令和4年度税制改正大綱

令和3年12月10日
自由民主党
公 明 党


 目 次

第一 令和4年度税制改正の基本的考え方・・・1
第二 令和4年度税制改正の具体的内容・・・16
一 個人所得課税・・・16
二 資産課税・・・33
三 法人課税・・・47
四 消費課税・・・71
五 国際課税・・・76
六 納税環境整備・・・82
八 関税・・・94
第三 検討事項・・・96



第一 令和4年度税制改正の基本的考え方

 岸田内閣は、新型コロナウイルス感染症(以下、「感染症」という。)への対応に万全を期しつつ、未来を見据え、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトに、新しい資本主義の実現に取り組むこととしている。
 そのためには、企業が研究開発や人的資本などへの投資を強化し、中長期的に稼ぐ力を高めるとともに、その収益を更なる未来への投資や、株主だけでなく従業員や下請企業を含む多様なステークホルダーへの還元へと循環させていくことを通じ、企業として持続的な成長を達成するという本来の使命をより一層果たしていくことが必要不可欠である。
 こうした観点に立ち、賃上げを積極的に行うとともに、マルチステークホルダーに配慮した経営に取り組む企業に対し、税制上の措置を抜本的に強化する。また、スタートアップと既存企業の協働によるオープンイノベーションを更に促進するための税制措置を講ずることで、新たなビジネス、産業の創出を進めるとともに、既存企業の事業革新を促し、付加価値の向上につなげる。
 地方を活性化し、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、地方でのネットワーク整備を加速する等の観点から、5G導入促進税制を見直す。過疎化や高齢化といった地方の課題の解決及び地方活性化に向けた基盤づくりとして、地方税の充実確保を図るとともに、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系を構築することが必要である。
 本年10月に国際課税制度の見直しに係る歴史的な合意が実現した。これは、デジタル化を含む経済実態の変化に対応するとともに、過度な法人税の引下げ競争に歯止めをかけ、企業間の公平な競争環境の整備に資するものであり、強く歓迎する。わが国は、本合意の国際的な実施に向けて引き続き主導的役割を果たすとともに、国内において、国際合意に則った法制度の整備を進める。
 経済あっての財政との考えの下、足元及び中長期的な成長に向けた課題に対応しつつ、財政健全化に向けて引き続き改革を続ける。税制については、経済社会のあり方に密接に関連するものであることから、今後ともその構造変化や国際的動向等を踏まえ、再分配機能の向上を図りつつ経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を構築する観点や、働き方への中立性の確保、格差の固定化防止、簡素な制度の構築、デジタル化の活用等納税者の利便性の向上といった観点から、検討を進める。

 以下、令和4年度税制改正の主要項目及び今後の税制改正に当たっての基本的考え方を述べる。

1.成長と分配の好循環の実現
(1)積極的な賃上げ等を促すための措置
 「成長と分配の好循環」の実現に向けて、長期的な視点に立って一人ひとりへの積極的な賃上げを促すとともに、株主だけでなく従業員、取引先などの多様なステークホルダーへの還元を後押しする観点から、賃上げに係る税制措置を抜本的に強化する。
 具体的には、継続雇用者の給与等支給額及び教育訓練費を増加させた企業に対し、給与等支給額の増加額の最大30%を控除する措置を設ける。その際、資本金10億円以上かつ常時使用従業員数1,000人以上の大企業に対しては、マルチステークホルダーに配慮した経営への取組みを宣言することを要件とする。中小企業については、賃上げを高い水準で行うとともに、教育訓練費を増加させた場合に、給与等支給額の増加額の最大40%を控除する措置を設ける。
 賃上げに係る税制措置としては過去最高水準の税額控除率となるこの税制も活用しつつ、企業が基本給を含む賃上げや人的資本の拡充、下請け先との取引適正化をはじめとする多様なステークホルダーへの還元に着実に取り組み、「成長と分配の好循環」が早期に起動することを期待するとともに、取組みの結果やこの税制がもたらす効果を注視していく。
 あわせて、収益が拡大しているにもかかわらず賃上げも投資も特に消極的な企業に対し、租税特別措置の適用を停止する措置を強化する。
(2)オープンイノベーション促進税制の拡充
 スタートアップを徹底支援するとともに、既存企業の事業革新を促すことにより、企業が生み出す付加価値の向上につなげることも、「成長と分配の好循環」の実現に向けて必要不可欠である。スタートアップと既存企業の協働によるオープンイノベーションを更に促進する観点から、資金の払込みによる出資の一定額の所得控除を認めるという極めて異例の措置であるオープンイノベーション税制について、対象に設立10年以上15年未満の研究開発型スタートアップを追加する等の拡充を行った上で2年間延長する。
(3)未来への投資等に向けた経済界への期待
 令和4年度税制改正においては、賃上げに係る税制措置を抜本的に強化するとともに、オープンイノベーション税制も拡充するなど、「成長と分配の好循環」を早期に起動させるために、思い切った税制措置を講じている。歳出面においても、科学技術の振興等を目的として、大胆な措置が講じられているところである。こうした取組みの趣旨を踏まえ、経済界に対しては、「成長と分配の好循環」の実現と、ひいては「コロナ後の新しい社会の開拓」に向けて、より積極的に役割を果たすよう求めたい。
 近年、企業の前向きな投資や賃上げを促す観点から、法人実効税率の引下げをはじめとする様々な税制上の取組みを行ってきた。しかしながら、わが国の賃金水準は、実質的に見て30年以上にわたりほぼ横ばいの状態にあり、その伸び率は他の先進国に比して低迷している。人的資本や無形資産への投資の規模や、設備の経過年齢を見ても、主要国に見劣りする水準にある。その一方で、株主還元や内部留保は増加を続けており、コロナ禍を受けてもその傾向は変わっていない。企業がイノベーションよりも経費削減や値下げに競争力の源泉を求め続けた結果、経済全体としては縮小均衡が生じてしまってきた。そのような企業行動の変容をもたらすべく、コーポレートガバナンスの強化や様々な分野における規制改革等と並んで取り組んできた近年の累次の法人税改革も、意図した成果を上げてこなかったと言わざるを得ない。
 「成長と分配の好循環」は、企業が果敢に事業の革新に取り組み、付加価値の高い製品・サービスを生み出すことでマークアップ率を高めるとともに、その利益を元に次なる投資を行いつつ、株主だけでなく従業員、取引先、地域社会などの多様なステークホルダーに継続的に還元し、企業収益の更なる増加につなげていくことで実現する。「コロナ後の新しい社会の開拓」に向けて、デジタルトランスフォーメーションや脱炭素化、「人」への投資などへの取組みがより一層重要となる中、他の先進国との間に生じてきた所得や競争力の差を縮小するためにも、企業においては、リスク回避や横並びの意識を排してアニマルスピリッツを取り戻し、イノベーションに挑戦することが期待される。政府においても、個々の企業が担うことは難しい研究開発支援や、非正規労働者やフリーランスを含めた社会全体の人的資本拡充など、企業が未来への投資に踏み切るに当たり必要となる環境の整備が、これまで以上に求められる。
 このような認識の下、来年以降、経済界の取組状況等も見極めつつ、積極的に未来への投資に取り組む企業に対しては真に有効な支援を行うとともに、十分な投資余力があるにもかかわらず活用されていない場合に、企業の行動変容を促すためにどのような対応を講ずるべきかといった視点からも、幅広く検討を行う。
(4)地方活性化、災害への対応
① 地方拠点強化税制の拡充
 わが国は急速な人口減少局面にあり、その傾向は地方においてより顕著である。他方、コロナ禍において若者や企業の地方移転への関心が高まるなど、注目すべき変化も見られる。東京一極集中を是正する観点から、地方拠点強化税制について、雇用者増加要件の撤廃や情報サービス事業部門の対象への追加など、地方に移転する企業の実態を踏まえた見直しを行った上で2年間延長する。
② 5G導入促進税制の見直し
 デジタル田園都市国家構想実現に向けては、5G全国ネットワークについて、高度なインフラを都市・地方で一体的に整備しつつ、特に条件不利地域における整備を加速することが重要である。また、企業等の多様な主体が自らシステムを構築するローカル5Gについても、社会課題解決や事業革新等に向け、導入を後押しすることが求められている。こうした観点から、5G導入促進税制について、対象となる設備やインセンティブ等の見直しを行った上で、3年間に期間を限定した上で延長する。
③ 農林水産物・食品の輸出拡大に向けた税制上の措置
 農林水産物・食品の輸出をより一層拡大していくためには、輸出先国のニーズ等に対応するというマーケットインの発想に基づく取組みが重要である。農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律の輸出事業計画に基づき導入される製造設備や物流施設等に対し、税制上の措置を創設する。
④ 異常危険準備金制度の拡充
 自然災害が多発傾向にあることも踏まえ、保険会社等の異常危険準備金制度について、火災保険及び風水害保険に係る特例積立率を10%に引き上げるほか、特例積立率の対象となる保険種目の見直しを行う。
(5)住宅ローン控除等の見直し
 本格的な人口減少・少子高齢化社会が到来する中、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた対策が急務となっている。こういった社会環境の変化等に対応した豊かな住生活を実現するためには、住宅の省エネ性能の向上及び長期優良住宅の取得の促進とともに、既存の住宅ストックの有効活用及び優良化を図ることが重要となる。住宅ローン控除などの税制措置の見直しに当たっては、こうした考え方や現下の経済状況も踏まえつつ、所要の見直しを行うこととする。
 まず、住宅ローン控除については、4年間延長することとする。その際、消費税率引上げに伴う反動減対策としての借入限度額の上乗せ措置は終了し、住宅性能などに応じた上乗せ措置を講ずる。
 具体的には、カーボンニュートラルの実現の観点から、新築住宅及びリフォームにより良質化した上で販売する買取再販住宅においては、認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅について借入限度額の上乗せ措置を講ずる。また、これまで新築住宅に限定していた上乗せ措置について、既存住宅においても講ずることとする。さらに、令和6年以降に建築確認を受ける新築住宅については省エネ基準の要件化を行うなど所要の措置を講じ、住宅分野の脱炭素化を推進する。
 控除期間については、新築の認定住宅等について13年間とする上乗せ措置を講ずる。なお、この措置は、わが国の経済状況が感染症の影響によって依然として厳しい状況にあることを踏まえた当面の措置として行うものであり、今後の状況を踏まえて必要な見直しを行うこととする。
 床面積要件については、令和5年以前に建築確認を受けた新築住宅において、合計所得金額1,000万円以下の者に限り、40㎡に緩和する。
 毎年の住宅ローン控除額が住宅ローン支払利息額を上回る状況が生じていることに対する平成30年度決算検査報告に対応する観点から、制度の簡素性も踏まえ、控除率を0.7%とするとともに、住宅ローン控除の適用対象者の所得要件は2,000万円に引き下げることとする。
 東日本大震災の被災者による住宅の早期再建を引き続き支援する観点から、令和7年居住分以降対象地域の絞り込みを行いつつ、控除率及び借入限度額の上乗せ措置を講ずる。
 また、所得税額から控除しきれない額を、所得税の課税総所得金額等の5%(最高9.75万円)の範囲内で個人住民税から控除する。この措置による個人住民税の減収額は、全額国費で補塡する。
 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置について、格差の固定化防止等の観点から、非課税限度額を見直した上で、適用期限を2年間延長する。
(6)固定資産税等
 景気回復に万全を期すため、土地に係る固定資産税及び都市計画税の負担調整措置について、激変緩和の観点から、令和4年度に限り、商業地に係る課税標準額の上昇幅を、評価額の2.5%(現行:5%)とする。
(7)中小・小規模事業者の支援
 地域経済の中核を担う中小企業を取り巻く状況は、ますます厳しさを増しており、コロナ後を見据えて、生産性の向上や経営基盤の強化を支援していく必要がある。このため、所得拡大促進税制を拡充し、賃上げを高い水準で行うとともに、教育訓練費を増加させた場合に、給与等支給額の増加額の最大40%を控除することとした上で令和6年3月末まで1年間延長する。また、地方活性化の中心的役割を担う中小企業の経済活動を支援する観点から、中小企業における交際費課税の特例については、見直しを行うことなく2年間延長する。
 法人版事業承継税制については、平成30年1月から10年間の特例措置として、令和5年3月末までに特例承継計画の提出がなされた事業承継について抜本的拡充を行ったものである。今般の感染症の影響により計画策定に時間を要する場合もあるため、特例承継計画の提出期限を令和6年3月末まで1年間延長する。この特例措置は、日本経済の基盤である中小企業の円滑な世代交代を通じた生産性向上が待ったなしの課題であるために事業承継を集中的に進めるための時限措置としていることを踏まえ、令和9年12月末までの適用期限については今後とも延長を行わない。事業承継を検討している中小企業経営者の方々には、適用期限が到来することを見据え、早期に事業承継に取り組むことを強く期待する。
(8)経済と環境の好循環の実現
 気候変動問題などの地球規模の課題が顕在化している。IPCCによれば、極端な気象現象の増加や人の健康・生態系へのリスクは、工業化以降の平均気温の上昇が1.5℃の場合において増加し、2℃においては更に増加すると予測されている。持続可能な開発目標(SDGs)を踏まえ、持続可能な社会を構築するためにも、パリ協定に基づき、脱炭素化に向けた取組みを加速することが重要である。わが国は、「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指すとともに、2030年度に2013年度比で温室効果ガスを46%削減することを目指し、更に50%の高みに向けて挑戦を続けることとしている。
 カーボンニュートラルへの取組みは経済社会の変革を伴うものであるところ、国内外の資金を最大限活用し、社会全体の適切な移行を支援しつつ、新しい投資や技術革新を促すことを通じて、産業の競争力と日本経済の成長力につなげる。わが国が新たに設定した意欲的な削減目標を実現するためには、技術革新及びその社会実装を進めるとともに、企業・個人を含めあらゆる行動主体が脱炭素を選好する社会を構築することが必要不可欠である。グリーン社会の実現にかかる利益の享受とともに必要な負担も国民全体で分かち合うといった視点が重要であることにも留意する。
 車体課税については、自動車業界がCASEに代表される100年に一度ともいわれる大変革に直面する中、次のエコカー減税等の期限到来時に抜本的な見直しを行うことを前提に、一定の猶予期間を設けることとしたところである。車体課税の見直しに当たっては、令和3年度税制改正大綱で示した方針に基づき引き続き検討を進める。
 農林水産業の持続可能性を確保する観点からは、環境と調和した生産活動に取り組もうとする農林漁業者等を後押しすることが重要である。「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律」(仮称)において規定される予定の「環境負荷低減事業活動実施計画」(仮称)に基づき導入される、環境負荷の原因となる生産資材の使用量を減少させる設備等、及び、「基盤確立事業実施計画」(仮称)に基づき導入される、化学農薬・化学肥料に代替する生産資材を製造する設備に対し、税制上の措置を創設する。
(9)その他考慮すべき課題
 租税特別措置については、特定の政策目的を実現するために有効な政策手法となりうる一方で、税負担の歪みを生じさせる面があることから、真に必要なものに限定していくことが重要である。このため、毎年度、期限が到来するものを中心に、各措置の利用状況等を踏まえつつ、必要性や政策効果をよく見極めた上で、廃止を含めてゼロベースで見直しを行う。また、租税特別措置の創設・拡充を行う場合は、財源を確保することやいたずらに全体の項目数を増加させないことに配意する。
 令和3年度税制改正において講じた繰越欠損金の控除上限の特例については、事業適応計画の認定期限が令和4年8月1日に到来することから、今後の経済状況の変化も見極めた上で、令和5年度税制改正において、所要の経過措置を講じた上で廃止することを検討する。
 完全子法人株式等及び関連法人株式等の配当に係る源泉徴収の見直しにより、令和5年度の税収が減少すると見込まれること等を踏まえ、その影響を緩和するための必要な対応等について、令和5年度税制改正において検討する。

2.経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し
(1)個人所得課税のあり方
① 諸控除の見直し
 個人所得課税については、わが国の経済社会の構造変化を踏まえ、配偶者控除等の見直し、給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除の一体的な見直しなどの取組みを進めてきている。多様で柔軟な働き方が一層拡大する中、働く意欲を阻害せず、公平で、働き方に中立的な税制を構築していくことが重要である。今後も、これまでの税制改正大綱に示された方針や、令和2年分所得から適用となった改正の影響等も踏まえ、各種控除のあり方等を検討する。
② 私的年金等に関する公平な税制のあり方
 働き方やライフコースが多様化する中で、老後の生活に備えるための支援について、働き方によって有利・不利が生じない公平な税制を構築することが、豊かな老後生活に向けた安定的な資産形成の助けとなると考えられる。
 こうした観点から、令和3年度税制改正大綱では、私的年金等の拠出・給付段階の課税について、雇用の流動性や経済成長との整合性なども踏まえ、税制が老後の生活や資産形成を左右しない仕組みとするべく、諸外国の例も参考に給与・退職一時金・年金給付の間の税負担のバランスを踏まえた姿とする必要性について指摘した。私的年金や退職給付のあり方は、個人の生活設計にも密接に関係することなどを十分に踏まえながら、拠出・運用・給付の各段階を通じた適正かつ公平な税負担を確保できる包括的な見直しに向けて、例えば各種私的年金の共通の非課税拠出枠や従業員それぞれに私的年金等を管理する個人退職年金勘定を設けるといった議論も参考にしながら、老後に係る税制について、あるべき方向性や全体像の共有を深めながら、具体的な案の検討を進めていく。
 なお、高所得者層において、所得に占める金融所得等の割合が高いことにより、所得税負担率が低下する状況がみられるため、これを是正し、税負担の公平性を確保する観点から、金融所得に対する課税のあり方について検討する必要がある。その際、一般投資家が投資しやすい環境を損なわないよう十分に配慮しつつ、諸外国の制度や市場への影響も踏まえ、総合的な検討を行う。
③ 記帳水準の向上等
 記帳水準の向上は、適正な税務申告の確保のみならず、経営状態を可視化し、経営の対応力を向上させる上でも重要である。加えて、今般の感染症への対応においては、中小・小規模事業者への給付金の支給や融資に際し、売上や資産・負債等の状況が適切に記録されていないため申請に手間取るなど、日々の適正な記帳の重要性が改めて浮き彫りになった。小規模事業者の半数以上が帳簿を手書きで作成しており、また、個人事業者の場合、正規の簿記の原則に従った記帳を行っている者は約3割にとどまっているのが現状である。また、個人の青色申告における簡易簿記は複式簿記に移行するための準備的な段階としての役割も期待されているところであるが、簡易簿記での申告者の3分の1超が10年以上簡易簿記による記帳を続けている状況にある。
 近年、普及しつつある会計ソフトを活用することにより、小規模事業者であっても大きな手間や費用をかけずに正規の簿記を行うことが可能な環境が整ってきていることも踏まえ、複式簿記による記帳を更に普及・一般化させる方向で、納税者側での対応可能性も十分踏まえつつ、所得税の青色申告制度の見直しを含めた個人事業者の記帳水準向上等に向けた検討を行う。
(2)相続税・贈与税のあり方
 高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに、相続による資産の世代間移転の時期がより高齢期にシフトしており、結果として若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。
 高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することになれば、その有効活用を通じた経済の活性化が期待される。
 一方、相続税・贈与税は、税制が資産の再分配機能を果たす上で重要な役割を担っている。高齢世代の資産が、適切な負担を伴うことなく世代を超えて引き継がれることとなれば、格差の固定化につながりかねない。
 このため、資産の再分配機能の確保を図りつつ、資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築していくことが重要である。
 わが国では、相続税と贈与税が別個の税体系として存在しており、贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から高い税率が設定されている。このため、将来の相続財産が比較的少ない層にとっては、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある一方で、相当に高額な相続財産を有する層にとっては、財産の分割贈与を通じて相続税の累進負担を回避しながら多額の財産を移転することが可能となっている。
 今後、諸外国の制度も参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化防止等の観点も踏まえながら、資産移転時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。
 あわせて、経済対策として現在講じられている贈与税の非課税措置は、限度額の範囲内では家族内における資産の移転に対して何らの税負担も求めない制度となっていることから、そのあり方について、格差の固定化防止等の観点を踏まえ、不断の見直しを行っていく必要がある。
(3)外形標準課税のあり方
 法人事業税の外形標準課税は、平成16年度に資本金1億円超の大法人を対象に導入され、平成27、28年度税制改正において、より広く負担を分かち合い、企業の稼ぐ力を高める法人税改革の一環として、所得割の税率引下げとあわせて、段階的に拡大されてきた。一方で、経済社会の構造変化に伴い、外形標準課税の対象法人の数や態様は大きく変化しており、今後、こうした原因・課題の分析を進めるとともに、外形標準課税の適用対象法人のあり方について、地域経済・企業経営への影響も踏まえながら引き続き慎重に検討を行う。
 また、外形標準課税の適用対象法人の法人事業税所得割について、年800万円以下の所得に係る軽減税率を見直す。

3.国際課税制度の見直し
 経済のグローバル化が進展し、デジタル技術が経済活動の隅々まで浸透する中、モノを中心とした時代に形成された国際課税原則(「恒久的施設(PE:Permanent Establishment)なければ課税なし」等)が適切に機能せず、市場国で公平な課税を行えないといった問題が顕在化している。
 また、過度な法人税の引下げ競争により各国の法人税収基盤が弱体化するとともに、企業間の公平な競争条件が阻害されるといった状況が生じている。
 こうした国際課税上の課題への対応は喫緊の課題であるとの認識のもと、本年10月、OECD/G20「BEPS(注)包摂的枠組み」において、国際的な合意がまとめられた。本国際合意は、税制の不確実性をもたらす一国主義的な課税措置の拡散を防止する観点から、100年来続いてきた国際課税原則を見直し、市場国に新たな課税権を配分するものである。加えて、グローバル・ミニマム課税の導入は、法人税の引下げ競争に歯止めをかけるとともに、わが国企業の国際競争力の維持及び向上にもつながるものである。わが国は、BEPSプロジェクトの立上げ時から、国際課税改革に関する議論を一貫して主導してきたところであり、本国際合意を強く歓迎する。
(注)Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転
 今後、本国際合意の実施に向け、多国間条約の策定・批准や、国内法の改正が必要となる。制度の詳細化に向けた国際的な議論に引き続き積極的に貢献するとともに、国際合意に則った法制度の整備を進める。その際、わが国企業等への過度な負担とならないように既存制度との関係などにも配慮しつつ、国・地方の法人課税制度を念頭に置いて検討する。
 国際的な租税回避や脱税への対応については、引き続き、国際的な議論や租税回避の態様等を踏まえ必要な見直しを迅速に行っていく。また、コロナ後において見込まれる国境を越えたビジネスや人の往来の再拡大を踏まえ、非居住者の給与課税のあり方について、今後検討を行っていく。あわせて、国際課税制度が大きな変革を迎える中、国内法制・租税条約の整備及び着実な執行など適時に十全な対応ができるよう、国税当局の体制強化を行うものとする。

4.円滑・適正な納税のための環境整備
(1)適格請求書等保存方式への円滑な移行
 消費税の複数税率制度の下において適正な課税を確保する観点から、令和5年10月に施行される消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)について、円滑な制度移行に向けて政府・与党は一体となって万全の対応を進める。
 このため、事業者に対するプッシュ型の周知・広報や説明会の開催だけでなく、事業者団体とも連携しながら、経営相談等に係る体制を強化するといった取組みを更に進めていく。また、民間団体と連携して電子インボイスの社会実装に向けた取組みを推進するとともに、IT導入補助金等により制度移行もきっかけとした中小事業者の取引やバックオフィスのデジタル化を支援することで、中小企業の生産性向上を後押ししていく。加えて、持続化補助金により制度移行等の環境変化を見据えて取り組む小規模事業者も着実に支援していく。
 さらに、制度移行にともなって免税事業者である小規模事業者が不当な取扱いを受けないよう、免税事業者等との取引に関する独占禁止法、下請法、建設業法における取扱い等を明確化して周知するとともに、それらの法令に基づいて、相談窓口での対応や、下請Gメンや書面調査による状況把握を通じて適切に対処する。
 これらの取組みを着実に進めつつ、引き続き、事業者の準備状況等を丁寧に把握し、必要な対応を行う。
(2)税理士制度の見直し
 コロナ後の新しい社会を見据え、税理士の業務環境や納税環境の電子化といった、税理士を取り巻く状況の変化に的確に対応するとともに、多様な人材の確保や、国民・納税者の税理士に対する信頼と納税者利便の向上を図る観点から、税理士制度の見直しを行う。具体的には、税理士がその業務のICT化等を進める努力義務の創設や、税理士試験の会計学科目における受験資格の不要化、税理士法人が行うことのできる業務範囲の拡充等の措置を講ずる。
(3)記帳義務の不履行及び特に悪質な納税者への対応
 適正な記帳や帳簿保存が行われていない納税者については、真実の所得把握に係る税務当局の執行コストが多大であり、行政制裁等を適用する際の立証に困難を伴う場合も存在する。記帳義務の不履行や税務調査時の簿外経費の主張等に対する不利益がない中では、悪質な納税者を利するような事例も生じているところである。
 記帳義務及び申告義務を適正に履行する納税者との公平性の観点に鑑み、帳簿の不保存・不提示や記帳不備に対し、意図しない記帳誤りや帳簿の作成能力に配慮した上で、その記帳義務の不履行の程度に応じて過少申告加算税等を加重する仕組みを設ける。
 また、納税者が事実の仮装・隠蔽がある年分又は無申告の年分において主張する簿外経費の存在が帳簿書類等から明らかでなく、税務当局による反面調査によってもその取引が行われたと認められない場合には、当該簿外経費は必要経費・損金に不算入とする措置を講ずる。
(4)財産債務調書制度の見直し
 財産債務調書制度について、提出期限を緩和するなど提出義務者の事務負担の軽減を図るとともに、適正な課税を確保する観点から、現行の提出義務者に加えて、特に高額な資産保有者については所得基準によらずに本調書の提出義務者とする措置を講ずる。
(5)税務手続のデジタル化・キャッシュレス化による利便性の向上
 デジタル技術を活用し、納税者がいつでも・どこでも簡単に手続きを行うことができる環境の整備が重要である。このため、住宅ローン控除の適用にあたり必要となる住宅ローン年末残高証明書の納税者による提出を不要とするなど、e-Taxの利便性を向上させる取組みを進めるとともに、登録免許税や自動車重量税におけるキャッシュレス納付制度の創設等を行う。また、地方税務手続についても、電子申告・申請手続の拡大や電子納付の対象税目の拡大など、eLTAX(地方税のオンライン手続のためのシステム)を活用した全国統一的な対応を一層進める。
 デジタル化やキャッシュレス化に対応した税制のあり方や納付方法の多様化について引き続き検討していく。

5.その他
(1)新たな沖縄振興等に向けた措置
 令和4年度以降の新たな沖縄振興に向けて、各特別地区・地域に係る税制について、沖縄の政策課題の解決のために一層効果的なものとなるよう、事業者の計画が県の分野別計画に適合するものであることを県が認定した上で、国が課税の特例の適用要件を満たしているかを確認する制度を導入する等、所要の見直しを行った上、その適用期限を3年間延長する。
 また、沖縄の復帰に伴う激変緩和措置として設けられた沖縄県産酒類に係る酒税の特例は、復帰50年を迎え、酒類製造業界から自発的かつ積極的な提言がなされたことなどを踏まえ、沖縄の酒類製造業の自立的発展に向けた施策の一環として、酒類製造業者への影響や予見可能性などを考慮して最長10年をかけて段階的に廃止する。
(2)ガス供給業に係る法人事業税の課税方式の見直し
 ガス供給業については、令和4年の導管部門の法的分離、他のエネルギーとの競合や新規参入の状況とその見通し、行政サービスの受益に応じた負担の観点、地方財政や個々の地方公共団体の税収に与える影響等を考慮の上、これらの法人に対する法人事業税の課税方式の見直しを行う。
(3)屋外分煙施設等の整備の促進
 望まない受動喫煙対策の推進や今後の地方たばこ税の継続的かつ安定的な確保の観点から、地方たばこ税の活用を含め、地方公共団体が駅前・商店街などの公共の場所における屋外分煙施設等のより一層の整備を図るよう引き続き促すこととする。
(4)IRに関する税制
 IRに関する税制については、区域整備計画の認定等の手続きの進捗状況を見据えながら、令和3年度税制改正大綱に示された方向に基づき、令和5年度以降の税制改正で具体化する。

第二 令和4年度税制改正の具体的内容

一 個人所得課税
1 住宅・土地税制
(国 税)
〔延長・拡充等〕
(1)住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除について適用期限(令和3年12月31日)を令和7年12月31日まで4年延長するとともに、次の措置を講ずる。
① 住宅の取得等をして令和4年から令和7年までの間に居住の用に供した場合の住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)、控除率及び控除期間を次のとおりとする。
イ ロ以外の住宅の場合

居住年
借入限度額
控除率
控除期間
令和4年・令和5年
3,000 万円
0.7%
13 年
令和6年・令和7年
2,000 万円
10 年

(注)上記の金額等は、住宅の取得等が居住用家屋の新築、居住用家屋で建築後使用されたことのないものの取得又は宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われた一定の居住用家屋の取得である場合の金額等であり、それ以外の場合(既存住宅の取得又は住宅の増改築等)における借入限度額は一律2,000万円と、控除期間は一律10年とする。
ロ 認定住宅等の場合

 
居住年
借入限度額
控除率
控除期間
認定住宅
令和4年・令和5年
5,000 万円
0.7%
13 年
令和6年・令和7年
4,500 万円
ZEH水準
省エネ住宅
令和4年・令和5年
4,500 万円
令和6年・令和7年
3,500 万円
省エネ基準
適合住宅
令和4年・令和5年
4,000 万円
令和6年・令和7年
3,000 万円

(注1)上記の「認定住宅等」とは、認定住宅、ZEH水準省エネ住宅及び省エネ基準適合住宅をいい、上記の「認定住宅」とは、認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう。
(注2)上記の金額等は、住宅の取得等が認定住宅等の新築又は認定住宅等で建築後使用されたことのないもの若しくは宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われたものの取得である場合の金額等であり、住宅の取得等が認定住宅等で建築後使用されたことのあるものの取得である場合における借入限度額は一律3,000万円と、控除期間は一律10年とする。
② 適用対象者の所得要件を2,000万円以下(現行:3,000万円以下)に引き下げる。
③ 個人が取得等をした床面積が40㎡以上50㎡未満である住宅の用に供する家屋で令和5年12月31日以前に建築確認を受けたものの新築又は当該家屋で建築後使用されたことのないものの取得についても、本特例の適用ができることとする。ただし、その者の控除期間のうち、その年分の所得税に係る合計所得金額が1,000万円を超える年については、適用しない。
④ 令和6年1月1日以後に建築確認を受ける住宅の用に供する家屋(登記簿上の建築日付が同年6月30日以前のものを除く。)又は建築確認を受けない住宅の用に供する家屋で登記簿上の建築日付が同年7月1日以降のもののうち、一定の省エネ基準を満たさないものの新築又は当該家屋で建築後使用されたことのないものの取得については、本特例の適用ができないこととする。
⑤ 適用対象となる既存住宅の要件について、築年数要件を廃止するとともに、新耐震基準に適合している住宅の用に供する家屋(登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降の家屋については、新耐震基準に適合している住宅の用に供する家屋とみなす。)であることを加える。
⑥ 年末調整に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除その他の措置について、所要の措置を講ずる。
(注)上記②及び⑤の改正は、住宅の取得等をして令和4年1月1日以後に居住の用に供した場合について適用する。
(2)認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除について適用期限(令和3年12月31日)を令和5年12月31日まで2年延長するとともに、対象住宅の新築等をして令和4年及び令和5年に居住の用に供した場合の対象住宅、標準的な性能強化費用に係る控除対象限度額及び控除率を次のとおりとする。

居住年
対象住宅
控除対象限度額
控除期間
令和4年・
令和5年
認定住宅
ZEH水準省エネ住宅
650 万円
10%

(3)東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例について適用期限(令和3年12月31日)を令和7年12月31日まで4年延長するとともに、次の措置を講ずる。
① 再建住宅の取得等をして令和4年から令和7年までの間に居住の用に供した場合の再建住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)、控除率及び控除期間を次のとおりとする。

居住年
借入限度額
控除率
控除期間
令和4年・令和5年
5,000 万円
0.9%
13 年
令和6年・令和7年
4,500 万円

(注)上記の金額等は、再建住宅の取得等が居住用家屋の新築又は居住用家屋で建築後使用されたことのないもの若しくは宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われたものの取得である場合の金額等であり、それ以外の場合(既存住宅の取得又は住宅の増改築等)における借入限度額は一律3,000万円と、控除期間は一律10年とする。
② 令和7年1月1日以後に居住の用に供する再建住宅のうち、警戒区域設定指示等の対象区域外に従前住宅が所在していた場合については、本特例の適用ができないこととする。
③ 上記(1)②から⑤までと同様の措置を講ずる。
(4)住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除に係る確定申告手続等について、次の措置を講ずる。
① 令和5年1月1日以後に居住の用に供する家屋について、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除(以下「住宅ローン控除」という。)の適用を受けようとする個人は、住宅借入金等に係る一定の債権者に対して、当該個人の氏名及び住所、個人番号その他の一定の事項(以下「申請事項」という。)を記載した申請書(以下「住宅ローン控除申請書」という。)の提出をしなければならないこととする。
② 住宅ローン控除申請書の提出を受けた債権者は、当該住宅ローン控除申請書の提出を受けた日の属する年の翌年以後の控除期間の各年の10月31日(その提出を受けた日の属する年の翌年にあっては、1月31日)までに、当該住宅ローン控除申請書に記載された事項及び当該住宅ローン控除申請書の提出をした個人のその年の12月31日(その者が死亡した日の属する年にあっては、同日)における住宅借入金等の金額等を記載した調書を作成し、当該債権者の本店又は主たる事務所の所在地の所轄税務署長に提出しなければならない。この場合において、当該債権者は、当該住宅ローン控除申請書につき帳簿を備え、当該住宅ローン控除申請書の提出をした個人の各人別に、申請事項を記載し、又は記録しなければならないこととする。
③ 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除証明書の記載事項に、住宅借入金等の年末残高を加えることとする。
④ 令和5年1月1日以後に居住の用に供する家屋に係る住宅ローン控除の適用を受けようとする個人は、住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書及び新築の工事の請負契約書の写し等については、確定申告書への添付を不要とする。この場合において、税務署長は、確定申告期限等から5年間、当該適用に係る新築の工事の請負契約書の写し等の提示又は提出を求めることができることとし、当該求めがあったときは、その適用を受ける個人は、当該書類の提示又は提出をしなければならないこととする。
⑤ 給与等の支払を受ける個人で年末調整の際に、令和5年1月1日以後に居住の用に供する家屋に係る住宅ローン控除の適用を受けようとするものは、住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書については、給与所得者の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書への添付を不要とする。
⑥ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、居住年が令和5年以後である者が、令和6年1月1日以後に行う確定申告及び年末調整について適用する。
(5)所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の改正を前提に、次の措置を講ずる(次の②の措置については、法人税についても同様とする。)。
① 地域福利増進事業の拡充後も引き続き、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の規定により行われた裁定に係る裁定申請書に記載された地域福利増進事業を行う事業者に対する一定の土地等の譲渡で、当該譲渡に係る土地等が当該地域福利増進事業の用に供されるものを優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の対象とする。
② 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する土地収用法の特例の対象となる土地の範囲の拡充後も引き続き、当該土地収用法の特例の規定による収用があった場合を収用交換等の場合の譲渡所得の5,000万円特別控除等の対象とする。
(6)博物館法の改正を前提に、次の措置を講ずる(法人税についても同様とする。)。
① 登録要件の見直し後の博物館に関する事業のために収用により土地等が買い取られる場合について、引き続き収用交換等の場合の譲渡所得の5,000万円特別控除等の対象とする。
② 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の2,000万円特別控除について、次の措置を講ずる。
イ 博物館に相当する施設の指定要件の見直し後も引き続き、重要文化財、史跡、名勝又は天然記念物として指定された土地が博物館又は植物園のうち博物館法の規定により博物館に相当する施設として指定を受けたものの設置及び管理の業務を主たる目的とする地方独立行政法人に買い取られる場合を適用対象とする。
ロ 適用対象に、重要文化財、史跡、名勝又は天然記念物として指定された土地が博物館又は植物園のうち博物館法の規定により登録を受けた博物館の設置及び管理の業務を主たる目的とする地方独立行政法人に買い取られる場合を加える。
(7)農業経営基盤強化促進法等の改正を前提に、次の措置を講ずる(次の①から③までの措置については、法人税についても同様とする。)。
① 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の2,000万円特別控除における農用地利用規程の特例に係る措置について、地域農業経営基盤強化促進計画(仮称)の特例に係る事項が定められた地域農業経営基盤強化促進計画(仮称)の区域内にある農用地に係る措置に改組する。
② 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除の適用対象となる農用地区域内にある農用地が農業経営基盤強化促進法の協議に基づき農地中間管理機構(一定のものに限る。)に買い取られる場合について、その農用地が地域農業経営基盤強化促進計画(仮称)の区域内にある場合に限定する。
③ 農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の800万円特別控除における農用地利用集積計画に係る措置について、農用地区域内にある土地等を農用地利用集積等促進計画(仮称)の定めるところにより譲渡した場合の措置に改組する。
④ その他所要の措置を講ずる。
(8)居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等の適用期限(令和3年12月31日)を令和5年12月31日まで2年延長する。
(9)特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の適用期限(令和3年12月31日)を令和5年12月31日まで2年延長する。
(10)既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除について、適用期限(令和3年12月31日)を令和5年12月31日まで2年延長するとともに、次の措置を講ずる。
① 令和4年及び令和5年に耐震改修工事をした場合の標準的な工事費用の額に係る控除対象限度額及び控除率を次のとおりとする。

工事完了年
控除対象限度額
控除率
令和4年・令和5年
250 万円
10%

② 標準的な工事費用の額について、工事の実績を踏まえて見直しを行う。
(11)既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除について、適用期限(令和3年12月31日)を令和5年12月31日まで2年延長するとともに、次の措置を講ずる。
① 特定の改修工事をして令和4年及び令和5年に居住の用に供した場合の標準的な工事費用の額に係る控除対象限度額及び控除率を次のとおりとする。

居住年
対象工事
控除対象限度額
控除率
令和4年・令和5年
バリアフリー改修工事
200 万円
10%
省エネ改修工事
250 万円
(350 万円)
三世代同居改修工事
250 万円
耐震改修工事又は
省エネ改修工事と併せて行う
耐久性向上改修工事
250 万円
(350 万円)
耐震改修工事及び
省エネ改修工事と併せて行う
耐久性向上改修工事
500 万円
(600 万円)

(注)カッコ内の金額は、省エネ改修工事と併せて太陽光発電装置を設置する場合の控除対象限度額である。
② 個人が、当該個人の所有する居住用の家屋について上記(10)①の耐震改修工事又は上記①の対象工事をして、当該家屋を令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合(その工事の日から6月以内にその者の居住の用に供した場合に限る。)には、一定の要件の下で、当該個人の居住の用に供した日の属する年分の所得税の額から次に掲げる金額の合計額(当該耐震改修工事又は対象工事に係る標準的な工事費用相当額の合計額と1,000万円から当該金額(当該金額が控除対象限度額を超える場合には、当該控除対象限度額)を控除した金額のいずれか低い金額を限度)の5%に相当する金額を控除する。
イ 当該耐震改修工事又は対象工事に係る標準的な工事費用相当額(控除対象限度額を超える部分に限る。)の合計額
ロ 当該耐震改修工事又は対象工事と併せて行うその他の一定の工事に要した費用の金額(補助金等の交付がある場合には当該補助金等の額を控除した後の金額)の合計額
(注)上記の「標準的な工事費用相当額」とは、耐震改修工事又は対象工事の種類等ごとに標準的な工事費用の額として定められた金額に当該耐震改修工事又は対象工事を行った床面積等を乗じて計算した金額(補助金等の交付がある場合には当該補助金等の額を控除した後の金額)をいう。
③ 適用対象となる省エネ改修工事を窓の断熱改修工事又は窓の断熱改修工事と併せて行う天井、壁若しくは床の断熱改修工事(現行:全ての居室の全ての窓の断熱改修工事又は全ての居室の全ての窓の断熱改修工事と併せて行う天井、壁若しくは床の断熱改修工事)とする。
④ 標準的な工事費用の額について、工事の実績を踏まえて見直しを行う。
⑤ その他所要の措置を講ずる。
(12)被災居住用財産に係る譲渡期限の延長等の特例について、その譲渡期限の要件を5年延長する。
(13)沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法の期限の延長を前提に、引き続き同法の買取協議に基づき土地を譲渡した場合の5,000万円特別控除を適用できることとする(法人税についても同様とする。)。
〔縮減等〕
(1)農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の800万円特別控除について、適用対象から次に掲げる場合を除外する(次の①及び②に掲げる場合については、法人税についても同様とする。)。
① 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律に規定する所有権移転等促進計画の定めるところにより土地等の譲渡をした場合
② 林業経営基盤の強化等の促進のための資金の融通等に関する暫定措置法の規定による都道府県知事のあっせんにより、同法の認定を受けた者に一定の山林に係る土地の譲渡をした場合
③ 集落地域整備法に基づく交換分合により土地等を取得しなかったことに伴い清算金を取得する場合
(2)特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例について、買換資産が令和6年1月1日以後に建築確認を受ける住宅(登記簿上の建築日付が同年6月30日以前のものを除く。)又は建築確認を受けない住宅で登記簿上の建築日付が同年7月1日以降のものである場合の要件にその住宅が一定の省エネ基準を満たすものであることを加えた上、その適用期限(令和3年12月31日)を令和5年12月31日まで2年延長する。
(注)上記の改正は、令和4年1月1日以後に行う譲渡資産の譲渡に係る買換資産について適用する。
(3)特定の交換分合により土地等を取得した場合の課税の特例について、集落地域整備法に係る措置を廃止する(法人税についても同様とする。)。
(地方税)
〔延長・拡充等〕
(1)個人住民税における住宅借入金等特別税額控除について、次の措置を講ずる。
① 令和4年分以後の所得税において住宅借入金等特別税額控除の適用がある者(住宅の取得等をして令和4年から令和7年までの間に居住の用に供した者に限る。)のうち、当該年分の住宅借入金等特別税額控除額から当該年分の所得税額(住宅借入金等特別税額控除の適用がないものとした場合の所得税額とする。)を控除した残額があるものについては、翌年度分の個人住民税において、当該残額に相当する額を当該年分の所得税の課税総所得金額等の額に100分の5を乗じて得た額(最高9.75万円)の控除限度額の範囲内で減額する。また、この措置による令和5年度以降の個人住民税の減収額は、全額国費で補塡する。
② その他所要の措置を講ずる。
(2)居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等の適用期限(令和3年12月31日)を令和5年12月31日まで2年延長する。
(3)特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の適用期限(令和3年12月31日)を令和5年12月31日まで2年延長する。
(4)個人住民税について、所得税における〔延長・拡充等〕(5)から(7)まで、(12)及び(13)並びに〔縮減等〕(1)及び(2)の見直しに伴い、所要の措置を講ずる。
2 金融・証券税制
(国 税)
〔延長・拡充等〕
(1)エンジェル税制について、次の措置を講ずる。
① 沖縄振興特別措置法の改正を前提に、特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例、特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等及び特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等の適用対象となる同法の指定会社について、次の見直しを行った上、当該指定会社に係る同法の規定に基づく指定期限を3年延長する。
イ 指定会社は、毎年、その認定を受けた特定経済金融活性化事業の実施の状況を沖縄県知事に報告することとする。
ロ 指定会社の指定の申請手続において、次に掲げる書類については、沖縄県知事へ提出する申請書への添付を要しないこととする。
(イ)定款
(ロ)事業報告書
(ハ)法人税の確定申告書に添付された別表二の写し
(ニ)組織図
② 特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例について、次の措置を講ずる。
イ 適用対象となる国家戦略特別区域法に規定する特定事業を行う株式会社のうち創業及び雇用の促進に係る事業を行う小規模企業者の要件に、国家戦略特別区域外に有する事業所において業務に従事する従業員の数の合計が常時雇用する従業員の数の10分の2に相当する数以下であることを加える。
ロ 適用対象となる国家戦略特別区域法に規定する特定事業を行う株式会社により発行される株式の発行期限を2年延長する。
ハ 適用対象となる地域再生法に規定する特定地域再生事業を行う株式会社により発行される株式の発行期限を2年延長する。
(2)労働者協同組合法の施行等に伴い、次の措置を講ずる。
① 労働者協同組合の組合員がその労働者協同組合の事業に従事した程度に応じて受ける剰余金の配当は、配当所得とする。
② 労働者協同組合法の改正を前提に、割引債の差益金額に係る源泉徴収等の特例について、支払を受ける割引債の償還金につき所得税の納税義務者となる内国法人の範囲に労働者協同組合を加えるほか、これに伴う所要の措置を講ずる。
(3)一定の内国法人が支払を受ける配当等で次に掲げるものについては、所得税を課さないこととし、その配当等に係る所得税の源泉徴収を行わないこととするほか、これに伴う所要の措置を講ずる。
① 完全子法人株式等(株式等保有割合100%)に該当する株式等に係る配当等
② 配当等の支払に係る基準日において、当該内国法人が直接に保有する他の内国法人の株式等(当該内国法人が名義人として保有するものに限る。以下同じ。)の発行済株式等の総数等に占める割合が3分の1超である場合における当該他の内国法人の株式等に係る配当等
(注1)上記の「一定の内国法人」とは、内国法人のうち、一般社団法人及び一般財団法人(公益社団法人及び公益財団法人を除く。)、人格のない社団等並びに法人税法以外の法律によって公益法人等とみなされている法人以外の法人をいう。
(注2)上記の改正は、令和5年10月1日以後に支払を受けるべき配当等について適用する。
(4)非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(NISA)における特定累積投資勘定に特定累積投資上場株式等を受け入れている場合の特定非課税管理勘定への上場株式等の受入れに係る要件について、特定累積投資勘定への特定累積投資上場株式等の受入れが、当該上場株式等を受け入れようとする日以前6月以内で、かつ、同日が属する年の前年である場合には、当該要件を満たすこととする。
(注)上記の制度について、居住者等がその非課税口座の開設の有無等を自ら確認できるようにするための対応を運用上行う。
(5)電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により税務署長等に対して提出する次に掲げる書類のファイル形式を、XML形式又はCSV形式とする。
①(特別)非課税貯蓄申告書
②(特別)非課税貯蓄限度額変更申告書
③(特別)非課税貯蓄に関する異動申告書
④ 金融機関等において事業譲渡等があった場合の申告書
⑤(特別)非課税貯蓄廃止申告書
⑥(特別)非課税貯蓄みなし廃止通知書
⑦(特別)非課税貯蓄者死亡通知書
⑧ 金融機関等の営業所等の届出書
⑨ 金融機関が支払を受ける収益の分配に対する源泉徴収不適用に係る明細書
⑩ 公募株式等証券投資信託の受益権を買い取った金融商品取引業者等が支払を受ける収益の分配に係る源泉徴収不適用申告書
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に提出する書類について適用する。
〔縮減〕
 上場株式等に係る配当所得等の課税の特例について、次の措置を講ずる。
(1)内国法人から支払を受ける上場株式等の配当等で、その支払を受ける居住者等(以下「対象者」という。)及びその対象者を判定の基礎となる株主として選定した場合に同族会社に該当する法人が保有する株式等の発行済株式等の総数等に占める割合(以下「株式等保有割合」という。)が100分の3以上となるときにおけるその対象者が支払を受けるものを、総合課税の対象とする。
(注)上記の改正は、令和5年10月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当等について適用する。
(2)上場株式等の配当等の支払をする内国法人は、その配当等の支払に係る基準日においてその株式等保有割合が100分の1以上となる対象者の氏名、個人番号及び株式等保有割合その他の事項を記載した報告書を、その支払の確定した日から1月以内に、当該内国法人の本店又は主たる事務所の所在地の所轄税務署長に提出しなければならないこととする。
(注)上記の改正は、令和5年10月1日以後に支払うべき上場株式等の配当等について適用する。
(3)その他所要の措置を講ずる。
(地方税)
 個人住民税について、所得税における〔延長・拡充等〕(1)、(2)及び(4)並びに〔縮減〕(1)の見直しに伴い、所要の措置を講ずる。
3 租税特別措置等
(国 税)
〔延長・拡充〕
(1)山林所得に係る森林計画特別控除の適用期限を2年延長する。
(2)博物館法の改正を前提に、国等に対して重要文化財を譲渡した場合の譲渡所得の非課税措置について、次の措置を講ずる。
① 博物館に相当する施設の指定要件の見直し後も引き続き、重要文化財を博物館、美術館、植物園、動物園又は水族館のうち博物館法の規定により博物館に相当する施設として指定を受けたものの設置及び管理の業務を主たる目的とする地方独立行政法人に譲渡した場合を適用対象とする。
② 適用対象に、重要文化財を博物館、美術館、植物園、動物園又は水族館のうち博物館法の規定により登録を受けた博物館の設置及び管理の業務を主たる目的とする地方独立行政法人に譲渡した場合を加える。
(3)債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の課税の特例の適用期限を3年延長する。
(4)被災した法人について債務処理計画が策定された場合の課税の特例について、適用対象となる内国法人の範囲に産業復興機構の組合財産である債権の債務者である内国法人を加えた上、その適用期限を3年延長する。
(5)ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業の住宅支援資金貸付けによる金銭の貸付けにつき当該貸付けに係る債務の免除を受ける場合には、当該免除により受ける経済的な利益の価額については、所得税を課さないこととする。
(6)生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金の特例貸付事業及び総合支援資金の特例貸付事業による金銭の貸付けにつき当該貸付けに係る債務の免除を受ける場合には、当該免除により受ける経済的な利益の価額については、所得税を課さないこととする。
(7)「新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金」として給付される給付金(既に給付されたものを含む。)について、次の措置を講ずる。
① 所得税を課さない。
② 国税の滞納処分による差押えをしない。
(8)「子育て世帯への臨時特別給付」として給付される給付金及び「住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金」として給付される給付金(既に給付されたこれらの給付金を含む。)について、次の措置を講ずる。
① 所得税を課さない。
② 国税の滞納処分による差押えをしない。
(地方税)
 個人住民税について、所得税における〔延長・拡充〕(1)から(8)までの見直しに伴い、所要の措置を講ずる。
4 その他
(国 税)
(1)その年において不動産所得、事業所得若しくは山林所得を生ずべき業務を行う者又はその年において雑所得を生ずべき業務を行う者でその年の前々年分の当該雑所得を生ずべき業務に係る収入金額が300万円を超えるものが、隠蔽仮装行為に基づき確定申告書(その申告に係る所得税についての調査があったことにより当該所得税について決定があるべきことを予知して提出された期限後申告書を除く。以下同じ。)を提出しており、又は確定申告書を提出していなかった場合には、これらの確定申告書に係る年分のこれらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るために直接に要した費用の額(資産の販売又は譲渡における当該資産の取得に直接に要した額及び資産の引渡しを要する役務の提供における当該資産の取得に直接に要した額として一定の額を除く。以下「売上原価の額」という。)及びその年の販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額は、次に掲げる場合に該当する当該売上原価の額又は費用の額を除き、その者の各年分のこれらの所得の金額の計算上、必要経費の額に算入しないこととする。
① 次に掲げるものにより当該売上原価の額又は費用の額の基因となる取引が行われたこと及びこれらの額が明らかである場合(災害その他やむを得ない事情により、当該取引に係るイに掲げる帳簿書類の保存をすることができなかったことをその者において証明した場合を含む。)
イ その者が所得税法の規定により保存する帳簿書類
ロ 上記イに掲げるもののほか、その者がその住所地その他の一定の場所に保存する帳簿書類その他の物件
② 上記①イ又はロに掲げるものにより、当該売上原価の額又は費用の額の基因となる取引の相手方が明らかである場合その他当該取引が行われたことが明らかであり、又は推測される場合(上記①に掲げる場合を除く。)であって、当該相手方に対する調査その他の方法により税務署長が、当該取引が行われ、これらの額が生じたと認める場合
(注1)その者がその年分の確定申告書を提出していた場合には、売上原価の額及び費用の額のうち、その提出したその年分の確定申告書等に記載した課税標準等の計算の基礎とされていた金額は、本措置の対象から除外する。
(注2)上記の改正は、令和5年分以後の所得税について適用する。
(2)納税地の特例制度等について、次の見直しを行う。
① 納税地の変更に関する届出書について、その提出を不要とする。
② 納税地の異動があった場合に提出することとされている届出書について、その提出を不要とする。
(注)上記の改正は、令和5年1月1日以後の納税地の変更等について適用する。
(3)社会保険料控除及び小規模企業共済等掛金控除に係る確定申告手続等について、次の措置を講ずる。
① 社会保険料控除又は小規模企業共済等掛金控除の適用を受ける際に確定申告書等に添付等をすることとされている控除証明書の範囲に、当該控除証明書を交付すべき者から電磁的方法により提供を受けた当該控除証明書に記載すべき事項が記録された電磁的記録を一定の方法により印刷した書面で、真正性を担保するための所要の措置が講じられているものとして国税庁長官が定めるものを加える。
(注)上記の改正は、令和4年分以後の確定申告書を提出する場合について適用する。
② 社会保険料控除又は小規模企業共済等掛金控除の適用を受ける際に給与所得者の保険料控除申告書に添付等をすることとされている控除証明書の範囲に、当該控除証明書を交付すべき者から電磁的方法により提供を受けた当該控除証明書に記載すべき事項が記録された電磁的記録を一定の方法により印刷した書面で、真正性を担保するための所要の措置が講じられているものとして国税庁長官が定めるものを加える。
(注)上記の改正は、令和4年10月1日以後に給与所得者の保険料控除申告書を提出する場合について適用する。
③ 給与等の支払を受ける者で年末調整の際に社会保険料控除又は小規模企業共済等掛金控除の適用を受けようとするものは、給与所得者の保険料控除申告書に記載すべき事項を電磁的方法により提供する場合には、上記②の控除証明書の書面による提出又は提示に代えて、当該控除証明書に記載すべき事項が記録された情報で当該控除証明書を交付すべき者の電子署名及びその電子署名に係る電子証明書が付されたものを、当該申告書に記載すべき事項と併せて電磁的方法により提供することができることとする。この場合において、当該給与等の支払を受ける者は、当該控除証明書を提出し、又は提示したものとみなす。
(注)上記の改正は、令和4年10月1日以後に給与所得者の保険料控除申告書を提出する場合について適用する。
④ 電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により確定申告を行う場合において、マイナポータルを使用して取得する上記①の控除証明書に記載すべき事項が記録された情報で当該控除証明書を交付すべき者の電子署名及びその電子署名に係る電子証明書が付されたものの送信をもって、当該控除証明書の添付等に代えることができることとする。
(注)上記の改正は、令和4年分以後の確定申告書を提出する場合について適用する。
(4)支払調書等の提出の特例制度等について、磁気テープを提出する方法を除外する。
(5)難病の患者に対する医療等に関する法律及び児童福祉法の改正を前提に、難病又は小児慢性特定疾病の患者に対する医療費として支給される金品について、引き続き次の措置を講ずる。
① 所得税を課さない。
② 国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(6)雇用保険法の失業等給付について雇用保険法等の改正を前提に引き続き次の措置を講ずるとともに、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律による改正後の雇用保険法の育児休業給付等について引き続き次の措置を講ずる。
① 所得税を課さない。
② 国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(7)母子及び父子並びに寡婦福祉法の自立支援教育訓練給付金及び高等職業訓練促進給付金について、母子及び父子並びに寡婦福祉法施行令の改正を前提に、引き続き次の措置を講ずる。
① 所得税を課さない。
② 国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(8)児童福祉法の改正を前提に、次の措置を講ずる(次の②の措置については、法人税についても同様とする。)。
① 児童福祉法の障害児通所給付費等又は障害児入所給付費等として支給される金品について、引き続き次の措置を講ずる。
イ 所得税を課さない。
ロ 国税の滞納処分による差押えを禁止する。
② 児童福祉法の障害児入所医療費について、引き続き社会保険診療報酬の所得計算の特例の適用対象とする。
③ その他所要の措置を講ずる。
(9)障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「障害者総合支援法」という。)の改正を前提に、次の措置を講ずる(次の②及び③の措置については、法人税についても同様とする。)。
① 障害者総合支援法の自立支援給付について、引き続き次の措置を講ずる。
イ 所得税を課さない。
ロ 国税の滞納処分による差押えを禁止する。
② 障害者総合支援法の就労継続支援の用に供する土地等について、引き続き収用交換等の場合の譲渡所得の5,000万円特別控除等に係る簡易証明制度の対象とする。
③ 収用交換等の場合の譲渡所得の5,000万円特別控除等に係る簡易証明制度の対象に、見直し後の共同生活援助の用に供する土地等を加える。
(地方税)
〈個人住民税〉
(1)給与支払報告書等の提出方法について、磁気テープを提出する方法を除外する。
(2)個人住民税について、所得税における(5)から(9)までの見直しに伴い、所要の措置を講ずる。
(3)国税における諸制度の取扱い等を踏まえ、その他所要の措置を講ずる。
(4)個人住民税における寄附金税額控除に係る申告特例申請書、申告特例申請事項変更届出書及び申告特例通知書について、「性別」の記載を不要とする。
(注)上記の改正は、令和4年4月1日以後に行われた寄附について提出される申告特例申請書等について適用する。
〈国民健康保険税〉
(5)国民健康保険税の基礎課税額等に係る課税限度額について、次のとおりとする。
① 基礎課税額に係る課税限度額を65万円(現行:63万円)に引き上げる。
② 後期高齢者支援金等課税額に係る課税限度額を20万円(現行:19万円)に引き上げる。

二 資産課税
1 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置等
(1)適用期限(令和3年12月31日)を令和5年12月31日まで2年延長する。
(2)非課税限度額は、住宅用家屋の取得等に係る契約の締結時期にかかわらず、住宅取得等資金の贈与を受けて新築等をした次に掲げる住宅用家屋の区分に応じ、それぞれ次に定める金額とする。
① 耐震、省エネ又はバリアフリーの住宅用家屋 1,000万円
② 上記以外の住宅用家屋 500万円
(3)適用対象となる既存住宅用家屋の要件について、築年数要件を廃止するとともに、新耐震基準に適合している住宅用家屋(登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降の家屋については、新耐震基準に適合している住宅用家屋とみなす。)であることを加える。
(4)受贈者の年齢要件を18歳以上(現行:20歳以上)に引き下げる。
(注1)上記((2)を除く。)の改正は、住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税制度の特例措置及び震災特例法の贈与税の非課税措置についても同様とする。なお、住宅取得等資金の贈与に係る震災特例法の贈与税の非課税措置に係る非課税限度額は、現行制度と同額とする。
(注2)上記の改正は、令和4年1月1日(上記(4)の改正については、同年4月1日)以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用する。
2 土地に係る固定資産税等の負担調整措置
(1)土地に係る固定資産税の負担調整措置
 令和4年度限りの措置として、商業地等(負担水準が60%未満の土地に限る。)の令和4年度の課税標準額を、令和3年度の課税標準額に令和4年度の評価額の2.5%(現行:5%)を加算した額(ただし、当該額が、評価額の60%を上回る場合には60%相当額とし、評価額の20%を下回る場合には20%相当額とする。)とする。
(2)土地に係る都市計画税の負担調整措置
 固定資産税の改正に伴う所要の改正を行う。
3 租税特別措置等
(国 税)
〔延長・拡充等〕
〈相続税・贈与税〉
(1)農業経営基盤強化促進法等の改正を前提に、農用地利用集積計画の農用地利用集積等促進計画(仮称)への統合等の措置が講じられた後も、引き続き、農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度を適用する。
(2)博物館法の改正を前提に、同法の規定により登録を受けた博物館及び指定を受けた博物館に相当する施設について、審査基準の見直し等の措置が講じられた後も、引き続き、特定の美術品に係る相続税の納税猶予制度等を適用する。
(3)非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度について、特例承継計画の提出期限を1年延長する。
〈登録免許税〉
(4)住宅用家屋の所有権の保存登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(5)次の特例の適用対象となる住宅用家屋の要件について、築年数要件を廃止するとともに、新耐震基準に適合している住宅用家屋(登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降の家屋については、新耐震基準に適合している住宅用家屋とみなす。)であることを加えた上、その適用期限を2年延長する。
① 住宅用家屋の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置
② 特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置
③ 住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記に対する登録免許税の税率の軽減措置
(6)特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(7)認定低炭素住宅の所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(8)マンション建替事業の施行者等が受ける権利変換手続開始の登記等に対する登録免許税の免税措置の適用期限を2年延長する。
(9)農業経営基盤強化促進法等の改正を前提に、農用地利用集積計画の農用地利用集積等促進計画(仮称)への統合の措置が講じられた後も、引き続き、利用権設定等促進事業により農用地等を取得した場合の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置を適用する。
(10)農地中間管理機構が農用地等を取得した場合の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(11)中小漁業融資保証法の改正に伴い、漁業信用基金協会が受ける抵当権の設定登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置について、同法に規定する沿岸漁業改善資金の借入れに係る債務保証を適用対象に加える。
(12)事業再編計画の認定要件が見直された後の産業競争力強化法に規定する認定事業再編計画等に基づき行う登記に対する登録免許税の税率の軽減措置について、その適用期限を2年延長する。
(13)特定創業支援等事業による支援を受けて行う会社の設立の登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(14)認定経営力向上計画に基づき行う登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(15)金融機能の強化のための特別措置に関する法律に規定する経営強化計画に基づき行う登記(東日本大震災の影響により自己資本の充実を図ることが必要となった金融機関等が経営強化計画に基づき行うものを含む。)に対する登録免許税の税率の軽減措置について、適用対象となる登記の範囲に、同法に規定する資金交付契約に関する事項について記載がある実施計画に基づき行う組織再編成等に係る登記を加えた上、その適用期限を2年延長する。
(16)認定特定民間中心市街地経済活力向上事業計画に基づき不動産を取得した場合の所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置について、令和5年4月1日以後に認定を受ける特定民間中心市街地経済活力向上事業計画に基づき取得する不動産の所有権の移転登記に対する軽減税率を1,000分の13(現行:1,000分の10)に引き上げた上、その適用期限を2年延長する。
(17)特定国際船舶の所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(18)低未利用土地権利設定等促進計画に基づき不動産を取得した場合の所有権等の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(19)特定の社債的受益権に係る特定目的信託の終了に伴い信託財産を買い戻した場合の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置の適用期限を2年延長する。
(20)特定連絡道路工事施行者が取得した特定連絡道路に係る土地の所有権の移転登記に対する登録免許税の免税措置の適用期限を2年延長する。
(21)相続に係る所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置について、次の措置を講じた上、その適用期限を3年延長する。
① 適用対象となる土地の範囲に、市街化区域内に所在する土地を加える。
② 適用対象となる土地の価額の上限を100万円(現行:10万円)に引き上げる。
(22)帰還・移住等環境整備推進法人が取得をした不動産に係る所有権等の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を3年延長する。
〈印紙税〉
(23)不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置の適用期限を2年延長する。
(24)特定の学資としての資金の貸付けに係る消費貸借に関する契約書の印紙税の非課税措置の適用期限を3年延長する。
(地方税)
〔新設〕
〈固定資産税・都市計画税〉
(1)港湾法の改正を前提に、国際戦略港湾及び一定の要件を満たす国際拠点港湾において、港湾運営会社が、港湾脱炭素化推進事業(仮称)により、政府の補助を受けて取得した陸上電力供給設備に係る固定資産税について、課税標準を最初の3年間価格の3分の2とする特例措置を令和5年3月31日まで講ずる。
(2)特定都市河川浸水被害対策法に規定する貯留機能保全区域の指定を受けた土地に係る固定資産税及び都市計画税について、課税標準を最初の3年間価格に4分の3を参酌して3分の2以上6分の5以下の範囲内において市町村の条例で定める割合を乗じて得た額とする特例措置を令和7年3月31日まで講ずる。
〈不動産取得税〉
(3)医療機関の開設者が、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律に規定する認定再編計画に基づく医療機関の再編に伴い取得した一定の不動産に係る不動産取得税について、当該不動産の価格の2分の1に相当する額を価格から控除する課税標準の特例措置を令和6年3月31日まで講ずる。
〈事業所税〉
(4)労働者協同組合法の施行等に伴い、次の措置を講ずる。
① 労働者協同組合法の改正を前提に、剰余金の配当が行われないこと、解散時の残余財産について組合員からの出資額を超える金額が国等又は同種の法人へ帰属すること等が担保された労働者協同組合(以下「特定組合」という。)が創設される場合には、特定組合の行う収益事業以外の事業に係る事業所税について、非課税とする措置を講ずる。
② 労働者協同組合連合会の事業の用に供する施設に対する事業所税の課税標準の特例措置(2分の1控除)を講ずる。
〔延長・拡充等〕
〈固定資産税・都市計画税〉
(1)所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の改正を前提に、同法に規定する地域福利増進事業を実施する者が当該事業の用に供する一定の土地及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置について、次の措置を講ずる。
① 適用対象となる特定所有者不明土地に、損傷、腐食等により利用が困難であり、引き続き利用されないと見込まれる建築物が存する土地を加える。
② 適用対象となる事業に、備蓄倉庫等の災害対策に関する施設の整備事業、一定の再生可能エネルギー発電設備の整備事業及び配電事業の用に供する電気工作物の整備事業を加える。
③ 購買施設又は教養文化施設の用に供する土地等については、課税標準を最初の5年間価格の4分の3(現行:3分の2)とする。
(2)耐震改修等を行った住宅に対して、次の措置を講ずる。
① 耐震改修を行った住宅に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
② バリアフリー改修を行った住宅に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
③ 省エネ改修を行った住宅に係る固定資産税の減額措置について、次の措置を講じた上、その適用期限を2年延長する。
イ 適用対象となる住宅を、平成26年4月1日に存していた住宅(現行:平成20年1月1日に存していた住宅)とする。
ロ 工事費要件を、50万円超から60万円超(断熱改修に係る工事費が60万円超、又は断熱改修に係る工事費が50万円超であって、太陽光発電装置、高効率空調機、高効率給湯器若しくは太陽熱利用システムの設置に係る工事費と合わせて60万円超)に引き上げるほか、これに伴う所要の措置を講ずる。
(3)都市再生特別措置法に規定する一体型滞在快適性等向上事業の実施主体が、当該事業により整備した一定の固定資産に対して課する固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置について、次の措置を講じた上、その適用期限を2年延長する。
① 一体型滞在快適性等向上事業について、公共施設の管理が官民連携で行われる場合も対象となることを明確化する。
② 都市再生特別措置法施行規則の改正を前提に、適用対象となる償却資産に電源設備、給排水設備、冷房設備及び暖房設備を加える。
(4)防災上重要な道路等における無電柱化のため、道路の地下に埋設するために新設した電線等に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、適用対象者の範囲に電気事業法の配電事業者を加えた上、その適用期限を3年延長する。
(5)沖縄電力株式会社が電気供給業の用に供する償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(6)高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に規定する特別特定建築物に該当する家屋のうち主に実演芸術の公演等を行う一定のものについて、同法に基づく建築物移動等円滑化誘導基準に適合させるよう改修工事を行った家屋に係る固定資産税及び都市計画税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
(7)市町村が公表した人・農地プランにおいて地域の中心となる経営体として位置付けられた農業経営基盤強化促進法に規定する認定就農者に利用させるため、農業協同組合等が取得した一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、同法等の改正に伴う所要の措置を講じた上、その適用期限を2年延長する。
(8)所有する全ての農地(10a未満の自作地を除く。)に農地中間管理事業のための賃借権等を新たに設定し、かつ、当該賃借権等の設定期間が10年以上である農地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(9)電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法に規定する一定の再生可能エネルギー発電設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(10)福島復興再生特別措置法に規定する帰還・移住等環境整備推進法人が同法に規定する帰還・移住等環境整備事業計画に基づき一定の事業の用に供する土地及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
(11)国内路線に就航する航空機に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(12)北海道旅客鉄道株式会社及び四国旅客鉄道株式会社が所有し又は借り受けている固定資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を5年延長する。
(13)国鉄改革により北海道旅客鉄道株式会社及び四国旅客鉄道株式会社並びに日本貨物鉄道株式会社が承継した本来事業用固定資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を5年延長する。
(14)地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に規定する鉄道事業再構築事業を実施する路線において政府の補助を受けて取得した一定の家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(15)鉄軌道事業者が首都直下地震・南海トラフ地震に備えた鉄道施設等の耐震補強工事によって新たに取得した一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を1年延長する。
(16)河川法に規定する高規格堤防の整備に係る事業のために使用された土地の上に建築されていた家屋について移転補償金を受けた者が当該土地の上に取得した代替家屋に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
(17)新築の認定長期優良住宅に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
〈不動産取得税〉
(18)中小事業者等が中小企業等経営強化法に規定する認定経営力向上計画に従って行う事業の譲受けにより取得した一定の不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(19)福島復興再生特別措置法に規定する帰還・移住等環境整備推進法人が同法に規定する帰還・移住等環境整備事業計画に基づき取得した一定の土地に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
(20)都市再生特別措置法の規定による公告があった低未利用土地権利設定等促進計画に基づき取得された居住誘導区域又は都市機能誘導区域内にある一定の土地に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(21)河川法に規定する高規格堤防の整備に係る事業のために使用された土地の上に建築されていた家屋について移転補償金を受けた者が当該土地の上に取得した代替家屋に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(22)不動産取得税について、新築住宅を宅地建物取引業者等が取得したものとみなす日を住宅新築の日から1年(本則6月)を経過した日に緩和する特例措置の適用期限を2年延長する。
(23)新築住宅特例適用住宅用土地に係る不動産取得税の減額措置(床面積の2倍(200㎡を限度)相当額等の減額)について、土地取得後の住宅新築までの経過年数要件を緩和する特例措置の適用期限を2年延長する。
(24)マンションの建替え等の円滑化に関する法律に規定する施行者又はマンション敷地売却組合が取得する特定要除却認定マンション及びその敷地に係る不動産取得税の非課税措置の適用期限を2年延長する。
(25)新築の認定長期優良住宅に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
〈事業所税〉
(26)沖縄振興特別措置法の改正を前提に、同法に規定する観光地形成促進地域における特定民間観光関連施設に対する資産割に係る事業所税の課税標準の特例措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する。
① 対象となる施設にテーマパーク及びスパ施設を加える。
② 対象となる施設から庭球場、野営場、野外アスレチック場、マリーナ、ダイビング施設、遊園地、博物館、美術館及び海洋療法施設を除外する。
(27)港湾法の改正を前提に、改正後の船舶役務用施設について、現行制度と同様の特例措置を講ずる。
(28)沖縄振興特別措置法の改正を前提に、同法に規定する情報通信産業振興地域における一定の情報通信産業の事業の用に供する施設に対する資産割に係る事業所税の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
(29)沖縄振興特別措置法の改正を前提に、同法に規定する産業イノベーション促進地域(仮称)(現行:産業高度化・事業革新促進地域)における一定の産業の事業の用に供する施設に対する資産割に係る事業所税の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
(30)沖縄振興特別措置法の改正を前提に、同法に規定する国際物流拠点産業集積地域における一定の産業の用に供する施設に対する資産割に係る事業所税の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
〔廃止・縮減等〕
〈固定資産税・都市計画税〉
(1)特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律に規定する認定導入計画に基づき、電波法の規定によりローカル5G無線局に係る免許を受けた者が、新たに取得した一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
① 対象資産の取得価額要件を2億円以下(現行:3億円以下)に引き下げる。
② 適用対象となるシステムを、その用途がローカル5Gシステムの特性を活用した先進的なデジタル化の取組みであるものに限定する。
(2)農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律の認定を受けた事業者が取得した一定のバイオ燃料製造設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、木質固形燃料製造設備の適用対象を中小事業者等及び農業協同組合等が取得するものに限定した上、その適用期限を2年延長する。
(3)公害防止用設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
① 水質汚濁防止法の特定施設に係る汚水又は廃液を処理するための施設について、適用対象を暫定排水基準が適用されている事業者が取得する処理施設に限定する。
② ごみ処理施設について、適用対象を熱回収又は再生利用の用に供する施設に限定する。
③ 一般廃棄物最終処分場について、適用対象から、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の規定により環境大臣の再生利用に係る認定を受けた施設を除外する。
④ 下水道除害施設について、適用対象を新たに下水道が整備されたことにより除害施設の設置義務が生じる者が取得するものに限定した上、課税標準を価格に次の割合を乗じて得た額とする。
イ 大臣配分資産又は知事配分資産 5分の4(現行:4分の3)
ロ その他の資産 5分の4を参酌して10分の7以上10分の9以下の範囲内において市町村の条例で定める割合(現行:4分の3を参酌して3分の2以上6分の5以下の範囲内において市町村の条例で定める割合)
(4)一般ガス導管事業者が新設した一般ガス導管事業の用に供する一定の償却資産に対する固定資産税の課税標準の特例措置について、適用対象となる一般ガス導管事業者から、特別一般ガス導管事業者を除外することとし、令和7年3月31日までの間に特別一般ガス導管事業者が新設した一定の償却資産については、課税標準を最初の5年間価格の3分の2、その後の5年間価格の6分の5とする経過措置を講ずる。
(5)流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の認定を受けた事業者が、総合効率化計画に基づき取得した一定の家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
① 適用対象となる倉庫及び附属機械設備について、その設備要件に物流業務の自動化・機械化関連機器を有するものであることとの要件を加える。
② 適用対象から貨物用鉄道車両及び貨物搬送装置を除外する。
(6)日本貨物鉄道株式会社が取得した新たに製造された一定の機関車に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
① 適用対象から、代替車両であって、既存更新車両の制御方式に比べて改良されている車両を除外する。
② 適用対象から、代替車両以外の車両を除外する。
③ 課税標準を価格の3分の2(現行:5分の3)とする。
(7)港湾法の改正を前提に、国際戦略港湾及び一定の要件を満たす国際拠点港湾において、港湾運営会社が、国の無利子資金の貸付け又は補助を受けて取得した一定の荷さばき施設等に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置について、適用対象となる荷さばき施設等のうち荷役機械を、港湾脱炭素化推進計画(仮称)が作成された港湾において港湾脱炭素化推進事業(仮称)により取得されたものに限定する。
(8)港湾法の改正を前提に、特定貨物輸入拠点港湾において、特定貨物取扱埠頭の整備を図るため、港湾管理者が作成する特定利用推進計画の一定の事業を実施する者が、政府の補助を受けて取得した荷さばき施設等に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置について、適用対象となる荷さばき施設等のうち荷役機械を、港湾脱炭素化推進計画(仮称)が作成された港湾において港湾脱炭素化推進事業(仮称)により取得されたものに限定する。
(9)新築住宅に係る固定資産税の税額の減額措置について、土砂災害特別警戒区域等の区域内で一定の住宅建設を行う者に対し、都市再生特別措置法に基づき、適正な立地を促すために市町村長が行った勧告に従わないで建設された一定の住宅を適用対象から除外した上、その適用期限を2年延長する。
(10)特定通信・放送開発事業実施円滑化法に基づき、総務大臣から実施計画について認定を受けた一定の事業者が、首都直下地震緊急対策区域外で取得し、専ら同区域内のデータセンターのバックアップの事業の用に供する一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置を廃止する。
(11)都市再生推進法人が、都市再生特別措置法に規定する立地誘導促進施設協定に基づき管理する一定の施設の用に供する土地及び当該土地の上に存する償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置を廃止する。
〈不動産取得税〉
(12)中小企業者が取得する健康サポート薬局の用に供する不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置を廃止する。
4 その他
(国 税)
(1)相続税に係る死亡届の情報等の通知について、次の見直しを行う。
① 法務大臣は、死亡等に関する届書に係る届書等情報等の提供を受けたときは、当該届書等情報等及び当該死亡等をした者の戸籍等の副本に記録されている情報を、当該提供を受けた日の属する月の翌月末日までに、国税庁長官に通知しなければならない。
② 市町村長は、当該市町村長等が当該市町村の住民基本台帳に記録されている者に係る死亡等に関する届書の受理等をしたときは、当該死亡等をした者が有していた土地又は家屋に係る固定資産課税台帳の登録事項等を、当該届書の受理等をした日の属する月の翌月末日までに、当該市町村の事務所の所在地の所轄税務署長に通知しなければならない。
(注)上記の改正は、戸籍法の一部を改正する法律の施行の日以後に適用する。
(2)信託に関する受益者別(委託者別)調書について、「信託財産の価額」の欄に記載すべき相続税評価額の算定が困難な場合には、見積価額を記載しなければならないこととする。
(注)上記の改正は、令和5年1月1日以後に提出すべき事由が生ずる調書について適用する。
(3)調書の提出方法について、磁気テープを提出する方法を除外する。
(4)不動産登記法の一部改正により創設される相続人申告登記等の職権登記について、登記官が職権に基づいてする登記に対する登録免許税の非課税措置を適用する。
(5)登記等を受ける者は、登記機関等が指定する納付受託者に納付を委託する方法(クレジットカード等を使用する方法)により、登録免許税を納付できることとする。この場合において、納付受託者が登記等を受ける者の委託を受けた日に登録免許税の納付があったものとみなして、延滞税に関する規定を適用するほか、納付受託者の納付義務、帳簿保存義務、納付受託者の指定の取消し等について所要の措置を講ずる。
(6)登録免許税法別表第三(登録免許税の非課税登記)に掲名されている独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構を同法別表第二(非課税法人)掲名法人に変更する。
(7)児童福祉法の改正を前提に、改正後の障害児通所支援事業等について、社会福祉法人が社会福祉事業の用に供するために取得する不動産に係る所有権の移転登記等に対する登録免許税の非課税措置(登録免許税法別表第三)等を引き続き適用する。
(8)障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の改正を前提に、改正後の障害福祉サービス事業等について、社会福祉法人が社会福祉事業の用に供するために取得する不動産に係る所有権の移転登記等に対する登録免許税の非課税措置(登録免許税法別表第三)等を引き続き適用する。
(9)労働者協同組合法に基づき設立される労働者協同組合及び労働者協同組合連合会に係る設立登記等については、登録免許税の課税対象としない。
(10)労働者協同組合法に基づき設立される労働者協同組合及び労働者協同組合連合会の作成する出資証券に対する印紙税を非課税とする。
(11)新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置によりその経営に影響を受けた事業者に対して行う特別貸付けに係る消費貸借契約書の印紙税の非課税措置の適用期限を1年延長する。
(地方税)
〈固定資産税・都市計画税〉
(1)価格が上昇した土地であっても税額を据え置く特別な措置が令和3年度に講じられたことに伴い、当該特別な措置の適用対象となった土地に係る令和3年度の価格について、令和4年4月1日から令和3年度の納税通知書の交付を受けた日後15月を経過する日までの間においても審査申出をすることができることとする。
(2)農業協同組合法の改正を前提に、改正後の農業協同組合等について、現行制度と同様の特例措置を講ずる。
(3)2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開催に伴い、(公社)2025年日本国際博覧会協会が博覧会の用に供する一定の家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税について、非課税とする等の所要の措置を講ずる。
〈不動産取得税〉
(4)農地中間管理事業の推進に関する法律等の改正を前提に、市町村が策定する農用地利用集積計画が農地中間管理機構が策定する農用地利用集積等促進計画(仮称)に統合されることに伴い、所要の措置を講ずる。
(5)農業経営基盤強化促進法の改正を前提に、農林水産大臣の認定を受けた農地所有適格法人について、現行制度と同様の特例措置を講ずる。
(6)農業協同組合法の改正を前提に、改正後の農業協同組合等について、現行制度と同様の特例措置を講ずる。
(7)2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開催に伴い、(公社)2025年日本国際博覧会協会が博覧会の用に供するために取得した一定の家屋に係る不動産取得税について、非課税とする等の所要の措置を講ずる。
〈事業所税〉
(8)農業協同組合法の改正を前提に、改正後の農業協同組合等について、現行制度と同様の特例措置を講ずる。

三 法人課税
1 積極的な賃上げ等を促すための措置
(国 税)
(1)給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度のうち新規雇用者に係る措置の改組
 給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度のうち新規雇用者に係る措置を改組し、青色申告書を提出する法人が、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が3%以上であるときは、控除対象雇用者給与等支給増加額の15%の税額控除ができる制度とする。この場合において、継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が4%以上であるときは、税額控除率に10%を加算し、教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が20%以上であるときは、税額控除率に5%を加算する。ただし、控除税額は、当期の法人税額の20%を上限とする(所得税についても同様とする。)。
(注1)資本金の額等が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1,000人以上である場合には、給与等の支給額の引上げの方針、取引先との適切な関係の構築の方針その他の事項をインターネットを利用する方法により公表したことを経済産業大臣に届け出ている場合に限り、適用があるものとする。
(注2)上記の「継続雇用者給与等支給額」とは、継続雇用者(当期及び前期の全期間の各月分の給与等の支給がある雇用者で一定のものをいう。)に対する給与等の支給額をいい、上記の「継続雇用者比較給与等支給額」とは、前期の継続雇用者給与等支給額をいう。
(注3)設立事業年度は対象外とする。
(注4)教育訓練費に係る税額控除率の上乗せ措置の適用を受ける場合には、教育訓練費の明細を記載した書類の保存(現行:確定申告書等への添付)をしなければならないこととする。
(2)中小企業における所得拡大促進税制について、税額控除率の上乗せ措置を次のとおりとする見直しを行った上、その適用期限を1年延長する(所得税についても同様とする。)。
① 雇用者給与等支給額の比較雇用者給与等支給額に対する増加割合が2.5%以上である場合には、税額控除率に15%を加算する。
② 教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が10%以上である場合には、税額控除率に10%を加算する。
(注)上記(1)の(注4)は、上記においても同様とする。
(3)大企業につき研究開発税制その他生産性の向上に関連する税額控除の規定(特定税額控除規定)を適用できないこととする措置について、資本金の額等が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1,000人以上である場合及び前事業年度の所得の金額が零を超える一定の場合のいずれにも該当する場合には、継続雇用者給与等支給額に係る要件を、継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が1%以上(令和4年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する事業年度にあっては、0.5%以上)であること(現行:継続雇用者給与等支給額が継続雇用者比較給与等支給額を超えること)とする。
(注)一定の場合には、当期が設立事業年度又は合併等の日を含む事業年度である場合を含む。
(地方税)
(1)給与等の支給額が増加した場合の付加価値割の課税標準からの控除制度を改組し、法人が、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が3%以上である等の要件を満たすときは、控除対象雇用者給与等支給増加額を付加価値割の課税標準から控除できることとする。
(注)雇用安定控除との調整等所要の措置を講ずる。
(2)給与等の支給額が増加した場合の中小企業者等の税額控除制度のうち新規雇用者に係る措置を改組し、法人が、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、一定の要件を満たすときに適用できることとされる法人税の税額控除を、中小企業者等に係る法人住民税に適用する。
(3)中小企業における所得拡大促進税制について、税額控除率の上乗せ措置を次のとおりとする見直しを行った上、その適用期限を1年延長する。
① 雇用者給与等支給額の比較雇用者給与等支給額に対する増加割合が2.5%以上である場合には、税額控除率に15%を加算する。
② 教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が10%以上である場合には、税額控除率に10%を加算する。
2 オープンイノベーション促進税制の拡充
(国 税)
 特別新事業開拓事業者に対し特定事業活動として出資をした場合の課税の特例について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
(1)出資の対象となる特別新事業開拓事業者の要件のうち設立の日以後の期間に係る要件について、売上高に占める研究開発費の額の割合が10%以上の赤字会社にあっては、設立の日以後の期間を15年未満(現行:10年未満)とする。
(2)対象となる特定株式の保有見込期間要件における保有見込期間の下限及び取崩し事由に該当することとなった場合に特別勘定の金額を取り崩して益金算入する期間を、特定株式の取得の日から3年(現行:5年)とする。
(注)特定事業活動に係る証明の要件のうち特定事業活動を継続する期間についても、3年(現行:5年)とする。
(地方税)
 法人住民税及び法人事業税について、オープンイノベーション促進税制の拡充に関する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。
3 地方活性化、災害への対応
(国 税)
(1)地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度及び地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除制度について、次の措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。
① 地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度について、次の措置を講じた上、その適用期限を2年延長する。
イ 地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定を受けた日から同日の翌日以後3年(現行:2年)を経過する日までの間に、取得等をして、事業の用に供した特定建物等を対象とする。
ロ 中小企業者(適用除外事業者に該当するものを除く。)以外の法人の取得価額要件を2,500万円以上(現行:2,000万円以上)に引き上げる。
② 地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除制度について、次の措置を講じた上、その適用期限を2年延長する。
イ 「地方事業所基準雇用者数のうち、有期雇用又はパートタイムである新規雇用者を除いた数が2人以上であること」との要件を廃止する。
ロ 対象雇用者の範囲に、地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定の日以後に特定業務施設以外の施設において新たに雇用された無期雇用かつフルタイムの要件を満たす雇用者で同日を含む事業年度終了の日において特定業務施設に勤務する者を加える。
ハ 対象雇用者の範囲から、有期雇用又はパートタイムである転勤者を除外する。
③ 地方活力向上地域等特定業務施設整備計画に係る認定要件について、関係法令の改正を前提に、次の見直しを行う。
イ 拡充型事業の対象となる地方活力向上地域の要件について、「事業者の立地を目的として地方公共団体によって産業基盤となる情報通信環境が整備され、又は整備を図るための具体的な計画の対象となっていること」との要件を満たす場合には、「産業の集積が形成されていること又は地方公共団体その他の者が定める産業の集積を図るための具体的な計画の対象となっていること」との要件を満たすことを不要とする。
ロ 特定業務施設の範囲に、情報サービス事業部門のために使用される事務所を加える。
ハ 特定業務施設において常時雇用する従業員の数及び特定業務施設において増加させると見込まれる常時雇用する従業員の数に関する要件について、中小企業者の場合には1人以上(現行:2人以上)とする。
④ 雇用促進計画の提出期限を、地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定の日から3月以内(現行:2月以内)とする。
⑤ その他所要の整備を行う。
(2)認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する(所得税についても同様とする。)。
① 特定高度情報通信技術活用システムの適切な提供及び維持管理並びに早期の普及に特に資する基準について、次の見直しを行う。
イ 特定基地局が開設計画に係る特定基地局(屋内等に設置するもの及び5G高度特定基地局を除く。)の開設時期が属する年度より前の年度に開設されたものであることとの要件を廃止し、5G高度特定基地局を加える。
ロ ローカル5Gシステムについては、導入を行うシステムの用途がローカル5Gシステムの特性を活用した先進的なデジタル化の取組みであるものに限定する。
ハ 補助金等の交付を受けたものを除外する。
② 特定高度情報通信技術活用システムを構成する上で重要な役割を果たすもののうち、3.6GHz超4.1GHz以下、4.5GHz超4.6GHz以下、27GHz超28.2GHz以下又は29.1GHz超29.5GHz以下の周波数の電波を使用する無線設備の要件について、次の見直しを行う。
イ 3.6GHz超4.1GHz以下又は4.5GHz超4.6GHz以下の周波数の電波を使用する無線設備に、多素子アンテナを用いないものを加える。
(注)上記の改正は、過疎地域その他の条件不利地域(以下「条件不利地域」という。)にあっては令和4年4月1日以後に事業の用に供するものについて適用し、その他の地域にあっては令和6年4月1日以後に事業の用に供するものについて適用する。
ロ マルチベンダー構成のものに限定する。
ハ スタンドアロン方式のものに限定する。
③ 税額控除率を次のとおり見直す。
イ 令和4年4月1日から令和5年3月31日までの間に事業の用に供したもの 15%(条件不利地域以外の地域内において事業の用に供した特定基地局の無線設備については、9%)
ロ 令和5年4月1日から令和6年3月31日までの間に事業の用に供したもの 9%(条件不利地域以外の地域内において事業の用に供した特定基地局の無線設備については、5%)
ハ 令和6年4月1日から令和7年3月31日までの間に事業の用に供したもの 3%
(3)農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律の改正を前提に、青色申告書を提出する法人で同法の認定輸出事業者であるものが、同法の改正法の施行の日から令和6年3月31日までの間に、輸出事業用資産の取得等をして、その法人の輸出事業の用に供した場合には、5年間30%(建物及びその附属設備並びに構築物については、35%)の割増償却ができることとする(所得税についても同様とする。)。
(注1)上記の「輸出事業用資産」とは、認定輸出事業計画に記載された輸出事業の用に供する施設に該当する機械装置、建物及びその附属設備並びに構築物のうち、次の要件等に該当するものをいう。
① 食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業の対象でないこと。
② 農産物等輸出拡大施設整備事業による補助金の交付を受けないこと。
(注2)割増償却は、輸出事業用資産の一定割合以上を輸出事業の用に供していることにつき証明された事業年度のみ、適用できることとする。
(4)保険会社等の異常危険準備金制度について、次の見直しを行う。
① 保険の種類について、火災保険等を次の保険の区分とする。
イ 火災保険及び風水害保険
ロ 動産総合保険、建設工事保険、貨物保険及び運送保険
ハ 賠償責任保険
② 火災保険等に係る特例積立率について、上記①イに掲げる保険に係る特例積立率を10%(現行:6%)に引き上げ、上記①ハに掲げる保険を対象から除外した上、その適用期限を3年延長する。
③ 火災共済に係る特例積立率の適用期限を3年延長する。
(地方税)
(1)地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は中小企業者等の税額控除制度及び中小企業者等の地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除制度について、次の措置を講ずる。
① 地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は中小企業者等の税額控除制度について、次の措置を講じた上、その適用期限を2年延長する。
イ 地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定を受けた日から同日の翌日以後3年(現行:2年)を経過する日までの間に、取得等をして、事業の用に供した特定建物等を対象とする。
ロ 中小企業者(適用除外事業者に該当するものを除く。)以外の法人の取得価額要件を2,500万円以上(現行:2,000万円以上)に引き上げる。
② 中小企業者等の地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除制度について、次の措置を講じた上、その適用期限を2年延長する。
イ 「地方事業所基準雇用者数のうち、有期雇用又はパートタイムである新規雇用者を除いた数が2人以上であること」との要件を廃止する。
ロ 対象雇用者の範囲に、地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定の日以後に特定業務施設以外の施設において新たに雇用された無期雇用かつフルタイムの要件を満たす雇用者で同日を含む事業年度終了の日において特定業務施設に勤務する者を加える。
ハ 対象雇用者の範囲から、有期雇用又はパートタイムである転勤者を除外する。
③ 地方活力向上地域等特定業務施設整備計画に係る認定要件について、関係法令の改正を前提に、次の見直しを行う。
イ 拡充型事業の対象となる地方活力向上地域の要件について、「事業者の立地を目的として地方公共団体によって産業基盤となる情報通信環境が整備され、又は整備を図るための具体的な計画の対象となっていること」との要件を満たす場合には、「産業の集積が形成されていること又は地方公共団体その他の者が定める産業の集積を図るための具体的な計画の対象となっていること」との要件を満たすことを不要とする。
ロ 特定業務施設の範囲に、情報サービス事業部門のために使用される事務所を加える。
ハ 特定業務施設において常時雇用する従業員の数及び特定業務施設において増加させると見込まれる常時雇用する従業員の数に関する要件について、中小企業者の場合には1人以上(現行:2人以上)とする。
④ 雇用促進計画の提出期限を、地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定の日から3月以内(現行:2月以内)とする。
⑤ その他所要の整備を行う。
(2)認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合の特別償却又は中小企業者等の税額控除制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する。
① 特定高度情報通信技術活用システムの適切な提供及び維持管理並びに早期の普及に特に資する基準について、次の見直しを行う。
イ 特定基地局が開設計画に係る特定基地局(屋内等に設置するもの及び5G高度特定基地局を除く。)の開設時期が属する年度より前の年度に開設されたものであることとの要件を廃止し、5G高度特定基地局を加える。
ロ ローカル5Gシステムについては、導入を行うシステムの用途がローカル5Gシステムの特性を活用した先進的なデジタル化の取組みであるものに限定する。
ハ 補助金等の交付を受けたものを除外する。
② 特定高度情報通信技術活用システムを構成する上で重要な役割を果たすもののうち、3.6GHz超4.1GHz以下、4.5GHz超4.6GHz以下、27GHz超28.2GHz以下又は29.1GHz超29.5GHz以下の周波数の電波を使用する無線設備の要件について、次の見直しを行う。
イ 3.6GHz超4.1GHz以下又は4.5GHz超4.6GHz以下の周波数の電波を使用する無線設備に、多素子アンテナを用いないものを加える。
(注)上記の改正は、過疎地域その他の条件不利地域(以下「条件不利地域」という。)にあっては令和4年4月1日以後に事業の用に供するものについて適用し、その他の地域にあっては令和6年4月1日以後に事業の用に供するものについて適用する。
ロ マルチベンダー構成のものに限定する。
ハ スタンドアロン方式のものに限定する。
③ 税額控除率を次のとおり見直す。
イ 令和4年4月1日から令和5年3月31日までの間に事業の用に供したもの 15%(条件不利地域以外の地域内において事業の用に供した特定基地局の無線設備については、9%)
ロ 令和5年4月1日から令和6年3月31日までの間に事業の用に供したもの 9%(条件不利地域以外の地域内において事業の用に供した特定基地局の無線設備については、5%)
ハ 令和6年4月1日から令和7年3月31日までの間に事業の用に供したもの 3%
4 中小・小規模事業者の支援
(国 税)
(1)中小企業における所得拡大促進税制について、税額控除率の上乗せ措置を次のとおりとする見直しを行った上、その適用期限を1年延長する(所得税についても同様とする。)。(再掲)
① 雇用者給与等支給額の比較雇用者給与等支給額に対する増加割合が2.5%以上である場合には、税額控除率に15%を加算する。
② 教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が10%以上である場合には、税額控除率に10%を加算する。
(注)教育訓練費に係る税額控除率の上乗せ措置の適用を受ける場合には、教育訓練費の明細を記載した書類の保存(現行:確定申告書等への添付)をしなければならないこととする。
(2)交際費等の損金不算入制度について、その適用期限を2年延長するとともに、中小法人に係る損金算入の特例の適用期限を2年延長する。
(地方税)
 中小企業における所得拡大促進税制について、税額控除率の上乗せ措置を次のとおりとする見直しを行った上、その適用期限を1年延長する。(再掲)
(1)雇用者給与等支給額の比較雇用者給与等支給額に対する増加割合が2.5%以上である場合には、税額控除率に15%を加算する。
(2)教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が10%以上である場合には、税額控除率に10%を加算する。
5 経済と環境の好循環の実現
(国 税)
 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律(仮称)の制定を前提に、次の措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。
(1)青色申告書を提出する法人で環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律の環境負荷低減事業活動実施計画(仮称)又は特定環境負荷低減事業活動実施計画(仮称)の認定を受けた農林漁業者(当該農林漁業者が団体である場合におけるその構成員等を含む。)であるものが、同法の施行の日から令和6年3月31日までの間に、環境負荷低減事業活動用資産の取得等をして、その法人の環境負荷低減事業活動(仮称)又は特定環境負荷低減事業活動(仮称)の用に供した場合には、その取得価額の32%(建物及びその附属設備並びに構築物については、16%)の特別償却ができることとする。
(注)上記の「環境負荷低減事業活動用資産」とは、認定環境負荷低減事業活動実施計画(仮称)又は認定特定環境負荷低減事業活動実施計画(仮称)に記載された環境負荷低減事業活動又は特定環境負荷低減事業活動の用に供する設備等に該当する機械その他の減価償却資産で、次の要件に該当するもののうち、その取得価額が100万円以上のものをいう。
① 次のいずれかに該当する設備等であること。
イ 慣行的な生産方式と比較して環境負荷の原因となる生産資材の使用量を減少させる設備等(異なる営農条件で有効性の確認が行われたものに限る。)
ロ 環境負荷低減事業活動(環境負荷の原因となる生産資材の使用量を減少させる生産方式による事業活動に限る。)の安定に不可欠な設備等
② 機械装置及び器具備品にあっては、次のいずれにも該当するものであること。
イ 認定基盤確立事業実施計画(仮称)に従って行われる基盤確立事業(仮称)により生産されたものであること。
ロ 一定期間内に販売されたモデルであり、上記イの認定基盤確立事業実施計画の認定時点でその販売台数がその販売者の旧モデルの販売台数を下回っているモデル(ベンチャー企業等が初めて事業化したモデルを含む。)のものであること。
(2)青色申告書を提出する法人で環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律の基盤確立事業実施計画(仮称)の認定を受けたものが、同法の施行の日から令和6年3月31日までの間に、基盤確立事業用資産の取得等をして、その法人の一定の基盤確立事業の用に供した場合には、その取得価額の32%(建物及びその附属設備並びに構築物については、16%)の特別償却ができることとする。
(注)上記の「基盤確立事業用資産」とは、認定基盤確立事業実施計画に記載された基盤確立事業の用に供する設備等に該当する機械その他の減価償却資産で、化学農薬又は化学肥料に代替する生産資材(普及割合が一定割合以下のものに限る。)を製造する専門の設備等をいう。
6 円滑・適正な納税のための環境整備
(国 税)
(1)法人が、隠蔽仮装行為に基づき確定申告書(その申告に係る法人税についての調査があったことにより当該法人税について決定があるべきことを予知して提出された期限後申告書を除く。以下同じ。)を提出しており、又は確定申告書を提出していなかった場合には、これらの確定申告書に係る事業年度の売上原価その他原価の額(資産の販売又は譲渡における当該資産の取得に直接に要した額及び資産の引渡しを要する役務の提供における当該資産の取得に直接に要した額として一定の額を除く。以下「売上原価の額」という。)並びにその事業年度の販売費、一般管理費等の費用の額及び損失の額(以下「費用の額等」という。)は、次に掲げる場合に該当する当該売上原価の額又は費用の額等を除き、その法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととする。
① 次に掲げるものにより当該売上原価の額又は費用の額等の基因となる取引が行われたこと及びこれらの額が明らかである場合(災害その他やむを得ない事情により、当該取引に係るイに掲げる帳簿書類の保存をすることができなかったことをその法人において証明した場合を含む。)
イ その法人が法人税法の規定により保存する帳簿書類
ロ 上記イに掲げるもののほか、その法人がその納税地その他の一定の場所に保存する帳簿書類その他の物件
② 上記①イ又はロに掲げるものにより、当該売上原価の額又は費用の額等の基因となる取引の相手方が明らかである場合その他当該取引が行われたことが明らかであり、又は推測される場合(上記①に掲げる場合を除く。)であって、当該相手方に対する調査その他の方法により税務署長が、当該取引が行われ、これらの額が生じたと認める場合
(注1)その法人がその事業年度の確定申告書を提出していた場合には、売上原価の額及び費用の額等のうち、その提出したその事業年度の確定申告書等に記載した課税標準等の計算の基礎とされていた金額は、本措置の対象から除外する。
(注2)上記の改正は、令和5年1月1日以後に開始する事業年度から適用する。
(2)みなし配当の額の計算方法等について、次の見直しを行う(所得税についても同様とする。)。
① 資本の払戻しに係るみなし配当の額の計算の基礎となる払戻等対応資本金額等及び資本金等の額の計算の基礎となる減資資本金額は、その資本の払戻しにより減少した資本剰余金の額を限度とする。
(注)出資等減少分配に係るみなし配当の額の計算及び資本金等の額から減算する金額についても、同様とする。
② 種類株式を発行する法人が資本の払戻しを行った場合におけるみなし配当の額の計算の基礎となる払戻等対応資本金額等及び資本金等の額の計算の基礎となる減資資本金額は、その資本の払戻しに係る各種類資本金額を基礎として計算することとする。
(3)次の制度について、固定資産の取得等の後に国庫補助金等の交付を受けた場合等の取扱いを法令上明確化する(次の①及び⑤の制度は、所得税についても同様とする。)。
① 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度
② 工事負担金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度
③ 非出資組合が賦課金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度
④ 保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度
⑤ 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
(4)少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度について、対象資産から、取得価額が10万円未満の減価償却資産のうち貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供したものを除外する(所得税についても同様とする。)。
(5)一括償却資産の損金算入制度について、対象資産から貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供した資産を除外する(所得税についても同様とする。)。
(6)電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により法人税及び地方法人税の確定申告書等に記載すべきものとされる事項を提供しなければならない法人の添付書類記載事項の提供方法から、磁気テープを提出する方法を除外する。
(地方税)
 eLTAXにより法人住民税及び法人事業税の確定申告書等に記載すべきものとされる事項を提供しなければならない法人の添付書類記載事項の提供方法から、磁気テープを提出する方法を除外する。
7 新たな沖縄振興に向けた措置
(国 税)
 沖縄振興特別措置法の改正を前提に、次の措置を講ずる。
(1)観光地形成促進地域に係る措置
 沖縄の観光地形成促進地域において特定民間観光関連施設を取得した場合の法人税額の特別控除制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する。
① 沖縄振興特別措置法の規定により観光地形成促進措置実施計画(仮称)の認定を受けた法人のうち、提出観光地形成促進計画に定められた観光地形成促進地域における観光地の形成を図るために特に資するものとして主務大臣が定める基準に適合することについて主務大臣の確認を受けた法人が、その観光地形成促進地域の区域内において特定民間観光関連施設の設置又は運営に関する事業の用に供する設備の新設又は増設をする場合に適用を受けることができる制度とする。
② 対象となる特定民間観光関連施設について、次の見直しを行う。
イ 結婚式場、テーマパーク及びスパ施設を加える。
ロ 庭球場、遊園地、野営場、野外アスレチック場、マリーナ、ダイビング施設、博物館、美術館及び海洋療法施設を除外する。
③ 繰越税額控除制度について、適用を受けることができる期間を4年間のうち観光地形成促進措置実施計画の認定を受けている期間とする。
(2)情報通信産業振興地域又は情報通信産業特別地区に係る措置
① 沖縄の情報通信産業振興地域において工業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する。
イ 沖縄振興特別措置法の規定により情報通信産業振興措置実施計画(仮称)の認定を受けた法人のうち、提出情報通信産業振興計画に定められた情報通信産業振興地域における情報通信産業の振興を図るために特に資するものとして主務大臣が定める基準に適合することについて主務大臣の確認を受けた法人が、その情報通信産業振興地域の区域内において情報通信産業の用に供する設備の新設又は増設をする場合に適用を受けることができる制度とする。
ロ 対象事業から情報記録物製造業、映画・ビデオ制作業、放送業及び情報通信技術利用事業を除外する。
ハ 繰越税額控除制度について、適用を受けることができる期間を4年間のうち情報通信産業振興措置実施計画の認定を受けている期間とする。
② 沖縄の情報通信産業特別地区における認定法人の所得控除制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する。
イ 対象法人を、認定法人のうち、提出情報通信産業振興計画に定められた情報通信産業特別地区における情報通信産業の振興を図るために特に資するものとして主務大臣が定める基準に適合することについて主務大臣の確認を受けた法人に限ることとする。
ロ 対象となる特定情報通信事業について、次の見直しを行う。
(イ)受託開発ソフトウェア業、情報システム開発業、システムインテグレーションサービス業、組込みソフトウェア業、パッケージソフトウェア業、データベースサービス業、アプリケーション・サービス・プロバイダ及び情報ネットワーク・セキュリティ・サービス業を加える。
(ロ)インターネット・サービス・プロバイダ及びインターネット・エクスチェンジ業を除外する。
(3)産業イノベーション促進地域に係る措置(現行:産業高度化・事業革新促進地域に係る措置)
 沖縄の産業高度化・事業革新促進地域において工業用機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する(特別償却制度は、所得税についても同様とする。)。
① 沖縄振興特別措置法の規定により産業高度化・事業革新措置実施計画の認定を受けた法人のうち、提出産業イノベーション促進計画(仮称)に定められた産業イノベーション促進地域(仮称)における産業高度化又は事業革新を図るために特に資するものとして主務大臣が定める基準に適合することについて主務大臣の確認を受けた法人が、その産業イノベーション促進地域の区域内において製造業等又は産業高度化・事業革新促進事業の用に供する設備の新設又は増設をする場合に適用を受けることができる制度とする。
② 対象資産に、構築物のうち、下記③のガス供給業又は製造業の用に供する液化天然ガスを貯蔵するためのガス貯槽及びそのガスを利用するための導管を加え、その取得価額の20%の特別償却とその取得価額の8%の税額控除との選択適用ができることとする。
③ 対象事業にガス供給業(サテライト設備により液化天然ガスを供給するものに限る。)を加え、その対象資産をガス供給業の用に供する上記②のガス貯槽及び導管並びに機械装置とする。
④ 対象事業から計量証明業を除外する。
⑤ 繰越税額控除制度について、適用を受けることができる期間を4年間のうち産業高度化・事業革新措置実施計画の認定を受けている期間とする。
(4)国際物流拠点産業集積地域に係る措置
① 沖縄の国際物流拠点産業集積地域において工業用機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する(特別償却制度は、所得税についても同様とする。)。
イ 沖縄振興特別措置法の規定により国際物流拠点産業集積措置実施計画(仮称)の認定を受けた法人のうち、提出国際物流拠点産業集積計画に定められた国際物流拠点産業集積地域における国際物流拠点産業の集積を図るために特に資するものとして主務大臣が定める基準に適合することについて主務大臣の確認を受けた法人が、その国際物流拠点産業集積地域の区域内において国際物流拠点産業の用に供する設備の新設又は増設をする場合に適用を受けることができる制度とする。
ロ 対象となる国際物流拠点産業集積地域に、沖縄市及びうるま市の区域のうち、池武当地区(沖縄市)並びに仲嶺・上江洲地区及び平安座地区(うるま市)を加える。
ハ 繰越税額控除制度について、適用を受けることができる期間を4年間のうち国際物流拠点産業集積措置実施計画の認定を受けている期間とする。
② 沖縄の国際物流拠点産業集積地域における認定法人の所得控除制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する。
イ 対象法人を、認定法人のうち、提出国際物流拠点産業集積計画に定められた国際物流拠点産業集積地域における国際物流拠点産業の集積を図るために特に資するものとして主務大臣が定める基準に適合することについて主務大臣の確認を受けた法人に限ることとする。
ロ 対象となる国際物流拠点産業集積地域に、沖縄市及びうるま市の区域のうち、池武当地区(沖縄市)並びに仲嶺・上江洲地区及び平安座地区(うるま市)を加える。(再掲)
(5)経済金融活性化特別地区に係る措置
① 沖縄の経済金融活性化特別地区において工業用機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する(特別償却制度は、所得税についても同様とする。)。
イ 沖縄振興特別措置法の規定により経済金融活性化措置実施計画(仮称)の認定を受けた法人が適用を受けることができる制度とする。
ロ 対象資産における一の生産等設備を構成する減価償却資産の取得価額の合計額が1,000万円超であること又はその減価償却資産のうち機械装置及び器具備品の取得価額の合計額が100万円超であることとする要件について、一の生産等設備を構成する減価償却資産の取得価額の合計額が500万円超であること又はその減価償却資産のうち機械装置及び器具備品の取得価額の合計額が50万円超であることとする。
ハ 繰越税額控除制度について、適用を受けることができる期間を4年間のうち経済金融活性化措置実施計画の認定を受けている期間とする。
② 沖縄の経済金融活性化特別地区における認定法人の所得控除制度について、対象となる認定法人は、毎年、その認定を受けた特定経済金融活性化事業の実施の状況を沖縄県知事に報告することとした上、その適用期限を3年延長する。
(6)離島に係る措置
 沖縄の離島の地域において旅館業用建物等を取得した場合の特別償却制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する(所得税についても同様とする。)。
① 対象資産である旅館業用建物等に、増築、改築、修繕又は模様替のための工事により取得又は建設をしたものを加える。
(注)資本金の額等が5,000万円超である法人又は適用除外事業者に該当する法人が取得又は建設をする旅館業用建物等については、現行どおりとする。
② 対象資産における一の生産等設備を構成する減価償却資産の取得価額の合計額が1,000万円超であることとする要件について、一の生産等設備を構成する減価償却資産の取得価額の合計額が500万円以上(資本金の額等が1,000万円超5,000万円以下である法人が新設又は増設により取得又は建設をするものについては1,000万円以上とし、資本金の額等が5,000万円超である法人又は適用除外事業者に該当する法人が取得又は建設をするものについては2,000万円以上とする。)であることとする。
③ この制度の適用を受けようとする法人は、その取得又は建設をした旅館業用建物等が離島の振興に寄与するものであること等につき沖縄県知事が確認した旨を証する書類を確定申告書等に添付しなければならないこととする。
8 その他の租税特別措置
(国 税)
〔延長・拡充等〕
(1)国家戦略特別区域において機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度の適用期限を2年延長する。
(2)海外投資等損失準備金制度の適用期限を2年延長する。
(3)交際費等の損金不算入制度について、その適用期限を2年延長するとともに、接待飲食費に係る損金算入の特例の適用期限を2年延長する。
(4)所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の改正を前提に、地域福利増進事業の拡充後も引き続き、同法の規定により行われた裁定に係る裁定申請書に記載された地域福利増進事業を行う事業者に対する一定の土地等の譲渡で、当該譲渡に係る土地等が当該地域福利増進事業の用に供されるものを法人の一般の土地譲渡益に対する追加課税制度の適用除外措置(優良住宅地の造成等のための譲渡等に係る適用除外)の対象とする。
(5)銀行等保有株式取得機構に係る課税の特例について、欠損金の控除限度額の特例措置の適用期限を4年延長した上、欠損金の繰越期間の特例措置及び欠損金の控除限度額の特例措置を租税特別措置法に規定する。
(6)中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置について、対象から銀行等保有株式取得機構の欠損金額を除外する措置を租税特別措置法に規定した上、不適用措置の適用期限を2年延長する。
〔廃止・縮減等〕
(1)国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度について、関係法令の改正を前提に、対象事業から付加価値の高い農林水産物若しくは加工食品の効率的な生産若しくは輸出の促進を図るために必要な技術の研究開発又は当該技術の活用に関する事業を除外した上、その適用期限を2年延長する。
(2)障害者を雇用する場合の特定機械装置の割増償却制度は、適用期限の到来をもって廃止する(所得税についても同様とする。)。
(3)倉庫用建物等の割増償却制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
① 割増償却率を8%(現行:10%)に引き下げる。
② 関係法令の改正を前提に、対象となる特定流通業務施設の設備要件に物流業務の自動化・機械化関連機器を有するものであることとの要件を加える。
(4)特定災害防止準備金制度は、適用期限の到来をもって廃止する。なお、令和4年3月31日を含む事業年度終了の日において廃棄物の処理及び清掃に関する法律の廃棄物処理施設の設置許可を受けている法人について、令和6年3月31日以前に開始する各事業年度については現行どおりの準備金積立率による積立てを認めるとともに、同年4月1日から令和11年3月31日までの間に開始する各事業年度については現行法による準備金積立率(60%)に対して1年ごとに6分の1ずつ縮小した率による積立てを認める経過措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。
(5)探鉱準備金又は海外探鉱準備金制度及び新鉱床探鉱費又は海外新鉱床探鉱費の特別控除制度について、対象鉱物から国外にある石炭、亜炭及びアスファルトを除外した上、探鉱準備金又は海外探鉱準備金制度の適用期限を3年延長する(探鉱準備金制度及び新鉱床探鉱費の特別控除制度は、所得税についても同様とする。)。
(6)国家戦略特別区域における指定法人の課税の特例について、関係法令の改正を前提に、対象事業から我が国において事業を行い、又は行おうとする外国会社、国際機関その他の者並びにその従業員等及びその家族が、我が国における事業活動、日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるようにするための経営管理の支援、保育サービス又は介護サービスの提供、家事支援活動、外国語による必要な情報の提供及び助言その他の必要な援助を行う事業並びに外国人旅客の中長期の滞在に適した施設を使用させる事業その他の外国人旅客の滞在に資する役務を提供する事業を除外した上、その適用期限を2年延長する。
(7)平成21年及び平成22年に土地等の先行取得をした場合の課税の特例は、適用期限が到来したため、その規定を削除する(所得税についても同様とする。)。
(8)中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、対象資産から貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供した資産を除外した上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
(9)農業協同組合等の合併に係る課税の特例について、適用対象から出資を有しない組合のみで行う合併を除外した上、その適用期限を3年延長する。
(地方税)
〔延長〕
(1)国家戦略特別区域において機械等を取得した場合の特別償却制度の適用期限を2年延長する。
(2)法人住民税及び法人事業税について、銀行等保有株式取得機構に係る課税の特例に関する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。
(3)原子力損害賠償・廃炉等支援機構法の廃炉等実施認定事業者の事業税の課税標準である収入金額を算定する場合において控除される収入金額の範囲に、当該廃炉等実施認定事業者が小売電気事業者又は一般送配電事業者から、原子力損害賠償・廃炉等支援機構に廃炉等積立金として積み立てる金銭に相当する金額の交付を受ける場合における当該金額に相当する収入金額を追加する課税標準の特例措置の適用期限を5年延長する。
(4)ガス供給業を行う法人の事業税の課税標準である収入金額を算定する場合において控除される収入金額の範囲に、他のガス供給業を行う法人から託送供給を受けてガスの供給を行う場合の当該供給に係る収入金額のうち、ガスの供給に係る託送供給の料金として支払うべき金額に相当する収入金額を追加する課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
〔縮減等〕
(1)国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の特別償却制度について、関係法令の改正を前提に、対象事業から付加価値の高い農林水産物若しくは加工食品の効率的な生産若しくは輸出の促進を図るために必要な技術の研究開発又は当該技術の活用に関する事業を除外した上、その適用期限を2年延長する。
(2)株式会社民間資金等活用事業推進機構に係る法人事業税の資本割の課税標準の特例措置について、事業年度の区分に応じ次に掲げる金額を資本金等の額からそれぞれ控除する特例に見直しを行った上、その適用期限を5年延長する。
① 令和4年4月1日から令和5年3月31日までの間に開始する事業年度  資本金等の額に20分の17を乗じて得た金額
② 令和5年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する事業年度  資本金等の額に5分の4を乗じて得た金額
③ 令和6年4月1日から令和7年3月31日までの間に開始する事業年度  資本金等の額に10分の7を乗じて得た金額
④ 令和7年4月1日から令和8年3月31日までの間に開始する事業年度  資本金等の額に5分の3を乗じて得た金額
⑤ 令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度  資本金等の額に2分の1を乗じて得た金額
9 その他
(国 税)
(1)国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度の対象となる国庫補助金等の範囲について、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法に基づく次の助成金を加える(所得税についても同様とする。)。
① 特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律等の改正を前提に、特定半導体生産施設整備等計画(仮称)の認定を受けた事業者が認定計画に従って行う特定半導体生産施設整備等(仮称)に必要な資金に充てるための助成金
② 産業DXのためのデジタルインフラ整備事業(仮称)等に係る助成金
(2)グループ通算制度の施行に伴い、次の見直しを行う。
① 投資簿価修正制度について、通算子法人の離脱時にその通算子法人の株式を有する各通算法人が、その株式(子法人株式)に係る資産調整勘定等対応金額について離脱時の属する事業年度の確定申告書等にその計算に関する明細書を添付し、かつ、その計算の基礎となる事項を記載した書類を保存している場合には、離脱時に子法人株式の帳簿価額とされるその通算子法人の簿価純資産価額にその資産調整勘定等対応金額を加算することができる措置を講ずる。
(注1)対象となる通算子法人からは、主要な事業が引き続き行われることが見込まれていないことにより通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価制度の適用を受ける法人を除く。
(注2)上記の「資産調整勘定等対応金額」とは、上記の通算子法人の通算開始・加入前に通算グループ内の法人が時価取得した子法人株式の取得価額のうち、その取得価額を合併対価としてその取得時にその通算子法人を被合併法人とする非適格合併を行うものとした場合に資産調整勘定又は負債調整勘定として計算される金額に相当する金額をいい、子法人株式の時価取得が段階的に行われる場合又は通算グループ内の複数の法人により行われる場合には、各通算法人の各取得時における調整勘定として計算される金額に対応する金額に取得株式数割合を乗じて計算した金額の合計額とする。
(注3)資産調整勘定等対応金額は、上記の通算子法人を被合併法人等とする非適格合併等が行われた場合には零とする。
(注4)連結納税制度からグループ通算制度に移行したグループの連結開始・加入子法人についても、対象とする。
② 通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価制度について、時価評価資産から除外される資産から帳簿価額1,000万円未満の営業権を除外する。
③ 益金不算入及び損金不算入の対象となる通算税効果額から、利子税の額に相当する金額として各通算法人間で授受される金額を除外する。
④ 共同事業性がない場合等の通算法人の欠損金額の切捨て、共同事業性がない場合等の損益通算の対象となる欠損金額の特例及び通算法人の特定資産に係る譲渡等損失額の損金不算入の適用除外となる要件のうち支配関係5年継続要件について、次の見直しを行う。
イ 通算承認日の5年前の日後に設立された通算親法人についての要件の判定は、他の通算法人のうち最後に支配関係を有することとなった日(現行:設立日)の最も早いものとの間で行うものとする。
ロ 要件の判定を行う通算法人等が通算承認日の5年前の日後に設立された法人である場合の支配関係5年継続要件の特例について、次の見直しを行う。
(イ)通算子法人の判定において、自己を合併法人とする適格合併で他の通算子法人の支配関係法人(通算法人を除く。)を被合併法人とするもの及び自己が発行済株式等を有する内国法人(通算法人を除く。)で他の通算子法人の支配関係法人であるものの残余財産の確定を特例の適用から除外される組織再編成に加える。
(ロ)通算グループ内の法人間の組織再編成を特例の適用から除外される組織再編成から除外する。
⑤ 認定事業適応法人の欠損金の損金算入の特例における欠損金の通算の特例について、各通算法人の控除上限に加算する非特定超過控除対象額の配賦は、非特定欠損控除前所得金額から本特例を適用しないものとした場合に損金算入されることとなるその特例十年内事業年度に係る非特定欠損金相当額を控除した金額(現行:非特定欠損控除前所得金額)の比によることとする等の見直しを行う。
⑥ その他所要の措置を講ずる。
(3)労働者協同組合法の施行等に伴い、次のとおり整備する。
① 労働者協同組合法の改正を前提に、剰余金の配当が行われないこと、解散時の残余財産について組合員からの出資額を超える金額が国等又は同種の法人へ帰属すること等が担保された労働者協同組合(以下「特定組合」という。)が創設される場合には、特定組合について、各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得以外の所得について非課税とするほか、公益法人等の軽減税率及び寄附金の損金不算入制度を除き、公益法人等に係る取扱いを適用する。
② 労働者協同組合連合会を協同組合等(法人税法別表第三)とする。
(4)農業経営基盤強化促進法等の改正を前提に、次の措置を講ずる(次の①の措置は、所得税についても同様とする。)。
① 農業経営基盤強化促進法の改正を前提に、農業経営基盤強化準備金制度及び農用地等を取得した場合の課税の特例について、人・農地プランの法定化に伴う所要の規定の整備を行う。
② 農業協同組合法等の改正を前提に、農業協同組合の農作業受託等に係る員外利用の制限の緩和等が行われた後も、農業協同組合等を引き続き協同組合等(法人税法別表第三)とする。
③ その他所要の措置を講ずる。
(地方税)
(1)ガス供給業に係る法人事業税の課税方式の見直し
① ガス供給業のうち、一般ガス導管事業及び特定ガス導管事業以外の事業であってガス事業法に規定するガス製造事業者(特別一般ガス導管事業者の供給区域において同法に規定するガス製造事業の用に供する液化ガス貯蔵設備を維持し、及び運用するものに限る。)である法人が行うもの(以下「特定ガス供給業」という。)に係る法人事業税については、収入割額、付加価値割額及び資本割額の合算額によって課することとする。
② ガス供給業のうち、一般ガス導管事業及び特定ガス導管事業以外の事業(特定ガス供給業を除く。以下「一般ガス供給業」という。)に係る法人事業税については、資本金の額又は出資金の額(以下「資本金」という。)1億円超の普通法人にあっては付加価値割額、資本割額及び所得割額の合算額によって、資本金1億円以下の普通法人等にあっては所得割額によって、それぞれ課することとする。
③ 特定ガス供給業及び一般ガス供給業に係る法人事業税の標準税率をそれぞれ次のとおりとする。
イ 特定ガス供給業
 収入割 0.48%
 付加価値割 0.77%
 資本割 0.32%
ロ 一般ガス供給業
(イ)資本金1億円超の普通法人
 付加価値割 1.2%
 資本割 0.5%
 所得割 1%
(ロ)資本金1億円以下の普通法人等
 所得割 年400万円以下の所得 3.5%
      年400万円超年800万円以下の所得 5.3%
      年800万円超の所得 7%
(ハ)特別法人
 所得割 年400万円以下の所得 3.5%
       年400万円超の所得 4.9%
       (特定の協同組合等の年10億円超の所得 5.7%)
(注)3以上の都道府県に事務所又は事業所を設けて事業を行う法人のうち資本金1,000万円以上であるものの所得割に係る税率については、軽減税率の適用はない。
④ 特定ガス供給業を行う法人及び一般ガス供給業を行う法人に係る特別法人事業税の税率をそれぞれ次のとおりとする。
イ 特定ガス供給業を行う法人の収入割額に対する税率 62.5%
ロ 一般ガス供給業を行う法人
 上記③ロ(イ)に掲げる法人の所得割額に対する税率 260%
 上記③ロ(ロ)に掲げる法人の所得割額に対する税率 37%
 上記③ロ(ハ)に掲げる法人の所得割額に対する税率 34.5%
⑤ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用する。
(2)大法人に対する法人事業税所得割の税率の見直し
 付加価値割額、資本割額及び所得割額の合算額により法人事業税を課される法人に係る法人事業税の所得割について、年400万円以下の所得の部分の0.4%の標準税率及び年400万円を超え年800万円以下の所得の部分の0.7%の標準税率を廃止するとともに、これらの部分の標準税率を1%とする等の所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用する。
(3)法人住民税及び法人事業税について、グループ通算制度の施行に伴う国税の見直しに準じて所要の措置を講ずる。
(4)国税における諸制度の取扱い等を踏まえ、その他所要の措置を講ずる。

四 消費課税
1 適格請求書等保存方式に係る見直し
(国 税)
(1)適格請求書発行事業者の登録について、次の見直しを行う。
① 免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、その登録日から適格請求書発行事業者となることができることとする。
② 上記①の適用を受けて登録日から課税事業者となる適格請求書発行事業者(その登録日が令和5年10月1日の属する課税期間中である者を除く。)のその登録日の属する課税期間の翌課税期間からその登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については、事業者免税点制度を適用しない。
③ 特定国外事業者(事務所及び事業所等を国内に有しない国外事業者をいう。)以外の者であって納税管理人を定めなければならないこととされている事業者が適格請求書発行事業者の登録申請の際に納税管理人を定めていない場合には、税務署長はその登録を拒否することができることとし、登録を受けている当該事業者が納税管理人を定めていない場合には、税務署長はその登録を取り消すことができることとする。
④ 事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書に虚偽の記載をして登録を受けた場合には、税務署長はその登録を取り消すことができることとする。
⑤ その他適格請求書発行事業者の登録に係る所要の措置を講ずる。
(2)仕入明細書等による仕入税額控除は、その課税仕入れが他の事業者が行う課税資産の譲渡等に該当する場合に限り、行うことができることとする。
(3)区分記載請求書の記載事項に係る電磁的記録の提供を受けた場合について、適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置の適用を受けることができることとする。
(4)適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置の適用対象となる棚卸資産については、その棚卸資産に係る消費税額の全部を納税義務の免除を受けないこととなった場合の棚卸資産に係る消費税額の調整措置の対象とする。
(5)公売等により課税資産の譲渡等を行う事業者が適格請求書発行事業者である場合には、公売等の執行機関はその事業者に代わって適格請求書等を交付することができることとする。
(6)課税仕入れ等に係る特定収入について仕入税額控除の制限を受ける事業者が、その特定収入の5%を超える金額を免税事業者等からの課税仕入れに充てた場合について、法令又は交付要綱等により国等にその使途を報告すべきこととされる文書等においてその課税仕入れに係る支払対価の額を明らかにしている場合には、その特定収入のあった課税期間の課税売上割合等に応じその課税仕入れに係る支払対価の額を基礎として計算した金額を、その明らかにした課税期間の課税仕入れ等の税額に加算できることとする。
(7)その他所要の措置を講ずる。
(注)上記(2)から(7)までの改正は、令和5年10月1日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れについて適用する。
2 租税特別措置等
(国 税)
〔延長・拡充等〕
(1)入国者が輸入する紙巻たばこのたばこ税の税率の特例措置の適用期限を1年延長する。
(2)沖縄振興特別措置法の改正を前提に、沖縄発電用特定石炭等に係る石油石炭税の免税措置の適用期限を2年延長する。
(3)航空機燃料税の税率の特例措置について、税率を1㎘につき13,000円(現行:9,000円)に引き上げた上、その適用期限を1年延長する。
(4)沖縄振興特別措置法の改正を前提に、沖縄路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置について、税率を1㎘につき6,500円(現行:4,500円)に引き上げた上、その適用期限を1年延長する。
(5)特定離島路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置について、税率を1㎘につき9,750円(現行:6,750円)に引き上げた上、その適用期限を1年延長する。
(地方税)
〔延長・拡充等〕
〈航空機燃料譲与税〉
 航空機燃料譲与税の譲与割合を令和4年4月1日から令和5年3月31日までの間、13分の4(現行:9分の4)とする等所要の措置を講ずる。
3 その他
(国 税)
(1)外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)について、次の見直しを行う。
① 輸出物品販売場において免税で購入することができる非居住者(以下「免税購入対象者」という。)の範囲について、次の見直しを行う。
イ 出入国管理及び難民認定法別表第一の在留資格をもって在留する非居住者については、短期滞在、外交又は公用の在留資格を有する者に限ることとする。
ロ 日本国籍を有する非居住者については、国内に2年以上住所及び居所を有しないことについて、入国の日から起算して6月前の日以後に発行された在留証明又は戸籍の附票の写し(以下「証明書類」という。)により証明された者に限ることとする。
② 上記①ロの者に対して免税販売を行う事業者は、証明書類に記載された情報を購入記録情報として国税庁長官に提供し、又は証明書類の写し若しくは証明書類に係る電磁的記録を保存することとする。
③ 免税購入対象者が行う旅券情報の提供等は、デジタル庁が整備及び管理をする訪日観光客等手続支援システムを用いて行うことができることとする。
④ 免税で購入された物品を輸出しない場合に消費税の即時徴収等を行う場合の税関長の権限について、税関官署の長へ委任できることとする。
⑤ その他所要の措置を講ずる。
(注1)上記(④を除く。)の改正は令和5年4月1日以後に行われる課税資産の譲渡等について、上記④の改正は令和4年4月1日以後に行われる即時徴収等について、それぞれ適用する。
(注2)上記の改正に伴い、輸出酒類販売場制度における非居住者の範囲、酒税の免税販売手続及び酒税の即時徴収等に係る税関長の権限等について、所要の措置を講ずる。
(2)児童福祉法の改正を前提に、改正後の障害児通所支援事業等について、引き続き消費税を非課税とする。
(3)障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の改正を前提に、改正後の障害福祉サービス事業等について、引き続き消費税を非課税とする。
(4)個人事業者の消費税の納税地の異動があった場合に提出することとされている届出書について、その提出を不要とするほか、所要の整備を行う。
(注)上記の改正は、令和5年1月1日以後の納税地の異動等について適用する。
(5)消費税の仕入税額控除の要件として保存することとされている輸入許可書等及び輸出免税の要件として保存することとされている輸出許可書等の範囲に、これらの書類に係る電磁的記録を含めることとする。
(6)郵便物を輸入する際に納付する内国消費税について、キャッシュレス納付を可能とするほか、所要の整備を行う。
(7)酒税、たばこ税、揮発油税、石油ガス税及び石油石炭税における輸出免税の適用に当たって必要となる帳簿の記載について、輸出許可書等に係る電磁的記録に基づいて記載できることとする。
(8)ウイスキー又はブランデーに類似するスピリッツに係る製造時の酒税の承認制度を見直し、誤認防止のための要件を設けた上、移出時の承認制度とするとともに、その承認における着色度に関する制限を撤廃する。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に承認を受けるスピリッツについて適用し、経過的な運用上の取扱いを設ける。
(9)沖縄県産酒類に係る酒税の軽減措置について、次の見直しを行う。なお、本軽減措置は延長後の適用期限の到来をもって廃止することとし、関係規定を削除する。
① 単式蒸留焼酎に係る酒税の軽減措置について、軽減割合を、その前年度の県内課税移出数量が200㎘を超え1,300㎘以下の場合にあっては、令和6年5月15日から令和8年5月14日までの間は30%、令和8年5月15日から令和11年5月14日までの間は20%、令和11年5月15日以後は10%とし、その前年度の県内課税移出数量が1,300㎘を超える場合にあっては、令和6年5月15日から令和8年5月14日までの間は25%、令和8年5月15日から令和11年5月14日までの間は15%、令和11年5月15日以後は5%とし、その適用期限を令和14年5月14日まで延長した上、廃止する。
② 単式蒸留焼酎以外の酒類に係る酒税の軽減措置について、軽減割合を令和5年10月1日以後は15%とし、その適用期限を令和8年9月30日まで延長した上、廃止する。
③ 上記②の軽減割合に係る改正等の実施時期において、手持品課税を実施する。
④ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の関係規定の削除は、令和14年5月15日から施行する。
(10)自動車検査証の交付等を受ける者又は車両番号の指定を受ける者は、国土交通大臣等が指定する納付受託者に納付を委託する方法(クレジットカード等を使用する方法)により、自動車重量税を納付できることとする。この場合において、納付受託者が自動車検査証の交付等を受ける者又は車両番号の指定を受ける者の委託を受けた日に自動車重量税の納付があったものとみなして、延滞税に関する規定を適用するほか、納付受託者の納付義務、帳簿保存義務、納付受託者の指定の取消し等について所要の措置を講ずる。
(11)沖縄の揮発油に係る揮発油税及び地方揮発油税の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(地方税)
〈自動車税〉
 2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開催に伴い、(公社)2025年日本国際博覧会協会が取得し、又は所有する博覧会の観客の輸送の用に供するバスに係る自動車税について、非課税とする。

五 国際課税
1 過大支払利子税制の見直し
(国 税)
 対象純支払利子等に係る課税の特例(いわゆる「過大支払利子税制」)について、外国法人の法人税の課税対象とされる次に掲げる国内源泉所得に係る所得の金額についても適用する。
(1)恒久的施設を有する外国法人に係る恒久的施設帰属所得以外の国内源泉所得
(2)恒久的施設を有しない外国法人に係る国内源泉所得
(地方税)
 法人住民税及び法人事業税について、対象純支払利子等に係る課税の特例(いわゆる「過大支払利子税制」)の見直しに関する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。
2 外国子会社合算税制の見直し
(国 税)
 特定外国関係会社等の判定における保険委託者特例に関する「一の保険会社等」及び「その一の保険会社等との間に特定資本関係のある保険会社等」によってその発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている外国関係会社である旨の要件について、次の見直しを行う。
(1)上記の「一の保険会社等」について、その範囲に保険会社等に発行済株式等の全部を直接又は間接に保有されている内国法人(保険会社等を除く。以下「判定対象内国法人」という。)で、次に掲げる要件の全てを満たすものを加える。
① 判定対象内国法人が、専ら100%内国法人グループ(判定対象内国法人及びその判定対象内国法人との間に特定資本関係のある内国法人をいう。)によってその発行済株式等の50%超を直接又は間接に保有されている保険業又はこれに関連する事業を主たる事業とする外国関係会社(その判定対象内国法人によってその発行済株式等の全部又は一部を直接又は間接に保有されているものに限る。)の経営管理及びその附帯業務を行っていること。
② 上記①の100%内国法人グループに係る他の内国法人(上記①の外国関係会社の発行済株式等の全部又は一部を直接又は間接に保有するものに限るものとし、保険会社等を除く。(2)において同じ。)が、専らその外国関係会社の経営管理及びその附帯業務を行っていること。
(2)上記の「その一の保険会社等との間に特定資本関係のある保険会社等」について、その範囲に上記(1)①の100%内国法人グループに係る他の内国法人で、専ら上記(1)①の外国関係会社の経営管理及びその附帯業務を行っているものを加える。
(注1)上記の「保険会社等」とは、内国法人で保険業を主たる事業とするもの又は保険持株会社に該当するものをいう。
(注2)上記の「特定資本関係」とは、二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係等をいう。
(注3)特定外国関係会社等の判定におけるロイズ特例について、上記と同様の見直しを行う。
(注4)上記の改正は、外国関係会社の令和4年4月1日以後に開始する事業年度について適用する。
(地方税)
 法人住民税及び法人事業税について、外国子会社合算税制の見直しに関する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。
3 その他
(国 税)
(1)子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避を防止するための措置(子会社株式簿価減額特例)について、次の見直しを行う。
① 適用除外要件(特定支配日利益剰余金額要件)の判定
イ 子法人の対象配当等の額に係る決議日等前に最後に終了した事業年度(以下「直前事業年度」という。)終了の日の翌日からその対象配当等の額を受けるまでの期間(イにおいて「対象期間」という。)内にその子法人の利益剰余金の額が増加した場合において、対象期間内にその子法人の株主等がその子法人から受ける配当等の額に係る基準時のいずれかがその翌日以後であるときは、直前事業年度の貸借対照表に計上されている利益剰余金の額に期中増加利益剰余金額(その対象期間内に増加したその子法人の利益剰余金の額とその対象期間内にその子法人の株主等がその子法人から受ける配当等の額に対応して減少したその子法人の利益剰余金の額の合計額をいう。以下同じ。)を加算することができることとする。ただし、次に掲げる金額を証する書類を保存している場合に限る。
(イ)期中増加利益剰余金額
(ロ)特定支配前の期中増加利益剰余金額(特定支配日の属する事業年度開始の日から特定支配日の前日までの期間((ロ)において「特定支配前対象期間」という。)内にその子法人の利益剰余金の額が増加した場合において、その子法人の株主等がその子法人から受ける配当等の額(その基準時が特定支配前対象期間内にあるものに限る。)があるときにおけるその特定支配前対象期間内に増加したその子法人の利益剰余金の額とその特定支配前対象期間内にその子法人の株主等がその子法人から受ける配当等の額に対応して減少したその子法人の利益剰余金の額の合計額をいう。以下同じ。)
ロ 上記イの適用を受ける場合には、特定支配日前に最後に終了した事業年度の貸借対照表に計上されている利益剰余金の額に特定支配前の期中増加利益剰余金額を加算する。
② 適用除外基準を満たす子会社を経由した配当等を用いた本制度の回避を防止するための措置(適用回避防止規定)について、次のいずれかに該当する場合には適用しないこととする。
イ 対象配当等の額に係る基準時以前10年以内に子法人との間にその子法人による特定支配関係があった法人(以下「孫法人等」という。)の全てがその設立の時からその基準時(その基準時前に特定支配関係を有しなくなった孫法人等にあっては、最後に特定支配関係を有しなくなった時の直前)まで継続してその子法人との間にその子法人による特定支配関係がある法人(イにおいて「継続関係法人」という。)である場合(その子法人又はその孫法人等を合併法人とする合併で、継続関係法人でない法人を被合併法人とするものが行われていた場合等を除く。)
ロ 次のいずれにも該当する場合
(イ)その親法人と孫法人との間に、その孫法人の設立の時からその孫法人から子法人に支払う配当等の額に係る基準時まで継続して親法人による特定支配関係がある場合
(ロ)その基準時以前10年以内にその孫法人との間にその孫法人による特定支配関係があった法人(以下「ひ孫法人等」という。)の全てがその設立の時からその基準時(その基準時前に特定支配関係を有しなくなったひ孫法人等にあっては、最後に特定支配関係を有しなくなった時の直前)まで継続してその孫法人との間にその孫法人による特定支配関係がある法人((ロ)において「継続関係法人」という。)である場合(その孫法人又はそのひ孫法人等を合併法人とする合併で、継続関係法人でない法人を被合併法人とするものが行われていた場合等を除く。)
③ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和2年4月1日以後に開始する事業年度において受ける対象配当等の額について適用する。
(2)グループ通算制度の施行に伴い、同制度における外国税額控除について、次の見直しを行う。
① 税務当局が調査を行った結果、進行事業年度調整措置を適用すべきと認める場合には、通算法人に対し、その調査結果の内容(進行事業年度調整措置を適用すべきと認めた金額及びその理由を含む。)を説明するものとする。
② 上記①の説明が行われた日の属する事業年度の期限内申告書に添付された書類に進行事業年度調整措置を適用した金額(税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額)として記載された金額等がその説明の内容と異なる場合には、その事業年度に係る税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額に係る固定措置を不適用とする。
③ 税額控除額等(税額控除額、税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額をいう。以下同じ。)に係る固定措置が不適用とされた事業年度について、その不適用とされたことに伴い修正申告書の提出又は更正が行われた場合には、原則として、その修正申告書又はその更正に係る更正通知書に税額控除額等として記載された金額をもって本固定措置を再度適用する。
④ その他所要の措置を講ずる。
(3)金融商品取引法に規定する市場デリバティブ取引又は店頭デリバティブ取引の決済により生ずる所得は、所得税法及び法人税法に規定する国内源泉所得である「国内資産の運用・保有所得」に含まれないことを法令上明確化する。
(注)外国税額控除における国外源泉所得である「国外資産の運用・保有所得」についても同様とする。
(4)非居住者又は外国法人が振替特定目的信託受益権のうち社債的受益権に該当するものにつき支払を受ける剰余金の配当等の非課税措置の適用期限を2年延長する。
(5)令和3年に開催される東京オリンピック競技大会又は東京パラリンピック競技大会に参加等をする非居住者及び外国法人に係る課税の特例は、適用期限の到来をもって廃止する。
(6)非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度等について、次の措置を講ずる。
① 報告金融機関等の範囲に、海外投資家等特例業務届出者及び届出をして移行期間特例業務を行う者等を加える。
② 報告金融機関等の報告事項の提供方法から、磁気テープを提出する方法を除外する。
(注)上場株式等の配当等に係る租税条約等の適用手続におけるその配当等の支払の取扱者のその支払を受ける者等に関する事項の提供方法についても同様とする。
(7)租税条約等の相手国等の税務当局との情報交換において、その租税条約等に定めるところにより、その相手国等の法令の規定により収集された個人番号を受領することができること及びその手続を法令上明確化する。
(地方税)
(1)グループ通算制度の施行に伴い、同制度における法人住民税の外国税額控除について、次の見直しを行う。
① 国税において、税務当局が調査を行った結果、進行事業年度調整措置を適用すべきと認めた内容と異なる申告が行われた場合にその事業年度に係る税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額に係る固定措置が不適用とされるときには、その事業年度に係る法人住民税の税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額に係る固定措置を不適用とする。
② 法人住民税の税額控除額等(税額控除額、税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額をいう。以下同じ。)に係る固定措置が不適用とされた事業年度について、その不適用とされたことに伴い修正申告書の提出又は更正が行われた場合には、原則として、その修正申告書に税額控除額等として記載された金額又はその更正に係る税額控除額等とされた金額をもって本固定措置を再度適用する。
③ その他所要の措置を講ずる。
(2)法人事業税において損金算入の対象となる外国法人税額等の範囲の明確化
外国税額控除の適用を受ける法人に係る法人事業税の所得等の計算上損金の額に算入される外国法人税額等には、外国法人税を課されたことを証する書類を保存していない等の理由により法人税額から控除できない金額等は含まれないことを明確化する。
(3)令和3年に開催される東京オリンピック競技大会又は東京パラリンピック競技大会に参加等をする非居住者及び外国法人に係る課税の特例は、適用期限の到来をもって廃止する。
(4)個人住民税、法人住民税及び事業税について、国税における諸制度の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。

六 納税環境整備
1 税理士制度の見直し
(国 税)
 税理士制度について、次の見直しを行う。
(1)税理士の業務の電子化等の推進
① 税理士及び税理士法人は、税理士の業務の電子化等を通じて、納税義務者の利便の向上及び税理士の業務の改善進歩を図るよう努めるものとする旨の規定を設けることとする。
② 税理士会及び日本税理士会連合会の会則に記載すべき事項に、税理士の業務の電子化に関する規定を加えるとともに、この規定についてその会則を変更するときは、財務大臣の認可を受けなければならないこととする。
(注)上記②の改正は、令和5年4月1日から施行する。
(2)税理士事務所の該当性の判定基準の見直し
 税理士事務所に該当するかどうかの判定について、設備又は使用人の有無等の物理的な事実により行わないこととする等の運用上の対応を行う。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日から適用する。
(3)税務代理の範囲の明確化
① 税務代理を行うに当たって前提となる通知等について、税務代理権限証書に記載された税理士又は税理士法人が受けることができることを明確化する等の運用上の対応を行う。
② 税務代理権限証書について、税務代理に該当しない代理をその様式に記載することができることとする等の見直しを行う。
(注)上記②の改正は、令和6年4月1日以後に提出する税務代理権限証書について適用する。
(4)税理士会の総会等の招集通知及び議決権の行使の委任の電子化
 税理士会及び日本税理士会連合会の総会等の招集通知及び議決権の行使の委任について、電磁的方法により行うことができることとする。
(5)税理士名簿等の作成方法の明確化
 税理士名簿及び税理士法人の名簿、税理士又は税理士法人が作成する税理士業務に関する帳簿等について、電磁的記録をもって作成すること(現行:磁気ディスク等をもって調製すること)ができることとする。
(6)税理士試験の受験資格要件の緩和
 税理士試験の受験資格について、次の見直しを行う。
① 会計学に属する科目の受験資格を不要とする。
② 大学等において一定の科目を修めた者が得ることができる受験資格について、その対象となる科目を社会科学に属する科目(現行:法律学又は経済学)に拡充する。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日から施行する。
(7)税理士法人制度の見直し
① 税理士法人の業務の範囲に、次に掲げる業務を加える。
イ 租税に関する教育その他知識の普及及び啓発の業務
ロ 後見人等の地位に就き、他人の法律行為について代理を行う業務等
② 税理士法人の社員の法定脱退事由に、懲戒処分等により税理士業務が停止されたことを加える。
(8)懲戒処分を受けるべきであったことについての決定制度の創設等
① 財務大臣は、税理士であった者につき税理士であった期間内に懲戒処分の対象となる行為又は事実があると認めたときは、その税理士であった者が懲戒処分を受けるべきであったことについて決定をすることができることとする。この場合において、財務大臣は、その税理士であった者が受けるべきであった懲戒処分の種類(その懲戒処分が税理士業務の停止の処分である場合には、懲戒処分の種類及び税理士業務の停止をすべき期間)を明らかにしなければならないこととする。
(注)財務大臣は、上記の決定をしたときは、遅滞なくその旨を官報をもって公告しなければならない。
② 税理士の欠格条項に、上記①により税理士業務の禁止の懲戒処分を受けるべきであったことについて決定を受けた者で、その決定を受けた日から3年を経過しないものを加える。
③ 税理士の登録拒否事由に、上記①により税理士業務の停止の懲戒処分を受けるべきであったことについて決定を受けた者で、上記①により明らかにされた税理士業務の停止をすべき期間を経過しないものを加える。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後にした違反行為等について適用する。
(9)懲戒処分等の除斥期間の創設
 税理士等に係る懲戒処分について、懲戒の事由があったときから10年を経過したときは、懲戒の手続を開始することができないこととする。
(注1)税理士法人の税理士法違反行為等に対する処分及び上記(8)①の決定について、上記と同様の措置を講ずる。
(注2)上記の改正は、令和5年4月1日以後にした違反行為等について適用する。
(10)税理士法に違反する行為又は事実に関する調査の見直し
① 税理士法に違反する行為又は事実に関する調査に係る質問検査等の対象に、税理士であった者及び税理士業務の制限又は名称の使用制限に違反したと思料される者を加える。
② 国税庁長官は、税理士法に違反する行為又は事実があると思料するときは、関係人又は官公署に対し、当該職員をして、必要な帳簿書類その他の物件の閲覧又は提供その他の協力を求めさせることができることとする。
(注)上記①の改正は令和5年4月1日以後に行う質問検査等について、上記②の改正は同日以後に行う協力の求めについて、それぞれ適用する。
(11)税理士が申告書に添付することができる計算事項、審査事項等を記載した書面に関する様式の整備
 税理士が申告書に添付することができる計算事項、審査事項等を記載した書面について、税理士の実務を踏まえたその書面に関する様式の簡素化等の見直しを行う。
(注)上記の改正は、令和6年4月1日以後に提出する申告書に添付する上記の書面について適用する。
(12)税理士試験受験願書等に関する様式の整備
 税理士試験受験願書に関する様式について、その税理士試験受験願書に添付すべき写真の大きさ以外の制限を不要とする等の見直しを行う。
(13)その他所要の措置を講ずる。
2 帳簿の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の整備
(国 税)
 過少申告加算税制度及び無申告加算税制度について、納税者が、一定の帳簿(その電磁的記録を含む。)に記載すべき事項に関し所得税、法人税又は消費税(輸入に係る消費税を除く。2において同じ。)に係る修正申告書若しくは期限後申告書の提出又は更正若しくは決定があった時前に、国税庁等の当該職員から当該帳簿の提示又は提出を求められ、かつ、次に掲げる場合のいずれかに該当するとき(当該納税者の責めに帰すべき事由がない場合を除く。)は、当該帳簿に記載すべき事項に関し生じた申告漏れ等に課される過少申告加算税の額又は無申告加算税の額については、通常課される過少申告加算税の額又は無申告加算税の額に当該申告漏れ等に係る所得税、法人税又は消費税の10%(次の(2)に掲げる場合に該当する場合には、5%)に相当する金額を加算した金額とするほか、所要の措置を講ずる。
(1)当該職員に当該帳簿の提示若しくは提出をしなかった場合又は当該職員にその提示若しくは提出がされた当該帳簿に記載すべき事項のうち、売上金額若しくは業務に係る収入金額の記載が著しく不十分である場合
(2)当該職員にその提示又は提出がされた当該帳簿に記載すべき事項のうち、売上金額又は業務に係る収入金額の記載が不十分である場合(上記(1)に掲げる場合に該当する場合を除く。)
(注1)上記の「一定の帳簿」とは、次に掲げる帳簿のうち、売上金額又は業務に係る収入金額の記載についての調査のために必要があると認められるものをいう。
① 所得税又は法人税の青色申告者が保存しなければならないこととされる仕訳帳及び総勘定元帳
② 所得税又は法人税において上記①の青色申告者以外の者が保存しなければならないこととされる帳簿
③ 消費税の事業者が保存しなければならないこととされる帳簿
(注2)上記(1)の「記載が著しく不十分である場合」とは、当該帳簿に記載すべき売上金額又は業務に係る収入金額のうち2分の1以上が記載されていない場合をいい、上記(2)の「記載が不十分である場合」とは、当該帳簿に記載すべき売上金額又は業務に係る収入金額のうち3分の1以上が記載されていない場合をいう。また、これらの金額が記載されていないことにつきやむを得ない事情があると認める場合には、運用上、適切に配慮することとする。
(注3)上記の改正は、令和6年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用する。
3 財産債務調書制度等の見直し
(国 税)
 財産債務調書制度等について、次の見直しを行う。
(1)財産債務調書の提出義務者の見直し
 現行の財産債務調書の提出義務者のほか、その年の12月31日において有する財産の価額の合計額が10億円以上である居住者を提出義務者とする。
(注)上記の改正は、令和5年分以後の財産債務調書について適用する。
(2)財産債務調書等の提出期限の見直し
 財産債務調書の提出期限について、その年の翌年の6月30日(現行:その年の翌年の3月15日)とする(国外財産調書についても同様とする。)。
(注)上記の改正は、令和5年分以後の財産債務調書又は国外財産調書について適用する。
(3)提出期限後に財産債務調書等が提出された場合の宥恕措置の見直し
 提出期限後に財産債務調書が提出された場合において、その提出が、調査があったことにより更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、その財産債務調書は提出期限内に提出されたものとみなす措置について、その提出が調査通知前にされたものである場合に限り適用することとする(国外財産調書についても同様とする。)。
(注)上記の改正は、財産債務調書又は国外財産調書が令和6年1月1日以後に提出される場合について適用する。
(4)財産債務調書等の記載事項の見直し
 財産債務調書への記載を運用上省略することができる「その他の動産の区分に該当する家庭用動産」の取得価額の基準を300万円未満(現行:100万円未満)に引き上げるほか、財産債務調書及び国外財産調書の記載事項について運用上の見直しを行う。
(注)上記の改正は、令和5年分以後の財産債務調書又は国外財産調書について適用する。
(5)その他所要の措置を講ずる。
4 地方税務手続のデジタル化
(地方税)
(1)eLTAXを通じた申告・申請に係る対象手続の拡大
 納税者等が地方公共団体に対して行う全ての申告・申請等について、eLTAXを通じて行うことができるよう所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和4年4月1日から施行し、実務的な準備が整ったものから順次対応する。
(2)eLTAXを通じた電子納付の対象税目の拡大
 地方公共団体の収納事務を行う地方税共同機構が電子的に処理する特定徴収金の対象税目を拡大し、納税者が全ての税目について、eLTAXを通じて納付を行うことができるよう所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後の納付について適用する。
(3)eLTAXを通じた電子納付に係る納付手段の拡大
① eLTAXを通じた電子納付について、スマートフォン決済アプリやクレジットカード等による納付を可能とするため、納税者が、地方税共同機構が指定する者(機構指定納付受託者)に納付の委託を行うことができることとする。
② 機構指定納付受託者が指定日までに地方税共同機構に納付したときは、当該機構指定納付受託者が委託を受けた日に遡って、納税者から納付があったものとみなす。
③ 納税者が機構指定納付受託者を通じた納付手続を行った場合であって、当該機構指定納付受託者が指定日までに地方税共同機構に納付しなかったときには、地方公共団体は、保証人に関する徴収の例により当該機構指定納付受託者から徴収する。
④ 地方公共団体が、機構指定納付受託者の指定に関し、意見を述べることができる等の手続について、所要の措置を講ずる。
⑤ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に地方税の納付を委託する場合について適用する。
5 その他
(国 税)
(1)修正申告書等の記載事項の整備
 修正申告書及び更正請求書の記載事項から、その申告前又はその請求に係る更正前の課税標準等、納付すべき税額の計算上控除する金額及び還付金の額の計算の基礎となる税額を除外するほか、所要の整備を行う。
(注)上記の改正は、令和4年12月31日以後に課税期間が終了する国税(課税期間のない国税については、同日後にその納税義務が成立する当該国税)に係る修正申告書又は更正請求書について適用する。
(2)個人番号カードを利用したe-Taxの利便性の向上
 あらかじめ行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の規定により電子情報処理組織を使用して個人番号の提供を受ける場合の本人確認の措置(国税庁長官が定めるものに限る。)が行われた場合には、個人番号カードを用いて電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により申請等を行う際に、識別符号及び暗証符号の入力並びに電子署名及び電子証明書の送信を要しないこととする。
(注1)上記の改正は、令和5年1月1日以後に行う申請等について適用する。
(注2)上記の改正と併せて、e-Taxによる手続の簡素化・合理化、GビズID(法人共通認証基盤)を活用した申請等、スマートフォンを使用して上記の本人確認の措置を行うことを可能とする等、申告利便等の更なる向上に取り組む。
(3)添付書面等記載事項の提供方法の見直し
 添付書面等記載事項の提供方法について、次の見直しを行う。
① 電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)による相続税の申告書の添付書面等記載事項(添付書面等に記載されている事項又は記載すべき事項をいう。以下同じ。)の提供方法に、光ディスク又は磁気ディスクを提出する方法を加える。
② 電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)による法人税及び地方法人税の確定申告書等の添付書面等記載事項の提供方法から、磁気テープを提出する方法を除外する。
(4)特定納付手続に使用する識別符号の通知手続のe-Taxに係る識別符号及び暗証符号の通知手続への統合
 国税の納付手続に利用できるものとして金融機関が提供するプログラムのみを使用して行う国税の納付手続(以下「特定納付手続」という。)について、特定納付手続に使用する識別符号を通知する手続等を廃止する。
(注1)上記の改正は、令和5年1月1日から施行する。
(注2)令和5年1月1日において、既に特定納付手続に使用する識別符号が通知されている者(同日において電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)に係る暗証符号が通知されている者を除く。)に対し、電子情報処理組織を使用する方法に係る暗証符号を通知するものとする。
(5)公売における入札手続の電子化
 電子情報処理組織を使用する方法により行う入札について、次の措置を講ずる。
① 入札の情報を、電子情報処理組織を使用して送信がされた時から開札の時までの間、何人も閲覧することができないこととする措置をもって、入札書に封をすることに代えることができることとする。
② 入札者から委任を受けた者の電子署名及び電子証明書を送信する場合には、当該入札者の電子署名及び電子証明書の送信を要しないこととする。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に行う公告に係る公売について適用する。
(6)通関手続の電子化に伴う整備
 通関手続の電子化に伴い、次の措置を講ずる。
① スマートフォンを使用した決済サービスにより、税関長が徴収すべき消費税等を納付しようとする場合には、その納付上限額を100万円(現行:30万円)とする。
② 税関長が徴収すべき消費税等の賦課決定等の手続について、次の措置を講ずる。
イ 賦課決定通知書等の送達に代えて、税関の当該職員に口頭で賦課決定の通知をさせることができることとする。
ロ 税関の当該職員は、賦課決定通知書等を交付した場合には、その交付を受けた者に対し、その旨を記載した書面に署名を求めることを要しないこととする。
③ その他所要の措置を講ずる。
(7)タイムスタンプの国による認定制度の創設に伴うスキャナ保存制度等の整備
 国税関係書類に係るスキャナ保存制度及び電子取引(取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいう。以下同じ。)の取引情報に係る電磁的記録の保存制度のタイムスタンプ要件について、その付与期間内に国税関係書類に係る電磁的記録又は電子取引の取引情報に係る電磁的記録の記録事項に総務大臣が認定する時刻認証業務に係るタイムスタンプ(現行:一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプ)を付すこととする。
(注1)上記の改正は、令和4年4月1日以後に保存が行われる国税関係書類又は電子取引の取引情報に係る電磁的記録について適用する。
(注2)令和4年4月1日から令和5年7月29日までの間に保存が行われる国税関係書類又は電子取引の取引情報に係る電磁的記録のタイムスタンプ要件について、従前どおり上記の記録事項に一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプを付すことを可能とする経過措置を講ずる。
(8)電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行のための宥恕措置の整備
 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、納税地等の所轄税務署長が当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについてやむを得ない事情があると認め、かつ、当該保存義務者が質問検査権に基づく当該電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする経過措置を講ずる。
(注1)上記の改正は、令和4年1月1日以後に行う電子取引の取引情報について適用する。
(注2)上記の電子取引の取引情報に係る電磁的記録の出力書面等を保存している場合における当該電磁的記録の保存に関する上記の措置の適用については、当該電磁的記録の保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意し、引き続き保存義務者から納税地等の所轄税務署長への手続を要せずその出力書面等による保存を可能とするよう、運用上、適切に配慮することとする。
(地方税)
(1)上場株式等の配当所得等に係る課税方式
① 個人住民税において、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の課税方式を所得税と一致させることとする。
② 上記①に伴い、次の措置を講ずる。
イ 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の適用要件が所得税と一致するよう規定の整備を行う。
ロ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和6年度分以後の個人住民税について適用するとともに、所要の経過措置を講ずる。
(2)個人住民税における合計所得金額に係る規定の整備
① 公的年金等控除額の算定の基礎となる公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額には、個人住民税における他の所得控除等と同様に、退職手当等を含まない合計所得金額を用いることとする。
(注)上記の改正は、令和4年度分以後の個人住民税について適用する。
② 給与所得者の扶養親族申告書及び給与支払報告書並びに公的年金等受給者の扶養親族申告書及び公的年金等支払報告書について、退職手当等を有する一定の配偶者及び扶養親族の氏名等を記載し、申告することとする等の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和5年1月1日以後に支払われる給与等及び公的年金等について適用する。
③ 確定申告書における個人住民税に係る附記事項に、退職手当等を有する一定の配偶者及び扶養親族の氏名等を追加する。
(注)上記の改正は、令和4年分以後の確定申告書を令和5年1月1日以後に提出する場合について適用する。
④ その他所要の措置を講ずる。
(3)固定資産税に係る登記所から市町村への通知事項の拡大等
① 民法等の一部を改正する法律により不動産登記法が改正され、登記簿に登記される事項が新たに追加されること等に伴い、次の措置を講ずる。
イ 登記所から市町村への登記情報に係る通知事項に所有権の登記名義人の死亡の符号等を追加する。
ロ 登記所から市町村への登記情報に係る通知事項にDV被害者等の住所に代わる事項を追加する。
ハ 固定資産課税台帳に記載されている事項について市町村が証明書の交付等をする際に、DV被害者等の登記簿上の住所が含まれている場合は、当該住所に代わる事項を記載しなければならないこととする。
(注)上記イの改正は民法等の一部を改正する法律附則第1条第3号に定める日から、上記ロ及びハの改正は同条第2号に定める日から、それぞれ適用する。
② 市町村は、固定資産課税台帳に記載されている事項について証明書の交付等をすることにより、人の生命又は身体に危害を及ぼすおそれがあると認められる場合等においては、一定の措置を講じた上で、証明書の交付等をすることができることを明確化する。
③ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記②及び③の改正は、令和4年4月1日から施行する。
(4)不動産取得税に係る登記所から都道府県への通知等
① 登記所は、市町村に対して登記情報を通知した場合は、都道府県に対しても当該登記情報を通知しなければならないこととする。
② 不動産を取得した者が、その登記の申請をした場合は、都道府県に対する不動産取得税に係る申告又は報告を不要とするほか、所要の措置を講ずる。
③ 上記②の場合においても、不動産取得税の賦課徴収に必要があると認めるときは、都道府県知事は不動産を取得した者に、不動産取得税の賦課徴収に関する事項を申告又は報告させることができることとする。
④ 都道府県が住宅及び住宅用地に係る特例措置の要件に該当すると認める場合は、不動産を取得した者から申告がなくとも当該特例措置を適用することができることとする。
(注)上記(④を除く。)の改正は令和5年4月1日から、上記④の改正は令和4年4月1日から、それぞれ適用する。
(5)更正請求書等の記載事項の整備
 更正請求書の記載事項から、その請求に係る更正前の課税標準等、納付すべき税額の計算上控除する金額及び還付金の額の計算の基礎となる税額を除外するほか、所要の整備を行う。
(注)上記の改正は、令和4年12月31日以後に終了する事業年度等から適用する。
(6)二輪車等に係る軽自動車税の申告手続の簡素化
 二輪の小型自動車、二輪の軽自動車、小型特殊自動車及び原動機付自転車について、主たる定置場又は二輪車等の所有者の変更に伴う市町村域を越える二輪車等の転出入に際し、当該二輪車等の新たな主たる定置場所在の市町村に対する軽自動車税種別割の申告又は報告に基づき、当該市町村から従前の主たる定置場所在の市町村にその旨を電子的に通知する仕組みを構築することとし、地方公共団体情報システムの標準化のための基準(税務システム標準仕様書)に盛り込むなど、所要の措置を講ずる。
(7)タイムスタンプの国による認定制度の創設に伴うスキャナ保存制度等の整備
 地方税関係書類に係るスキャナ保存制度及び地方税関係書類に記載すべき事項に係る電磁的記録の保存制度のタイムスタンプ要件について、その付与期間内に地方税関係書類に係る電磁的記録又は地方税関係書類に記載すべき事項に係る電磁的記録の記録事項に総務大臣が認定する時刻認証業務に係るタイムスタンプ(現行:一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプ)を付すこととする。
(注1)上記の改正は、令和4年4月1日以後に保存が行われる地方税関係書類又は地方税関係書類に記載すべき事項に係る電磁的記録について適用する。
(注2)令和4年4月1日から令和5年7月29日までの間に保存が行われる地方税関係書類又は地方税関係書類に記載すべき事項に係る電磁的記録のタイムスタンプ要件について、従前どおり上記の記録事項に一般財団法人日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプを付すことを可能とする経過措置を講ずる。

七 関税
1 暫定税率等の適用期限の延長等
(1)令和4年3月31日に適用期限の到来する暫定税率(412品目)及び特別緊急関税制度について、令和5年3月31日まで適用期限の延長を行う。
(2)加糖調製品(6品目)について、国内産糖への支援に充当する調整金の拡大に伴い、次のとおり暫定税率の引下げを行う。

関税率表番号
主な品名
現行
改正案
1806.10-1 ココア粉
24.4%
23.1%
1806.20-2-(1)-B ココアの調製品
24%
23%
1901.90-2-(1)-A-(b) ミルクの調製品
25.5%
24.4%
2101.11-1 コーヒーのエキス
14.5%
12.1%
2106.10-2-(1)-B たんぱく質濃縮物
13.4%
11.5%
2106.90-2-(2)-E-(a)-ハ-(ロ)-Ⅲ-(Ⅰ) 乳糖を含有する調製食料品
25.5%
24.4%

(3)たまねぎ(2品目)について、現行の暫定税率を基本税率として規定し、暫定税率を廃止する。
(4)ノルマルパラフィン(3品目)について、暫定税率を廃止する。
(5)令和4年3月31日に適用期限の到来する沖縄に係る特例措置(特定免税店制度及び選択課税制度等)について、沖縄振興特別措置法に係る令和4年度以降の法的措置を前提に、特定免税店制度は令和6年3月31日まで、選択課税制度等は令和7年3月31日まで、それぞれ適用期限の延長等を行う。
2 個別品目の関税率の見直し
 繊維製品(女子用のブラウス等(綿製))の税細分を統合・簡素化し税率を統一する。
3 海外の事業者を仕出人とする模倣品の水際取締りの強化
 改正商標法及び意匠法の施行に合わせ、海外事業者から国内の事業性のない者に宛てて郵送等で持ち込まれた模倣品(商標権等侵害物品)を関税法の「輸入してはならない貨物」として規定するとともに、事業性のない輸入者に対する罰則の除外及び侵害物品の認定手続に係る所要の規定の整備を行う。
4 その他
 貨物運送用の反復使用される容器(通い容器)に係る免税手続の簡素化措置の対象の拡大等を行う。

第三 検討事項

1 年金課税については、少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する中で、世代間及び世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年金、公的年金を補完する企業年金を始めとした各種年金制度間のバランス、貯蓄・投資商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランス等に留意するとともに、平成30年度税制改正の公的年金等控除の見直しの考え方や年金制度改革の方向性、諸外国の例も踏まえつつ、拠出・運用・給付を通じて課税のあり方を総合的に検討する。

2 デリバティブ取引に係る金融所得課税の更なる一体化については、金融所得課税のあり方を総合的に検討していく中で、意図的な租税回避行為を防止するための方策等に関するこれまでの検討の成果を踏まえ、早期に検討する。

3 小規模企業等に係る税制のあり方については、働き方の多様化を踏まえ、個人事業主、同族会社、給与所得者の課税のバランスや勤労性所得に対する課税のあり方等にも配慮しつつ、個人と法人成り企業に対する課税のバランスを図るための外国の制度も参考に、正規の簿記による青色申告の普及を含め、記帳水準の向上を図りながら、引き続き、給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討する。

4 カーボンニュートラル実現に向けたポリシーミックスについては、政府の議論も踏まえつつ、産業競争力の強化、イノベーションや投資の促進につながり、成長に資するものとなるかどうかという観点から、専門的・技術的な検討を進める。その際、現下の経済情勢や代替手段の有無、国際的な動向やわが国の事情、産業の国際競争力への影響等を踏まえ、国益の観点から、主体的かつ戦略的に検討するものとする。

5 自動車関係諸税については、「2050年カーボンニュートラル」目標の実現に積極的に貢献するものとするとともに、自動運転をはじめとする技術革新の必要性や保有から利用への変化、モビリティーの多様化を受けた利用者の広がり等の自動車を取り巻く環境変化の動向、地域公共交通へのニーズの高まりや上記の環境変化にも対応するためのインフラの維持管理や機能強化の必要性等を踏まえつつ、国・地方を通じた財源を安定的に確保していくことを前提に、受益と負担の関係も含め、その課税のあり方について、中長期的な視点に立って検討を行う。

6 原料用石油製品等に係る免税・還付措置の本則化については、引き続き検討する。

7 帳簿等の税務関係書類の電子化を推進しつつ、納税者自らによる記帳が適切に行われる環境を整備することが、申告納税制度の下における適正・公平な課税の実現のみならず、経営状態の可視化による経営力の強化、バックオフィスの生産性の向上のためにも重要であることに鑑み、記帳水準の向上、トレーサビリティの確保を含む帳簿の事後検証可能性の確立の観点から、納税者側での対応可能性や事務負担、必要なコストの低減状況も考慮しつつ、税務上の透明性確保と恩典適用とのバランスも含めて、複式簿記による記帳や優良な電子帳簿の普及・一般化のための措置、記帳義務の適正な履行を担保するためのデジタル社会にふさわしい諸制度のあり方やその工程等について更なる検討を早急に行い、結論を得る。

8 事業税における社会保険診療報酬に係る実質的非課税措置及び医療法人に対する軽減税率については、税負担の公平性を図る観点や、地域医療の確保を図る観点から、そのあり方について検討する。

9 電気供給業及びガス供給業に係る収入金額による外形標準課税については、地方税体系全体における位置付けや個々の地方公共団体の税収に与える影響等も考慮しつつ、事業環境や競争状況の変化を踏まえて、その課税のあり方について、引き続き検討する。