令和5年度税制改正大綱

 

令和4年12月16日
自由民主党
公明党

目 次

第一 令和5年度税制改正の基本的考え方等 ----------------------1
第二 令和5年度税制改正の具体的内容 -------------------------23
 一 個人所得課税--------------------------------------23
 二 資産課税------------------------------------------ 41
 三 法人課税------------------------------------------ 58
 四 消費課税------------------------------------------ 77
 五 国際課税------------------------------------------ 97
 六 納税環境整備--------------------------------------102
 七 関税--------------------------------------------- 113
第三 検討事項 -------------------------------------------116
【付記】各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)の創設等--119


第一 令和5年度税制改正の基本的考え方等

 10年前、自由民主党・公明党は政権与党の座を取り戻した。
 爾来、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を一体的に進めることにより、「もはやデフレではない」という状況を創り出した。しかし、四半世紀に及ぶデフレ構造は、わが国全体に閉塞感をもたらし、平均賃金やGDPの伸びは、主要先進国を大きく下回っているのも事実である。
 さらに、足元では、新型コロナウイルス感染症、そして、原材料価格の上昇や円安の影響による物価高等に国民は苦しんでいる。
 一方で、日本社会に希望は多く眠っている。2,000兆円に及ぶ個人金融資産、500兆円に及ぶ企業の内部留保、コロナ前には世界中から 3,000万人を超える旅行客を呼び込んだ全国津々浦々の地域の資源など、まだ力を発揮し切っていない資金や資産、そしてこれらを振り向けうる人材が豊富に存在するからである。
 このままではわが国が世界経済の中で埋没していってしまうという危機感も背景に、現在、直面している難局を契機として、こうした資金や資産に光を当て、変化に立ち向かうための新たなモメンタムを創り出す覚悟を決めなければならない。
 令和5年度税制改正においては、これまで不十分だったと言わざるを得ない分野に大胆に資金を巡らせることにより、個人や企業、そして地域に眠るポテンシャルを最大限引き出すとのメッセージを税制において具現化した。
 まず、家計の資産を貯蓄から投資へと積極的に振り向け、資産所得倍増につなげるため、NISAの抜本的拡充・恒久化を行う。
 あわせて、経営者の大胆な挑戦を可能とし、働き手に新たな活躍の場を提供する新たな産業の創出・育成を推進するため、スタートアップ・エコシステムを抜本的に強化する。さらに、企業に対して経営資源を活用した学校教育への積極的な関与も促す。これらの取組みにより、果敢にリスクテイクを行う人材や企業の成長を先導する人材、新たな領域へと主体的に踏み出す人材への投資を強化する。
 こうした「マーケット」、「産業」、「人材」への成長投資を一体的に強化するとともに、税制に限らない分配政策も適切に組み合わせることにより、一人でも多くの方が豊かさを享受できる「成長と分配の好循環」の連鎖を生み出していく。
 経済再生に向けた取組みの礎たる、社会に対する国民の信頼を高める意味においても、より公平で中立的な税制の実現に向け、個人所得課税において、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置を導入する。また、国際課税制度の見直しに係る国際合意に沿って、法人税の引下げ競争に歯止めをかけ、企業間の公平な競争環境の整備に資するグローバル・ミニマム課税を導入する。資産課税においても、数年来、税制調査会で検討を重ねてきた「資産移転の時期の選択により中立的な税制」の構築に具体的な道筋を付ける。
 人口減少・少子高齢化といった国内の構造変化や、国際経済や安全保障など外的環境の変化に的確に対応するためには、税制を含めたあらゆる制度を不断に見直すとともに、変化を受け止める「足腰」を強化することが肝要である。
 このため、引き続き、更なる税負担の公平性の確保、働き方への中立性の確保、世代間・世代内の公平の実現、経済のグローバル化・デジタル化等への対応といった観点から中長期的な税制の検討を進める。あわせて、経済を立て直し、そして財政健全化に向けて取り組む中で、経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を築いていく。
 加えて、豊かさのみならず、世界と伍する地方社会を取り戻すための「デジタル田園都市国家構想」の実現も、喫緊の課題である。過疎化や高齢化といった地方の課題を解決し、地方活性化に取り組むため、住民生活に密着した行政サービスを支える地方公共団体の税収をしっかり確保するとともに、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系を構築することが必要である。
 国民一人ひとりが新たな時代の要請に応えて新たな役割を身に付け、それがきちんと評価されていると実感できる社会を創ることは、社会の担い手の満足感と責任感の醸成につながる。これは、わが国経済が足元の難局に打ち克ち、世界的な変化の時代だからこそつかめるチャンスを逃さず、さらに飛翔するために不可欠な要素である。
 自由民主党・公明党は、わが国が一層成長できる国になるという希望を取り戻すべく、常に国民と共にあり続けたい。

 本大綱が、それに向けた税制面における羅針盤となることを願う。


 以下、令和5年度税制改正の主要項目及び今後の税制改正に当たっての基本的考え方を述べる。

1. 成長と分配の好循環の実現
(1)NISAの抜本的拡充・恒久化
 「資産所得倍増プラン」の実現に向け、「貯蓄から投資へ」の流れを加速し、中間層を中心とする層が、幅広く資本市場に参加することを通じて成長の果実を享受できる環境を整備することが極めて重要である。このような観点から、NISA制度の抜本的拡充・恒久化を行う。
 具体的には、若年期から高齢期に至るまで、長期・積立・分散投資による継続的な資産形成を行えるよう、非課税保有期間を無期限化するとともに、口座開設可能期間については期限を設けず、NISA制度を恒久的な措置とする。
 あわせて、個人のライフステージに応じて、資金に余裕があるときに短期間で集中的な投資を行うニーズにも対応できるよう、年間投資上限額を拡充する。一定の投資信託を対象とする長期・積立・分散投資の枠(「つみたて投資枠」)については、現行のつみたてNISAの水準(年間40万円)の3倍となる120万円まで拡充する。加えて、企業の成長投資につながる家計から資本市場への資金の流れを一層強力に後押しする観点から、上場株式への投資が可能な現行の一般NISAの役割を引き継ぐ「成長投資枠」を設けることとし、「つみたて投資枠」との併用を可能とする。「成長投資枠」の年間投資上限額については、現行の一般NISAの水準(年間120万円)の2倍となる240万円まで拡充する。これにより、年間投資上限額の合計は 360万円となり、英国ISA(約335万円)を上回る規模が実現する。
 一方、投資余力が大きい高所得者層に対する際限ない優遇とならないよう、年間投資上限額とは別に、一生涯にわたる非課税限度額を設定することとする。その総額については、老後等に備えた十分な資産形成を可能とする観点から、現行のつみたてNISAの水準(800万円)から倍増以上となる1,800万円とする。また、「成長投資枠」については、その内数として現行の一般NISAの水準(600万円)の2倍となる1,200万円とする。
 NISA制度は安定的な資産形成を目的とするものであることを踏まえ、「成長投資枠」について、高レバレッジ投資信託などの商品は投資対象から除外するとともに、金融機関が顧客に対して「成長投資枠」を活用した回転売買を無理に勧誘するような行為を規制するため、監督官庁において、監督指針を改正し金融機関に対する監督及びモニタリングを強化する。今後、制度の利用状況等を踏まえつつ、家計の安定的な資産形成に資するものとなっているかどうかなど、その政策効果について定期的な検証をすることが必要不可欠である。
 なお、現行の一般NISA及びつみたてNISAについては、令和5年末で買付を終了することとするが、非課税口座内にある商品については、新しい制度における非課税限度額の外枠で、現行の取扱いを継続する。
 今回のNISA制度の抜本的拡充・恒久化が、金融経済教育の充実や利用者の利便性向上の取組みなどと相まって、将来にわたり家計による継続的な投資につながるとともに、投資未経験の方や、今は投資の機会に恵まれない方については、賃上げ等を通じた所得の底上げが将来的な投資につながることも期待される。

(2)スタートアップ・エコシステムの抜本的強化
 スタートアップは、社会的課題を成長のエンジンに転換し、持続可能な経済社会を実現する可能性を秘めている。そうした中、創業数と創業規模の両面でわが国のスタートアップの成長を促していくためには、「創業」、「事業展開」、「出口」の各段階を通じたインセンティブの充実が極めて重要である。スタートアップ創出元年にふさわしく、スタートアップへの投資額の5年10倍増に向けて、スタートアップの加速や、既存企業とのオープンイノベーションの推進を通じ、わが国にスタートアップを生み育てるエコシステムを抜本的に強化する。
 「創業」については、資金不足や金銭面の損失リスクが足かせとなっている現状を踏まえると、自らリスクを取って出資する創業者の行為を金銭面から力強く後押しするとともに、特に資金の集まりにくい創業初期のプレシード・シード期におけるエンジェル投資家からのスタートアップへの出資をこれまで以上に支援することが求められる。このため、保有する株式を売却してスタートアップに再投資する場合の優遇税制を創設し、スタートアップへの資金供給を強化する。
 具体的には、保有株式の譲渡益を元手に創業者が創業した場合やエンジェル投資家がプレシード・シード期のスタートアップに再投資を行った場合に、再投資分につき株式譲渡益に課税しない制度を創設する。その上限額については、米国のQSBSに係る株式譲渡益の非課税措置の規模(約13.5億円)を上回る20億円とする。この他、プレシード・シード期のスタートアップへの投資を一層呼び込むため、エンジェル税制の要件緩和も行う。
 「事業展開」を後押しする観点からは、ストックオプション税制の権利行使期間の上限を、一定のスタートアップについて10年から15年へと延長する等の措置を講ずる。
 「出口」については、現在はIPOに偏重しているが、事業規模が未拡大の段階でIPOが行われ、その後に成長が鈍化する傾向にあるとの指摘がある。M&Aを促進することで、スタートアップが既存企業の資金や人材といった経営資源を活用できるようになり、その後の「事業展開」において、より力強い成長を実現することが期待される。
 オープンイノベーション促進税制は、スタートアップへのニューマネー出資の一定額を所得から控除するという、極めて異例の措置として創設されたものであるが、今般、スタートアップ・エコシステムの抜本的強化が最重要課題であることに鑑み、M&Aに適用できるよう、ニューマネーを伴わない既存株式の取得も対象とする。スタートアップの成長に真につながるよう、M&Aから5年以内に成長率や投資規模等の要件を満たした場合には、その後も減税メリットを継続させる仕組みとし、スタートアップの成長を強力に促すものとする。

(3)研究開発税制
 研究開発投資は、社会課題解決の推進力となるイノベーションの源泉であり、高い外部効果を有することが期待される一方、企業にとっては成果が得られるとは限らない不確実性を伴う。企業の研究開発投資の規模拡大や質の向上は、「成長と分配の好循環」を拡大していく上で、極めて重要な意味を持つ。
 米国や中国の企業が研究開発投資を大きく伸ばす中、わが国企業の研究開発投資は近年伸び悩んでおり、国際競争力の維持向上のためにも、その増加を促していかなければならない。
 研究開発税制において、投資を増加させるインセンティブを更に強化する。現行科学技術基本計画の達成状況も念頭に置きつつ、一般型の控除率カーブについて、試験研究費の増加率に応じたメリットをより高める一方、控除率の下限は引き下げ、メリハリのある見直しを行う。控除額が上限に達した企業に対してもインセンティブが機能することを期待し、一律に設定されている控除上限を変動させる新たな仕組みも導入する。
 研究開発の質を高める観点からは、既存企業とスタートアップ企業のオープンイノベーションや、研究開発を担う「人」への投資を促すことが喫緊の課題である。オープンイノベーション型において、研究開発型スタートアップ企業の定義を見直し、対象を大幅に拡大する。博士号取得者や経験を積んだ外部人材を取り入れるインセンティブとなる、新たな類型も創設する(後掲)。
 税制の対象となる試験研究の範囲についても、非連続なイノベーションへの挑戦を促すため、不断の見直しが求められる。新たなビジネスモデルの開拓につながるよう、サービス開発のための試験研究について、既存ビッグデータを活用する場合も対象とする等の見直しを行う。

(4)企業による先導的人材投資
 天然資源に乏しいわが国にとって、昔も今も変わらず「人」が資産である。企業の競争力を高め、人々の暮らしを豊かなものとするためには、「人への投資」がいかに重要であるか、今一度思いを致す必要がある。これまでの様々な政策対応に加えて、今般、税制においても、企業の成長を先導する人材を創出するための取組みを後押しする。
 企業が、経営資源を活用して学校教育に積極的に関与し、未来の社会が必要とする人材の育成に貢献することで、「人への投資」はより一層厚みを増す。大学や高等専門学校、専門学校を設置する学校法人の設立費用として企業が支出する寄附金について、個別の審査を受けなくても全額損金算入が可能となる枠組みを設け、早期から寄附金の募集を可能とし、スピード感を持って学校経営を進めるための一助とする。
 高度な研究人材への投資を促し、国際競争に資するハイレベルでオープンなイノベーションを促進する観点から、博士号取得者や、一定の経験を有する研究人材を外部から雇用することに対し、研究開発税制における優遇措置を創設する。具体的には、これらの人材の人件費を対象とする新たな類型をオープンイノベーション型に設け、一般の試験研究費よりも高い控除率と、別に計上される控除上限の適用を可能とする(前掲)。
 企業がDXを進めて行く上で不可欠ではあるものの、現状では不足しているデジタル人材の育成・確保を促すため、DX投資促進税制において、人材育成・確保等に関連する事項を要件化する等の見直しを行う。

(5)その他考慮すべき課題
 租税特別措置については、特定の政策目的を実現するために有効な政策手法となりうる一方で、税負担の歪みを生じさせる面があることから、真に必要なものに限定していくことが重要である。このため、毎年度、期限が到来するものを中心に、各措置の利用状況等を踏まえつつ、必要性や政策効果をよく見極めた上で、廃止を含めてゼロベースで見直しを行い、存置するものについては、各措置の性質等に応じ適切な適用期限を設定する。こうした取組みの実効性を高めるため、政策効果の検証の質の向上など、EBPMの徹底に努めることが必要である。また、租税特別措置の創設・拡充を行う場合は、財源を確保することやいたずらに全体の項目数を増加させないことに配意する。

2. 経済のグローバル化・デジタル化・グリーン化への対応
(1)新たな国際課税ルールへの対応
 昨年10月にOECD/G20「BEPS(注)包摂的枠組み」において、経済のデジタル化に伴う課税上の課題への解決策に関する国際的な合意がまとめられた。本国際合意は、市場国への新たな課税権の配分(「第1の柱」)とグローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)の2つの柱からなる。わが国は、BEPSプロジェクトの立上げ時から、国際課税改革に関する議論を一貫して主導してきたところであり、本国際合意の実施に向けた取組みを進めることが重要である。来年、わが国がG7議長国を務めることも踏まえ、引き続き、制度の詳細化に向けた国際的な議論に積極的に貢献するとともに、国際合意に則った法制度の整備を進める。
(注)Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転
 「第2の柱」については、法人税の引下げ競争に歯止めをかけるとともに、わが国企業の国際競争力の維持及び向上にもつながるものであり、わが国においても導入を進める。令和5年度税制改正においては、制度の詳細に係る国際的な議論の進展や、諸外国における実施に向けた動向等を踏まえ、所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule)に係る法制化を行う。その際、対象企業の事務手続きの簡素化に資する措置を導入する。適用開始時期については、諸外国の動向を踏まえることが重要であり、対象企業の準備に要する期間を確保する観点も踏まえ、令和6年4月以後に開始する対象会計年度とする。軽課税所得ルール(UTPR:Undertaxed Profits Rule)と国内ミニマム課税(QDMTT:Qualified Domestic Minimum Top-up Tax)を含め、OECDにおいて来年以降に実施細目が議論される見込みであるものについては、国際的な議論を踏まえ、令和6年度税制改正以降の法制化を検討する。
 「第2の柱」の導入における国・地方の対応については、次のとおりとする。
① IIR・UTPRは、外国に所在する法人等が稼得する所得を基に課税する仕組みであり、課税対象と地方公共団体の行政サービスとの応益性が観念できないため、地方税である法人住民税・法人事業税(特別法人事業税を含む。以下同じ。)の課税は行わないこととし、現行の税率を基に法人税による税額と地方法人税による税額が907:93の比率となるよう制度を措置する。
② QDMTTは、内国法人等が稼得する所得を基に課税する仕組みであり、応益性が観念できること等を踏まえ、国・地方の法人課税の税率(法人実効税率29.74%の内訳)の比率を前提とした仕組みとする。簡素な制度とする観点から、QDMTTにおける法人住民税・法人事業税相当分については、地方法人税に含めて国で一括して課税・徴収することとし、地方交付税により地方に配分する。これらを踏まえ、法人税による税額と地方法人税による税額が753:247の比率となるよう制度を措置する。
 外国子会社合算税制については、国際的なルールにおいても「第2の柱」と併存するものとされており、「第2の柱」の導入以降も、外国子会社を通じた租税回避を抑制するための措置としてその重要性は変わらない。他方、「第2の柱」の導入により対象企業に追加的な事務負担が生じること等を踏まえ、外国子会社合算税制について可能な範囲で見直しを行うとともに、令和6年度税制改正以降に見込まれる更なる「第2の柱」の法制化を踏まえて、必要な見直しを検討する。
 「第1の柱」については、来年前半までの多数国間条約の署名が目標とされており、引き続き国際的な議論に積極的に貢献することが重要である。今後策定される多数国間条約等の規定を基に、わが国が市場国として新たに配分される課税権に係る課税のあり方、地方公共団体に対して課税権が認められることとなる場合の課税のあり方、条約上求められる二重課税除去のあり方等について、国・地方の法人課税制度を念頭に置いて検討する。
 国際的な租税回避や脱税への対応については、引き続き、国際的な議論や租税回避の態様等を踏まえ必要な見直しを迅速に行っていく。また、コロナ後において見込まれる国境を越えたビジネスや人の往来の再拡大を踏まえ、非居住者の給与課税のあり方について、今後検討を行っていく。あわせて、国際課税制度が大きな変革を迎える中、国内法制・租税条約の整備及び着実な執行など適時に十全な対応ができるよう、国税当局の体制強化を行うものとする。

(2)プラットフォーム課税
 国境を越えた役務の提供に係る消費課税のあり方については、諸外国での制度面の対応や執行上の課題、プラットフォーム運営事業者の役割等を踏まえ、国内外の競争条件の公平性も考慮しつつ、適正な課税を確保するための方策を検討する。

(3)経済と環境の好循環の実現
 気候変動問題などの地球規模の課題が顕在化している。IPCCによれば、極端な気象現象の増加や人の健康・生態系へのリスクは、工業化以降の平均気温の上昇が1.5℃の場合において増加し、2℃においてはさらに増加すると予測されている。持続可能な開発目標(SDGs)を踏まえ、持続可能な社会を構築するためにも、パリ協定に基づき、脱炭素化に向けた取組みを加速することが重要である。わが国は、「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指すとともに、2030年度に2013年度比で温室効果ガスを46%削減することを目指し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けることとしている。
 カーボンニュートラルへの取組みは経済社会の変革を伴うものであるところ、国内外の資金を最大限活用し、社会全体の適切な移行を支援しつつ、新しい投資や技術革新を促すことを通じて、産業の競争力と日本経済の成長力につなげる。わが国が新たに設定した意欲的な削減目標を実現するためには、技術革新及びその社会実装を進めるとともに、企業・個人を含めあらゆる行動主体が脱炭素を選好する社会を構築することが必要不可欠である。グリーン社会の実現に係る利益の享受とともに必要な負担も国民全体で分かち合うといった視点が重要であることにも留意する。

(4)車体課税
 約550万人の雇用を創出するなど日本経済の「基幹産業」である自動車産業は、グローバルでの熾烈な競争環境の下で、CASEに代表される100年に一度ともいわれる大変革に直面している。具体的には、電気自動車の普及や内燃機関自動車に対する規制強化にみられる脱炭素の要請への対応、保有から利用への移行、ネットワーク接続された自動車を中心とした自動運転技術の登場といった動きが挙げられる。こうした動きは自動車産業に変質を迫ると同時に、より多様な産業を自動車産業に関連付けていくことが想定される。こうした関連産業を含めた「モビリティ産業」が社会課題の解決に貢献するとともに、引き続き日本経済を牽引する存在であり続けられるよう、「モビリティ産業」の発展に向けた青写真を描き上げ、その中で自動車産業のあるべき姿を再定義した上で、官民の総力を結集し、この大変革への対応に臨むべきである。
 税制についても、更なる電動化をはじめとするこれらの変革に向けた自動車産業の対応を後押しするとともに、「モビリティ産業」の広がりを踏まえたものとしていくため、抜本的な見直しに向けた第一歩を踏み出す必要がある。加えて、2050年のカーボンニュートラルの達成に向けて、多様な選択肢の下、将来の合成燃料の内燃機関への活用も見据え、電動車(電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車及びハイブリッド自動車)の普及と競争力強化に引き続き取り組むべきである。
 これらの観点に留意しつつ、以下の見直しを行う。
 自動車重量税のエコカー減税については、新型コロナウイルス感染症等を背景とした半導体不足等の状況を踏まえ、異例の措置として現行制度を令和5年12月末まで維持する。その上で、令和6年1月からは、2030年の次世代自動車(電動車、クリーンディーゼル車等)に関する政府目標や2035年までに乗用車の新車販売に占める電動車の割合を100%とすることを目指す政府目標と整合的な形に見直し、電動車の一層の普及促進を図る観点から、減免区分の基準となる燃費基準の達成度を段階的に引き上げた上で現行制度を維持する期間を含めて適用期限を合計3年延長する。その際、令和7年5月の引上げに際しては、激変緩和措置を講ずることとする。
 自動車税及び軽自動車税の環境性能割については、燃費性能に応じた税率区分を設定し、その区分を2年ごとに見直すことにより燃費性能がより優れた自動車の普及を促進するものである。令和4年度末は見直しの時期に当たるが、新型コロナウイルス感染症等を背景とした半導体不足等の状況を踏まえ、エコカー減税と同様に、異例の措置として、現行の税率区分を令和5年12月末まで維持する。その上で、環境性能割の税率区分を、2030年の次世代自動車に関する政府目標や2035年までの電動車の新車販売に係る政府目標と整合させ、電動車の一層の普及促進を図る観点から、税率区分の基準となる燃費基準の達成度を段階的に引き上げるよう見直す。その際、税率区分を段階的に引き上げること等を踏まえ次回の見直しは3年後とする。
 エコカー減税及び環境性能割におけるクリーンディーゼル車の取扱いについても、令和5年12月末までは現行制度を維持し、令和6年1月以降はガソリン車と同等に取り扱うこととする。
 自動車税及び軽自動車税の種別割のグリーン化特例については、環境性能割の税率区分の次回の見直し期限等も勘案し、3年延長する。
 今後、エコカー減税等の期限到来にあわせ、見直しを行うに当たっては、政策インセンティブ機能の強化、実質的な税収中立の確保、原因者負担・受益者負担としての性格、市場への配慮等の観点を踏まえることとする。
 また、次のエコカー減税等の期限到来に向けて、令和12年度燃費基準に基づく燃費基準の対象とされている電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車について、燃費値の表示に関する検討等を進めつつ、その結果も踏まえ、エコカー減税等における燃費基準の達成度に応じた評価について引き続き検討し、結論を得る。
 令和4年3月以降発覚した、一部の自動車メーカーによる燃費性能及び排出ガス性能に係る不正行為は、エコカー減税等の環境性能により優遇を行う税制措置の根幹を揺るがすものであり、社会的影響も大きいことから、税制上の再発抑止策を強化する。

(5)森林環境税・森林環境譲与税
 森林環境税及び森林環境譲与税は、森林の有する地球温暖化防止や災害防止等の公益的機能を維持・増進するために創設され、令和6年度に課税が開始される。全国の地方公共団体において、譲与税を森林整備や木材利用等に一層有効に活用し、国民の理解を深めていくことが重要であることを踏まえ、各地域における取組みの進展状況や地方公共団体の意見を考慮しつつ、森林整備をはじめとする必要な施策の推進につながる方策を検討する。

3. 地域における活力と安全・安心な暮らしの創造
(1)中小企業税制等
 地域経済の中核を担う中小企業の経営状況は、業種により違いも見られているが、エネルギー等を中心としたコストプッシュ型の物価上昇等により、収益環境の悪化が懸念されてもいる。雇用全体の7割を創出する中小企業において賃上げの機運を醸成していくためにも、その生産性の向上や経営基盤の強化を促すことが重要である。
 このため、中小企業者等に係る軽減税率の特例、中小企業投資促進税制及び中小企業経営強化税制の適用期限を2年延長する。
 あわせて、償却資産に係る固定資産税について、生産性の向上や賃上げの促進を図ることを目的とした特例措置を創設する。本特例措置は現下の経済情勢を踏まえた対応であること、固定資産税が市町村財政を支える安定した基幹税であることから、2年間の時限的な措置とする。

(2)酒税の特例措置の見直し
 酒類市場は、大規模事業者による酒類が市場全体の大宗を占めるという特殊な環境にある中で、地域で多様な酒類を製造している意欲的な中小事業者を存続させていくことは、多様化する国内外の消費者ニーズに対応することで酒類業の健全な発達を図り、ひいては酒税を保全する観点からも重要である。
 このような点を踏まえ、地域性などを踏まえた多様な酒類の製造などに積極的に取組み、酒類業の健全な発達に寄与する中小事業者に対して支援を行う観点から、新たな酒税の軽減措置を講ずる。あわせて、現行の酒税の特例措置は廃止し、新たな特例措置への移行に伴う激変緩和のための経過措置を講ずる。

(3)災害による被害へのきめ細かな対応
 災害が発生した際の被災者や事業者に対しては、これまでも、平成29年度税制改正において災害への税制上の対応の規定の常設化を行う等の対応を講じてきたところである。しかし、大規模な災害の発生に備え、著しい被害に対する不安を解消する観点から、一層の税制上の対応を講じることが重要である。
① 個人所得課税における災害に係る損失の繰越控除制度の見直し
 被害が極めて甚大で広範な地域の生活基盤が著しく損なわれ、被災前のように生活の糧を得るまでに時間を要するような災害の被災者や被災事業者に特に配慮する観点から、特定非常災害法上の特定非常災害による損失に係る雑損失及び純損失の繰越期間について、損失の程度や記帳水準に応じ、例外的に3年から5年に延長する措置を講ずる。
② 相続時精算課税の下で受贈した土地・建物の取扱い
 相続時精算課税の下で受贈した財産の価額は、相続税の課税価格の計算上、贈与時点の時価で固定されるが、土地・建物について、災害により一定以上の被害を受けた場合には、例外的に、相続税の課税価格を再計算することとする。

(4)IRに関する税制
 IRに関する税制については、IR事業の国際競争力及び長期の安定性・継続性を確保する観点も踏まえ、令和3年度税制改正大綱に示された方向に沿って、法制化を行う。

(5)屋外分煙施設等の整備の促進
 望まない受動喫煙対策の推進や今後の地方たばこ税の継続的かつ安定的な確保の観点から、地方たばこ税の活用を含め、地方公共団体が駅前・商店街などの場所における屋外分煙施設等のより一層の整備を図るよう引き続き促すこととする。

4. 経済社会の構造変化も踏まえた公平で中立的な税制への見直し
(1)個人所得課税のあり方
① 極めて高い水準の所得に対する負担の適正化
 NISAの抜本的拡充・恒久化やスタートアップ・エコシステムの抜本的強化とあわせて、税負担の公平性の観点から、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置を導入する。
 具体的には、株式の譲渡所得のみならず、土地建物の譲渡所得や給与・事業所得、その他の各種所得を合算した所得金額(基準所得金額)から特別控除額(3.3億円)を控除した金額に、22.5%の税率を乗じた金額が納めるべき所得税の金額を超過した場合に、その超過した差額を追加的に申告納税することとする。基準所得金額の計算上、スタートアップに再投資する場合の優遇税制の適用を受けた株式譲渡益やNISA制度の非課税所得は対象から除外することとし、また、政策的な観点から設けられている特別控除を控除した後の所得金額とする。
 本措置は周知等に要する期間も勘案し、令和7年分以降の所得税から適用する。

② 諸控除の見直し
 個人所得課税については、わが国の経済社会の構造変化を踏まえ、配偶者控除等の見直し、給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除の一体的な見直しなどの取組みを進めてきている。多様で柔軟な働き方が一層拡大する中、働く意欲を阻害せず、公平で、働き方に中立的な税制を構築していくことが重要である。今後も、これまでの税制改正大綱に示された方針や、令和2年分所得から適用となった改正の影響等も踏まえ、各種控除のあり方等を検討する。

③ 私的年金等に関する公平な税制のあり方
 働き方やライフコースが多様化する中で、雇用の流動性や経済成長との整合性なども踏まえ、税制が老後の生活や資産形成を左右しない仕組みとしていくことが、豊かな老後生活に向けた安定的な資産形成の助けとなると考えられる。
 例えば、退職金や私的年金の給付に係る課税について、給付が一時金払いか年金払いかによって税制上の取扱いが異なり、給付のあり方に中立的ではないこと、退職所得課税について、勤続年数が20年を超えると一年あたりの控除額が増加する仕組みが転職などの増加に対応していないといった指摘もある。
 こうした観点から、令和3年度税制改正大綱では、私的年金等の拠出・給付段階の課税について、諸外国の例も参考に給与・退職一時金・年金給付の間の税負担のバランスを踏まえた姿とする必要性について指摘した。
 私的年金や退職給付のあり方は、個人の生活設計にも密接に関係することなどを十分に踏まえながら、拠出・運用・給付の各段階を通じた適正かつ公平な税負担を確保できる包括的な見直しが求められる。個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入可能年齢の70歳への引上げや拠出限度額の引上げについて、令和6年の公的年金の財政検証にあわせて、所要の法制上の措置を講じることや結論を得るとされていることも踏まえつつ、老後に係る税制について、例えば各種私的年金の共通の非課税拠出枠や従業員それぞれに私的年金等を管理する個人退職年金勘定を設けるといった議論も参考にしながら、あるべき方向性や全体像の共有を深めながら、具体的な案の検討を進めていく。

④ 記帳水準の向上等
 記帳水準の向上は、適正な税務申告の確保のみならず、経営状態を可視化し、経営の対応力を向上させる上でも重要である。加えて、売上や資産・負債等の状況が適切に記録されていれば、中小・小規模事業者による迅速な給付金の受給や融資につながるなど、日々の適正な記帳の重要性が改めて浮き彫りになっている。小規模事業者の半数以上が帳簿を手書きで作成しており、また、個人事業者の場合、正規の簿記の原則に従った記帳を行っている者は約3割にとどまっているのが現状である。また、個人の青色申告における簡易簿記は複式簿記に移行するための準備的な段階としての役割も期待されているところであるが、簡易簿記での申告者の3分の1超が10年以上簡易簿記による記帳を続けている状況にある。
 近年、普及しつつある会計ソフトを活用することにより、小規模事業者であっても大きな手間や費用をかけずに正規の簿記を行うことが可能な環境が整ってきていることも踏まえ、複式簿記による記帳をさらに普及・一般化させる方向で、納税者側での対応可能性も十分踏まえつつ、所得税の青色申告制度の見直しを含めた個人事業者の記帳水準向上等に向けた検討を行う。

(2)資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築
 高齢化等に伴い、高齢世代に資産が偏在するとともに、いわゆる「老老相続」が増加するなど、若年世代への資産移転が進みにくい状況にある。高齢世代が保有する資産がより早いタイミングで若年世代に移転することとなれば、その有効活用を通じた経済の活性化が期待される。
 一方、相続税・贈与税は、税制が資産の再分配機能を果たす上で重要な役割を担っている。高齢世代の資産が、適切な負担を伴うことなく世代を超えて引き継がれることとなれば、格差の固定化につながりかねない。
 わが国の贈与税は、相続税の累進負担の回避を防止する観点から、相続税よりも高い税率構造となっている。実際、相続税がかからない者や、相続税がかかる者であってもその多くの者にとっては、贈与税の税率の方が高いため、生前にまとまった財産を贈与しにくい。他方、相続税がかかる者の中でも相続財産の多いごく一部の者にとっては、財産を生前に分割して贈与する場合、相続税よりも低い税率が適用される。
 このため、資産の再分配機能の確保を図りつつ、資産の早期の世代間移転を促進する観点から、生前贈与でも相続でもニーズに即した資産移転が行われるよう、諸外国の制度も参考にしつつ、資産移転の時期の選択により中立的な税制を構築していく必要がある。
① 相続時精算課税制度の使い勝手向上
 相続時精算課税制度は、平成15年度に次世代への早期の資産移転と有効活用を通じた経済社会の活性化の観点から導入されたものである。選択後は生前贈与か相続かによって税負担は変わらず、資産移転の時期に中立的な仕組みとなっており、暦年課税との選択制は維持しつつ、同制度の使い勝手を向上させる。具体的には、申告等に係る事務負担を軽減する等の観点から、相続時精算課税においても、暦年課税と同水準の基礎控除を創設する。これにより、生前にまとまった財産を贈与しにくかった者にとっても、相続時精算課税を活用することで、次世代に資産を移転しやすい税制となる。
② 暦年課税における相続前贈与の加算
 現行、相続開始前3年以内に受けた贈与は相続財産に加算することとなっている。暦年課税においても、資産移転の時期に対する中立性を高めていく観点から、相続財産に加算する期間を7年に延長する。その際、過去に受けた贈与の記録・管理に係る事務負担を軽減する観点から、延長した期間(4年間)に受けた贈与のうち一定額については、相続財産に加算しないこととする。
③ 贈与税の非課税措置
 経済対策として現在講じられている贈与税の非課税措置は、資産の移転に対して何らの税負担も求めない制度となっており、格差の固定化防止等の観点も踏まえながら、不断の見直しを行っていく必要がある。
 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置については、近年利用件数が減少しており、また、資産を多く保有する者による利用が多い等の状況にある。節税的な利用につながらないよう所要の見直しを行った上で、適用期限を3年延長するが、次の期限到来時には、利用件数や利用実態等を踏まえ、制度のあり方について改めて検討する。
 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置についても、節税的な利用につながらないよう所要の見直しを行った上で、適用期限を2年延長する。令和3年度税制改正大綱で「制度の廃止も含め、改めて検討」とされた後も、引き続き利用件数が低迷している等の状況にあり、次の適用期限の到来時には、利用件数や利用実態等を踏まえ、制度の廃止も含め、改めて検討する。

(3)外形標準課税のあり方
 法人事業税の外形標準課税は、平成16年度に資本金1億円超の大法人を対象に導入され、平成27、28年度税制改正において、より広く負担を分かち合い、企業の稼ぐ力を高める法人税改革の一環として、所得割の税率引下げとあわせて、段階的に拡大されてきた。
 外形標準課税の対象法人数は、資本金1億円以下への減資を中心とした要因により、導入時に比べて約3分の2まで減少している。また、持株会社化・分社化の際に、外形標準課税の対象範囲が実質的に縮小する事例も生じている。こうした事例の中には、損失処理等に充てるためではなく、財務会計上、単に資本金を資本剰余金へ項目間で振り替える減資を行っている事例も存在する。また、子会社の資本金を1億円以下に設定しつつ、親会社の信用力を背景に大規模な事業活動を行っている企業グループの事例もある。
 こうした減資や組織再編による対象法人数の減少や対象範囲の縮小は、上記の法人税改革の趣旨や、地方税収の安定化・税負担の公平性といった制度導入の趣旨を損なうおそれがあり、外形標準課税の対象から外れている実質的に大規模な法人を対象に、制度的な見直しを検討する。
 その上で、今後の外形標準課税の適用対象法人のあり方については、地域経済・企業経営への影響も踏まえながら引き続き慎重に検討を行う。

5.円滑・適正な納税のための環境整備
(1)適格請求書等保存方式の円滑な実施について
 消費税の複数税率制度の下において適正な課税を確保する観点から、令和5年10月に施行される消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)については、インボイス発行事業者の登録申請件数が令和4年11月末現在で約200万者となっていることも踏まえ、引き続き、円滑な制度移行に向けて政府・与党が一体となって事業者に対する支援を一層きめ細やかに行っていく必要がある。
 このため、事業者に対するプッシュ型の周知・広報や説明会を更に充実させることに加え、事業者団体等とも連携しながら、専門家派遣等も通じ、デジタル化を含む経営相談等のための体制を強化するといった取組みを着実に進めていく。また、IT導入補助金を充実し、デジタルインボイスの普及など中小事業者の取引やバックオフィス業務のデジタル化に対する支援を通じた生産性向上を後押ししていく。
 さらに、インボイス発行事業者となる免税事業者に対しては、持続化補助金によりこれまで以上に手厚い支援を行うとともに、制度移行に伴って小規模事業者が不当な取扱いを受けないよう、独禁法等に基づく書面調査の実施や下請Gメン、相談窓口での対応等の取組みを引き続き実施し、適切に対処していく。
 以上のような取組みに加え、円滑な制度移行のために、更に次のような新たな税制上の措置を講ずる。
① インボイス発行事業者となる免税事業者の負担軽減
 これまで免税事業者であった者がインボイス発行事業者になった場合の納税額を売上税額の2割に軽減する3年間の負担軽減措置を講ずることにより、納税額の激変緩和を図る。この措置により、簡易課税制度の適用を受ける場合に比べ、更に事務負担が軽減される。
②事業者の事務負担軽減
 インボイス制度の定着までの実務に配慮し、一定規模以下の事業者の行う少額の取引につき、帳簿のみで仕入税額控除を可能とする6年間の事務負担軽減策を講ずる。加えて、振込手数料相当額を値引きとして処理する場合等の事務負担を軽減する観点から、少額の返還インボイスについて交付義務を免除する。
 これらの取組みを着実に進めつつ、制度への移行に当たり混乱が生じないよう万全の準備を進める観点から、改めて政府内の関係府省庁で連携して必要な体制を構築し、予算による支援措置や負担軽減措置を丁寧に周知する。こうした取組みも含め、引き続き、事業者が抱える問題意識や課題を、業界や地域ごとに丁寧に把握しながらきめ細かく対処していく。加えて、令和5年3月31日の登録申請の期限について柔軟な対応を行う。その上で、令和5年10月のインボイス制度移行後においても弾力的な対応に努めるとともに、新たな課題が生じた場合には、必要に応じて柔軟に対応策を講じていく。

(2)電子帳簿等保存制度の見直し
 国税関係帳簿書類の電子化を一層進めるため、事業者等における経理の電子化の実施状況や対応可能性、適正な課税の確保の観点での必要性等を考慮しつつ、必要な見直しを行う。
 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度については、システム対応が間に合わなかったことにつき相当の理由がある事業者等に対する新たな猶予措置を講ずるとともに、他者から受領した電子データとの同一性が確保された電磁的記録の保存を推進する観点から、検索機能の確保の要件について緩和措置を講ずる。
 スキャナ保存制度については、制度の利用促進を図る観点から、更なる要件の緩和措置を講ずる。
 国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度については、令和3年度税制改正において、会計ソフト等の活用による記帳水準の向上に資するため、事後検証可能性の高い電子帳簿については、優良な電子帳簿として過少申告加算税の軽減措置を設けることにより普及を促進することとしつつ、その他の電子帳簿についても、正規の簿記の原則に従うなど一定の要件を満たす場合には電子帳簿として電子データのまま保存することを可能としたところである。今般、信頼性の高い電子帳簿への更なる移行を目指す観点から、過少申告加算税の軽減措置の対象となる優良な電子帳簿について、その範囲を合理化・明確化することにより、一層の普及・一般化を図る。
 地方税においても、国税と同様、地方たばこ税及び軽油引取税に係る書類等の電子的保存の要件等について、所要の措置を講ずる。

(3)税務手続のデジタル化・キャッシュレス化による利便性の向上
 税務手続のデジタル化・キャッシュレス化により、納税者の利便性を向上させ適正な申告・納付を促すため、申告手続の簡素化や申告・納付手続の一体化等の見直しを講ずる。
 さらに、第三者から提出された報告(法定調書等)の電磁的記録を納税者等の申告・納付情報に活用する措置等について引き続き検討していく。
 地方税においても更なる税務手続のデジタル化に向け、納税通知書や各種証明書などの地方税関係通知について、eLTAX及びマイナポータルの更改・改修スケジュールや納税者等の利便性及び地方公共団体の事務負担等を考慮しつつ、電子的に送付する仕組みを検討する。また、令和5年4月から地方税統一QRコード等を活用した地方税の納付が開始されることを踏まえ、地方税以外の地方公金に係るeLTAX経由での納付について必要な検討を進める。
 デジタル化やキャッシュレス化に対応した税制のあり方や納付方法の多様化について引き続き検討していく。

(4)課税・徴収関係の整備・適正化
 仮装・隠蔽の積極的な行為を伴わないため重加算税等の対象とならず、税に対する公平感を大きく損なうような事例が生じている中、申告義務を認識していなかったとは言い難い無申告について所要の措置を講ずる。
 さらに、税務調査に対する非協力や申告後の仮装・隠蔽、納税者の不正への第三者による加担行為への対応について中期的に検討していく。
 また、適正・公平な課税・徴収を確保するため、滞納処分に関する調査に係る質問検査権の整備等の所要の措置を講ずるほか、外国人旅行者向け免税制度における免税購入物品が国内で横流しされる事例に対応するため、即時徴収の対象者を見直す。あわせて、外国人旅行者の利便性や免税店の事務負担等を踏まえつつ、引き続き効果的な不正対策を検討していく。

(5)マンションの相続税評価について
 マンションについては、市場での売買価格と通達に基づく相続税評価額とが大きく乖離しているケースが見られる。現状を放置すれば、マンションの相続税評価額が個別に判断されることもあり、納税者の予見可能性を確保する必要もある。このため、相続税におけるマンションの評価方法については、相続税法の時価主義の下、市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する。

6.防衛力強化に係る財源確保のための税制措置
 わが国の防衛力の抜本的な強化を行うに当たり、歳出・歳入両面から安定的な財源を確保する。税制部分については、令和9年度に向けて複数年かけて段階的に実施することとし、令和9年度において、1兆円強を確保する。具体的には、法人税、所得税及びたばこ税について、以下の措置を講ずる。

① 法人税
 法人税額に対し、税率4~4.5%の新たな付加税を課す。中小法人に配慮する観点から、課税標準となる法人税額から500万円を控除することとする。

② 所得税
 所得税額に対し、当分の間、税率1%の新たな付加税を課す。現下の家計を取り巻く状況に配慮し、復興特別所得税の税率を1%引き下げるとともに、課税期間を延長する。延長期間は、復興事業の着実な実施に影響を与えないよう、復興財源の総額を確実に確保するために必要な長さとする。
 廃炉、特定復興再生拠点区域の整備、特定復興再生拠点区域外への帰還・居住に向けた具体的な取組みや福島国際研究教育機構の構築など息の長い取組みをしっかりと支援できるよう、東日本大震災からの復旧・復興に要する財源については、引き続き、責任を持って確実に確保することとする。

③ たばこ税
 3円/1本相当の引上げを、国産葉たばこ農家への影響に十分配慮しつつ、予見可能性を確保した上で、段階的に実施する。

  以上の措置の施行時期は、令和6年以降の適切な時期とする。

第二 令和5年度税制改正の具体的内容

一 個人所得課税
1 金融・証券税制
(国税・地方税)
〔延長・拡充〕
(1)非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(NISA)について、次の措置を講ずる。
① 非課税累積投資契約に係る非課税措置(つみたてNISA)の勘定設定期間を令和5年12月31日までとする。
② 特定非課税累積投資契約に係る非課税措置について、次の措置に改組する。
イ 居住者等が、金融商品取引業者等の営業所に開設した非課税口座に特定累積投資勘定(仮称)を設けた日以後に支払を受けるべき特定累積投資勘定(仮称)に係る株式投資信託(その受益権が金融商品取引所に上場等がされているもの又はその設定に係る受益権の募集が一定の公募により行われたものに限る。以下「公募等株式投資信託」という。)の配当等(当該金融商品取引業者等がその配当等の支払事務の取扱いをするものに限る。)については、所得税及び個人住民税を課さない。
ロ 居住者等が、金融商品取引業者等の営業所に開設した非課税口座に特定累積投資勘定(仮称)を設けた日以後にその特定累積投資勘定(仮称)に係る公募等株式投資信託の受益権の譲渡等をした場合には、その譲渡等による譲渡所得等については、所得税及び個人住民税を課さない。また、当該公募等株式投資信託の受益権の譲渡等による損失金額は、所得税及び個人住民税に関する法令の規定の適用上、ないものとみなす。
ハ 居住者等が、金融商品取引業者等の営業所に開設した非課税口座に特定非課税管理勘定(仮称)を設けた日以後に支払を受けるべき特定非課税管理勘定(仮称)に係る上場株式等の配当等(当該金融商品取引業者等がその配当等の支払事務の取扱いをするものに限る。)については、所得税及び個人住民税を課さない。
ニ 居住者等が、金融商品取引業者等の営業所に開設した非課税口座に特定非課税管理勘定(仮称)を設けた日以後にその特定非課税管理勘定(仮称)に係る上場株式等の譲渡等をした場合には、その譲渡等による譲渡所得等については、所得税及び個人住民税を課さない。また、当該上場株式等の譲渡等による損失金額は、所得税及び個人住民税に関する法令の規定の適用上、ないものとみなす。
ホ 特定非課税累積投資契約(仮称)とは、上記イからニまでの非課税の適用を受けるために居住者等が金融商品取引業者等と締結した公募等株式投資信託の受益権の定期かつ継続的な方法による買付け等に関する契約で、その契約書において、次に掲げる事項が定められているものをいう。
(イ)公募等株式投資信託の受益権の管理は、特定累積投資勘定(仮称)(当該契約に基づき非課税口座で管理される公募等株式投資信託の受益権の記録を他の取引に関する記録と区分して行うための勘定で、令和6年以後の各年に設けられるものをいう。)において行うこと。
(ロ)当該特定累積投資勘定(仮称)は、原則として各年の1月1日において設けられること。
(ハ)当該特定累積投資勘定(仮称)には、現行の累積投資勘定に受け入れることができる公募等株式投資信託の受益権のうち、次に掲げる公募等株式投資信託の受益権のみを受け入れること。
a その居住者等の非課税口座に特定累積投資勘定(仮称)が設けられた日から同日の属する年の12月31日までの間に当該金融商品取引業者等への買付けの委託等により取得した公募等株式投資信託の受益権で、当該期間内の取得対価の額の合計額が120万円を超えないもの(公募等株式投資信託の受益権を当該特定累積投資勘定(仮称)に受け入れた場合に、当該合計額、同年において特定非課税管理勘定(仮称)に受け入れている買付けの委託等により取得した特定上場株式等の取得対価の額の合計額及び特定累積投資勘定基準額(仮称)(特定累積投資勘定(仮称)及び特定非課税管理勘定(仮称)に前年に受け入れている上場株式等の購入の代価の額等をいう。以下同じ。)の合計額が1,800万円を超えることとなるときにおける当該公募等株式投資信託の受益権を除く。)
b その特定累積投資勘定(仮称)に係る公募等株式投資信託の受益権の分割等により取得する公募等株式投資信託の受益権
(ニ)上場株式等の管理は、特定非課税管理勘定(仮称)(当該契約に基づき非課税口座で管理される上場株式等の記録を他の取引に関する記録と区分して行うための勘定で、特定累積投資勘定(仮称)と同時に設けられるものをいう。)において行うこと。
(ホ)当該特定非課税管理勘定(仮称)には、次に掲げる上場株式等のみを受け入れること。
a その居住者等の非課税口座に特定非課税管理勘定(仮称)が設けられた日から同日の属する年の12月31日までの間に当該金融商品取引業者等への買付けの委託等により取得した特定上場株式等で、当該期間内の取得対価の額の合計額が240万円を超えないもの(特定上場株式等を当該特定非課税管理勘定(仮称)に受け入れた場合において、次に掲げる場合に該当することとなるときにおける当該特定上場株式等を除く。)
(a)当該合計額及び特定非課税管理勘定基準額(仮称)(特定非課税管理勘定(仮称)に前年に受け入れている上場株式等の購入の代価の額等をいう。)の合計額が1,200万円を超える場合
(b)当該期間内の取得対価の額の合計額、その年において特定累積投資勘定(仮称)に受け入れている買付けの委託等により取得した公募等株式投資信託の受益権の取得対価の額の合計額及び特定累積投資勘定基準額(仮称)の合計額が1,800万円を超える場合
(注)上記の「特定上場株式等」とは、その上場株式等を上場している取引所から整理銘柄として指定されているものその他の内閣総理大臣が財務大臣と協議して定めるもの及びその投資信託約款等において一定のデリバティブ取引に係る権利に対する投資として運用を行うこととされていることその他の内閣総理大臣が財務大臣と協議して定める事項が定められているものに該当しない上場株式等をいい、公募等株式投資信託にあっては、その投資信託約款において、信託契約期間を定めないこと又は20年以上の信託契約期間が定められていること及び収益の分配は1月以下の期間ごとに行わないこととされており、かつ、信託の計算期間ごとに行うこととされていることが定められているものに限る。
b その特定非課税管理勘定(仮称)に係る上場株式等の分割等により取得する上場株式等
(ヘ)当該金融商品取引業者等は、現行の非課税累積投資契約に係る非課税措置の基準経過日における住所等の確認と同様に確認を行うこと。
(ト)その他一定の事項
ヘ 金融商品取引業者等から税務署長への非課税口座内上場株式等の購入の代価の額等その他の事項の一定のクラウドを利用した提供及び税務署長から金融商品取引業者等への非課税口座内上場株式等の購入の代価の額等の合計額その他の事項の提供について定めるほか、所要の措置を講ずる。
(2)未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(ジュニアNISA)について、非課税管理勘定が設けられた日の属する年の1月1日から5年を経過する日の翌日に設けられる継続管理勘定がある場合には、原則として当該非課税管理勘定に係る上場株式等は当該継続管理勘定に移管されることとする。この場合において、同日に当該上場株式等を当該継続管理勘定に移管しないときは、当該継続管理勘定を設けた未成年者口座が開設されている金融商品取引業者等の営業所の長に対し、その旨その他の事項を記載した書類の提出(当該書類の提出に代えて行う電磁的方法による当該書類に記載すべき事項を記録した電磁的記録の提供を含む。)をしなければならないこととする。
(国 税)
〔拡充等〕
(3)特定中小会社が設立の際に発行した株式の取得に要した金額の控除等の特例の創設
① 中小企業等経営強化法施行規則の改正を前提に、その設立の日の属する年において次に掲げる要件を満たす株式会社により設立の際に発行される株式(①において「特定株式」という。)を払込みにより取得をした居住者等(当該株式会社の発起人に該当すること及び当該株式会社に自らが営んでい
た事業の全部を承継させた個人等に該当しないことその他の要件を満たすものに限る。)は、その取得をした年分の一般株式等に係る譲渡所得等の金額又は上場株式等に係る譲渡所得等の金額からその特定株式の取得に要した金額の合計額(当該一般株式等に係る譲渡所得等の金額及び当該上場株式等に係る譲渡所得等の金額の合計額を限度とする。)を控除する特例を創設し、特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等及び特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例と選択して適用できることとする。この場合において、その取得をした特定株式の取得価額は、当該控除をした金額のうち20億円を超える部分の金額をその取得に要した金額から控除した金額とする。
イ その設立の日以後の期間が1年未満の中小企業者であること。
ロ 販売費及び一般管理費の出資金額に対する割合が100分の30を超えることその他の要件を満たすこと。
ハ 特定の株主グループの有する株式の総数が発行済株式の総数の100分の99を超える会社でないこと。
ニ 金融商品取引所に上場されている株式等の発行者である会社でないこと。
ホ 発行済株式の総数の2分の1を超える数の株式が一の大規模法人及び当該大規模法人と特殊の関係のある法人の所有に属している会社又は発行済株式の総数の3分の2以上が大規模法人及び当該大規模法人と特殊の関係のある法人の所有に属している会社でないこと。
ヘ 風俗営業又は性風俗関連特殊営業に該当する事業を行う会社でないこと。
② 特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等の適用対象となる株式の範囲に、上記①の特定株式を加える。
③ その他所要の措置を講ずる。
(4)エンジェル税制について、次の措置を講ずる。
① 特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等及び特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等について、次の措置を講ずる。
イ 中小企業等経営強化法施行規則の改正を前提に、居住者等が、特定株式(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を払込みにより取得をした場合には、その取得をした特定株式の取得価額から控除する特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等の適用を受けた金額から、その特定株式の取得に要した金額の合計額とその取得をした年分の一般株式等に係る譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る譲渡所得等の金額の合計額(20億円を超える場合には、20億円)とのいずれか低い金額を控除するものとする。
(イ)中小企業等経営強化法に規定する特定新規中小企業者に該当する株式会社により発行される株式又は内国法人のうち設立の日以後10年を経過していない中小企業者に該当するものその他一定の要件を満たすものにより発行される株式で投資事業有限責任組合契約に従って取得若しくは電子募集取扱業務により取得をされるものに該当すること。
(ロ)当該株式を発行した株式会社(その設立の日以後の期間が5年未満のものに限る。)が、設立後の各事業年度の営業損益金額が零未満であり、かつ、当該各事業年度の売上高が零であること又は前事業年度の試験研究費その他中小企業等経営強化法施行令第3条第1項に規定する費用の合計額の出資金額に対する割合が100分の30を超えることその他の要件を満たすものであること。
ロ 適用対象となる特定新規中小企業者(上記イ(ロ)の要件を満たす株式会社に限る。)の特定の株主グループの有する株式の総数が発行済株式の総数の6分の5を超える会社でないこととの要件については、特定の株主グループの有する株式の総数が発行済株式の総数の20分の19を超える会社でないこととする。
ハ 適用対象となる特定新規中小企業者に該当する株式会社に係る確認手続において、次に掲げる書類については、都道府県知事へ提出する申請書への添付を要しないこととする。
(イ)株式の発行を決議した株主総会の議事録の写し、取締役の決定があったことを証する書面又は取締役会の議事録の写し
(ロ)個人が取得した株式の引受けの申込み又はその総数の引受けを行う契約を証する書面
② 特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例について、次の措置を講ずる。
イ 適用対象となる特定新規中小企業者(上記①イ(ロ)の要件を満たす株式会社に限る。)の特定の株主グループの有する株式の総数が発行済株式の総数の6分の5を超える会社でないこととの要件については、特定の株主グループの有する株式の総数が発行済株式の総数の20分の19を超える会社でないこととする。
ロ 適用対象となる特定新規中小企業者に該当する株式会社に係る確認手続において、次に掲げる書類については、都道府県知事へ提出する申請書への添付を要しないこととする。
(イ)設立の日における貸借対照表
(ロ)税理士が署名した法人税の確定申告書に添付された別表一の写し及び事業等の概況に関する書類の写し
(ハ)株式の発行を決議した株主総会の議事録の写し、取締役の決定があったことを証する書面又は取締役会の議事録の写し
(ニ)個人が取得した株式の引受けの申込み又はその総数の引受けを行う契約を証する書面
③ その他所要の措置を講ずる。
(5)特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等(ストックオプション税制)について、適用対象となる新株予約権に係る契約の要件のうち当該新株予約権の行使はその付与決議の日後10年を経過する日までの間に行うこととの要件を、一定の株式会社が付与する新株予約権については、当該新株予約権の行使はその付与決議の日後15年を経過する日までの間に行うこととするほか、所要の措置を講ずる。
(注)上記の「一定の株式会社」とは、設立の日以後の期間が5年未満の株式会社で、金融商品取引所に上場されている株式等の発行者である会社以外の会社であることその他の要件を満たすものをいう。
(6)資金決済に関する法律の改正に伴い、次の措置を講ずる。
① 特定信託受益権の譲渡をした者がその譲渡の対価の支払を受ける場合において、その対価が金銭以外のものであるときは、その者は次に掲げる告知を要しないこととする。
イ 株式等の譲渡の対価の受領者等の告知
ロ 信託受益権の譲渡の対価の受領者の告知
② 特定信託受益権の譲渡を受けた者等がその譲渡の対価の支払等をする場合において、その対価が金銭以外のものであるときは、その者は次に掲げる調書の提出を要しないこととする。
イ 株式等の譲渡の対価等の支払調書
ロ 信託受益権の譲渡の対価の支払調書
ハ 名義人受領の株式等の譲渡の対価の調書
③ 電子決済手段等取引業者は、顧客の依頼に基づき、当該電子決済手段等取引業者の営業所等に設定された電子決済手段の管理に係る勘定(以下「国内電子決済手段勘定」という。)から国外において電子決済手段等取引業を営む者の営業所等に設定された電子決済手段の管理に係る勘定(以下「国外電子決済手段勘定」という。)に電子決済手段の移転をした場合又は国内電子決済手段勘定に国外電子決済手段勘定から電子決済手段の移転を受けた場合には、これらの移転に係る電子決済手段の価額が100万円以下であるときを除き、当該電子決済手段等取引業者は、その移転に係る電子決済手段の種類、価額その他の事項を記載した調書を、当該電子決済手段等取引業者の営業所等の所在地の所轄税務署長に提出しなければならないこととする。
(注)上記の制度は、令和6年1月1日以後に行われる電子決済手段の移転について適用する。
④ 特定信託受益権を所得税法上の有価証券の範囲から除外することとするほ か、所要の措置を講ずる。
(地方税)
〔拡充等〕
(3)特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等の適用対象の拡充
① 中小企業等経営強化法施行規則の改正を前提に、その設立の日の属する年において次に掲げる要件を満たす株式会社により設立の際に発行される株式(①において「特定株式」という。)を払込みにより取得をした個人住民税の所得割の納税義務者(当該株式会社の発起人に該当すること及び当該株式会社に自らが営んでいた事業の全部を承継させた個人等に該当しないことその他の要件を満たすものに限る。)が、その払込みにより取得をした特定株式の譲渡をしたことにより生じた特定株式に係る譲渡損失について、特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等の適用対象に加える。
イ その設立の日以後の期間が1年未満の中小企業者であること。
ロ 販売費及び一般管理費の出資金額に対する割合が100分の30を超えることその他の要件を満たすこと。
ハ 特定の株主グループの有する株式の総数が発行済株式の総数の100分の99を超える会社でないこと。
ニ 金融商品取引所に上場されている株式等の発行者である会社でないこと。
ホ 発行済株式の総数の2分の1を超える数の株式が一の大規模法人及び当該大規模法人と特殊の関係のある法人の所有に属している会社又は発行済株式の総数の3分の2以上が大規模法人及び当該大規模法人と特殊の関係のある法人の所有に属している会社でないこと。
ヘ 風俗営業又は性風俗関連特殊営業に該当する事業を行う会社でないこと。
② 特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等について、次の措置を講ずる。
イ 中小企業等経営強化法施行規則の改正を前提に、適用対象となる株式の範囲に、特定株式(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を加える。
(イ)中小企業等経営強化法に規定する特定新規中小企業者に該当する株式会社により発行される株式又は内国法人のうち設立の日以後10年を経過していない中小企業者に該当するものその他一定の要件を満たすものにより発行される株式で投資事業有限責任組合契約に従って取得若しくは電子募集取扱業務により取得をされるものに該当すること。
(ロ)当該株式を発行した株式会社(その設立の日以後の期間が5年未満のものに限る。)が、設立後の各事業年度の営業損益金額が零未満であり、かつ、当該各事業年度の売上高が零であること又は前事業年度の試験研究費その他中小企業等経営強化法施行令第3条第1項に規定する費用の合計額の出資金額に対する割合が100分の30を超えることその他の要件を満たすものであること。
ロ 適用対象となる特定新規中小企業者(上記イ(ロ)の要件を満たす株式会社に限る。)の特定の株主グループの有する株式の総数が発行済株式の総数の6分の5を超える会社でないこととの要件については、特定の株主グループの有する株式の総数が発行済株式の総数の20分の19を超える会社でないこととする。
③ その他所要の措置を講ずる。
(4)個人住民税について、所得税における〔拡充等〕(5)及び(6)の見直しに伴い、所要の措置を講ずる。
2 極めて高い水準の所得に対する負担の適正化
(国 税)
(1)その年分の基準所得金額から3億3,000万円を控除した金額に22.5%の税率を乗じた金額がその年分の基準所得税額を超える場合には、その超える金額に相当する所得税を課する措置を講ずる。
(注1)上記の「基準所得金額」とは、その年分の所得税について申告不要制度を適用しないで計算した合計所得金額(その年分の所得税について適用する特別控除額を控除した後の金額)をいい、「基準所得税額」とは、その年分の基準所得金額に係る所得税の額(分配時調整外国税相当額控除及び外国税額控除を適用しない場合の所得税の額とし、附帯税及び上記(1)により課す所得税の額を除く。)をいう。
(注2)上記(注1)の「申告不要制度」とは、次に掲げる特例をいう。
① 確定申告を要しない配当所得等の特例
② 確定申告を要しない上場株式等の譲渡による所得の特例
(注3)上記(注1)の合計所得金額には、源泉分離課税の対象となる所得金額を含まないこととする(NISA制度及び特定中小会社が設立の際に発行した株式の取得に要した金額の控除等の特例において非課税とされる金額も含まない。)。
(2)上記(1)の適用がある場合の所得税の確定申告書の記載事項を定めるほか、所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和7年分以後の所得税について適用する。
3 土地・住宅税制
(国 税)
〔延長・拡充等〕
(1)短期所有土地の譲渡等をした場合の土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例について、適用停止措置の期限を3年延長する。
(2)漁港漁場整備法の改正を前提に、同法の漁港施設に関する事業に必要な土地等について、引き続き収用交換等の場合の譲渡所得の5,000万円特別控除等に係る簡易証明制度の対象とする(法人税についても同様とする。)。
(3)空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例について、次の措置を講じた上、その適用期限を4年延長する。
① 本特例の適用対象となる相続人が相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋(当該相続の時からその譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないものに限る。)の一定の譲渡又は当該被相続人居住用家屋とともにする当該相続若しくは遺贈により取得をした被相続人居住用家屋の敷地等(当該相続の時からその譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないものに限る。)の一定の譲渡をした場合において、当該被相続人居住用家屋が当該譲渡の時から当該譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に次に掲げる場合に該当することとなったときは、本特例を適用することができることとする。
イ 耐震基準に適合することとなった場合
ロ その全部の取壊し若しくは除却がされ、又はその全部が滅失をした場合
② 相続又は遺贈による被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人の数が3人以上である場合における特別控除額を2,000万円とする。
③ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に行う被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等の譲渡について適用する。
(4)低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の100万円特別控除について、次の措置を講じた上、その適用期限を3年延長する。
① 適用対象となる低未利用土地等の譲渡後の利用要件に係る用途から、いわゆるコインパーキングを除外する。
② 次に掲げる区域内にある低未利用土地等を譲渡する場合における低未利用土地等の譲渡対価に係る要件を800万円以下(現行:500万円以下)に引き上げる。
イ 市街化区域又は区域区分に関する都市計画が定められていない都市計画区域(用途地域が定められている区域に限る。)
ロ 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する所有者不明土地対策計画を作成した市町村の区域
(注)上記の改正は、令和5年1月1日以後に行う低未利用土地等の譲渡について適用する。
〔縮減等〕
(1)優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する。
① 適用対象から特定の民間再開発事業の用に供するための土地等の譲渡を除外する。
② 開発許可を受けて住宅建設の用に供される一団の宅地の造成を行う者に対する土地等の譲渡に係る開発許可について、次に掲げる区域内において行われる開発行為に係るものに限定する。
イ 市街化区域
ロ 市街化調整区域
ハ 区域区分に関する都市計画が定められていない都市計画区域(用途地域が定められている区域に限る。)
(2)既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例について、買換資産である中高層の耐火建築物の建築に係る事業の範囲から、上記(1)①の特定の民間再開発事業を除外する。
(地方税)
〔延長・拡充等〕
(1)短期所有土地の譲渡等をした場合の土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例について、適用停止措置の期限を3年延長する。
(2)個人住民税について、所得税における〔延長・拡充等〕(2)から(4)までの見直しに伴い、所要の措置を講ずる。
〔縮減等〕
(1)優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する。
① 適用対象から特定の民間再開発事業の用に供するための土地等の譲渡を除外する。
② 開発許可を受けて住宅建設の用に供される一団の宅地の造成を行う者に対する土地等の譲渡に係る開発許可について、次に掲げる区域内において行われる開発行為に係るものに限定する。
イ 市街化区域
ロ 市街化調整区域
ハ 区域区分に関する都市計画が定められていない都市計画区域(用途地域が定められている区域に限る。)
(2)個人住民税について、所得税における〔縮減等〕(2)の見直しに伴い、所要の措置を講ずる。
4 租税特別措置等
(国 税)
〔延長・拡充〕
(1)肉用牛の売却による農業所得の課税の特例の適用期限を3年延長する(法人税についても同様とする。)。
(2)児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業による金銭の貸付けにつき、当該貸付けに係る債務の免除を受ける場合には、当該免除により受ける経済的な利益の価額については、その事業内容の見直し後も引き続き所得税を課さないこととする。
(3)ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業の住宅支援資金貸付けによる金銭の貸付けにつき、当該貸付けに係る債務の免除を受ける場合には、当該免除により受ける経済的な利益の価額については、引き続き所得税を課さないこととする。
(4)子育て世帯等臨時特別支援事業の「支援給付金」として給付される給付金(既に給付されたものを含む。)について、次の措置を講ずる。
① 所得税を課さない。
② 国税の滞納処分による差押えをしない。
(地方税)
〔延長・拡充〕
(1)肉用牛の売却による農業所得の課税の特例の適用期限を3年延長する。
(2)個人住民税について、所得税における〔延長・拡充〕(2)から(4)までの見直しに伴い、所要の措置を講ずる。
5 その他
(国 税)
(1)事業所得者等の有する棚卸資産や事業用資産等につき特定非常災害の指定を受けた災害により生じた損失(以下「特定被災事業用資産の損失」という。)について、次に掲げるものの繰越期間を5年(現行:3年)に延長する。
① 青色申告者でその有する事業用資産等(土地等を除く。)のうちに特定被災事業用資産の損失額の占める割合が10%以上であるものは、被災事業用資産の損失による純損失を含むその年分の純損失の総額
② 青色申告者以外の者でその有する事業用資産等(土地等を除く。)のうちに特定被災事業用資産の損失額の占める割合が10%以上であるものは、その年に発生した被災事業用資産の損失による純損失と変動所得に係る損失による純損失との合計額
③ 上記①及び②以外の者は、特定被災事業用資産の損失による純損失の金額
(2)個人の有する住宅や家財等につき特定非常災害の指定を受けた災害により生じた損失について、雑損控除を適用してその年分の総所得金額等から控除しても控除しきれない損失額についての繰越期間を5年(現行:3年)に延長する。
(3)給与所得者の特定支出控除の特例について、次の措置を講ずる。
① その支出が、本特例の対象となる研修費又は資格取得費に該当するものである場合において、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練に係るものであるときは、現行の給与等の支払者によるその支出が特定支出に該当する旨の証明の書類の確定申告書等への添付に代えて、キャリアコンサルタントによるその支出が特定支出に該当する旨の証明の書類の確定申告書等への添付ができることとする。
② その他所要の措置を講ずる。
(4)国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予について、次の措置を講ずる。
① 納税猶予の適用を受けようとする者が質権の設定がされていないこと等の要件を満たす非上場株式を担保として提供する場合において、その者が当該非上場株式を担保として提供することを約する書類その他の書類を税務署長に提出するときは、その株券を発行せずにその担保の提供ができることとする。
② 納税猶予の適用を受けようとする者は、その有する質権の設定がされていないこと等の要件を満たす持分会社の社員の持分について、その者が当該持分会社の社員の持分を担保として提供することを約する書類その他の書類を税務署長に提出する場合には、その担保の提供ができることとする。
③ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記について、贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予についても同様の措置を講ずる。
(5)個人事業者がその事業を開始し、又は廃止した場合に行う届出書等の提出を一括で行えるよう、次の見直しを行う。
① 個人事業の開業・廃業等届出書について、その提出期限をその事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限とするとともに、事務所等を移転する場合のその提出先を納税地の所轄税務署長とするほか、記載事項の簡素化を行う。
② 青色申告書による申告をやめる旨の届出書について、その提出期限をその申告をやめようとする年分の確定申告期限とするとともに、記載事項の簡素化を行う。
③ 次に掲げる届出書等について、記載事項の簡素化を行う。
イ 納期の特例に関する承認の申請書
ロ 青色申告承認申請書及び青色専従者給与に関する届出書
ハ 給与等の支払をする事務所の開設等の届出書
(注)上記①の改正は令和8年1月1日以後の事業の開始等について、上記②の改正は令和8年分以後の所得税について、上記③イの改正は令和9年1月分以後の承認申請について、上記③ロの改正は令和9年分以後の所得税について、上記③ハの改正は令和9年1月1日以後の事務所の開設等について、それぞれ適用する。
(6)給与所得者の扶養控除等申告書について、その申告書に記載すべき事項がその年の前年の申告内容と異動がない場合には、その記載すべき事項の記載に代えて、その異動がない旨の記載によることができることとする。
(注)上記の改正は、令和7年1月1日以後に支払を受けるべき給与等について提出する給与所得者の扶養控除等申告書について適用する。
(7)給与所得者の保険料控除申告書について、次に掲げる事項の記載を要しないこととする。
① 申告者が生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合のこれらの者の申告者との続柄
② 生命保険料控除の対象となる支払保険料等に係る保険金等の受取人の申告者との続柄
(注)上記の改正は、令和6年10月1日以後に提出する給与所得者の保険料控除申告書について適用する。
(8)給与等の支払をする者が、その支払を受ける者に対し、給与所得の源泉徴収票又は給与支払明細書の交付に代えてその源泉徴収票又は給与支払明細書に記載すべき事項を電磁的方法により提供するための要件であるその支払を受ける者の承諾手続に、その支払を受ける者に対し期限を定めてその承諾を求め、その支払を受ける者がその期限までにこれを拒否する旨の回答をしない場合には、その支払をする者はその承諾を得たものとみなす方法を加える。
(9)源泉徴収票の提出方法について、次の見直しを行う。
① 給与等の支払をする者が、市区町村の長に給与支払報告書を提出した場合には、その報告書に記載された給与等について税務署長に給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなす。
② 上記①の見直しに伴い、給与所得の源泉徴収票の税務署長への提出を要しないこととされる給与等の範囲を、給与支払報告書の市区町村の長への提出を要しないこととされる給与等の範囲と同様に、年の中途において退職した居住者に対するその年中の給与等の支払金額が30万円以下である場合のその給与等とするほか、これに伴う所要の措置を講ずる。
③ 公的年金等の源泉徴収票の提出方法についても同様の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和9年1月1日以後に提出すべき給与所得及び公的年金等の源泉徴収票について適用する。
(10)支払調書等の提出義務者のうち電子情報処理組織(e-Tax等)又は光ディスク等による提出義務制度の対象とならない者が、支払調書等の書面による提出に代えてその支払調書等に記載すべき事項を記録した光ディスク等の提出をするための要件であるその者が受けるべき所轄税務署長の承認を不要とするほか、これに伴う所要の措置を講ずる。
(11)金融サービスの提供に関する法律の改正を前提に、金融経済教育推進機構(仮称)を公共法人等(所得税法別表第一)とする。
(12)原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律の改正を前提に、使用済燃料再処理機構の業務範囲の見直し等が行われた後も、同機構を引き続き公共法人等(所得税法別表第一)とする。
(13)福島国際研究教育機構の設立に伴い、同機構を公共法人等(所得税法別表第一)とする。
(14)高等学校等就学支援金の支給に関する法律の高等学校等就学支援金について、所要の法令改正を前提に、引き続き次の措置を講ずる。
① 所得税を課さない。
② 国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(15)母子及び父子並びに寡婦福祉法の高等職業訓練促進給付金について、所要の法令改正を前提に、引き続き次の措置を講ずる。
① 所得税を課さない。
② 国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(16)介護保険法の介護給付について、所要の法令改正を前提に、引き続き次の措置を講ずるほか、所要の措置を講ずる。
① 所得税を課さない。
② 国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(17)生活困窮者自立支援法の生活困窮者住居確保給付金について、所要の法令改正を前提に、引き続き次の措置を講ずる。
① 所得税を課さない。
② 国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(18)戦没者等の妻に対する特別給付金支給法の一部改正により引き続き支給されることとなる特別給付金について、次の措置を講ずる。
① 所得税を課さない。
② 国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(19)健康保険法の出産育児一時金等について、所要の法令改正を前提に、引き続き次の措置を講ずる。
① 所得税を課さない。
② 国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(20)駐留軍関係離職者等臨時措置法、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法及び労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則等の一部改正により引き続き支給されることとなる労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の職業転換給付金(事業主に対して支給されるものを除く。)について、次の措置を講ずる。
① 所得税を課さない。
② 国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(地方税)
〈個人住民税〉
(1)事業所得者等の有する棚卸資産や事業用資産等につき特定非常災害の指定を受けた災害により生じた損失(以下「特定被災事業用資産の損失」という。)について、次に掲げるものの繰越期間を5年(現行:3年)に延長する(個人事業税についても同様とする。)。
① 青色申告者でその有する事業用資産等(土地等を除く。)のうちに特定被災事業用資産の損失額の占める割合が10%以上であるものは、被災事業用資産の損失による純損失を含むその年分の純損失の総額
② 青色申告者以外の者でその有する事業用資産等(土地等を除く。)のうちに特定被災事業用資産の損失額の占める割合が10%以上であるものは、その年に発生した被災事業用資産の損失による純損失と変動所得に係る損失による純損失との合計額
③ 上記①及び②以外の者は、特定被災事業用資産の損失による純損失の金額
(2)個人の有する住宅や家財等につき特定非常災害の指定を受けた災害により生じた損失について、雑損控除を適用してその年分の総所得金額等から控除しても控除しきれない損失額についての繰越期間を5年(現行:3年)に延長する。
(3)個人住民税における給与所得等に係る特別徴収税額の納期の特例に関する承認の申請書について、記載事項の簡素化を行う。
(注)上記の改正は、令和9年1月分以後の承認申請について適用する。
(4)給与所得者の扶養親族等申告書について、その申告書に記載すべき事項がその年の前年の申告内容と異動がない場合には、その記載すべき事項の記載に代えて、その異動がない旨の記載によることができることとする。
(注)上記の改正は、令和7年1月1日以後に支払を受けるべき給与等について提出する給与所得者の扶養親族等申告書について適用する。
(5)給与支払報告書等の提出義務者のうちeLTAX又は光ディスク等による提出義務制度の対象とならない者が、給与支払報告書等の書面による提出に代えてその給与支払報告書等に記載すべき事項を記録した光ディスク等の提出をするための要件であるその者が受けるべき市町村長の承認を不要とするほか、これに伴う所要の措置を講ずる。
(6)個人住民税について、所得税における(3)及び(14)から(20)までの見直しに伴い、所要の措置を講ずる。
(7)国税における諸制度の取扱い等を踏まえ、その他所要の措置を講ずる。
〈国民健康保険税〉
(8)国民健康保険税の後期高齢者支援金等課税額に係る課税限度額を22万円(現行:20万円)に引き上げる。
(9)国民健康保険税の減額の対象となる所得の基準について、次のとおりとする。
① 5割軽減の対象となる世帯の軽減判定所得の算定において被保険者等の数に乗ずべき金額を29万円(現行:28.5万円)に引き上げる。
② 2割軽減の対象となる世帯の軽減判定所得の算定において被保険者等の数に乗ずべき金額を53.5万円(現行:52万円)に引き上げる。

二 資産課税
1 資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築
(1)相続時精算課税制度について、次の見直しを行う。
① 相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとするとともに、特定贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等をされる当該特定贈与者から贈与により取得した財産の価額は、上記の控除をした後の残額とする。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用する。
② 相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した一定の土地又は建物が当該贈与の日から当該特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に災害によって一定の被害を受けた場合には、当該相続税の課税価格への加算等の基礎となる当該土地又は建物の価額は、当該贈与の時における価額から当該価額のうち当該災害によって被害を受けた部分に相当する額を控除した残額とする。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合について適用する。
③ その他所要の措置を講ずる。
(2)相続開始前に贈与があった場合の相続税の課税価格への加算期間等について、次の見直しを行う。
① 相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額(当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算することとする。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用する。
② その他所要の整備を行う。
2 教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
(1)直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、次の措置を講じた上、その適用期限を3年延長する。
① 信託等があった日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合において、当該贈与者の死亡に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは、受贈者が23歳未満である場合等であっても、その死亡の日における非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額を、当該受贈者が当該贈与者から相続等により取得したものとみなす。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る相続税について適用する。
② 受贈者が30歳に達した場合等において、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額に贈与税が課されるときは、一般税率を適用することとする。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税について適用する。
③ 本措置の対象となる教育資金の範囲に、都道府県知事等から国家戦略特別区域内に所在する場合の外国の保育士資格を有する者の人員配置基準等の一定の基準を満たす旨の証明書の交付を受けた認可外保育施設に支払われる保育料等を加える。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に支払われる教育資金について適用する。
④ その他所要の措置を講ずる。
(2)直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、受贈者が50歳に達した場合等において、非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額に贈与税が課されるときは、一般税率を適用することとした上、その適用期限を2年延長する。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税について適用する。
3 租税特別措置等
(国 税)
〔延長・拡充等〕
〈相続税・贈与税〉
(1)福島国際研究教育機構の設立に伴い、相続財産を贈与した場合の相続税の非課税制度の対象となる法人の範囲に同機構を加える。
(2)医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等について、良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の改正を前提に、次の措置を講じた上、その適用期限を3年3月延長する。
① 相続税・贈与税の納税猶予制度等における移行期限を、移行計画の認定の日から起算して5年(現行:3年)を超えない範囲内のものとする。
② その他所要の措置を講ずる。
〈登録免許税〉
(3)土地の売買による所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を3年延長する。
(4)住宅用家屋の所有権の保存登記に対する登録免許税の税率の軽減措置等の適用を受ける場合に登記の申請書に添付することとされている住宅用家屋証明書に係る市区町村の証明事務について、その証明の申請の際に住宅用家屋の審査に係る一定の書類の添付があった場合には、証明事務の一部を省略することができることとする。
(5)農用地利用集積等促進計画に基づき農用地等を取得した場合の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を3年延長する。
(6)信用保証協会が受ける抵当権の設定登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(7)農業信用基金協会等が受ける抵当権の設定登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(8)日本酒造組合中央会が受ける抵当権の設定登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(9)農業競争力強化支援法の認定事業再編計画に基づき行う登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(10)医療機関の開設者が再編計画に基づき不動産を取得した場合の所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を3年延長する。
(11)認定民間都市再生事業計画(当該計画に係る認定が国家戦略特別区域法の規定により国土交通大臣の認定があったものとみなされるものである場合における当該計画を含む。(12)において同じ。)に基づき都市再生緊急整備地域内に特定民間都市再生事業の用に供する建築物を建築した場合の所有権の保存登記に対する登録免許税の税率の軽減措置について、対象となる民間都市再生事業計画のうち特定都市再生緊急整備地域以外の都市再生緊急整備地域における民間都市再生事業計画の認定要件を次のとおり見直した上、その適用期限を3年延長する。
① 都市再生特別措置法施行令の改正を前提に、その都市再生事業の施行される土地の区域の面積要件を0.5ha以上(現行:原則1ha以上)に引き下げる。
② 地方の魅力向上又は地域の活性化等に資する機能を整備することとの要件を加える。
(12)認定民間都市再生事業計画に基づき特定都市再生緊急整備地域内に特定民間都市再生事業の用に供する建築物を建築した場合の所有権の保存登記に対する登録免許税の税率の軽減措置について、特定都市再生緊急整備地域内において行われる都市再生事業の要件のうちその都市再生事業の施行される土地の区域内に整備される建築物の延べ面積要件を75,000㎡以上(現行:50,000㎡以上)に引き上げた上、その適用期限を3年延長する。
(13)居住誘導区域等権利設定等促進計画に基づき不動産を取得した場合の所有権等の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を3年延長する。
(14)特定目的会社が資産流動化計画に基づき特定不動産を取得した場合等の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(15)特例事業者等が不動産特定共同事業契約により不動産を取得した場合の所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(16)鉄道事業者が取得した特定の鉄道施設に係る土地等の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置の適用期限を8年延長する。
(地方税)
〔新設〕
〈固定資産税・都市計画税〉
(1)労働者協同組合連合会が所有し、かつ、使用する事務所及び倉庫に係る固定資産税及び都市計画税の非課税措置を講ずる。
(2)中小企業等経営強化法に規定する市町村の導入促進基本計画に適合し、かつ、労働生産性を年平均3%以上向上させるものとして認定を受けた中小事業者等の先端設備等導入計画に記載された一定の機械・装置等であって、生産・販売活動等の用に直接供されるものに係る固定資産税について、課税標準を最初の3年間価格の2分の1とする特例措置を令和7年3月31日まで講ずる。ただし、中小事業者等が国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、同計画の認定の申請日の属する事業年度(令和5年4月1日以後に開始する事業年度に限る。)又は当該申請日の属する事業年度の翌事業年度の雇用者給与等支給額の増加割合を、当該申請日の属する事業年度の直前の事業年度における雇用者給与等支給額の実績と比較して1.5%以上とすることを同計画に位置付けるとともに、これを労働者に表明したことを証明する書類を同計画に添付して市町村の認定を受けた場合には、課税標準を次のとおりとする。
① 令和5年4月1日から令和6年3月31日までの間に取得されるもの 最初の5年間価格の3分の1
② 令和6年4月1日から令和7年3月31日までの間に取得されるもの 最初の4年間価格の3分の1
(注1)上記の「中小事業者等」とは、次の法人又は個人をいう。ただし、発行済株式の総数の2分の1以上が同一の大規模法人により所有されている法人等を除く。
イ 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人
ロ 資本又は出資を有しない法人の場合、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人
ハ 常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人
(注2)上記の「一定の機械・装置等」とは、次の全てを満たすものとする。
イ 年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれる投資計画に記載されたもの
ロ 次に掲げる資産の区分に応じ、1台又は1基の取得価額がそれぞれ次に定める額以上であるもの
(イ)機械・装置 160万円
(ロ)測定工具及び検査工具 30万円
(ハ)器具・備品 30万円
(ニ)建物附属設備(家屋と一体となって効用を果たすものを除く。) 60万円
(3)長寿命化に資する大規模修繕工事を行ったマンションに係る固定資産税について、次のとおり税額を減額する措置を講ずる。
① マンションの管理の適正化の推進に関する法律に基づき、マンションの管理に関する計画が、マンション管理適正化推進計画を作成した都道府県等の長により認定(修繕積立金の額の引上げにより認定基準に適合した場合に限る。)され、又は都道府県等からマンションの管理の適正化を図るために必要な助言若しくは指導を受けて長期修繕計画を適切に見直した場合において、当該認定又は助言若しくは指導に係るマンションのうち一定のものについて、令和5年4月1日から令和7年3月31日までの間に長寿命化に資する一定の大規模修繕工事を行い、その旨を当該マンションの区分所有者が市町村に申告した場合に限り、大規模修繕工事が完了した年の翌年度分の当該マンションの家屋に係る固定資産税について、当該マンションの家屋に係る固定資産税額(1戸当たり100㎡相当分までに限る。)の3分の1を参酌して6分の1以上2分の1以下の範囲内において市町村の条例で定める割合に相当する金額を減額する。
② 減額を受けようとする対象マンションの区分所有者は、当該マンションにおいて行われた大規模修繕工事が上記長寿命化に資する一定の大規模修繕工事であること等につき、マンション管理士等が発行した証明書等を添付して、大規模修繕工事後3月以内に市町村に申告しなければならないこととする。
(4)地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の改正を前提に、路線定期運行を行う一般乗合旅客自動車運送事業者が、道路運送高度化事業により、一定の電気自動車を導入するための充電設備等の償却資産を取得した場合で、当該事業者が地域公共交通計画で市町村が位置づけた路線のうち電気自動車が導入される営業所において運行する路線を継続して運行することが道路運送高度化実施計画で担保された場合に限り、当該充電設備等及びその用に供する土地(当該充電設備等による充電に要する土地を含む。)に係る固定資産税及び都市計画税について、課税標準を最初の5年間価格の3分の1とする特例措置を令和10年3月31日まで講ずる。
〔延長・拡充等〕
〈固定資産税・都市計画税〉
(1)政府の補助を受けて取得した一定の燃料電池自動車用水素充塡設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
① 取得価額が5億円以上の燃料電池自動車用水素充塡設備について、課税標準を最初の3年間価格の2分の1(現行:4分の3)とする。
② 取得価額が1億5,000万円以上5億円未満の燃料電池自動車用水素充塡設備について、課税標準を最初の3年間価格の6分の5(現行:4分の3)とする。
(2)令和5年度分及び令和6年度分の平成28年熊本地震による被災住宅用地等に係る固定資産税及び都市計画税については、被災住宅用地等に係る固定資産税及び都市計画税の特例措置を引き続き適用できることとする。
(3)平成28年熊本地震により滅失・損壊した家屋に代わるものとして一定の被災地域内で令和5年4月1日から令和7年3月31日までの間に取得等をした家屋に係る固定資産税及び都市計画税については、被災代替家屋に係る固定資産税及び都市計画税の減額措置を引き続き適用できることとする。
(4)平成30年7月豪雨により滅失・損壊した償却資産に代わるものとして一定の被災地域内で令和5年4月1日から令和7年3月31日までの間に取得等をした償却資産に係る固定資産税については、被災代替償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置を引き続き適用できることとする。
(5)令和5年度分及び令和6年度分の平成30年7月豪雨による被災住宅用地等に係る固定資産税及び都市計画税については、被災住宅用地等に係る固定資産税及び都市計画税の特例措置を引き続き適用できることとする。
(6)平成30年7月豪雨により滅失・損壊した家屋に代わるものとして一定の被災地域内で令和5年4月1日から令和7年3月31日までの間に取得等をした 家屋に係る固定資産税及び都市計画税については、被災代替家屋に係る固定資産税及び都市計画税の減額措置を引き続き適用できることとする。
(7)令和5年度分及び令和6年度分の令和2年7月豪雨による被災住宅用地等に係る固定資産税及び都市計画税については、被災住宅用地等に係る固定資産税及び都市計画税の特例措置を引き続き適用できることとする。
(8)地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の改正を前提に、同法に規定する鉄道事業再構築事業を実施する路線に係る鉄道事業者が政府の補助を受けて取得した一定の家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置について、再構築協議会(仮称)を通じて合意が得られた鉄道事業再構築事業を対象に加える等の措置を講じた上、その適用期限を1年延長する。
(9)鉄軌道の市街化区域内のトンネルに係る固定資産税の非課税措置の適用対象区域に箕面市を加える。
(10)都市再生特別措置法に規定する認定事業者が同法に規定する特定都市再生緊急整備地域以外の都市再生緊急整備地域において、一定の認定事業により取得した公共施設及び一定の都市利便施設の用に供する家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する。
① 都市再生特別措置法施行令の改正を前提に、特別区以外の事業区域面積の要件を0.5ha以上(現行:原則1ha以上)に引き下げる。
② 対象となる民間都市再生事業計画の認定要件のうち複合用途要件について都市の競争力強化に資する一定の機能を加える。
(11)鉄軌道事業者が首都直下地震・南海トラフ地震に備えた鉄道施設等の耐震補強工事によって新たに取得した一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
① 政府の補助を受けて実施するラーメン橋台の耐震補強工事によって新たに取得した一定の償却資産を対象に加える。
② 上記①以外の償却資産を対象から除外する。
(12)地震防災対策の用に供する償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
(13)公益社団法人又は公益財団法人が文化財保護法に規定する重要無形文化財に指定された伝統芸能の公演のための専用施設の用に供する土地及び家屋に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(14)農業協同組合等が農業近代化資金等の貸付けを受けて取得した農林漁業者等の共同利用に供する機械及び装置に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(15)所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法に規定する地域福利増進事業を実施する者が当該事業の用に供する一定の土地及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(16)都市緑地法に規定する緑地保全・緑化推進法人が同法に規定する認定計画に基づき設置した市民緑地の用に供する土地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(17)都市再開発法に規定する市街地再開発事業の施行に伴い従前の権利者が取得した一定の家屋に係る固定資産税の減額措置の適用期限を2年延長する。
(18)水防法に規定する浸水被害軽減地区の指定を受けた土地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
(19)自転車活用推進法に規定する市町村自転車活用推進計画に基づくシェアサイクル事業のうち、都市再生特別措置法に規定する立地適正化計画の都市機能誘導区域内において新たに取得した一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(20)密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律に規定する防災街区整備事業の施行に伴い従前の権利者が取得した一定の家屋に係る固定資産税の減額措置の適用期限を2年延長する。
(21)鉄軌道事業者が政府の補助を受けて取得した車両の運行の安全性の向上に資する一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(22)鉄軌道事業者が取得した新造車両で高齢者、障害者等の移動等の円滑化に資する一定の構造を有する車両に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(23)都市鉄道等利便増進法に規定する都市鉄道利便増進事業により取得した鉄道施設に対して、次の措置を講ずる。
① 鉄軌道事業者又は一定の第三セクター若しくは独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が取得した駅施設の用に供する一定の家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
② 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が整備した線路設備等のうち市街化区域のトンネルに係る固定資産税の非課税措置の適用期限を2年延長する。
(24)鉄道事業者等がその事業の用に供する鉄道施設等を高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に規定する公共交通移動等円滑化基準に適合させるために実施する一定の鉄道駅等の改良工事により取得した一定の家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(25)整備新幹線の開業に伴い旅客鉄道株式会社等より譲渡を受けた並行在来線の鉄道施設の用に供する一定の固定資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を8年延長する。
(26)国際戦略港湾及び一定の要件を満たす国際拠点港湾において、港湾運営会社が、国の無利子資金の貸付け又は補助を受けて取得した一定の荷さばき施設等に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(27)特定貨物輸入拠点港湾において、特定貨物取扱埠頭の整備を図るため、港湾管理者が作成する特定利用推進計画の一定の事業を実施する者が、政府の補助を受けて取得した荷さばき施設等に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(28)水防法に規定する避難確保・浸水防止計画に基づき、地下街等の所有者又は管理者が取得する一定の浸水防止用設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
(29)建築物の耐震改修の促進に関する法律により耐震診断を義務付けられ、その結果が所管行政庁に報告された既存家屋(その報告に関する命令又は必要な耐震改修に関する指示の対象となったもの及び住宅を除く。)について、政府の補助を受けて、耐震基準に適合させるよう改修工事を行い、その旨を市町村に申告した場合に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を3年延長する。
(30)南海トラフ地震防災対策推進地域、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域及び首都直下地震緊急対策区域において、国の無利子資金の貸付けを受けて改良された港湾法に規定する特別特定技術基準対象施設である護岸、岸壁及び物揚場に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
〈不動産取得税〉
(31)都市再生特別措置法に規定する認定事業者が同法に規定する特定都市再生緊急整備地域以外の都市再生緊急整備地域において、認定事業により取得した不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する。
① 都市再生特別措置法施行令の改正を前提に、特別区以外の事業区域面積の要件を0.5ha以上(現行:原則1ha以上)に引き下げる。
② 対象となる民間都市再生事業計画の認定要件のうち複合用途要件について都市の競争力強化に資する一定の機能を追加する。
(32)不動産特定共同事業法に規定する特例事業者等が不動産特定共同事業契約に基づき取得した一定の不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置について、対象となる不動産に保育所を加えるとともに、対象となる不動産から劇場を除外した上、その適用期限を2年延長する。
(33)預金保険法に規定する協定銀行が協定の定めにより内閣総理大臣のあっせんを受けて行う破綻金融機関等の事業の譲受け又は預金保険機構の委託を受けて行う資産の買取りにより取得した不動産に係る不動産取得税の非課税措置の適用期限を2年延長する。
(34)保険業法に規定する協定銀行が協定の定めにより保険契約者保護機構の委託を受けて行う破綻保険会社等の資産の買取りにより取得した不動産に係る不動産取得税の非課税措置の適用期限を2年延長する。
(35)公益社団法人又は公益財団法人が取得した文化財保護法に規定する重要無形文化財に指定された伝統芸能の公演のための専用施設の用に供する不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(36)農地中間管理事業の推進に関する法律の規定による公告があった農用地利用集積等促進計画等に基づき取得した農用地区域内にある土地に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(37)農業協同組合等が農業近代化資金等の貸付けを受けて取得した農林漁業経営の近代化又は合理化のための共同利用施設に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(38)都市再生特別措置法に規定する認定事業者が同法に規定する特定都市再生緊急整備地域において、認定事業により取得した不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
(39)都市再生特別措置法の規定による公告があった居住誘導区域等権利設定等促進計画に基づく移転により取得した不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(40)宅地建物取引業者が取得した既存住宅及び当該既存住宅の用に供する土地について、一定の増改築等を行った上、取得の日から2年以内に耐震基準適合要件を満たすもの等として個人に販売し、自己の居住の用に供された場合に係る不動産取得税の減額措置の適用期限を2年延長する。
(41)整備新幹線の開業に伴い旅客鉄道株式会社等より譲渡を受けた並行在来線の鉄道施設の用に供する一定の不動産に係る不動産取得税の非課税措置の適用期限を8年延長する。
(42)特定目的会社が資産流動化計画に基づき取得した一定の不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(43)信託会社等が投資信託により取得した一定の不動産及び投資法人が取得した一定の不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
〈事業所税〉
(44)博物館法の改正に伴い、改正後の同法の規定により登録を受けた博物館に係る事業所税について、現行制度と同様に、非課税とする措置を講ずる。
(45)駐留軍関係離職者等臨時措置法、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法及び労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則の一部改正後において、国の雇用に関する助成に係る者の範囲を拡充した上、引き続き当該者に対する従業者割に係る事業所税の課税標準の特例措置を講ずる。
(46)子ども・子育て支援法に基づく政府の補助を受けた者が設置する一定の保育施設において行う事業に係る事業所税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(47)特定農産加工業経営改善臨時措置法に規定する承認計画に基づき特定農産加工業者等が事業の用に供する一定の施設に対する資産割に係る事業所税の課税標準の特例措置の適用期限を1年3月(個人の事業については1年)延長する。
〔廃止・縮減等〕
〈固定資産税・都市計画税〉
(1)子ども・子育て支援法に基づく政府の補助を受けた者が一定の保育施設の用に供する固定資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置について、適用対象となる事業者の範囲を見直した上、その適用期限を1年延長する。
(2)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が一定の業務の用に供する償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、基盤技術研究円滑化法に規定する業務に係るものを対象から除外するとともに、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法第15条第2号に規定する業務に係るものに関し、規定の簡素化の観点から、所要の規定の整備を行う。
(3)都市再生特別措置法に規定する認定事業者が同法に規定する特定都市再生緊急整備地域において、一定の認定事業により取得した公共施設及び一定の都市利便施設の用に供する家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置について、認定事業の要件のうち整備される家屋の延べ面積要件を75,000㎡以上(現行:50,000㎡以上)に引き上げた上、その適用期限を3年延長する。
(4)鉄軌道事業者が取得した新造車両等に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、一定の鉄軌道事業者が取得した新造車両に係る環境性能要件を見直した上、その適用期限を2年延長する。
(5)政府の補助を受けて新築された一定のサービス付き高齢者向け賃貸住宅に係る固定資産税の減額措置について、床面積要件の上限を160㎡以下(現行:180㎡以下)に引き下げた上、その適用期限を2年延長する。
(6)心身障害者を多数雇用する事業所の事業主が障害者の雇用の促進等に関する法律に規定する重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金の支給を受けて取得した事業用施設に係る固定資産税の課税標準の特例措置を廃止する。
(7)平成28年熊本地震により滅失・損壊した償却資産に代わるものとして一定の被災地域内で取得等をした償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置を廃止する。
〈不動産取得税〉
(8)政府の補助を受けて新築された一定のサービス付き高齢者向け賃貸住宅に係る不動産取得税の課税標準の特例措置及び当該住宅の用に供する土地に係る不動産取得税の減額措置について、床面積要件の上限を160㎡以下(現行:180㎡以下)に引き下げた上、その適用期限を2年延長する。
(9)心身障害者を多数雇用する事業所の事業主が障害者の雇用の促進等に関する法律に規定する重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金の支給を受けて取得した事業用施設に係る不動産取得税の減額措置を廃止する。
(10)東日本大震災の津波被災区域を含む地域における土地改良法の規定による換地計画に基づき事業実施地区外の農業者が取得した創設農用地換地に係る不動産取得税の課税標準の特例措置を廃止する。
4 その他
(国 税)
(1)更正をすることができないこととなる日前6月以内に相続税の更正の請求がされた場合において、当該請求に係る更正に伴い当該請求をした者の被相続人から相続等により財産を取得した他の者に係る課税価格等に異動を生ずるとき(当該他の者に係る通常の更正決定等の除斥期間が満了する日以前に当該請求がされた場合に限る。)は、当該他の者の相続税に係る更正若しくは決定又は当該更正若しくは決定等に伴う加算税の賦課決定は、当該請求があった日から6月を経過する日まで行うことができることとするほか、所要の整備を行う。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に申告書の提出期限が到来する相続税について適用する。
(2)調書の提出義務者のうち電子情報処理組織(e-Tax等)又は光ディスク等による提出義務制度の対象とならない者が、調書の書面による提出に代えてその調書に記載すべき事項を記録した光ディスク等の提出をするための要件であるその者が受けるべき所轄税務署長の承認を不要とするほか、これに伴う所要の措置を講ずる。
(3)福島国際研究教育機構の設立に伴い、同機構を非課税法人(登録免許税法別表第二)とする。
(4)独立行政法人中小企業基盤整備機構が独立行政法人中小企業基盤整備機構法に基づき経営革新を行う一定の事業者等に対して行う一定の助成業務に関する文書については、印紙税を課さないこととする。
(5)新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置によりその経営に影響を受けた事業者に対して行う特別貸付けに係る消費貸借契約書の印紙税の非課税措置の適用期限を1年延長する。
(6)戦没者等の妻に対する特別給付金支給法の一部改正により引き続き支給されることとなる特別給付金について、特別給付金に関する書類及び特別給付金国債を担保とする金銭の貸借に関する書類には、印紙税を課さないこととする。
(7)福島国際研究教育機構の設立に伴い、同機構を非課税法人(印紙税法別表第二)とする。
(地方税)
〈固定資産税・都市計画税〉
(1)博物館法の改正に伴い、改正後の同法の規定により登録を受けた博物館のうち公益社団法人若しくは公益財団法人又は宗教法人が設置するものに係る固定資産税及び都市計画税について、引き続き非課税とする措置を講ずる。
(2)国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構法の改正を前提に、改正後の国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構について、現行制度と同様の措置を講ずる。
(3)2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開催に伴い、参加者等が博覧会の用に供する一定の家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税について、非課税とする等の所要の措置を講ずる。
(4)電気事業法の改正に伴い、一定の要件を満たす蓄電用の電気工作物を用いて電気を放電する事業を電気事業法上の発電事業と位置付けることに伴う所要の措置を講ずる。
(5)福島国際研究教育機構の設立に伴い、同機構が所有する固定資産(同機構以外の者が使用しているものを除く。)に係る固定資産税及び都市計画税について、非課税とする措置を講ずる。
〈不動産取得税〉
(6)博物館法の改正に伴い、改正後の同法の規定により登録を受けた博物館のうち公益社団法人若しくは公益財団法人又は宗教法人が設置するものに係る不動産取得税について、引き続き非課税とする措置を講ずる。
(7)国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構法の改正を前提に、改正後の国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構について、現行制度と同様の措置を講ずる。
(8)2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開催に伴い、参加者等が博覧会の用に供するために取得した一定の家屋に係る不動産取得税について、非課税とする等の所要の措置を講ずる。
(9)福島国際研究教育機構の設立に伴い、同機構が取得する不動産に係る不動産取得税について、非課税とする措置を講ずる。
〈事業所税〉
(10)土地改良法の改正による土地改良区から一般社団法人又は認可地縁団体への組織変更制度の創設に伴い、所要の措置を講ずる。
(11)原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律の改正を前提に、使用済燃料再処理機構の業務範囲の見直し等が行われた後も、同機構の行う収益事業以外の事業に係る事業所税について、引き続き非課税とする措置を講ずる。
(12)金融サービスの提供に関する法律の改正を前提に、金融経済教育推進機構(仮称)の行う収益事業以外の事業に係る事業所税について、非課税とする措置を講ずる。
(13)2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開催に伴い、参加者が博覧会に関して行う一定の事業の用に供する施設に係る事業所税を非課税とする措置を講ずる。
(14)電気事業法の改正に伴い、一定の要件を満たす蓄電用の電気工作物を用いて電気を放電する事業を電気事業法上の発電事業と位置付けることに伴う所要の措置を講ずる。
(15)福島国際研究教育機構の設立に伴い、同機構が行う事業に対する事業所税について、非課税とする措置を講ずる。

三 法人課税
1 成長と分配の好循環の実現
(国 税)
(1)特別新事業開拓事業者に対し特定事業活動として出資をした場合の課税の特例について、次の措置を講ずる。
① 対象となる特定株式に、発行法人以外の者から購入により取得した特別新事業開拓事業者の株式でその取得により総株主の議決権の過半数を有することとなるものを加える。
(注1)上記の特定株式に係る対象となる取得価額の上限は、200億円とする。
(注2)上記の特定株式の要件は、次のとおり現行要件を見直した要件とするほか、現行の特定株式の要件と同様とする。
イ 特定株式の保有見込期間要件における保有見込期間の下限及び特定事業活動に係る証明の要件のうち特定事業活動を継続する期間は、5年とする。
ロ 取得価額要件は、5億円以上とする。
ハ 特別新事業開拓事業者を内国法人に限定する。
ニ 令和5年4月1日以後に特別新事業開拓事業者に出資をして本特例の適用を受けた後に取得するその特別新事業開拓事業者の株式は対象外とする。
(注3)上記の特定株式に係る特別勘定の取崩し事由は、次のとおり現行の取崩し事由を見直した事由とするほか、現行の取崩し事由と同様とする。
イ 特定株式の取得から5年を経過した場合には、特別勘定の金額を取り崩して、益金算入する。ただし、その取得の日から5年以内に、いずれかの事業年度において、売上高が1.7倍かつ33億円以上となったこと等の要件に該当することとなった場合は、この限りでない。
ロ 対象法人を合併法人とする合併により特定株式に係る特別新事業開拓事業者が解散した場合には、特別勘定の金額を取り崩して、益金算入する。
ハ 対象法人が特定株式に係る特別新事業開拓事業者の総株主の議決権の過半数を有しないこととなった場合には、特別勘定の金額を取り崩して、益金算入する。
ニ 上記イただし書の場合において、特定株式の取得の日から5年を経過した後に現行の取崩し事由(特定事業活動に係る継続証明がされなかったこととの事由及び特定株式を組合財産とする投資事業有限責任組合等の出資額割合の変更があったこととの事由を除く。)に該当することとなったときは、その事由に応じた特別勘定の金額を取り崩して、益金算入する。
ホ 上記イただし書の場合において、特定株式を組合財産とする投資事業有限責任組合等の出資額割合が減少したときは、その減少割合に応じた特別勘定の金額を取り崩して、益金算入する。
ヘ 上記イただし書の場合において、特定株式につき剰余金の配当を受けたときは、その受けた額の25%相当額の特別勘定の金額を取り崩して、益金算入する。
(注4)上記の特定株式については、特定事業活動に係る継続証明の要件に、対象法人による株式の取得の時に特別新事業開拓事業者が営んでいた事業を引き続き営んでいること等の要件を加える。
② 払込みにより取得した特定株式について、対象となる取得価額の上限を50億円(現行:100億円)に引き下げる。
③ 既にその総株主の議決権の過半数の株式を有している特別新事業開拓事業者に対する出資を対象から除外するとともに、既に本特例の適用を受けてその総株主の議決権の過半数に満たない株式を有している特別新事業開拓事業者に対する出資についてその対象を総株主の議決権の過半数を有することとなる場合に限定する。
④ その他所要の措置を講ずる。
(2)試験研究を行った場合の税額控除制度(研究開発税制)について、次の見直しを行う(所得税についても同様とする。)。
① 一般試験研究費の額に係る税額控除制度について、次の見直しを行う。
イ 税額控除率を次のとおり見直し、その下限を1%(現行:2%)に引き下げた上、その上限を14%(原則:10%)とする特例の適用期限を3年延長する。
(イ)増減試験研究費割合が12%超
 11.5%+(増減試験研究費割合-12%)×0.375
(ロ)増減試験研究費割合が12%以下
 11.5%-(12%-増減試験研究費割合)×0.25
ロ 令和5年4月1日から令和8年3月31日までの間に開始する各事業年度の控除税額の上限について、増減試験研究費割合が4%を超える部分1%当たり当期の法人税額の0.625%(5%を上限とする。)を加算し、増減試験研究費割合がマイナス4%を下回る部分1%当たり当期の法人税額の0.625%(5%を上限とする。)を減算する特例を設ける。
(注)試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合には、上記の特例と試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合における控除税額の上限の上乗せ特例とのうち控除税額の上限が大きくなる方の特例を適用する。
ハ 試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合における税額控除率の特例及び控除税額の上限の上乗せ特例の適用期限を3年延長する。
ニ 基準年度比売上金額減少割合が2%以上等の場合における控除税額の上限の上乗せ特例は、適用期限の到来をもって廃止する。
② 中小企業技術基盤強化税制について、次の見直しを行う。
イ 増減試験研究費割合が9.4%を超える場合の特例を増減試験研究費割合が12%を超える場合に次のとおりとする特例に見直した上、その適用期限を3年延長する。
(イ)税額控除率(12%)に、増減試験研究費割合から12%を控除した割合に0.375を乗じて計算した割合を加算する。
(ロ)控除税額の上限に当期の法人税額の10%を上乗せする。
ロ 試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合における税額控除率の特例及び控除税額の上限の上乗せ特例の適用期限を3年延長する。
ハ 基準年度比売上金額減少割合が2%以上等の場合における控除税額の上限の上乗せ特例は、適用期限の到来をもって廃止する。
(注)税額控除率は、17%を上限とする(現行と同じ。)。
③ 特別試験研究費の額に係る税額控除制度について、次の見直しを行う。
イ 関係法令の改正を前提に、対象となる特別試験研究費の額に、特別新事業開拓事業者との共同研究及び特別新事業開拓事業者への委託研究に係る試験研究費の額を加え、その税額控除率を25%とする。
(注1)上記の「特別新事業開拓事業者」とは、産業競争力強化法の新事業開拓事業者のうち同法の特定事業活動に資する事業を行う会社(既に事業を開始しているもので、一定の投資事業有限責任組合を通じて又は国立研究開発法人から出資を受けていること、設立後15年未満で研究開発費の額の売上高の額に対する割合が10%以上であること等の要件に該当するものに限る。)で、その経営資源が、その特定事業活動における高い生産性が見込まれる事業を行うこと又は新たな事業の開拓を行うことに資するものであることその他の基準を満たすことにつき経済産業大臣の証明があるものをいう。
(注2)共同研究及び委託研究の範囲は、現行の研究開発型ベンチャー企業との共同研究及び研究開発型ベンチャー企業への委託研究と同様とする。
ロ 対象となる特別試験研究費の額に次の要件の全てを満たす試験研究に係る(ロ)aの額を加え、その税額控除率を20%とする。
(イ)その法人の役員又は使用人である次の者(以下「新規高度研究業務従事者」という。)に対して人件費を支出して行う試験研究であること。
a 博士の学位を授与された者で、その授与された日から5年を経過していないもの
b 他の者(その法人との間に一定の資本関係がある者を除く。)の役員又は使用人として10年以上専ら研究業務に従事していた者で、その法人(その法人との間に一定の資本関係がある者を含む。)の役員又は使用人となった日から5年を経過していないもの
(ロ)aの額がbの額のうちに占める割合(以下「新規高度人件費割合」という。)を前期の新規高度人件費割合で除して計算した割合が1.03以上である法人が行う試験研究(工業化研究を除く。)であること。
a 試験研究費の額(工業化研究に係る試験研究費の額を除く。)のうち新規高度研究業務従事者に対する人件費の額
b 試験研究費の額のうちその法人の役員又は使用人である者に対する人件費の額
(ハ)次のいずれかに該当する試験研究であること。
a その内容に関する提案が広く一般に又はその法人の使用人に募集されたこと。
b その内容がその試験研究に従事する新規高度研究業務従事者から提案されたものであること。
c その試験研究に従事する者が広く一般に又はその法人の役員若しくは使用人に募集され、その試験研究に従事する新規高度研究業務従事者がその募集に応じた者であること。
ハ 対象となる特別試験研究費の範囲から、研究開発型ベンチャー企業との共同研究及び研究開発型ベンチャー企業への委託研究に係る試験研究費を除外する。
ニ 特別試験研究費の対象となる特別研究機関等との共同研究及び特別研究機関等への委託研究について、特別研究機関等の範囲に福島国際研究教育機構を加える。
④ 試験研究費のうち対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究のために要する一定の費用について、既に有する大量の情報を用いる場合についても対象とする。
⑤ 試験研究費の範囲から、性能向上を目的としないことが明らかな開発業務の一部として考案されるデザインに基づき行う設計及び試作に要する費用を除外する。
⑥ 分割等があった場合の調整計算の特例の適用を受けるための手続の見直しその他の所要の措置を講ずる。
(3)法人が大学、高等専門学校又は一定の専門学校を設置する学校法人又は準学校法人の設立を目的とする法人(以下「学校法人設立準備法人」という。)に対して支出する寄附金のうち次のいずれにも該当するもので、その学校法人設立準備法人から財務大臣に対して届出があった日から令和10年3月31日までの間に支出されるものを、指定寄附金とする。
① その学校法人又は準学校法人の設立前に、その設立に関する認可があることが確実であると認められる場合においてされる寄附金で、その設立のための費用に充てられるものであること。
② 募集要綱に、学校法人設立準備法人の設立後5年を超えない範囲内において募集要綱で定める日までに大学、高等専門学校又は一定の専門学校の設置に係る認可を受けなかった場合には、残額を国又は地方公共団体に寄附する旨の定めがあること。
(地方税)
(1)法人住民税及び法人事業税について、国税(1)の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。
(2)国税(2)の見直し及び延長に伴い、税額控除制度を中小企業者等に係る法人住民税に適用する。
(3)法人住民税及び法人事業税について、国税(3)の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。
2 地域における活力
(国 税)
(1)中小企業者等の法人税の軽減税率の特例の適用期限を2年延長する。
(2)中小企業投資促進税制について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
① 対象資産から、コインランドリー業(主要な事業であるものを除く。)の用に供する機械装置でその管理のおおむね全部を他の者に委託するものを除外する。
② 対象資産について、総トン数500トン以上の船舶にあっては、環境への負荷の低減に資する設備の設置状況等を国土交通大臣に届け出た船舶に限定する。
(3)中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(中小企業経営強化税制)について、関係法令の改正を前提に特定経営力向上設備等の対象からコインランドリー業又は暗号資産マイニング業(主要な事業であるものを除く。)の用に供する資産でその管理のおおむね全部を他の者に委託するものを除外した上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
3 円滑・適正な納税のための環境整備
(国 税)
(1)法人が特別徴収義務者として納付する森林環境税に係る延滞金の額並びに法人が第二次納税義務者として森林環境税及び森林環境税に係る延滞金等を納付し、又は納入したことにより生じた損失の額は、損金の額に算入しないこととする。
(2)公益法人等が普通法人等に移行する場合の所得の金額の計算について、累積所得金額又は累積欠損金額の計算において資産の帳簿価額から減算する負債帳簿価額等に資本金等の額を加算することとする。
(3)通算子法人の残余財産の確定の日が通算親法人の事業年度終了の日である場合におけるその通算子法人の法人税及び地方法人税の確定申告書の提出期限について、次の見直しを行う。
① その通算子法人の残余財産の確定の日の属する事業年度の確定申告書の提出期限をその事業年度終了の日の翌日から2月以内(現行:同日から1月以内又は同日から1月以内に残余財産の最後の分配若しくは引渡しが行われる場合にはその行われる日の前日まで)とする。
② 通算親法人が確定申告書の提出期限の延長の特例の適用を受けている場合には、その通算子法人の残余財産の確定の日の属する事業年度についても特例の適用があるものとする。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に現行の提出期限が到来する確定申告書について適用する。
(4)青色申告の承認申請書について、記載事項の簡素化を行う。
(注)上記の改正は、令和9年1月1日以後に開始する事業年度について適用する。
(5)青色申告書による申告をやめる旨の届出書について、その提出期限をその申告をやめようとする事業年度の確定申告書の提出期限(現行:その申告をやめようとする事業年度終了の日の翌日から2月以内)とするとともに、記載事項の簡素化を行う。
(注)上記の改正は、令和8年1月1日以後に開始する事業年度について適用する。
(地方税)
 通算子法人の残余財産の確定の日が通算親法人の事業年度終了の日である場合におけるその通算子法人の法人事業税の確定申告書の提出期限について、次の見直しを行う。
(1)その通算子法人の残余財産の確定の日の属する事業年度の法人事業税の確定申告書の提出期限をその事業年度終了の日から2月以内(現行:同日から1月以内又は同日から1月以内に残余財産の最後の分配若しくは引渡しが行われる場合にはその行われる日の前日まで)とする。
(2)その通算子法人の残余財産の確定の日の属する事業年度について、法人事業税の確定申告書の提出期限の延長の特例を適用できることとする。
(3)その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に現行の提出期限が到来する法人事業税の確定申告書について適用する。
4 その他の租税特別措置等
(国 税)
〔新設〕
 令和5年4月1日から令和6年3月31日までの間に産業競争力強化法の事業再編計画の認定を受けた法人が同法の特定剰余金配当として行う現物分配で完全子法人の株式が移転するものは、株式分配に該当することとし、その現物分配のうち次の要件に該当するものは、適格株式分配に該当することとする(所得税についても同様とする。)。
(1)その法人の株主の持株数に応じて完全子法人の株式のみを交付するものであること。
(2)その現物分配の直後にその法人が有する完全子法人の株式の数が発行済株式の総数の20%未満となること。
(3)完全子法人の従業者のおおむね90%以上がその業務に引き続き従事することが見込まれていること。
(4)適格株式分配と同様の非支配要件、主要事業継続要件及び特定役員継続要件を満たすこと。
(5)その認定に係る関係事業者又は外国関係法人の特定役員に対して新株予約権が付与され、又は付与される見込みがあること等の要件を満たすこと。
〔拡充等〕
(1)地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度について、次の措置を講じた上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
① 特別償却率及び税額控除率を引き上げる措置について、次の措置を講ずる。
イ 本措置の対象に、次の要件の全てを満たす場合を加える。
(イ)その承認地域経済牽引事業者のその承認地域経済牽引事業について主務大臣の確認を受ける事業年度の前事業年度及び前々事業年度における平均付加価値額が50億円以上であること。
(ロ)その承認地域経済牽引事業が3億円以上の付加価値額を創出すると見込まれるものであること。
(ハ)労働生産性の伸び率及び投資収益率が一定水準以上となることが見込まれること。
ロ 本措置の対象から、承認地域経済牽引事業の実施場所が特定非常災害に基因して事業又は居住の用に供することができなくなった建物又は構築物が所在していた区域内である場合等に先進性に係る要件を満たすこととする特例により主務大臣の確認を受ける場合を除外する。
② 承認地域経済牽引事業の主務大臣の確認要件について、次の見直しを行う。
イ 次の運用の改善を行う。
(イ)要件の判定において売上高を計算する場合には、需要の変動等による影響を勘案した計算方法を用いることとする。
(ロ)先進性に係る要件について、評価委員の評価精度の向上に向けた措置を講ずる。
ロ 経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律の規定により特定重要物資として指定された物資の製造に係る事業については、サプライチェーンの強じん化に資する類型に該当しないものとして取り扱うこととする。
ハ 対象事業を行う承認地域経済牽引事業者(以下「対象事業者」という。)が取得する予定の減価償却資産の取得予定価額がその対象事業者の前事業年度における減価償却費の額の10%以上の額であることとの要件を、対象事業者が取得する予定の減価償却資産の取得予定価額がその対象事業者の前事業年度における減価償却費の額(その対象事業者が連結会社である場合にあっては、これに、同一の連結の範囲に含まれる他の会社の前連結会計年度における減価償却費の額の合計額を加えて得た額)の20%以上の額であることとの要件に見直す。
(2)特定船舶の特別償却制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する(所得税についても同様とする。)。
① 外航船舶について、次の見直しを行う。
イ 海上運送法の改正を前提に、同法の認定外航船舶確保等計画(仮称)に従って取得等をした同法の特定外航船舶(仮称)の特別償却率を次のとおりとする。
(イ)特定先進船舶である特定船舶に該当する船舶(現行:18%(日本船舶については、20%))
a 海上運送法の本邦対外船舶運航事業者等(仮称)の対外船舶運航事業の用に供される船舶 30%(日本船舶については、32%)
b 上記a以外の船舶 28%(日本船舶については、30%)
(ロ)特定先進船舶以外の特定船舶に該当する船舶(現行:15%(日本船舶については、17%))
a 上記(イ)aの船舶 27%(日本船舶については、29%)
b 上記(イ)bの船舶 25%(日本船舶については、27%)
(注)上記の改正は、海上運送法の改正法の施行の日以後に取得等をする船舶(同日前に締結した契約に基づいて取得する船舶を除く。)について適用する。
ロ 特定先進船舶について、液化天然ガスを燃料とする船舶を加え、耐食鋼を用いた船舶を除外する。
ハ 対象船舶から匿名組合契約等の目的である船舶貸渡業の用に供される船舶(海上運送法の認定先進船舶導入等計画に従って取得等をした同法の先進船舶を除く。)を除外する。
ニ 事業の経営の合理化及び環境への負荷の低減に係る要件の見直しを行う。
② 内航船舶について、対象を総トン数500トン以上(現行:300トン以上)の船舶に限定する。
(3)特定事業継続力強化設備等の特別償却制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
① 対象資産に耐震装置を加える。
② 令和7年4月1日以後に取得等をする資産の特別償却率を16%(現行:20%(令和5年4月1日以後は、18%))に引き下げる。
(4)特定都市再生建築物の割増償却制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する(所得税についても同様とする。)。
① 対象となる民間都市再生事業計画のうち特定都市再生緊急整備地域以外の都市再生緊急整備地域における民間都市再生事業計画の認定要件について、次の見直しを行う。
イ 都市再生特別措置法施行令の改正を前提に、その都市再生事業の施行される土地の区域の面積要件を0.5ha以上(現行:原則1ha以上)に引き下げる。
ロ 地方の魅力向上又は地域の活性化等に資する機能を整備することとの要件を加える。
② 特定都市再生緊急整備地域内において行われる都市再生事業の要件のうちその都市再生事業の施行される土地の区域内に整備される建築物の延べ面積要件を75,000㎡以上(現行:50,000㎡以上)に引き上げる。
〔延長〕
(1)特定原子力施設炉心等除去準備金制度の適用期限を3年延長する。
(2)短期の土地譲渡益に対する追加課税制度の適用停止措置の期限を3年延長する。
(3)退職年金等積立金に対する法人税の課税の停止措置の適用期限を3年延長する。
〔廃止・縮減等〕
(1)デジタルトランスフォーメーション投資促進税制について、次のとおり主務大臣の確認要件の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
① 生産性の向上又は新需要の開拓に関する要件を、売上高が10%以上増加することが見込まれることとの要件に見直す。
② 取組類型に関する要件を、対象事業の海外売上高比率が一定割合以上となることが見込まれることとの要件に見直す。
(注)令和5年4月1日前に認定の申請をした事業適応計画に従って同日以後に取得等をする資産については、本制度を適用しないこととする。
(2)港湾隣接地域における技術基準適合施設の特別償却制度は、所要の経過措置を講じた上、令和5年3月31日をもって廃止する。
(3)関西文化学術研究都市の文化学術研究地区における文化学術研究施設の特別償却制度について、施設規模要件を4億円以上(現行:3億5,000万円以上)に引き上げた上、その適用期限を2年延長する。
(4)共同利用施設の特別償却制度について、建物の取得価額要件を600万円以上(現行:400万円以上)に引き上げた上、その適用期限を2年延長する。
(5)特定地域における工業用機械等の特別償却制度について、次の見直しを行う(所得税についても同様とする。)。
① 半島振興対策実施地域に係る措置について、対象地区から過疎地域に係る措置の対象地区を除外した上、その適用期限を2年延長する。
② 離島振興対策実施地域に係る措置について、離島振興法の一部を改正する法律による改正後の離島振興法の離島振興計画において産業振興促進事項に記載されている地区(過疎地域に係る措置の対象地区を除く。)及び事業に係る措置に改組した上、その適用期限を2年延長する。
(注)上記の離島振興計画は、離島振興法の離島振興基本方針に適合している旨の通知を受けたものに限る。
③ 奄美群島に係る措置について、対象地区から過疎地域に係る措置の対象地区を除外した上、その適用期限を1年延長する。
(6)医療用機器等の特別償却制度について、医療用機器に係る措置の対象機器の見直しを行った上、制度の適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
(7)事業再編計画の認定を受けた場合の事業再編促進機械等の割増償却制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
① 対象となる認定事業再編計画から、その認定事業再編計画に係る事業再編がその法人の保有する施設の相当程度の撤去又は設備の相当程度の廃棄のみを行うものである場合における当該認定事業再編計画を除外する。
② 割増償却率を、機械装置については35%(現行:40%)に、建物等及び構築物については40%(現行:45%)に、それぞれ引き下げる。
(8)対外船舶運航事業を営む法人の日本船舶による収入金額の課税の特例(トン数標準税制)について、関係法令の改正を前提に、次の措置を講じた上、令和7年3月31日までに日本船舶・船員確保計画について認定を受けた対外船舶運航事業を営む法人に対して適用できることとする。
① 純トン数に応じた利益の金額の計算の基礎となる100純トン・1日当たりのみなし利益の金額を次のとおり見直す。

区分
日本船舶
特定準日本船舶
1,000純トン以下
130円(現行:120円)
195円(現行:180円)
1,000純トン超
10,000純トン以下
110円(現行:90円)
165円(現行:135円)
10,000純トン超
25,000純トン以下
70円(現行:60円)
105円(現行:90円)
25,000純トン超
40円(現行:30円)
60円(現行:45円)

② 日本船舶・船員確保計画において日本船舶及び船員の確保の目標として記載すべきその計画期間における日本船舶の隻数の増加の割合を船隊規模に占める日本船舶の隻数の割合に応じて最大140%以上(現行:120%以上)とする等の所要の見直しを行う。
(9)農業経営基盤強化準備金制度及び農用地等を取得した場合の課税の特例について、対象となる特定農業用機械等から取得価額が30万円未満の資産を除外した上、農業経営基盤強化準備金制度の適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
(10)法人の一般の土地譲渡益に対する追加課税制度について、次の措置を講ずる。
① 適用除外措置(優良住宅地の造成等のための譲渡等に係る適用除外)について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する。
イ 対象から特定の民間再開発事業の用に供するための土地等の譲渡を除外する。
ロ 開発許可を受けて住宅建設の用に供される一団の宅地の造成を行う者に対する土地等の譲渡に係る開発許可について、次に掲げる区域内において行われる開発行為に係るものに限定する。
(イ)市街化区域
(ロ)市街化調整区域
(ハ)区域区分に関する都市計画が定められていない都市計画区域(用途地域が定められている区域に限る。)
② 適用停止措置の期限を3年延長する。
(11)特定の資産の買換えの場合等の課税の特例について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する(所得税についても同様とする。)。
① 既成市街地等の内から外への買換えを適用対象から除外する。
② 航空機騒音障害区域の内から外への買換えについて、譲渡資産から令和2年4月1日前に特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法の航空機騒音障害防止特別地区又は公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律の第二種区域となった区域内にある資産を除外する。
③ 長期所有の土地、建物等から国内にある土地、建物等への買換えについて、東京都の特別区の区域から地域再生法の集中地域以外の地域への本店又は主たる事務所の所在地の移転を伴う買換えの課税の繰延べ割合を90%(現行:80%)に引き上げ、同法の集中地域以外の地域から東京都の特別区の区域への本店又は主たる事務所の所在地の移転を伴う買換えの課税の繰延べ割合を60%(現行:70%)に引き下げる。
④ 一定の船齢の日本船舶から環境への負荷の低減に資する一定の日本船舶への買換えについて、次の見直しを行う。
イ 外航船舶について、次の見直しを行う。
(イ)譲渡資産に係る船齢要件を20年未満(現行:25年未満)に引き下げる。
(ロ)買換資産に係る環境への負荷の低減に係る要件について、建造の後事業の用に供されたことのない国際総トン数1万トン以上の船舶にあっては特定船舶の特別償却制度における事業の経営の合理化及び環境への負荷の低減に係る要件と同様とする等の見直しを行う。
ロ 内航船舶について、次の見直しを行う。
(イ)譲渡資産に係る船齢要件を23年未満(現行:25年未満)に引き下げる。
(ロ)買換資産に係る環境への負荷の低減に係る要件を見直す。
ハ 港湾の作業船について、譲渡資産に係る船齢要件を30年未満(現行:35年未満)に引き下げた上、譲渡資産から平成23年1月1日以後に建造された船舶を除外する。
ニ 譲渡資産及び買換資産が同一の用途である場合に限定する。
⑤先行取得の場合、特定の資産の譲渡に伴い特別勘定を設けた場合の課税の特例及び特定の資産を交換した場合の課税の特例を除き、譲渡資産を譲渡した日又は買換資産を取得した日のいずれか早い日の属する3月期間の末日の翌日以後2月以内に本特例の適用を受ける旨、適用を受けようとする措置の別、取得予定資産又は譲渡予定資産の種類等を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に届け出ることを適用要件に加える。
(注)上記の「3月期間」とは、その事業年度をその開始の日以後3月ごとに区分した各期間をいう。
⑥先行取得の場合の届出書について、その記載事項を上記⑤と同様とする見直しを行う。
⑦その他所要の措置を講ずる。
(注)上記⑤及び⑥の改正は、令和6年4月1日以後に譲渡資産の譲渡をして、同日以後に買換資産の取得をする場合の届出について適用する。
(12)株式等を対価とする株式の譲渡に係る所得の計算の特例について、対象から株式交付後に株式交付親会社が同族会社(非同族の同族会社を除く。)に該当する場合を除外する(所得税についても同様とする。)。
(注)上記の改正は、令和5年10月1日以後に行われる株式交付について適用する。
(13)認定事業適応法人の欠損金の損金算入の特例は、認定期限が到来したため、その規定を削除する。
(14)投資法人に係る課税の特例における再生可能エネルギー発電設備に係る措置について、設立に際して公募により発行した投資口の発行価額の総額が1億円以上であることとの要件を除外した上、再生可能エネルギー発電設備の取得期限を3年延長する。
(15)震災特例法に係る被災代替資産等の特別償却制度について、対象資産を漁船に限定した上、その適用期限を3年延長する(所得税についても同様とする。)。
(注)法人が、やむを得ない事情により令和5年4月1日前に対象資産を事業の用に供することができなかった場合には、同日から令和7年3月31日までの間に事業の用に供する一定の資産について従前どおり適用を受けることができる経過措置を講ずる。
(地方税)
〔新設〕
 株式会社脱炭素化支援機構に係る法人事業税について、政府の出資金に相当する金額を資本金等の額から控除する資本割の課税標準の特例措置を5年間に限り講ずる。
〔延長・拡充等〕
(1)国税〔拡充等〕(1)の見直し及び延長に伴い、特別償却制度を法人住民税及び法人事業税に、税額控除制度を中小企業者等に係る法人住民税に適用する。(2)電気供給業を行う法人の事業税の課税標準である収入金額を算定する場合において控除される収入金額の範囲に、次の収入金額を追加する課税標準の特例措置を3年間に限り講ずる。
① 小売電気事業者が一般送配電事業者又は配電事業者から託送供給を受けて電気の供給を行う場合の当該電気の供給に係る収入金額のうち、当該電気の供給に係る託送供給の料金として支払うべき金額に相当する収入金額
② 配電事業者が電気工作物を一般送配電事業者から譲り受けるなどして託送供給を行う場合の配電事業者又は一般送配電事業者の託送供給に係る収入金額のうち、当該電気工作物の譲り受け等に係る費用として支払うべき定期支払額に相当する収入金額
(3)銀行等保有株式取得機構に係る法人事業税の資本割の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
〔縮減等〕
(1)国税〔廃止・縮減等〕(1)の見直し及び延長に伴い、特別償却制度を法人住民税及び法人事業税に、税額控除制度を中小企業者等に係る法人住民税に適用する。
(2)認定事業適応法人の欠損金の損金算入の特例は、認定期限が到来したため、法人事業税の関係規定を削除する。
5 その他
(国 税)
(1)資金決済に関する法律の改正に伴い、同法の電子決済手段のうち同法の特定信託受益権を法人税法上の有価証券の範囲から除外することとするほか、所要の措置を講ずる。
(2)土地改良法の改正による土地改良区から一般社団法人又は認可地縁団体への組織変更制度の創設に伴い、次の措置を講ずる。
① 公共法人が事業年度の中途において公益法人等又は普通法人に該当することとなった場合には、その該当することとなった日の前日に事業年度が終了し、これに続く事業年度はその翌日から開始するものとする。
② 公共法人が普通法人に該当することとなった場合には、その該当することとなった日前の所得の金額の累積額又は欠損金額の累積額を、益金の額又は損金の額に算入する。
③ その他所要の措置を講ずる。
(3)国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度について、対象となる国庫補助金等の範囲に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法に基づく助成金で省エネAI半導体及びシステムに関する技術開発事業(仮称)等に係るものを加える(所得税についても同様とする。)。
(4)企業再生に関する税制について、次の措置を講ずる(次の①イ及び②の措置は、所得税についても同様とする。)。
① 事業再構築のための私的整理法制が整備されることを前提に、次の措置を講ずる。
イ 個別評価金銭債権に係る貸倒引当金制度について、貸倒引当金の繰入事由に金銭債権に係る債務者についての事業再構築のための計画が成立したことに基づいてその弁済を猶予され、又は賦払により弁済されることを加え、その場合の繰入限度額をその金銭債権の額のうち5年以内に弁済されることとなっている金額以外の金額とする。
ロ 欠損金の繰越控除制度について、控除限度額がその繰越控除前の所得の金額となる事実に事業再構築のための計画が成立したことを加える。
ハ 仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額及び地方法人税額の還付の特例について、還付請求の対象となる事実に事業再構築のための計画が成立したことを加える。
② 個別評価金銭債権に係る貸倒引当金制度について、企業再生税制の適用対象である再生計画認可の決定があったことに準ずる事実が本制度の対象となる事由であることを明確化する。
③ 再生計画認可の決定があったことに準ずる事実が生じた場合で資産の評価損益の計上を行わないときは、民事再生等一定の事実による債務免除等があった場合に青色欠損金等の控除後に繰越欠損金を損金算入できる制度の適用があることを明確化する。
(5)暗号資産の評価方法等について、次の見直しを行う(次の②の見直しは、所得税についても同様とする。)。
①法人が事業年度末において有する暗号資産のうち時価評価により評価損益を計上するものの範囲から、次の要件に該当する暗号資産を除外する。
イ 自己が発行した暗号資産でその発行の時から継続して保有しているものであること。
ロ その暗号資産の発行の時から継続して次のいずれかにより譲渡制限が行われているものであること。
(イ)他の者に移転することができないようにする技術的措置がとられていること。
(ロ)一定の要件を満たす信託の信託財産としていること。
② 自己が発行した暗号資産について、その取得価額を発行に要した費用の額とする。
③ 法人が暗号資産交換業者以外の者から借り入れた暗号資産の譲渡をした場合において、その譲渡をした日の属する事業年度終了の時までにその暗号資産と種類を同じくする暗号資産の買戻しをしていないときは、その時においてその買戻しをしたものとみなして計算した損益相当額を計上する。
④ その他所要の措置を講ずる。
(6)福島国際研究教育機構の設立に伴い、次の措置を講ずる(次の②の措置は、所得税についても同様とする。)。
① 福島国際研究教育機構を公共法人(法人税法別表第一)とする。
② 特定公益増進法人の範囲に福島国際研究教育機構を加える。
(7)金融サービスの提供に関する法律の改正を前提に、金融経済教育推進機構(仮称)を公益法人等(法人税法別表第二)とする。
(8)原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律の改正を前提に、次の措置を講ずる。
① 使用済燃料再処理機構の業務範囲の見直し等が行われた後も、同機構を引き続き公益法人等(法人税法別表第二)とする。
② 原子力発電施設解体準備金制度は、所要の経過措置を講じた上、廃止する。
(9)水産業協同組合法等の改正を前提に、漁業協同組合等が行う漁場の安定的な利用関係の確保のための組合員等の労働力を利用して行う漁場の総合的な利用を促進する事業に係る員外利用の制限の緩和が行われた後も、漁業協同組合等を引き続き協同組合等(法人税法別表第三)とする。
(10)法人が使用人に対して支給するつみたてNISA奨励金で所得税法の給与等に該当するものは給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度の対象となる給与等に該当することを明確化する(所得税についても同様とする。)。
(地方税)
(1)土地改良法の改正による土地改良区から一般社団法人又は認可地縁団体への組織変更制度の創設に伴い、所要の措置を講ずる。
(2)電気事業法等の改正に伴い、次の措置を講ずる。
① 一定の要件を満たす蓄電用の電気工作物を用いて電気を放電する事業を電気事業法上の発電事業と位置付けることに伴い、所要の措置を講ずる。
② 関係法令の改正を前提に、非化石証書(固定価格買取制度の対象となる電気に対して発行するものを除く。以下同じ。)の発行対象に、水素・アンモニア・CCS(注)火力由来の電気が追加された後も、引き続き非化石証書に係る現行の事業税の税制上の措置を適用する。
(注)Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯留
(3)国税における諸制度の取扱い等を踏まえ、その他所要の措置を講ずる。

四 消費課税
1 適格請求書等保存方式に係る見直し
(国 税)
(1)適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置
① 適格請求書発行事業者の令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと又は課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる場合には、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から控除する金額を、当該課税標準額に対する消費税額に8割を乗じた額とすることにより、納付税額を当該課税標準額に対する消費税額の2割とすることができることとする。
(注1)上記の措置は、課税期間の特例の適用を受ける課税期間及び令和5年10月1日前から課税事業者選択届出書の提出により引き続き事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる同日の属する課税期間については、適用しない。
(注2)課税事業者選択届出書を提出したことにより令和5年10月1日の属する課税期間から事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる適格請求書発行事業者が、当該課税期間中に課税事業者選択不適用届出書を提出したときは、当該課税期間からその課税事業者選択届出書は効力を失うこととする。
② 適格請求書発行事業者が上記①の適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記するものとする。
③ 上記①の適用を受けた適格請求書発行事業者が、当該適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を納税地を所轄する税務署長に提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を認めることとする。
④ その他所要の措置を講ずる。
(2)基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除を認める経過措置を講ずる。
(3)売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務を免除する。
(注)上記の改正は、令和5年10月1日以後の課税資産の譲渡等につき行う売上げに係る対価の返還等について適用する。
(4)適格請求書発行事業者登録制度について、次の見直しを行う。
① 免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、課税期間の初日から登録を受けようとする場合には、当該課税期間の初日から起算して15日前の日(現行:当該課税期間の初日の前日から起算して1月前の日)までに登録申請書を提出しなければならないこととする。この場合において、当該課税期間の初日後に登録がされたときは、同日に登録を受けたものとみなす。
② 適格請求書発行事業者が登録の取消しを求める届出書を提出し、その提出があった課税期間の翌課税期間の初日から登録を取り消そうとする場合には、当該翌課税期間の初日から起算して15日前の日(現行:その提出があった課税期間の末日から起算して30日前の日の前日)までに届出書を提出しなければならないこととする。
③ 適格請求書発行事業者の登録等に関する経過措置の適用により、令和5年10月1日後に適格請求書発行事業者の登録を受けようとする免税事業者は、その登録申請書に、提出する日から15日を経過する日以後の日を登録希望日として記載するものとする。この場合において、当該登録希望日後に登録がされたときは、当該登録希望日に登録を受けたものとみなす。
(注)上記の改正の趣旨等を踏まえ、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者が、その申請期限後に提出する登録申請書に記載する困難な事情については、運用上、記載がなくとも改めて求めないものとする。
2 承認酒類製造者に対する酒税の税率の特例措置の創設
(国 税)
(1)承認酒類製造者のうち前年度の酒類の総課税移出数量(完全支配関係がある者(令和5年4月1日前から引き続き完全支配関係がある者を除く。)の課税移出数量を含む。)が3,000㎘以下の者(資本金等の額が3億円を超え、かつ、常時使用する従業員の数が300人を超える法人等を除く。)が、令和6年4月1日から令和11年3月31日までの間に、酒類の製造場から移出する酒類(当該承認酒類製造者が受けた酒類の製造免許の品目と同一の品目のものに限る。)に係る酒税額について、次に掲げる当年度酒税累計額の区分に応じそれぞれ次に定める割合を軽減する措置を講ずる。

当年度酒税累計額
軽減割合
5,000万円以下の金額
20%
5,000万円を超え8,000万円以下の金額
10%
8,000万円を超え1億円以下の金額
5%

(注1)上記の改正は、令和6年4月1日以後に酒類の製造場から移出する酒類について適用する。
(注2)上記の「承認酒類製造者」とは、酒税の保全のために酒類業の健全な発達に資する取組を適正かつ確実に行うことについて税務署長の承認を受けた酒類製造者をいう。
(注3)承認の申請をする者は、申請書に、酒類業の健全な発達に資するために必要な経営基盤の強化のための目標やその目標を達成するための措置等を記載した書面を添付した上で提出しなければならないこととする。
(注4)承認酒類製造者が目標の達成状況等を記載した書面を税務署長に提出しない場合には、この措置は適用しないこととする。
(注5)上記の「当年度酒税累計額」とは、その年度の初日以後に製造場から移出した酒類について、酒税法等に規定する税率により算出した額の累計額をいう。
(注6)上記の軽減割合は、前年度の一の品目の酒類の課税移出数量が次に掲げる数量の場合にあっては、それぞれ次に定める割合を上記の軽減割合に乗じて得た割合とする。
① 400㎘を超え1,000㎘以下 75%
② 1,000㎘を超え1,300㎘以下 50%
③ 1,300㎘超 25%
(2)清酒等に係る酒税の税率の特例措置、ビールに係る酒税の税率の特例措置及び被災酒類製造者が移出する清酒等に係る酒税の税率の特例措置(以下「旧特例措置」という。)は、適用期限の到来をもって廃止する。なお、激変緩和等の観点から、令和5年度については、旧特例措置を適用できることとするほか、承認酒類製造者は、次に掲げる年度について上記(1)の措置に代えてそれぞれ次に定める措置を適用できることとする経過措置を講ずる。
① 令和6年度から令和8年度まで 旧特例措置
② 令和9年度 旧特例措置の軽減割合に90%を乗じて得た割合を軽減割合とする旧特例措置
③ 令和10年度 旧特例措置の軽減割合に80%を乗じて得た割合を軽減割合とする旧特例措置
(注)承認酒類製造者が目標の達成状況等を記載した書面を税務署長に提出しない場合には、上記①から③までの措置は適用しないこととする。
(3)その他所要の措置を講ずる。
3 車体課税の見直し
(国 税)
 排出ガス性能及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい自動車に係る自動車重量税の免税等の特例措置(いわゆる「自動車重量税のエコカー減税」)について、次の措置を講ずる。
(1)令和5年12月31日まで、現行制度を継続する。
(2)その上で、次の見直しを行った上、その適用期限を令和8年4月30日まで延長する。
① 乗用自動車(軽油自動車を除く。)
イ 自動車重量税を免除し、又は税率を50%若しくは25%軽減する自動車に係る燃費性能に関する要件を次のとおりとする。

現 行
令和6年1月1日以後
令和7年5月1日以後
令和12年度燃費基準に対する達成の程度が90%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。) 現行と同じ。 令和12年度燃費基準を達成しているもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)
令和12年度燃費基準に対する達成の程度が75%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)
令和12年度燃費基準に対する達成の程度が80%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。) 令和12年度燃費基準に対する達成の程度が90%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)
令和12年度燃費基準に対する達成の程度が60%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)
令和12年度燃費基準に対する達成の程度が70%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)

令和12年度燃費基準に対する達成の程度が80%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)

ロ 平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物の排出量が少ない自動車のうち、令和12年度燃費基準に対する達成の程度が75%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)で、令和7年5月1日から令和8年4月30日までの間に自動車検査証の交付等を受けるものについては、当該自動車検査証の交付等の際に納付すべき自動車重量税について本則税率を適用する経過措置を講ずる。
ハ 新車に係る新規検査後に受ける最初の継続検査等の際に納付すべき自動車重量税を免除する自動車は、次に掲げるものとする。
(イ)令和12年度燃費基準に対する達成の程度が120%以上である自動車で令和6年1月1日から令和7年4月30日までの間に新車に係る新規検査を受けるもの
(ロ)令和12年度燃費基準に対する達成の程度が125%以上である自動車で令和7年5月1日から令和8年4月30日までの間に新車に係る新規検査を受けるもの
② 乗用自動車(軽油自動車に限る。)
イ 平成30年排出ガス規制に適合する自動車で、現行、自動車重量税を免除するものについて、自動車重量税を免除し、又は税率を50%若しくは25%軽減する自動車に係る燃費性能に関する要件を上記①イと同様とする。
ロ 平成30年排出ガス規制に適合する自動車のうち令和12年度燃費基準に対する達成の程度が75%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)で、令和7年5月1日から令和8年4月30日までの間に自動車検査証の交付等を受けるものについては、当該自動車検査証の交付等の際に納付すべき自動車重量税について本則税率を適用する経過措置を講ずる。
ハ 新車に係る新規検査後に受ける最初の継続検査等の際に納付すべき自動車重量税を免除する自動車は、上記①ハ(イ)及び(ロ)に掲げるものとする。
③ トラック(車両総重量が2.5t以下の揮発油自動車に限る。)
 平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物の排出量が少ない自動車について、自動車重量税を免除し、又は税率を75%、50%若しくは25%軽減する自動車に係る燃費性能に関する要件を次のとおりとする。

現 行
令和6年1月1日以後
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が125%以上であるもの 令和4年度燃費基準に対する達成の程度が105%以上であるもの
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が120%以上であるもの 令和4年度燃費基準を達成しているもの
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が115%以上であるもの 令和4年度燃費基準に対する達成の程度が95%以上であるもの
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が105%以上であるもの 令和4年度燃費基準に対する達成の程度が90%以上であるもの

④ バス(車両総重量が3.5t以下の軽油自動車に限る。)
 本措置の適用対象となる自動車の範囲から、平成21年排出ガス規制に適合するものを除外する。
⑤ トラック(車両総重量が2.5tを超え3.5t以下の揮発油自動車及び軽油自動車に限る。)
イ 揮発油自動車のうち、平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物の排出量が少ないもの及び軽油自動車のうち平成30年排出ガス規制に適合するものについて、自動車重量税を免除し、又は税率を75%若しくは50%軽減する自動車に係る燃費性能に関する要件を次のとおりとする。

現 行
令和6年1月1日以後
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が115%以上であるもの 令和4年度燃費基準を達成しているもの
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が110%以上であるもの 令和4年度燃費基準に対する達成の程度が95%以上であるもの
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が105%以上であるもの 令和4年度燃費基準に対する達成の程度が90%以上であるもの

ロ 揮発油自動車のうち、平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より25%以上窒素酸化物の排出量が少ないものについて、自動車重量税の税率を75%又は50%軽減する自動車に係る燃費性能に関する要件を次のとおりとする。

現 行
令和6年1月1日以後
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が115%以上であるもの 令和4年度燃費基準を達成しているもの
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が110%以上であるもの 令和4年度燃費基準に対する達成の程度が95%以上であるもの

ハ 本措置の適用対象となる自動車の範囲に、揮発油自動車で平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より25%以上窒素酸化物の排出量が少ない自動車のうち、令和4年度燃費基準に対する達成の程度が90%以上であるものを加える。
ニ 本措置の適用対象となる自動車の範囲から、軽油自動車で平成21年排出ガス規制に適合するものを除外する。
⑥ バス・トラック(車両総重量が3.5tを超えるものに限る。)
イ 現行、税率を75%軽減する自動車に係る軽減割合を、令和6年1月1日から令和7年4月30日までの間、50%とし、税率を50%軽減する自動車に係る軽減割合を、令和6年1月1日から令和7年4月30日までの間、25%とし、同年5月1日以後は、本措置の適用対象となる自動車の範囲から、税率を25%軽減する自動車を除外する。
ロ 自動車重量税を免除し、又は税率を50%軽減する自動車に係る燃費性能に関する要件を次のとおりとする。

現 行
令和6年1月1日以後
令和7年5月1日以後
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が115%以上であるもの 現行と同じ。 令和7年度燃費基準を達成しているもの
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が105%以上であるもの 平成27年度燃費基準に対する達成の程度が110%以上であるもの(再掲) 令和7年度燃費基準に対する達成の程度が95%以上であるもの

(3)自動車重量税の納付の事実の確認等の特例措置について、次の見直しを行う。
① 自動車重量税のエコカー減税の適用を受け、又は本則税率の適用を受けた自動車の自動車重量税について、自動車製作者等の不正行為に起因し納付不足額が発生した場合の当該自動車製作者等が納付すべき自動車重量税の額は、当該納付不足額に35%(現行:10%)を乗じて計算した金額を加算した金額とする。
② 上記①の自動車製作者等が納付した自動車重量税の額は、その法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととする。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に法定納期限が到来する自動車重量税について適用する。
(4)その他所要の措置を講ずる。
(注)上記((1)及び(2)の適用期限の延長を除く。)の改正は、令和6年1月1日から施行する。
(地方税)
〈自動車税環境性能割〉
(1)環境性能に応じた非課税又は1%若しくは2%の税率(営業用自動車にあっては、非課税又は0.5%若しくは1%の税率)の適用区分について、次の見直しを行う。
① 自家用乗用車
 燃費性能に関する要件を次のとおりとする。

現 行
令和6年1月1日以後
令和7年4月1日以後
令和12年度燃費基準に対する達成の程度が85%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。) 同左 令和12年度燃費基準に対する達成の程度が95%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)
令和12年度燃費基準に対する達成の程度が75%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。) 令和12年度燃費基準に対する達成の程度が80%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。) 令和12年度燃費基準に対する達成の程度が85%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)
令和12年度燃費基準に対する達成の程度が60%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)
令和12年度燃費基準に対する達成の程度が70%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)
令和12年度燃費基準に対する達成の程度が75%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)

② 営業用乗用車
 燃費性能に関する要件を次のとおりとする。

現 行
令和6年1月1日以後
令和7年4月1日以後
令和12年度燃費基準に対する達成の程度が75%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。) 令和12年度燃費基準に対する達成の程度が80%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。) 令和12年度燃費基準に対する達成の程度が90%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)
令和12年度燃費基準に対する達成の程度が65%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。) 令和12年度燃費基準に対する達成の程度が70%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。) 令和12年度燃費基準に対する達成の程度が80%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)
令和12年度燃費基準に対する達成の程度が60%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)
同左
令和12年度燃費基準に対する達成の程度が70%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)

③ バス(車両総重量が3.5t以下のガソリン自動車及び軽油自動車で、令和6年1月1日以後に取得したものに限る。)
イ ガソリン自動車のうち、平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物の排出量が少ないもの又は平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より75%以上窒素酸化物の排出量が少ないもの及び軽油自動車のうち、平成30年排出ガス規制に適合するもの又は平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、平成21年排出ガス基準値より10%以上窒素酸化物等の排出量が少ないものに適用する環境性能割の税率は、次のとおりとする。
(イ)令和2年度燃費基準に対する達成の程度が105%以上である自動車について、非課税とする。
(ロ)令和2年度燃費基準を達成している自動車((イ)に掲げるものを除く。)について、税率を1%とする。
(ハ)(イ)及び(ロ)に掲げる自動車以外の自動車について、税率を3%とする。
ロ ガソリン自動車のうち、平成30年排出ガス規制に適合し、かつ、平成30年排出ガス基準値より25%以上窒素酸化物の排出量が少ないもの又は平成17年排出ガス規制に適合し、かつ、平成17年排出ガス基準値より50%以上窒素酸化物の排出量が少ないもの及び軽油自動車のうち、平成21年排出ガス規制に適合するものに適用する環境性能割の税率は、次のとおりとする。
(イ)令和2年度燃費基準に対する達成の程度が110%以上である自動車について、非課税とする。
(ロ)令和2年度燃費基準に対する達成の程度が105%以上である自動車((イ)に掲げるものを除く。)について、税率を1%とする。
(ハ)令和2年度燃費基準を達成している自動車((イ)及び(ロ)に掲げるものを除く。)について、税率を2%とする。
(ニ)(イ)から(ハ)までに掲げる自動車以外の自動車について、税率を3%とする。
④ トラック(車両総重量が2.5t以下のもの)
 燃費性能に関する要件を次のとおりとする。

現 行
令和6年1月1日以後
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が125%以上であるもの 令和4年度燃費基準に対する達成の程度が105%以上であるもの
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が120%以上であるもの 令和4年度燃費基準を達成しているもの
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が115%以上であるもの 令和4年度燃費基準に対する達成の程度が95%以上であるもの

⑤ トラック(車両総重量が2.5tを超え3.5t以下のもの)
 燃費性能に関する要件を次のとおりとする。

現 行
令和6年1月1日以後
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が120%以上であるもの 令和4年度燃費基準に対する達成の程度が105%以上であるもの
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が115%以上であるもの 令和4年度燃費基準を達成しているもの
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が110%以上であるもの 令和4年度燃費基準に対する達成の程度が95%以上であるもの
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が105%以上であるもの

⑥ バス・トラック(車両総重量が3.5tを超えるもの)
 燃費性能に関する要件を次のとおりとする。

現 行
令和6年1月1日以後
令和7年4月1日以後
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が110%以上であるもの 平成27年度燃費基準に対する達成の程度が115%以上であるもの 令和7年度燃費基準に対する達成の程度が105%以上であるもの
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が105%以上であるもの 平成27年度燃費基準に対する達成の程度が110%以上であるもの 令和7年度燃費基準を達成しているもの
平成27年度燃費基準を達成しているもの 平成27年度燃費基準に対する達成の程度が105%以上であるもの 令和7年度燃費基準に対する達成の程度が95%以上であるもの

(2)令和4年4月1日から令和5年3月31日までの間に取得した軽油自動車(乗用車に限る。)のうち、平成30年排出ガス規制又は平成21年排出ガス規制に適合し、かつ、令和12年度燃費基準に対する達成の程度が60%以上であり、かつ、令和2年度燃費基準を達成しているものに係る環境性能割を非課税とする措置の適用期限を9月延長する。
(3)その他所要の措置を講ずる。
〈自動車税種別割〉
(4)種別割において講じている燃費性能等の優れた自動車の税率を軽減し、一定年数を経過した自動車の税率を重くする特例措置(いわゆる「種別割のグリーン化特例」)について、次の措置を講ずる。
① 営業用乗用車(ガソリン自動車、石油ガス自動車又は軽油自動車に限る。)
イ 現行のグリーン化特例(軽課)については、次のとおり適用期限を延長する。なお、本特例措置は延長後の適用期限の到来をもって廃止する。
(イ)税率を概ね100分の75軽減する措置の適用期限を3年延長する。
(ロ)税率を概ね100分の50軽減する措置の適用期限を2年延長する。
ロ 現行のグリーン化特例(重課)の適用期限を3年延長する。
② ①以外の自動車
 現行のグリーン化特例(軽課)及びグリーン化特例(重課)の適用期限を3年延長する。
(5)その他所要の措置を講ずる。
〈軽自動車税環境性能割〉
(6)環境性能に応じた非課税又は1%若しくは2%の税率(営業用軽自動車にあっては、非課税又は0.5%若しくは1%の税率。自家用軽自動車に係る特例措置による2%の税率を除く。)の適用区分について、次の見直しを行う。
① 乗用車
 燃費性能に関する要件を次のとおりとする。

現 行
令和6年1月1日以後
令和7年4月1日以後
令和12年度燃費基準に対する達成の程度が75%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。) 令和12年度燃費基準に対する達成の程度が80%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。) 同左
令和12年度燃費基準に対する達成の程度が60%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。) 令和12年度燃費基準に対する達成の程度が70%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。) 令和12年度燃費基準に対する達成の程度が75%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)
令和12年度燃費基準に対する達成の程度が55%以上であるもの 令和12年度燃費基準に対する達成の程度が60%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。) 令和12年度燃費基準に対する達成の程度が70%以上であるもの(令和2年度燃費基準を達成しているものに限る。)

② トラック(車両総重量が2.5t以下のもの)
 燃費性能に関する要件を次のとおりとする。

現 行
令和6年1月1日以後
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が125%以上であるもの 令和4年度燃費基準に対する達成の程度が105%以上であるもの
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が120%以上であるもの 令和4年度燃費基準を達成しているもの
平成27年度燃費基準に対する達成の程度が115%以上であるもの 令和4年度燃費基準に対する達成の程度が95%以上であるもの

(7)その他所要の措置を講ずる。
〈軽自動車税種別割〉
(8)種別割において講じている、燃費性能等の優れた軽自動車(新車に限る。)を取得した日の属する年度の翌年度分の税率を軽減する特例措置(いわゆる「種別割のグリーン化特例(軽課)」)について、次の措置を講ずる。
① 営業用乗用車(ガソリン軽自動車に限る。)
 現行のグリーン化特例(軽課)については、次のとおり適用期限を延長する。なお、本特例措置は延長後の適用期限の到来をもって廃止する。
イ 税率を概ね100分の50軽減する措置の適用期限を3年延長する。
ロ 税率を概ね100分の25軽減する措置の適用期限を2年延長する。
② ①以外の軽自動車
 現行のグリーン化特例(軽課)の適用期限を3年延長する。
(9)その他所要の措置を講ずる。
〈自動車税・軽自動車税〉
(10)自動車税及び軽自動車税の賦課徴収の特例措置について、次の見直しを行う。
① 自動車製作者等の不正行為に起因し自動車税環境性能割等の納付不足額が発生した場合の当該自動車製作者等が納付すべき自動車税環境性能割等の額は、当該納付不足額に35%(現行:10%)を乗じて計算した金額を加算した金額とする。
② ①の自動車製作者等が納付した自動車税環境性能割等の額は、その法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととする。
③ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に取得された自動車等に対して課する環境性能割並びに令和5年度分の令和6年1月1日以後に納税義務が発生した者に課する種別割及び令和6年度以後の年度分の種別割について適用する。
4 租税特別措置等
(国 税)
〔新設〕
 特定複合観光施設区域整備法の規定により認定設置運営事業者のカジノ業務に係るものとして経理される課税仕入れ等については、仕入税額控除制度の適用を認めないこととし、それに伴い、次の調整措置その他所要の措置を講ずる。ただし、当該認定設置運営事業者のその課税期間における資産の譲渡等の対価の額の合計額にカジノ業務に係る収入の合計額を加算した金額のうちに、当該カジノ業務に係る収入の合計額の占める割合が5%を超えない場合には、当該課税仕入れ等について仕入税額控除制度の対象とする。
(1)認定設置運営事業者が、調整対象固定資産に係る課税仕入れ等の税額(以下「調整対象税額」という。)についてカジノ業務以外の業務(以下「非カジノ業務」という。)の用に供するものとして仕入税額控除制度の適用を受けた場合において、当該調整対象固定資産を課税仕入れ等の日から3年以内にカジノ業務の用に供したときは、当該カジノ業務の用に供した日に応じた一定の割合を乗じた調整対象税額を同日の属する課税期間における仕入れに係る消費税額から控除し、当該控除をした後の金額を当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。
(2)認定設置運営事業者が、調整対象税額についてカジノ業務の用に供するものとして仕入税額控除制度の適用を受けなかった場合において、当該調整対象固定資産を課税仕入れ等の日から3年以内に非カジノ業務の用に供したときは、当該非カジノ業務の用に供した日に応じた一定の割合を乗じた調整対象税額を同日の属する課税期間における仕入れに係る消費税額に加算し、当該加算をした後の金額を当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日以後に開始する課税期間から適用する。
〔延長・拡充等〕
(1)入国者が輸入する紙巻たばこのたばこ税の税率の特例措置の適用期限を1年延長する。
(2)バイオエタノール等揮発油に係る課税標準の特例措置の適用期限を5年延長する。
(3)特定の用途に供する石炭に係る石油石炭税の軽減措置の適用期限を3年延長する。
(4)特定の石油製品等を特定の運送、農林漁業又は発電の用に供した場合の石油石炭税の還付措置の適用期限を3年延長する。
(5)輸入・国産農林漁業用A重油に係る石油石炭税の免税・還付措置の適用期限を5年延長する。
(6)非製品ガスに係る石油石炭税の還付措置の適用期限を5年延長する。
(7)航空機燃料税の税率の特例措置、沖縄路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置及び特定離島路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置について、次の措置を講ずる。
① 次のとおり税率を引き上げた上、その適用期限を5年延長する。

 
現 行
改正案
一般国内航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税 13,000円/㎘ 18,000円/㎘
沖縄路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税 6,500円/㎘ 9,000円/㎘
特定離島路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税 9,750円/㎘ 13,500円/㎘

② 上記①の改正は、令和5年4月1日から実施するが、激変緩和の観点から、上記①の現行の税率を2年間維持した上、税率改正の実施時期について次のとおり経過措置を講ずる。
イ 第一段階 令和7年4月1日
ロ 第二段階 令和9年4月1日
③ 上記②による税率改正の実施時期における具体的な税率は、次のとおりとする。

  現行 改正案
第一段階 第二段階
一般国内航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税 13,000円/㎘ 15,000円/㎘ 18,000円/㎘
沖縄路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税 6,500円/㎘ 7,500円/㎘ 9,000円/㎘
特定離島路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税 9,750円/㎘ 11,250円/㎘ 13,500円/㎘

(8)車両安定性制御装置等を装備した貨物自動車等に係る自動車重量税率の特例措置について、次の措置を講ずる。
① 車両総重量が8tを超えるトラック(トレーラーを除く。②において同じ。)のうち、側方衝突警報装置及び歩行者検知機能付き衝突被害軽減制動制御装置(前方障害物との衝突に対する安全性の向上を図るための装置をいう。②において同じ。)を装備したものについて、令和5年5月1日から令和6年4月30日までの間に新車に係る新規検査を受ける場合には、当該新規検査の際に納付すべき自動車重量税の税率を50%軽減する。
② バス等又は車両総重量が3.5tを超えるトラックのうち、歩行者検知機能付き衝突被害軽減制動制御装置を装備したもの(①に該当するものを除く。)について、令和5年5月1日から令和8年4月30日までの間に新車に係る新規検査を受ける場合には、当該新規検査の際に納付すべき自動車重量税の税率を25%軽減する。
(地方税)
〔新設〕
〈軽自動車税種別割〉
 特定小型原動機付自転車に係る税率を2,000円とし、道路交通法の一部を改正する法律附則第1条第3号に定める日の属する年度の翌年度(同法の施行日が4月1日の場合には、同年度)分以後の軽自動車税種別割について適用する。
〔拡充・延長等〕
〈自動車税環境性能割〉
(1)側方衝突警報装置を装備した自動車(新車に限る。)に係る自動車税環境性能割の課税標準の特例措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
① 車両総重量が8tを超えるトラック(トレーラーを除く。)で側方衝突警報装置(左側面への衝突に対する安全性の向上を図るための装置をいう。②において同じ。)及び歩行者検知機能付き衝突被害軽減制動制御装置(衝突に対する安全性の向上を図るための装置で、歩行者検知機能付きのものをいう。③において同じ。)を装備したものに係る自動車税環境性能割について、当該自動車の取得が令和5年4月1日から令和6年4月30日までの間に行われたときに限り、その通常の取得価額から350万円を控除する。
② 車両総重量が8tを超えるトラック(トレーラーを除く。)で側方衝突警報装置を装備したものに係る自動車税環境性能割について、当該自動車の取得が令和5年4月1日から令和6年4月30日までの間に行われたときに限り、その通常の取得価額から175万円を控除する。
③ バス等及び車両総重量が3.5tを超えるトラック(トレーラーを除く。)で歩行者検知機能付き衝突被害軽減制動制御装置を装備したものに係る自動車税環境性能割について、当該自動車の取得が令和5年4月1日から令和7年3月31日までの間に行われたときに限り、その通常の取得価額から175万円を控除する。
(2)都道府県の条例で定める路線の運行の用に供する一般乗合用のバスに係る自動車税環境性能割の非課税措置の適用期限を2年延長する。
(3)公共交通移動等円滑化基準に適合したノンステップバス及びリフト付きバス並びにユニバーサルデザインタクシー(新車に限る。)に係る自動車税環境性能割の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
〈航空機燃料譲与税〉
(4)航空機燃料譲与税の譲与割合を、令和5年4月1日から令和7年3月31日までの間は13分の4(現行と同じ。)、令和7年4月1日から令和9年3月31日までの間は15分の4、令和9年4月1日から令和10年3月31日までの間は9分の2とする等所要の措置を講ずる。
5 その他
(国 税)
(1)電気事業法の改正に伴い、消費税法上の生産設備等の範囲に蓄電用の電気工作物を加える。
(2)外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)について、免税購入された物品の税務署長の承認を受けない譲渡又は譲受けがされた場合には、当該物品を譲り受けた者に対して譲り渡した者と連帯してその免除された消費税を納付する義務を課すこととするほか、所要の措置を講ずる。
(注1)上記の改正は、令和5年5月1日以後に行われる課税資産の譲渡等に係る税務署長の承認を受けない譲渡又は譲受けについて適用する。
(注2)上記の改正に伴い、輸出酒類販売場制度について所要の措置を講ずる。
(3)資金決済に関する法律の改正に伴い、同法に規定する電子決済手段の譲渡について、消費税を非課税とするほか、所要の措置を講ずる。
(4)事業再構築のための私的整理法制が整備されることを前提に、消費税に係る貸倒れの範囲に事業再構築のための計画が成立したことにより債権の切捨てがあったことを加える。
(5)刑法等の一部を改正する法律による改正後の更生保護法の規定に基づく更生緊急保護に係る医療について、引き続き消費税を非課税とする。
(6)都道府県知事等から国家戦略特別区域内に所在する場合の外国の保育士資格を有する者の人員配置基準等の一定の基準を満たす旨の証明書の交付を受けた認可外保育施設において行われる保育について、消費税を非課税とする。
(7)金融サービスの提供に関する法律の改正を前提に、金融経済教育推進機構(仮称)を消費税法別表第三法人とする。
(8)原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施に関する法律の改正を前提に、使用済燃料再処理機構の業務範囲の見直し等が行われた後も、同機構を引き続き消費税法別表第三法人とする。
(9)福島国際研究教育機構の設立に伴い、同機構を消費税法別表第三法人とする。
(10)日米宇宙協力に関する枠組協定(仮称)の締結を前提に、同協定に基づき保税地域から引き取られる物品に係る消費税を免除する。
(11)税関事務管理人制度の見直しに伴い、税関長が、輸入申告に係る納税管理人及び税関事務管理人を定めなければならない者について特定税関事務管理人を指定したときは、当該特定税関事務管理人は、保税地域からの引取りに係る内国消費税に関する一定の事項を処理することとする等の所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和5年10月1日から施行する。
(12)内国消費税について、課税貨物を保税地域から引き取る特例輸入者が帳簿への記載を省略する場合に保存することとされている輸入許可書等の範囲に、これらの書類に係る電磁的記録を含めることとする。
(13)課税済み輸入製造たばこを輸出した場合におけるたばこ税の還付手続に当たって必要となる書類の記載について、輸出許可書等に係る電磁的記録に基づいて記載できることとする。
(14)石油石炭税における月別申告の特例の適用に当たって必要となる承認申請書の記載について、輸入許可書等に係る電磁的記録に基づいて記載できることとする。
(15)電気事業法の改正を前提に、電源開発促進税の課税対象である販売電気の範囲について所要の措置を講ずる。

五 国際課税
1 グローバル・ミニマム課税への対応
(国 税)
(1)各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(国税)(仮称)の創設
① 納税義務者
 内国法人は、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)を納める義務がある。ただし、公共法人については、その義務がない。
② 課税の範囲
 特定多国籍企業グループ等に属する内国法人に対して、各対象会計年度の国際最低課税額について、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)を課する。
(注1)上記の「特定多国籍企業グループ等」とは、企業グループ等(次に掲げるものをいい、多国籍企業グループ等に該当するものに限る。)のうち、各対象会計年度の直前の4対象会計年度のうち2以上の対象会計年度の総収入金額が7億5,000万ユーロ相当額以上であるものをいう。
イ 連結財務諸表等に財産及び損益の状況が連結して記載される会社等及び連結の範囲から除外される一定の会社等に係る企業集団のうち、最終親会社(他の会社等の支配持分を直接又は間接に有する会社等(他の会社等がその支配持分を直接又は間接に有しないものに限る。)をいう。)に係るもの
ロ 会社等(上記イに掲げる企業集団に属する会社等を除く。)のうち、その会社等の恒久的施設等の所在地国がその会社等の所在地国以外の国又は地域であるもの
(注2)上記(注1)の「多国籍企業グループ等」とは、次に掲げる企業グループ等をいう。
イ 上記(注1)イに掲げる企業グループ等に属する会社等の所在地国(その会社等の恒久的施設等がある場合には、その恒久的施設等の所在地国を含む。)が2以上ある場合のその企業グループ等その他これに準ずるもの
ロ 上記(注1)ロに掲げる企業グループ等
③ 税額の計算
 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)の額は、各対象会計年度の国際最低課税額(課税標準)に100分の90.7の税率を乗じて計算した金額とする。
④ 申告及び納付等
イ 特定多国籍企業グループ等に属する内国法人の各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)の申告及び納付は、各対象会計年度終了の日の翌日から1年3月(一定の場合には、1年6月)以内に行うものとする。ただし、当該対象会計年度の国際最低課税額(課税標準)がない場合は、当該申告を要しない。
ロ 電子申告の特例等については、各事業年度の所得に対する法人税と同様とし、その他所要の措置を講ずる。
⑤ その他
 質問検査、罰則等については、各事業年度の所得に対する法人税と同様とし、その他所要の措置を講ずる。
(2)特定基準法人税額に対する地方法人税(国税)(仮称)の創設
① 課税の対象
 特定多国籍企業グループ等に属する内国法人の各課税対象会計年度の特定基準法人税額には、特定基準法人税額に対する地方法人税(仮称)を課する。
② 税額の計算
イ 特定基準法人税額に対する地方法人税(仮称)の額は、各課税対象会計年度の特定基準法人税額(課税標準)に907分の93の税率を乗じて計算した金額とする。
ロ 特定基準法人税額は、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)の額とする。ただし、附帯税の額を除く。
③ 申告及び納付等
イ 特定基準法人税額に対する地方法人税(仮称)の申告及び納付は、各課税対象会計年度終了の日の翌日から1年3月(一定の場合には、1年6月)以内に行うものとする。
ロ 電子申告の特例等については、基準法人税額に対する地方法人税と同様とし、その他所要の措置を講ずる。
④ その他
 質問検査、罰則等については、基準法人税額に対する地方法人税と同様とし、その他所要の措置を講ずる。
(3)情報申告制度の創設
① 特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等である内国法人は、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等の名称、当該構成会社等の所在地国ごとの国別実効税率、当該特定多国籍企業グループ等のグループ国際最低課税額その他必要な事項等(特定多国籍企業グループ等報告事項等)を、各対象会計年度終了の日の翌日から1年3月(一定の場合には、1年6月)以内に、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により、納税地の所轄税務署長に提供しなければならない。
② 特定多国籍企業グループ等報告事項等の不提供及び虚偽報告に対する罰則を設ける。
(4)上記の改正に伴い、所要の措置を講ずる。
(5)適用関係
① 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)は、内国法人の令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用する。
② 特定基準法人税額に対する地方法人税(仮称)は、内国法人の令和6年4月1日以後に開始する課税対象会計年度から適用する。
③ 上記(3)及び(4)の改正は、内国法人の令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)について適用する。
(以上につき付記参照)
(地方税)
 法人住民税の計算の基礎となる法人税額に各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)の額を含まないこととするほか、所要の措置を講ずる。
2 外国子会社合算税制等の見直し
(国 税)
 内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例(いわゆる「外国子会社合算税制」)等について、次の見直しを行う。
(1)特定外国関係会社の各事業年度の租税負担割合が27%以上(現行:30%以上)である場合には、会社単位の合算課税の適用を免除する。
(2)申告書に添付することとされている外国関係会社に関する書類の範囲から次に掲げる部分対象外国関係会社に関する書類を除外するとともに、その書類を保存するものとする。
① 部分適用対象金額がない部分対象外国関係会社
② 部分適用対象金額が2,000万円以下であること等の要件を満たすことにより本制度が適用されない部分対象外国関係会社
(3)申告書に添付することとされている外国関係会社に関する書類(外国関係会社の株式等を直接又は間接に有する者(株主等)に関する事項を記載するものに限る。)の記載事項について、その書類に代えてその外国関係会社と株主等との関係を系統的に示した図にその記載事項の全部又は一部を記載することができることとする。
(4)上記の見直しのほか、内国法人に係る外国子会社合算税制について所要の措置を講ずる。
(5)居住者に係る外国子会社合算税制、特殊関係株主等である内国法人に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例等の関連制度につき、上記の見直しを踏まえた所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、内国法人の令和6年4月1日以後に開始する事業年度について適用する。
(地方税)
 法人住民税及び法人事業税について、内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例(いわゆる「外国子会社合算税制」)等の見直しに関する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。
3 非居住者のカジノ所得の非課税制度の創設
(国 税)
 非居住者(次に掲げる者のいずれかに該当するものを除く。)の令和9年1月1日から令和13年12月31日までの間のカジノ所得については、所得税を課さない。
(1)特定複合観光施設区域整備法の規定により入場料等を賦課するものとされている者
(2)特定複合観光施設区域整備法の規定によりカジノ行為を行ってはならないこととされている者
(注)上記の「カジノ所得」とは、カジノ行為(特定複合観光施設区域整備法の規定によるカジノ事業の免許に係るカジノ行為区画で行うその免許に係る種類及び方法のカジノ行為(同法の規定による設置運営事業の停止の命令等に違反して行われたものを除く。)に限る。)の勝金に係る一時所得をいう。
4 その他
(国 税)
(1)特定外国法人が特定金融機関等との間で行う債券現先取引に係る利子等の非課税措置の適用期限を3年延長する。
(2)クロスボーダー取引に係る利子等の課税の特例等について、次の措置を講ずる。
① 振替国債等の利子の課税の特例等について、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により税務署長に対して提出する次に掲げる書類のファイル形式を、XML形式又はCSV形式とする。
イ 非課税適用申告書等
ロ 特例書類
(注)上記の改正は、令和6年7月1日以後に提出する書類について適用する。
② 上場株式等の配当等に係る租税条約等の適用手続について、その配当等の支払の取扱者のその支払を受ける者等に関する事項の光ディスク等による税務署長に対する提供に代えて、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により提供することができることとする。
(注1)上記の電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により提供する場合におけるその提供に関するファイル形式は、CSV形式とする。
(注2)上記の改正は、令和6年7月1日以後に提供する事項について適用する。
(地方税)
 個人住民税、法人住民税及び事業税について、国税における諸制度の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。

六 納税環境整備
1 電子帳簿等保存制度の見直し
(国 税)
(1)国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度について、一定の国税関係帳簿に係る電磁的記録の保存等が、国税の納税義務の適正な履行に資するものとして一定の要件等を満たしている場合におけるその国税関係帳簿(以下「優良な電子帳簿」という。)に係る過少申告加算税の軽減措置の対象となる申告所得税及び法人税に係る優良な電子帳簿の範囲を次のとおりとする。
① 仕訳帳
② 総勘定元帳
③ 次に掲げる事項(申告所得税に係る優良な電子帳簿にあっては、ニに掲げる事項を除く。)の記載に係る上記①及び②以外の帳簿
イ 手形(融通手形を除く。)上の債権債務に関する事項
ロ 売掛金(未収加工料その他売掛金と同様の性質を有するものを含む。)その他債権に関する事項(当座預金の預入れ及び引出しに関する事項を除く。)
ハ 買掛金(未払加工料その他買掛金と同様の性質を有するものを含む。)その他債務に関する事項
ニ 有価証券(商品であるものを除く。)に関する事項
ホ 減価償却資産に関する事項
ヘ 繰延資産に関する事項
ト 売上げ(加工その他の役務の給付その他売上げと同様の性質を有するもの等を含む。)その他収入に関する事項
チ 仕入れその他経費又は費用(法人税に係る優良な電子帳簿にあっては、賃金、給料手当、法定福利費及び厚生費を除く。)に関する事項
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用する。
(2)国税関係書類に係るスキャナ保存制度について、次の見直しを行う。
① 国税関係書類をスキャナで読み取った際の解像度、階調及び大きさに関する情報の保存要件を廃止する。
② 国税関係書類に係る記録事項の入力者等に関する情報の確認要件を廃止する。
③ 相互関連性要件について、国税関係書類に関連する国税関係帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこととされる書類を、契約書・領収書等の重要書類に限定する。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に保存が行われる国税関係書類について適用する。
(3)電子取引(取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいう。以下同じ。)の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について、次の見直しを行う。
① 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存要件について、次の措置を講ずる。
イ 保存義務者が国税庁等の当該職員の質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には検索要件の全てを不要とする措置について、対象者を次のとおりとする。
(イ)その判定期間における売上高が5,000万円以下(現行:1,000万円以下)である保存義務者
(ロ)その電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力され、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている保存義務者
ロ 電磁的記録の保存を行う者等に関する情報の確認要件を廃止する。
② 電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由がある保存義務者に対する猶予措置として、申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、納税地等の所轄税務署長が当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由があると認め、かつ、当該保存義務者が質問検査権に基づく当該電磁的記録のダウンロードの求め及び当該電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする。
③ 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行のための宥恕措置は、適用期限の到来をもって廃止する。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録について適用する。
(4)その他所要の措置を講ずる。
2 加算税制度の見直し
(国 税)
 加算税制度について、次の見直しを行う。
(1)無申告加算税の割合(現行:15%(納付すべき税額が50万円を超える部分は20%))について、納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合を30%に引き上げる。
(注1)調査通知以後に、かつ、その調査があることにより更正又は決定があるべきことを予知((2)において「更正予知」という。)する前にされた期限後申告又は修正申告に基づく無申告加算税の割合(現行:10%(納付すべき税額が50万円を超える部分は15%))については、上記の納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合を25%とする。
(注2)上記の納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合について、納付すべき税額が300万円を超えることにつき納税者の責めに帰すべき事由がない場合の適用に関する所要の措置を講ずる。
(2)過去に無申告加算税又は重加算税が課されたことがある場合に無申告加算税又は重加算税の割合を10%加重する措置の対象に、期限後申告若しくは修正申告(調査通知前に、かつ、更正予知する前にされたものを除く。)又は更正若しくは決定(以下「期限後申告等」という。)があった場合において、その期限後申告等に係る国税の前年度及び前々年度の当該国税の属する税目について、無申告加算税(期限後申告又は修正申告が、調査通知前に、かつ、更正予知する前にされたものであるときに課されたものを除く。)若しくは無申告加算税に代えて課される重加算税((2)において「無申告加算税等」という。)を課されたことがあるとき、又はその無申告加算税等に係る賦課決定をすべきと認めるときに、その期限後申告等に基づき課する無申告加算税等を加える。
(注)過少申告加算税、源泉徴収等による国税に係る不納付加算税及び重加算税(無申告加算税に代えて課されるものを除く。)については、上記の見直しの対象としない。
(3)その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用する。
3 その他
(国 税)
(1)ダイレクト納付の利便性の向上
 電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により行われる期限内申告等と併せてダイレクト納付の手続が法定納期限に行われた場合(その税額が1億円以下である場合に限る。)において、法定納期限の翌日にその納付がされたときは、法定納期限に納付があったものとみなして、延滞税等に関する規定を適用するほか、これに伴う所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和6年4月1日以後に行うダイレクト納付の手続について適用する。
(2)公示送達制度の見直し
 公示送達制度について、次の見直しを行う。
① 公示送達は、公示事項をインターネットを利用する方法により不特定多数の者が閲覧することができる状態に置く措置をとるとともに、公示事項が記載された書面を税務署等の掲示場に掲示し、又は公示事項をその税務署等に設置した電子計算機の映像面に表示したものの閲覧をすることができる状態に置く措置をとることによってすることとする。
② 公示事項について、送達すべき書類の名称の公示を不要とするとともに、送達すべき書類を特定するために必要な情報を公示するための措置を講ずる。
(注)上記の改正は、他法令における公示送達制度の見直しの適用時期を踏まえ、実施する。
(3)税理士の懲戒処分等の公告方法の見直し
 税理士の懲戒処分の公告は、財務大臣が、公告事項を、相当と認める期間、インターネットを利用する方法により不特定多数の者が閲覧することができる状態に置く措置をとるとともに、官報をもって公告する方法により行うこととする(税理士であった者の懲戒処分を受けるべきであったことについての決定の公告及び税理士法人の税理士法違反行為等に対する処分の公告についても同様とする。)。
(注1)上記の改正は、令和6年4月1日から施行する。
(注2)上記の「相当と認める期間」は、概ね、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める期間として取り扱うこととする。
① 税理士業務の禁止の懲戒処分又は税理士法人の解散の命令の公告である場合 税理士等がその処分を受けた日から3年間
② 税理士業務の停止の懲戒処分等の公告である場合 税理士業務の停止の期間
③ 戒告の懲戒処分等の公告である場合 税理士等がその処分を受けた日から1月間
④ 懲戒処分を受けるべきであったことについての決定の公告である場合 税理士であった者が受けるべきであったその懲戒処分の種類に応じ上記①から③までに定める期間に準ずる期間
(4)税理士試験合格者の公告方法等の見直し
 税理士試験合格者等の公告及び税理士試験実施の日時等の公告は、国税審議会会長が、公告事項を、相当と認める期間、インターネットを利用する方法により不特定多数の者が閲覧することができる状態に置く措置をとるとともに、官報をもって公告する方法により行うこととする(国税審議会が行う公認会計士の税法に関する研修の公告、試験科目の一部の免除の認定基準の公告及び税理士試験免除に係る指定研修の公告についても同様とする。)。また、税理士試験合格者等の公告について、公告事項を受験番号(現行:氏名)とし、税理士試験全科目免除者の公告を廃止する。
(注)上記の改正は、令和6年4月1日から施行する。
(5)スマートフォン用電子証明書を利用したe-Taxの利便性の向上
 電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により申請等を行う際に送信すべき電子証明書の範囲に、スマートフォンに搭載された署名用電子証明書を加えるとともに、利用者証明用電子証明書が搭載されたスマートフォンを用いて電子情報処理組織を使用する方法により申請等又は国税の納付を行う際に、識別符号及び暗証符号の入力を要しないこととする等の所要の措置を講ずる。
(注1)上記の改正は、令和7年1月1日以後に行う申請等又は同日以後に行う国税の納付について適用する。
(注2)e-Taxの利便性の向上及び税務手続のデジタル化の推進を図る観点から、国税庁の新たな基幹システム(次世代システム)の導入時期に合わせて、処分通知等の更なる電子化に取り組む。
(6)滞納処分免脱罪の適用対象の整備
 滞納処分免脱罪の適用対象に、納税者等が滞納処分の執行又は徴収の共助の要請による徴収を免れる目的で、その現状を改変して、その財産の価額を減損し、又はその滞納処分に係る滞納処分費等を増大させる行為をした場合を加える。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後にした違反行為について適用する。
(7)徴収職員の滞納処分に関する調査手続等の見直し
 徴収職員の滞納処分に関する調査に係る質問検査権等について、次の見直しを行う。
① 滞納処分に関する調査に係る質問検査権の対象に、帳簿書類以外の物件を加える。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に新たに滞納者等に対して開始する調査に係る質問検査等について適用する。
② 滞納処分に関する調査の相手方に対し、帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)の提示又は提出を求めることができることとする(納税の猶予の申請に関する調査についても同様とするとともに、猶予の不許可事由について所要の整備を行う。)。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に新たに滞納者等に対して開始する調査に係る質問検査等又は同日以後に申請される納税の猶予について適用する。
③ 滞納処分に関する調査において滞納者等から提出された物件の預かり・返還等に関する手続を整備する(納税の猶予の申請に関する調査についても同様とする。)。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に提出される物件又は同日以後に申請される納税の猶予について適用する。
④ 滞納処分に関する調査に係る質問検査権の行使先の範囲について、滞納者に対して過去に債権又は債務があったと認めるに足りる相当の理由がある者が含まれることを法令上明確化する。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に新たに滞納者等に対して開始する調査に係る質問検査等について適用する。
⑤ その他所要の措置を講ずる。
(8)事業者等への協力要請の整備
 徴収職員は、事業者(特別の法律により設立された法人を含む。)に、滞納処分に関する調査に関し参考となるべき帳簿書類その他の物件の閲覧又は提供その他の協力を求めることができることを法令上明確化する。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に行う協力の求めについて適用する。
(9)税理士等でない者が税務相談を行った場合の命令制度の創設等
① 財務大臣は、税理士又は税理士法人でない者が税務相談を行った場合(税理士法の別段の定めにより税務相談を行った場合を除く。)において、更に反復してその税務相談が行われることにより、不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れさせ、又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けさせることによる納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすことを防止するため緊急に措置をとる必要があると認めるときは、その税理士又は税理士法人でない者に対し、その税務相談の停止その他その停止が実効的に行われることを確保するために必要な措置を講ずることを命ずることができることとする。
(注1)財務大臣は、上記の命令をしたときは、遅滞なくその旨を、相当と認める期間、インターネットを利用する方法により不特定多数の者が閲覧することができる状態に置く措置をとるとともに、官報をもって公告しなければならない。
(注2)上記(注1)の「相当と認める期間」は、概ね、上記の命令を受けた日から3年間として取り扱うこととする。
② 国税庁長官は、上記①の命令をすべきか否かを調査する必要があると認めるときは、税務相談を行った者から報告を徴し、又は当該職員をしてその者に質問し、若しくはその業務に関する帳簿書類(その電磁的記録を含む。)を検査させることができることとする。
(注)上記の質問検査等に対する拒否又は虚偽答弁等については、税理士等に対する質問検査等の場合と同様の罰則を設ける。
③ 上記①の命令について、命令違反に対する罰則を設ける。法定刑は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金とする。
④ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和6年4月1日から施行する。
(備考)令和4年度税制改正で決定された「税理士法に違反する行為又は事実に関する調査の見直し」のうち、税理士法に違反する行為又は事実に関する調査に係る質問検査等の対象に税理士業務の制限又は名称の使用制限に違反したと思料される者を加える部分については、上記の措置として講ずる。
(地方税)
(1)クラウド等を利用した給与支払報告書等の提出方法の整備
 国税において可能とされているクラウド等を利用した支払調書等の提出方法について、同様の方法により個人住民税においても給与支払報告書等の提出を行うことができることとする。
(注)上記の改正は、令和5年4月1日から施行し、eLTAXのシステム面も含めた実務的な準備が整い次第対応する。
(2)償却資産(知事・大臣配分資産)に係る固定資産税の申告・通知の電子化
① 都道府県知事又は総務大臣が評価すべき固定資産の所有者が行う申告について、eLTAXを通じて電子的に行うことができることとする。
② 都道府県知事又は総務大臣が所有者に対して行う固定資産の価格等の通知について、①により電子的に申告を行う所有者が申出をしたときは、電子的に通知する。
(注)上記の改正は、令和7年度分以後の償却資産に係る固定資産税について適用する。
(3)相続税に係る固定資産情報の通知の電子化
 令和4年度税制改正により、市町村長が相続税の課税のために税務署長に対して行うこととされた固定資産情報の通知について、eLTAXを通じて電子的に通知する。
(注)上記の改正は、令和4年度の相続税法改正法の施行の日から施行する。
(4)法人事業税に係るeLTAXを通じた団体間回送手続の対象拡大
 eLTAXを通じて行うことができる行政機関間の通知の対象に、法人事業税の確定申告書の提出期限の延長の特例等に係る通知を追加する。
(5)個人住民税における配偶者特別控除の適用に係る所要の措置
 夫婦それぞれの合計所得金額が一定の金額である場合における個人住民税の配偶者控除及び配偶者特別控除の適用関係を整理するための所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和8年度分以後の個人住民税について適用する。
(6)ふるさと納税の指定取消しに係る所要の措置
① 総務大臣は、ふるさと納税(特例控除)の対象として指定をした都道府県又は市区町村(以下「都道府県等」という。)が、指定の取消しをしようとするとき前2年以内に基準に適合していなかったと認める場合等には、指定を取り消すことができることとする。
(注)上記の改正は、都道府県等が令和5年4月1日以後に基準に適合していなかった場合等について適用する。
② 指定を取り消された都道府県等が、指定取消期間(指定の取消しの日から起算して2年間)を経過した後に指定を受けるため、申出書等を総務大臣に提出することができる期間について、所要の措置を講ずる。
③ その他所要の措置を講ずる。
(7)固定資産税及び不動産取得税に係る質問検査権の対象の明確化
 固定資産税及び不動産取得税に係る質問検査権の行使先の範囲について、納税義務者が所有する家屋の施工業者が含まれることを法令上明確化する。
(注)上記の改正は、令和6年4月1日から施行する。
(8)少額減価償却資産等に係る規定の整備
 令和4年度税制改正により、国税における少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度及び一括償却資産の損金算入制度について、対象資産から貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供した資産を除外するとされたことに伴い、償却資産に係る固定資産税について、これに準じて所要の措置を講ずる。
(9)電子帳簿等保存制度の見直し
① 地方たばこ税及び軽油引取税に係る書類(以下「地方税関係書類」という。)に係るスキャナ保存制度について、次の見直しを行う。
イ 地方税関係書類をスキャナで読み取った際の解像度、階調及び大きさに関する情報の保存要件を廃止する。
ロ 地方税関係書類に係る記録事項の入力者等に関する情報の確認要件を廃止する。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に保存が行われる地方税関係書類について適用する。
② 地方税関係書類に記載すべき事項に係る電磁的記録の保存制度について、次の見直しを行う。
イ 地方税関係書類に記載すべき事項に係る電磁的記録の保存要件について、次の措置を講ずる。
(イ)保存義務者が徴税吏員の質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には検索要件の全てを不要とする措置について、対象者を次のとおりとする。
a その判定期間における売上高が5,000万円以下(現行:1,000万円以下)である保存義務者
b その電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力され、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている保存義務者
(ロ)電磁的記録の保存を行う者等に関する情報の確認要件を廃止する。
ロ 地方税関係書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由がある保存義務者に対する猶予措置として、地方公共団体の長が当該地方税関係書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由があると認め、かつ、当該保存義務者が質問検査権に基づく当該電磁的記録のダウンロードの求め及び当該電磁的記録の出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に行う地方税関係書類に記載すべき事項に係る電磁的記録について適用する。
③ その他所要の措置を講ずる。
(10)加算金制度の見直し
 加算金制度について、次の見直しを行う。
① 不申告加算金の割合(現行:15%(納付すべき税額が50万円を超える部分は20%))について、納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合を30%に引き上げる。
(注)上記の納付すべき税額が300万円を超える部分に対する割合について、納付すべき税額が300万円を超えることにつき納税者等の責めに帰すべき事由がない場合の適用に関する所要の措置を講ずる。
② 過去に不申告加算金又は重加算金が課されたことがある場合に不申告加算金又は重加算金の割合を10%加重する措置の対象に、期限後申告若しくは修正申告(更正又は決定があるべきことを予知(以下②において「更正予知」という。)してされたものでないもの等を除く。)又は更正若しくは決定(以下②において「期限後申告等」という。)があった場合において、その期限後申告等に係る地方税の前年度及び前々年度の当該地方税の属する税目について、不申告加算金(更正予知によらないもの等を除く。)又は不申告加算金に代えて課される重加算金(以下②において「不申告加算金等」という。)に係る決定をすべきと認めるときに、その期限後申告等に基づき課する不申告加算金等を加える。
(注)過少申告加算金及び重加算金(不申告加算金に代えて課されるものを除く。)については、上記見直しの対象としない。
③ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に申告書の提出期限が到来する地方税について適用する。
(11)公示送達制度の見直し
 公示送達制度について、次の見直しを行う。
① 公示送達は、公示事項をインターネットを利用する方法により不特定多数の者が閲覧することができる状態に置く措置をとるとともに、公示事項が記載された書面を地方公共団体の掲示場に掲示し、又は公示事項をその地方公共団体の事務所に設置した電子計算機の映像面に表示したものの閲覧をすることができる状態に置く措置をとることによってすることとする。
② その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、他法令における公示送達制度の見直しの適用時期を踏まえ、実施する。
(12)滞納処分免脱罪の適用対象の整備
 滞納処分免脱罪の適用対象に、納税者等が滞納処分の執行を免れる目的で、その現状を改変して、その財産の価額を減損し、又はその滞納処分に係る滞納処分費を増大させる行為をした場合を加える。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後にした違反行為について適用する。
(13)徴収の猶予の申請に関する調査手続等の見直し
 徴収の猶予の申請に関する調査について、次の見直しを行う。
① 徴収の猶予の申請に関する調査の相手方に対し、帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)の提示又は提出を求めることができることとするとともに、猶予の不許可事由について所要の整備を行う。
② 提出された物件の預かり・返還等に関する手続を整備する。
③ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記①及び②の改正は、令和6年1月1日以後に申請される徴収の猶予について適用する。

七 関税
1 暫定税率等の適用期限の延長等
(1)令和5年3月31日に適用期限の到来する暫定税率(412品目)及び特別緊急関税制度について、令和6年3月31日まで適用期限の延長を行う。
(2)加糖調製品(6品目)について、国内産糖への支援の原資となる調整金の拡大のため、次のとおり暫定税率の引下げを行う。

関税率表番号 主な品名 現行 改正案
1806.10-1 ココア粉 23.1% 21.7%
1806.20-2-(1)-B ココアの調製品 23% 21.9%
1901.90-2-(1)-A-(b) ミルクの調製品 24.4% 23.4%
2101.11-1 コーヒーのエキス 12.1% 9.7%
2106.10-2-(1)-B たんぱく質濃縮物 11.5% 9.6%
2106.90-2-(2)-E-(a)ハ-(ロ)-Ⅲ-(Ⅰ) 乳糖を含有する調製食料品 24.4% 23.4%

(3)令和5年3月31日に適用期限の到来する航空機部分品等免税制度及び加工再輸入減税制度について、令和8年3月31日まで適用期限の延長を行う。
2 個別品目の関税率の見直し
 プロポリス原塊及びセルラーバンブーパネルの分類変更に伴い、税細分を新設することで現行の関税率を維持する。
3 急増する輸入貨物への対応
(1)輸入申告項目に「通販貨物の該否」(ECプラットフォームを利用して販売した通販貨物の場合は「ECプラットフォームの名称」を含む。)、「国内配送先」及び「輸入者の住所及び氏名」を追加する。
(2)税関事務管理人制度について、次の事項を可能とする等の規定の整備を行う。
① 税関事務管理人の届出がない場合、税関長が非居住者に対し、税関事務管理人に処理させる必要があると認められる事項(以下「特定事項」という。)を明示して、期限を指定して税関事務管理人の届出を求めること。
② 非居住者が期限までに税関事務管理人を届け出ない場合に、税関長が、国内居住者で特定事項の処理につき便宜を有する者のうち一定の国内関連者を、特定事項を処理させる税関事務管理人として指定すること。
(注)上記の「一定の国内関連者」とは、非居住者と資本関係がある等特殊な関係を有する者、関税の税額等の計算の基礎となるべき事実について非居住者との契約により密接な関係を有する者、非居住者が利用するECプラットフォームを運営する事業者等をいう。
(3)税関事務管理人の届出項目に「届出者(非居住者)の事業」、「届出者(非居住者)と税関事務管理人との関係」等を追加するとともに、届出を行う非居住者は税関事務管理人との委任関係を証する書類を提出しなければならないこととする。
4 知的財産侵害物品の認定手続における簡素化手続の対象拡大
 知的財産侵害物品の認定手続について、簡素化手続の対象に特許権、実用新案権、意匠権及び保護対象営業秘密を追加する。
5 加熱式たばこに係る簡易税率の新設等
(1)入国者が携帯する加熱式たばこに係る簡易税率を新設し、簡易税率の水準をスティック型15円/本、リキッド型50円/個とする。
(注)上記の「スティック型」とは、紙で巻いた葉たばこ等のスティックを燃焼せずに加熱して喫煙するものをいい、上記の「リキッド型」とは、カートリッジに充塡されたグリセリン等を燃焼せずに加熱して葉たばこ等が充塡された容器を経由して喫煙するもの等をいう。
(2)入国者が携帯するアルコール飲料に係る簡易税率について、現行水準(蒸留酒300円/ℓ、その他200円/ℓ)を維持する。
6 その他
(1)植物防疫法の改正により検疫検査の対象となった中古農機等を、政令上の「保税地域外に置くことができる貨物」に追加する。
(2)保税蔵置場の許可手数料等に係る初月分の納付期限を許可の日から20日以内に緩和する等の規定の整備を行う。
(3)納税環境整備に係る内国税の規定を踏まえた所要の規定の整備等を行う。

第三 検討事項
1 年金課税については、少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する中で、世代間及び世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年金、公的年金を補完する企業年金を始めとした各種年金制度間のバランス、貯蓄・投資商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランス等に留意するとともに、平成30年度税制改正の公的年金等控除の見直しの考え方や年金制度改革の方向性、諸外国の例も踏まえつつ、拠出・運用・給付を通じて課税のあり方を総合的に検討する。

2 デリバティブ取引に係る金融所得課税の更なる一体化については、意図的な租税回避行為を防止するための方策等に関するこれまでの検討の成果を踏まえ、総合的に検討する。

3 小規模企業等に係る税制のあり方については、働き方の多様化を踏まえ、個人事業主、同族会社、給与所得者の課税のバランスや勤労性所得に対する課税のあり方等にも配慮しつつ、個人と法人成り企業に対する課税のバランスを図るための外国の制度も参考に、正規の簿記による青色申告の普及を含め、記帳水準の向上を図りながら、引き続き、給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討する。

4 自動車関係諸税の見直しについては、日本の自動車戦略やインフラ整備の長期展望を踏まえるとともに、「2050年カーボンニュートラル」目標の実現に積極的に貢献するものでなければならない。その上で、自動車の枠を超えたモビリティ産業の発展に伴う経済的・社会的な受益者の広がりや保有から利用への移行、地域公共交通へのニーズの高まり、CASEに代表される環境変化にも対応するためのインフラの維持管理・機能強化の必要性等を踏まえつつ、国・地方を通じた財源を安定的に確保していくことを前提に、受益と負担の関係も含め、公平・中立・簡素な課税のあり方について、中長期的な視点に立って検討を行う。その際、電気自動車等の普及や市場の活性化等の観点から、原因者負担・受益者負担の原則を踏まえ、また、その負担分でモビリティ分野を支え、産業の成長と財政健全化の好循環の形成につなげるため、利用に応じた負担の適正化等に向けた具体的な制度の枠組みについて次のエコカー減税の期限到来時までに検討を進める。また、自動車税については、電気自動車等の普及等のカーボンニュートラルに向けた動きを考慮し、税負担の公平性を早期に確保するため、その課税趣旨を適切に踏まえた課税のあり方について、イノベーションへの影響等の多面的な観点も含め、関係者の意見を聴取しつつ検討する。

5 原料用石油製品等に係る免税・還付措置の本則化については、引き続き検討する。

6 帳簿等の税務関係書類の電子化を推進しつつ、納税者自らによる記帳が適切に行われる環境を整備することが、申告納税制度の下における適正・公平な課税の実現のみならず、経営状態の可視化による経営力の強化、バックオフィスの生産性の向上のためにも重要であることに鑑み、記帳水準の向上、トレーサビリティの確保を含む帳簿の事後検証可能性の確立の観点から、納税者側での対応可能性や事務負担、必要なコストの低減状況も考慮しつつ、税務上の透明性確保と恩典適用とのバランスも含めて、複式簿記による記帳や優良な電子帳簿の普及・一般化のための措置、記帳義務の適正な履行を担保するためのデジタル社会にふさわしい諸制度のあり方やその工程等について更なる検討を早急に行い、結論を得る。

7 事業税における社会保険診療報酬に係る実質的非課税措置及び医療法人に対する軽減税率については、税負担の公平性を図る観点や、地域医療の確保を図る観点から、そのあり方について検討する。

8 電気供給業及びガス供給業に係る収入金額による外形標準課税については、地方税体系全体における位置付けや個々の地方公共団体の税収に与える影響等も考慮しつつ、事業環境や競争状況の変化を踏まえて、その課税のあり方について、引き続き検討する。

9 妊娠時から出産・子育てまで一貫した伴走型相談支援と妊娠・出産時の10万円の経済的支援を一体的に行う「出産・子育て応援交付金」について、その事業費が満年度化する令和6年度以降において継続実施するための安定財源の確保について早急に検討を行い、結論を得る。

【付記】各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)の創設等
一 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)の基本的な仕組み
1 納税義務者
 内国法人は、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)を納める義務がある。ただし、公共法人については、その義務がない。
2 課税の範囲
 特定多国籍企業グループ等に属する内国法人に対して、各対象会計年度の国際最低課税額について、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)を課する。
3 特定多国籍企業グループ等の範囲
 特定多国籍企業グループ等は、企業グループ等(次に掲げるものをいい、多国籍企業グループ等に該当するものに限る。)のうち、各対象会計年度の直前の4対象会計年度のうち2以上の対象会計年度の総収入金額が7億5,000万ユーロ相当額以上であるものとする。
(1)連結財務諸表等に財産及び損益の状況が連結して記載される会社等及び連結の範囲から除外される一定の会社等に係る企業集団のうち、最終親会社(他の会社等の支配持分を直接又は間接に有する会社等(他の会社等がその支配持分を直接又は間接に有しないものに限る。)をいう。)に係るもの
(2)会社等(上記(1)に掲げる企業集団に属する会社等を除く。)のうち、その会社等の恒久的施設等の所在地国がその会社等の所在地国以外の国又は地域であるもの
(注1)上記の「多国籍企業グループ等」とは、次に掲げる企業グループ等をいう。
① 上記(1)に掲げる企業グループ等に属する会社等の所在地国(その会社等の恒久的施設等がある場合には、その恒久的施設等の所在地国を含む。)が2以上ある場合のその企業グループ等その他これに準ずるもの
② 上記(2)に掲げる企業グループ等
(注2)上記の「恒久的施設等」とは、会社等の所在地国以外の国又は地域(以下「他方の国」という。)においてその会社等の事業が行われる場合における次に掲げる場所等をいう。
① 租税条約等がある場合において、その租税条約等に基づいて当該他方の国における恒久的施設又はこれに相当するものとして取り扱われる事業が行われる場所等(その租税条約等(その事業から生ずる所得の範囲を定める租税条約等であって、OECDモデル租税条約等において認められる方法によりその範囲を定めるものに限る。)において当該他方の国がその恒久的施設又はこれに相当するものを通じて行われる事業から生ずる所得に対して租税を課することとされるものに限る。)
② 租税条約等がない場合において、当該他方の国が当該他方の国において行われる事業から生ずる所得に対して租税を課するときにおけるその事業が行われる場所等
③ 当該他方の国に法人の所得に対して課される租税が存在しない場合において、OECDモデル租税条約第5条の恒久的施設に該当するその事業が行われる場所等(その事業から生ずる所得の全部又は一部がOECDモデル租税条約第7条の恒久的施設帰属所得に該当するものに限る。)
④ 当該他方の国においてその会社等の事業が行われる場所等が①から③までに掲げる場所等に該当しない場合において、その会社等の所在地国がその事業から生ずる所得に対して租税を課さないときにおける当該他方の国におけるその事業が行われる場所等
4 所在地国の判定
 所在地国は、次に掲げるものの区分に応じそれぞれ次に定める国又は地域とする。
(1)会社等(導管会社等を除く。) 次に掲げる会社等の区分に応じそれぞれ次に定める国又は地域
① 国又は地域の法人税又は法人税に相当する税に関する法令において課税上の居住者とされる会社等 その国又は地域
② ①に掲げる会社等以外の会社等 その会社等が設立された国又は地域
(2)導管会社等(最終親会社等(上記3(1)の最終親会社及び上記3(2)に掲げる会社等をいう。以下同じ。)であるもの又は国若しくは地域の租税に関する法令において国際最低課税額に対する法人税に相当するものを課することとされるものに限る。) その設立された国又は地域
(3)恒久的施設等 次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める国又は地域
① 上記3(注2)①に掲げる恒久的施設等に該当する場合 上記3(注2)①の他方の国
② 上記3(注2)②に掲げる恒久的施設等に該当する場合 上記3(注2)②の他方の国
③ 上記3(注2)③に掲げる恒久的施設等に該当する場合 上記3(注2)③の他方の国
5 構成会社等の範囲
 構成会社等は、次に掲げるものとする。
(1)上記3(1)に掲げる企業グループ等に属する会社等(政府関係機関、国際機関その他の一定の会社等を除く。)
(2)(1)に掲げる会社等の恒久的施設等
(3)上記3(2)に掲げる会社等(政府関係機関、国際機関その他の一定の会社等を除く。)
(4)(3)に掲げる会社等の恒久的施設等
6 対象会計年度
 対象会計年度は、多国籍企業グループ等の最終親会社等の連結財務諸表等の作成に係る期間とする。
7 税額の計算
 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)の額は、各対象会計年度の国際最低課税額(課税標準)に100分の90.7の税率を乗じて計算した金額とする。
8 申告及び納付等
(1)特定多国籍企業グループ等に属する内国法人の各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)の申告及び納付は、各対象会計年度終了の日の翌日から1年3月(一定の場合には、1年6月)以内に行うものとする。ただし、当該対象会計年度の国際最低課税額(課税標準)がない場合は、当該申告を要しない。
(2)電子申告の特例等については、各事業年度の所得に対する法人税と同様とし、その他所要の措置を講ずる。
二 国際最低課税額(課税標準)
 国際最低課税額は、構成会社等である内国法人が属する特定多国籍企業グループ等のグループ国際最低課税額のうち、その特定多国籍企業グループ等に属する他の構成会社等(わが国を所在地国とするものを除く。)又はその特定多国籍企業グループ等に係る共同支配会社等(わが国を所在地国とするものを除く。)に配賦される会社等別国際最低課税額に対して内国法人の所有持分等を勘案して計算した帰属割合を乗じて計算した金額の合計額とする(下記1から5までを参照)。
(注)上記の「共同支配会社等」とは、次に掲げるものをいう。
① 最終親会社等の連結財務諸表等において持分法が適用される会社等で、その最終親会社等が直接又は間接に有する所有持分の割合が50%以上であるもの(特定多国籍企業グループ等の最終親会社等その他の一定の会社等を除く。)
② ①に掲げる会社等の連結財務諸表等にその財産及び損益の状況が連結して記載される会社等(政府関係機関、国際機関その他の一定の会社等を除く。)
③ ①又は②に掲げる会社等の恒久的施設等
1 グループ国際最低課税額の計算
 グループ国際最低課税額は、「構成会社等に係るグループ国際最低課税額」と「共同支配会社等に係るグループ国際最低課税額」とを合計した金額とする。
(1)構成会社等に係るグループ国際最低課税額
 構成会社等に係るグループ国際最低課税額は、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額の合計額とする。
① 構成会社等の所在地国における国別実効税率が15%(基準税率)を下回り、かつ、その所在地国に係る国別グループ純所得の金額(その所在地国を所在地国とする全ての構成会社等に係る個別計算所得金額(個別計算所得等の金額が零を超える場合におけるその零を超える額をいう。以下同じ。)の合計額からその所在地国を所在地国とする全ての構成会社等の個別計算損失金額(個別計算所得等の金額が零又は零を下回る場合のその零又はその零を下回る額をいう。以下同じ。)の合計額を控除した残額をいう。以下同じ。)がある場合 イからハまでに掲げる金額の合計額からニに掲げる金額を控除した残額
(注)上記の「国別実効税率」とは、イに掲げる金額がロに掲げる金額のうちに占める割合をいう。
イ 国別調整後対象租税額(その構成会社等の所在地国を所在地国とする全ての構成会社等の調整後対象租税額の合計額をいう。以下同じ。)
ロ 国別グループ純所得の金額
イ その所在地国に係る当期国別国際最低課税額
 (イ)に掲げる金額から(ロ)に掲げる金額を控除した残額に、基準税率からその所在地国における国別実効税率を控除した割合を乗じて計算した金額をいう。
(イ)国別グループ純所得の金額
(ロ)次に掲げる金額の合計額(実質ベースの所得除外額)
a その所在地国を所在地国とする全ての構成会社等に係る給与その他の一定の費用の額の5%に相当する金額
(注)上記の「5%」の割合について、次に掲げる対象会計年度の区分に応じそれぞれ次に定める割合とする経過措置を設ける。
(a)令和6年4月1日から同年12月31日までの間に開始する対象会計年度 9.8%
(b)令和7年中に開始する対象会計年度 9.6%
(c)令和8年中に開始する対象会計年度 9.4%
(d)令和9年中に開始する対象会計年度 9.2%
(e)令和10年中に開始する対象会計年度 9.0%
(f)令和11年中に開始する対象会計年度 8.2%
(g)令和12年中に開始する対象会計年度 7.4%
(h)令和13年中に開始する対象会計年度 6.6%
(i)令和14年中に開始する対象会計年度 5.8%
b その所在地国を所在地国とする全ての構成会社等の有形固定資産その他の一定の資産の額の5%に相当する金額
(注)上記の「5%」の割合について、次に掲げる対象会計年度の区分に応じそれぞれ次に定める割合とする経過措置を設ける。
(a)令和6年4月1日から同年12月31日までの間に開始する対象会計年度 7.8%
(b)令和7年中に開始する対象会計年度 7.6%
(c)令和8年中に開始する対象会計年度 7.4%
(d)令和9年中に開始する対象会計年度 7.2%
(e)令和10年中に開始する対象会計年度 7.0%
(f)令和11年中に開始する対象会計年度 6.6%
(g)令和12年中に開始する対象会計年度 6.2%
(h)令和13年中に開始する対象会計年度 5.8%
(i)令和14年中に開始する対象会計年度 5.4%
ロ その所在地国に係る再計算国別国際最低課税額
 その対象会計年度前に開始した各対象会計年度(ロにおいて「過去対象会計年度」という。)における当期国別国際最低課税額につき再計算を行うことが求められる場合において、当初の当期国別国際最低課税額がその過去対象会計年度終了の日後に生じた一定の事情を勘案して再計算を行った当期国別国際最低課税額に満たないときのその満たない金額をいう。
ハ その所在地国に係る未分配所得国際最低課税額
 課税分配法を適用した構成会社等(各種投資会社等に該当するものに限る。)について、個別計算所得金額のうち他の構成会社等に分配されなかった部分の金額に基準税率を乗じて計算した金額をいう。
(注1)上記の「課税分配法」とは、国別実効税率の計算において、特定多国籍企業グループ等に属する各種投資会社等の所得について、その所得が分配されたときに、その各種投資会社等の持分を有する構成会社等の所得として計算する方法をいう。
(注2)上記の「各種投資会社等」とは、次に掲げるものをいう。
(イ)投資会社等
(ロ)不動産投資会社等
(ハ)投資会社等又は不動産投資会社等が直接又は間接に有する一定の会社等
(ニ)保険投資会社等
ニ その所在地国に係る自国内国際最低課税額に係る税(わが国以外の国又は地域の租税に関する法令において、その国又は地域を所在地国とする特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等に対して課される税(その国又は地域における国別実効税率に相当する割合が基準税率に満たない場合のその満たない部分の割合その他の事情を勘案して計算される金額を課税標準とするものに限る。)又はこれに相当する税をいう。以下同じ。)の額
② 構成会社等の所在地国における国別実効税率が基準税率以上であり、かつ、その所在地国に係る国別グループ純所得の金額がある場合 イ及びロに掲げる金額の合計額からハに掲げる金額を控除した残額
イ その所在地国に係る再計算国別国際最低課税額
ロ その所在地国に係る未分配所得国際最低課税額
ハ その所在地国に係る自国内国際最低課税額に係る税の額
③ 構成会社等の所在地国に係る国別グループ純所得の金額がない場合 イ及びロに掲げる金額の合計額からニに掲げる金額を控除した残額(国別調整後対象租税額が零を下回る場合のその下回る額が特定国別調整後対象租税額を超える場合にあっては、イからハまでに掲げる金額の合計額からニに掲げる金額を控除した残額)
イ その所在地国に係る再計算国別国際最低課税額
ロ その所在地国に係る未分配所得国際最低課税額
ハ 国別調整後対象租税額が零を下回る場合のその下回る額からその所在地国に係る特定国別調整後対象租税額((イ)に掲げる金額から(ロ)に掲げる金額を控除した残額に基準税率を乗じて計算した金額をいう。)を控除した残額
(イ)その所在地国を所在地国とする全ての構成会社等の個別計算損失金額の合計額
(ロ)その所在地国を所在地国とする全ての構成会社等の個別計算所得金額の合計額
ニ その所在地国に係る自国内国際最低課税額に係る税の額
(注1)その所在地国に特定構成会社等(次に掲げる構成会社等をいう。(注1)において同じ。)とそれ以外の構成会社等がある場合における上記(1)の金額は、それぞれの特定構成会社等(その所在地国に特定構成会社等(②に掲げるものに限る。)のみで構成される企業集団がある場合にはその企業集団に属する他の特定構成会社等(②に掲げるものに限る。)を含むものとし、その所在地国に特定構成会社等(③に掲げるものに限る。)以外の他の特定構成会社等(③に掲げるものに限る。)がある場合には当該他の特定構成会社等を含む。)ごとに計算する。
① 被少数保有構成会社等(②及び③に掲げるものを除く。)
② 被少数保有親構成会社等(③に掲げるものを除く。)又は被少数保有子構成会社等(③に掲げるものを除く。)
③ 各種投資会社等
(注2)上記(注1)①の「被少数保有構成会社等」とは、最終親会社等が直接又は間接に有する所有持分の割合が30%以下である構成会社等をいう。
(注3)上記(注1)②の「被少数保有親構成会社等」とは、他の被少数保有構成会社等の支配持分を直接又は間接に有する被少数保有構成会社等(他の被少数保有構成会社等がその支配持分を直接又は間接に有しないものに限る。)をいい、「被少数保有子構成会社等」とは、被少数保有親構成会社等がその支配持分を直接又は間接に有する被少数保有構成会社等をいう。
(注4)構成会社等が無国籍構成会社等(構成会社等のうち所在地国がないものをいう。)である場合における上記(1)の金額は、その無国籍構成会社等ごとに計算する点や実質ベースの所得除外額の控除が認められない点等を除き、基本的に同様の計算とする。
(2)共同支配会社等に係るグループ国際最低課税額
 特定多国籍企業グループ等に係る共同支配会社等に係る「共同支配会社等に係るグループ国際最低課税額」の計算については、基本的に「構成会社等に係るグループ国際最低課税額」の計算と同様とする。
2 会社等別国際最低課税額の計算
 会社等別国際最低課税額は、「グループ国際最低課税額」のうち、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等(わが国を所在地国とするものを除く。)の所在地国に係る上記1(1)①から③までに定める金額に、その構成会社等の個別計算所得金額がその所在地国を所在地国とする全ての構成会社等の個別計算所得金額の合計額のうちに占める割合等を乗じて計算した金額とする。
(注)共同支配会社等(わが国を所在地国とするものを除く。)に係る会社等別国際最低課税額の計算についても、基本的に構成会社等に係る会社等別国際最低課税額の計算と同様とする。
3 国際最低課税額の計算
 国際最低課税額は、内国法人が所有持分を有する次に掲げる構成会社等(恒久的施設等を除く。3において同じ。)の区分に応じそれぞれ次に定めるところにより計算した金額を合計した金額とする。
(1)その内国法人(その構成会社等の最終親会社等、中間親会社等(その構成会社等に係る各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)又は外国におけるこれに相当する税を課することとされる最終親会社等がある場合における中間親会社等その他の一定の要件を満たす中間親会社等を除く。(2)において同じ。)又は被部分保有親会社等(その構成会社等に係る各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)又は外国におけるこれに相当する税を課することとされる他の被部分保有親会社等がその被部分保有親会社等の持分の全部を直接又は間接に有する場合におけるその被部分保有親会社等を除く。(2)において同じ。)に限るものとし、その所在地国がわが国でないものを除く。3において同じ。)がその所有持分を直接又は間接に有する構成会社等((2)に掲げるものを除く。) その構成会社等のその対象会計年度に係る会社等別国際最低課税額に帰属割合(その内国法人の所有持分等を勘案して計算した割合をいう。(2)において同じ。)を乗じて計算した金額
(2)その内国法人がその所有持分を他の構成会社等を通じて間接に有する構成会社等(当該他の構成会社等(その構成会社等の中間親会社等又は被部分保有親会社等に該当するものに限る。)がその構成会社等のその対象会計年度に係る国際最低課税額等(その対象会計年度に係る国際最低課税額及び外国におけるこれに相当するものをいう。)を有する場合におけるその構成会社等に限る。) その構成会社等のその対象会計年度に係る会社等別国際最低課税額に帰属割合を乗じて計算した金額からその計算した金額のうち当該他の構成会社等に帰せられる部分の金額として計算した金額を控除した残額
(注1)上記の「被部分保有親会社等」とは、次に掲げる要件の全てを満たす一定の構成会社等をいう。
① 特定多国籍企業グループ等に属する他の構成会社等又はその特定多国籍企業グループ等に係る共同支配会社等に対する所有持分を直接又は間接に有すること。
② その特定多国籍企業グループ等に属する他の構成会社等以外の者が直接又は間接に有するその構成会社等に対する一定の所有持分の割合が20%を超えること。
(注2)内国法人が所有持分を有する会社等の恒久的施設等に係る国際最低課税額の計算については、会社等がその会社等の恒久的施設等に対して有する所有持分の割合を100%として計算する点を除き、基本的に同様の計算とする。
(注3)内国法人が所有持分を有する共同支配会社等に係る国際最低課税額の計算については、基本的に内国法人が所有持分を有する構成会社等に係る国際最低課税額の計算と同様とする。
4 個別計算所得等の金額の計算
 個別計算所得等の金額は、当期純損益金額(最終親会社等の連結財務諸表等の作成の基礎となる構成会社等の純損益をいう。以下同じ。)につき、次に掲げる調整等を行って計算した金額とする。
(1)構成会社等の恒久的施設等がある場合において、その恒久的施設等に係る個別財務諸表があるときは、その個別財務諸表に基づいて、当期純損益金額のうち恒久的施設等に帰せられる金額を計算する。また、その恒久的施設等に係る個別財務諸表がない場合は、その恒久的施設等が独立した会社等であるものとして、当期純損益金額のうち恒久的施設等に帰せられる金額を計算する。
(2)当期純損益金額のうちに含まれる次に掲げる金額等を除外する。
① 構成会社等が1年以上保有している所有持分又は一定の保有割合を有する所有持分に係る受取配当等の金額
② 国際海運所得等の金額
(注)共同支配会社等に係る個別計算所得等の金額の計算については、基本的に構成会社等に係る個別計算所得等の金額の計算と同様とする。
5 調整後対象租税額の計算
 調整後対象租税額は、国別実効税率を計算するための基準とすべき税の額として構成会社等又は共同支配会社等の当期純損益金額に係る対象租税の額及び税効果会計の適用により計上される対象租税の調整額につき、次に掲げる調整等を行って計算した金額とする。
(1)個別計算所得等の金額の計算上、恒久的施設等に帰せられる当期純損益金額がある場合には、その当期純損益金額に対応する対象租税の額についても恒久的施設等に帰せられる金額を計算する。
(2)外国子会社合算税制又は外国におけるこれに相当する税制により構成会社等又は共同支配会社等の所得相当額に対して課された税額について、一定の方法によりその構成会社等又は共同支配会社等に配分を行う。
(注)上記の「対象租税」とは、構成会社等又は共同支配会社等の所得に対する法人税その他の一定の税をいう。

三 その他
1 適用免除基準
 特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等(各種投資会社等を除く。1において同じ。)が各対象会計年度において次に掲げる要件の全てを満たす場合には、その構成会社等の所在地国における当期国別国際最低課税額は、零とする。
(1)その構成会社等の所在地国におけるその対象会計年度及びその対象会計年度の直前の2対象会計年度に係るその特定多国籍企業グループ等の収入金額の平均額として計算した金額が1,000万ユーロ相当額に満たないこと。
(2)その構成会社等の所在地国におけるその対象会計年度及びその対象会計年度の直前の2対象会計年度に係るその特定多国籍企業グループ等の利益又は損失の額の平均額として計算した金額が100万ユーロ相当額に満たないこと。
(注)共同支配会社等に係る適用免除基準についても、基本的に構成会社等に係る適用免除基準と同様とする。
2 一定の国別報告事項における記載事項等を用いた経過的な適用免除基準を措置するほか、所要の措置を講ずる。
3 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)は、青色申告制度の対象外とする。ただし、更正の理由付記の対象とし、推計課税の対象外とする。
 また、質問検査、罰則等については、各事業年度の所得に対する法人税と同様とし、その他所要の措置を講ずる。

四 特定基準法人税額に対する地方法人税(国税)(仮称)の創設
1 課税の対象
 特定多国籍企業グループ等に属する内国法人の各課税対象会計年度の特定基準法人税額には、特定基準法人税額に対する地方法人税(仮称)を課する。
2 税額の計算
(1)特定基準法人税額に対する地方法人税(仮称)の額は、各課税対象会計年度の特定基準法人税額(課税標準)に907分の93の税率を乗じて計算した金額とする。
(2)特定基準法人税額は、各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)の額とする。ただし、附帯税の額を除く。
3 申告及び納付等
(1)特定基準法人税額に対する地方法人税(仮称)の申告及び納付は、各課税対象会計年度終了の日の翌日から1年3月(一定の場合には、1年6月)以内に行うものとする。
(2)電子申告の特例等については、基準法人税額に対する地方法人税と同様とし、その他所要の措置を講ずる。
4 その他
 質問検査、罰則等については、基準法人税額に対する地方法人税と同様とし、その他所要の措置を講ずる。

五 情報申告制度の創設
1 概要
 特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等である内国法人は、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等の名称、その構成会社等の所在地国ごとの国別実効税率、その特定多国籍企業グループ等のグループ国際最低課税額その他必要な事項及び上記三1の適用を受けようとする旨等(特定多国籍企業グループ等報告事項等)を、各対象会計年度終了の日の翌日から1年3月(一定の場合には、1年6月)以内に、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により、納税地の所轄税務署長に提供しなければならない。
(注1)特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供は、英語により行うものとする。
(注2)特定多国籍企業グループ等報告事項等を提供しなければならないこととされる内国法人が複数ある場合には、これらの内国法人を代表する1社が特定多国籍企業グループ等報告事項等を提供すれば足りることとする。
2 提供義務の免除
 特定多国籍企業グループ等の最終親会社等(指定提供会社等を指定した場合には、指定提供会社等。2において同じ。)の所在地国の税務当局がその特定多国籍企業グループ等に係る特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供をわが国に対して行うことができると認められるときは、その特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供義務者である内国法人の提供義務を免除する。
 ただし、特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供義務が免除される内国法人は、その特定多国籍企業グループ等の最終親会社等に関する情報(最終親会社等届出事項)を、各対象会計年度終了の日の翌日から1年3月(一定の場合には、1年6月)以内に、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により、納税地の所轄税務署長に提供しなければならない。
(注1)上記の「指定提供会社等」とは、特定多国籍企業グループ等報告事項等を提供する者として最終親会社等が指定した構成会社等をいう。
(注2)最終親会社等届出事項を提供しなければならないこととされる内国法人が複数ある場合には、これらの内国法人を代表する1社が最終親会社等届出事項を提供すれば足りることとする。
3 その他
 特定多国籍企業グループ等報告事項等の不提供及び虚偽報告に対する罰則を設ける。

六 上記の改正に伴い、所要の措置を講ずる。

七 適用関係
1 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)は、内国法人の令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から適用する。
2 特定基準法人税額に対する地方法人税(仮称)は、内国法人の令和6年4月1日以後に開始する課税対象会計年度から適用する。
3 上記五及び六の改正は、内国法人の令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税(仮称)について適用する。