負担割合が30%未満の外国関係会社(上記(4)①イからハまでに掲げる外国関係会社に限る。)
(6)二重課税調整
① 内国法人が上記(2)から(4)までの合算課税の適用を受ける場合には、外国関係会社に対して課されるわが国の所得税の額、復興特別所得税の額及び法人税の額の合計額のうち上記(2)から(4)までの合算課税制度により合算対象とされた金額に対応する部分の金額に相当する金額について、その内国法人の法人税の額から控除する。
② 投資法人等が外国関係会社から受ける配当等の額のうち、その投資法人等の配当等を受ける日を含む事業年度及びその事業年度開始の日前10年以内に開始した各事業年度においてその外国関係会社につき合算対象とされた金額の合計額に達するまでの金額は、その投資法人等の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない。
(7)その他
 上記の見直しのほか、内国法人に係る外国子会社合算税制について所要の措置を講ずる。
(8)関連制度の整備
 居住者に係る外国子会社合算税制、特殊関係株主等である内国法人等に係る特定外国法人に係る所得の課税の特例等の関連制度につき、上記の見直しを踏まえた所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用する。
(地方税)
 個人住民税、法人住民税及び事業税について、内国法人の特定外国子会社等に係る所得の課税の特例(いわゆる「外国子会社合算税制」)等の総合的見直しに関する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用する。
2 非永住者の課税所得の範囲の見直し
(国 税)
 非永住者の課税所得の範囲から、所得税法に規定する有価証券(過去10年以内において非永住者であった期間内に取得したもの(平成29年4月1日以後に取得したものに限る。)を除く。)で次に掲げるものの譲渡により生ずる所得(国内において支払われ、又は国外から送金されたものを除く。)を除外する。
(1)外国金融商品取引所において譲渡されるもの
(2)国外において金融商品取引業等を営む者への売委託により国外において譲渡されるもの
(3)国外において金融商品取引業等を営む者の国外営業所等に開設された有価証券の保管等に係る口座に受け入れられているもの
(注)上記の改正は、平成29年4月1日以後に行う有価証券の譲渡について適用する。
(地方税)
 非永住者の課税所得の範囲から、所得税法に規定する有価証券(過去10年以内において非永住者であった期間内に取得したもの(平成29年4月1日以後に取得したものに限る。)を除く。)で次に掲げるものの譲渡により生ずる所得(国内において支払われ、又は国外から送金されたものを除く。)を除外する。
(1)外国金融商品取引所において譲渡されるもの
(2)国外において金融商品取引業等を営む者への売委託により国外において譲渡されるもの
(3)国外において金融商品取引業等を営む者の国外営業所等に開設された有価証券の保管等に係る口座に受け入れられているもの
(注)上記の改正は、平成29年4月1日以後に行う有価証券の譲渡について適用する。
3 外国金融機関等の債券現先取引等に係る利子等の課税の特例の拡充
(国 税)
(1)特定金融機関等の範囲に、主としてコール資金の貸付け又はその貸借の媒介を業として行う者のうち一定のもの及び金融商品取引清算機関を加える。
(2)外国金融機関等の範囲に、金融商品債務引受業を営む外国法人を加える。
(3)非課税の対象となる所得の範囲に、外国金融機関等以外の外国法人(特定金融機関等の関連者及び租税条約等の相手国等以外の国又は地域の法人を除く。)が特定金融機関等との間で振替国債を用いて行う取引期間3月以内等の要件を満たす債券現先取引で、平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に開始するものにつき支払を受ける利子及び貸借料等を加える。
(注)上記の「関連者」とは、特定金融機関等との間に直接・間接の持分割合50%以上の関係にある者及び実質支配・被支配関係にある者等をいう。
(4)非課税の対象となる所得の範囲の拡充に伴い、非課税の適用手続等について所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、(3)を除き、平成29年4月1日以後に開始する債券現先取引等につき支払を受ける利子及び貸借料等について適用する。
4 100%子法人株式の現物分配に係る組織再編税制の見直しへの対応(再掲)
(国 税)
 内国法人である現物分配法人の100%子法人株式の全部を分配する現物分配により子法人株式の交付を受けた非居住者又は外国法人株主(以下「非居住者等株主」という。)について、分割型分割と同様に取り扱うための措置として、次の措置を講ずる。
(1)事業譲渡類似の株式等の譲渡益課税について、子法人株式その他の資産が交付される場合の適用要件の整備を行う。
(2)内国法人である現物分配法人の非居住者等株主の持株数に応じて外国子法人株式のみが交付される場合には、旧株(内国法人である現物分配法人の株式)の譲渡益(わが国で課税の対象となる国内源泉所得に該当するものに限る。)に対して課税する。
 ただし、この取扱いは、非居住者等株主がその有する恒久的施設において旧株を管理する場合には、適用しない。この場合、非居住者等株主がその交付を受けた外国子法人株式をその交付の時にその恒久的施設において管理しなくなったときは、その交付の時に非居住者等株主の恒久的施設と事業場等又は本店等との間の内部取引があったものとして、恒久的施設帰属所得に係る所得の金額を計算する。
5 租税条約の相互協議手続の改正に伴う国内法の整備
(国 税)
(1)相互協議の申立手続について、租税条約の相手国等における居住者が国税庁長官に対し相互協議の申立てをすることができることとする。
(2)仲裁の要請手続について、租税条約の相手国等の権限ある当局に対し相互協議の申立てをした者が国税庁長官に対し仲裁の要請をすることができることとする。
(3)国外関連者との取引に係る課税の特例等に係る納税猶予制度について所要の措置を講ずる。
(地方税)
個人住民税、法人住民税及び事業税について、租税条約の相互協議手続の改正に伴う国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。

六 納税環境整備
1 国税犯則調査手続等の見直し
(国 税)
 国税犯則調査手続について、次の見直しを行う。
(1)電磁的記録に係る証拠収集手続の整備
① 電磁的記録に係る記録媒体の差押えの執行方法の整備
 差し押さえるべき物件が記録媒体であるときは、その差押えに代えて、当該記録媒体に記録された電磁的記録を他の記録媒体に複写、印刷又は移転の上、当該他の記録媒体を差し押さえることができることとする。
② 接続サーバ保管の自己作成データ等の差押えの整備
 差し押さえるべき物件が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であって、当該電子計算機で作成等をした電磁的記録等を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機等に複写した上、当該電子計算機等を差し押さえることができることとする。
③ 記録命令付差押えの整備
 電磁的記録の保管者等に命じて、必要な電磁的記録を記録媒体に記録又は印刷させた上、当該記録媒体を差し押さえることができることとする。
④ 差押え等を受ける者への協力要請の整備
 差し押さえるべき物件等が電磁的記録に係る記録媒体であるときは、差押え等を受ける者に対し、電子計算機の操作その他の必要な協力を求めることができることとする。
⑤ 通信履歴の電磁的記録の保全要請の整備
 差押え又は記録命令付差押えをするため必要があるときは、通信事業者等に対し、通信履歴の電磁的記録について、30日(特に必要があって延長する場合には、通じて60日)を超えない期間を定めて、消去しないよう求めること(この場合において、必要があるときは、みだりにこれらに関する事項を漏らさないよう求めること)ができることとする。
(2)関税法に定める犯則調査手続等を踏まえた国税犯則調査手続の整備
① 遺留物の検査・領置の整備
 犯則嫌疑者等が置き去った物件を検査し、又は領置することができることとする。
② 郵便物等の差押えの整備
 許可状の交付を受けて、通信事務取扱者が保管等をする郵便物等について差し押さえることができることとし、その差押えをした場合には、その旨を発信人又は受信人に通知することとする。
③ 臨検等の夜間執行の整備
 許可状に夜間でも執行することができる旨の記載がある場合には、日没後においても臨検等を開始することができることとする。
④ 領置・差押物件を還付できない場合の手続の整備
 領置・差押物件の所有者が所在不明等の事由により、当該物件を還付することができない場合には、その旨を公告することとした上、当該公告の日から6月を経過しても還付請求がないときは、当該物件は国庫に帰属することとする。
⑤ 管轄区域外における職務執行の整備
 犯則事件を調査するため必要があるときは、所属する国税局又は税務署の管轄区域外においても、その職務を執行することができることとする。
⑥ その他国税犯則調査における具体的な手続について、次の事項につき整備を行うこととする。
イ 許可状請求の手続
 許可状を請求する場合には、犯則事件が存在すると認められる資料を提供しなければならないこととする。
ロ 許可状の記載事項
 許可状について、臨検すべき物件、捜索すべき場所、有効期間経過後は執行に着手することができず許可状は返却しなければならない旨及び交付年月日をその記載事項として法令上明確化するとともに、犯則事実に代えて、罪名を記載することとする。
ハ 許可状の提示
 臨検、捜索又は差押えの許可状は、これらの処分を受ける者に提示しなければならないこととする。
ニ 身分証明書の提示
 質問、検査等をする場合に携帯する身分証明書について、関係者の請求に応じて、提示しなければならないこととする。
ホ 臨検等における立会い
 住居の所有者等の立会いを必要とする処分の範囲に臨検及び差押えを、住居の所有者等を立ち会わせることができない場合の代替的な立会人の範囲に都道府県職員を、それぞれ加えることとする。また、国税徴収手続における代替的立会人の範囲についても、同様の整備を行うこととする。
ヘ 領置・差押目録の謄本交付等
 領置又は差押えをしたときは、その目録を作成し、所有者等にその謄本を交付しなければならないこととするとともに、捜索をした場合において証拠物又は没収すべき物件がないときは、捜索を受けた者の請求に応じて、その旨の証明書を交付しなければならないこととする。
ト 鑑定、通訳又は翻訳の嘱託
 犯則事件を調査するため必要があるときは、鑑定、通訳又は翻訳を嘱託することができることを法令上明確化し、鑑定の嘱託を受けた者は、裁判官の許可を受けて、鑑定に係る物件を破壊することができることとする。
チ 質問に係る調書の作成手続
 質問に係る調書については、質問を受けた者に閲覧又は読み聞かせ、内容の変更の申立てがあるときは、その陳述を調書に記載しなければならないこととする。
リ 調査のための出頭要請
 犯則事件を調査するため必要があるときは、犯則嫌疑者等に対して出頭を求めることができることを法令上明確化する。
ヌ 執行を中止する場合の処分
 許可状の執行を中止する場合には、執行が終わるまでその場所を閉鎖し、又は看守者を置くことができることを法令上明確化する。
⑦ 間接国税に係る犯則調査手続の整備
イ 通告処分の対象範囲の見直し
 申告納税方式の間接国税について、そのほ脱犯及び受還付犯を通告処分の対象から除外するとともに、重加算税の対象とし、加えて取引先に対する質問検査権限を整備する。
ロ 告発が訴訟条件であることの明確化
 通告処分の対象となる犯則事件については、国税局長等の告発が訴訟条件であることを法令上明確化する。
ハ 瑕疵ある通告処分に対する更正手続の整備
 通告処分に計算違い等の明白な誤りがあるときは、職権で通告処分を更正することができることとする。
ニ 通告処分による公訴時効の整備
 通告処分による公訴時効について、停止制度(現行:中断制度)に改めた上で、通告から20日を経過した時からその進行を始めることとする。
ホ 犯則事件に係る検査拒否に対する罰則の廃止
 間接国税に関する犯則事件に係る検査拒否に対する罰則を廃止する。
(3)法律の現代語化等の整備等
① 法律の現代語化等の整備
 国税犯則調査手続に係る規定について、平仮名・口語体表記に改める等の現代語化を行うとともに、国税通則法に編入(国税犯則取締法は廃止)をする。
② 租税条約等の相手国等への情報提供のための調査手続に関する規定の整備
 国税犯則調査手続の見直しに伴い、租税条約等の相手国等から犯則事件の調査に必要な情報の提供要請があった場合における租税条約等の相手国等への情報提供のための調査手続についても、同様の見直しを行うこととする。
③ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成30年4月1日から施行することとし、上記(2)⑦の改正は、同日以後にした違反行為について適用する。
(地方税)
 地方税犯則調査手続について、次の見直しを行う。
(1)電磁的記録に係る証拠収集手続の整備
① 電磁的記録に係る記録媒体の差押えの執行方法の整備
 差し押さえるべき物件が記録媒体であるときは、その差押えに代えて、当該記録媒体に記録された電磁的記録を他の記録媒体に複写、印刷又は移転の上、当該他の記録媒体を差し押さえることができることとする。
② 接続サーバ保管の自己作成データ等の差押えの整備
 差し押さえるべき物件が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であって、当該電子計算機で作成等をした電磁的記録等を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機等に複写した上、当該電子計算機等を差し押さえることができることとする。
③ 記録命令付差押えの整備
 電磁的記録の保管者等に命じて、必要な電磁的記録を記録媒体に記録又は印刷させた上、当該記録媒体を差し押さえることができることとする。
④ 差押え等を受ける者への協力要請の整備
 差し押さえるべき物件等が電磁的記録に係る記録媒体であるときは、差押え等を受ける者に対し、電子計算機の操作その他の必要な協力を求めることができることとする。
⑤ 通信履歴の電磁的記録の保全要請の整備
 差押え又は記録命令付差押えをするため必要があるときは、通信事業者等に対し、通信履歴の電磁的記録について、30日(特に必要があって延長する場合には、通じて60日)を超えない期間を定めて、消去しないよう求めること(この場合において、必要があるときは、みだりにこれらに関する事項を漏らさないよう求めること)ができることとする。
(2)関税法に定める犯則調査手続等を踏まえた地方税犯則調査手続の整備
① 遺留物の検査・領置の整備
 犯則嫌疑者等が置き去った物件を検査し、又は領置することができることとする。
② 郵便物等の差押えの整備
 許可状の交付を受けて、通信事務取扱者が保管等をする郵便物等について差し押さえることができることとし、その差押えをした場合には、その旨を発信人又は受信人に通知することとする。
③ 臨検等の夜間執行の整備
 許可状に夜間でも執行することができる旨の記載がある場合には、日没後においても臨検等を開始することができることとする。
④ 領置・差押物件を還付できない場合の手続の整備
 領置・差押物件の所有者が所在不明等の事由により、当該物件を還付することができない場合には、その旨を公告することとした上、当該公告の日から6月を経過しても還付請求がないときは、当該物件は当該地方団体に帰属することとする。
⑤ その他地方税犯則調査における具体的な手続について、次の事項につき整備を行うこととする。
イ 許可状請求の手続
 許可状を請求する場合には、犯則事件が存在すると認められる資料を提供しなければならないこととする。
ロ 許可状の記載事項
 許可状について、臨検すべき物件、捜索すべき場所、有効期間経過後は執行に着手することができず許可状は返却しなければならない旨及び交付年月日をその記載事項として法令上明確化するとともに、犯則事実に代えて、罪名を記載することとする。
ハ 許可状の提示
 臨検、捜索又は差押えの許可状は、これらの処分を受ける者に提示しなければならないこととする。
ニ 身分証明書の提示
 質問、検査等をする場合に携帯する身分証明書について、関係者の請求に応じて、提示しなければならないこととする。
ホ 臨検等における立会い
 住居の所有者等の立会いを必要とする処分の範囲に臨検及び差押えを、住居の所有者等を立ち会わせることができない場合の代替的な立会人の範囲に都道府県職員を、それぞれ加えることとする。また、地方税徴収手続における代替的立会人の範囲についても、同様とする。
ヘ 領置・差押目録の謄本交付等
 領置又は差押えをしたときは、その目録を作成し、所有者等にその謄本を交付しなければならないこととするとともに、捜索をした場合において証拠物又は没収すべき物件がないときは、捜索を受けた者の請求に応じて、その旨の証明書を交付しなければならないこととする。
ト 鑑定、通訳又は翻訳の嘱託
 犯則事件を調査するため必要があるときは、鑑定、通訳又は翻訳を嘱託することができることを法令上明確化し、鑑定の嘱託を受けた者は、裁判官の許可を受けて、鑑定に係る物件を破壊することができることとする。
チ 質問に係る調書の作成手続
 質問に係る調書については、質問を受けた者に閲覧又は読み聞かせ、内容の変更の申立てがあるときは、その陳述を調書に記載しなければならないこととする。
リ 調査のための出頭要請
 犯則事件を調査するため必要があるときは、犯則嫌疑者等に対して出頭を求めることができることを法令上明確化する。
ヌ 執行を中止する場合の処分
 許可状の執行を中止する場合には、執行が終わるまでその場所を閉鎖し、又は看守者を置くことができることを法令上明確化する。
⑥ 間接地方税(仮称)に係る犯則調査手続の整備
イ 告発が訴訟条件であることの明確化
 通告処分が対象となる犯則事件については、地方団体の長等の告発が訴訟条件であることを法令上明確化する。
ロ 瑕疵ある通告処分に対する更正手続の整備
 通告処分に計算違い等の明白な誤りがあるときは、職権で通告処分を更正することができることとする。
ハ 通告処分による公訴時効の整備
 通告処分による公訴時効について、停止制度(現行:中断制度)に改めた上で、通告から20日を経過した時からその進行を始めることとする。
ニ 犯則事件に係る検査拒否に対する罰則の廃止
 間接国税に関する犯則事件とされている地方税に関する犯則事件に係る検査拒否に対する罰則を廃止する。
(3)その他の規定の整備等
① 全ての税目を地方税犯則調査手続の対象とする。
② 間接地方税(仮称)は、間接国税として現行取り扱われている税目及び一定の法定外普通税・目的税とする。
③ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成30年4月1日から施行することとし、上記(2)⑥の改正は、同日以後にした違反行為について適用する。
2 災害等による期限延長制度における延長手続の拡充
(国 税)
 災害等による期限延長制度について、国税庁長官は、災害等のやむを得ない理由により、納税者の多数にわたり期限までに申告等をすることができないと認める場合には、その対象者の範囲及び期日を指定して、当該期限を延長することができることとする。
(注)上記の改正は、平成29年4月1日以後に生ずる災害等のやむを得ない理由について適用する。
3 その他
(国 税)
(1)口座振替納付に係る納付書の送付等について、次のとおり電子化を促進するための措置を講ずる。
① 口座振替納付に係る税務署長と金融機関間の納付書の送付等について、電子情報処理組織を使用等して行うことができることとする。
(注)上記の改正は、平成30年1月1日以後に納付する国税について適用する。
② その他所要の措置を講ずる。
(2)無限責任社員の第二次納税義務の対象となる社員の範囲に、士業法人の社員を加える。
(注1)上記の「士業法人」とは、税理士法人、弁護士法人、監査法人、特許業務法人、司法書士法人、行政書士法人、社会保険労務士法人、土地家屋調査士法人及び外国法事務弁護士法人をいう。
(注2)上記の改正は、平成30年1月1日以後に滞納となった国税について適用する。
(3)独立行政法人日本学生支援機構法の改正を前提に、同法に基づき学資として新たに支給されることとなる資金について、国税の滞納処分による差押えを禁止することとする。
(地方税)
(1)無限責任社員の第二次納税義務の対象となる社員の範囲に、士業法人の社員を加える。
(注1)上記の「士業法人」とは、税理士法人、弁護士法人、監査法人、特許業務法人、司法書士法人、行政書士法人、社会保険労務士法人、土地家屋調査士法人及び外国法事務弁護士法人をいう。
(注2)上記の改正は、平成30年1月1日以後に滞納となった地方税について適用する。
(2)独立行政法人日本学生支援機構法の改正を前提に、同法に基づき学資として新たに支給されることとなる資金について、地方税の滞納処分による差押えを禁止することとする。

七 関税
1 暫定税率等の適用期限の延長等
(1)平成29年3月31日に適用期限の到来する暫定税率(418品目)について、平成30年3月31日まで適用期限の延長を行う。
(2)平成29年3月31日に適用期限の到来する特別緊急関税制度及び牛肉・豚肉に係る関税の緊急措置(牛肉の発動基準数量の算定基礎の特例を含む。)について、平成30年3月31日まで適用期限の延長を行う。
(3)平成29年3月31日に適用期限の到来する沖縄特定免税店制度及び選択課税制度について、それぞれ平成32年3月31日及び平成31年3月31日まで適用期限の延長を行う。
(4)平成29年3月31日に適用期限の到来する航空機部分品等の免税制度及び加工再輸入減税制度について、平成32年3月31日まで適用期限の延長等を行う。
2 個別品目の関税率等の見直し
(1)子ども・子育て支援法による企業主導型保育事業の施行に伴い、給食用脱脂粉乳に対する関税軽減措置の対象に、同事業に係る保育施設を加える。
(2)発泡酒、蒸留酒、農林漁業用A重油、パラ-ニトロクロロベンゼン、玩具等の基本税率を無税とする。
(3)その他所要の措置を講ずる。
3 特恵関税制度の見直し
 全面適用除外措置の対象国の基準に、「高中所得国」以上に該当すること等を追加する等の見直しを行う。
4 特殊関税制度の見直し等
 不当廉売関税等の課税の求め(申請)に係る要件の見直し等を行う。
5 事前報告制度等の拡充
 旅客及び航空貨物に係る事前報告制度等を拡充する。
6 犯則調査手続に係る規定の整備
 国税犯則調査手続の見直しを踏まえ、関税法上の犯則調査手続においても、電磁的記録に係る証拠収集手続等の整備を行う。
7 その他
(1)入国旅客が到着時免税店において購入して輸入する外国貨物について、携帯品免税制度の対象とする。
(2)税関長の承認を受けた製造工場において製造される配合飼料の原料品の対象を拡充する。

第三 検討事項

1 年金課税については、少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する中で、世代間及び世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年金、公的年金を補完する企業年金を始めとした各種年金制度間のバランス、貯蓄商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランス等に留意して、年金制度改革の方向性も踏まえつつ、拠出・運用・給付を通じて課税のあり方を総合的に検討する。

2 デリバティブを含む金融所得課税の更なる一体化については、投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境を整備し、証券・金融、商品を一括して取り扱う総合取引所の実現にも資する観点から、多様なスキームによる意図的な租税回避行為を防止するための実効性ある方策の必要性を踏まえ、検討する。

3 小規模企業等に係る税制のあり方については、個人事業主、同族会社、給与所得者の課税のバランス等にも配慮しつつ、個人と法人成り企業に対する課税のバランスを図るための外国の制度も参考に、今後の個人所得課税改革において給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討する。

4 寡婦控除については、家族のあり方にも関わる事柄であることや他の控除との関係にも留意しつつ、制度の趣旨も踏まえながら、所得税の諸控除のあり方の議論の中で検討を行う。

5 個人事業者の事業承継に係る税制上の措置については、現行制度上、事業用の宅地について特例措置があり、既に相続税負担の大幅な軽減が図られていること、事業用資産以外の資産を持つ者との公平性の観点に留意する必要があること、法人は株式等が散逸して事業の円滑な継続が困難になるという特別の事情により特例が認められているのに対し、個人事業者の事業承継に当たっては事業継続に不可欠な事業用資産の範囲を明確にするとともに、その承継の円滑化を支援するための枠組みが必要であること等の問題があることに留意し、既存の特例措置のあり方を含め、引き続き総合的に検討する。

6 都市農業については、「都市農業振興基本計画」(平成28年5月13日閣議決定)に基づき、都市農業のための利用が継続される土地に関し、市街化区域外の農地とのバランスに配慮しつつ土地利用規制等の措置が検討されることを踏まえ、生産緑地が貸借された場合の相続税の納税猶予制度の適用など必要な税制上の措置を検討し、早期に結論を得る。

7 日本郵便株式会社等に係る税制上の措置については、郵政事業のユニバーサルサービスの安定的確保の観点から、経営基盤の強化のために必要な措置の実現に向けた検討とともに、引き続き所要の検討を行う。

8 医療に係る消費税等の税制のあり方については、消費税率が10%に引き上げられるまでに、医療機関の仕入れ税額の負担及び患者等の負担に十分に配慮し、関係者の負担の公平性、透明性を確保しつつ抜本的な解決に向けて適切な措置を講ずることができるよう、実態の正確な把握を行いつつ、医療保険制度における手当のあり方の検討等とあわせて、医療関係者、保険者等の意見、特に高額な設備投資にかかる負担が大きいとの指摘等も踏まえ、総合的に検討し、結論を得る。

9 国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税のあり方については、平成27年度税制改正の実施状況、国際機関等の議論、欧州諸国等における仕向地主義に向けた対応、各種取引の実態等を踏まえつつ、課税の対象とすべき取引の範囲及び適正な課税を確保するための方策について引き続き検討を行う。

10 将来、たばこ税の負担水準を見直す際には、財政物資としてのたばこの基本的性格、葉たばこ農家・たばこ小売店等への影響、市場・産業への中長期的な影響、国民の健康増進の観点などを総合的に勘案し、予見可能性の確保に配意しつつ、検討する。

11 原料用石油製品等に係る免税・還付措置の本則化については、引き続き検討する。

12 事業税における社会保険診療報酬に係る実質的非課税措置及び医療法人に対する軽減税率については、税負担の公平性を図る観点や、地域医療の確保を図る観点から、そのあり方について検討する。

13 現在、電気供給業、ガス供給業及び保険業については、収入金額による外形標準課税が行われている。今後、これらの法人の地方税体系全体における位置付けや個々の地方公共団体の税収に与える影響等も考慮しつつ、これらの法人に対する課税の枠組みに、付加価値額及び資本金等の額による外形標準課税を組み入れていくことについて、引き続き検討する。また、これらの業に係る中小法人については、近年における事業環境や競争状況の変化を踏まえつつ、課税のあり方について検討を行う。

14 地方消費税の清算基準については、平成30年度税制改正に向けて、地方消費税の税収を最終消費地の都道府県により適切に帰属させるため、地方公共団体の意見を踏まえつつ、統計データの利用方法等の見直しを進めるとともに、必要に応じ人口の比率を高めるなど、抜本的な方策を検討し、結論を得る。

15 ゴルフ場利用税については、今後長期的に検討する。

16 現在、政府において、民法における成年年齢を20歳から18歳に引き下げるとともに、他法令における行為能力や管理能力に着目した年齢要件を引き下げる方向で法改正に向けた作業を進めているところである。税制上の年齢要件については、対象者の行為能力や管理能力に着目して設けられているものであることから、民法に合わせて要件を18歳に引き下げることを基本として、法律案の内容を踏まえ実務的な観点等から検討を行い、結論を得る。

【補論】今後の国際課税のあり方についての基本的考え方
1 問題意識
 グローバル化の進んだ現代において、国際的なつながりを無視して経済は成り立たない。アベノミクスの取組みにより育ちつつある経済好循環の萌芽を持続的な成長へとつなげるためにも、日本企業による健全な海外展開は不可欠である。これを促進することで、海外成長市場の果実を日本国内の成長へ取り込んでいかなければならない。
 他方で、経済のグローバル化は税制にとってのリスクも伴う。本年4月に明らかになった「パナマ文書」等が示唆する海外への資本や財産の移転等を通じた租税回避は、公平な競争条件や納税者の税制への信頼を揺るがす大きな問題であり、断固とした対応が必要である。
 国際課税のあり方は、このような「海外の成長の日本経済への還元」及び「国際的な脱税、租税回避への対応」のいずれの課題にも極めて重要な影響を与える。国際課税は、経済のグローバル化や経済活動の複雑化・多様化が進む中で、経済発展に貢献する健全な企業活動を支援しつつ税源を守るという、国家の基盤に関わる課題である。したがって、今後、関連の税制改正に取り組むに当たっては、グローバル経済の構造変化や日本経済の位置づけ等を踏まえた基本方針を明確にした上で、整合的・戦略的に検討することが必要である。

2 グローバル経済・日本経済の構造的変化
 今後のわが国の国際課税のあり方を考えるに当たっては、まず、背景となるグローバル経済や日本経済の構造的変化を、質と量の双方の観点から長期的・巨視的視点を持って捉えることが必要である。
 グローバル経済の様相の変化を20年という時間軸で観察すると、①新興国・途上国の経済規模や存在感の拡大、②様々な税制上の優遇措置を持つことで知られる経済規模の小さな国・地域を経由地とするクロスボーダーの直接投資の増加、③オフショアセンターへの資本蓄積及び④自国での知的財産開発の取組みと比べ多額の知的財産由来の使用料を受け取っている国の登場という四つの変化が確認できる。
 わが国と海外との資本移動についても、グローバル経済の変容と相まって、過去20年で以下のような変化が観察できる。まず、日本の対外直接投資残高は20年前の約5倍となる153兆円に、証券投資は約4倍となる410兆円にまで拡大し、現在、日本は世界における主要な資本輸出国であり、世界最大の対外純資産保有国となっている。この結果、海外から受け取る利子・配当等も過去20年で約4倍に拡大するなど、経常収支改善に大きく貢献している。なお、日本からの直接投資残高の伸びが最も大きな国は、過去20年のGDP成長が顕著な中国及び様々な税制上の優遇措置を持つことで知られるオランダとなっている。証券投資残高について見ても、アメリカに次ぐ二番目の投資先として60兆円を超える資金が投じられているケイマン諸島が存在感を高めている。知的財産については、わが国で生み出された知的財産の海外での利用増等を背景に、クロスボーダーの知的財産使用料収支が過去20年で3,400億円の支払超から世界第3位の水準である2.4兆円の受取超へと大幅に増加し、経常収支の黒字に寄与している。他方、日本の知的財産使用料の純支払額が最も多い国は、アジアの軽課税地国として知られるシンガポールとなっている。

3 今後の国際課税のあり方に関する基本的考え方
 グローバル経済や日本経済に見られる上記の構造的な変化を踏まえると、わが国の国際課税のあり方を検討するに当たって、以下の三つの視点が重要となる。
 まず、世界経済における存在感を高める新興国・途上国については、国際課税に係るルールメイキングへの関与を深めるとともに、自ら参加して決めたルールを確実に遵守させることが重要となる。自国のみを利するのではなく、決められたルールを尊重する国際協調が実現すれば、海外展開を試みる企業のビジネス展開上の不確実性が軽減されるとともに、公平な競争条件が確保される。この点、「BEPSプロジェクト」が、OECD加盟の先進国だけでなく、G20メンバーである新興国の参加も得つつわが国の主導的役割の下で進められてきたことは極めて重要である。この貴重な国際協調の潮流を着実にわが国経済や企業の利益に結びつけるべく、「BEPSプロジェクト」の合意事項の実施フェーズにおいても、わが国は引き続き、範を示しながら着実に取り組んでいく必要がある。その上で、他の国・地域による合意事項の着実かつ一貫した実施を促し、租税回避防止に向けた国際的な取組みの実効性向上をリードしていかなければならない。
 第二に、金融資産や知的財産の国境を越えた取引が量的に拡大し、質的にも多様化する中で、国際課税のルールは、資本や知識・技術の一大輸出国であるわが国の重要な制度インフラとして、日本企業の健全な海外展開促進とその果実の国内経済への還流という好循環を支え、所得収支やサービス収支の黒字拡大等を通じて、日本経済の発展に貢献できる。一方、その過程で発生する意図せぬ「副作用」にも留意しなければならない。すなわち、海外への投資や技術移転は、企業競争力の向上や投資先の市場環境の活用といった事業目的で行われるべきであり、税負担の軽減を目的とすべきではない。例えば、日本のインフラや良質な労働力を活用した研究開発という実体ある活動を通じて生み出された知的財産が、海外につくった実体のないペーパーカンパニーへと移されるという「知の国外流出」ともいえる状況が発生すれば、課税機会の喪失だけでなく、日本の知的財産の保全を阻害することになりかねない。日本経済全体にとっても、本来知的財産使用料を受け取る立場であったものから、使用料を支払う立場となることから、サービス収支の悪化を招き、日本の経済成長にとってのマイナス要因をつくる。以上を踏まえ、国際課税に関連する制度の見直しに当たっては、「グローバル企業の経済活動が行われた場所と、税が支払われるべき場所とを一致させる」との「BEPSプロジェクト」が示した考え方に則して、日本企業の健全な海外展開を支援しつつ、租税回避を効果的に抑制していくことが必要である。その際、特に知的財産に由来する経済活動の場所については、研究開発等を通じた価値創造の場所と、開発された知的財産を活用した収益事業が行われる場所という二つが想定されることに留意する必要がある。また、「経済活動が行われる場所」と「税が支払われるべき場所」とを一致させるとの「BEPSプロジェクト」が示した基本的考え方が、世界標準として定着するよう、各国に働きかけを続けることも必要である。
 第三に、オフショアセンターへの多額の資本蓄積に対しては、各国の税務当局間における情報交換ネットワークの拡大と強化等を通じて税の透明性を向上させるグローバルな取組みの実効性を高めていくことで、こうした国・地域が租税回避等の温床とならないようにしなければならない。
 このような視点から、今後、国際課税のあり方を考えるに当たっては、①健全な企業活動を支えるグローバルに公平な競争条件の確立(「BEPSプロジェクト」の合意事項の着実な実施に係る国際協調の促進)、②健全な海外展開を歪める誘引の除去(経済活動や価値創造の場と税が支払われるべき場所の一致)及び③税に関する透明性の向上に向けた国際的な協調という三つの基本方針の下で臨む。これにより、健全な企業活動を促進していく必要がある。

4 個別の制度改革に当たっての視点
(1)これまでの取組み
 わが国は、これまでも、国際的な議論の動向や先進国における近年の傾向を踏まえ、「日本企業の積極的な海外展開支援を通じた国際競争力の強化」と「租税回避への対応」という二つの政策的要請のバランスを取りながら、国際課税に関する制度改正を実施してきた。これは、おおむね、上記3の基本方針に沿ったものといえる。
 具体的には、平成21年度税制改正で「外国子会社配当益金不算入制度」を導入し、日本企業による積極的な海外展開と、その果実の日本経済への還流を支えてきた。この制度により、日本企業の海外子会社が得た利益に対する課税は進出先国の課税で完結し、日本の親会社に配当してもしなくても日本では基本的に課税されない。このため日本企業は、事業活動の場所や配当戦略を自由に決定できる。
 行き過ぎた国際的な租税回避への対抗手段としては、平成24年度税制改正で「過大支払利子税制」(所得金額に比して過大な利子を関連者間で支払うことを通じた租税回避を防止)を導入した。更に、「BEPSプロジェクト」で各国が協調して導入することとされたことを受け、多国籍企業のグローバルな活動状況に関する報告書(所得・資産・従業員数・税額等の項目を国別に集計する「国別報告書」等)の国税当局への提供制度を平成28年度税制改正で導入した。
 また、税に関する透明性向上に向けた国際協調の取組みとしては、国外の金融口座を利用した租税回避に効果的に対応するため、オフショアセンターを含む100を超える国・地域が協調し、非居住者が保有する金融機関の口座情報を自動的に交換する国際的な枠組みが合意された。わが国も平成27年度税制改正において所要の法改正を実施し、平成30年から交換を開始する。
(2)今後の取組み
 今後も引き続き、上記3の基本方針に沿った改正を着実に進めていく。特に、実施フェーズに移行した「BEPSプロジェクト」について、その合意事項の着実な実施に係る国際協調の促進は重要である。わが国としても、引き続き、税制改正並びに租税条約等の締結及び改正を通じて段階的かつ着実に合意事項を実施し、グローバルに公平な競争条件の確立を進めていく(上記3①)。また、一連の制度改革を通じて、企業と協力して、税務リスクやコンプライアンスコストが低い環境をつくるとともに、企業グループ全体の税務・財務管理や資源配分の最適化に向けた国際税務部門の体制強化やグローバルなコーポレートガバナンスの向上に向けた企業努力を後押しする。あわせて、職員の増員等を通じた国税当局の体制及び機能の向上を促す。
① 平成29年度税制改正に当たり対応する事項
 平成29年度税制改正においても、「BEPSプロジェクト」の議論を踏まえ、「外国子会社合算税制」の抜本的な改正を行う。これにより、企業の健全な海外展開を促進しつつ、公平な競争条件を損なう租税回避には従来よりも効果的に対応できるようにする。また、この改正により前述した「外国子会社配当益金不算入制度」と相まって、健全な海外展開を歪める誘引の除去(上記3②)に大きく貢献すると期待される。
 具体的には、外国子会社を通じた租税回避リスクを、子会社の租税負担割合や会社全体の事業実体の有無といった「会社の外形」によって判断するアプローチから、個々の所得の内容や稼得方法といった「所得の内容」に応じて把握するアプローチへと改める。その際、企業にとっての予見可能性に留意するとともに、租税回避に関わっていない企業の子会社に過度な事務負担が発生しないよう、所要の措置を講ずる。これにより、外国子会社の租税負担割合が一定以上であれば経済実体を伴わない所得であっても一律・自動的に合算せず申告も求めない一方、一定の航空機リース事業等、実体ある事業から得た所得であっても会社単位で合算課税してしまう場合があるという、現行制度の問題点に対処する。また、税に関する透明性向上(上記3③)に関する国際協調の観点から、透明性向上に向けた進捗が見られない国・地域に対して、他のG20諸国と足並みを揃えて「防御的措置」を講ずることができるよう、当該国・地域に所在する子会社に合算課税を発動する制度を上記の改正の一環として導入する。
② 中期的に取り組むべき事項
 今後、「移転価格税制」についても、知的財産等の無形資産を、税負担を軽減する目的で海外へと移転する行為等に対応すべく、「BEPSプロジェクト」で勧告された「所得相応性基準」の導入を含め、必要な見直しを検討する。また、「過大支払利子税制」についても、「BEPSプロジェクト」の勧告を踏まえた見直しを検討する。更に、国税当局が租税回避スキームによる税務リスクを迅速に特定し、法制面・執行面で適切に対応できるよう、その開発・販売者あるいは利用者に税務当局へのスキーム情報の報告を義務付ける「義務的開示制度」について、「BEPSプロジェクト」の最終報告書、諸外国の制度や運用実態及び租税法律主義に基づくわが国の税法体系との関係等も踏まえ、わが国での制度導入の可否を検討する。その際、国税当局が効果的かつ適時に必要な情報を入手するための最適な既存・新規制度の組み合わせも検討する。