令和2年度税制改正大綱

令和元年12月12日
自由民主党
公明党

目 次
第一 令和2年度税制改正の基本的考え方------------------------1
第二 令和2年度税制改正の具体的内容-------------------------18
 一 個人所得課税--------------------------------------18
 二 資産課税------------------------------------------49
 三 法人課税------------------------------------------60
 四 消費課税------------------------------------------81
 五 国際課税------------------------------------------87
 六 納税環境整備--------------------------------------92
 七 関税---------------------------------------------101
第三 検討事項-------------------------------------------103
【付記】連結納税制度の見直し--------------------------------105

第一 令和2年度税制改正の基本的考え方

 令和の時代において人口減少と少子高齢化が一層進む中にあっても、直面する様々な課題を克服し、豊かな日本を次の世代へと引き渡していかなければならない。このためには、社会保障をはじめとした諸制度を人生100年時代にふさわしいものへと転換するとともに、海外発の経済の下方リスクの顕在化には適切に備えつつ、Society5.0の実現に向けたイノベーションの促進など中長期的に成長していく基盤を構築することが必要である。
 イノベーションを持続的・自律的に生み出していくためには、適切なコーポレートガバナンスの下、企業自身が、その保有する内部資金や技術を有効に活用することが求められ、税制においても、こうした企業の前向きな行動を後押ししていく必要がある。このため、企業が事業革新につながるオープンイノベーションを促進する観点から、次世代のイノベーションを担うベンチャー企業への出資に係る新たな税制措置を講ずる。また、次世代の最大の資源となる「データ」を様々な分野・地域において利活用できる環境整備に向け、5G情報通信インフラの普及促進に取り組む。
 持続的な経済成長には、日本企業の健全な海外展開の促進とその果実の国内への還流という好循環も重要である。公平な競争条件を確保し、課税逃れに効果的に対応する国際課税制度はそのための重要なインフラであり、わが国は「BEPS(注)プロジェクト」においてこれまで主導的役割を果たしてきた。デジタル化を含む経済実態の変化に対し、各国がそれぞれ独自に対応していては企業にとって不確実性が増し、経済活動に負の影響を及ぼすことから、国際的な合意に基づく公平なルール作りが重要である。現在OECDを中心に議論が進められているが、わが国は引き続きこの国際的な議論を積極的にリードし、国際合意に則った制度の見直しを進める。
(注)Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転
 人生100年時代を迎え、高齢期における就労の拡大や働き方の多様化に対応し、私的年金の加入可能年齢等の引上げや、中小企業への企業年金の普及・拡大等に取り組む。成長資金の供給を促しつつ、家計の安定的な資産形成を促進する観点から、NISA制度全体を見直す中でつみたてNISAを延長し、少額からの積立・分散投資を促進していく。
 地方創生を推進するとともに、人口減少の深刻化や急速な高齢化をはじめ経済社会構造の変化が進む中、各地方公共団体が安定的に地域のコミュニティを支える行政サービスを提供するためには、持続可能な地方税財政基盤を確立していくことが重要である。そのため、地方税の充実確保を図るとともに、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築を進める。
 「好循環」の動きを地域に波及させ、地方創生を実現するためには、地域における熱意と意欲のある取組みを後押ししていく必要がある。地方へのひとや資金の流れを飛躍的に高める観点から地方拠点強化税制や企業版ふるさと納税を拡充するなど、税制面でも所要の措置を講ずる。
 また、わが国の経済社会の変化や国際的な取組みの進展状況等を踏まえつつ、担税力に応じた新たな課税について検討を進めていく。
 国民の利便性ひいては生産性の向上や国・地方間の連携も含めた行政の効率性を高めるために、申告・納税手続について、ICTを積極的に活用するとともに、簡素化・合理化を進める。納税者による自主的かつ適正な申告を確保するための環境の整備を図る。
 安倍内閣は、これまで、経済再生なくして財政健全化なしとの方針の下、デフレ脱却に取り組むとともに、全世代型社会保障への転換とその安定財源確保のための消費税率10%への引上げを経て、財政健全化に大きな道筋をつけてきた。今後とも、経済再生と財政健全化の両立を図り、2025年度のプライマリーバランス黒字化、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指す。また、税制は経済社会のあり方に密接に関連するものであり、今後とも、格差の固定化につながらないよう機会の平等や世代間・世代内の公平の実現、簡素な制度の構築といった考え方の下、検討を進める。

 以下、令和2年度税制改正の主要項目及び今後の税制改正に当たっての基本的考え方を述べる。

1.デフレ脱却と経済再生
(1)イノベーション強化に向けた取組み
① オープンイノベーションに係る措置
 既存企業が従前の閉鎖的でコストの高い自己開発にこだわることなく、新たな分野に投資するなど自ら事業革新を進めることは、この時代において企業が生き残るために必要不可欠である。そのための手段として、新しい技術・ノウハウ等を持つイノベーションの担い手であるベンチャー企業と協働し、オープンイノベーションの取組みを重点的に進めていくことが重要であり、税制においても、事業会社による一定のベンチャー企業への出資に対し、極めて異例の措置ではあるが、出資の一定額の所得控除を認める措置を設けることとする。その際、こうした趣旨に沿って利用されるよう経済産業大臣による確認の仕組みや、一定期間内に出資した株式を処分等した場合は、取り戻し等を行う仕組みを設ける。

②投資や賃上げを促すための措置
 企業におけるいわゆる内部留保、特に現預金はいまなお増加してきている。積極的な投資や賃上げなどの重要性については、これまでの累次の与党税制改正大綱で指摘してきたところであるが、経営者自身の意識改革が重要であり、「攻めの経営」に向けた自己改革と挑戦を改めて強く求めたい。今回の税制措置の効果についてもしっかりと検証する必要がある。加えて、いわゆる内部留保、特に現預金に対しては、以下の措置を併せて講ずることとする。
イ 企業マインドを変革させ、果断な経営判断を促す観点から、収益が拡大しているにもかかわらず賃上げも投資も消極的な企業に対し研究開発税制などの租税特別措置の適用を停止する措置を強化する。
ロ 大企業に対する賃上げ及び投資促進税制について、設備投資額が増えてきている状況に鑑み、設備投資要件を強化し、賃上げへのインセンティブを通じた税制効果を発揮しやすくなるよう見直す。
ハ  一部の大企業において、接待飲食費の特例によって交際費が大きく変化している状況とは言えず、現預金の大幅な減少に寄与していないことから、資本金の額等が100億円超の大企業について、この特例の対象法人から除外する。

③ エンジェル税制の見直し
 少額の投資家にもエンジェル投資の裾野が広がってきている現状を踏まえ、クラウドファンディングを通じたエンジェル投資の利便性を向上するなど、エンジェル税制を見直し、次世代のイノベーションの担い手たるベンチャー企業に対する資金の流れを強化する。

④ 国立大学法人等に対する個人寄附の促進
 日本のイノベーション・エコシステムの中核となる国立大学法人等の研究力強化に向け、国立大学法人等への個人寄附の税額控除の対象事業にイノベーティブな研究に挑戦する若手研究者に研究費を助成する事業を加えるなど、国立大学法人等の更なる外部資金調達努力を後押しする。

(2) 5G(第5世代移動通信システム)
 5Gは Society5.0の実現に不可欠な社会基盤であり、安全・信頼性、供給安定性、オープン性が保証された5Gシステムを構築する必要がある。わが国経済社会や国民生活の根幹をなす5G情報通信インフラを早期に広く国民に普及させるため、超高速・大容量通信を実現する全国基地局の前倒し整備を支援するとともに、地域活性化や地域の課題解決を促進するため、地域の企業等様々な主体が、自ら5Gシステムを構築可能とするローカル5Gの整備を支援することが極めて重要である。こうした点を踏まえ、新たに制定される特定高度情報通信等システム普及促進法(仮称)に基づく認定導入計画(仮称)に従って導入される5Gシステムに係る一定の投資について、早急に、期間を限定した上で、国家戦略としての5Gシステム構築を進めるための措置を講ずる。

(3) 連結納税制度の見直し
 連結納税制度は、企業の組織再編成を促進し、わが国の企業の国際競争力の維持強化と経済の構造改革に資することになるとの考えに基づき、平成14年度に導入されて以降、18年が経過した。その間、本制度は企業グループの一体的経営を進展させ、競争力を強化する中で有効に活用されてきた。一方、親法人への情報等の集約化の程度は様々である、本制度の下での税額計算が煩雑である、税務調査後の修正・更正等に時間がかかり過ぎる、といった指摘があり、損益通算のメリットがあるにもかかわらず、本制度を選択していない企業グループも多く存在する。
 このため、企業の機動的な組織再編を促し、企業グループの一体的で効率的な経営を後押しすることで、企業の国際的な競争力の維持・強化を図るため、平成14年度の制度創設以来18年ぶりに連結納税制度を抜本的に見直し、グループ通算制度へ移行する。
 具体的には、企業グループ全体を一つの納税単位とする現行制度に代えて、企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額の計算及び申告を行いつつ、損益通算等の調整を行う簡素な仕組みとすることなどにより事務負担の軽減を図る。また、開始・加入時の時価評価課税・欠損金の持込み等について組織再編税制と整合性が取れた制度とすることで、時価評価課税や繰越欠損金切り捨ての対象を縮小する。
 国際競争が激化する中、企業が事業再編を迅速かつ戦略的に行えるよう、税制も含めた各般の制度を引き続き見直していく。

(4)その他考慮すべき課題
 租税特別措置については、特定の政策目的を実現するために有効な政策手法となりうる一方で、税負担の歪みを生じさせる面があることから、真に必要なものに限定していくことが重要である。このため、毎年度、期限が到来するものを中心に、各措置の利用状況等を踏まえつつ、必要性や政策効果をよく見極めた上で、廃止を含めてゼロベースで見直しを行う。また、租税特別措置の創設・拡充を行う場合は、財源を確保することやいたずらに全体の項目数を増加させないことに配意する。
 住宅市場に係る対策については、住宅投資の波及効果に鑑み、これまでの措置の実施状況や今後の住宅市場の動向等を踏まえ、必要な対応を検討する。

2.中小企業等の支援、地方創生
(1)中小企業等の支援
 地域経済の中核を担う中小企業は深刻な人手不足等に直面している。これまで、中小企業の設備投資等の促進や事業承継に対する支援など、生産性向上や担い手を確保するための財政支援を行ってきた。令和元年度税制改正においては、生産性向上や、先進的な設備投資の後押し、防災・減災対策のため、中小企業等向けの投資促進に係る各種税制の延長・創設等を行った。引き続き、これらの制度の活用促進に努める。
 令和2年度税制改正においては、中小企業とベンチャー企業の協働によるイノベーションを推進し、これにより、中小企業が自らの事業の革新を図ることを応援するために、中小企業からベンチャー企業への出資について、所得控除を認める措置を創設する。地域経済やコミュニティの維持・活性化といった地域課題の解決に資するローカル5Gについて、地域の中小企業等においても設備投資を促進するため、一定の償却資産に係る固定資産税の特例措置を創設する。
 なお、地域活性化の中心的役割を担う中小企業の経済活動を支援する観点か
ら、中小企業における交際費課税の特例については、見直しを行うことなく2年延長する。

(2)地方創生の推進
①地方創生の充実・強化
 わが国は急速な人口減少局面にあることに加え、地方においては東京圏等への人口流出と地域経済の縮小が進んでいる。人口の東京への過度な集中を是正すべく、首都圏から地方に移転する企業が地方拠点強化税制をより積極的に活用するよう促すため、雇用の増加に対するインセンティブを強化するなどの見直しを行った上で2年延長する。また、志ある企業の地方への寄附による地方創生の取組みへの積極的な関与を促すことにより、地方への資金の流れを飛躍的に高めるため、地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)について、手続きの抜本的な簡素化・迅速化のほか、更に寄附しやすくなるよう税額控除割合を現行の3割から6割に引き上げた上で、5年延長する。
 5Gシステムインフラは、新たな次元の情報基盤ツールを提供するものであり、5G整備促進は、地域経済やコミュニティの維持・活性化といった地域課題の解決に大いに資することとなる。

② 低未利用地の活用促進
 取引価額が低額の土地については、取引コスト等が相対的に高いことがネックになり取引が進まず、利活用されないまま所有されている場合がある。こうした土地のうち一定のものに係る譲渡所得を対象に100万円の特別控除を設け、取引の活性化を通じ低未利用地の活用を促進し、地域の価値向上を支援する。

③ 所有者不明土地等に係る固定資産税の課題への対応
 近年、所有者不明土地等が全国的に増加しており、公共事業の推進や生活環境面において様々な課題が生じている。所有者情報の円滑な把握、所有者不明土地等の発生の予防、円滑な利活用の促進や適正管理の観点から、政府全体として取組みを推進しているが、固定資産税の課税においても、所有者情報の円滑な把握等が課題となっている。
 固定資産税の納税義務者は、原則として登記記録上の所有者であるが、当該所有者が死亡している場合には、「現に所有している者」(通常は相続人)となる。納税義務者が死亡し、相続登記がなされない場合、新たな納税義務者となる「現に所有している者」を課税庁が自ら調査し、特定する必要があり、当該調査に多大な時間と労力を要し、迅速・適正な課税に支障が生じている。
 また、土地や家屋を使用収益している者がいるにもかかわらず、所有者が正常に登記されていない等の理由により、課税庁が調査を尽くしてもなお当該資産の所有者が一人も明らかとならない場合においては、固定資産税を課すことができず、課税の公平性の観点から課題がある。
 これらの課題に対応するため、迅速・適正な課税に資する観点から、相続人等に対し、「現に所有している者」として、その氏名、住所等を申告させることができる制度を創設する。
 また、地方公共団体が調査を尽くしても所有者が一人も明らかとならない資産について、当該資産を使用収益している者が存在する場合、あらかじめ当該使用者に通知を行った上で、使用者を所有者とみなして課税することができることとする。

④ 日本酒の輸出拡大に向けた取組み
 近年、日本産酒類の海外需要が拡大しているが、引き続き、海外での日本産酒類のブランド価値を高めつつ、更なる輸出拡大を図るため、様々な施策を強力に進めていく必要がある。
 酒税制度においては、こうした取組みの一環として、既存の酒蔵による長年の輸出拡大に向けた取組みを更に後押しするなどの観点から、「日本酒」の輸出用の製造免許を新たに設け、小規模の製造場など既存の酒蔵による輸出用の製造場の新設を可能とすることや、海外向けの生産を国内生産に誘導・回帰させること等を通じて、更なる輸出拡大を図る。
 その際、「日本酒」の品質の確保やブランドの確立が図られ、全国の酒蔵が安心して酒造りに取り組めるよう、関係者の理解を得つつ、適切な制度運用を確保しながら実施する。

3.経済のグローバル化・デジタル化への対応
(1)経済のデジタル化への対応
① 背景・問題意識
 デジタル技術は経済活動の隅々まで浸透しつつあり、「経済のデジタル化」が急速に進展している。このような時代の変化に対し、モノを中心とした産業時代に形成された国際課税原則、すなわち、「恒久的施設(PE: Permanent Establishment)なければ課税なし」や「独立企業原則」が適切に機能しないといった問題が顕在化している。
 「PEなければ課税なし」という原則は、外国企業の事業所得に課税するためには自国内に工場や支店などの物理的拠点を必要とするもので、多国籍企業に対する国家の課税権を配分する機能を果たしてきた。しかし、企業がデジタル技術を活用することで、物理的拠点を伴わずに国境を越えて大規模なサービスを展開することが可能となっており、同原則の見直しが必要となっている。
 「独立企業原則」は、多国籍企業グループ内の取引をあたかも独立した企業同士の取引とみなして、それぞれが果たす機能や負担するリスク等を評価することで、各国間で課税できる利益を配分するルールであるが、経済取引のデジタル化・無形資産化が進むにつれて、同原則の適用が困難な場面が増えてきている。
 また、経済のグローバル化・デジタル化の進展により、知的財産等の国境を越えた取引が拡大し、軽課税国への利益移転が容易となる中、各国が低い法人税率や優遇税制によって外国企業を誘致する動きが活発化しており、過度な法人税の引下げ競争に歯止めをかけることが急務となっている。
 経済のデジタル化によって生じるこうした課題への対応についてはOECDを中心に議論が行われている。目下、2020年末までに国際的な合意をまとめるべく、以下の2つの柱からなる解決策について検討が進められている。
 解決策の「第1の柱」では、多国籍企業の経済活動に関して、消費者やユーザーがいる国(市場国)で生み出された価値を勘案し、物理的拠点の有無にかかわらない新しい課税根拠や利益配分ルールを通じて市場国に課税権を適切に与えることが検討されている。
 解決策の「第2の柱」は、多国籍企業が活動拠点をどの国に置くかにかかわらず、最低限の税負担をさせることを確保するものであり、軽課税国に所在する子会社等に帰属する所得について、親会社の所在する国で、国際的に合意された最低税率まで課税する方策等が検討されている。
② 基本的考え方
 平成29年度与党税制改正大綱で示したとおり、国際課税は、経済のグローバル化や経済活動の複雑化・多様化が進む中で、経済発展に貢献する健全な企業活動を支援しつつ税源を守るという、国家の基盤に関わる課題である。これを踏まえ、政府が国際的な議論に取り組むに当たり、以下の5つの視点が重要となる。
イ 安定的かつ予見可能な投資環境の構築
 一国主義的な課税措置によって各国が協調せずにばらばらに対応策を講ずれば、企業のビジネス展開上の不確実性を増加させ、健全な企業活動に負の影響をもたらす。このため、国際合意に基づいた解決策を早期に見出し、企業にとって安定的かつ予見可能な投資環境を構築することが重要である。また、今般の国際課税原則の見直しは、国際協調の下、各国が同様の制度を導入することで実効性が期待できる。
ロ 企業間の公平な競争環境の整備
 経済のデジタル化に対する解決策は、企業間の公平な競争環境を整備し、わが国企業の国際競争力の維持及び向上につなげなければならない。
 第1の柱は、企業の居住地国等と市場国の間の課税権の配分の変更であるが、わが国や市場国に適切に利益を計上している企業の税負担には大きな影響を与えないものとする必要がある。また、第2の柱は、軽課税国に利益を移転することで租税回避を行っている多国籍企業の税負担を適正化するなど、企業が経済活動の拠点をいかなる国に置くかにかかわらず最低限の税負担を確保することによって、公平な競争環境を整備するものでなければならない。これら2つの柱により、海外企業との公平な競争条件を確保し、わが国企業の健全な海外展開を支援するものとすることが重要である。
ハ 新ルールの適用対象の明確化等
 新たなルールの導入に当たっては、企業に不測の影響を与えないように、対象となるビジネスの範囲を適切に限定しつつその定義を明確に定めるなど、合理的かつ明瞭な制度にすることが重要である。
ニ 過大な事務負担及び二重課税の防止
 新しいルールの執行が企業に過度な事務負担を課さないように配慮することが必要である。また、二重課税が生じないよう、強力な紛争防止・解決メカニズムを構築することも重要である。この点、新たなルールを可能な限り明確で簡素にすることは、企業の事務負担を軽減するとともに、課税当局と企業との間の紛争を防止することにもつながる。
ホ 法人税の引下げ競争への対抗
 無形資産等に関連する利益の軽課税国への移転がますます容易になる中、「底辺への競争」とも言われる法人税の引下げ競争を放置すれば、どの国の財政も立ちゆかなくなり、そのしわ寄せは、容易には国境を越えられない中小企業や個人に特に重く及ぶことになりかねない。
 海外への投資は、企業競争力の向上や投資先の市場環境の活用といった事業目的で行われるものであり、税負担の軽減を目的とすべきではない。投資を惹きつけるための法人税の引下げ競争に歯止めをかけ、各国の税源を守る措置を国際協調の下で進めていくことが必要である。
 最後に、2020年末までに国際的な解決策をとりまとめるためには、BEPS包摂的枠組みに参加する130超の全ての国・地域からの妥協の精神に基づく合意が必要となる。わが国はこれまで、OECD租税委員会議長を輩出し「BEPSプロジェクト」を主導してきたほか、本年はG20議長国としても積極的に議論に貢献してきた。当調査会は、日本政府が、以上に示した考え方をOECDを中心とする国際的な議論に十分に反映させるとともに、来年末までの国際的な合意に向け一層主導的な役割を果たしていくことを強く求める。併せて、国際課税制度が大きな変革を迎える中、国内法制・租税条約の整備及び着実な執行など適時に十全な対応ができるよう、国税当局の体制強化を行うものとする。

(2)国際的な租税回避・脱税への対応
 日本企業の健全な海外展開を支えつつ、国際的な租税回避や脱税に対してより効果的に対応する観点から、これまでわが国は「BEPSプロジェクト」の合意事項等を踏まえ、租税回避防止措置等に関する累次の制度整備を行ってきた。令和2年度税制改正においては、子会社株式の譲渡等により譲渡損失を創出させる租税回避に対処するための見直しを行う。国際的な租税回避や脱税への対応については、今後も引き続き、租税回避の態様等を踏まえ必要な見直しを迅速に講じていく。
 また、90か国以上が非居住者に係る金融口座情報の自動的交換(共通報告基準に基づく情報交換)を開始し、わが国では、取得した金融口座情報の活用により申告漏れの判明につながるなど、具体的な成果が現れ始めている。今後も、国際的な租税回避や脱税を防止するため、一層効果的な情報の活用を図るとともに、国際的な議論を踏まえながら必要な制度の整備を行っていく。

(3)環境と成長の好循環の実現
 気候変動問題などの地球規模の課題が顕在化している。IPCCによれば、極端な気象現象の増加や人の健康・生態系へのリスクは、工業化以降の平均気温の上昇が1.5℃の場合において増加し、2℃においては更に増加すると予測されている。持続可能な開発目標(SDGs)を踏まえ、持続可能な社会を構築するためにも、2020年から実行段階に移るパリ協定に基づき、脱炭素化に向けた取組みを加速することが重要である。わが国は本年「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を策定し、環境と経済成長との好循環の実現のため、幅広い施策を横断的に実施することとしている。

4.経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し
(1) 経済社会の構造変化を踏まえた個人所得課税のあり方
 個人所得課税については、わが国の経済社会の構造変化を踏まえ、配偶者控除等の見直し、給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除の一体的な見直しなどの取組みを進めてきている。今後も、これまでの税制改正大綱に示された方針を踏まえ、働き方の多様化を含む経済社会の構造変化への対応や所得再分配機能の回復の観点から、各種控除のあり方等を検討する。また、適正な記帳の確保に向けた方策を講じつつ、事業所得等の適正な申告に向けた取組みを進める。

(2)人生100年時代に対応するための環境整備
①私的年金等に関する公平な税制のあり方
 働き方やライフコースが多様化する中で、老後の生活に備えるための支援について、働き方によって有利・不利が生じない公平な税制の構築が求められている。諸外国を見ると、例えばイギリスやカナダにおいては、加入する私的年金の組み合わせにかかわらず同様の非課税拠出が行えるように、各種私的年金に共通の非課税拠出限度額が設けられている。こういった諸外国の例も参考に、わが国においても、働き方によって税制上の取扱いに大きな違いが生じないような姿を目指す必要がある。
 年金課税については、拠出・運用・給付の各段階を通じた適正かつ公平な税負担を確保することが必要である。諸外国を見ると、日本の公的年金等控除のような、年金収入に対する大きな控除はなく、基本的に拠出段階、給付段階のいずれかで課税される仕組みとなっている。わが国においてもこういった例を参考に、世代内・世代間の公正性を確保する観点から検討を進めていく。
 また、現在の退職給付は一時金での受け取りが多いが、税制についても、給付が一時金払いか年金払いかによって税制上の取扱いが異なり、給付のあり方に中立ではないという課題がある。また、一時金払いの場合、勤続期間が20年を超えると一年あたりの控除額が増加する仕組みとなっており、転職などの増加に対して対応していないといった指摘もある。税制が老後の生活や資産形成を左右しない仕組みとするべく、給与・退職一時金・年金給付の間の税負担のバランスについても考える必要がある。
 あわせて、金融所得に対する課税のあり方について、家計の安定的な資産形成を支援する制度の普及状況や所得階層別の所得税負担率の状況も踏まえ、税負担の垂直的な公平性等を確保する観点から、関連する各種制度のあり方を含め、諸外国の制度や市場への影響も踏まえつつ、総合的に検討する。
 令和2年度税制改正においては、高齢期の長期化や就労の拡大・多様化等に対応するための確定拠出年金等の加入可能年齢の見直しや、中小企業向け制度の対象範囲の拡大等の私的年金の見直しに伴い、現行の税制上の措置を適用することとする。

② 成長資金の供給と家計の安定的な資産形成支援の観点からのNISA制度の見直し・延長
 経済成長に必要な成長資金の供給を促すとともに、人生100年時代にふさわしい家計の安定的な資産形成を支援していく観点から、NISA制度について、少額からの積立・分散投資をさらに促進する方向で制度の見直しを行いつつ、口座開設可能期間を延長する。
 基本的な制度としては、非課税期間5年間の一般NISAについては、より多くの国民に積立・分散投資による安定的な資産形成を促す観点から、積み立てを行っている場合には別枠の非課税投資を可能とする2階建ての制度に見直したうえで、口座開設可能期間を5年延長する。投資対象商品については、1階部分はつみたてNISAと同様とし、2階部分は、現行の一般NISAから高レバレッジ投資信託など安定的な資産形成に不向きな一部の商品を除くこととする。また、非課税期間20年間の現行のつみたてNISAについては5年延長し、ジュニアNISAについては、利用実績が乏しいことから延長せず、新規の口座開設を2023年までとする。

(3)未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(夫)控除の見直し
 全てのひとり親家庭の子どもに対して公平な税制を実現する観点から、「婚姻歴の有無による不公平」と「男性のひとり親と女性のひとり親の間の不公平」を同時に解消するために、次の措置を講じる。
 未婚のひとり親について寡婦(夫)控除を適用する。この際、適用する条件は死別・離別の場合と同様とする。
 寡婦(夫)控除について、寡婦に寡夫と同じ所得制限(所得500万円(年収678万円))を設ける。あわせて、住民票の続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」の記載がある場合には、控除の対象外とする。さらに、子ありの寡夫の控除額(現行所得税27万円、住民税26万円)について、子ありの寡婦(所得税35万円、住民税30万円)と同額とする。
 なお、扶養親族がいない死別女性、子以外の扶養親族を持つ死別・離別の女性(所得500万円(収入678万円)以下)については現状のままとする。

(4)資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築と格差固定化の防止
 高齢化の進展に伴い、いわゆる「老々相続」が課題となる中で、生前贈与を促進する観点からも、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築が課題となっている。今後、諸外国の制度のあり方も踏まえつつ、格差の固定化につながらないよう、機会の平等の確保に留意しながら、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直し、資産移転の時期の選択に中立的な制度を構築する方向で検討を進める。こうした検討の進捗の状況を踏まえ、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置及び結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置についても、次の適用期限の到来時に、その適用実態も検証した上で、両措置の必要性について改めて見直しを行うこととする。

5.円滑・適正な納税のための環境整備
(1)デジタル技術を活用した利便性の向上等
 納税者利便の向上及び官民を通じた業務の効率化を図るため、取引から申告・納付に至るまで税務関連手続の電子化を推進する。
 電子請求書や各種決済データを経理に活用すれば、取引先との間でも社内他部署との間でも書面の授受を行う必要はなくなる。それらのデータが電子帳簿と連携すれば、記帳の正確性を確保する観点からも有益である。こうした利点を踏まえ、請求書等の電子化を推進し、企業等の生産性向上を後押しする観点から、電子帳簿保存法の見直しを行う。
 引き続き、スマートフォンの利用など利便性の高い申告環境の整備に取り組むとともに、納付や各種申請も含めた手続きの電子化・簡素化を推進する。

(2) 消費税の申告期限の延長
 働き方改革が進められる中、企業は非効率な業務プロセスの見直し等を行い、従業員の生産性をより一層向上させる等の取組みが求められている。
 企業の事務負担の軽減や平準化を図る観点から、法人税の申告期限を延長することができる企業について、消費税の預り金的な性格を踏まえつつ、消費税の申告期限を1か月に限って延長する特例を創設する。

(3) 利子税・還付加算金等の割合の引下げ
 利子税について、市中金利の実勢を踏まえ、その割合の引下げを行う。還付加算金等の割合についても、同様に引下げを行う。

(4) 国外財産調書制度等の見直し
 適正な課税のためには税務調査を通じた的確な事実認定が不可欠である。一方、国外において行われた取引等については、執行管轄権の制約上、税務当局が直接現地に赴いて事実関係を確認することが困難である。このため、納税者による適切な情報開示を促す観点から国外財産調書制度及び更正・決定の除斥期間について見直しを行う。

(5) 国外居住親族に係る扶養控除等の見直し
 国外居住親族に係る扶養控除等の適用について、所得要件の判定において国内源泉所得が用いられているために、国外で一定以上の所得を稼得している親族でも控除の対象とされているとの指摘を踏まえ、30歳以上70歳未満の成人のうち、留学生や障害者などを除く者について、扶養控除を適用しないこととする。

(6) 税務執行体制の一層の充実
 経済社会が急激に変化する中、税制を円滑かつ公平に執行するため、税務当局においても、ICTの活用等により業務プロセスの合理化に取り組むとともに、必要な定員の確保等の税務執行体制の一層の充実を図る。

(7) 地方税務手続の電子化の推進
 地方税務手続において、ICTの活用等を通じ、納税者利便の向上や事業者等の事務負担軽減に取り組む上で、e LTAX(地方税のオンライン手続のためのシステム)の機能を拡充しつつ、その活用を積極的に進めていくことが重要である。本年10月に eLTAXの機能の一つとして導入された地方税共通納税システムの対象税目について、新たに個人住民税の利子割・配当割・株式等譲渡所得割を対象とし、金融機関等の特別徴収義務者が eLTAXを通じて電子で申告及び納入を行うことができるよう、所要の措置を講ずる。
 固定資産税(償却資産)の電子申告については、納税者・地方公共団体双方の事務の簡素化・効率化の一層の促進に向け、eLTAXの利便性や機能の改善等を進め、電子申告率の向上に資するよう環境整備を図る。
 給与所得に係る個人住民税の特別徴収税額通知(納税義務者用)の電子化については、地方公共団体及び特別徴収義務者の理解を得ることに留意しつつ、 個人情報の適正な取扱いを確保した上で、個々の納税義務者に電子的に送付することができる体制を有する特別徴収義務者に対して eLTAXを経由し送付する仕組みの導入に向けた取組みを進める。

6.その他
(1)たばこ税の見直し
 近年急速に販売が拡大している軽量な葉巻たばこについては、紙巻たばこに類似しているものの、紙巻たばことの間に大きな税率格差が存在し、課税の公平性に問題が生じている。
 このため、たばこ市場・産業への影響、中長期的な国・地方の税収への影響なども踏まえ、紙巻たばこと同様の課税方式への見直しを行う。その際、たばこ関係事業者への影響も勘案し、段階的に実施する。
 また、望まない受動喫煙対策や今後の地方たばこ税の安定的な確保の観点から、地方たばこ税の活用を含め、地方公共団体が積極的に屋外分煙施設等の整備を図るよう促すこととする。

(2)法人事業税の課税方式の見直し
 電気供給業については、2020年の送配電部門の法的分離、新規参入の状況とその見通し、行政サービスの受益に応じた負担の観点、地方財政や個々の地方公共団体の税収に与える影響等を考慮の上、これらの法人に対する法人事業税の課税方式の見直しを行う。
 また、電気供給業を含め収入金額による外形標準課税については、地方税体系全体における位置付けや個々の地方公共団体の税収に与える影響等も考慮しつつ、その課税のあり方について、今後も引き続き検討する。

(3)東日本大震災からの復興
 東日本大震災からの復興に関し、次期通常国会における復興・創生期間後に向けた東日本大震災復興特別区域法及び福島復興再生特別措置法の見直しに当たり、復興の進捗状況を踏まえ、復興特区税制について対象地域を重点化するとともに、福島特措法税制について福島イノベーション・コースト構想を軸とした産業集積及び風評払拭に係る課税の特例の規定を設ける。

第二 令和2年度税制改正の具体的内容
一 個人所得課税
1 金融・証券税制 (国税・地方税) 〔延長・拡充等〕
(1)非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(NISA)について、次の措置を講ずる。
① 非課税累積投資契約に係る非課税措置(つみたてNISA)の勘定設定期間を令和24年12月31日まで5年延長する。
② 現行の非課税上場株式等管理契約に係る非課税措置(一般NISA)の勘定設定期間の終了にあわせ、特定非課税累積投資契約(仮称)に係る非課税措置を次のように創設し、現行の非課税累積投資契約に係る非課税措置と選択して適用できることとする。
イ 居住者等が、金融商品取引業者等の営業所に開設した非課税口座に特定累積投資勘定(仮称)を設けた日から同日の属する年の1月1日以後5年を経過する日までの間に支払を受けるべき特定累積投資勘定(仮称)に係る株式投資信託(その受益権が金融商品取引所に上場等がされているもの又はその設定に係る受益権の募集が一定の公募により行われたものに限る。以下「公募等株式投資信託」という。)の配当等(当該金融商品取引業者等がその配当等の支払事務の取扱いをするものに限る。)については、所得税及び個人住民税を課さない。
ロ 居住者等が、金融商品取引業者等の営業所に開設した非課税口座に特定累積投資勘定(仮称)を設けた日から同日の属する年の1月1日以後5年を経過する日までの間にその特定累積投資勘定(仮称)に係る公募等株式投資信託の受益権の譲渡等をした場合には、その譲渡等による譲渡所得等については、所得税及び個人住民税を課さない。また、当該公募等株式投資信託の受益権の譲渡等による損失金額は、所得税及び個人住民税に関する法令の規定の適用上、ないものとみなす。
ハ 居住者等が、金融商品取引業者等の営業所に開設した非課税口座に特定非課税管理勘定(仮称)を設けた日から同日の属する年の1月1日以後5年を経過する日までの間に支払を受けるべき特定非課税管理勘定(仮称)に係る上場株式等の配当等(当該金融商品取引業者等がその配当等の支払事務の取扱いをするものに限る。)については、所得税及び個人住民税を課さない。
ニ 居住者等が、金融商品取引業者等の営業所に開設した非課税口座に特定非課税管理勘定(仮称)を設けた日から同日の属する年の1月1日以後5年を経過する日までの間にその特定非課税管理勘定(仮称)に係る上場株式等の譲渡等をした場合には、その譲渡等による譲渡所得等については、所得税及び個人住民税を課さない。また、当該上場株式等の譲渡等による損失金額は、所得税及び個人住民税に関する法令の規定の適用上、ないものとみなす。
ホ 特定非課税累積投資契約(仮称)とは、上記イからニまでの非課税の適用を受けるために居住者等が金融商品取引業者等と締結した公募等株式投資信託の受益権の定期かつ継続的な方法による買付け等に関する契約で、その契約書において、次に掲げる事項が定められているものをいう。
(イ)公募等株式投資信託の受益権の管理は、特定累積投資勘定(仮称)(当該契約に基づき非課税口座で管理される公募等株式投資信託の受益権を他の取引に関する記録と区分して行うための勘定で、令和6年から令和10年までの各年のうち現行の累積投資勘定が設定される年以外の年に設けられるものをいう。)において行うこと。
(ロ)当該特定累積投資勘定(仮称)は、当該居住者等から提出を受けた非課税口座簡易開設届出書、勘定廃止通知書又は非課税口座廃止通知書に記載された勘定設定期間においてのみ設けられること。
(ハ)当該特定累積投資勘定(仮称)は、原則としてその勘定設定期間内の各年の1月1日において設けられること。
(ニ)当該特定累積投資勘定(仮称)には、現行の累積投資勘定に受け入れることができる公募等株式投資信託の受益権のうち、次に掲げる公募等株式投資信託の受益権のみを受け入れること。
a その居住者等の非課税口座に特定累積投資勘定(仮称)が設けられた日から同日の属する年の12月31日までの間に当該金融商品取引業者等への買付けの委託により取得した公募等株式投資信託の受益権で、当該期間内の取得対価の額の合計額が20万円(下記(ヘ)bに掲げる移管がされる上場株式等のその移管の時における価額(時価)が102万円を超える場合には、その超える部分の金額を控除した金額)を超えないもの
b その特定累積投資勘定(仮称)に係る公募等株式投資信託の受益権の分割等により取得する公募等株式投資信託の受益権
(注)特定累積投資勘定(仮称)に受け入れた公募等株式投資信託の受益権については、当該勘定を設けた日の属する年の1月1日以後5年を経過した日の属する年分の累積投資勘定にその公募等株式投資信託の受益権の取得対価の額により移管することができることとする。
(ホ)上場株式等の管理は、特定非課税管理勘定(仮称)(当該契約に基づき非課税口座で管理される上場株式等を他の取引に関する記録と区分して行うための勘定で、特定累積投資勘定(仮称)と同時に設けられるものをいう。)において行うこと。
(ヘ)当該特定非課税管理勘定(仮称)には、次に掲げる上場株式等のみを受け入れること。
a その居住者等の非課税口座に特定非課税管理勘定(仮称)が設けられた日から同日の属する年の12月31日までの間に受け入れた特定上場株式等で、当該期間内の取得対価の額の合計額が102万円(bに掲げる移管がされる上場株式等がある場合には、その移管の時におけるその上場株式等の価額(時価)を控除した金額)を超えないもの
(注1)上記の「特定上場株式等」とは、その居住者等の次に掲げる者の区分に応じそれぞれ次に定める上場株式等をいう。
(a)(b)に掲げる者以外の者 上場株式等(その上場株式等を上場している取引所から整理銘柄として指定されているものその他の内閣総理大臣が財務大臣と協議して定めるもの及びその投資信託約款又は投資法人規約において一定のデリバティブ取引に係る権利に対する投資として運用を行うこととされていることその他の内閣総理大臣が財務大臣と協議して定める事項が定められているものを除く。)
(b)令和6年1月1日前に非課税口座を開設していた者又は同日前に上場株式等の取引を行ったことのある者のうち、その者の非課税口座が開設されている金融商品取引業者等の営業所の長に対し特定累積投資勘定(仮称)に公募等株式投資信託を受け入れないことを届け出た者 上場株式(その上場株式を上場している取引所から整理銘柄として指定されているものその他の内閣総理大臣が財務大臣と協議して定めるものを除く。)
(注2)上記(注1)(a)に掲げる者は、その年分の特定累積投資勘定(仮称)において、6月以内に公募等株式投資信託の受益権を受け入れている場合に限り、特定上場株式等の受入れをすることができることとする。
b その居住者等の非課税口座に係る他の年分の非課税管理勘定、特定非課税管理勘定(仮称)又はその者の未成年者口座の非課税管理勘定若しくは継続管理勘定から移管がされる上場株式等
c その特定非課税管理勘定(仮称)に係る上場株式等の分割等により取得する上場株式等
(ト)その他一定の事項
ヘ 令和5年12月31日に令和5年分の非課税管理勘定を設定している居住者等については、令和6年1月1日において、その勘定に係る非課税口座に特定累積投資勘定(仮称)及び特定非課税管理勘定(仮称)が設けられることとする等の所要の措置を講ずる。
③ 非課税適用確認書の交付申請を令和3年4月1日以後はできないこととし、新規の非課税口座開設手続を簡易開設手続に一本化する。
(注)令和3年4月1日前の交付申請により取得した非課税適用確認書について、所要の経過措置を講ずる。
④ 次に掲げる書類の提出に代えて、電磁的方法により当該書類に記載すべき事項を記録した電磁的記録を提供できることとする。
イ 金融商品取引業者等変更届出書
ロ 非課税口座廃止届出書
ハ 勘定の変更等に係る非課税口座異動届出書
ニ 非課税口座移管依頼書
ホ 非課税口座開設者死亡届出書
(2) 未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(ジュニアNISA)について、次の措置を講ずる。
① 未成年者口座開設可能期間は延長せずに終了することとし、その終了にあわせ、令和6年1月1日以後は、課税未成年者口座及び未成年者口座内の上場株式等及び金銭の全額について源泉徴収を行わずに払い出すことができることとする。
② 次に掲げる書類の提出に代えて、電磁的方法により当該書類に記載すべき事項を記録した電磁的記録を提供できることとする。
イ 未成年者口座廃止届出書
ロ 出国移管依頼書
ハ 未成年者口座を開設している者の帰国に係る届出書
ニ 未成年者出国届出書
ホ 未成年者口座移管依頼書
へ 未成年者口座開設者死亡届出書
(3)
エンジェル税制について、次の措置を講ずる。
① 特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等及び特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等について、次の措置を講ずる。 イ 適用対象となる特定中小会社の範囲に、内国法人のうち設立後10年未満の中小企業者に該当するもので金融商品取引法に規定する第一種少額電子募集取扱業務を行う同法の規定による登録を受けた者を通じて投資されることその他一定の要件を満たす株式会社を加える。
ロ 適用対象となる特定中小会社のうち、中小企業等経営強化法に規定する特定新規中小企業者(以下「特定新規中小企業者」という。)に該当する株式会社及び内国法人のうち設立後10年未満の中小企業者に該当するもので投資事業有限責任組合契約に従って投資事業有限責任組合を通じて投資されることその他一定の要件を満たす株式会社に係る確認手続において、次に掲げる書類については、都道府県知事又は投資事業有限責任組合へ提出する申請書への添付を要しないこととする。
(イ)定款
(ロ)事業報告書
(ハ)法人税の確定申告書に添付された別表二の写し
(ニ)組織図
② 特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例について、次の措置を講ずる。
イ 適用対象となる特定新規中小会社の範囲に、次に掲げる株式会社を加える。
(イ)設立後3年以上5年未満の特定新規中小企業者に該当する株式会社であって、次に掲げる要件を満たすもの
a 前事業年度までの営業活動によるキャッシュ・フローが赤字であること。
b 前事業年度の試験研究費等の収入金額に対する割合(以下「試験研究費等割合」という。)が5%を超えること。
c 払込みにより当該株式会社の株式の取得をする者と投資契約を締結する株式会社であること。
(ロ)内国法人のうち、設立後5年未満の中小企業者に該当するもので、投資事業有限責任組合契約に従って投資事業有限責任組合を通じて投資されること、設立後1年以上の中小企業者に該当する株式会社(設立後1年未満かつ最初の事業年度が終了しているものを含む。)にあっては前事業年度までの営業活動によるキャッシュ・フローが赤字であることその他一定の要件を満たす株式会社
(ハ)内国法人のうち、設立後5年未満の中小企業者に該当するもので、金融商品取引法に規定する第一種少額電子募集取扱業務を行う同法の規定による登録を受けた者を通じて投資されること、設立後1年以上の中小企業者に該当する株式会社(設立後1年未満かつ最初の事業年度が終了しているものを含む。)にあっては前事業年度までの営業活動によるキャッシュ・フローが赤字であることその他一定の要件を満たす株式会社
ロ 適用対象となる設立後1年以上3年未満の特定新規中小企業者(設立後1年未満かつ最初の事業年度が終了しているものを含む。)について、試験研究費等割合の要件を5%超(現行:3%超)に引き上げることとする。
ハ 適用対象となる国家戦略特別区域法に規定する特定事業を行う株式会社により発行される株式の発行期限を2年延長する。
ニ 適用対象となる地域再生法に規定する特定地域再生事業を行う株式会社により発行される株式の発行期限を2年延長する。
ホ 所要の経過措置等を講じた上、令和3年1月1日以後は控除対象限度額を800万円(現行:1,000万円)に引き下げることとする。
ヘ 適用対象となる特定新規中小会社(特定新規中小企業者に該当する株式会社並びに上記ハ及びニの株式会社に限る。)に係る確認手続において、次に掲げる書類(上記ハ及びニの株式会社にあっては(イ)、(ハ)及び(ニ)に掲げる書類に限る。)については、都道府県知事、国家戦略特別区域担当大臣又は認定地方公共団体へ提出する申請書への添付を要しないこととする。
(イ)定款
(ロ)事業報告書
(ハ)法人税の確定申告書に添付された別表二の写し
(ニ)組織図
(4)特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例等について、次の措置を講ずる。
① 特定口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に、次に掲げる上場株式等を加える。
イ 居住者等が有する取得請求権付株式、取得条項付株式又は全部取得条項付種類株式であって上場株式等以外の株式に該当するものの請求権の行使、取得事由の発生又は取得決議により取得する上場株式等
ロ 居住者等が発行法人等に対して役務の提供をした場合においてその居住者等がその発行法人等から取得する上場株式等で、その上場株式等と引換えにする払込み又は給付を要しない場合のその上場株式等
ハ 居住者等が金融商品取引業者等の営業所の長に対する非課税口座簡易開設届出書の提出により設定された口座でその設定の時から非課税口座に該当しないこととされたものにおいて管理されている上場株式等で、その該当しないこととされた日にその金融商品取引業者等の営業所に開設されている特定口座に一定の方法により移管されるもの
② 次に掲げる書類の提出に代えて、電磁的方法により当該書類に記載すべき事項を記録した電磁的記録を提供することができることとする。
イ 特定口座源泉徴収選択届出書
ロ 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書
ハ 源泉徴収選択口座内配当等受入終了届出書
ニ 特定管理口座開設届出書
ホ 相続上場株式等移管依頼書
ヘ 非課税口座内上場株式等の非課税口座から特定口座への移管依頼書
ト 未成年者口座内上場株式等の未成年者口座から特定口座への移管依頼書
チ 営業所の移管又は勘定の設定若しくは廃止に係る特定口座異動届出書
リ 特定口座継続適用届出書
ヌ 特定口座廃止届出書
ル 特定口座開設者死亡届出書
(注)上記①ロの改正は、会社法の一部を改正する法律の施行の日以後に取得する上場株式等について適用する。
(5)情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律(以下「資金決済法等改正法」という。)の施行に伴い、次の措置を講ずる。
① 先物取引に係る雑所得等の課税の特例及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除の適用対象から、暗号資産デリバティブ取引に係る雑所得等を除外する。
② 先物取引に関する支払調書制度等について、次の措置を講ずる。
イ 暗号資産デリバティブ取引の委託を受けた金融商品取引業者等の営業所の長は、その年中の暗号資産デリバティブ取引の差金等決済により確定した利益又は損失の額の合計額等を記載した支払調書を、その差金等決済があった日の翌年1月31日までに、税務署長に提出しなければならないこととする。
ロ 資金決済法等改正法の施行の日から令和2年12月31日までの間に行われる暗号資産デリバティブ取引の差金等決済については、先物取引に関する支払調書の提出を要しないこととする。
(注)上記ロの期間内に行われる暗号資産デリバティブ取引の差金等決済については、先物取引の差金等決済をする者の告知を要しないこととする。
(6) 告知制度について次の措置を講ずる。
① 法人が次に掲げる告知又は告知書の提出(以下「告知等」という。)をする場合において、その告知等を受ける者が、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の規定により公表されているその告知等をする法人の名称、本店等の所在地及び法人番号を確認したときは、その告知等をする法人については、告知等の際に必要な本人確認書類の提示を要しないこととする。
イ 利子、配当等の受領者の告知
ロ 無記名公社債の利子等に係る告知書の提出
ハ 譲渡性預金の譲渡等に関する告知書の提出
ニ 株式等の譲渡の対価の受領者の告知
ホ 交付金銭等の受領者の告知
ヘ 償還金等の受領者の告知
ト 信託受益権の譲渡の対価の受領者の告知
チ 先物取引の差金等決済をする者の告知
リ 金地金等の譲渡の対価の受領者の告知
ヌ 国外送金等をする者の告知書の提出
ル 国外証券移管等をする者の告知書の提出
② 法人が告知等をする場合において、その告知等を受ける者が、電気通信回線による登記情報の提供に関する法律に規定する指定法人から登記情報の送信を受ける方法によりその告知等をする法人の名称及び本店等の所在地を確認したときは、その告知等をする法人については、告知等の際に必要な登記事項証明書の提示を要しないこととする。
③ 法人が告知等をする場合において、その告知等を受ける者が、その告知等をする法人の法人番号その他の事項を記載した帳簿を備えているときは、その告知等をする法人については、その告知等を受ける者に対して、その告知等をする法人の法人番号の告知又は告知書へのその法人の法人番号の記載を要しないこととする。
④ その他所要の措置を講ずる。
2 土地・住宅税制
(国 税)
〔新設〕
低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除の創設
(1) 個人が、都市計画区域内にある低未利用土地又はその上に存する権利(以下「低未利用土地等」という。)であることについての市区町村の長の確認がされたもので、その年1月1日において所有期間が5年を超えるものの譲渡(その個人の配偶者その他のその個人と一定の特別の関係がある者に対してするもの及びその上にある建物等を含めた譲渡の対価の額として一定の額が500万円を超えるものを除く。)を土地基本法等の一部を改正する法律(仮称)の施行の日又は令和2年7月1日のいずれか遅い日から令和4年12月31日までの間にした場合(譲渡後の低未利用土地等の利用についての市区町村の長の確認がされた場合に限る。)には、その年中の低未利用土地等の譲渡に係る長期譲渡所得の金額から100万円(当該長期譲渡所得の金額が100万円に満たない場合には、当該長期譲渡所得の金額)を控除することができることとする。
(2)適用を受けようとする低未利用土地等と一筆の土地から分筆された土地又はその土地の上に存する権利について、その年の前年又は前々年において上記(1)の適用を受けている場合には、その低未利用土地等については上記(1)の適用ができないこととするほか、所要の措置を講ずる。
〔延長・拡充〕
(1) 短期所有土地の譲渡等をした場合の土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例について、適用停止措置の期限を3年延長する。
(2)配偶者居住権及び配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地等を配偶者居住権に基づき使用する権利(以下「配偶者敷地利用権」という。)について、次の措置を講ずる。
① 配偶者居住権又は配偶者敷地利用権が消滅等をし、その消滅等の対価として支払を受ける金額に係る譲渡所得の金額の計算上控除する取得費は、配偶者居住権の目的となっている建物又はその建物の敷地の用に供される土地等(以下「居住建物等」という。)についてその被相続人に係る居住建物等の取得費に配偶者居住権等割合を乗じて計算した金額から、その配偶者居住権の設定から消滅等までの期間に係る減価の額を控除した金額とする。
(注1)上記の居住建物等のうち建物の取得費については、その取得の日からその消滅等の日までの期間に係る減価の額を控除することとする。
(注2)上記の「配偶者居住権等割合」とは、その配偶者居住権の設定の時における配偶者居住権又は配偶者敷地利用権の価額に相当する金額の居住建物等の価額に相当する金額に対する割合をいう。
② 相続により居住建物等を取得した相続人が、配偶者居住権及び配偶者敷地利用権が消滅する前に当該居住建物等を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上控除する取得費は、その居住建物等の取得費から配偶者居住権又は配偶者敷地利用権の取得費を控除した金額とする。
(注)上記の居住建物等のうち建物の取得費についてはその取得の日から譲渡の日までの期間に係る減価の額を控除することとし、上記の配偶者居住権又は配偶者敷地利用権の取得費についてはその配偶者居住権の設定の日から譲渡の日までの期間に係る減価の額を控除することとする。
③ 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例等について、居住建物等が収用等をされた場合において、配偶者居住権又は配偶者敷地利用権が消滅等をし、一定の補償金を取得するときは、その適用ができることとする。
(注)特例の対象となる上記の補償金の全部又は一部に相当する金額をもって取得する代替資産の範囲について所要の措置を講ずる。
④ 換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例の適用対象に、第一種市街地再開発事業等が施行された場合において、居住建物等に係る権利変換により施設建築物の一部等に配偶者居住権が与えられたときを加えることとする。
⑤ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記③及び④の改正に伴い、権利変換により、建物の賃借権を取得しなかった場合において一定の補償金を取得するとき及び施設建築物の一部等に賃借権が与えられた場合についても、これらの特例の適用対象となることを法令上明確化する(法人税についても同様とする。)。
(3) 森林組合法の改正を前提に、森林組合制度の見直し後も引き続き、森林組合等に委託して地域森林計画の対象とされた山林に係る土地を譲渡した場合を農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の800万円特別控除の対象とする。
(4) 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用期限を2年延長する。
(5) 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等の適用期限を2年延長する。
(6) 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の適用期限を2年延長する。
〔縮減等〕
(1) 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例について、次に掲げる譲渡を適用対象から除外した上、その適用期限を3年延長する。
① 都市再生特別措置法の認定整備事業計画に係る一定の都市再生整備事業の認定整備事業者に対する土地等の譲渡
② 都市計画区域内において行われる一団の宅地の造成(都市計画法の開発許可又は土地区画整理法の認可を受けて行われるものであること等の要件を満たすものに限る。)を行う者に対する土地等の譲渡
(2) 住宅の取得等をした家屋(以下「新規住宅」という。)をその居住の用に供した個人が、その居住の用に供した日の属する年から3年目に該当する年中に新規住宅及びその敷地の用に供されている土地等以外の資産の譲渡(以下「従前住宅等の譲渡」という。)をした場合において、その者が従前住宅等の譲渡につき次に掲げる特例の適用を受けるときは、新規住宅について住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除及び認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除の適用を受けることができないこととする。
① 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
② 居住用財産の譲渡所得の特別控除
③ 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例
④ 既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例
(注)上記の改正は、令和2年4月1日以後に従前住宅等の譲渡をする場合について適用する。
(地方税)
〔新設〕
低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除の創設
(1) 個人が、都市計画区域内にある低未利用土地又はその上に存する権利(以下「低未利用土地等」という。)であることについての市区町村の長の確認がされたもので、その年1月1日において所有期間が5年を超えるものの譲渡(その個人の配偶者その他のその個人と一定の特別の関係がある者に対してするもの及びその上にある建物等を含めた譲渡の対価の額として一定の額が500万円を超えるものを除く。)を土地基本法等の一部を改正する法律(仮称)の施行の日又は令和2年7月1日のいずれか遅い日から令和4年12月31日までの間にした場合(譲渡後の低未利用土地等の利用についての市区町村の長の確認がされた場合に限る。)には、その年中の低未利用土地等の譲渡に係る長期譲渡所得の金額から100万円(当該長期譲渡所得の金額が100万円に満たない場合には、当該長期譲渡所得の金額)を控除することができることとする。
(2)適用を受けようとする低未利用土地等と一筆の土地から分筆された土地又はその土地の上に存する権利について、その年の前年又は前々年において上記 (1)の適用を受けている場合には、その低未利用土地等については上記(1)の適用ができないこととするほか、所要の措置を講ずる。
〔延長・拡充〕
(1) 短期所有土地の譲渡等をした場合の土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例について、適用停止措置の期限を3年延長する。
(2)配偶者居住権及び配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地等を配偶者居住権に基づき使用する権利(以下「配偶者敷地利用権」という。)について、次の措置を講ずる。
① 配偶者居住権又は配偶者敷地利用権が消滅等をし、その消滅等の対価として支払を受ける金額に係る譲渡所得の金額の計算上控除する取得費は、配偶者居住権の目的となっている建物又はその建物の敷地の用に供される土地等(以下「居住建物等」という。)についてその被相続人に係る居住建物等の取得費に配偶者居住権等割合を乗じて計算した金額から、その配偶者居住権の設定から消滅等までの期間に係る減価の額を控除した金額とする。
(注1)上記の居住建物等のうち建物の取得費については、その取得の日からその消滅等の日までの期間に係る減価の額を控除することとする。
(注2)上記の「配偶者居住権等割合」とは、その配偶者居住権の設定の時における配偶者居住権又は配偶者敷地利用権の価額に相当する金額の居住建物等の価額に相当する金額に対する割合をいう。
② 相続により居住建物等を取得した相続人が、配偶者居住権及び配偶者敷地利用権が消滅する前に当該居住建物等を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上控除する取得費は、その居住建物等の取得費から配偶者居住権又は配偶者敷地利用権の取得費を控除した金額とする。
(注)上記の居住建物等のうち建物の取得費についてはその取得の日から譲渡の日までの期間に係る減価の額を控除することとし、上記の配偶者居住権又は配偶者敷地利用権の取得費についてはその配偶者居住権の設定の日から譲渡の日までの期間に係る減価の額を控除することとする。
③ 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例等について、居住建物等が収用等をされた場合において、配偶者居住権又は配偶者敷地利用権が消滅等をし、一定の補償金を取得するときは、その適用ができることとする。
(注)特例の対象となる上記の補償金の全部又は一部に相当する金額をもって取得する代替資産の範囲について所要の措置を講ずる。
④ 換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例の適用対象に、第一種市街地再開発事業等が施行された場合において、居住建物等に係る権利変換により施設建築物の一部等に配偶者居住権が与えられたときを加えることとする。
⑤ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記③及び④の改正に伴い、権利変換により、建物の賃借権を取得しなかった場合において一定の補償金を取得するとき及び施設建築物の一部等に賃借権が与えられた場合についても、これらの特例の適用対象となることを法令上明確化する。
(3) 森林組合法の改正を前提に、森林組合制度の見直し後も引き続き、森林組合等に委託して地域森林計画の対象とされた山林に係る土地を譲渡した場合を農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の800万円特別控除の対象とする。
(4) 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用期限を2年延長する。
(5) 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等の適用期限を2年延長する。
(6) 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の適用期限を2年延長する。
〔縮減等〕
(1) 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例について、次に掲げる譲渡を適用対象から除外した上、その適用期限を3年延長する。
① 都市再生特別措置法の認定整備事業計画に係る一定の都市再生整備事業の認定整備事業者に対する土地等の譲渡
② 都市計画区域内において行われる一団の宅地の造成(都市計画法の開発許可又は土地区画整理法の認可を受けて行われるものであること等の要件を満たすものに限る。)を行う者に対する土地等の譲渡
(2) 住宅の取得等をした家屋(以下「新規住宅」という。)をその居住の用に供した個人が、その居住の用に供した日の属する年から3年目に該当する年中に新規住宅及びその敷地の用に供されている土地等以外の資産の譲渡(以下「従前住宅等の譲渡」という。)をした場合において、その者が従前住宅等の譲渡につき次に掲げる特例の適用を受けるときは、新規住宅について住宅借入金等を有する場合の個人住民税における住宅借入金特別税額控除の適用を受けることができないこととする。
① 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
② 居住用財産の譲渡所得の特別控除
③ 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例
④ 既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例
(注)上記の改正は、令和2年4月1日以後に従前住宅等の譲渡をする場合について適用する。
3 租税特別措置等
(国 税)
〔新設〕
 国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例を次のとおり創設する。
(1)個人が、令和3年以後の各年において、国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、その国外不動産所得の損失の金額のうち国外中古建物の償却費に相当する部分の金額は、所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかったものとみなす。
(注1)上記の「国外中古建物」とは、個人において使用され、又は法人において事業の用に供された国外にある建物であって、個人が取得をしてこれをその個人の不動産所得を生ずべき業務の用に供したもののうち、不動産所得の金額の計算上その建物の償却費として必要経費に算入する金額を計算する際の耐用年数を次の方法により算定しているものをいう。
① 法定耐用年数の全部を経過した資産についてその法定耐用年数の20%に相当する年数を耐用年数とする方法
② 法定耐用年数の一部を経過した資産についてその資産の法定耐用年数から経過年数を控除した年数に、経過年数の20%に相当する年数を加算した年数を耐用年数とする方法
③ その用に供した時以後の使用可能期間の年数を耐用年数とする方法(その耐用年数を国外中古建物の所在地国の法令における耐用年数としている旨を明らかにする書類その他のその使用可能期間の年数が適切であることを証する一定の書類の添付がある場合を除く。)
(注2)上記の「国外不動産所得の損失の金額」とは、不動産所得の金額の計算上生じた国外中古建物の貸付けによる損失の金額(その国外中古建物以外の国外にある不動産等から生ずる不動産所得の金額がある場合には、当該損失の金額を当該国外にある不動産等から生ずる不動産所得の金額の計算上控除してもなお控除しきれない金額)をいう。
(2)上記(1)の適用を受けた国外中古建物を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上、その取得費から控除することとされる償却費の額の累計額からは、上記(1)によりなかったものとみなされた償却費に相当する部分の金額 を除くこととすることその他の所要の措置を講ずる。
〔延長・拡充〕
(1)公益法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除制度について、次の措置 を講ずる。
① 特例の対象となる寄附金の範囲に、国立大学法人、大学共同利用機関法人、公立大学法人又は独立行政法人国立高等専門学校機構のうちいわゆるパブリック・サポート・テスト要件及び情報公開に関する要件を満たすものに対する寄附金であって、その寄附金が学生又は不安定な雇用状態である研究者に対する研究への助成又は研究者としての能力の向上のための事業(以下「研究等支援事業」という。)に充てられることが確実なものとして次に掲げる要件を満たすことを所管庁が確認したものを加える。
イ 各法人が当該寄附金を研究等支援事業のための独立した基金(以下「研究等支援事業基金」という。)を設けて管理し、他の財源と区分して経理していること。
ロ 研究等支援事業基金からの使途が各法人の行う次に掲げる事業(学生又は一定の研究者を対象とするものに限る。)に限定されていること。
(イ)学生又は一定の研究者が公募により選定されて参加する研究に関するプロジェクトにおいて、当該学生又は一定の研究者が自立した研究者として行う研究活動に要する費用を負担する事業
(ロ)論文の刊行に要する費用、学会等への参加に要する旅費その他の費用で研究活動の成果を発表するために必要なものを負担する事業
(ハ)大学院に在学する学生又は一定の研究者のその専門とする分野に係る研究者としての能力及び資質の向上を主たる目的として、異分野の研究者との交流その他の他の研究者又は実務経験を有する者との交流を促進する事業
(注)上記の「一定の研究者」とは、博士の学位を取得した者又は所定の単位を修得の上博士課程(前期及び後期の課程に区分する博士課程における前期の課程を除く。)を退学した者のうち国立大学法人等に任期を定めて採用され、研究業務に従事している者で、学校教育法に規定する教授、准教授、講師、助教又は助手に該当しない者その他これに準ずる者をいう。
ハ 各法人は事業年度終了後3月以内に研究等支援事業基金への受入額、研究等支援事業基金からの支出額等の明細書を監査を経た上で所管庁に提出すること。
② 適用対象となる学校法人等が閲覧対象とすべき書類の範囲に、役員に対する報酬等の支給の基準その他一定の書類を加える。
③ いわゆるパブリック・サポート・テスト要件について、総収入金額及び受け入れた寄附金の額の総額から民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律に基づき事業を実施するために受け取った助成金の額を除外する。
④ その他所要の措置を講ずる。
(2)肉用牛の売却による農業所得の課税の特例について、次の措置を講ずる(法人税についても同様とする。)。
① 本特例の適用期限を3年延長する。
② 適用対象となる売却の範囲に、農林水産大臣の認定を受けた地方卸売市場において行う売却を加える。
(注)上記②の改正は、令和2年6月21日以後に行う売却について適用する。
(3) 山林所得に係る森林計画特別控除の適用期限を2年延長する。
(4) 公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税措置について、次の措置を講ずる。
① 申請書の提出があった日から1月以内に国税庁長官の承認をしないことの決定がなかった場合にその承認があったものとみなす特例について、対象範囲に認定NPO法人又は特例認定NPO法人に対する贈与又は遺贈(以下「贈与等」という。)でこれらの法人の役員等及び社員(これらの者の親族等を含む。)以外の者からのもののうち、その贈与等に係る財産が一定の手続の下でこれらの法人の行う特定非営利活動に充てるための基金に組み入れられるものを加える。
② 贈与等に係る財産を公益目的事業の用に直接供した日から2年以内に買い換える場合であっても、当該財産が上記①の基金に組み入れる方法により管理されている等の要件を満たすときは、当該財産の譲渡収入の全部に相当する金額をもって取得した資産を当該方法により管理する等の一定の要件の下で非課税措置の継続適用を受けることができることとする。
③ 文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律(仮称)の制定を前提に、法人税法別表第一に掲げる独立行政法人又は地方独立行政法人(博物館等の設置及び管理の業務を主たる目的とするものに限る。)に対する贈与等に係る有形文化財で一定のものを当該贈与等があった日から2年を経過する日までの期間内に、文化観光拠点施設を中核とした地域における文化観光の推進に関する法律(仮称)の認定拠点計画(仮称)又は認定地域計画(仮称)に記載された同法の一定の事業でこれらの法人の有する同法の文化観光拠点施設(仮称)に該当するものにおいて行われるもの(公益目的事業に該当するものに限る。)の用に直接供され、又は供される見込みである旨の証明書が添付された申請書の提出があった場合において、当該申請書の提出があった日から1月以内に国税庁長官の承認をしないことの決定がなかったときは、その承認があったものとみなす。
④ その他所要の措置を講ずる。
(5)認定NPO法人について、関係法令の改正によりいわゆるパブリック・サポート・テスト要件の総収入金額及び受入寄附金総額から民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律に基づき事業を実施するために受け取った助成金の額を除外する等の措置が講じられた後も、引き続き認定NPO法人等に寄附をした場合の寄附金控除の特例又は所得税額の特別控除等の対象とする。
(地方税)
〔新設〕
国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等について、所得税における特例の創設に伴い、所要の措置を講ずる。
〔延長・拡充〕
(1)肉用牛の売却による農業所得の課税の特例について、次の措置を講ずる。
① 本特例の適用期限を3年延長する。
② 適用対象となる売却の範囲に、農林水産大臣の認定を受けた地方卸売市場において行う売却を加える。
(注)上記②の改正は、令和2年6月21日以後に行う売却について適用する。
(2) 山林所得に係る森林計画特別控除の適用期限を2年延長する。
(3) 公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税措置について、所得税における見直しに伴い、所要の措置を講ずる。
(4)認定NPO法人について、関係法令の改正によりいわゆるパブリック・サポート・テスト要件の総収入金額及び受入寄附金総額から民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律に基づき事業を実施するために受け取った助成金の額を除外する等の措置が講じられた後も、引き続き認定NPO法人等に寄附をした場合の寄附金控除の対象とする。
(5) 農業経営基盤強化準備金制度の適用期限を1年延長する。
〔廃止・縮減等〕
(1) 金属鉱業等鉱害防止準備金制度は、適用期限の到来をもって廃止する。なお、令和2年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度については、現行法による準備金積立率(80%)に対して1年ごとに8分の1ずつ縮小した率による積立てを認める経過措置を講ずる。
(2) 特定災害防止準備金制度について、準備金積立率を60%(現行:100%)に引き下げた上、その適用期限を2年延長する。
(3)中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例について、対象となる個人の要件のうち常時使用する従業員の数の要件を500人以下(現行:1,000人以下)に引き下げた上、その適用期限を2年延長する。
4 その他 (国 税)
(1)未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直し
① 未婚のひとり親に対する税制上の措置
イ 居住者が、現に婚姻をしていない者のうち次に掲げる要件を満たすもの(寡婦又は寡夫である者を除く。)である場合には、その者のその年分の総所得金額等から35万円を控除する。
(イ)その者と生計を一にする子(総所得金額等の合計額が48万円以下であるものに限る。)を有すること。
(ロ)合計所得金額が500万円以下であること。
(ハ)次に掲げる要件のいずれかを満たすこと。
a その者が住民票に世帯主と記載されている者である場合には、その者と同一の世帯に属する者に係る住民票に世帯主との続柄として未届の妻又は未届の夫その他これらと同一の内容である旨の記載がされた者がいないこと。
b その者が住民票に世帯主と記載されている者でない場合には、その者の住民票に世帯主との続柄として未届の妻又は未届の夫その他これらと同一の内容である旨の記載がされていないこと。
ロ 上記イの控除については、給与等及び公的年金等の源泉徴収の際に適用できることとする。
ハ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和2年分以後の所得税について適用する。なお、給与所得者については令和2年分の年末調整において適用できることとするほか、所要の経過措置を講ずる。
② 寡婦(寡夫)控除の見直し
 寡婦(寡夫)控除について、次の見直しを行う。
イ 扶養親族その他その者と生計を一にする子(総所得金額等の合計額が48万円以下であるものに限る。)を有する寡婦の要件に、合計所得金額が500万円以下であることを加える。
ロ 寡婦及び寡夫の要件に、次に掲げるいずれかの要件を満たすことを加える。
(イ)その者が住民票に世帯主と記載されている者である場合には、その者と同一の世帯に属する者に係る住民票に世帯主との続柄として未届の妻又は未届の夫その他これらと同一の内容である旨の記載がされた者がいないこと。
(ロ)その者が住民票に世帯主と記載されている者でない場合には、その者の住民票に世帯主との続柄として未届の妻又は未届の夫その他これらと同一の内容である旨の記載がされていないこと。
ハ 現行の寡婦控除の特例を廃止する。
ニ その者と生計を一にする子(総所得金額等の合計額が48万円以下であるものに限る。)を有する寡婦に係る寡婦控除及び寡夫控除の控除額を35万円に引き上げる。
ホ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は令和2年分以後の所得税について適用するほか、所要の経過措置を講ずる。
(2)日本国外に居住する親族に係る扶養控除の適用について、次の措置を講ずる。
① 非居住者である親族に係る扶養控除の対象となる親族から、年齢30歳以上70歳未満の者であって次のいずれにも該当しない者を除外する。
イ 留学により非居住者となった者
ロ 障害者
ハ その居住者からその年における生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者
② 年齢30歳以上70歳未満の非居住者であって上記①イ又はハに該当する者に係る扶養控除の適用を受けようとする居住者は、給与等若しくは公的年金等の源泉徴収、給与等の年末調整又は確定申告の際に、上記①イ又はハに該当する者であることを明らかにする書類を提出等し、又は提示しなければならないこととする。
③ その他所要の措置を講ずる。
(注1)上記①イに該当する者であることを明らかにする書類は外国政府又は外国の地方公共団体が発行した留学の在留資格に相当する資格をもって在留する者であることを証する書類とし、上記①ハに該当する者であることを明らかにする書類は現行の送金関係書類でその送金額等が38万円以上であることを明らかにする書類とする。
(注2)上記の改正は、令和5年1月1日以後に支払われる給与等及び公的年金等並びに令和5年分以後の所得税について適用する。
(3)確定拠出年金法等の改正を前提に次の措置を講ずる。
① 確定拠出年金制度等について次の見直し等が行われた後も、現行の税制上の措置を適用する。
イ  確定拠出年金制度及び農業者年金制度の加入可能要件について、企業型確定拠出年金制度は厚生年金被保険者であれば、個人型確定拠出年金制度及び農業者年金制度は国民年金被保険者であれば、それぞれ加入可能とする。
ロ 確定拠出年金制度、確定給付企業年金制度及び農業者年金制度の受給開始時期等の選択可能な範囲を拡大する。
ハ 確定拠出年金法の簡易企業型年金及び中小事業主掛金納付制度について、これらの制度が実施可能な事業主の範囲を拡大する。
ニ 企業型確定拠出年金加入者について、企業型確定拠出年金の規約の定めなしに個人型確定拠出年金制度への加入を可能とする。
ホ 確定給付企業年金制度の終了時における同制度から個人型確定拠出年金制度への年金資産の移換及び加入者の退職等に伴う企業型確定拠出年金制度から通算企業年金制度への年金資産の移換を可能とする。
② その他所要の措置を講ずる。
(4) オリンピック競技大会における成績優秀者を表彰するものとして各競技統括団体から交付される金品の非課税限度額について、令和2年に開催される東京オリンピック競技大会における公益財団法人日本オリンピック委員会から交付される金品の額を参考に引き上げるとともに、パラリンピック競技大会における成績優秀者を表彰するものとして各競技統括団体から交付される金品について同額までの部分を非課税とする。 (注)本非課税措置の適用対象となるパラリンピック競技大会の各競技統括団体は、文部科学大臣が財務大臣と協議して指定するものとする。
(5) 収入金額とすべき経済的利益の価額を譲渡についての制限が解除された日における価額とする収入金額の計算に関する措置について、次の措置を講ずる。
① 発行法人等に対する役務の提供の対価として交付される譲渡制限付株式でその譲渡制限付株式と引換えにする払込み又は給付を要しない場合のその譲渡制限付株式を対象に加える。
② 発行法人等に対する役務の提供の対価として譲渡制限付株式の交付を受けた個人が死亡した場合において、当該譲渡制限付株式のうち当該個人の死亡の時に発行法人等が無償で取得することとなる事由に該当しないことが確定しているものについては、当該個人の死亡の日におけるその譲渡制限付株式に係る経済的利益の価額を当該個人の収入金額とする。
(注)上記①の改正は、会社法の一部を改正する法律の施行の日以後に交付の決議がされる譲渡制限付株式について適用する。
(6)雑所得を生ずべき業務に係る所得の金額の計算や確定申告について、次の見直しを行う。
① その年の前々年分の雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が300万円以下である個人は、その年分の当該業務に係る雑所得の金額の計算上総収入金額及び必要経費に算入すべき金額を当該業務につきその年において収入した金額及び支出した費用の額とすることができる特例(いわゆる「現金主義による所得計算の特例」)の適用ができることとする。
② その年の前々年分の雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が300万円を超える個人は、現金預金取引等関係書類を起算日から5年間、その者の住所地又は居所地に保存しなければならないこととする。
③ その年の前々年分の雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が1,000万円を超える個人が確定申告書を提出する場合には、当該業務に係るその年中の総収入金額及び必要経費の内容を記載した書類を当該確定申告書に添付しなければならないこととする。
(注1)上記の「現金預金取引等関係書類」とは、その業務に係る取引に関して相手方から受け取った書類及び自己の作成した書類のうち、現金の収受若しくは払出し又は預貯金の預入若しくは引出しに際して作成されたものをいう。
(注2)上記の「起算日」とは、現金預金取引等関係書類の作成又は受領の日の属する年の翌年3月15日の翌日をいう。
(注3)上記の改正は、令和4年分以後の所得税について適用する。
(7) 確定申告書等に記載する各種所得に係る収入金額の支払者に関する事項について、その支払者が法人である場合には、現行の支払者の本店等の所在地の記載に代えて、支払者の法人番号の記載によることができることとする。 (注)上記の改正は、令和3年分以後の確定申告書等を令和4年1月1日以後に提出する場合について適用する。
(8)医療費控除の適用を受ける際の確定申告書の添付書類について、次の措置を講ずる。
① 現行の医療保険者の医療費の額等を通知する書類の添付に代えて、次に掲げる書類の添付ができることとする。
イ 審査支払機関の医療費の額等を通知する書類(当該書類に記載すべき事項が記録された電磁的記録を一定の方法により印刷した書面で、真正性を担保するための所要の措置が講じられているものとして国税庁長官が定めるものを含む。)
ロ 医療保険者の医療費の額等を通知する書類に記載すべき事項が記録された電磁的記録を一定の方法により印刷した書面で、真正性を担保するための所要の措置が講じられているものとして国税庁長官が定めるもの
(注1)上記の改正により、電子情報処理組織を使用する方法(e -Tax)により確定申告を行う場合においても、マイナポータルを使用して取得する審査支払機関の医療費の額等を通知する書類に記載すべき事項が記録された一定の電磁的記録の送信をもって、当該書類の添付に代えることができることとなる。
(注2)上記の「審査支払機関」とは、社会保険診療報酬支払基金及び国民健康保険団体連合会をいう。
② 電子情報処理組織を使用する方法( e-Tax)により確定申告を行う場合において、次に掲げる書類の記載事項を入力して送信するときは、これらの書類の確定申告書への添付に代えることができることとする。この場合において、税務署長は、確定申告期限等から5年間、その送信に係る事項の確認のために必要があるときは、これらの書類を提示又は提出させることができることとする。
イ 医療保険者の医療費の額等を通知する書類
ロ 審査支払機関の医療費の額等を通知する書類
(注)上記の改正は、令和3年分以後の確定申告書を令和4年1月1日以後に提出する場合について適用する。
(9)寄附金控除の適用を受ける際の確定申告書の添付書類について、現行の特定寄附金を受領した者の特定寄附金の額等を証する書類の添付等に代えて、地方公共団体と寄附の仲介に係る契約を締結した一定の事業者(以下「特定寄附仲介事業者」という。)の特定寄附金の額等を証する書類(当該書類に記載すべき事項が記録された電磁的記録を一定の方法により印刷した書面で、真正性を担保するための所要の措置が講じられているものとして国税庁長官が定めるものを含む。以下同じ。)の添付等ができることとする。
(注1)上記の改正により、電子情報処理組織を使用する方法( e-Tax)により確定申告を行う場合においても、特定寄附仲介事業者の特定寄附金の額等を証する書類に記載すべき事項が記録された一定の電磁的記録の送信をもって、当該書類の添付等に代えることができること等となる。
(注2)上記の改正は、令和3年分以後の確定申告書を令和4年1月1日以後に提出する場合について適用する。
(10)源泉徴収(青色申告書を提出した個人の事業所得の金額等に係る支払及び青色申告書を提出した法人の支払に係るものを除く。)における推計課税について次の措置を講ずる。
① 源泉徴収義務者が給与等の支払に係る所得税を納付しなかった場合において、税務署長がその源泉徴収義務者からその給与等の支払に係る所得税を徴収するときは、その給与等の支払を受けた者の労務に従事した期間、労務の性質、その提供の程度その他の事項により、その給与等の支払を受けた者ごとの支払金額及びその支払の日の推計等をして、これをすることができる。
② 税務署長は、上記①によりその給与等の支払を受けた者ごとの支払金額及びその支払の日の推計等をすることが困難である場合には、給与等の支払の日が各月末日であるものとし、給与等の支払金額の総額を給与等の支払を受けた者の人数で除し、これを給与等の支払金額の総額の計算の基礎となる期間の月数で除して計算した金額を、その支払を受けた者ごとの各月の給与等の支払金額として、所得税を徴収することができる。
③ 税務署長は、上記②の場合には、源泉徴収義務者の収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量その他事業の規模等により、給与等の支払金額の総額又は給与等の支払を受けた者の人数の推計をして、所得税を徴収することができる。
④ 給与等のほか、退職手当等及び報酬・料金等並びに非居住者が支払を受けるこれらのものについても同様の措置を講ずるほか、所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和3年1月1日以後に支払われる給与等、退職手当等及び報酬・料金等について適用する。
(11) 高等学校等就学支援金の支給に関する法律の高等学校等就学支援金について、所要の法令改正を前提に、引き続き次の措置を講ずる。
① 所得税を課さない。
② 国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(12) 介護保険法の改正を前提に、同法の第一号事業支給費について、引き続き所得税を課さないこととする。
(13) 雇用保険法の改正を前提に、同法の失業等給付について、引き続き次の措置を講ずる。
① 所得税を課さない。
② 国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(14) 労働者災害補償保険法の改正を前提に、同法の保険給付について、引き続き次の措置を講ずる。
① 所得税を課さない。
② 国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(地方税)
〈個人住民税〉
(1)未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直し
① 未婚のひとり親に対する税制上の措置
イ 所得割の納税義務者が、現に婚姻をしていない者のうち次に掲げる要件を満たすもの(寡婦又は寡夫である者を除く。)である場合には、その者の前年の総所得金額等から30万円を控除する。
(イ)その者と生計を一にする子(前年の総所得金額等の合計額が48万円以下であるものに限る。)を有すること。
(ロ)前年の合計所得金額が500万円以下であること。
(ハ)次に掲げる要件のいずれかを満たすこと。
a その者が住民票に世帯主と記載されている者である場合には、その者と同一の世帯に属する者に係る住民票に世帯主との続柄として未届の妻又は未届の夫その他これらと同一の内容である旨の記載がされた者がいないこと。
b その者が住民票に世帯主と記載されている者でない場合には、その者の住民票に世帯主との続柄として未届の妻又は未届の夫その他これらと同一の内容である旨の記載がされていないこと。
ロ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和3年度分以後の個人住民税について適用する。
② 寡婦(寡夫)控除の見直し
 寡婦(寡夫)控除について、次の見直しを行う。
イ 扶養親族その他その者と生計を一にする子(前年の総所得金額等の合計額が48万円以下であるものに限る。)を有する寡婦の要件に、前年の合計所得金額が500万円以下であることを加える。
ロ 寡婦及び寡夫の要件に、次に掲げるいずれかの要件を満たすことを加える。
(イ)その者が住民票に世帯主と記載されている者である場合には、その者と同一の世帯に属する者に係る住民票に世帯主との続柄として未届の妻又は未届の夫その他これらと同一の内容である旨の記載がされた者がいないこと。
(ロ)その者が住民票に世帯主と記載されている者でない場合には、その者の住民票に世帯主との続柄として未届の妻又は未届の夫その他これらと同一の内容である旨の記載がされていないこと。
ハ 現行の寡婦控除の特別加算を廃止する。
ニ その者と生計を一にする子(前年の総所得金額等の合計額が48万円以下であるものに限る。)を有する寡婦に係る寡婦控除及び寡夫控除の控除額を30万円に引き上げる。
ホ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和3年度分以後の個人住民税について適用する。
③ 上記①及び②に伴う所要の措置
 上記①及び②に伴い、次の措置を講ずる。
イ 現行の寡婦、寡夫又は単身児童扶養者に対する個人住民税の非課税措置を見直し、上記②の見直し後の寡婦若しくは寡夫又は上記①イの控除の対象となる未婚のひとり親(これらの者の前年の合計所得金額が135万円を超える場合を除く。)を対象とする。
ロ 上記①イの控除の対象となる未婚のひとり親である所得割の納税義務者に係る調整控除について、現行の寡婦控除の特別加算の対象となっている寡婦である所得割の納税義務者又は寡夫である所得割の納税義務者に準じて、それぞれ所要の措置を講ずる。
ハ その他所要の措置を講ずる。
(2) 個人住民税について、所得税における次の見直しに伴い、所要の措置を講ずる。
① 日本国外に居住する親族に係る扶養控除の適用の見直し
② 雑所得を生ずべき業務に係る所得の金額の計算や確定申告の見直し
③ 確定申告書等の記載事項及び添付書類の見直し
(3)確定拠出年金法等の改正を前提に次の措置を講ずる。
① 確定拠出年金制度等について次の見直し等が行われた後も、現行の税制上の措置を適用する。
イ 確定拠出年金制度及び農業者年金制度の加入可能要件について、企業型確定拠出年金制度は厚生年金被保険者であれば、個人型確定拠出年金制度及び農業者年金制度は国民年金被保険者であれば、それぞれ加入可能とする。
ロ 確定拠出年金制度、確定給付企業年金制度及び農業者年金制度の受給開始時期等の選択可能な範囲を拡大する。
ハ 確定拠出年金法の簡易企業型年金及び中小事業主掛金納付制度について、これらの制度が実施可能な事業主の範囲を拡大する。
ニ 企業型確定拠出年金加入者について、企業型確定拠出年金の規約の定めなしに個人型確定拠出年金制度への加入を可能とする。
ホ 確定給付企業年金制度の終了時における同制度から個人型確定拠出年金制度への年金資産の移換及び加入者の退職等に伴う企業型確定拠出年金制度から通算企業年金制度への年金資産の移換を可能とする。
② その他所要の措置を講ずる。
(4) オリンピック競技大会における成績優秀者を表彰するものとして各競技統括団体から交付される金品の非課税限度額について、令和2年に開催される東京オリンピック競技大会における公益財団法人日本オリンピック委員会から交付される金品の額を参考に引き上げるとともに、パラリンピック競技大会における成績優秀者を表彰するものとして各競技統括団体から交付される金品について同額までの部分を非課税とする。
(注)本非課税措置の適用対象となるパラリンピック競技大会の各競技統括団体は、文部科学大臣が財務大臣と協議して指定するものとする。
(5) 収入金額とすべき経済的利益の価額を譲渡についての制限が解除された日における価額とする収入金額の計算に関する措置について、次の措置を講ずる。
① 発行法人等に対する役務の提供の対価として交付される譲渡制限付株式でその譲渡制限付株式と引換えにする払込み又は給付を要しない場合のその譲渡制限付株式を対象に加える。
② 発行法人等に対する役務の提供の対価として譲渡制限付株式の交付を受けた個人が死亡した場合において、当該譲渡制限付株式のうち当該個人の死亡の時に発行法人等が無償で取得することとなる事由に該当しないことが確定しているものについては、当該個人の死亡の日におけるその譲渡制限付株式に係る経済的利益の価額を当該個人の収入金額とする。
(注)上記①の改正は、会社法の一部を改正する法律の施行の日以後に交付の決議がされる譲渡制限付株式について適用する。
(6) 高等学校等就学支援金の支給に関する法律の高等学校等就学支援金について、所要の法令改正を前提に、引き続き次の措置を講ずる。
① 個人住民税を課さない。
② 地方税の滞納処分による差押えを禁止する。
(7) 介護保険法の改正を前提に、同法の第一号事業支給費について、引き続き個人住民税を課さないこととする。
(8) 雇用保険法の改正を前提に、同法の失業等給付について、引き続き次の措置を講ずる。
① 個人住民税を課さない。
② 地方税の滞納処分による差押えを禁止する。
(9) 労働者災害補償保険法の改正を前提に、同法の保険給付について、引き続き次の措置を講ずる。
① 個人住民税を課さない。
② 地方税の滞納処分による差押えを禁止する。
(10) 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の必要経費算入制度について、対象となる国庫補助金等の範囲に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法に基づく助成金で燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業等に係るものを加える。
(11) 国税における諸制度の取扱い等を踏まえ、その他所要の措置を講ずる。
(12)市町村の合併の特例に関する法律の期限の延長を前提に、合併市町村に係る地方税の特例措置の適用期限を10年延長する。
〈国民健康保険税〉
(13)国民健康保険税の基礎課税額等に係る課税限度額について、次のとおりとする。
① 基礎課税額に係る課税限度額を63万円(現行:61万円)に引き上げる。
② 介護納付金課税額に係る課税限度額を17万円(現行:16万円)に引き上げる。
(14)国民健康保険税の減額の対象となる所得の基準について、次のとおりとする。
① 5割軽減の対象となる世帯の軽減判定所得の算定において被保険者の数に乗ずべき金額を28.5万円(現行:28万円)に引き上げる。
② 2割軽減の対象となる世帯の軽減判定所得の算定において被保険者の数に乗ずべき金額を52万円(現行:51万円)に引き上げる。
③ 軽減判定所得の算定において基礎控除額相当分の基準額を43万円(現行:33万円)に引き上げるとともに、被保険者のうち一定の給与所得者と公的年金等の支給を受ける者の数の合計数から1を減じた数に10万円を乗じて得た金額を加える。
(注)上記③の改正は、令和3年度分以後の国民健康保険税について適用する。 〈森林環境譲与税〉
(15)森林環境譲与税の見直し
 市町村及び都道府県における森林の整備及びその促進に関する施策の実施状況等に鑑み、令和6年度までの各年度において譲与する森林環境譲与税に、地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金を活用することができることとし、予算措置を前提に、令和2年度から令和6年度までの各年度の譲与額を見直す等の所要の措置を講ずる。
(注)各年度において公庫債権金利変動準備金を活用する場合には、当該年度の森林環境譲与税について、交付税及び譲与税配付金特別会計における借入金は充てないこととする。

二 資産課税
1 所有者不明土地等に係る課税上の課題への対応 所有者不明土地等に係る固定資産税の課税上の課題に対応するため、次の措置を講ずる。
(1)現に所有している者の申告の制度化
 市町村長は、その市町村内の土地又は家屋について、登記簿等に所有者として登記等がされている個人が死亡している場合、当該土地又は家屋を現に所有している者(以下「現所有者」という。)に、当該市町村の条例で定めるところにより、当該現所有者の氏名、住所その他固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができることとする。
(注1)固定資産税における他の申告制度と同様の罰則を設ける。
(注2)上記の改正は、令和2年4月1日以後の条例の施行の日以後に現所有者であることを知った者について適用する。
(2)使用者を所有者とみなす制度の拡大
① 市町村は、一定の調査を尽くしてもなお固定資産の所有者が一人も明らかとならない場合には、その使用者を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録し、その者に固定資産税を課することができることとする。
(注)上記の「一定の調査」とは、住民基本台帳及び戸籍簿等の調査並びに使用者と思料される者その他の関係者への質問その他の所有者の特定のために必要な調査とする。
② ①により使用者を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録しようとする場合には、その旨を当該使用者に通知するものとする。
③ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和3年度以後の年度分の固定資産税について適用する。
2 租税特別措置等
(国 税)
〔延長・拡充等〕
〈相続税・贈与税〉
(1) 農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、都市計画法の改正を前提に、特例適用農地等の範囲に、三大都市圏の特定市の市街化区域内に所在する農地で、地区計画農地保全条例(仮称)により制限を受ける一定の地区計画の区域内に所在するものを加える。
(2) 良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の改正を前提に、医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等の適用期限を3年延長する。
(3) 相続税の物納の特例について、関係法令等の改正を前提に、適用対象となる登録美術品の範囲に制作者が生存中である美術品のうち一定のものを加える。
(4)認定NPO法人について、関係法令の改正によりいわゆるパブリック・サポート・テスト要件の総収入金額及び受入寄附金総額から民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律に基づき事業を実施するために受け取った助成金の額を除外する等の措置が講じられた後も、引き続き相続財産を贈与した場合の相続税の非課税制度の対象とする。
〈登録免許税〉
(5) 住宅用家屋の所有権の保存登記若しくは移転登記又は住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(6) 特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(7) 認定低炭素住宅の所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(8) 特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(9) マンション建替事業の施行者等が受ける権利変換手続開始の登記等に対する登録免許税の免税措置の適用期限を2年延長する。
(10) 農地中間管理機構が農用地等を取得した場合の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(11) 独立行政法人農林漁業信用基金が受ける抵当権の設定登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置について、木材の安定供給の確保に関する特別措置法の事業計画の認定を受けた木材製品利用事業者等が行う木材安定供給確保事業に必要な資金の借入れに係る債務保証を適用対象に加える。
(12) 産業競争力強化法に規定する認定事業再編計画等に基づき行う登記に対する登録免許税の税率の軽減措置を2年延長する。
(13) 特定創業支援等事業による支援を受けて行う会社の設立の登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(14) 認定経営力向上計画に基づき行う登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(15) 農業競争力強化支援法に規定する認定事業再編計画に基づき行う登記に対する登録免許税の税率の軽減措置について、関係法令の改正を前提に、対象業種に農業資材の卸売事業及び小売事業を加える。
(16) 預金保険法に規定する第一号措置を行うべき旨の内閣総理大臣の決定等に基づく預金保険機構による金融機関等の株式の引受け等に伴い、当該金融機関等が受ける資本金の額の増加の登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(17) 認定特定民間中心市街地経済活力向上事業計画に基づき不動産を取得した場合の所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(18) 特定国際船舶の所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(19) 低未利用土地権利設定等促進計画に基づき不動産を取得した場合の所有権等の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(20)特定連絡道路工事施行者が取得した特定連絡道路に係る土地の所有権の移転登記に対する登録免許税の免税措置の適用期限を2年延長する。
〈印紙税〉
(21)不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置の適用期限を2年延長する。
(地方税)
〔新設〕
〈固定資産税・都市計画税〉
(1) 特定高度情報通信等システムの普及の促進に関する法律(仮称)の制定を前提に、同法の規定により認定を受けた特定高度情報通信等システム導入計画(仮称)に基づき、電波法の規定によりローカル5G無線局に係る免許(地域課題の解決に資すると市町村長が同意の上で総務大臣が認めたものに限る。)を受けた者が、新たに取得した一定の償却資産(特定高度情報通信等システムの普及の促進に関する法律(仮称)の規定により主務大臣の確認を受けたもので、取得価額の合計額が3億円以下のものに限る。)に係る固定資産税について、課税標準を最初の3年間価格の2分の1とする特例措置を令和4年3月31日まで講ずる。
(2)農地中間管理事業の推進に関する法律の規定により市町村が公表した人・農地プランにおいて地域の中心となる経営体として位置付けられた農業経営基盤強化促進法に規定する認定就農者に利用させるため、農業協同組合等が取得した一定の償却資産に係る固定資産税について、課税標準を最初の5年間価格の3分の2とする特例措置を令和4年3月31日まで講ずる。
(3) 都市再生特別措置法の改正を前提に、市町村が作成する都市再生整備計画で定めた滞在快適性等向上区域(仮称)内の一体型滞在快適性等向上事業(仮称)の用に供する一定の固定資産に係る固定資産税及び都市計画税について、課税標準を最初の5年間価格の2分の1とする特例措置を令和4年3月31日まで講ずる。
(4)水防法に規定する浸水被害軽減地区の指定を受けた土地に係る固定資産税及び都市計画税について、課税標準を最初の3年間価格に3分の2を参酌して2分の1以上6分の5以下の範囲内において市町村の条例で定める割合を乗じて 得た額とする特例措置を令和5年3月31日まで講ずる。
〈事業所税〉
(5)マンションの建替え等の円滑化に関する法律の改正を前提に、敷地分割組合(仮称)を公益法人等とみなして、収益事業以外の事業に係る事業所税につい て、非課税とする措置を講ずる。
〔延長・拡充等〕
〈固定資産税・都市計画税〉
(1)地震防災対策の用に供する償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、首都直下地震緊急対策区域を対象地域に加えるとともに、地震防災対策強化地域を対象地域から除外した上、その適用期限を3年延長する。
(2)民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律に基づき、国又は地方公共団体により選定された選定事業者が、選定事業により整備する公共施設のうち公共代替性が強く、民間競合のおそれのない施設の用に供する家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を5年延長する。
(3)沖縄電力株式会社が電気供給業の用に供する償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(4)特定通信・放送開発事業実施円滑化法に基づき、総務大臣から実施計画について認定を受けた一定の事業者が、首都直下地震緊急対策区域外で取得し、専ら同区域内のデータセンターのバックアップの事業の用に供する一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(5) 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に規定する特別特定建築物に該当する家屋のうち主に実演芸術の公演等を行う一定のものについて、同法に基づく建築物移動等円滑化誘導基準に適合させるよう改修工事を行った家屋に係る固定資産税及び都市計画税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
(6) 所有する全ての農地(10a未満の自作地を除く。)に農地中間管理事業のための賃借権等を新たに設定し、かつ、当該賃借権等の設定期間が10年以上である農地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(7) 都市再生推進法人が、都市再生特別措置法に規定する立地誘導促進施設協定に基づき管理する一定の施設の用に供する土地及び当該土地の上に存する償却資産に係る固定資産税及び都市計画税について、課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(8) 新築住宅に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
(9) 鉄道事業者等がその事業の用に供する鉄道施設等を高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に規定する公共交通移動等円滑化基準に適合させるために実施する一定の鉄道駅等の改良工事により取得した一定の家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を1年延長する。
(10) 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に規定する鉄道事業再構築事業を実施する路線において政府の補助を受けて取得した一定の家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(11) 国内路線に就航する航空機に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(12) 水防法に規定する避難確保・浸水防止計画に基づき、地下街等の所有者又は管理者が取得する一定の浸水防止用設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
(13) 鉄軌道事業者が首都直下地震・南海トラフ地震に備えた鉄道施設等の耐震補強工事によって新たに取得した一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(14) 新築の認定長期優良住宅に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
(15) 耐震改修等を行った住宅に対して、次の措置を講ずる。
① 耐震改修を行った住宅に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
② バリアフリー改修を行った住宅に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
③ 省エネ改修を行った住宅に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
(16) 建築物の耐震改修の促進に関する法律により耐震診断を義務付けられ、その結果が所管行政庁に報告された既存家屋(その報告に関する命令又は必要な耐震改修に関する指示の対象となったもの及び住宅を除く。)について、政府の補助を受けて、耐震基準に適合させるよう改修工事を行い、その旨を市町村に申告した場合に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を3年延長する。
(17)津波防災地域づくりに関する法律に規定する推進計画区域において、同法に規定する推進計画に基づき新たに取得等された津波対策の用に供する償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を4年延長する。
〈不動産取得税〉
(18) 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律に基づき、国又は地方公共団体により選定された選定事業者が、選定事業により整備する公共施設のうち公共代替性が強く、民間競合のおそれのない施設の用に供する家屋に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を5年延長する。
(19) 中小企業者が取得する健康サポート薬局の用に供する不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(20) 中小事業者等が中小企業等経営強化法に規定する認定経営力向上計画に従って行う事業の譲受けにより取得した一定の不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(21) 都市再生特別措置法の規定による公告があった低未利用土地権利設定等促進計画に基づき取得する居住誘導区域又は都市機能誘導区域内にある一定の土地に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(22) 河川法に規定する高規格堤防の整備に係る事業のために使用された土地の上に建築されていた家屋について移転補償金を受けた者が当該土地の上に取得する代替家屋に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(23) 不動産取得税について、新築住宅を宅地建物取引業者等が取得したものとみなす日を住宅新築の日から1年(本則6月)を経過した日に緩和する特例措置の適用期限を2年延長する。
(24) 新築住宅特例適用住宅用土地に係る不動産取得税の減額措置(床面積の2倍(200 ㎡を限度)相当額等の減額)について、土地取得後の住宅新築までの経過年数要件を緩和する特例措置の適用期限を2年延長する。
(25) マンションの建替え等の円滑化に関する法律に規定する施行者又はマンション敷地売却組合が取得する要除却認定マンション及びその敷地に係る不動産取得税の非課税措置の適用期限を2年延長する。
(26)新築の認定長期優良住宅に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。 〈事業所税〉
(27)マンションの建替え等の円滑化に関する法律の改正を前提に、マンション敷地売却組合の業務範囲の見直し後も、引き続き公益法人等とみなして、収益事業以外の事業に係る事業所税について、非課税とする措置を講ずる。
〔廃止・縮減等〕
〈固定資産税・都市計画税〉
(1) 農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律の認定を受けた事業者が取得した一定のバイオ燃料製造設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、ガス製造設備以外の製造設備に係る課税標準を価格の3分の2(現行:2分の1)とした上、その適用期限を2年延長する。
(2)公害防止用設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
① 水質汚濁防止法の特定施設に係る汚水又は廃液を処理するための施設について、脱有機酸装置及び脱フェノール装置を適用対象から除外した上、電気供給業を営む者が取得し電気供給業の用に供する施設を適用対象から除外する。
② テトラクロロエチレン溶剤を使用するドライクリーニング機に係る活性炭利用吸着式処理装置を適用対象から除外する。
③ 下水道除害施設のうち濃縮又は燃焼装置、蒸発洗浄又は冷却装置、脱有機酸装置、脱フェノール装置及び脱アンモニア装置を適用対象から除外する。
(3) 農業協同組合等が取得した農林漁業者等の共同利用に供する機械及び装置に 係る固定資産税の課税標準の特例措置について、次のとおり見直しを行う。
① 中小企業高度化資金及び卸売市場近代化資金の貸付けを受けて取得した機械及び装置を特例措置の対象から除外する。
② 農業近代化資金、漁業近代化資金、林業・木材産業改善資金、日本政策金融公庫資金(農林漁業関係)及び沖縄振興開発金融公庫資金(農林漁業関係)の貸付けを受けて取得した機械及び装置に係る特例措置について、適用期限を3年とする。
(4) 電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法に規定する一定の発電設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、出力が5,000kW以上の水力発電設備に係る課税標準を価格に次の割合を乗じて得た額とした上、その適用期限を2年延長する。
① 大臣配分資産又は知事配分資産 4分の3(現行:3分の2)
② その他の資産 4分の3を参酌して12分の7以上12分の11以下の範囲内において市町村の条例で定める割合(現行:3分の2を参酌して2分の1以上6分の5以下の範囲内において市町村の条例で定める割合)
(5) 流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の認定を受けた事業者が、総合効率化計画に基づき取得した一定の家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置について、小規模な総合効率化事業者以外が取得した貨物搬送装置及び新造車両に係る課税標準を価格の3分の2(現行:5分の3)とした上、その適用期限を2年延長する。
(6) 日本貨物鉄道株式会社が取得した新たに製造された一定の機関車に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、代替車両であって、既存更新車両の最大積載量を超える車両及び代替車両以外の車両であって、高速走行、大量牽引又は大量積載が可能な電気機関車を対象から除外した上、その適用期限を2年延長する。
(7) 国際戦略港湾及び一定の要件を満たす国際拠点港湾において、港湾運営会社が、国の無利子資金の貸付け又は補助を受けて取得した一定の荷さばき施設等に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置について、特例港湾運営会社を適用対象から除外する。
(8) 国家戦略特別区域法に基づく特定中核事業のうち医療分野における一定の研究開発に関する事業の実施主体として同法の認定区域計画に定められた者が国家戦略特別区域内において取得した当該研究開発の用に供する一定の設備等(法人税の特別償却の対象となるものに限る。)に係る固定資産税の課税標準の特例措置を廃止する。
(9) ラジオ放送を行う基幹放送事業者又は基幹放送局提供事業者が取得した災害対策のための一定の無線設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置を廃止する。
(10) 郵政民営化に伴い合併前の郵便事業株式会社及び郵便局株式会社が日本郵政公社から承継し、かつ、日本郵便株式会社が所有する一定の固定資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置を廃止する。
(11) 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律に規定する選定事業者が政府の補助を受けて選定事業により整備する国立大学法人の校地内の校舎の用に供する家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置を廃止する。
(12) 一般送配電事業者等が新たに建設した変電所又は送電施設の用に供する一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置を廃止する。
(13) 都市再生特別措置法に規定する認定誘導事業者が誘導施設の整備に係る事項が記載された立地適正化計画に基づき整備した公共施設等の用に供する家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置を廃止する。
(14)成田国際空港株式会社がその事業の用に供する一定の施設に係る固定資産税の課税標準の特例措置を廃止する。
〈不動産取得税〉
(15)民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律に規定する選定事業者が政府の補助を受けて選定事業により整備する国立大学法人の校地内の校舎の用に供する家屋に係る不動産取得税の課税標準の特例措置を廃止する。
3 その他
(国 税)
(1) 相続税について、確定拠出年金法等の改正を前提に、加入者の退職等に伴う企業型確定拠出年金制度から通算企業年金制度への年金資産の移換を可能とする見直しに伴う所要の措置を講ずる。
(2) 相続税・贈与税における次に掲げる届出書等について、貸借対照表・損益計算書の添付を要しないこととする。
① 非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予における継続届出書等
② 担保が保証人(法人)の保証である場合における延納申請書
③ 非上場株式を物納する場合における物納申請書
(3) 介護保険法の改正を前提に、同法に基づく社会福祉事業について、社会福祉法人が社会福祉事業の用に供するために取得する不動産に係る所有権の移転登記等に対する登録免許税の非課税措置(登録免許税法別表第三)等を引き続き適用する。
(4) 介護保険法の改正を前提に、同法に基づく第一号事業について、その事業に係る審査及び支払に関する文書に対する印紙税の非課税措置を引き続き適用する。
(5)森林組合法の改正を前提に、森林組合の組合員資格の見直し等が行われた後も、森林組合及び森林組合連合会の作成する出資証券に対する印紙税の非課税措置を引き続き適用する。
(地方税)
〈固定資産税・都市計画税〉
(1) 介護保険法の改正を前提に、改正後の社会福祉事業の用に供する固定資産について、現行制度と同様の特例措置を講ずる。
(2) 森林組合法の改正を前提に、改正後の森林組合等について、現行制度と同様の特例措置を講ずる。
(3)都市再生特別措置法の改正を前提に、都市計画事業に要する費用に、同法の規定により都市計画事業として施行する都市計画施設の計画的な改修、更新に関する事業に要する費用を含め、都市計画税を充てることとする。
〈不動産取得税〉
(4) 介護保険法の改正を前提に、改正後の社会福祉事業の用に供する不動産について、現行制度と同様の特例措置を講ずる。
(5) 森林組合法の改正を前提に、改正後の森林組合等について、現行制度と同様の特例措置を講ずる。
(6)都市計画法の改正を前提に、農地等に係る不動産取得税の徴収猶予制度について、対象となる農地等の範囲に、農と住の調和したまちづくりに係る地区計画区域内の農地を加える見直しを行う。
〈事業所税〉
(7) 介護保険法の改正を前提に、改正後の社会福祉事業の用に供する施設について、現行制度と同様の特例措置を講ずる。
(8) 森林組合法の改正を前提に、改正後の森林組合等について、現行制度と同様の特例措置を講ずる。

三 法人課税
1 イノベーション強化に向けた取組み (国 税)
(1)オープンイノベーションに係る措置の創設
(注)中小企業におけるオープンイノベーションに係る措置については後掲。
 青色申告書を提出する法人で特定事業活動を行うもの(以下「対象法人」という。)が、令和2年4月1日から令和4年3月31日までの間に特定株式を取得し、かつ、これをその取得した日を含む事業年度末まで有している場合において、その特定株式の取得価額の25%以下の金額を特別勘定の金額として経理したときは、その事業年度の所得の金額を上限に、その経理した金額の合計額を損金算入できることとする。
 この特別勘定の金額は、特定株式の譲渡その他の取崩し事由に該当することとなった場合には、その事由に応じた金額を取り崩して、益金算入する。ただし、その特定株式の取得から5年を経過した場合は、この限りでない。
(注1)上記の「特定事業活動を行うもの」とは、自らの経営資源以外の経営資源を活用し、高い生産性が見込まれる事業を行うこと又は新たな事業の開拓を行うことを目指す株式会社等をいう。
(注2)上記の「特定株式」とは、産業競争力強化法の新事業開拓事業者のうち同法の特定事業活動に資する事業を行う内国法人(既に事業を開始しているもので、設立後10年未満のものに限る。)又はこれに類する外国法人(以下「特別新事業開拓事業者」という。)の株式のうち、次の要件を満たすことにつき経済産業大臣の証明があるものをいう。
① 対象法人が取得するもの又はその対象法人が出資額割合50%超の唯一の有限責任組合員である投資事業有限責任組合の組合財産等となるものであること。
② 資本金の増加に伴う払込みにより交付されるものであること。
③ その払込金額が1億円以上(中小企業者にあっては1,000万円以上とし、外国法人への払込みにあっては5億円以上とする。)であること。ただし、対象となる払込みに上限を設ける。
④ 対象法人が特別新事業開拓事業者の株式の取得等をする一定の事業活動を行う場合であって、その特別新事業開拓事業者の経営資源が、その一定の事業活動における高い生産性が見込まれる事業を行うこと又は新たな事業の開拓を行うことに資するものであることその他の基準を満たすこと。
(注3)次に掲げる場合は、特別勘定の取崩し事由に該当する。
① 特定株式につき経済産業大臣の証明が取り消された場合
② 特定株式の全部又は一部を有しなくなった場合
③ 特定株式につき配当を受けた場合
④ 特定株式の帳簿価額を減額した場合
⑤ 特定株式を組合財産とする投資事業有限責任組合等の出資額割合の変更があった場合
⑥ 特定株式に係る特別新事業開拓事業者が解散した場合
⑦ 対象法人が解散した場合
⑧ 特別勘定の金額を任意に取り崩した場合
(2) 大企業につき研究開発税制その他生産性の向上に関連する税額控除の規定を適用できないこととする措置について、次の見直しを行う(所得税についても同様とする。)。
① その大企業の国内設備投資額が当期償却費総額の10%を超えることとの要件について、当期償却費総額の30%を超えることとする。
② 本措置の対象に、特定高度情報通信用認定等設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(仮称)の税額控除を加える。
(3)給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の税額控除制度における国内設備投資額が当期償却費総額の90%以上であることとの要件について、当期償却費総額の95%以上であることとする(所得税についても同様とする。)。
(4)交際費等の損金不算入制度について、その適用期限を2年延長するとともに、接待飲食費に係る損金算入の特例の対象法人からその資本金の額等が100億円を超える法人を除外した上その適用期限を2年延長する。
(地方税)
(1)法人住民税及び法人事業税について、オープンイノベーションに係る措置の創設に関する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。
(2)給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の中小企業者等の税額控除制度及び付加価値割の課税標準からの控除制度における国内設備投資額が当期償却費総額の90%以上であることとの要件について、当期償却費総額の95%以上であることとする。
2 5G(第5世代移動通信システム)
(国 税)
特定高度情報通信用認定等設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度の創設
 特定高度情報通信等システムの普及の促進に関する法律(仮称)の制定を前提に、青色申告書を提出する法人で一定のシステム導入を行う同法の認定特定高度情報通信等システム導入事業者(仮称)に該当するものが、同法の施行の日から令和4年3月31日までの間に、特定高度情報通信用認定等設備の取得等をして、国内にある事業の用に供した場合その他の場合には、当該法人は、その取得価額につき、30%の特別償却と15%の税額控除との選択適用ができることとする。ただし、税額控除における控除税額は、当期の法人税額の20%を上限とする(所得税についても同様とする。)。
(注1)上記の「一定のシステム導入」とは、特定高度情報通信等システムの普及の促進に関する法律の認定導入計画(仮称)に従って実施される同法の特定高度情報通信等システム(仮称)の導入で、その早期の普及を促すものであってその供給の安定性の確保に特に資するものとして基準に適合することについて主務大臣の確認を受けたものをいう。
(注2)上記の「特定高度情報通信用認定等設備」とは、その法人の認定導入計画に記載された機械その他の減価償却資産で、一定のシステム導入の用に供するための一定のものをいう。
(地方税)
特定高度情報通信用認定等設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度の創設
 特定高度情報通信等システムの普及の促進に関する法律(仮称)の制定を前提に、一定のシステム導入を行う同法の認定特定高度情報通信等システム導入事業者(仮称)に該当する法人が、同法の施行の日から令和4年3月31日までの間に、特定高度情報通信用認定等設備の取得等をして、国内にある事業の用に供した場合その他の場合に選択適用ができることとされる法人税の特別償却を法人住民税及び法人事業税に、税額控除を中小企業者等に係る法人住民税に適用する。
3 連結納税制度の見直し
(国 税)
 連結納税制度を見直し、次のグループ通算制度へ移行する。
(1) グループ通算制度の基本的な仕組み
① 適用法人及び適用方法は、親法人及び各子法人が法人税の申告を行う点並びに青色申告の承認を前提とする点を除き、基本的に連結納税制度と同様とする。
② 親法人の電子署名により子法人の申告及び申請、届出等を行うことができることとするほか、ダイレクト納付についても所要の措置を講ずる。
③ グループ通算制度の適用法人は、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により法人税及び地方法人税の確定申告書、中間申告書及び修正申告書を提出しなければならないこととする。
(2)所得金額及び法人税額の計算
① 損益通算
イ 欠損法人の欠損金額の合計額(所得法人の所得の金額の合計額を限度)を所得法人の所得の金額の比で配分し、所得法人において損金算入する。この損金算入された金額の合計額を欠損法人の欠損金額の比で配分し、欠損法人において益金算入する。
ロ グループ通算制度の適用法人又は通算グループ内の他の法人の所得の金額又は欠損金額が期限内申告書に記載された所得の金額又は欠損金額と異なる場合には、期限内申告書に記載された所得の金額又は欠損金額を上記イの所得の金額又は欠損金額とみなして上記イの損金算入又は益金算入の計算をする。
② 欠損金の通算
イ 欠損金の繰越控除額の計算は、基本的に連結納税制度と同様とする。
ロ 通算グループ内の他の法人の当期の所得の金額又は過年度の欠損金額が期限内申告書に記載された当期の所得の金額又は過年度の欠損金額と異なる場合には、期限内申告書に記載された当期の所得の金額又は過年度の欠損金額を当期の所得の金額又は過年度の欠損金額とみなす。
ハ グループ通算制度の適用法人の当期の所得の金額又は過年度の欠損金額が期限内申告書に記載された当期の所得の金額又は過年度の欠損金額と異なる場合には、欠損金額及び中小法人等以外の控除限度額(欠損金の繰越控除前の所得の金額の50%相当額をいう。)で期限内申告において通算グループ内の他の法人との間で授受した金額を固定する調整をした上で、その適用法人のみで欠損金の繰越控除額を再計算する。
③ 欠損金の繰越期間に対する制限を潜脱するため又は離脱法人に欠損金を帰属させるためあえて誤った当初申告を行うなど法人税の負担を不当に減少させる結果となると認めるときは、税務署長は、上記①ロ並びに②ロ及びハを適用しないことができる。
④ 通算グループ内の全ての法人について、期限内申告における所得の金額が零又は欠損金額がある等の要件に該当するときは、上記①ロ並びに②ロ及びハを適用しない。
⑤ 利益・損失の二重計上の防止 投資簿価修正制度を次の制度に改組する。
イ 通算グループ内の子法人の株式の評価損益及び通算グループ内の他の法人に対する譲渡損益を計上しない。
ロ 通算グループからの離脱法人の株式の離脱直前の帳簿価額を離脱法人の簿価純資産価額に相当する金額とする。
ハ グループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入をする子法人で親法人との間に完全支配関係の継続が見込まれないものの株式について、株主において時価評価により評価損益を計上する。
(注)グループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入後損益通算をせずに2月以内に通算グループから離脱する法人については、上記イからハまでを適用しない。
⑥ 税率
 税率は、通算グループ内の各法人の適用税率による。なお、中小法人の軽減税率の適用対象所得金額は、年800万円を所得法人の所得の金額の比で配分した金額とする。
(3)グループ通算制度の適用開始、通算グループへの加入及び通算グループからの離脱
① グループ通算制度の適用開始、通算グループへの加入又は通算グループからの離脱の際のみなし事業年度について、基本的に連結納税制度と同様とする。
② グループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入に際して行う資産の時価評価について、対象外となる法人を次の法人とする。
イ 適用開始時の時価評価課税の対象外となる法人
(イ)親法人との間に完全支配関係の継続が見込まれる子法人
(ロ)いずれかの子法人との間に完全支配関係の継続が見込まれる親法人
ロ 加入時の時価評価課税の対象外となる法人
(イ)適格株式交換等により加入した株式交換等完全子法人
(ロ)通算グループ内の新設法人
(ハ)適格組織再編成と同様の要件として次の要件(加入の直前に支配関係がある場合には、aからcまでの要件)の全てに該当する法人
a 親法人との間の完全支配関係の継続要件
b 当該法人の従業者継続要件
c 当該法人の主要事業継続要件
d 当該法人の主要な事業と通算グループ内のいずれかの法人の事業との事業関連性要件
e 上記dの各事業の事業規模比5倍以内要件又は当該法人の特定役員継続要件
③ 上記②イ又はロの法人以外の法人のグループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入前の欠損金を切り捨てる。
④ 上記②イ又はロの法人のグループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入前の欠損金及び資産の含み損等について、次のとおり、支配関係発生から5年経過日と開始又は加入から3年経過日とのいずれか早い日まで、制限を行う。 イ 支配関係発生後に新たな事業を開始した場合には、支配関係発生前に生じた欠損金及び支配関係発生前から有する資産の開始・加入前の実現損から成る欠損金を切り捨てるとともに、支配関係発生前から有する資産の開始・加入後の実現損を損金不算入とする。
ロ 原価及び費用の額の合計額のうちに占める損金算入される減価償却費の額の割合が30%を超える場合には、通算グループ内で生じた欠損金について、損益通算の対象外とした上で、特定欠損金(その法人の所得の金額を限度として控除ができる欠損金をいう。以下同じ。)とする。
ハ 上記イ又はロのいずれにも該当しない場合には、通算グループ内で生じた欠損金のうち、支配関係発生前から有する資産の実現損から成る欠損金について、損益通算の対象外とした上で、特定欠損金とする。
⑤ 次の法人については、上記④の対象外とする。
イ 親法人との間(親法人にあっては、いずれかの子法人との間。ロにおいて同じ。)に支配関係が5年超ある法人
ロ 通算グループ内のいずれかの法人と共同事業を行う法人として、次の法人
(イ)加入の直前に親法人との間に支配関係がない法人で上記②ロ(ハ)に該当するもの
(ロ)開始又は加入の直前に親法人との間に支配関係がある法人で次の要件の全てに該当するもの
a 当該法人の主要な事業と通算グループ内のいずれかの法人の事業との事業関連性要件
b 上記aの各事業の事業規模比5倍以内要件又は当該法人の特定役員継続要件
c 当該法人の上記aの主要な事業の事業規模拡大2倍以内要件又は特定役員継続要件
(ハ)非適格株式交換等により加入した株式交換等完全子法人で共同で事業を行うための適格株式交換等の要件のうち対価要件以外の要件に該当するもの
⑥ グループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入前の欠損金(現行:特定連結子法人の連結納税制度の適用開始又は連結グループへの加入前の欠損金)のうち上記③及び④により切り捨てられなかったものは、特定欠損金とする。
⑦ 通算グループからの離脱
イ 連結納税制度と同様に、通算グループから離脱した法人は、5年間再加入を認めない。
ロ 通算グループから離脱した法人が主要な事業を継続することが見込まれていない場合等には、その有する資産については、直前の事業年度において、時価評価により評価損益の計上を行う。
(4) 各個別制度の取扱い
 受取配当等の益金不算入等の個別制度については、親法人及び各子法人が申告を行うことに鑑み個別計算を原則としつつ、企業経営の実態や事務負担、制度趣旨・目的、濫用可能性等を勘案し、適切な仕組みとする。
(5) 租税回避行為の防止
 グループ通算制度に関しては、多様な租税回避行為が想定されることから、上記(2)③及び(3)②から⑦までの措置のほか、連結納税制度と同様に、包括的な租税回避行為防止規定を設ける。
(6) その他の整備
 質問検査権、罰則等について連結納税制度と同様の措置を講ずる。
(7)グループ通算制度への移行にあわせた単体納税制度の見直し
① 受取配当等の益金不算入制度について、次の見直しを行う。
イ 関連法人株式等に係る負債利子控除額を、関連法人株式等に係る配当等の額の100分の4相当額(その事業年度において支払う負債利子の額の10分の1相当額を上限とする。)とする。
ロ 関連法人株式等又は非支配目的株式等に該当するかどうかの判定については、100%グループ内(現行:連結グループ内)の法人全体の保有株式数等により行う。
② 寄附金の損金不算入制度について、損金算入限度額の計算の基礎となる資本金等の額を、資本金の額及び資本準備金の額の合計額とする。
③ 貸倒引当金について、100%グループ内(現行:連結グループ内)の法人間の金銭債権を貸倒引当金の対象となる金銭債権から除外する。
④ 資産の譲渡に係る特別控除額の特例について、100%グループ内(現行:連結グループ内)の各法人の特別控除額の合計額が定額控除限度額(年5,000万円)を超える場合には、その超える部分の金額を損金不算入とする。
(8)適用関係
 グループ通算制度は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用す る。
 また、連結納税制度からの移行に関する経過措置等を講ずる。
(以上につき付記参照)
(地方税)
 地方税においては、現行の基本的な枠組みを維持しつつ、国税の見直しに併せて、所要の措置を講ずる。
4 中小企業等の支援
(国 税)
(1)中小企業におけるオープンイノベーションに係る措置の創設
 中小企業者で対象法人に該当するものが、令和2年4月1日から令和4年3月31日までの間に特定株式を取得した場合には、その取得価額の25%の所得控除ができる。
 ただし、特定株式の譲渡その他の取崩し事由に該当することとなった場合には、その特定株式の取得から5年を経過している場合を除き、その事由に応じた金額を益金算入する。
(注)上記の「対象法人」及び「特定株式」は、上記1(1)及び(1)(注2)と同様とする。なお、特定株式の払込みに係る要件は、その払込金額が1,000万円以上であることとする(再掲)。
(2)交際費等の損金不算入制度について、その適用期限を2年延長するとともに、中小法人に係る損金算入の特例の適用期限を2年延長する。 (地方税) 法人住民税及び法人事業税について、中小企業におけるオープンイノベーションに係る措置の創設に関する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。
5 地方創生の推進
(国 税)
(1)地方拠点強化税制の見直し
① 地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度の適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
② 地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除制度について、次の措置を講じた上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
イ 「給与等支給額が比較給与等支給額以上であること」との要件を廃止する。
ロ 地方事業所基準雇用者数に係る措置における税額控除限度額について、対象雇用者数から有期雇用又はパートタイムである新規雇用者数を除外した上、雇用者の増加割合にかかわらず、次の金額の合計額とする。
(イ)30万円(移転型事業にあっては、50万円)に、地方事業所基準雇用者数のうち無期雇用かつフルタイムの要件を満たす新規雇用者数に達するまでの数を乗じて計算した金額
(ロ)20万円(移転型事業にあっては、40万円)に、地方事業所基準雇用者数から新規雇用者総数(地方事業所基準雇用者数を超える部分を除く。)を控除した数を乗じて計算した金額
(注)地方事業所基準雇用者数は、増加雇用者数を上限とする。
ハ 地方事業所特別基準雇用者数に係る措置における地方事業所特別税額控除限度額を、40万円(現行:30万円)に、地方事業所特別基準雇用者数を乗じて計算した金額(特定業務施設が準地方活力向上地域内にある場合には、30万円(現行:20万円)に、その特定業務施設に係る地方事業所特別基準雇用者数を乗じて計算した金額)に引き上げる。
③ 地方活力向上地域等特定業務施設整備計画に係る認定要件のうち特定業務施設の整備に関する要件について、既存施設におけるオフィス環境の整備(事務機器の増設等)を特定業務施設の整備とみなす(所得税についても同様とする。)。
(2) 認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除制度について、次の措置を講じた上、その適用期限を5年延長する。
① 税額控除限度額を、支出した寄附金の額の合計額の40%(現行:20%)からその寄附金の支出について法人住民税の額から控除される金額を控除した金額(その支出した寄附金の額の合計額の10%を上限とする。)とする。
② 地域再生計画に記載されるまち・ひと・しごと創生寄附活用事業について、対象事業に一定の補助金等による事業を加えた上、関係法令の改正を前提に、個別事業を認定する方式から包括的に事業を認定する方式に転換する認定手続の簡素化を行う。
③ 認定地方公共団体の受領する寄附金がその寄附金に関連するまち・ひと・しごと創生寄附活用事業費を上回った場合の適正化措置が講じられることを前提に、認定地方公共団体がその事業を行う前にその認定地方公共団体に対して支出する寄附金を対象寄附金とする。
(3)特定高度情報通信用認定等設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度の創設(再掲)
 特定高度情報通信等システムの普及の促進に関する法律(仮称)の制定を前提に、青色申告書を提出する法人で一定のシステム導入を行う同法の認定特定高度情報通信等システム導入事業者(仮称)に該当するものが、同法の施行の日から令和4年3月31日までの間に、特定高度情報通信用認定等設備の取得等をして、国内にある事業の用に供した場合その他の場合には、当該法人は、その取得価額につき、30%の特別償却と15%の税額控除との選択適用ができることとする。ただし、税額控除における控除税額は、当期の法人税額の20%を上限とする(所得税についても同様とする。)。
(注)上記の「一定のシステム導入」及び「特定高度情報通信用認定等設備」は、上記2(注1)及び(注2)と同様とする。
(地方税)
(1)地方拠点強化税制の見直し
① 地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は中小企業者等の税額控除制度の適用期限を2年延長する。
② 中小企業者等の地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除制度について、次の措置を講じた上、その適用期限を2年延長する。
イ 「給与等支給額が比較給与等支給額以上であること」との要件を廃止する。
ロ 地方事業所基準雇用者数に係る措置における税額控除限度額について、対象雇用者数から有期雇用又はパートタイムである新規雇用者数を除外した上、雇用者の増加割合にかかわらず、次の金額の合計額とする。
(イ)30万円(移転型事業にあっては、50万円)に、地方事業所基準雇用者数のうち無期雇用かつフルタイムの要件を満たす新規雇用者数に達するまでの数を乗じて計算した金額
(ロ)20万円(移転型事業にあっては、40万円)に、地方事業所基準雇用者数から新規雇用者総数(地方事業所基準雇用者数を超える部分を除く。)を控除した数を乗じて計算した金額
(注)地方事業所基準雇用者数は、増加雇用者数を上限とする。
ハ 地方事業所特別基準雇用者数に係る措置における地方事業所特別税額控除限度額を、40万円(現行:30万円)に、地方事業所特別基準雇用者数を乗じて計算した金額(特定業務施設が準地方活力向上地域内にある場合には、30万円(現行:20万円)に、その特定業務施設に係る地方事業所特別基準雇用者数を乗じて計算した金額)に引き上げる。
③ 地方活力向上地域等特定業務施設整備計画に係る認定要件のうち特定業務施設の整備に関する要件について、既存施設におけるオフィス環境の整備(事務機器の増設等)を特定業務施設の整備とみなす。
(2)認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人住民税法人税割額及び法人事業税額の特別控除制度について、次の措置を講じた上、その適用期限を5年延長する。
① 税額控除率を、法人道府県民税法人税割については5.7%(現行:2.9%)、法人市町村民税法人税割については34.3%(現行:17.1%)、法人事業税については20%(現行:10%)にそれぞれ引き上げる。
② 地域再生計画に記載されるまち・ひと・しごと創生寄附活用事業について、対象事業に一定の補助金等による事業を加えた上、関係法令の改正を前提に、個別事業を認定する方式から包括的に事業を認定する方式に転換する認定手続の簡素化を行う。
③ 認定地方公共団体の受領する寄附金がその寄附金に関連するまち・ひと・しごと創生寄附活用事業費を上回った場合の適正化措置が講じられることを前提に、認定地方公共団体がその事業を行う前にその認定地方公共団体に対して支出する寄附金を対象寄附金とする。
(3)特定高度情報通信用認定等設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度 の創設(再掲)
 特定高度情報通信等システムの普及の促進に関する法律(仮称)の制定を前提に、一定のシステム導入を行う同法の認定特定高度情報通信等システム導入事業者(仮称)に該当する法人が、同法の施行の日から令和4年3月31日までの間に、特定高度情報通信用認定等設備の取得等をして、国内にある事業の用に供した場合その他の場合に選択適用ができることとされる法人税の特別償却を法人住民税及び法人事業税に、税額控除を中小企業者等に係る法人住民税に適用する。
6 私的年金等に関する公平な税制のあり方
(国 税)
 確定拠出年金法等の改正を前提に、次の措置を講ずる。
(1) 事業主が拠出する確定拠出年金法の事業主掛金及び中小事業主掛金について、確定拠出年金の加入可能要件並びに同法の簡易企業型年金及び中小事業主掛金納付制度の実施可能な事業主の対象範囲の見直しが行われた後も、引き続き損金算入する。
(2)確定給付企業年金制度の終了時における同制度から個人型確定拠出年金制度への年金資産の移換及び加入者の退職等に伴う企業型確定拠出年金制度から通算企業年金制度への年金資産の移換を可能とする見直しに伴い、退職年金等積立金に対する法人税における退職年金等積立金について、所要の措置を講ずる。
7 その他の租税特別措置等
(国 税)
〔拡充等〕
(1)高度省エネルギー増進設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度について、次の措置を講じた上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
① 中長期的な計画に基づき行う省エネ投資の対象事業者にエネルギーの使用の合理化等に関する法律の認定管理統括事業者及び管理関係事業者を加える。
② 特別償却率を20%(現行:30%)に引き下げる。
③ 関係法令の改正を前提に、中長期的な計画に基づき行う省エネ投資の対象資産から高効率工業炉等を除外する。
(2)事業再編計画の認定を受けた場合の事業再編促進機械等の割増償却制度について、関係法令の改正を前提に、対象事業に肥料、農薬、配合飼料及び農業機械の卸売事業及び小売事業を加える(所得税についても同様とする。)。
(3)認定NPO法人について、関係法令の改正によりいわゆるパブリック・サポート・テストの総収入金額及び受入寄附金総額から民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律に基づき事業を実施するために受け取った助成金の額を除外する等の措置が講じられた後も、引き続き現行の 措置を適用する。
〔延長〕
(1)倉庫用建物等の割増償却制度の適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
(2) 海外投資等損失準備金制度の適用期限を2年延長する。
(3) 特定原子力施設炉心等除去準備金制度の適用期限を3年延長する。
(4) 農業経営基盤強化準備金制度の適用期限を1年延長する(所得税についても同様とする。)。
(5)短期の土地譲渡益に対する追加課税制度の適用停止措置の期限を3年延長する。
(6)投資法人に係る課税の特例における再生可能エネルギー発電設備に係る措置の再生可能エネルギー発電設備の取得期限を3年延長する。
(7)退職年金等積立金に対する法人税の課税の停止措置の適用期限を3年延長する。
〔廃止・縮減等〕
(1)国家戦略特別区域において機械等を取得した場合の特別償却等又は法人税額の特別控除制度について、研究開発税制の特例を廃止するとともに、関係法令の改正を前提に、対象事業から高度医療施設の近接の患者用宿泊施設の整備又は運営に関する事業、高度医療施設への外国人の患者の便宜となるサービスの提供に関する事業及び多国籍企業が行う統括事業を除外した上、制度の適用期限を2年延長する。
(2)国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度について、関係法令の改正を前提に、対象事業から水の確保が困難な地域における給排水システムの研究開発に関する事業、高度医療施設の近接の患者用宿泊施設の整備又は運営に関する事業、高度医療施設への外国人の患者の便宜となるサービスの提供に関する事業、映画等の文字等で特に付加価値の高いものの創作又は提供に関する事業及びプログラムを表現する文字等で特に付加価値の高いものの研究開発に関する事業を除外した上、その適用期限を2年延長する。
(3) 革新的情報産業活用設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度は、所要の経過措置を講じた上、令和2年3月31日をもって廃止する(所得税についても同様とする。)。
(4) 再生可能エネルギー発電設備等の特別償却制度について、特別償却率を14%(現行:20%)に引き下げた上、その適用期限を1年延長する(所得税についても同様とする。)。
(5) 耐震基準適合建物等の特別償却制度のうち耐震基準適合建物等に係る措置は、適用期限が到来したため、その規定を削除する(所得税についても同様とする。)。
(6) 情報流通円滑化設備の特別償却制度は、適用期限の到来をもって廃止する。
(7) 障害者を雇用する場合の機械等の割増償却制度について、対象資産から工場用の建物等を除外するとともに、機械装置の割増償却率を12%(現行:24%)に引き下げた上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
(8) 企業主導型保育施設用資産の割増償却制度は、適用期限の到来をもって廃止する(所得税についても同様とする。)。
(9) 金属鉱業等鉱害防止準備金制度は、適用期限の到来をもって廃止する(所得税についても同様とする。)。なお、令和2年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度については、現行法による準備金積立率(80%)に対して1年ごとに8分の1ずつ縮小した率による積立てを認める経過措置を講ずる。
(10) 特定災害防止準備金制度について、準備金積立率を60%(現行:100%)に引き下げた上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
(11) 国家戦略特別区域における指定法人の課税の特例について、関係法令の改正を前提に、対象事業から高度医療施設の近接の患者用宿泊施設の運営に関する事業、国際会議等への外国人の参加者の便宜となるサービスの提供に関する事業及び外国会社、国際機関等に勤務する者の子女等を対象とした外国語による教育に関する事業を除外した上、その適用期限を2年延長する。
(12)法人の一般の土地譲渡益に対する追加課税制度について、次の措置を講ずる。
① 適用除外措置(優良住宅地の造成等のための譲渡等に係る適用除外)の範囲から次の譲渡を除外した上、その適用期限を3年延長する。
イ 都市再生特別措置法の認定整備事業計画に係る一定の都市再生整備事業の認定整備事業者に対する土地等の譲渡
ロ 都市計画区域内において行われる一団の宅地の造成(都市計画法の開発許可又は土地区画整理法の認可を受けて行われるものであること等の要件を満たすものに限る。)を行う者に対する土地等の譲渡
② 適用停止措置の期限を3年延長する。
(13)特定の資産の買換えの場合等の課税の特例について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年(過疎地域に係る措置及び危険密集市街地に係る措置については、令和3年3月31日まで)延長する(次の⑤の見直しを除き、所得税についても同様とする。)。
① 既成市街地等の内から外への買換えについて、譲渡資産から工場の立地が制限されていなかった区域内にある建物又はその敷地の用に供されている土地等を除外する。
② 航空機騒音障害区域の内から外への買換えについて、譲渡資産が次の区域内にある場合の課税の繰延べ割合を70%(現行:80%)に引き下げる。
イ 令和2年4月1日前に特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法の航空機騒音障害防止特別地区又は公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律の第二種区域となった区域
ロ  防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律の第二種区域
③ 都市機能誘導区域の外から内への買換えを適用対象から除外する。
④ 防災再開発促進地区内における防災街区整備事業に関する都市計画に基づき危険密集市街地内で行われる土地等の買換えについて、次の見直しを行う。
イ 建築基準法の改正に伴い、同法の耐火建築物又は準耐火建築物を建築するために譲渡をされるものであることとする譲渡資産に係る要件における耐火建築物又は準耐火建築物の範囲に耐火建築物又は準耐火建築物と同等以上の延焼防止性能を有する建築物を加える。
ロ 対象となる危険密集市街地について、その区域の不燃領域率が40%未満である区域に限定する。
⑤ 長期所有の土地、建物等から国内にある土地、建物等への買換えについて、所要の経過措置を講じた上、買換資産から鉄道事業用車両運搬具を除外する。
⑥ 一定の船齢の日本船舶から環境への負荷の低減に資する一定の日本船舶への買換えについて、次の見直しを行う。
イ 外航船舶及び内航船舶について、買換資産の船齢が法定耐用年数以下であることとする要件を加える。
ロ 港湾の作業船について、譲渡資産に係る船齢要件を35年未満(現行:40年未満)に引き下げる。
(14) 中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置について、所要の経過措置を講じ、設備廃棄等欠損金額の特例を廃止した上、不適用措置の適用期限を2年延長する。
(15) 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する(次の①の見直しを除き、所得税についても同様とする。)。
① 対象法人から連結法人を除外する。
② 対象法人の要件のうち常時使用する従業員の数の要件を500人以下(現行:1,000人以下)に引き下げる。
(地方税)
〔新設〕
 電気供給業を行う法人の事業税の課税標準である収入金額を算定する場合において控除される収入金額の範囲に、収入金額に対する事業税を課される他の電気供給業を行う法人から非化石証書(非化石エネルギー源に由来する電気(固定価格買取制度の対象となるものを除く。)の非化石電源としての価値を取引可能にするための、当該価値を有することを証するものをいう。以下同じ。)を購入し、又は卸電力取引所を介して自らが販売を行った非化石証書を購入し、これらの非化石証書を利用して非化石エネルギー源に由来する電気として供給を行う場合の当該電気の供給に係る収入金額のうち、当該非化石証書の購入に係る料金として支払うべき金額に相当する収入金額を追加する措置を講ずる。
〔延長〕
(1)銀行等保有株式取得機構に係る法人事業税の資本割の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
(2)電気供給業を行う法人の事業税の課税標準である収入金額を算定する場合において控除される収入金額の範囲に、他の電気供給業を行う法人から託送供給を受けて電気の供給を行う場合の当該電気の供給に係る収入金額のうち、当該電気の供給に係る託送供給の料金として支払うべき金額に相当する収入金額を 追加する課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
〔廃止・縮減等〕
(1) 国家戦略特別区域において機械等を取得した場合の特別償却制度等について、研究開発税制の特例を廃止するとともに、関係法令の改正を前提に、対象事業から高度医療施設の近接の患者用宿泊施設の整備又は運営に関する事業、高度医療施設への外国人の患者の便宜となるサービスの提供に関する事業及び多国籍企業が行う統括事業を除外した上、制度の適用期限を2年延長する。
(2)国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の特別償却制度について、関係法令の改正を前提に、対象事業から水の確保が困難な地域における給排水システムの研究開発に関する事業、高度医療施設の近接の患者用宿泊施設の整備又は運営に関する事業、高度医療施設への外国人の患者の便宜となるサービスの提供に関する事業、映画等の文字等で特に付加価値の高いものの創作又は提供に関する事業及びプログラムを表現する文字等で特に付加価値の高いものの研究開発に関する事業を除外した上、その適用期限を2年延長する。
(3) 革新的情報産業活用設備を取得した場合の特別償却又は中小企業者等の税額控除制度は、所要の経過措置を講じた上、令和2年3月31日をもって廃止する。
(4)電気供給業を行う法人の事業税の課税標準である収入金額を算定する場合において、一般送配電事業者の収入金額のうち、使用済燃料再処理等既発電費に 相当する金額を控除する措置は、適用期限の到来をもって廃止する。
8 その他
(国 税)
(1) 国有林野の管理経営に関する法律の改正に伴い、同法の樹木採取権を法人税法上の減価償却資産(無形固定資産)とし、その耐用年数を樹木採取権の設定の通知において示された存続期間の年数とする(所得税についても同様とする。)。
(2) 会社関係制度の見直しを前提に、次の措置を講ずる。
① 譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例等について、法人に対する役務提供の対価として交付される譲渡制限付株式でその譲渡制限付株式と引換えにする払込み又は給付を要しない場合のその譲渡制限付株式を対象に加える。
② 法人の支給する役員給与における過大な役員給与のうち形式基準について、定款等により役員に対して支給することができるその法人の株式又は新株予約権の上限数を定めている法人のその株式又は新株予約権に係る限度額を、その定められた上限数に支給時等における価額を乗じて計算した金額とする。
③ 法人の支給する役員給与における業績連動給与の手続に係る要件について、独立職務執行者から除外される親法人の業務執行者等に該当していた者の範囲を見直す。
④ その他所要の措置を講ずる。
(3) 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度について、対象となる国庫補助金等の範囲に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法に基づく助成金で燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業等に係るものを加える(所得税についても同様とする。)。
(4)「時価の算定に関する会計基準」の導入に伴い、次のとおり整備を行う。
① 売買目的有価証券の時価評価金額について、次の見直しを行う。
イ 市場有価証券(取引所売買有価証券、店頭売買有価証券、取扱有価証券及びその他価格公表有価証券をいう。)について事業年度終了の日における公表最終価格がない場合の時価評価金額は、直近公表最終価格に基づき合理的な方法により算出した価格(現行:直近公表最終価格)とする。
ロ 上記イの市場有価証券以外の有価証券(株式又は出資を除く。)の時価評価金額は、その有価証券に類似する銘柄の有価証券について公表された事業年度終了の日における最終の売買価格又は利率その他の指標に基づき合理的な方法により算出した価格とする。
ハ 上記イ及びロの合理的な方法により算出した価格について、その方法を採用した理由その他その算定の基礎となる事項を記載した書類を保存しなければならないこととする。
② 有価証券に係る評価損の計上事由について、価額の著しい低下を評価損の計上事由とする有価証券の範囲を上記①イ及びロの有価証券とする等の見直しを行う。
③ 短期売買商品等(仮想通貨を除く。)の時価評価金額について、上記①と同様の見直しを行う。
④ デリバティブ取引に係る利益相当額又は損失相当額の益金又は損金算入について、未決済デリバティブ取引に係るみなし決済損益額(市場デリバティブ取引等の最終市場価格による授受額を除く。)の算定に用いた合理的な方法を採用した理由その他その算定の基礎となる事項を記載した書類を保存しなければならないこととする。
⑤ 貸倒引当金の対象となる金銭債権から債券を除外する(所得税についても同様とする。)。
(注)上記の改正は、令和2年4月1日以後に終了する事業年度分の法人税について適用する。なお、同日から令和3年3月31日までの期間内の日を含む各事業年度における事業年度終了の日における公表最終価格がない市場有価証券及び市場有価証券以外の有価証券(株式又は出資を除く。)並びに事業年度終了の日における公表最終価格がない短期売買商品等(仮想通貨を除く。)の時価評価金額について、現行法の規定による評価額によることができる経過措置を講ずる。
(5) デリバティブ取引に係る利益相当額又は損失相当額の益金又は損金算入について、連結法人が他の連結法人との間で行ったデリバティブ取引(その連結法人又は他の連結法人のいずれかがヘッジ手段として指定しているものを除く。)については、連結所得の金額の計算上みなし決済損益額を計上しないこととする。
(6)マンションの建替え等の円滑化に関する法律の改正を前提に、次の措置を講ずる。
① 敷地分割組合(仮称)を公益法人等とみなして、収益事業から生じた所得以外の所得について非課税とする。
② マンション敷地売却組合の業務範囲の見直し後も、引き続き公益法人等とみなす。
(7)森林組合法の改正を前提に、森林組合の組合員資格の見直し等が行われた後も、森林組合及び森林組合連合会を引き続き協同組合等(法人税法別表第三) とする。
(地方税)
(1)電気供給業に係る法人事業税の課税方式の見直し
① 電気供給業のうち、発電事業及び小売電気事業に係る法人事業税について、資本金の額又は出資金の額(以下「資本金」という。)1億円超の普通法人にあっては収入割額、付加価値割額及び資本割額の合算額によって、資本金1億円以下の普通法人等にあっては収入割額及び所得割額の合算額によって、それぞれ課することとし、標準税率を次のとおりとする。
イ 資本金1億円超の普通法人
 収入割  0.75%
 付加価値割 0.37%
 資本割 0.15%
ロ 資本金1億円以下の普通法人等
 収入割 0.75%
 所得割 1.85%
② 収入割額、付加価値割額及び資本割額の合算額又は収入割額及び所得割額の合算額により法人事業税を課される法人の特別法人事業税の額は、基準法人収入割額に40%の税率を乗じて得た金額とする。
③ その他所要の措置を講ずる。
(注1)上記の改正は、令和2年4月1日以後に開始する事業年度から適用する。
(注2)「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)」(平成22年4月1日総税都第16号総務大臣通知)において、収入金額によって課税されている他の同種の事業者との公平性が確保されるよう趣旨を明確化する。
(2)国税における諸制度の取扱い等を踏まえ、その他所要の措置を講ずる。

四 消費課税
1 たばこ税の見直し
(国税・地方税)
 軽量な葉巻たばこに係る国及び地方のたばこ税の課税方式について、次の見直しを行う。
(1)軽量な葉巻たばこ(1本当たりの重量が1g未満の葉巻たばこをいう。)の課税標準について、葉巻たばこ1本を紙巻たばこ1本に換算する方法とする。
(2) 上記の改正は、令和2年10月1日から実施するが、激変緩和等の観点から、同日から令和3年9月30日までの間について、上記の改正の対象を1本当たりの重量が0.7g未満の葉巻たばこに限ることとし、その場合の換算方法を葉巻たばこ1本を紙巻たばこ0.7本に換算する方法とする経過措置を講ずる。
(3)その他所要の措置を講ずる。 2 法人に係る消費税の申告期限の特例の創設
(国 税)
 法人に係る消費税の確定申告書の提出期限について、次の措置を講ずる。
(1)法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例の適用を受ける法人が、消費税の確定申告書の提出期限を延長する旨の届出書を提出した場合には、当該提出をした日の属する事業年度以後の各事業年度の末日の属する課税期間に係る消費税の確定申告書の提出期限を1月延長する。
(2)その他所要の措置を講ずる。
(注1)上記の改正は、令和3年3月31日以後に終了する事業年度の末日の属する課税期間から適用する。
(注2)確定申告書の提出期限が延長された期間の消費税の納付については、当該延長された期間に係る利子税を併せて納付する。
(地方税)
 法人に係る消費税の申告期限の特例の創設に伴い、地方消費税について所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和3年3月31日以後に終了する事業年度の末日の属する課税期間から適用する。
3 租税特別措置等
(国 税)
〔延長・拡充等〕
(1) 入国者が輸入する紙巻たばこのたばこ税の税率の特例措置について、特例税率を1,000本につき13,500円(現行:12,500円)に引き上げた上、その適用期限を1年延長する。
(注)上記の改正のうち、税率引上げについては、令和2年10月1日から実施する。
(2)バイオエタノール等揮発油に係る揮発油税等の課税標準の特例措置の対象となるバイオエタノール等の範囲に、カーボンリサイクル技術を用いて製造されるエタノール等を加える。
(3)特定の用途に供する石炭に係る石油石炭税の軽減措置の適用期限を3年延長する。
(4)特定の石油製品等を特定の運送、農林漁業又は発電の用に供した場合の石油石炭税の還付措置の適用期限を3年延長する。
(5)輸入・国産農林漁業用A重油に係る石油石炭税の免税・還付措置の適用期限を3年延長する。
(6)沖縄発電用特定石炭等に係る石油石炭税の免税措置の適用期限を2年延長する。
(7) 非製品ガスに係る石油石炭税の還付措置の適用期限を3年延長する。
(8) 航空機燃料税の税率の特例措置の適用期限を2年延長する。
(9)沖縄路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置の適用期限を2年延長する。
(10)特定離島路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置の適用期限を2年延長する。
(地方税)
〔延長・拡充〕
〈ゴルフ場利用税〉
(1)国民体育大会のゴルフ競技に参加する選手が当該国民体育大会のゴルフ競技の公式の練習のためにゴルフを行う場合(都道府県知事又は都道府県の教育委員会がその旨を証明する場合に限る。)のゴルフ場の利用について、ゴルフ場利用税の非課税措置を講ずる。
(2)国際的な規模のスポーツの競技会(閣議において決定又は了解されたものに限る。)(注)のゴルフ競技に参加する選手が当該競技会のゴルフ競技として、又は当該競技会のゴルフ競技の公式の練習のためにゴルフを行う場合(当該競技会のゴルフ競技の準備及び運営を行う者がその旨を証明する場合に限る。)のゴルフ場の利用について、当分の間、ゴルフ場利用税の非課税措置を講ずる。
(注)令和2年に開催される東京オリンピック競技大会を含むものとする。
〈軽油引取税〉
(3)船舶の動力源に供する軽油の引取りを行った自衛隊の船舶の使用者が、わが国とわが国以外の締約国との間の物品又は役務の相互の提供に関する条約その他の国際約束に基づき、当該締約国の軍隊の船舶の動力源に供するため行う当該軽油の譲渡に係る軽油引取税の課税免除の特例措置について、日・インド物品役務相互提供協定(仮称)の締結を前提に、同協定に基づきインド軍隊の船舶の動力源に供するため譲渡する場合を対象に加える。
〈航空機燃料譲与税〉
(4)航空機燃料譲与税の譲与割合を引き上げる措置の適用期限を2年延長する。
〔廃止〕
〈軽油引取税〉
 電気供給業を営む者が汽力発電装置の助燃の用途に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置は、令和2年3月31日をもって廃止する。 4 その他 (国 税)
(1)居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度等の適正化
① 居住用賃貸建物の取得に係る消費税の仕入税額控除制度について、次の見直しを行う。
イ 住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって高額特定資産に該当するもの(以下「居住用賃貸建物」という。)の課税仕入れについては、仕入税額控除制度の適用を認めないこととする。ただし、居住用賃貸建物のうち、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分については、引き続き仕入税額控除制度の対象とする。
ロ 上記イにより仕入税額控除制度の適用を認めないこととされた居住用賃貸建物について、その仕入れの日から同日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間の末日までの間に住宅の貸付け以外の貸付けの用に供した場合又は譲渡した場合には、それまでの居住用賃貸建物の貸付け及び譲渡の対価の額を基礎として計算した額を当該課税期間又は譲渡した日の属する課税期間の仕入控除税額に加算して調整する。
② 住宅の貸付けに係る契約において貸付けに係る用途が明らかにされていない場合であっても、当該貸付けの用に供する建物の状況等から人の居住の用に供することが明らかな貸付けについては、消費税を非課税とする。
③ 高額特定資産を取得した場合の事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を制限する措置の対象に、高額特定資産である棚卸資産が納税義務の免除を受けないこととなった場合等の棚卸資産に係る消費税額の調整措置(以下「棚卸資産の調整措置」という。)の適用を受けた場合を加える。
④ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記①の改正は令和2年10月1日以後に居住用賃貸建物の仕入れを行った場合について、上記②の改正は同年4月1日以後に行われる貸付けについて、上記③の改正は同日以後に棚卸資産の調整措置の適用を受けた場合について、それぞれ適用する。ただし、上記①の改正は、同年3月31日までに締結した契約に基づき同年10月1日以後に居住用賃貸建物の仕入れを行った場合には、適用しない。
(2) マンションの建替え等の円滑化に関する法律の改正を前提に、次の措置を講ずる。
① 敷地分割組合(仮称)を、消費税法別表第三に掲げる法人とみなす。
② マンション敷地売却組合の業務範囲の見直し後も、引き続き消費税法別表第三に掲げる法人とみなす。
(3) 国有林野の管理経営に関する法律の改正に伴い、同法の樹木採取権を消費税法上の調整対象固定資産(無形固定資産)とする。
(4) 外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)について、消費税の免税販売手続が可能なものとして財務大臣が定める基準を満たす自動販売機であることについて国税庁長官が観光庁長官と協議して定めるものを設置した場合には、当該設置に係る輸出物品販売場の許可につき人員配置は要しないものとする。
(注)上記の改正は、令和3年10月1日以後に行われる輸出物品販売場の許可申請について適用する。
(5) 卸売市場法の改正に伴い、次の措置を講ずる。
① 消費税の適格請求書の交付義務が免除される卸売市場の範囲を、中央卸売市場、地方卸売市場及び農林水産大臣が財務大臣と協議して定める基準を満たす卸売市場とする。
② その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和5年10月1日以後に行われる課税資産の譲渡等及び課税仕入れについて適用する。
(6) 資金決済法等改正法の施行の日以後に、総合取引所を介して行われる金又は白金の地金の課税仕入れにおける消費税法上の本人確認書類の保存について、当該課税仕入れの媒介等を行う者の本人確認書類によることを認める。
(7) 消費税が非課税とされる社会福祉事業等の範囲に、1日当たり5人以下の乳幼児を保育する認可外保育施設のうち一定の基準を満たすものとして都道府県知事等から当該基準を満たす旨の証明書の交付を受けたものにおいて行われる保育を加える。
(注)上記の改正は、令和2年10月1日以後に行われる資産の譲渡等について適用する。
(8) 酒税、たばこ税、揮発油税、石油ガス税及び石油石炭税における輸出免税等の適用に当たって必要となる輸出明細書等の税務署長への提出について、輸出明細書の提出を不要とする等、輸出免税制度等に係る手続の簡素化を図る。
(注)上記の改正は、令和2年4月1日以後に納税申告書の提出期限が到来する酒税、たばこ税、揮発油税、石油ガス税及び石油石炭税について適用する。
(9) 酒類の製造免許等の制度について、次の見直しを行う。
① 酒類の製造免許に係る最低製造数量基準について、輸出するために清酒を製造しようとする者が清酒の製造免許を申請した場合には、最低製造数量基準(現行:60kl)を適用しない。
(注)上記の改正は、令和3年4月1日以後に行われる申請に係る免許について適用する。
② 酒類の製造免許等の承継制度について、酒類の製造免許等を承継することができる者の範囲に、事業譲渡によりその事業の全部を承継した者を加える。
(注)上記の改正は、令和2年4月1日以後に行われる事業譲渡について適用する。
③ 酒類の製造免許等の申請書について、住民票の写しの添付を不要とする。
(注)上記の改正は、令和3年1月1日以後に提出する申請書について適用する。
(10) 酒類の品目等の表示義務について、一定の原料用アルコールについては、品目の表示を泡盛とすることを可能とする。
(11) 電気事業法の改正により、一般送配電事業者に代わり一定の地域の配電を担う新たな事業者区分が創設されることに伴い、当該事業者が供給する電気について電源開発促進税の課税対象とする等の所要の措置を講ずる。
(12)沖縄の揮発油に係る揮発油税及び地方揮発油税の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(地方税)
(1) 地方消費税に係る徴収取扱費について、所要の経過措置を講じた上、次の見直しを行う。

現 行 改正案
① 譲渡割に係る徴収取扱費
 徴収取扱費算定期間に各都道府県に払い込むべき譲渡割として納付された額の総額(社会保障財源化分を除く。)×0.60%
② 貨物割に係る徴収取扱費
 徴収取扱費算定期間に各都道府県に払い込むべき貨物割として納付された額の総額(社会保障財源化分を除く。)×0.60%
① 譲渡割に係る徴収取扱費
 徴収取扱費算定期間に各都道府県に払い込むべき譲渡割として納付された額の総額(社会保障財源化分を除く。)×0.55%
② 貨物割に係る徴収取扱費
 徴収取扱費算定期間に各都道府県に払い込むべき貨物割として納付された額の総額(社会保障財源化分を除く。)×0.65%

(2) 地方のたばこ税における輸出免税等の適用に当たって必要となる課税免除事由に該当することを証するに足りる書類の都道府県知事及び市町村長への提出について、当該書類の提出を不要とする等、輸出免税制度等に係る手続の簡素化を図る。
(注)上記の改正は、令和2年4月1日以後に納税申告書の提出期限が到来する地方のたばこ税について適用する。

五 国際課税
1 子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避への対応
(国 税)
(1)法人が、特定関係子法人から受ける配当等の額(その事業年度開始の日からその受ける直前までにその特定関係子法人から受ける配当等の額を含む。以下「対象配当金額」という。)が株式等の帳簿価額の10%相当額を超える場合には、その対象配当金額のうち益金不算入相当額を、その株式等の帳簿価額から 引き下げることとする。
(注1)上記の「特定関係子法人」とは、配当等の決議の日(以下「配当決議日」という。)において特定支配関係を有する他の法人をいう。
(注2)上記の「特定支配関係」とは、一の者(一の者と特殊の関係のある者を含む。)が他の法人の株式等又は一定の議決権の数等の50%超を直接又は間接に有する場合における当該一の者と他の法人との関係等をいう。
(注3)上記の「益金不算入相当額」とは、受取配当益金不算入制度等により益金不算入とされる金額に相当する金額をいう。
(2) 次に掲げる配当等の額は、本措置の対象から除外する。
① 内国普通法人である特定関係子法人の設立の日から特定支配関係発生日(法人との間に特定支配関係を有することとなった日をいう。以下同じ。)までの間において、その発行済株式の総数等の90%以上を内国普通法人若しくは協同組合等又は居住者が有する場合の対象配当金額
② イに掲げる金額からロに掲げる金額を減算した金額がハに掲げる金額以上である場合における特定関係子法人から受ける対象配当金額
イ  配当決議日の属する特定関係子法人の事業年度開始の日における当該特定関係子法人の利益剰余金の額
ロ 当該開始の日からその配当等を受ける日までの間に特定関係子法人の株主が受ける配当等の総額
ハ 特定支配関係発生日の属する特定関係子法人の事業年度開始の日における利益剰余金の額に一定の調整を加えた金額
③ 特定支配関係発生日から10年を経過した日以後に受ける配当等の額
④ 対象配当金額が2,000万円を超えない場合におけるその対象配当金額
(3)対象配当金額のうち、特定支配関係発生日以後の利益剰余金の額から支払われたものと認められる部分の金額がある場合には、その部分の金額を超える金額を益金不算入相当額とすることができる。
(4)その他所要の措置を講ずる。
(地方税)
 法人住民税及び事業税について、子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避への対応に関する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。
2 非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度等の見直し
(国 税)
(1) 本制度の対象となる者について、次の見直しを行う。
① 特定法人の範囲から、次に掲げる法人を除外する。
イ 設立後2年を経過していない法人
ロ 租税条約等の相手国等(報告対象国を除く。)のうち一定の国又は地域の法令に準拠して設立された一定の外国報告金融機関等
② 本制度の対象となる特定取引を行う一定の者が他の者のために当該特定取引を行う場合等には、当該他の者が当該特定取引を行うものとして本制度を適用する旨を明確化するほか、本制度の対象となる「事業体」の定義規定を設ける。
(2) 本制度の対象となる特定対象者の居住地国の特定手続等について、次の見直しを行う。
① 民法組合等の居住地国は、実質的な管理を行う場所の所在する国又は地域とする。
② 準拠法により遺産が事業体とされる場合には、被相続人の居住地国(現行:当該事業体の居住地国)を特定する。
③ 報告金融機関等と複数の者との間で締結されている既存特定取引に係る契約がある場合等には、特定取引契約資産額の合算の対象とする。
④ 報告金融機関等による特定対象者の一定の情報を取得するための措置について、報告対象国を特定対象者の居住地国として特定した場合に限定する。
⑤ 特定対象者の居住地国等の再特定手続について、報告金融機関等は、新規届出書等に関する状況の変化があった場合には、当該状況の変化があった日から3月を経過する日等の一定の日までに、当該新規届出書等を提出した者等に対し、異動届出書の提出要求等をし、その提出等がなかったときは、当該状況の変化に基づきその者の居住地国の特定等をしなければならないこととする等の所要の措置を講ずる。
(3)特定取引から除外される取引の範囲から、特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等(ストックオプション税制)の適用を受けて取得される株式に係る取引を除外した上、当該取引に係る特定手続について所要の措置を講ずる。
(4)報告対象外となる者の範囲に、外国政府等が資本金等の全部を出資している法人で一定の要件を満たすものを加える。
(5) 特定取引を行う者又はその関係者等による当該特定取引に係る契約に関する行為等の主たる目的の一つが、報告事項の提供を回避することである場合には、その行為等はなかったものとして本制度を適用する。
(6)その他所要の措置を講ずる。
(注)上記((1)①、(2)⑤及び(4)を除く。)の改正は令和2年4月1日から、上記(1)①、(2)⑤及び(4)の改正は令和4年1月1日から、それぞれ適用する。
3 その他 (国 税)
(1)外国子会社合算税制の見直し
 内国法人等の外国関係会社に係る所得の課税の特例(いわゆる「外国子会社合算税制」)について、次の見直しを行う。
① 部分合算課税制度の対象となる受取利子等の額の範囲から、その本店所在地国においてその役員又は使用人が棚卸資産の販売の事業及びこれに付随する事業(棚卸資産の販売から生ずる利子(いわゆる「ユーザンス金利」)に係るものに限る。)を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事している外国関係会社が、非関連者に対して行う棚卸資産の販売から生ずる利子の額を除外する。
(注1)上記の改正は、外国関係会社の令和2年4月1日以後に開始する事業年度について適用する。
(注2)特殊関係株主等である内国法人等に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例について、上記と同様の見直しを行う。
② 投資法人等が合算課税の適用を受ける場合には、外国関係会社の所得に対して課される外国法人税の額のうち、合算対象とされた金額に対応する部分の金額は、その投資法人等が納付した外国法人税の額とみなして、投資法人等の配当等に係る二重課税調整の対象とする等の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、外国関係会社の令和2年4月1日以後に終了する事業年度について適用する。
(2)外国税額控除における控除対象外国税額の範囲の見直し
 わが国で所得と認識されない金額に対して課されるものとして外国税額控除の対象から除外される外国法人税の額に、次の外国法人税の額を加える。
① 外国法人等の所得について、これを内国法人の所得とみなして当該内国法人に対して課される外国法人税の額
② 内国法人の国外事業所等において、当該国外事業所等から本店等又は他の者に対する支払金額等がないものとした場合に得られる所得につき課される外国法人税の額
(注1)居住者に係る外国税額控除制度について、上記と同様の見直しを行う。 (注2)上記の改正は、令和3年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税及び令和4年分以後の所得税について適用する。
(3) 過大支払利子税制における対象外支払利子等の額の範囲の見直し
 外国法人の恒久的施設が有する債権に係る経済的利益を受ける権利が、その本店等に移転されることがあらかじめ定まっている場合には、法人からその恒久的施設に支払われる利子等の額を対象外支払利子等の額から除外する。
(4) 店頭デリバティブ取引に係る証拠金の利子の非課税制度の対象範囲の整備
 情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴い、本制度の対象となる店頭デリバティブ取引の範囲から、暗号資産デリバティブ取引を除外する。
(5) 法人番号等の確認制度について、次の措置を講ずる。
① 非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度の対象となる特定法人が届出書の提出をする場合において、その提出を受ける者が、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の規定により公表されている当該特定法人の名称、本店等の所在地及び法人番号を確認したときは、当該特定法人については、提出の際に必要な本人確認書類の提示を要しないこととする。
② 特定法人が届出書の提出をする場合において、その提出を受ける者が、電気通信回線による登記情報の提供に関する法律に規定する指定法人から登記情報の送信を受ける方法により当該特定法人の名称及び本店等の所在地を確認したときは、当該特定法人については、提出の際に必要な登記事項証明書の提示を要しないこととする。
(注)外国法人が振替国債等の利子の非課税制度等の適用を受けるために非課税適用申告書等を提出する場合について、上記と同様の措置を講ずる。
③ その他所要の措置を講ずる。
(地方税)
 個人住民税、法人住民税及び事業税について、国税における諸制度の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。

六 納税環境整備
1 振替納税の通知依頼及びダイレクト納付の利用届出の電子化
(国 税)
 振替納税の通知依頼及びダイレクト納付の利用届出について、電子情報処理組織を使用する方法( e-Tax)により申請等を行うことを可能とするとともに、その振替納税の通知依頼及びダイレクト納付の利用届出に係る情報を送信する際、その申請等を行う者の電子署名及び電子証明書の送信を要しないこととする。
(注)上記の改正は、令和3年1月1日以後に行う申請等について適用する。
2 準確定申告の電子的手続の簡素化
(国 税)
 電子情報処理組織を使用する方法(e -Tax)による所得税の準確定申告書の提出について、その準確定申告書に記載すべき事項と併せて申告書確認情報(電子署名及び電子証明書を送信する相続人(以下「申請等相続人」という。)以外の相続人がその準確定申告書に記載すべき事項を確認したことを証する電磁的記録をいう。)を送信する場合には、その申請等相続人以外の相続人の電子署名及び電子証明書の送信を要しないこととする。
(注)上記の改正は、令和2年分以後の所得税の準確定申告書を令和2年1月1日以後に提出する場合について適用する。
3 納税地の異動があった場合の振替納税手続の簡素化
(国 税)
 振替納税を行っている個人が他の税務署管内へ納税地を異動した場合において、その個人が提出する納税地の異動届出書等に、その異動後も従前の金融機関の口座から振替納税を行う旨を記載したときは、異動後の所轄税務署長に対してする申告等について振替納税を引き続き行うことを可能とするよう、運用上の対応を行う。
(注)上記の改正は、令和3年1月1日以後に提出する納税地の異動届出書等について実施する。
4 電子帳簿等保存制度の見直し
(国 税)
 国税関係帳簿書類の保存義務者が電子取引(取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいう。)を行った場合の電磁的記録の保存方法の範囲に、次の方法を加える。
(1)発行者のタイムスタンプが付された電磁的記録を受領した場合において、その電磁的記録を保存する方法
(2)電磁的記録について訂正又は削除を行った事実及び内容を確認することができるシステム(訂正又は削除を行うことができないシステムを含む。)において、その電磁的記録の授受及び保存を行う方法
(注)上記の改正は、令和2年10月1日から施行する。
5 地方税共通納税システムの対象税目の拡大
(地方税)
 地方公共団体の収納事務を行う地方税共同機構が電子的に処理する特定徴収金の対象税目に個人住民税の利子割、配当割及び株式等譲渡所得割を追加し、特別徴収義務者がeLTAX(地方税のオンライン手続のためのシステム)を通じて電子で申告及び納入を行うことができるよう、所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和3年10月1日以後に特別徴収義務者が行う個人住民税の利子割、配当割及び株式等譲渡所得割の申告及び納入について適用する。
6 その他の円滑な申告・納税のための環境整備
(国 税)
(1)納税証明書の電子的請求手続等の柔軟化
① 納税証明書の電子的請求について、電子委任状を添付して行うことを可能とするとともに、その納税証明書の交付の請求に係る情報を送信する際、委任者の電子署名及び電子証明書の送信を要しないこととする。
② 納税証明書の電子的交付について、税務署長等の電子署名及び電子証明書の送信に代えて、真正性を担保するための措置(その納税証明書に記載すべき事項が記録されたいわゆる「QRコード」の添付)を講ずることにより、申請者が納税証明書を複数印刷して使用することを可能とする。
(注)上記の改正は、令和3年7月1日以後に行う請求について適用する。
(2)支払調書等の電子的提出方法の柔軟化
 電子情報処理組織を使用する方法(e -Tax)により提出する支払調書等のファイル形式に、CSV形式を加える。
(注)上記の改正は、令和3年1月1日以後に提出する支払調書等について適用する。
7 国外財産調書制度等の見直し
(国 税)
国外財産調書制度等について、次の見直しを行う。
(1)相続国外財産に係る相続直後の国外財産調書等への記載の柔軟化
 相続の開始の日の属する年(以下「相続開始年」という。)の12月31日においてその有する国外財産に係る国外財産調書については、その相続又は遺贈により取得した国外財産(以下「相続国外財産」という。)を記載しないで提出することができることとする。この場合において、国外財産調書の提出義務については、国外財産の価額の合計額からその相続国外財産の価額の合計額を除外して判定する(財産債務調書における相続財産(相続又は遺贈により取得した財産をいう。以下同じ。)についても同様とする。)。
(注)上記の改正は、令和2年分以後の国外財産調書又は財産債務調書について適用する。
(2)国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の見直し
① 国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置(以下「加算税の加重措置」という。)の適用対象に、相続国外財産に対する相続税に関し修正申告等(修正申告書若しくは期限後申告書の提出又は更正若しくは決定をいう。以下同じ。)があった場合を加える。
② 次のいずれかに該当する場合には、加算税の加重措置は適用しないこととする(財産債務調書における相続財産についても同様とする。)。
イ その年の12月31日において相続国外財産を有する者(その価額の合計額が提出基準額(5 ,000万円)を上回る国外財産(相続国外財産を除く。)を有する者を除く。)の責めに帰すべき事由がなく提出期限内に国外財産調書の提出がない場合
ロ その年の12月31日において相続国外財産を有する者の責めに帰すべき事由がなく国外財産調書に記載すべき相続国外財産についての記載がない場合(記載不備の場合を含む。)
(3)過少申告加算税等の特例の適用の判定の基礎となる国外財産調書等の見直し
 相続国外財産に対する相続税に関し修正申告等があった場合の過少申告加算税等の特例の適用の判定の基礎となる国外財産調書について、次に掲げる措置の区分に応じそれぞれ次に定める国外財産調書とする(次の①については、財産債務調書における相続財産についても同様とする。)。
① 国外財産調書の提出がある場合の過少申告加算税等の軽減措置(以下「加算税の軽減措置」という。)  次に掲げる国外財産調書のいずれか
イ 被相続人の相続開始年の前年分の国外財産調書
ロ 相続人の相続開始年の年分の国外財産調書
ハ 相続人の相続開始年の翌年分の国外財産調書
② 加算税の加重措置 上記①イからハまでに掲げる国外財産調書の全て
(注1)上記(2)①の場合の加算税の加重措置は、上記①ハに掲げる国外財産調書の提出義務がない相続人については、適用しない。
(注2)上記(1)により国外財産調書に記載しないことができる相続国外財産に係る所得税に関し修正申告等があった場合の加算税の加重措置は、相続開始年の年分については、適用しない。
(4)国外財産調書に記載すべき国外財産に関する書類の提示又は提出がない場合の加算税の軽減措置及び加重措置の特例の創設
 国外財産を有する者が、国税庁等の当該職員から国外財産調書に記載すべき国外財産の取得、運用又は処分に係る書類のうち、その者が通常保存し、又は取得することができると認められるもの(その電磁的記録又はその写しを含む。)の提示又は提出を求められた場合において、その提示又は提出を求められた日から60日を超えない範囲内においてその提示又は提出の準備に通常要する日数を勘案して当該職員が指定する日までにその提示又は提出をしなかったとき(その者の責めに帰すべき事由がない場合を除く。)における加算税の軽減措置及び加重措置の適用については、次のとおりとする。
① その国外財産に係る加算税の軽減措置は、適用しない。
② その国外財産に係る加算税の加重措置については、その加算する割合を10%(適用前加算割合:5%)とする。
(注)上記②については、上記(2)②イ又はロに該当する場合には、その加算する割合を5%(適用前加算割合:なし)とする。
(5)その他所要の措置を講ずる。
(注)上記(2)から(5)までの改正は、令和2年分以後の所得税又は令和2年4月1日以後に相続若しくは遺贈により取得する財産に係る相続税について適用する。
8 国外取引等の課税に係る更正決定等の期間制限の見直し
(国 税)
 国外取引等の課税に係る更正決定等の期間制限について、次の見直しを行う。
(1)次の①に掲げる事由が生じた場合において、次の②に掲げる事由に基づいてする更正決定等について、租税条約等の相手国等に対して情報提供要請に係る書面が発せられた日から3年間は、行うことができることとする。
① 国税庁等の当該職員が納税者に国外取引又は国外財産に関する書類(その電磁的記録又はその写しを含む。)の提示又は提出を求めた場合において、その提示又は提出を求めた日から60日を超えない範囲内においてその準備に通常要する日数を勘案して当該職員が指定する日までにその提示又は提出がなかったこと(納税者の責めに帰すべき事由がない場合を除く。)。
② 国税庁長官(その委任を受けた者を含む。)が租税条約等の規定に基づきその租税条約等の相手国等に上記①の国外取引又は国外財産に関する情報提供要請をした場合(その情報提供要請が更正決定等をすることができないこととなる日の6月前の日以後にされた場合を除くものとし、その情報提供要請をした旨の納税者への通知が情報提供要請をした日から3月以内にされた場合に限る。)において、その課税標準等又は税額等に関し、租税条約等の相手国等から提供があった情報に照らし非違があると認められること。
(注)上記の「国外取引」とは、非居住者又は外国法人との間で行う資産の販売、資産の購入、役務の提供その他の取引(非居住者又は外国法人が提供する場を利用して行われる取引を含む。)をいう。
(2)上記(1)に併せて、国外取引等の課税に係る更正決定等により納付すべき国税の消滅時効等について所要の整備を行う。
(注)上記の改正は、令和2年4月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用する。
9 利子税・還付加算金等の割合の引下げ
(国 税)
 利子税・還付加算金等の割合について、次の見直しを行う。
(1)利子税の割合は、各年の利子税特例基準割合が年7.3%未満の場合には、その年中においては、次に掲げる利子税の区分に応じそれぞれ次に定める割合とする。
① 次の②以外の利子税 その利子税特例基準割合
② 相続税及び贈与税に係る利子税 これらの利子税の割合に、その利子税特例基準割合が年7.3%に占める割合を乗じて得た割合
(注)上記の「利子税特例基準割合」とは、各年の前々年の9月から前年の8月まで(現行:前々年の10月から前年の9月まで)の各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の11月30日まで(現行:12月15日まで)に財務大臣が告示する割合(以下「平均貸付割合」という。)に年0.5%(現行:年1%)の割合を加算した割合をいう。
(2) 納税の猶予等の適用を受けた場合(延滞税の全額が免除される場合を除く。)の延滞税の割合は、納税の猶予等をした期間の猶予特例基準割合が年7.3%未満の場合には、その期間においては、その猶予特例基準割合とする。
(注1)上記の「猶予特例基準割合」とは、平均貸付割合に年0.5%(現行:年1%)の割合を加算した割合をいう。
(注2)上記(2)以外の延滞税の割合については、従前どおりの割合とする。
(3)還付加算金の割合は、各年の還付加算金特例基準割合が年7.3%未満の場合には、その年中においては、その還付加算金特例基準割合とする。
(注)上記の「還付加算金特例基準割合」とは、平均貸付割合に年0.5%(現行:年1%)の割合を加算した割合をいう。
(4)利子税・還付加算金等の割合について0%となることのないよう下限を整備するほか、所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和3年1月1日以後の期間に対応する利子税・還付加算金等について適用する。
(地方税)
 還付加算金等の割合について、次の見直しを行う。
(1) 還付加算金の割合は、各年の還付加算金特例基準割合が年7.3%未満の場合には、その年中においては、その還付加算金特例基準割合とする。
(注)上記の「還付加算金特例基準割合」とは、各年の前々年の9月から前年の8月まで(現行:前々年の10月から前年の9月まで)の各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の11月30日まで(現行:12月15日まで)に財務大臣が告示する割合(以下「平均貸付割合」という。)に年0.5%(現行:年1%)の割合を加算した割合をいう。
(2) 納税の猶予等の適用を受けた場合(延滞金の全額が免除される場合を除く。)の延滞金の割合は、納税の猶予等をした期間の猶予特例基準割合が年7.3%未満の場合には、その期間においては、その猶予特例基準割合とする。
(注)上記の「猶予特例基準割合」とは、平均貸付割合に年0.5%(現行:年1%)の割合を加算した割合をいう。
(3)法人住民税及び法人事業税の納期限の延長の適用を受けた場合の延滞金の割合は、各年の国税の利子税特例基準割合が年7.3%未満の場合には、その年中においては、その利子税特例基準割合とする。
(注)上記の「利子税特例基準割合」とは、平均貸付割合に年0.5%(現行:年1%)の割合を加算した割合をいう。
(4)還付加算金等の割合について0%となることのないよう下限を整備するほか、所要の措置を講ずる。
(注1)上記(2)及び(3)以外の延滞金の割合については、従前どおりの割合とする。
(注2)上記の改正は、令和3年1月1日以後の期間に対応する還付加算金等について適用する。
10 その他の課税関係の整備・適正化等
(国 税)
(1)期限到来間際にされた申告に係る加算税の賦課決定期限の整備
 賦課決定をすることができないこととなる日前3月以内にされた納税申告書の提出又は納税の告知を受けることなくされた源泉所得税等の納付(調査による更正決定又は納税の告知を予知してされたものを除く。)に係る無申告加算税又は不納付加算税の賦課決定について、その提出又は納付がされた日から3月を経過する日まで、行うことができることとするとともに、これらの賦課決定により納付すべき国税の消滅時効等について所要の整備を行う。
(注)上記の改正は、令和2年4月1日以後に法定申告期限等が到来する国税に係る加算税について適用する。
(2)口頭意見陳述におけるテレビ会議システムの利用
 審査請求及び再調査の請求における口頭意見陳述について、一般的な行政不服審査と同様に、テレビ会議システムを用いて行うことができることとする。
(注)上記の改正は、令和3年1月1日以後にされる審査請求又は再調査の請求に係る口頭意見陳述について適用する。
(3)不動産公売等における暴力団員等の買受け防止措置の創設
 国税の不動産の公売等について、民事の不動産の競売における暴力団員等による買受けの防止措置と同様に、次の措置を講ずる。
① 公売財産(不動産に限る。以下「公売不動産」という。)の入札等(入札又は競り売りに係る買受けの申込みをいう。以下同じ。)をしようとする者は、暴力団員等でない旨を陳述しなければ、入札等をすることができないこととする。
② 税務署長は、公売不動産の最高価申込者等(最高価申込者及び次順位買受申込者をいう。以下同じ。)が暴力団員等に該当するか否かについて、その税務署の所在地を管轄する都道府県警察に照会しなければならないこととする。
③ 税務署長は、公売不動産の最高価申込者等が暴力団員等に該当すると認める場合には、最高価申込者等とする決定を取り消すことができるものとする。
④ 上記①の陳述について、虚偽陳述に対する罰則を設ける。
⑤ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和3年1月1日以後に行う公告に係る公売等について適用する。
(地方税)
(1)期限到来間際にされた申告に係る加算金の決定期限の整備
 決定をすることができないこととなる日前3月以内にされた申告書の提出(調査による更正決定を予知してされたものを除く。)に係る不申告加算金の決定について、その提出がされた日から3月を経過する日まで、行うことができることとするとともに、この決定により納付すべき不申告加算金の消滅時効について所要の整備を行う。
(注)上記の改正は、令和2年4月1日以後に申告書の提出期限が到来する地方税に係る加算金について適用する。
(2)不動産公売等における暴力団員等の買受け防止措置の創設
 地方税の不動産の公売等について、公売財産(不動産に限る。)の入札等(入札又は競り売りに係る買受けの申込みをいう。以下同じ。)をしようとする者は、暴力団員等でない旨を陳述しなければ、入札等をすることができないこととする等、不動産公売等における暴力団員等の買受け防止措置に関し国税の滞納処分の例によることとし、上記の陳述について、虚偽陳述に対する罰則を設ける。
(注)上記の改正は、令和3年1月1日以後に行う公告に係る公売等について適用する。
(3)情報照会手続の整備
徴税吏員が事業者等に、地方税に関する調査(犯則事件の調査を除く。)に関し参考となるべき簿書及び資料の閲覧又は提供その他の協力を求めることができることを法令上明確化する。

七  関税
1 暫定税率等の適用期限の延長等
(1)令和2年3月 31日に適用期限の到来する暫定税率(416品目)及び特別緊急関税制度について、令和3年3月31日まで適用期限の延長を行う。
(2)令和2年3月 31日に適用期限の到来する牛肉及び豚肉に係る関税の緊急措置について、日米貿易協定が令和2年1月に発効することを踏まえ、これらの緊急措置は措置しないこととする。
(3) 加糖調製品(6品目)について、国内産糖への支援に充当する調整金の拡大が可能となるよう、次のとおり暫定税率の引下げを行う。

関税率表番号 主な品名 現行 改正案
1806.10-1 ココア粉 28.5% 25.8%
1806.20-2-(1)-B ココアの調製品 27% 25%
1901.90-2-(1)-A-(b) ミルクの調製品 28.8% 26.6%
2101.11-1 コーヒーのエキス 21.7% 16.9%
2106.10-2-(1)-B たんぱく質濃縮物 19.1% 15.3%
2106.90-2-(2)-E-(a)ハ-(ロ)-Ⅲ-(Ⅰ) 乳糖を含有する調製食料品 28.8% 26.6%

(4)令和2年3月 31日に適用期限の到来する沖縄に係る特例措置(沖縄特定免税店制度)について、令和4年3月31日まで適用期限の延長を行う。
(5)令和2年3月31日に適用期限の到来する航空機部分品等の免税制度及び加工再輸入減税制度について、令和5年3月31日まで適用期限の延長を行う。
2 個別品目の関税率の見直し
 自動車安全部品用イグナイター等5品目について、基本税率を無税とする。
3 国際コンテナ戦略港湾政策に係るとん税及び特別とん税の特例措置の創設  欧州・北米航路に就航するコンテナ貨物定期船が国際戦略港湾(京浜港、阪神港、名古屋港及び四日市港)に入港する際のとん税及び特別とん税について、当分の間、開港ごとに1年分を一時に納付する場合の税率(純トン数1トンまでごと)を次のとおりとする。

現行 改正案
108円
(とん税48円、特別とん税60円)
54円
(とん税24円、特別とん税30円)

(注)上記の改正は、令和2年10月1日から施行する。
4 その他
(1) 入国者が携帯又は別送するアルコール飲料に係る簡易税率について、現行水準(蒸留酒:300円/l、その他200円/l)を維持する。
(2)納税環境整備に係る内国税の規定を踏まえた所要の規定の整備等を行う。

第三 検討事項
1 年金課税については、少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する中で、世代間及び世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年金、公的年金を補完する企業年金を始めとした各種年金制度間のバランス、貯蓄・投資商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランス等に留意するとともに、平成30年度税制改正の公的年金等控除の見直しの考え方や年金制度改革の方向性、諸外国の例も踏まえつつ、拠出・運用・給付を通じて課税のあり方を総合的に検討する。

2 デリバティブを含む金融所得課税の更なる一体化については、総合取引所における個人投資家の取引状況も踏まえつつ、投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境を整備する観点から、多様なスキームによる意図的な租税回避行為を防止するための実効性ある方策の必要性を踏まえ、検討する。

3 小規模企業等に係る税制のあり方については、働き方の多様化を踏まえ、個人事業主、同族会社、給与所得者の課税のバランスや勤労性所得に対する課税のあり方等にも配慮しつつ、個人と法人成り企業に対する課税のバランスを図るための外国の制度も参考に、引き続き、給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討する。

4 カジノから生じる所得にかかる適正な申告の確保等の観点から、国内外のギャンブル課税の状況、今後制定されるカジノ管理委員会規則等に基づく詳細な規制の具体化の状況、最新の技術の活用可能性等も踏まえつつ、関連する納税環境の整備について、 IR事業の開業に向けて、今後検討する。その際、事業者の事務負担や国際競争力の確保についても考慮する。

5 自社株式を対価とした公開買付け等に係る課税のあり方については、会社法制の見直しを踏まえ、組織再編税制等も含めた理論的な整理を行った上で、必要な税制措置について検討する。

6 自動車関係諸税については、技術革新や保有から利用への変化等の自動車を取り巻く環境変化の動向、環境負荷の低減に対する要請の高まり等を踏まえつつ、国・地方を通じた財源を安定的に確保していくことを前提に、その課税のあり方について、中長期的な視点に立って検討を行う。

7 原料用石油製品等に係る免税・還付措置の本則化については、引き続き検討する。

8 事業税における社会保険診療報酬に係る実質的非課税措置及び医療法人に対する軽減税率については、税負担の公平性を図る観点や、地域医療の確保を図る観点から、そのあり方について検討する。

9 ガス供給業に係る収入金額による外形標準課税については、小売全面自由化され2022年に導管部門が法的分離するガス供給業における他のエネルギーとの競合や新規参入の状況とその見通し、行政サービスの受益に応じた負担の観点、地方財政や個々の地方公共団体の税収に与える影響等を考慮しつつ、これらの法人に対する課税の枠組みに、付加価値額及び資本金等の額による外形標準課税を組み入れていくことについて、引き続き検討する。

【付記】連結納税制度の見直し
一 グループ通算制度の基本的な仕組み
1 適用法人
 適用法人について、次の法人を除外するほか、連結納税制度と同様とする。
(1)青色申告の承認の取消しの通知を受けた日から同日以後5年を経過する日の属する事業年度終了の日までの期間を経過していないもの
(2)青色申告の取りやめの届出書の提出をした日から同日以後1年を経過する日の属する事業年度終了の日までの期間を経過していないもの
2 適用方法
 適用方法並びに承認の取消し及び適用の取りやめの方法について、次の見直しを行うほか、連結納税制度と同様とする。
(1) 親法人の設立事業年度の翌事業年度からグループ通算制度を適用しようとする場合の承認申請期限の特例について、親法人がその資産の時価評価による評価損益を計上する必要がある場合及び設立事業年度が3月以上の場合には適用できないこととする。
(2) 承認の却下事由に、備え付ける帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録していることその他不実の記載又は記録があると認められる相当の理由があることを加える。
(3)青色申告の承認を取り消された場合には、グループ通算制度の承認の効力を失うこととし、グループ通算制度固有の取消事由を設けないこととする。
3 納税主体等
(1) 親法人及び各子法人が法人税の申告を行う。
(2) 親法人及び各子法人には、通算グループ内の他の法人の法人税について連帯納付責任がある。
(3)親法人の電子署名により子法人の申告及び申請、届出等を行うことができることとするほか、ダイレクト納付についても所要の措置を講ずる。
4 事業年度
 適用法人の事業年度は、連結納税制度と同様に、親法人の事業年度に合わせたみなし事業年度とする。
5 所得金額及び法人税額の計算
(1) 損益通算
① 欠損法人の欠損金額の合計額(所得法人の所得の金額の合計額を限度)を所得法人の所得の金額の比で配分し、所得法人において損金算入する。この損金算入された金額の合計額を欠損法人の欠損金額の比で配分し、欠損法人において益金算入する。
② グループ通算制度の適用法人又は通算グループ内の他の法人の所得の金額又は欠損金額が期限内申告書に記載された所得の金額又は欠損金額と異なる場合には、期限内申告書に記載された所得の金額又は欠損金額を上記①の所得の金額又は欠損金額とみなして上記①の損金算入又は益金算入の計算をする。
(2) 欠損金の通算
① グループ通算制度の適用法人の欠損金の繰越控除額の計算について、控除限度額は通算グループ内の各法人の欠損金の繰越控除前の所得の金額の50%相当額(中小法人等、更生法人等及び新設法人については、所得の金額)の合計額とし、控除方法は連結納税制度と同様とする。
(注)更生法人等の判定は各法人について行うこととし、通算グループ内のいずれかの法人が新設法人に該当しない場合にはその通算グループ内の全ての法人が新設法人に該当しないこととする。
② 通算グループ内の他の法人の当期の所得の金額又は過年度の欠損金額が期限内申告書に記載された当期の所得の金額又は過年度の欠損金額と異なる場合には、期限内申告書に記載された当期の所得の金額又は過年度の欠損金額を当期の所得の金額又は過年度の欠損金額とみなす。
③ グループ通算制度の適用法人の当期の所得の金額又は過年度の欠損金額が期限内申告書に記載された当期の所得の金額又は過年度の欠損金額と異なる場合には、欠損金額及び中小法人等以外の控除限度額(欠損金の繰越控除前の所得の金額の50%相当額をいう。)で期限内申告において通算グループ内の他の法人との間で授受した金額を固定する調整をした上で、その適用法人のみで欠損金の繰越控除額を再計算する。
(3) 欠損金の繰越期間に対する制限を潜脱するため又は離脱法人に欠損金を帰属させるためあえて誤った当初申告を行うなど法人税の負担を不当に減少させる結果となると認めるときは、税務署長は、上記(1)②並びに(2)②及び③を適用しないことができる。
(4)通算グループ内の全ての法人について、期限内申告における所得の金額が零又は欠損金額がある等の要件に該当するときは、上記(1)②並びに(2)②及び③を適用しない。
(5)利益・損失の二重計上の防止
 投資簿価修正制度を次の制度に改組する。
① 通算グループ内の子法人の株式の評価損益及び通算グループ内の他の法人に対する譲渡損益を計上しない。
② 通算グループからの離脱法人の株式の離脱直前の帳簿価額を離脱法人の簿価純資産価額に相当する金額とする。
③ グループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入をする子法人で親法人との間に完全支配関係の継続が見込まれないものの株式について、株主において時価評価により評価損益を計上する。
(注)グループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入後損益通算をせずに2月以内に通算グループから離脱する法人については、上記①から③までを適用しない。
(6)税率
 税率は、通算グループ内の各法人の適用税率による。なお、中小法人の軽減税率の適用対象所得金額は、年800万円を所得法人の所得の金額の比で配分した金額とする。
(注)上記の配分は、所得法人の所得の金額が期限内申告における所得の金額と異なる場合には、原則として期限内申告における所得の金額により配分する。
(7)税効果相当額の授受
 内国法人が他の内国法人との間で通算税効果額を授受する場合には、その授 受する金額は、益金の額及び損金の額に算入しないこととする。
(注)上記の「通算税効果額」とは、グループ通算制度を適用することにより減少する法人税及び地方法人税の額に相当する金額として内国法人間で授受される金額をいう。
6 申告及び納付
(1) グループ通算制度の適用法人は、電子情報処理組織を使用する方法( e-Tax)により法人税及び地方法人税の確定申告書、中間申告書及び修正申告書を提出しなければならないこととする。
(注)添付書類の提出方法及び電子情報処理組織による申告が困難である場合の特例についても、大法人と同様とする。
(2)仮決算による中間申告は、通算グループ内の全ての法人が行わなければならないこととする。
(3)グループ通算制度の適用法人の申告については、連結納税制度と同様に、申告期限の延長特例による延長期間を原則2月とする。
(4)災害等により決算が確定しない場合等の申告期限の延長及び上記(3)の延長特例の申請は親法人が行うものとし、親法人に延長処分があった場合におけるその子法人及び上記(3)の延長特例を受けている通算グループに加入した子法人は、申告期限が延長されたものとみなす。
(5)グループ通算制度の適用法人について、通算グループからの離脱があった場合には、その離脱後に開始する事業年度について、上記(3)の延長は効力を失う。
(6)国税通則法の災害等による期限延長制度により通算グループ内のいずれかの法人の申告期限が延長された場合には、他の法人についても申告期限の延長が あったものとする。
7 グループ通算制度の適用開始、通算グループへの加入及び通算グループからの離脱
(1)グループ通算制度の適用開始、通算グループへの加入又は通算グループからの離脱の際のみなし事業年度について、次の見直しを行うほか、連結納税制度と同様とする。
① 事業年度の中途で親法人との間に完全支配関係を有することとなった場合の加入時期の特例について、その完全支配関係を有することとなった日の前日の属する会計期間の末日の翌日を承認の効力発生日及び事業年度開始の日とすることができる措置を加える。
② 離脱法人の離脱日に開始する事業年度終了の日を親法人の事業年度終了の日とする措置を廃止する。
(2)グループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入に際して行う資産の時価評価について、対象外となる法人を次の法人とする。
① 適用開始時の時価評価課税の対象外となる法人
イ  親法人との間に完全支配関係の継続が見込まれる子法人
ロ いずれかの子法人との間に完全支配関係の継続が見込まれる親法人
② 加入時の時価評価課税の対象外となる法人
イ 適格株式交換等により加入した株式交換等完全子法人
ロ 通算グループ内の新設法人
ハ 適格組織再編成と同様の要件として次の要件(加入の直前に支配関係がある場合には、(イ)から(ハ)までの要件)の全てに該当する法人
(イ)親法人との間の完全支配関係の継続要件
(ロ)当該法人の従業者継続要件
(ハ)当該法人の主要事業継続要件
(ニ)当該法人の主要な事業と通算グループ内のいずれかの法人の事業との事業関連性要件
(ホ)上記(ニ)の各事業の事業規模比5倍以内要件又は当該法人の特定役員継続要件
(注)上記の各要件は、組織再編成の適格要件と同様とする。
(3) 上記(2)①又は②の法人以外の法人のグループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入前の欠損金を切り捨てる。
(4) 上記(2)①又は②の法人のグループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入前の欠損金及び資産の含み損等について、次のとおり、支配関係発生から5年経過日と開始又は加入から3年経過日とのいずれか早い日まで、制限を行う。
① 支配関係発生後に新たな事業を開始した場合には、支配関係発生前に生じた欠損金及び支配関係発生前から有する資産の開始・加入前の実現損から成る欠損金を切り捨てるとともに、支配関係発生前から有する資産の開始・加入後の実現損を損金不算入とする。
② 原価及び費用の額の合計額のうちに占める損金算入される減価償却費の額の割合が30%を超える場合には、通算グループ内で生じた欠損金について、損益通算の対象外とした上で、特定欠損金(その法人の所得の金額を限度として控除ができる欠損金をいう。以下同じ。)とする。
③ 上記①又は②のいずれにも該当しない場合には、通算グループ内で生じた欠損金のうち、支配関係発生前から有する資産の実現損から成る欠損金について、損益通算の対象外とした上で、特定欠損金とする。
(注)制限の対象となる資産の実現損の額は、組織再編税制における特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入制度と同様とする。
(5)次の法人については、上記(4)の対象外とする。
① 親法人との間(親法人にあっては、いずれかの子法人との間。②において同じ。)に支配関係が5年超ある法人
② 通算グループ内のいずれかの法人と共同事業を行う法人として、次の法人
イ 加入の直前に親法人との間に支配関係がない法人で上記(2)②ハに該当するもの
ロ 開始又は加入の直前に親法人との間に支配関係がある法人で次の要件の全てに該当するもの
(イ)当該法人の主要な事業と通算グループ内のいずれかの法人の事業との事業関連性要件
(ロ)上記(イ)の各事業の事業規模比5倍以内要件又は当該法人の特定役員継続要件
(ハ)当該法人の上記(イ)の主要な事業の事業規模拡大2倍以内要件又は特定役員継続要件
(注)上記の各要件は、組織再編成の欠損金の制限におけるみなし共同事業要件と同様とする。
ハ 非適格株式交換等により加入した株式交換等完全子法人で共同で事業を行うための適格株式交換等の要件のうち対価要件以外の要件に該当するもの
(6) グループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入前の欠損金(現行:特定連結子法人の連結納税制度の適用開始又は連結グループへの加入前の欠損金)のうち上記(3)及び(4)により切り捨てられなかったものは、特定欠損金とする。
(7) 通算グループからの離脱
① 連結納税制度と同様に、通算グループから離脱した法人は、5年間再加入を認めない。
② 通算グループから離脱した法人が次に掲げる場合に該当する場合には、それぞれ次の資産については、直前の事業年度において、時価評価により評価損益の計上を行う。
イ 主要な事業を継続することが見込まれていない場合(離脱の直前における含み益の額が含み損の額以上である場合を除く。)  固定資産、土地等、有価証券(売買目的有価証券等を除く。)、金銭債権及び繰延資産(これらの資産のうち帳簿価額が1,000万円未満のもの及びその含み損益が資本金等の額の2分の1又は1,000万円のいずれか少ない金額未満のものを除く。)
ロ 帳簿価額が10億円を超える資産の譲渡等による損失を計上することが見込まれ、かつ、その法人の株式の譲渡等による損失が計上されることが見込まれている場合 その資産
(8)その他
① グループ通算制度の適用開始又は通算グループへの加入前の譲渡損益調整資産の譲渡損益及びリース取引に係る延払損益で繰り延べているもの(1 ,000万円未満のものを除く。)並びに特定資産の買換え等に係る特別勘定の金額(1 ,000万円未満のものを除く。)については、連結納税制度と同様に、時価評価の適用除外となる法人に該当する場合を除き、その繰り延べている損益の計上及びその特別勘定の金額の取崩しを行う。
② 通算グループからの離脱前の譲渡損益調整資産の譲渡損益及びリース取引に係る延払損益で繰り延べているもの並びに特定資産の買換え等に係る特別勘定の金額については、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次のとおりとする。
イ 上記(7)②イに該当する場合 その繰り延べている損益(1 ,000万円未満のものを除く。)の計上及びその特別勘定の金額(1 ,000万円未満のものを除く。)の取崩しを行う。
ロ 譲渡損益調整資産の譲渡損で繰り延べている金額が10億円を超えるものの戻入れが見込まれ、かつ、その法人の株式の譲渡等による損失が計上されることが見込まれている場合 その繰り延べている損失の計上を行う。

二 各個別制度の取扱い
 次に掲げる個別制度については、親法人及び各子法人が申告を行うことに鑑み個別計算を原則としつつ、企業経営の実態や事務負担、制度趣旨・目的、濫用可能性等を勘案し、それぞれ次のとおりとする。また、他の各個別制度についても、同様の考え方により、適切な仕組みとする。
1 受取配当等の益金不算入制度
(1)関連法人株式等に係る負債利子控除額を、関連法人株式等に係る配当等の額の100分の4相当額(その事業年度において支払う負債利子の額の10分の1相当額を上限とする。)とする。
(2) 関連法人株式等又は非支配目的株式等に該当するかどうかの判定については、100%グループ内(現行:連結グループ内)の法人全体の保有株式数等により行う。
(3)短期保有株式等の判定については、各法人で行う。
2 外国子会社配当等の益金不算入制度
 外国子会社の判定については、連結納税制度と同様とする。
3 寄附金の損金不算入制度
(1)寄附金の損金算入限度額の計算の基礎となる資本金等の額について、資本金の額及び資本準備金の額の合計額とする。
(2)寄附金の損金不算入額は、各法人において計算する。
4 貸倒引当金
 100%グループ内(現行:連結グループ内)の法人間の金銭債権を貸倒引当金の対象となる金銭債権から除外する。
5 特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用制度及び資産の譲渡等損失額の損金不算入制度について、欠損等法人に該当するかどうかの判定及びその適用は、各法人で行う。
6 会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入制度
(1) 民事再生等一定の事実による債務免除等があった場合に青色欠損金等の控除前に繰越欠損金を損金算入できる制度について、グループ通算制度の適用法人の控除限度額は、当該法人の損益通算及び青色欠損金等の繰越控除前の所得の金額と通算グループ内の各法人の損益通算及び青色欠損金等の繰越控除前の所得の金額の合計額から欠損金額の合計額を控除した金額とのうちいずれか少ない金額とする。
(2) 民事再生等一定の事実による債務免除等があった場合に青色欠損金等の控除後に繰越欠損金を損金算入できる制度及び解散の場合の繰越欠損金の損金算入制度について、グループ通算制度の適用法人の控除限度額は、当該法人の損益通算及び青色欠損金等の繰越控除後の所得の金額とする。
(3)損金算入の対象となる債務免除益等の金額について、グループ通算制度においては、債務免除に係る債権を有する者等から除かれている法人を、親法人、適用対象となる法人及び債務免除等の相手方である法人の事業年度が同日に終了する場合のその相手方である通算グループ内の法人とする。
7 中小判定
 次の制度における中小法人の判定について、通算グループ内のいずれかの法人が中小法人に該当しない場合には、通算グループ内の全ての法人が中小法人に該当しないこととする。
(1) 貸倒引当金
(2) 欠損金の繰越控除
(3) 軽減税率
(4) 特定同族会社の特別税率の不適用
(5)中小企業等向けの各租税特別措置
8 所得税額控除
 所得税額控除額は、各法人において計算する。
9 外国税額控除
(1) 通算グループ内の各法人の控除限度額の計算は、基本的に連結納税制度と同様とする。
(2) 通算グループ内の各法人の当期の外国税額控除額が期限内申告書に記載された外国税額控除額と異なる場合には、期限内申告書に記載された外国税額控除額を当期の外国税額控除額とみなす。
(3)当期の外国税額控除額と期限内申告書に記載された外国税額控除額との過不足額は、進行年度の外国税額控除額又は法人税額においてその調整を行う。
(4)通算グループ内の各法人が外国税額控除額の計算の基礎となる事実を隠蔽又は仮装して外国税額控除額を増加させること等により法人税の負担を減少させ ようとする場合には、上記(2)及び(3)は適用しない。
10 仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除及び還付制度は、各法人において適用する。
11 特定同族会社の特別税率 特定同族会社の特別税率については、各法人において計算する。ただし、次の調整を行う。
(1) 留保金額の基礎となる所得の金額は、損益通算後の所得の金額とする。
(2) 所得基準の基礎となる所得の金額は、損益通算前の所得の金額とする。
(3)留保金額の計算上、通算グループ内の法人間の受取配当及び支払配当はなかったものとした上、通算グループ外の者に対する配当の額として留保金額から控除される金額は、①に掲げる金額を②に掲げる金額の比で配分した金額と③に掲げる金額との合計額とする。
① 各法人の通算グループ外の者に対する配当の額のうち通算グループ内の他の法人から受けた配当の額に達するまでの金額の合計額
② 通算グループ内の他の法人に対する配当の額から通算グループ内の他の法人から受けた配当の額を控除した金額
③ 通算グループ外の者に対する配当の額が通算グループ内の他の法人から受けた配当の額を超える部分の金額
12 欠損金の繰戻しによる還付制度
(1)通算グループ内の各法人の繰戻しの対象となる欠損金額は、各法人の欠損金額の合計額を還付所得事業年度の所得の金額の比で配分した金額とする。災害損失欠損金額についても同様とする。
(注)上記一7(4)②及び③により損益通算の対象外とされる欠損金額は、配分の対象としない。
(2)解散等の場合の還付請求の特例について、通算グループ内の法人における対 象となる事由は、親法人の解散、子法人の破産手続開始の決定並びに各法人の更生手続開始及び再生手続開始の決定とする。
13 特別税額控除
(1) 試験研究を行った場合の税額控除制度(研究開発税制)については、次のとおりとする。
① 通算グループを一体として計算した税額控除限度額と控除上限額とのいずれか少ない金額(以下「税額控除可能額」という。)を各法人の調整前法人税額の比で配分した金額を各法人の税額控除限度額とする。
② 通算グループ内の他の法人の各期の試験研究費の額又は当期の調整前法人税額が確定申告書に記載された各期の試験研究費の額又は当期の調整前法人税額と異なる場合には、確定申告書に記載された各期の試験研究費の額又は当期の調整前法人税額を各期の試験研究費の額又は当期の調整前法人税額とみなす。
③ 上記②の場合において、税額控除可能額が確定申告書に記載された税額控除可能額に満たないときは、法人税額の調整等を行う。
(2)その他の特別税額控除制度については、上記一5(1)及び(2)の措置に基づく各法人の法人税額の一定額を限度とする。ただし、上記一5(1)②の措置を前提とした濫用防止のための措置その他の措置を講ずる。
14 その他の租税特別措置等
(1) 適用除外事業者
 通算グループ内のいずれかの法人の平均所得金額(前3事業年度の所得の金額の平均)が年15億円を超える場合には、通算グループ内の全ての法人が適用除外事業者に該当することとする。
(2) 資産の譲渡に係る特別控除額の特例について、100%グループ内(現行:連結グループ内)の各法人の特別控除額の合計額が定額控除限度額(年5,000万円)を超える場合には、その超える部分の金額を損金不算入とする。
(3) 過大支払利子税制
 損金不算入額は、各法人において計算する。ただし、適用免除基準(対象純支払利子等の額が2,000万円以下であること)の判定については、連結納税制度と同様とする。
(4)その他の租税特別措置等については、それぞれの制度の目的や仕組み、グループ通算制度の趣旨等に配慮しつつ、上記一5(1)②の措置を前提とした濫用防止のための措置その他所要の措置を講ずる。


三 租税回避行為の防止
 グループ通算制度に関しては、多様な租税回避行為が想定されることから、上記一5(3)及び7(2)から(8)まで並びに二9(4)の措置のほか、連結納税制度と同様に、包括的な租税回避行為を防止するための規定を設ける。

四 その他の整備
1 質問検査権、罰則、徴収の所轄庁等について、連結納税制度と同様の措置を講ずる。
2 青色申告制度について次の見直しを行い、グループ通算制度を青色申告制度を前提とした制度とする。
(1)青色申告の承認を受けていない法人がグループ通算制度の承認を受けた場合には、青色申告の承認を受けたものとみなす。
(2)グループ通算制度の承認を受けている法人が青色申告の承認を取り消される場合には、取消しの効果は遡及しないこととする。
(3)グループ通算制度の承認を受けている法人は、青色申告の取りやめをできないこととする。
(4)グループ通算制度の適用法人に対する国税庁長官、国税局長及び税務署長による帳簿書類についての必要な指示について、連結納税制度と同様とする。

五 適用関係
1 グループ通算制度の適用
 グループ通算制度は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用する。
2 経過措置
 連結納税制度からの移行に伴い、次の経過措置を講ずる。
(1)連結納税制度の承認は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度においては、グループ通算制度の承認とみなす。
(2)連結法人は、連結親法人が令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度開始の日の前日までに税務署長に届出書を提出することにより、グループ通算制度を適用しない単体納税法人となることができる。
(3)連結納税制度における特定連結欠損金個別帰属額を、グループ通算制度における特定欠損金額とみなす。
(4)連結欠損金の繰越控除制度において更生法人等として連結欠損金の控除限度額を連結欠損金の控除前の連結所得の金額とされていた連結グループ内の子法人は、上記一5(2)①の更生法人等とみなす。
(5)各個別制度についても、連結納税制度からグループ通算制度への移行のための必要な経過措置を講ずる。