令和6年度税制改正大綱

 

令和5年12月14日
自由民主党
公明党

目次

第一 令和6年度税制改正の基本的考え方------------------------1
第二 令和6年度税制改正の具体的内容
-------------------------26
 一 個人所得課税--------------------------------------26
 二 資産課税------------------------------------------47
 三 法人課税------------------------------------------64
 四 消費課税------------------------------------------93
 五 国際課税------------------------------------------104
 六 納税環境整備--------------------------------------111
 七 関税---------------------------------------------117
第三 検討事項
-------------------------------------------119

第一 令和6年度税制改正の基本的考え方

 我々は、今、大きな時代の転換点にある。
 3年にわたったコロナ禍は、世界中の人々の考え方を変え、国際的な産業構造の転換を加速させた。ロシアのウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化は世界の分断を深めている。その大転換の時代に、各国が、変化の先にある「新しい世界」を目指し果敢な挑戦を始めている中、わが国はさらに、四半世紀続いたデフレからの脱却という難題に挑んできている。長きに亘るデフレ構造に慣れてしまったため、デフレ脱却の生みの苦しみである物価高を前にして、生活や事業活動に不安を覚えている方も多い。
 しかし、デフレ下では、良い製品を生み出しても、高く売れず、働きが評価されず、賃金も上がらず、経済も成長しない。さらにその状態が四半世紀に及んだ結果、世界の物価・賃金との差が拡大した。いわゆる「安いニッポン」である。デフレ構造に逆戻りするわけにはいかない、このことを社会の共通認識とする必要がある。30年ぶりの高水準の賃上げ、過去最大の民間投資など、日本経済は明らかに動き始めた。デフレ脱却・構造転換に向けた千載一遇のチャンスを逃さぬよう、この動きを止めることなく、より多くの方が享受できるようさらに拡げていく必要がある。
 継続的に賃金が増えることで、生活に対する安心が育まれ、働けば報われると実感できる社会、新しい挑戦の一歩を踏みだそうという気持ちが生まれる社会、こうしたマインドが地方や中小企業にまで浸透するような社会を築かねばならない。
それが、この数年間でわが国が達成すべき政治課題であると我々は考えている。

 上記の現状認識から、令和6年度税制改正では、まずは、物価上昇を上回る賃金上昇の実現を最優先の課題とした。岸田内閣で打ち出した新しい資本主義は、賃金上昇は、コストではなく、投資であり成長の原動力であると、大きく発想を転換した。その趣旨を税制改正の中でも明確に位置付けたものである。

 まず、所得税・個人住民税の定額減税により、今後の賃金上昇と相まって、目に見える形で可処分所得を伸ばす。賃上げ促進税制を強化し、賃上げにチャレンジする企業の裾野を広げる。さらに、中小企業の中堅企業への成長を後押しする税制も組み合わせることで、賃金が物価を上回る構造を実現し、国民がデフレ脱却のメリットを実感できる環境を作る。
 また、企業や個人が持てる能力を最大限発揮して挑戦する社会を実現することにより、人口減少下でも、世界から期待され評価される国であり続けることができる。企業や個人のそうした挑戦を後押しするため、世界の産業構造の変化に対応し、戦略分野の国内投資を大胆に支援する戦略分野国内生産促進税制を創設する。また、G7で3番目となるイノベーションボックス税制を創設し、攻めの投資が生産性の向上や賃金上昇につながる環境を整備し、企業のデフレマインドを払拭していく。
 働き手に新たな活躍の場を提供し、生産性や潜在成長率を引き上げていくには、スタートアップ・エコシステムの抜本的強化が欠かせない。令和6年度税制改正でも、ストックオプション税制の年間の権利行使価額の上限を大幅に引き上げるなど、ステージ毎の課題解決に資するようきめ細かく対応する。

 令和6年度税制改正においては、こうしたデフレ脱却に向けた税制面での取組みに加えて、税制に対する国民の信頼を高める意味においても、人口減少、経済のグローバル化など、国内外の経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直しを行う。

 まず、こどもを生み育てることを経済的理由であきらめない社会を実現するため、政府として次元の異なる少子化対策を進める中で、税制においても、子育て世帯を対象とした上乗せを行うなど、子育て支援措置を講ずる。高校生年代に支給される児童手当と扶養控除を合わせ全ての子育て世帯に対する実質的な支援を拡充する。
 また、グローバル化に対応しつつ、わが国企業の国際競争力の維持及び向上に資するよう、国際課税制度の見直しに係る国際合意に沿って、企業間の公平な競争環境の整備に資するグローバル・ミニマム課税について順次法制化を進める。
 今後とも、経済社会の構造変化を踏まえつつ、働き方への中立性の確保、世代間・世代内の公平の実現、デジタル化の活用による納税者利便の向上などの観点から、中長期的な税制の検討を進める。その際、行動変容を促す税制措置の効果分析等、EBPM(証拠に基づく政策立案:Evidence Based Policy Making)の取組みを着実に強化する。併せて、経済を立て直し、そして財政健全化に向けて取り組む中で、経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を築いていく。
 加えて、過疎化や高齢化といった地方の課題の解決及び地方活性化に向けた基盤づくりとして、地方税の充実確保を図る。また、東京一極集中が続く中、行政サービスの地域間格差が過度に生じないよう、地方公共団体間の税収の偏在状況や財政力格差の調整状況等を踏まえつつ、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に向けて取り組む。

 自由民主党・公明党の税制調査会は、責任与党として、進むべき道を指し示してきた。引き続き、これまでの議論の蓄積を踏まえ、先送りできない課題について、一つ一つ結論を出し、将来の議論にバトンを繋いでいきたい。

 以下、令和6年度税制改正の主要項目及び今後の税制改正に当たっての基本的考え方を述べる。

1.構造的な賃上げの実現
(1)所得税・個人住民税の定額減税
 前述のとおり、経済はデフレ脱却の千載一遇のチャンスにあるが、賃金上昇・消費拡大・投資拡大の好循環の実現にはまだ至っていない。このため、デフレに後戻りさせないための措置の一環として、令和6年の所得税・個人住民税の定額減税を実施し、賃金上昇と相まって、国民所得の伸びが物価上昇を上回る状況をつくり、デフレマインドの払拭と好循環の実現につなげていく。具体的には、納税者(合計所得金額1,805万円超(給与収入のみの場合、給与収入2,000万円超に相当)の高額所得者については対象外とする。)及び配偶者を含めた扶養家族1人につき、令和6年分の所得税3万円、令和6年度分の個人住民税1万円の減税を行うこととし、令和6年6月以降の源泉徴収・特別徴収等、実務上できる限り速やかに実施することとする。なお、定額減税による個人住民税の減収額は、全額国費で補填する。この定額減税の円滑な実施に向け、源泉徴収義務者・特別徴収義務者や地方公共団体が早期に準備に着手できるよう、法案の国会提出前であっても、制度の詳細についてできる限り早急に公表する。また、給付金の担当部局を含めた関係省庁や地方公共団体ともよく連携しながら、制度の趣旨・内容等について、丁寧な周知・広報を行う。今後、賃金、物価等の状況を勘案し、必要があると認めるときは、所要の家計支援の措置を検討する。

(2)賃上げ促進税制の強化
 物価高に負けない構造的・持続的な賃上げの動きをより多くの国民に拡げ、効果を深めるため、賃上げ促進税制を強化する。
 具体的には、従来の大企業のうち、物価高に負けない賃上げの牽引役として期待される常時使用従業員数2,000人超の大企業については、より高い賃上げへのインセンティブを強化する観点から、継続雇用者の給与等支給額の3%以上増加との現行の賃上げ率の要件は維持しつつ、継続雇用者の給与等支給額の増加に応じた控除率の上乗せについて、さらに高い賃上げ率の要件を創設し、従来の4%に加え、5%、さらには7%の賃上げを促していく。
 また、従来の大企業のうち、地域における賃上げと経済の好循環の担い手として期待される常時使用従業員数2,000人以下の企業については、新たに「中堅企業」と位置付けた上で、従来の賃上げ率の要件を維持しつつ、控除率を見直し、より高い賃上げを行いやすい環境を整備する。
 一方で、中小企業においては、未だその6割が欠損法人となっており、税制措置のインセンティブが必ずしも効かない構造となっている。しかし、わが国の雇用の7割は中小企業が担っており、広く国民の構造的・持続的な賃上げを果たしていくためには、こうした企業に賃上げの裾野を拡大していくことは極めて重要な課題である。こうした観点から、本税制をより使いやすいものとしていくため、従来の賃上げ要件・控除率を維持しつつ、新たに繰越控除制度を創設し、これまで本税制を活用できなかった赤字企業に対しても賃上げにチャレンジいただく後押しをする。具体的には、賃上げ促進税制の税額控除の額について、当期の税額から控除できなかった分を5年間という前例のない期間にわたって繰り越すことを可能とする。また、持続的な賃上げを実現する観点から、繰越控除する年度については、全雇用者の給与等支給額が対前年度から増加していることを要件とすることとする。
 これらの措置に加え、雇用の環境を改善するため、人材投資や働きやすい職場づくりへのインセンティブも付与することとする。具体的には、教育訓練費を増加させた場合の上乗せ要件については、令和4年度の適用実態等を踏まえ、その適用に当たって一定程度の教育訓練費を確保するための措置を講じた上で、適用要件の緩和を行い、活用を促進することとする。併せて、子育てと仕事の両立支援や女性活躍の推進の取組みを後押しする観点から、こうした取組みに積極的な企業に対する厚生労働省による認定制度(「くるみん」、「えるぼし」)を活用し、控除率の上乗せ措置を講ずる。これにより、賃上げ促進税制の最大控除率は、大企業・中堅企業については、現行の30%から見直し後は35%に、中小企業については、現行の40%から見直し後は45%に引き上がることとなる。その結果、賃上げ促進税制の位置付けは、賃金だけでない「働き方」全般にプラスの効果を及ぼすような税制措置となる。
 中小企業の賃上げには、中小企業自身の取組みに加え、大企業等の取引先への労務費も含めた適切な価格転嫁も重要な要素となる。こうした観点から、「従業員への還元」や「取引先への配慮」が必要なマルチステークホルダー方針の公表が要件となる企業の範囲を、中堅企業枠の創設に伴い拡大することとする。また、インボイス制度の実施に伴い、消費税の免税事業者との適切な関係の構築の方針についても記載が行われるよう、マルチステークホルダー方針の記載事項を明確化する。
 また、多額の内部留保を抱えながら賃上げや国内投資に消極的な企業に対し、その活用を促す等の観点から、特定税額控除規定の不適用措置について、要件を強化する。
 構造的・持続的な賃上げの動きを拡げていくことは、日本経済が成長と分配の好循環を果たしていく上で欠かすことのできない要素である。企業が支払う賃金は、賃上げ分を含めて全額が損金算入される中、これに加えて賃上げ分の最大35~45%を税額控除する本税制は、税制としては異例のものである。賃上げを思い切って後押しするためにこうした異例の措置を講じている中、企業に対しては、新たに強化された賃上げ促進税制を活用し、賞与や一時金だけではなく、ベースアップによって、強力に賃上げを実現することを期待したい。

(3)合併・事業譲渡による生産性向上を通じた中堅・中小企業の賃金引上げ
  「成長と分配の好循環」を実現するためには、三位一体の労働市場改革など、わが国の生産性を引き上げる構造的な改革が必要となる。その中で、多くの国民の生活基盤である地域経済において、経済活動の大黒柱である中小企業の生産性の向上や経営基盤の強化を促し、中堅企業へと成長を後押ししていくことが重要となる。こうした認識の下、令和6年度税制改正においては、中小企業事業再編投資損失準備金制度を拡充することとする。具体的には、成長意欲のある中堅・中小企業が、複数の中小企業を子会社化し、グループ一体となって成長していくことを後押しするため、複数回のM&Aを実施する場合には、積立率を現行の70%から最大100%に拡充し、据置期間を現行の5年から10年に延長する措置を講ずる。こうした措置により、中小企業の従業員の雇用を確保しつつ、成長分野への円滑な労働移動を確保することとする。

(4)その他考慮すべき課題
 租税特別措置については、特定の政策目的を実現するために有効な政策手法となりうる一方で、税負担の歪みを生じさせる面があることから、税制の「公平・中立・簡素」の基本原則に鑑み、真に必要なものに限定していくことが極めて重要である。このため、新たな租税特別措置の創設や拡充を行う場合は、財源を確保することに加え、いたずらに全体の項目数を増加させないことに配意すべきである。具体的には、毎年度、期限が到来するものを中心に、各措置の適用実態を検証し、政策効果や必要性を見極めた上で、廃止を含めてゼロベースで見直しを行うこととする。また、存置するものについては、各措置の政策意義、効果、性質等に応じ適切な適用期限を設定することとする。
 こうした取組みの実効性を高めるためには、政策効果の検証の質的向上が不可欠であり、税制改正要望を行う省庁のみならず、税制当局においてもEBPMの徹底に不断に取り組んでいくことが重要である。
 とりわけ、対象者に特定の行動変容を促す、いわゆる「インセンティブ措置」については、従来にも増して厳格にその効果を立証することが求められる。政策税制が単なる事後的なメリットとして存置されている事態を回避し、真にインセンティブ措置として機能することを目指す観点から、客観的なデータに基づく分析・検証が行われるべきである。令和6年度税制改正においては、これまでの賃上げ促進税制の政策効果について統計的・計量的な分析がなされ、それに基づく改正の議論が行われ、改正内容にも反映されたところであるが、今後もこの取組みをさらに発展させ、データの充実を含めたEBPMの取組みを着実に強化・進展させていく必要がある。税制調査会においては、その状況を毎年確認し、取組みを加速化させていくこととする。

2.生産性向上・供給力強化に向けた国内投資の促進
(1)戦略分野国内生産促進税制の創設
 生産性向上・供給力強化を通じて潜在成長率を引き上げるため、中長期的な経済成長を牽引し、真にわが国の供給力強化につながる分野については、集中的に国内投資を促していくことが重要となる。そのための手段として、GX、DX、経済安全保障という戦略分野において、民間として事業採算性に乗りにくいが、国として特段に戦略的な長期投資が不可欠となる投資を選定し、それらを対象として生産・販売量に比例して法人税額を控除する戦略分野国内生産促進税制を創設する。具体的な対象物資は、電気自動車等(蓄電池)、グリーンスチール、グリーンケミカル、SAF(持続可能な航空燃料)、半導体とし、物資毎に単価を設定する。措置期間を通じた控除上限は、既設の建屋等を含む生産設備全体の額とするほか、各年度の控除上限として、当期の法人税額の40%(半導体については当期の法人税額の20%)との上限を設ける。企業の投資の中長期的な予見可能性を高める観点から、措置期間を計画認定から10年間という極めて長期の措置とした上で、4年間(半導体は3年間)の税額控除の繰越期間を設ける。なお、本税制の効果を高めるための措置として、適用に当たっては、一定の賃上げ・設備投資を行っていることを要件とする。
 GX分野に該当する物資に係る措置については、GX経済移行債を活用して財源を確保し、確保された財源の範囲内で税額控除を行う。本税制は、GX経済移行債という税制以外の枠組みの中で財源を確保するとの特殊な性格を持つものであるため、こうした特殊性を踏まえ、控除上限、措置年数、繰越年数等についても、これまでの投資減税の考え方からは一線を画した措置を講ずるものである。

(2)イノベーションボックス税制の創設
 利益の源泉たるイノベーションについても国際競争が進んでおり、わが国においても、研究開発拠点としての立地競争力を強化し、民間による無形資産投資を後押しすることが喫緊の課題となっている。こうした観点から、国内で自ら行う研究開発の成果として生まれた知的財産から生じる所得に対して優遇するイノベーションボックス税制を創設する。
 具体的には、企業が国内で自ら研究開発を行った特許権又はAI分野のソフトウェアに係る著作権について、当該知的財産の国内への譲渡所得又は国内外からのライセンス所得に対して、所得の30%の所得控除を認める制度を設けることとする。これにより、対象所得については、法人税率約7%相当の税制優遇(法人実効税率ベースで見ると現在の29.74%から約20%相当まで引き下がる税制優遇)が行われることとなる。本税制は、所得全体から、知的財産から生じる所得のみを切り出して税制優遇を行うという、わが国で初の税制である。国際的に見ても、イノベーションボックス税制の創設は、G7ではフランス、イギリスに次ぐ3番目であり、海外に遜色ない制度で無形資産投資を後押ししていく。
 イノベーションボックス税制の対象範囲については、制度の執行状況や効果を十分に検証した上で、国際ルールとの整合性、官民の事務負担の検証、立証責任の所在等諸外国との違いや体制面を含めた税務当局の執行可能性等の観点から、財源確保の状況も踏まえ、状況に応じ、見直しを検討する。
 他方、本税制と一部目的が重複する研究開発税制については、試験研究費が減少した場合の控除率の引下げを行うことにより、投資を増加させるインセンティブをさらに強化するためのメリハリ付けを行う。

(3)スタートアップ・エコシステムの抜本的強化
 スタートアップは、イノベーションを生み出す主体として、生産性向上を通じて、日本経済の潜在成長率を高める重要な存在である。一方で、全体として資金や人材面で課題を抱えており、そうした課題への対応を後押ししていく必要がある。その際、課題や措置の必要性等がスタートアップのステージ毎に異なる点に留意し、ステージ毎のきめ細やかでメリハリの利いた対応を行うことが重要であり、特に資金調達に係る措置については、各ステージのリスクに応じた優遇措置とする必要がある。ときに特例的な優遇措置を設ける必要もあるが、その際は、対象がスタートアップに限定されるよう制度設計をし、その政策効果や必要性をよく見極める必要がある。また、優遇税制が租税回避に用いられやすい点にも留意し、適切な執行体制を確保することも重要である。特に所得税の優遇措置に当たっては、過度な富裕層優遇となる可能性にも留意し、公平性の観点にも配慮した制度設計を行う必要がある。こうしたスタートアップ関連税制に対する基本的な考え方の下、昨年度に引き続き、スタートアップ・エコシステムの抜本的強化のための税制措置を講ずる。
 「出口」について、現在はIPOに偏重しているが、事業規模が未拡大の段階でIPOが行われ、その後に成長が鈍化する傾向にあるとの指摘がある点は令和5年度税制改正大綱でも記載した。M&Aを促進することで、スタートアップが既存企業の資金や人材といった経営資源を活用できるようになり、その後の「事業展開」において、より力強い成長を実現することが期待される。この観点から、ストックオプション税制における保管委託要件について、企業買収時において機動的に対応できるよう、スタートアップ自身による管理の方法を新設する。さらに、主としてレイター期の人材確保に資するよう、ストックオプション税制の年間の権利行使価額の上限を、スタートアップが発行したものについて、最大で現行の3倍となる年間3,600万円への引上げを実施する。
 「入口」、「事業展開」に関して、エンジェル税制については、令和5年度税制改正により措置されたスタートアップへの再投資に係る非課税措置を含め、再投資期間の延長について、令和7年度税制改正において引き続き検討する。
 オープンイノベーション促進税制は、株式取得の一定額の所得控除を認める極めて異例の措置であり、特に、新規出資型については、取得から3年経過後は、仮に株式を譲渡したとしても免税となる仕組みとなっている。
 このように、本税制は極めて異例のものではあるが、現在、「スタートアップ育成5か年計画」が始まったばかりの時期であることに鑑み、令和6年度税制改正に限った特例的な対応として、現在のままの形で、本税制の適用期限を2年延長することとする。
 スタートアップ創出促進の観点から、令和5年度税制改正により創設された親法人の持分を一部残すスピンオフを適格株式分配とする制度について、認定計画の公表時期を見直すとともに、計画の認定要件の見直しを行った上、適用期限を4年延長する。
 発行者以外の第三者が継続的に保有する暗号資産については、一定の要件の下、期末時価評価課税の対象外とする見直しを行う。これにより、Web3.0の推進に向けた環境整備が進み、ブロックチェーン技術を活用した起業等が促進されることが期待される。

(4)税制措置の実効性を高める「メリハリ付け」
 わが国の法人税率は、これまで約40年間にわたって段階的に引き下げられ、現在の法人税率は、最高時より20%ポイント程度低い23.2%(実効税率ベースでは29.74%)となっている。こうした中で、わが国の法人税収は、足下の企業収益の伸びに比して緩やかな伸びとなっており、法人税の税収力が低下している状況にある。
 平成28年度税制改正では、稼ぐ力のある企業の税負担を軽減し、前向きな投資や継続的・積極的な賃上げが可能な体質への転換を促す観点から、法人税率20%台の実現を目指し、平成27年度から平成30年度にかけて実効税率ベースで4.88%の税率引下げが行われることとなった。これにより、企業経営者がマインドを変え、内部留保を活用して投資拡大や賃上げに取り組むことが期待された。
 しかしながら、わが国においては、長引くデフレの中での「コストカット型経済」の下で、賃金や国内投資は低迷してきた。賃金水準は実質的に見て30年間横ばいと他の先進国と比して低迷し、国内設備投資も海外設備投資と比して大きく伸び悩んできた。その結果、労働の価値、モノの価値、企業の価値で見ても、いわゆる「安いニッポン」が指摘されるような事態に陥っている。その一方で、大企業を中心に企業収益が高水準にあったことや、中小企業においても守りの経営が定着していたことなどを背景に、足下、企業の内部留保は555兆円と名目GDPに匹敵する水準まで増加しており、企業が抱える現預金等も300兆円を超える水準に達している。
 こうした状況に鑑みれば、令和4年度税制改正大綱において指摘した通り、近年の累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかったと言わざるを得ない。わが国が、「コストカット型経済」から転換しデフレを完全に脱却するには、企業が収益を現預金等として保有し続けるのではなく、賃金の引上げや前向きな投資、人への投資に積極的に振り向けるなど、供給サイドの構造改革を進め、企業のチャレンジと改革を大胆に後押ししていく必要がある。
 一方で、物価高等により家計の負担は増えている。賃金、物価等の状況を勘案し、必要があると認めるときは所要の家計支援の措置を検討するものの、持続的な賃上げにより家計の可処分所得を増やしていかない限り、デフレからの完全脱却は叶わない。
 こうした認識の下、令和6年度税制改正では、賃上げ促進税制や国内投資促進税制(戦略分野国内生産促進税制、イノベーションボックス税制、スタートアップ関連税制等)の強化を図ることとし、賃上げや投資に積極的な企業への後押しを行うこととしているが、その一方で、それらに消極的な企業に対しては、一定のディスインセンティブ措置により行動変容を促す取組みも行うこととしている。具体的には、戦略分野国内生産促進税制においては賃上げや設備投資の要件を設けることとし、また、イノベーションボックス税制においては、研究開発税制の見直しによるメリハリ付けをさらに強化することとしている。加えて、企業マインドを変革させ、果敢な経営判断を促す観点から、収益が拡大しているにもかかわらず賃上げにも国内投資にも消極的な企業に対しては、特定の租税特別措置の適用を停止する措置を強化することとしている。(前掲)
 こうしたメリハリ付けの観点とともに、財源の確保も重要である。巨額の財政赤字を抱えるわが国において、海外の制度を例に倣う際には、単に減税施策のみを模倣するのではなく、しっかりとした財源措置も同時に行うべきである。実際に、他の主要国では、大型の投資減税など企業行動の変容を促す減税措置を講ずる一方で、米国インフレ抑制法による大企業への15%の最低課税や自社株買い課税等による財政赤字削減、英国における法人税本則税率の引上げや欧州諸国における石油・ガス会社への課税など、しっかりとしたメリハリ付けや財源確保の取組みが行われているところである。
 OECD/G20「BEPS(注)包摂的枠組み」においてまとめられた「第2の柱」の取組みが進み、世界の法人税の引下げに係る、いわゆる「底辺への競争」(Race to the bottom)に一定の歯止めがかかるようになった中、賃上げや投資に消極的な企業に大胆な改革を促し、減税措置の実効性を高める観点からも、レベニュー・ニュートラルの観点からも、今後、法人税率の引上げも視野に入れた検討が必要である。
(注)Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転

3.経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し
(1)子育て支援に関する政策税制
 子育て世帯は、安全・快適な住宅の確保や、こどもを扶養する者に万が一のことがあった際のリスクへの備えなど、様々なニーズを抱えており、子育て支援を進めるためには、税制においてこうしたニーズを踏まえた措置を講じていく必要がある。そうした観点から、以下の①から③について、「6.扶養控除等の見直し」と併せて行う子育て支援税制として、令和7年度税制改正において以下の方向性で検討し、結論を得る。
 ただし、①及び②については、現下の急激な住宅価格の上昇等の状況を踏まえ、令和6年限りの措置として先行的に対応する。
①子育て世帯等に対する住宅ローン控除の拡充
 子育て世帯及び若者夫婦世帯における借入限度額について、子育て支援の観点からの上乗せを行う。具体的には、新築等の認定住宅については500万円、新築等のZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅については1,000万円の借入限度額の上乗せ措置を講ずる。
 また、子育て世帯においては、住宅取得において駅近等の利便性がより重視されること等を踏まえ、新築住宅の床面積要件について合計所得金額1,000万円以下の者に限り40㎡に緩和する。
 東日本大震災の被災者向け措置についても、同様に、子育て世帯及び若者夫婦世帯における借入限度額の上乗せ措置を講ずる。また、新築住宅の床面積要件を緩和する。
 なお、所得税額から控除しきれない額については、現行制度と同じ控除限度額の範囲内で個人住民税額から控除する。この措置による個人住民税の減収額は、全額国費で補填する。
②子育て世帯等に対する住宅リフォーム税制の拡充
 既存住宅のリフォームに係る特例措置について、子育て世代の居住環境の改善の観点から、子育て世帯及び若者夫婦世帯が行う一定の子育て対応改修工事を対象に加える。
③子育て世帯に対する生命保険料控除の拡充
 所得税において、生命保険料控除における新生命保険料に係る一般枠(遺族保障)について、23歳未満の扶養親族を有する場合には、現行の4万円の適用限度額に対して2万円の上乗せ措置を講ずることとする。
 なお、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除及び個人年金保険料控除の合計適用限度額については、実際の適用控除額の平均が限度額を大きく下回っている実態を踏まえ、現行の12万円から変更しない。
 また、一時払生命保険については、既に資産を一定程度保有している者が利用していると考えられ、万が一のリスクへの備えに対する自助努力への支援という本制度の趣旨と合致しないことから、これを控除の適用対象から除外する。

(2)今後の個人所得課税のあり方
①私的年金等に関する公平な税制のあり方
 働き方やライフコースが多様化する中で、雇用の流動性や経済成長との整合性なども踏まえ、税制が老後の生活や資産形成を左右しない仕組みとしていくことが、豊かな老後生活に向けた安定的な資産形成の助けとなると考えられる。
 例えば、退職金や私的年金の給付に係る課税について、給付が一時金払いか年金払いかによって税制上の取扱いが異なり、給付のあり方に中立的ではないといった指摘がある。
 また、多様で柔軟な働き方が一層拡大する中、働き方に中立的な税制を構築していくことが重要であるが、退職所得課税については、勤続年数が20年を超えると一年あたりの控除額が増加する仕組みが転職などの増加に対応していないといった指摘もある。
 こうした観点から、令和3年度税制改正大綱では、私的年金等の拠出・給付段階の課税について、諸外国の例も参考に給与・退職一時金・年金給付の間の税負担のバランスを踏まえた姿とする必要性について指摘した。
 私的年金や退職給付のあり方は、個人の生活設計にも密接に関係することなどを十分に踏まえながら、拠出・運用・給付の各段階を通じた適正かつ公平な税負担を確保できる包括的な見直しが求められる。個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入可能年齢の70歳への引上げや拠出限度額の引上げについて、令和6年の公的年金の財政検証にあわせて、所要の法制上の措置を講ずることや結論を得るとされていることも踏まえつつ、老後に係る税制について、例えば各種私的年金の共通の非課税拠出枠や従業員それぞれに私的年金等を管理する個人退職年金勘定を設けるといった議論も参考にしながら、あるべき方向性や全体像の共有を深めながら、具体的な案の検討を進めていく。
②人的控除をはじめとする各種控除の見直し
 個人所得課税については、わが国の経済社会の構造変化を踏まえ、配偶者控除等の見直し、給与所得控除・公的年金等控除・基礎控除の一体的な見直しなどの取組みを進めてきている。引き続き、格差の是正及び所得再分配機能の適切な発揮、働き方に対する中立性の確保、子育て世帯の負担への配慮といった観点から、歳出面を含めた政策全体での対応も踏まえつつ、個人所得課税における人的控除をはじめとする各種控除のあり方について検討を行う。
③記帳水準の向上等
 記帳水準の向上は、適正な税務申告の確保のみならず、経営状態を可視化し、経営の対応力を向上させる上でも重要である。加えて、売上や資産・負債等の状況が適切に記録されていれば、中小・小規模事業者による迅速な給付金の受給や融資につながるなど、日々の適正な記帳の重要性が改めて浮き彫りになっている。小規模事業者の半数以上が帳簿を手書きで作成しており、また、個人事業者の場合、正規の簿記の原則に従った記帳を行っている者は約3割にとどまっているのが現状である。また、個人の青色申告における簡易簿記は複式簿記に移行するための準備的な段階としての役割も期待されているところであるが、簡易簿記での申告者の3分の1超が10年以上簡易簿記による記帳を続けている状況にある。
 近年、普及しつつある会計ソフトを活用することにより、小規模事業者であっても大きな手間や費用をかけずに正規の簿記を行うことが可能な環境が整ってきていることも踏まえ、複式簿記による記帳をさらに普及・一般化させる方向で、納税者側での事務負担、対応可能性も十分踏まえつつ、所得税の青色申告制度の見直しを含めた個人事業者の記帳水準向上等に向けた検討を行う。

(3)グローバル化を踏まえた税制の見直し
①新たな国際課税ルールへの対応
 BEPSプロジェクトの立上げ時から国際課税改革に関する議論を一貫して主導してきたわが国にとって、令和3年10月にOECD/G20「BEPS包摂的枠組み」においてまとめられた、経済のデジタル化に伴う課税上の課題への解決策に関する国際合意の実施に向けた取組みを進めることが重要である。市場国への新たな課税権の配分(「第1の柱」)とグローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)の2つの柱からなる本国際合意のうち、「第2の柱」については、わが国企業の国際競争力の維持及び向上にもつながるものであり、令和5年度税制改正に引き続き、国際合意に則った法制化を進める。
 令和6年度税制改正において、所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule)については、OECDにより発出されたガイダンスの内容や、国際的な議論の内容を踏まえた制度の明確化等の観点から、所要の見直しを行う。国内ミニマム課税(QDMTT:Qualified Domestic Minimum Top-up Tax)を含め、OECDにおいて来年以降も引き続き実施細目が議論される見込みであるもの等については、国際的な議論を踏まえ、令和7年度税制改正以降の法制化を検討する。
 「第2の柱」の導入における国・地方の対応については、令和5年度税制改正の際の整理に従って次のとおりとする。
イ IIR・軽課税所得ルール(UTPR:Undertaxed Profits Rule)は、外国に所在する法人等が稼得する所得を基に課税する仕組みであり、課税対象と地方公共団体の行政サービスとの応益性が観念できないため、地方税である法人住民税・法人事業税(特別法人事業税を含む。以下同じ。)の課税は行わないこととし、現行の税率を基に法人税による税額と地方法人税による税額が907:93の比率となるよう制度を措置する。
ロ QDMTTは、内国法人等が稼得する所得を基に課税する仕組みであり、応益性が観念できること等を踏まえ、国・地方の法人課税の税率(法人実効税率29.74%の内訳)の比率を前提とした仕組みとする。簡素な制度とする観点から、QDMTTにおける法人住民税・法人事業税相当分については、地方法人税に含めて国で一括して課税・徴収することとし、地方交付税により地方に配分する。これらを踏まえ、法人税による税額と地方法人税による税額が753:247の比率となるよう制度を措置する。
 外国子会社合算税制については、国際的なルールにおいても「第2の柱」と併存するものとされており、「第2の柱」の導入以降も、外国子会社を通じた租税回避を抑制するための措置としてその重要性は変わらない。他方、「第2の柱」の導入により対象企業に追加的な事務負担が生じること等を踏まえ、令和5年度税制改正に引き続き、外国子会社合算税制について可能な範囲で追加的な見直しを行うとともに、令和7年度税制改正以降に見込まれる更なる「第2の柱」の法制化を踏まえて、必要な見直しを検討する。
 「第1の柱」については、多数国間条約の早期署名に向けて、引き続き国際的な議論に積極的に貢献することが重要である。今後策定される多数国間条約等の規定を基に、わが国が市場国として新たに配分される課税権に係る課税のあり方、地方公共団体に対して課税権が認められることとなる場合の課税のあり方、条約上求められる二重課税除去のあり方等について、国・地方の法人課税制度を念頭に置いて検討する。
 コロナ後の国境を越えたビジネスや人の往来の再拡大なども踏まえて、非居住者の給与課税のあり方について、今後検討を行っていく。あわせて、国際課税制度が大きな変革を迎える中、国内法制・租税条約の整備及び着実な執行など適時に十全な対応ができるよう、国税当局の体制強化を行うものとする。
②暗号資産等報告枠組み
 分散型台帳技術を使用する暗号資産等を利用した国際的な脱税及び租税回避を防止する観点から、令和4年、OECDにおいて策定された暗号資産等の取引や移転に関する自動的情報交換の報告枠組み(CARF:Crypto-Asset Reporting Framework)に基づき、非居住者の暗号資産に係る取引情報等を租税条約等に基づき各国税務当局と自動的に交換するため、国内の暗号資産取引業者等に対し非居住者の暗号資産に係る取引情報等を税務当局に報告することを義務付ける制度を整備する。
③プラットフォーム課税
 デジタルサービス市場の拡大によりプラットフォームを介して多くの国外事業者が国内市場に参入している中で、国外事業者の納めるべき消費税の捕捉や調査・徴収が課題となっている。こうした課題に対し、諸外国では、事業者に代わってプラットフォーム事業者に納税義務を課す制度(プラットフォーム課税)が導入されている。わが国においても、国内外の事業者間の競争条件の公平性や適正な課税を確保するため、プラットフォーム課税を導入する。導入に当たっては、国内の事業者に影響が出ないよう国外事業者が提供するデジタルサービスを対象とし、また、対象となるプラットフォーム事業者は、高い税務コンプライアンスや事務処理能力が求められること等を考慮して、一定の規模を有する事業者とする。
あわせて、国外事業者により行われる事業者免税点制度や簡易課税制度を利用した租税回避を防止するため、必要な制度の見直しを行う。

4.地域・中小企業の活性化等
(1)中堅・中小企業の成長を促進する税制等
 雇用の7割を抱える中小企業の成長を促し、労働生産性の高い中堅企業を育てていくことは、わが国の経済・地域の活性化の観点からも重要である。こうした認識の下、令和6年度税制改正においては、三位一体の労働市場改革の推進と併せて、成長意欲のある中堅・中小企業が、複数の中小企業をグループ化して経営資源を集約化するとともに、親会社の強みを活かすことで、グループ一体となって飛躍的な成長を遂げることができるよう、中小企業事業再編投資損失準備金制度を拡充する。具体的には、成長意欲のある中堅・中小企業が複数回のM&Aを実施する場合には、積立率を現行の70%から最大100%に拡充し、据置期間を現行の5年から10年に延長する措置を講ずる。(前掲)
 地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度について、主務大臣の確認要件の見直しを行った上で、成長志向型中堅企業に係る要件を満たす場合に機械装置等の税額控除率の引上げを行う。
 賃上げ促進税制については、従来の大企業のうち、常時使用従業員数2,000人以下の企業を新たに中堅企業と位置付けた上で、従来の賃上げ率の要件を維持し、賃上げを行いやすい環境を整備する。(前掲)
 また、地方活性化の中心的役割を担う中小企業の経済活動の活性化や、「安いニッポン」の指摘に象徴される飲食料費に係るデフレマインドを払拭する観点から、交際費課税の見直しを行うこととする。具体的には、損金不算入となる交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に係る金額基準について、会議費の実態を踏まえ、現行の1人当たり5千円以下から1万円以下に引き上げることとする。
 法人版事業承継税制については、平成30年1月から10年間の特例措置として、令和6年3月末までに特例承継計画の提出がなされた事業承継について抜本的拡充を行ったものである。コロナの影響が長期化したことを踏まえ、特例承継計画の提出期限を令和8年3月末まで2年延長する。この特例措置は、日本経済の基盤である中小企業の円滑な世代交代を通じた生産性向上が待ったなしの課題であるために事業承継を集中的に進める観点の下、贈与・相続時の税負担が生じない制度とするなど、極めて異例の時限措置としていることを踏まえ、令和9年12月末までの適用期限については今後とも延長を行わない。あわせて、個人版事業承継税制における個人事業承継計画の提出期限についても2年延長する。
 事業承継を検討している中小企業経営者及び個人事業者の方々には、適用期限が到来することを見据え、早期に事業承継に取り組むこと及び政府・関係団体には、目的達成のため一層の支援体制の構築を図ることを強く期待する。
 沖縄の復帰に伴う激変緩和措置として設けられた揮発油税及び地方揮発油税の軽減措置については、現下の原油価格の動向や燃料油価格激変緩和対策事業を実施している状況にあることなどを踏まえ、適用期限を3年延長する。次の適用期限の到来時に、本措置の趣旨、地球温暖化対策の観点、県内離島のガソリン価格への対応及び「強い沖縄経済」の実現に向けた沖縄振興策との関係などを踏まえ、そのあり方について検討する。

(2)外形標準課税
 法人事業税の外形標準課税は、平成16年度に資本金1億円超の大法人を対象に導入され、平成27、28年度税制改正において、より広く負担を分かち合い、企業の稼ぐ力を高める法人税改革の一環として、所得割の税率引下げとあわせて、段階的に拡大されてきた。外形標準課税の対象法人数は、資本金1億円以下への減資を中心とした要因により、導入時に比べて約3分の2まで減少している。このような減資には、損失処理等に充てるためではなく、財務会計上、単に資本金を資本剰余金へ項目間で振り替える減資を行っている事例も存在する。また、組織再編等の際に子会社の資本金を1億円以下に設定することにより、外形標準課税の対象範囲が実質的に縮小する事例も生じている。
 企業の稼ぐ力を高める法人税改革の趣旨や、地方税収の安定化・税負担の公平性といった制度導入の趣旨を踏まえ、中堅・中小企業のM&Aやスタートアップへの影響が生じないよう配慮しつつ、外形標準課税の適用対象法人のあり方について制度的な見直しを行う。
 まず、減資への対応として、現行基準(資本金1億円超)は維持しつつ、外形標準課税の対象である大法人に対する補充的な基準を追加する。具体的には、前事業年度に外形標準課税の対象であった法人が資本金1億円以下になった場合でも、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える場合には外形標準課税の対象とする。なお、このように今回の見直しは、外形標準課税の対象を中小企業に広げるものではない。
 加えて、親会社の信用力等を背景に事業活動を行う子会社への対応として、資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人等の100%子法人等のうち、資本金が1億円以下であって、資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超えるものを外形標準課税の対象とする。
 また、今後の外形標準課税の適用対象法人のあり方については、地域経済・企業経営への影響も踏まえながら引き続き慎重に検討を行う。

(3)土地に係る固定資産税の負担調整措置
 固定資産税は、市町村財政を支える基幹税であり、今後ともその税収の安定的な確保が不可欠である。
 土地に係る固定資産税については、平成9年度から負担水準の均衡化を進めてきた結果、令和2年度の商業地等における負担水準は、据置特例の対象となる60%から70%までの範囲(据置ゾーン)内にほぼ収斂するに至ったが、近年の地価上昇により、令和5年度の負担水準は、据置ゾーン内にある土地の割合が低下し、再びばらついた状態となっている。
 令和6年度評価替えに反映される令和2年から令和5年までの商業地の地価の状況を見ると、大都市を中心とした地価の上昇と地方における地価の下落が混在する状況が継続している。
 このため、令和6年度評価替えにおいては、大都市を中心に、地価上昇の結果、負担水準が下落し据置ゾーンを下回る土地が増加するなど、負担水準のばらつきが拡大することが見込まれるところであり、まずは、そうした土地の負担水準を据置ゾーン内に再び収斂させることに優先的に取り組むべきである。
 このような状況を踏まえ、税負担の公平性等の観点から、納税者の負担感に配慮しつつ、段階的に負担水準の均衡化を進めるため、令和6年度から令和8年度までの間、土地に係る固定資産税の負担調整の仕組みと地方公共団体の条例による減額制度を継続する。
 一方、据置特例が存在することで、据置ゾーン内における負担水準の不均衡が解消されないという課題がある。本来、同じ評価額の土地については同じ税負担を求めることが基本である。このため、税負担の公平性の観点からは更なる均衡化に向けた取組みが求められる。
 これらを踏まえ、税負担の公平性や市町村の基幹税である固定資産税の充実確保の観点から、固定資産税の負担調整措置のあり方について引き続き検討を行う。

(4)森林環境税・森林環境譲与税
 森林環境税及び森林環境譲与税は、森林の有する地球温暖化防止や災害防止等の公益的機能を維持・増進するために創設され、令和6年度に課税が開始される。森林整備をはじめとする必要な施策の推進につながる方策として、これまでの譲与税の活用実績等を踏まえ、譲与税の譲与基準について、私有林人工林面積及び人口の譲与割合の見直しを行う。その上で、今後とも、森林環境税に対する国民の理解を深めていくことが重要であることを踏まえ、全国の地方公共団体における譲与税の一層の有効活用を促していくこととする。

(5)屋外分煙施設等の整備の促進
 望まない受動喫煙対策の推進や今後の地方たばこ税の継続的かつ安定的な確保の観点から、駅前・商店街・公園などの場所における屋外分煙施設等の整備について、地方公共団体がその重要性を認識し、地方たばこ税の活用を含め、民間事業者への助成制度の創設その他の必要な予算措置を講ずるなど積極的に取り組むよう、各地方公共団体の整備方針や実施状況等の把握を行いつつ、より一層促すこととする。

5.円滑・適正な納税のための環境整備
(1)インボイス制度開始後初めての確定申告期に向けた対応等
 インボイス制度開始後初めての確定申告期に向けて、事業者においては新たな事務負担が生じていることにも配慮し、納税者や税理士が円滑に申告手続を行えるよう、売上税額から納付税額を計算できる激変緩和措置(いわゆる2割特例)等の周知に一段と努めるとともに、引き続き納税者からの相談に的確かつ丁寧に対応できるように万全の相談体制を確保する。
 また、賃上げ促進税制においても、インボイス制度の実施に伴い、消費税の免税事業者との適切な関係の構築の方針についても記載が行われるよう、マルチステークホルダー方針の記載事項を明確化する。(前掲)

(2)税務手続のデジタル化・キャッシュレス化による利便性の向上
 経済社会のデジタル化に伴い、事業経営や取引・財務に関する情報処理、決済の分野でもデジタル化が急速に進展しており、納税者が簡便かつ適正に申告・納付を行うことができるよう、税務手続のデジタル化を推進していく必要がある。このため、電子申告等の手続の簡素化や処分通知等の電子交付の拡充、法定調書の電子提出を一層進めていくための措置等を講ずる。
 近年のクラウド会計ソフト等の普及に伴う事業者のデジタル化の進展等を踏まえ、デジタルを最大限に活用し、納税者の事務負担の軽減等及び適正・公平な課税・徴収の実現を図る観点から、取引に係るやり取りから会計・税務までのデジタル化について中長期的に検討していく。また、デジタル化やキャッシュレス化に対応した税制のあり方や納付方法の多様化について引き続き検討していく。

(3)地方税務手続のデジタル化
 地方税においても更なるデジタル化に向け、地方税関係通知のうち、固定資産税、自動車税種別割等の納税通知書等について、eLTAX及びマイナポータルの更改・改修スケジュール等を考慮しつつ、納税者等からの求めに応じて、eLTAX及びマイナポータルを活用して電子的に送付する仕組みの導入に向けた取組みを進める。また、eLTAXを通じた電子納付の対象に地方税以外の地方公金を追加するための措置を講ずる。
 個人住民税において、扶養控除等を公正に適用するため、税務システムの標準化等のスケジュールを考慮しつつ、市町村が扶養に関する情報をより効率的に把握できる情報連携の仕組みを検討する。
 今後、デジタル社会の基盤として個人番号(マイナンバー)を活用することがますます重要になる。このため、課税情報とマイナンバーの紐付けが確実に行われることが必要であることから、地方公共団体において適切かつ速やかな紐付け及び副本登録が確実に行われるよう促すこととし、令和6年度中を目途に地方公共団体における実施状況のフォローアップを行う。

(4)課税・徴収関係の整備・適正化
 誠実に納税を行う納税者の税に対する公平感を損なうことがないよう、近年見られる新たな事例に対応していく必要がある。
 納税者が申告後に税額の減額を求めることができる更正の請求において、仮装・隠蔽が行われているものの、現行制度上、重加算税等が課されない事例が把握されていることを踏まえ、重加算税等の見直しを行う。
 また、法人の代表者等が不正申告を行い、法人の財産を散逸させて納税義務を免れる事例等が把握されていることを踏まえ、不正申告を行った法人の代表者等に対する徴収手続の整備等の所要の措置を講ずる。
 さらに、税務調査に対する非協力や納税者の不正への第三者による加担行為への対応について中期的に検討していく。

(5)外国人旅行者向け免税制度の見直し
 外国人旅行者向け免税制度は、平成26年度税制改正以降、免税対象に消耗品を加えるなどの大幅な制度の見直しにより、免税店数の拡大と外国人旅行者の利便性向上を図り、インバウンド消費拡大の重要な政策ツールとなってきた。観光立国の実現に向けて、引き続き、本制度の活用を推進していくことが肝要である。
 他方で、足下では多額・多量の免税購入物品が国外に持ち出されず国内での横流しが疑われる事例が多発している。また、出国時に免税購入物品を所持していない旅行者を捕捉し即時徴収を行っても、その多くが滞納となり、本制度の不正利用は看過できない状況となっている。
 こうした不正を排除しつつ、免税店が不正の排除のために負担を負うことのない制度とするため、出国時に税関において持ち出しが確認された場合に免税販売が成立する制度とする。実務的には、免税店が販売時に外国人旅行者から消費税相当額を預かり、出国時に持ち出しが確認された場合に、旅行者にその消費税相当額を返金する仕組みとなる。新制度の検討に当たっては、外国人旅行者の利便性の向上や免税店の事務負担の軽減に十分配慮しつつ、空港等での混雑防止の確保を前提として、令和7年度税制改正において、制度の詳細について結論を得る。
 さらに令和6年度税制改正においても、横流しされた免税購入物品と知りつつ仕入れた場合に、その仕入税額控除を認めないこととする措置を講ずる。

6.扶養控除等の見直し
 児童手当については、所得制限が撤廃されるとともに、支給期間について高校生年代まで延長されることとなる。
 これを踏まえ、16歳から18歳までの扶養控除について、15歳以下の取扱いとのバランスを踏まえつつ、高校生年代は子育て世帯において教育費等の支出がかさむ時期であることに鑑み、現行の一般部分(国税38万円、地方税33万円)に代えて、かつて高校実質無償化に伴い廃止された特定扶養親族に対する控除の上乗せ部分(国税25万円、地方税12万円)を復元し、高校生年代に支給される児童手当と合わせ、全ての子育て世帯に対する実質的な支援を拡充しつつ、所得階層間の支援の平準化を図ることを目指す。
 さらに、扶養控除の見直しにより、課税総所得金額や税額等が変化することで、所得税又は個人住民税におけるこれらの金額等を活用している社会保障制度や教育等の給付や負担の水準に関して不利益が生じないよう、当該制度等の所管府省において適切な措置を講じるとともに、独自に事業を実施している地方公共団体においても適切な措置が講じられるようにする必要がある。
 具体的には、各府省庁において、今回の扶養控除の見直しにより影響を受ける所管制度等を網羅的に把握し、課税総所得金額や税額等が変化することによる各制度上の不利益が生じないよう適切な対応を行うとともに、各地方公共団体において独自に実施している事業についても同様に適切な対応を行うよう周知するなど所要の対応を行う必要がある。
 扶養控除の見直しについては、令和7年度税制改正において、これらの状況等を確認することを前提に、令和6年10月からの児童手当の支給期間の延長が満年度化した後の令和8年分以降の所得税と令和9年度分以降の個人住民税の適用について結論を得る。
 ひとり親控除について、とりわけ困難な境遇に置かれているひとり親の自立支援を進める観点から、対象となるひとり親の所得要件について、現行の合計所得金額500万円以下を1,000万円以下に引き上げる。
 また、ひとり親の子育てにかかる負担の状況を踏まえ、ひとり親控除の所得税の控除額について、現行の35万円を38万円に引き上げる。合わせて、個人住民税の控除額について、現行の30万円を33万円に引き上げる。
 こうした見直しについて、令和8年分以降の所得税と令和9年度分以降の個人住民税の適用について扶養控除の見直しと合わせて結論を得る。

7.防衛力強化に係る財源確保のための税制措置
 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置については、令和5年度税制改正大綱に則って取り組む。なお、たばこ税については、加熱式たばこと紙巻たばことの間で税負担の不公平が生じている。同種・同等のものには同様の負担を求める消費課税の基本的考え方に沿って税負担差を解消することとし、この課税の適正化による増収を防衛財源に活用する。その上で、国税のたばこ税率を引き上げることとし、課税の適正化による増収と合わせ、3円/1本相当の財源を確保することとする。
 あわせて、令和5年度税制改正大綱及び上記の基本的方向性により検討を加え、その結果に基づいて適当な時期に必要な法制上の措置を講ずる趣旨を令和6年度の税制改正に関する法律の附則において明らかにするものとする。

第二 令和6年度税制改正の具体的内容

一 個人所得課税
1 所得税・個人住民税の定額減税
(国税)
 令和6年分の所得税について、定額による所得税額の特別控除を次により実施する。
(1)居住者の所得税額から、特別控除の額を控除する。ただし、その者の令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である場合に限る。
(2)特別控除の額は、次の金額の合計額とする。ただし、その合計額がその者の所得税額を超える場合には、所得税額を限度とする。
①本人 3万円
②同一生計配偶者又は扶養親族(居住者に該当する者に限る。以下「同一生計配偶者等」という。) 1人につき3万円
(3)特別控除の実施方法は、次による。
①給与所得者に係る特別控除の額の控除
イ 令和6年6月1日以後最初に支払を受ける給与等(賞与を含むものとし、給与所得者の扶養控除等申告書の提出の際に経由した給与等の支払者が支払うものに限る。)につき源泉徴収をされるべき所得税の額(以下「控除前源泉徴収税額」という。)から特別控除の額に相当する金額(当該金額が控除前源泉徴収税額を超える場合には、当該控除前源泉徴収税額に相当する金額)を控除する。
ロ 特別控除の額に相当する金額のうち、上記イ及びここに定めるところにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後令和6年中に支払われる当該給与等(同年において最後に支払われるものを除く。)に係る控除前源泉徴収税額から、順次控除する。
(注1)上記イ及びロにより控除する同一生計配偶者等に係る特別控除の額は、原則として源泉控除対象配偶者で合計所得金額が48万円以下である者又は扶養親族で居住者に該当する者について算出する。
(注2)源泉徴収の際の上記イ及びロによる控除は、現行の源泉徴収をされるべき額から行う。
(注3)上記イ及びロについて、給与所得者の扶養控除等申告書に記載した事項の異動等により特別控除の額に異動が生ずる場合には、年末調整により調整する。
ハ 上記イ及びロにより控除された後の所得税額をもって、それぞれの給与等につき源泉徴収をされるべき所得税の額とする。
ニ 令和6年分の年末調整の際に、年税額から特別控除の額を控除する。
ホ 上記イ及びニによる控除について、給与等の支払者が同一生計配偶者等を把握するための措置を講ずる。
へ 上記イの給与等の支払者は、上記イ又はロによる控除をした場合には、支払明細書に控除した額を記載することとする。
ト 上記イの給与等の支払者は、源泉徴収票の摘要の欄に控除した額等を記載することとする。
②公的年金等の受給者に係る特別控除の額の控除
イ 令和6年6月1日以後最初に厚生労働大臣等から支払を受ける公的年金等(確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金等を除く。)につき源泉徴収をされるべき所得税の額について、上記①イからハまで(上記①ロ(注3)を除く。)に準じた取扱いとする。
(注)上記イについて、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載した事項の異動等により特別控除の額に異動が生ずる場合には、確定申告により調整する。
ロ 上記イの公的年金等の支払者は、源泉徴収票の摘要の欄に控除した額等を記載することとする。
③事業所得者等に係る特別控除の額の控除
イ 令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額(7月)から本人分に係る特別控除の額に相当する金額を控除する。
ロ 特別控除の額に相当する金額のうち、第1期分予定納税額から控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、第2期分予定納税額(11月)から控除する。
(注)予定納税に係る上記イ及びロによる控除は、現行の納付すべき額から行う。
ハ 予定納税額の減額の承認の申請により、第1期分予定納税額及び第2期分予定納税額について、同一生計配偶者等に係る特別控除の額に相当する金額の控除の適用を受けることができることとする。
ニ 上記ハの措置に伴い、令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額の納期を令和6年7月1日から9月30日までの期間(現行:同年7月1日から同月31日までの期間)とするとともに、同年6月30日の現況に係る予定納税額の減額の承認の申請の期限を同年7月31日(現行:同月15日)とする。
ホ 令和6年分の所得税に係る確定申告書を提出する事業所得者等は、その提出の際に所得税額から特別控除の額を控除する。
(4)その他所要の措置を講ずる。
(注)今回の特別控除の緊要性に鑑み、これを円滑かつ早急に実施するため財務省・国税庁は直ちに必要な準備作業に着手すること。具体的には、源泉徴収義務者が早期に準備に着手できるよう、財務省・国税庁は、法案の国会提出前であっても、制度の詳細についてできる限り早急に公表するとともに、源泉徴収義務者向けのパンフレットの作成等広報活動を開始し、給付金担当を含む関係省庁や地方公共団体ともよく連携しながら、制度の趣旨・内容等について、丁寧な周知広報を行うこと。
(地方税)
 令和6年度分の個人住民税について、定額による所得割の額の特別控除を次により実施する。
(1)納税義務者の所得割の額から、特別控除の額を控除する。ただし、その者の令和6年度分の個人住民税に係る合計所得金額が1,805万円以下である場合に限る。
(2)特別控除の額は、次の金額の合計額とする。ただし、その合計額がその者の所得割の額を超える場合には、所得割の額を限度とする。
①本人 1万円
②控除対象配偶者又は扶養親族(国外居住者を除く。) 1人につき1万円
(注)控除対象配偶者を除く同一生計配偶者(国外居住者を除く。)については、令和7年度分の所得割の額から、1万円を控除する。
(3)特別控除の実施方法は、次による。
①給与所得に係る特別徴収の場合
イ 特別徴収義務者は、令和6年6月に給与の支払をする際は特別徴収を行わず、特別控除の額を控除した後の個人住民税の額の11分の1の額を令和6年7月から令和7年5月まで、それぞれの給与の支払をする際毎月徴収する。
ロ 地方公共団体は、令和6年度分の給与所得に係る個人住民税の特別徴収税額通知(納税義務者用)に控除した額等を記載することとする。
ハ 特別徴収義務者は、令和6年分の給与支払報告書の摘要の欄に所得税額から控除した額等を記載することとする。
②公的年金等に係る所得に係る特別徴収の場合
イ 令和6年10月1日以後最初に厚生労働大臣等から支払を受ける公的年金等につき特別徴収をされるべき個人住民税の額(以下「各月分特別徴収税額」という。)から特別控除の額に相当する金額(当該金額が各月分特別徴収税額を超える場合には、当該各月分特別徴収税額に相当する金額)を控除する。
ロ 特別控除の額に相当する金額のうち、上記イ及びここに定めるところにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、以後令和6年度中に特別徴収される各月分特別徴収税額から、順次控除する。
ハ 地方公共団体は、令和6年度分の公的年金等に係る所得に係る個人住民税の税額決定通知書に控除した額等を記載することとする。
ニ 特別徴収義務者は、令和6年分の公的年金等支払報告書の摘要の欄に所得税額から控除した額等を記載することとする。
③普通徴収の場合
イ 令和6年度分の個人住民税に係る第1期分の納付額から特別控除の額に相当する金額(当該金額が第1期分の納付額を超える場合には、当該第1期分の納付額に相当する金額)を控除する。
ロ 特別控除の額に相当する金額のうち、上記イ及びここに定めるところにより控除をしてもなお控除しきれない部分の金額は、第2期分以降の納付額から、順次控除する。
ハ 地方公共団体は、令和6年度分の個人住民税の税額決定通知書に控除した額等を記載することとする。
(4)道府県民税及び市町村民税における特別控除の額は以下のとおりとする。
①道府県民税における特別控除の額は、特別控除の額に、その者の道府県民税所得割の額をその者の道府県民税所得割の額と市町村民税所得割の額との合計額で除して得た数値を乗じて得た金額とする。
(注)上記の「道府県民税所得割の額」とは、特別控除の額を控除する前の道府県民税所得割の額をいい、上記の「市町村民税所得割の額」とは、特別控除の額を控除する前の市町村民税所得割の額をいう。
②市町村民税における特別控除の額は、特別控除の額から道府県民税における特別控除の額を控除して得た金額とする。
(5)特別控除の額は、他の税額控除の額を控除した後の所得割の額から控除することとする。
(6)以下の額の算定の基礎となる令和6年度分の所得割の額は、特別控除の額を控除する前の所得割の額とする。
①都道府県又は市区町村に対する寄附金税額控除(ふるさと納税)の特例控除額の控除上限額
②公的年金等に係る所得に係る仮特別徴収税額
(7)特別控除による個人住民税の減収額は、全額国費で補填する。
(8)その他所要の措置を講ずる。
(注)今回の特別控除の緊要性に鑑み、これを円滑かつ早急に実施するため、総務省は直ちに必要な準備作業に着手すること。具体的には、地方公共団体や特別徴収義務者が早期に準備に着手できるよう、法案の国会提出前であっても、制度の詳細についてできる限り早急に公表するとともに、関係省庁ともよく連携しながら、制度の趣旨・内容等について、丁寧な周知広報を行うこと。
2 金融・証券税制
(国税)
〔延長・拡充等〕
(1)特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等(ストックオプション税制)について、次の措置を講ずる。
①適用対象となる新株予約権に係る契約の要件について、「新株予約権を与えられた者と当該新株予約権の行使に係る株式会社との間で締結される一定の要件を満たす当該行使により交付をされる株式(譲渡制限株式に限る。)の管理等に関する契約に従って、当該株式会社により当該株式の管理等がされること」との要件を満たす場合には、「新株予約権の行使により取得をする株式につき金融商品取引業者等の営業所等に保管の委託等がされること」との要件を満たすことを不要とする。
②その年における新株予約権の行使に係る権利行使価額の限度額について、次のとおりとする。
イ 設立の日以後の期間が5年未満の株式会社が付与する新株予約権については、当該限度額を2,400万円(現行:1,200万円)に引き上げる。
ロ 一定の株式会社が付与する新株予約権については、当該限度額を3,600万円(現行:1,200万円)に引き上げる。
(注)上記の「一定の株式会社」とは、設立の日以後の期間が5年以上20年未満である株式会社で、金融商品取引所に上場されている株式等の発行者である会社以外の会社又は金融商品取引所に上場されている株式等の発行者である会社のうち上場等の日以後の期間が5年未満であるものをいう。
③中小企業等経営強化法施行規則の改正を前提に、適用対象となる特定従事者に係る要件について、次の見直しを行う。
イ 認定新規中小企業者等に係る要件のうち「新事業活動に係る投資及び指導を行うことを業とする者が新規中小企業者等の株式を最初に取得する時において、資本金の額が5億円未満かつ常時使用する従業員の数が900人以下の会社であること」との要件を廃止する。
ロ 社外高度人材に係る要件について、次の見直しを行う。
(イ)「3年以上の実務経験があること」との要件を、金融商品取引所に上場されている株式等の発行者である会社の役員については「1年以上の実務経験があること」とし、国家資格を有する者、博士の学位を有する者及び高度専門職の在留資格をもって在留している者については廃止する。
(ロ)社外高度人材の範囲に、次に掲げる者を加える。
a 教授及び准教授
b 金融商品取引所に上場されている株式等の発行者である会社の重要な使用人として、1年以上の実務経験がある者
c 金融商品取引所に上場されている株式等の発行者である会社以外の一定の会社の役員及び重要な使用人として、1年以上の実務経験がある者
d 製品又は役務の開発に2年以上従事した者であって、本邦の公私の機関の従業員として当該製品又は役務の開発に従事していた期間の開始時点に対し、終了時点における当該機関の全ての事業の試験研究費等が40%以上増加し、かつ、終了時点における当該機関の全ての事業の試験研究費等が2,500万円以上であること等の一定の要件を満たすもの
e 製品又は役務の販売活動に2年以上従事した者であって、本邦の公私の機関の従業員として当該製品又は役務の販売活動に従事していた期間の開始時点に対し、終了時点における当該機関の全ての事業の売上高が100%以上増加し、かつ、終了時点における当該機関の全ての事業の売上高が20億円以上であること等の一定の要件を満たすもの
f 資金調達活動に2年以上従事した者であって、本邦の公私の機関の従業員等として当該資金調達活動に従事していた期間の開始時点に対し、終了時点における当該機関の資本金等の額が100%以上増加し、かつ、終了時点における当該機関の資本金等の額が1,000万円以上であること等の一定の要件を満たすもの
④権利者が新株予約権に係る付与決議の日において当該新株予約権の行使に係る株式会社の大口株主等に該当しなかったことを誓約する書面等の提出に代えて、電磁的方法により当該書面等に記載すべき事項を記録した電磁的記録を提供できることとする等、所要の措置を講ずる。
⑤その他所要の措置を講ずる。
(2)特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等、特定新規中小企業者がその設立の際に発行した株式の取得に要した金額の控除等及び特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等並びに特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例について、次の措置を講ずる。
①特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等及び特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等について、次の措置を講ずる。
イ 適用対象となる特定新規中小企業者に該当する株式会社等により発行される特定株式の取得に要した金額の範囲に、当該特定株式が当該株式会社等により発行された一定の新株予約権の行使により取得をしたものである場合における当該新株予約権の取得に要した金額を加える。
ロ 中小企業等経営強化法施行規則の改正を前提に、適用対象に、特定新規中小企業者に該当する株式会社等により発行される特定株式を一定の信託を通じて取得をした場合を加える。
ハ 本特例の適用を受けた控除対象特定株式に係る同一銘柄株式の取得価額の計算方法について、特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例の適用を受けた控除対象特定新規株式に係る同一銘柄株式の取得価額の計算方法と同様とする見直しを行う。
②特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例について、次の措置を講ずる。
イ 適用対象となる国家戦略特別区域法に規定する特定事業を行う株式会社に係る確認手続において、次に掲げる書類については、国家戦略特別区域担当大臣へ提出する申請書への添付を要しないこととした上、その株式会社により発行される株式の発行期限を2年延長する。
(イ)株式の発行を決議した株主総会の議事録の写し、取締役の決定があったことを証する書面又は取締役会の議事録の写し
(ロ)個人が取得した株式の引受けの申込み又はその総数の引受けを行う契約を証する書面
ロ 適用対象となる地域再生法に規定する特定地域再生事業を行う株式会社に係る確認手続において、次に掲げる書類については、認定地方公共団体へ提出する申請書への添付を要しないこととした上、その株式会社により発行される株式の発行期限を2年延長する。
(イ)株式の発行を決議した株主総会の議事録の写し、取締役の決定があったことを証する書面又は取締役会の議事録の写し
(ロ)個人が取得した株式の引受けの申込み又はその総数の引受けを行う契約を証する書面
ハ 上記①イ及びロと同様の措置を講ずる。
③その他所要の措置を講ずる。
(3)公共法人等及び公益信託等に係る非課税及び金融機関等の受ける利子所得等に対する源泉徴収の不適用の適用対象に、電子記録移転有価証券表示権利等に該当する社債等であって、金融商品取引業者等によって一定の要件を満たす方法により管理されるものの利子等を加える。
(4)非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(NISA)等について、次の措置を講ずる。
①廃止通知書について、次の措置を講ずる。
イ 金融商品取引業者等の営業所の長は、廃止通知書の交付に代えて、電磁的方法により当該廃止通知書に記載すべき事項を提供できることとする。
ロ 非課税口座を開設し、又は開設していた居住者等は、廃止通知書の提出又は非課税口座開設届出書への添付に代えて、電磁的方法による当該廃止通知書に記載すべき事項の提供及び当該事項を記載した当該非課税口座開設届出書の提出等ができることとする。
②非課税口座内上場株式等について与えられた新株予約権で一定のものの行使等に際して金銭の払込みをして取得した上場株式等について、次の措置を講ずる。
イ 当該上場株式等は、非課税口座が開設されている金融商品取引業者等を経由して払込みをすること並びに金融商品取引業者等への買付けの委託等により取得した場合と同様の受入期間及び取得対価の額の合計額に係る要件その他の要件を満たす場合に限り、特定非課税管理勘定に受け入れることができることとする。
ロ 当該上場株式等を、非課税管理勘定又は特定非課税管理勘定に受け入れることができる非課税管理勘定又は特定非課税管理勘定に係る上場株式等の分割等により取得する上場株式等の範囲から除外する。
ハ 当該上場株式等を、特定口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に加える。
③非課税口座内上場株式等の配当等に係る金融商品取引業者等の要件について、国外において発行された株式の配当等に係る支払の取扱者でその者に開設されている非課税口座において当該株式のみを管理していることその他の要件を満たす場合には、口座管理機関に該当することとの要件を不要とする。
④累積投資上場株式等の要件のうち上場株式投資信託の受益者に対する信託報酬等の金額の通知に係る要件について廃止するとともに、特定非課税管理勘定で管理する公募株式投資信託については、当該特定非課税管理勘定に係る非課税口座が開設されている金融商品取引業者等は、その受益者に対して、当該公募株式投資信託に係る信託報酬等の金額を通知することとする。
⑤その他所要の措置を講ずる。
(5)特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例等について、特定口座に受け入れることができる上場株式等の範囲に、居住者等が金融商品取引業者等に開設する非課税口座及び特定口座に係る同一銘柄の上場株式等について生じた株式の分割等により取得する上場株式等(当該非課税口座又は特定口座に受け入れることができるものを除く。)を加える。
(6)次に掲げる書類又は書面の交付又は当該書面による通知をする者が、その交付又は通知を受ける者に対し、その交付又は通知に代えてこれらの書類又は書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供するための要件であるその交付又は通知を受ける者の承諾手続に、その交付又は通知を受ける者に対し期限を定めてその承諾を求め、その交付又は通知を受ける者がその期限までにこれを拒否する旨の回答をしない場合には、その交付又は通知をする者はその承諾を得たものとみなす方法を加える。
①オープン型証券投資信託の収益の分配の支払通知書
②配当等とみなす金額に関する支払通知書
③通知外国所得税の額等が記載された書面
④上場株式配当等の支払通知書
⑤特定口座年間取引報告書
⑥特定割引債の償還金の支払通知書
⑦控除外国所得税相当額等が記載された書面
(地方税)
〔延長・拡充等〕
 個人住民税について、所得税における〔延長・拡充等〕(1)、(2)及び(4)から(6)までの見直しに伴い、所要の措置を講ずる。
3 子育て支援に関する政策税制
(国税)
(1)住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除について、次の措置を講ずる。
①個人で、年齢40歳未満であって配偶者を有する者、年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者又は年齢19歳未満の扶養親族を有する者(以下「子育て特例対象個人」という。)が、認定住宅等の新築若しくは認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得又は買取再販認定住宅等の取得(以下「認定住宅等の新築等」という。)をして令和6年1月1日から同年12月31日までの間に居住の用に供した場合の住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)を次のとおりとして本特例の適用ができることとする。

住宅の区分 借入限度額
認定住宅 5,000万円
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円

②認定住宅等の新築又は認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得に係る床面積要件の緩和措置について、令和6年12月31日以前に建築確認を受けた家屋についても適用できることとする。
③その他所要の措置を講ずる。
(注1)「認定住宅等」とは、認定住宅、ZEH水準省エネ住宅及び省エネ基準適合住宅をいい、「認定住宅」とは、認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう。以下同じ。
(注2)「買取再販認定住宅等」とは、認定住宅等である既存住宅のうち宅地建物取引業者により一定の増改築等が行われたものをいう。
(注3)上記①及び②について、その他の要件等は、現行の住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除と同様とする。
(2)東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例について、次の措置を講ずる。
①子育て特例対象個人である住宅被災者が、認定住宅等の新築等をして令和6年1月1日から同年12月31日までの間に居住の用に供した場合の再建住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)を次のとおりとして本特例の適用ができることとする。

住宅の区分 借入限度額
認定住宅 5,000万円
ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅

②上記(1)②と同様の措置を講ずる。
(注)上記について、その他の要件等は、現行の東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例と同様とする。
(3)既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除について、子育て特例対象個人が、その者の所有する居住用の家屋について一定の子育て対応改修工事をして、当該居住用の家屋を令和6年4月1日から同年12月31日までの間に居住の用に供した場合を適用対象に追加し、その子育て対応改修工事に係る標準的な工事費用相当額(250万円を限度)の10%に相当する金額をその年分の所得税の額から控除できることとする。
(注1)上記の「一定の子育て対応改修工事」とは、①住宅内における子どもの事故を防止するための工事、②対面式キッチンへの交換工事、③開口部の防犯性を高める工事、④収納設備を増設する工事、⑤開口部・界壁・床の防音性を高める工事、⑥間取り変更工事(一定のものに限る。)であって、その工事に係る標準的な工事費用相当額(補助金等の交付がある場合には、当該補助金等の額を控除した後の金額)が50万円を超えること等一定の要件を満たすものをいう。
(注2)上記の「標準的な工事費用相当額」とは、子育て対応改修工事の種類ごとに標準的な工事費用の額として定められた金額に当該子育て対応改修工事を行った箇所数等を乗じて計算した金額をいう。
(注3)上記の税額控除は、その年分の合計所得金額が2,000万円を超える場合には適用しない。
(注4)その他の要件等は、既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除と同様とする。
(地方税)
 個人住民税について、所得税における(1)及び(2)の見直しに伴い、所要の措置を講ずる。この措置による個人住民税の減収額は、全額国費で補填する。
4 土地・住宅税制
(国税)
〔延長・拡充等〕
(1)収用交換等の場合の譲渡所得の5,000万円特別控除等について、次の措置を講ずる(法人税についても同様とする。)。
①適用対象に、土地収用法に規定する事業の施行者が行う当該事業の施行に伴う漁港水面施設運営権の消滅により補償金を取得する場合及び地方公共団体が漁港及び漁場の整備等に関する法律の規定に基づき公益上やむを得ない必要が生じたときに行う漁港水面施設運営権の取消しに伴う資産の消滅等により補償金を取得する場合を加える。
②障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の就労移行支援の用に供する土地等について、所要の法令改正を前提に、引き続き収用交換等の場合の譲渡所得の5,000万円特別控除等に係る簡易証明制度の対象とする。
(2)都市緑地法等の改正を前提に、特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の2,000万円特別控除について、次の措置を講ずる(法人税についても同様とする。)。
①適用対象に都市緑地法に規定する特別緑地保全地区内の土地等が同法の規定により都市緑化支援機構(仮称)(一定のものに限る。)に買い取られる場合を加えるとともに、適用対象から特別緑地保全地区内の土地等が同法の規定により緑地保全・緑化推進法人に買い取られる場合を除外する。
②適用対象に古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法に規定する歴史的風土特別保存地区内の土地等が同法の規定により都市緑化支援機構(仮称)(一定のものに限る。)に買い取られる場合を加える。
(3)特定の民間住宅地造成事業のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除の適用期限を3年延長する(法人税についても同様とする。)。
(4)特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用期限を2年延長する。
(5)居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等について、次の措置を講ずる。
①本特例の適用期限を2年延長する。
②所要の経過措置を講じた上、本特例の適用を受けようとする個人が買換資産の住宅借入金等に係る債権者に対して住宅取得資金に係る借入金等の年末残高等調書制度の適用申請書の提出をしている場合には、住宅借入金等の残高証明書の確定申告書等への添付を不要とする。
(注)上記②の改正は、令和6年1月1日以後に行う譲渡資産の譲渡について適用する。
(6)特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の適用期限を2年延長する。
(7)既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除の適用期限を2年延長する。
(8)既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除について、次の措置を講じた上、その適用期限を2年延長する。
①本税額控除の適用対象者の合計所得金額要件を2,000万円以下(現行:3,000万円以下)に引き下げる。
②本税額控除の適用対象となる省エネ改修工事のうち省エネ設備の取替え又は取付け工事について、エアコンディショナーに係る基準エネルギー消費効率の引上げに伴い、当該工事の対象設備となるエアコンディショナーの省エネルギー基準達成率を107%以上(現行:114%以上)に変更する。
(9)小笠原諸島振興開発特別措置法の期限の延長を前提に、小笠原諸島への帰島に伴う譲渡所得等の課税の特例の適用期限を5年延長する。
〔縮減等〕
 認定住宅等の新築等をした場合の所得税額の特別控除について、適用対象者の合計所得金額要件を2,000万円以下(現行:3,000万円以下)に引き下げた上、その適用期限を2年延長する。
(地方税)
〔延長・拡充等〕
(1)居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等の適用期限を2年延長する。
(2)特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の適用期限を2年延長する。
(3)個人住民税について、所得税における〔延長・拡充等〕(1)から(5)まで及び(9)の見直しに伴い、所要の措置を講ずる。
5 租税特別措置等
(国税)
〔延長・拡充〕
(1)山林所得に係る森林計画特別控除の適用期限を2年延長する。
(2)児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業による金銭の貸付けにつき、当該貸付けに係る債務の免除を受ける場合には、当該免除により受ける経済的な利益の価額については、引き続き所得税を課さないこととする。
(3)ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業の住宅支援資金貸付けによる金銭の貸付けにつき、当該貸付けに係る債務の免除を受ける場合には、当該免除により受ける経済的な利益の価額については、引き続き所得税を課さないこととする。
(4)政治活動に関する寄附をした場合の寄附金控除の特例又は所得税額の特別控除の適用期限を5年延長する。
(5)公益法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除制度について、次の措置を講ずる。
①適用対象となる学校法人又は準学校法人(以下「学校法人等」という。)の年平均の判定基準寄附者数等により判定する要件(いわゆるパブリック・サポート・テストの絶対値要件)について、学校法人等が次に掲げる要件を満たす場合には、その直前に終了した事業年度が令和6年4月1日から令和11年4月1日までの間に開始した事業年度である場合の実績判定期間を2年(現行:5年)とするとともに、判定基準寄附者数及びその判定基準寄附者に係る寄附金の額の要件を、各事業年度(現行:年平均)の判定基準寄附者数が100人以上であること及び当該寄附金の額の各事業年度(現行:年平均)の金額が30万円以上であることとする。
イ 当該学校法人等の直前に終了した事業年度終了の日以前2年内に終了した各事業年度のうち最も古い事業年度開始の日から起算して5年前の日以後に、所轄庁から特例の適用対象であることを証する書類が発行されていないこと。
ロ 私立学校法に規定する事業に関する中期的な計画その他これに準ずる計画であって、当該学校法人等の経営改善に資するものを作成していること。
(注)上記の各事業年度の判定基準寄附者数に係る要件については、現行の学校法人等の設置する学校等の定員の合計数が5,000人に満たない事業年度に係る緩和措置及び学校法人等の公益目的事業費用等の額の合計額が1億円に満たない事業年度に係る緩和措置と同様の措置を講ずる。
②国立大学法人、公立大学法人又は独立行政法人国立高等専門学校機構に対する寄附金のうち、適用対象となるその寄附金が学生等に対する修学の支援のための事業に充てられることが確実であるものの寄附金の使途に係る要件について、その使途の対象となる各法人の行う事業の範囲に、次に掲げる事業を加える。
イ 障害のある学生等に対して、個々の学生等の障害の状態に応じた合理的な配慮を提供するために必要な事業
ロ 外国人留学生と日本人学生が共同生活を営む寄宿舎の寄宿料減額を目的として次に掲げる費用の一部を負担する事業
(イ)当該寄宿舎の整備を行う場合における施設整備費
(ロ)民間賃貸住宅等を借り上げて当該寄宿舎として運営を行う場合における賃料
(注)上記イの事業については、経済的理由により修学が困難な学生等を対象とする事業であることとの要件を適用しない。
(地方税)
〔延長・拡充〕
〈個人住民税〉
(1)個人住民税について、所得税における〔延長・拡充〕(1)から(3)までの見直しに伴い、所要の措置を講ずる。
〈国民健康保険税〉
(2)病床転換助成事業の期限の延長に伴い、引き続き病床転換支援金等の納付に要する費用を含めて国民健康保険税を課する特例措置を講ずる。
6 その他
(国税)
(1)支払調書等の電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法等による提出義務制度について、提出義務の対象となるかどうかの判定基準となるその年の前々年に提出すべきであった支払調書等の枚数を30枚以上(現行:100枚以上)に引き下げる。
(注)上記の改正は、令和9年1月1日以後に提出すべき支払調書等について適用する。
(2)児童福祉法の改正に伴い、国又は地方公共団体が行う保育その他の子育てに対する助成をする事業等により給付される金品に係る非課税所得について、次の措置を講ずる。
①改正後の子育て短期支援事業に係る施設の利用に要する費用に充てるため給付される金品について、引き続き所得税を課さないこととする。
②親子関係形成支援事業に係る施設の利用に要する費用に充てるため給付される金品について、所得税を課さないこととする。
(3)所得税法及び租税特別措置法等の規定による本人確認の方法について、次の措置を講ずる。
①行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の改正に伴い、国内に住所を有しない個人で個人番号を有するものに係る個人番号を証する書類の範囲に個人番号カードを加えるとともに、その個人番号を証する書類の範囲から還付された個人番号カードを除外する。
②健康保険法等の改正に伴い、本人確認書類の範囲に、健康保険法に規定する被保険者の資格の確認に必要な書面等を加える。
③特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行規則の改正を前提に、本人確認書類の範囲に、特別児童扶養手当受給証明書(仮称)を加える。
(4)税務署長に提出する書類等について、次の措置を講ずる。
①次に掲げる書類の全ての書式について、国税庁長官が必要がある場合に、所要の事項を付記すること又は一部の事項を削ることができるようにするための所要の整備を行う。
イ 障害者等に対する少額貯蓄非課税制度に係る申告書
ロ 源泉所得税の徴収高計算書
ハ 調書、源泉徴収票、計算書及び報告書
ニ 勤労者財産形成住宅(年金)貯蓄非課税制度に係る申告書
②国税庁長官は、上記①イからニまでに掲げる書類の書式について所要の事項を付記し、又は一部の事項を削る場合において、当該書類について必要があるときは、日本産業規格に定める用紙の大きさに変更することができることとする。
(注)上記の改正は、令和8年9月1日以後に提出する書類について適用する。
(5)公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律等の改正を前提に、次の措置を講ずる。
①収支相償原則の見直し等の公益法人制度改革が行われた後も、公益社団法人及び公益財団法人に講じられている措置を引き続き認めることとする。
②公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税措置について、次に掲げる継続適用措置の適用対象に、公益社団法人及び公益財団法人が解散する場合又は公益認定の取消しの処分を受けた場合において、非課税承認を受けた財産等を公益信託の受託者に移転するときを加えるほか、所要の措置を講ずる。
イ 公益法人等が解散する場合における非課税の継続適用措置
ロ 公益社団法人及び公益財団法人が公益認定の取消しの処分を受けた場合における非課税の継続適用措置
(6)公益信託制度改革による新たな公益信託制度の創設に伴い、次の措置を講ずる。
①公益信託の信託財産につき生ずる所得(貸付信託の受益権の収益の分配に係るものにあっては、当該受益権が当該公益信託の信託財産に引き続き属していた期間に対応する部分の額に限る。)については、所得税を課さないこととする。
②公益信託の受託者(個人に限る。)に対する贈与等により、居住者の有する譲渡所得の基因となる資産等の移転があった場合には、当該居住者に対しその贈与等によるみなし譲渡課税を適用することとする。
③公益信託の委託者がその有する資産を信託した場合には、当該資産を信託した時において、当該委託者から当該公益信託の受託者に対して贈与等により当該資産の移転が行われたものとして、当該委託者に対しその贈与等によるみなし譲渡課税を適用することとする。
④公益信託の信託財産とするために支出した当該公益信託に係る信託事務に関連する寄附金(出資に関する信託事務に充てられることが明らかなものを除く。)について、特定公益増進法人に対する寄附金と同様に、寄附金控除の対象とする。
⑤公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税措置について、次の措置を講ずる。
イ 適用対象となる公益法人等の範囲に、公益信託の受託者(非居住者及び外国法人に該当するものを除く。)を加える。
ロ 非課税承認を受けた財産を有する公益信託の受託者が、その任務の終了等により、当該財産を当該公益信託に係る信託事務の引継ぎを受けた受託者に移転しようとする場合において、当該財産の移転に関する届出書を提出したときは、本非課税措置を継続適用できることとする。
(注)上記ロの措置は、当該任務の終了等に係る事由により国税庁長官の非課税承認を取り消すことができる場合には、適用しない。
ハ 非課税承認を受けた財産を有する公益信託の受託者が、公益信託の終了により、当該財産を他の公益法人等(当該公益信託に係る帰属権利者となるべき者に限る。)に移転しようとする場合において、当該財産の移転に関する届出書を提出したときは、本非課税措置を継続適用できることとする。
(注)上記ハの措置は、当該公益信託の終了に係る事由により国税庁長官の非課税承認を取り消すことができる場合には、適用しない。
ニ 国税庁長官の非課税承認の要件である寄附者の所得税等を不当に減少させる結果とならないことを満たすための条件等について、上記イに伴う所要の措置を講ずる。
⑥その他所要の措置を講ずる。
(注)現行の特定公益信託及び特定公益信託以外の公益信託について、所要の経過措置を講ずる。
(7)感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の改正に伴い、次の措置を講ずる(次の①の措置については、法人税についても同様とする。)。
①社会保険診療報酬の所得計算の特例について、対象医療機関に対し支給される流行初期医療の確保に要する費用がその対象となることを明確化する。
②支払調書及び源泉徴収制度の対象となる報酬・料金等の範囲に、社会保険診療報酬支払基金から支給される流行初期医療の確保に要する費用を加える。
(8)社会医療法人の認定要件のうち救急医療等確保事業に係る業務を行っていることとの要件について、医療法の改正により救急医療等確保事業に「そのまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症がまん延し、又はそのおそれがあるときにおける医療の確保に必要な事業」が追加されたことに伴いその事業に関する基準が新たに設定された後も、社会医療法人を引き続き公共法人等(所得税法別表第一)とする。
(9)脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律に基づき設立される脱炭素成長型経済構造移行推進機構を公共法人等(所得税法別表第一)とする。
(10)国立研究開発法人情報通信研究機構法の改正により国立研究開発法人情報通信研究機構の資本金の額等の全部が国の所有に属することとなった後も、同機構を引き続き公共法人等(所得税法別表第一)とする。
(11)奄美群島振興開発特別措置法の期限の延長を前提に、独立行政法人奄美群島振興開発基金を引き続き公共法人等(所得税法別表第一)とする。
(12)犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律の犯罪被害者等給付金について、所要の法令改正を前提に、引き続き次の措置を講ずる。
①所得税を課さない。
②国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(13)児童手当法の改正を前提に、同法の児童手当について、引き続き次の措置を講ずる。
①所得税を課さない。
②国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(14)生活困窮者自立支援法の改正を前提に、同法の生活困窮者住居確保給付金について、引き続き次の措置を講ずる。
①所得税を課さない。
②国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(15)生活保護法の改正を前提に、同法の進学・就職準備給付金(仮称)について、次の措置を講ずる。
①所得税を課さない。
②国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(16)雇用保険法等の改正を前提に、雇用保険法の失業等給付及び育児休業給付について引き続き次の措置を講ずるとともに、新たに支給されることとなる出生後休業支援給付金(仮称)、育児時短就業給付金(仮称)及び教育訓練休暇給付金(仮称)等について次の措置を講ずる。
①所得税を課さない。
②国税の滞納処分による差押えを禁止する。
(17)新たなワクチン追加後の予防接種法の健康被害救済給付について、所要の法令改正を前提に、引き続き次の措置を講ずる。
①所得税を課さない。
②国税の滞納処分による差押えを禁止する。
③障害年金を受けている者を障害者等に対する少額貯蓄非課税制度の対象者とする。
(地方税)
〈個人住民税〉
(1)個人住民税について、所得税における(1)から(3)まで、(6)、(7)及び(12)から(17)までの見直しに伴い、所要の措置を講ずる。
(2)国税における諸制度の取扱い等を踏まえ、その他所要の措置を講ずる。
〈国民健康保険税〉
(3)国民健康保険税の後期高齢者支援金等課税額に係る課税限度額を24万円(現行:22万円)に引き上げる。
(4)国民健康保険税の減額の対象となる所得の基準について、次のとおりとする。
①5割軽減の対象となる世帯の軽減判定所得の算定において被保険者等の数に乗ずべき金額を29.5万円(現行:29万円)に引き上げる。
②2割軽減の対象となる世帯の軽減判定所得の算定において被保険者等の数に乗ずべき金額を54.5万円(現行:53.5万円)に引き上げる。
(5)感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の改正に伴い、同法に規定する流行初期医療確保拠出金等の納付に要する費用を含めて国民健康保険税を課する措置を講ずる。
〈森林環境譲与税〉
(6)森林環境譲与税の譲与基準について、私有林人工林面積の譲与割合を100分の55(現行:10分の5)とし、人口の譲与割合を100分の25(現行:10分の3)とする。

二 資産課税
1 土地に係る固定資産税等の負担調整措置
(1)土地に係る固定資産税の負担調整措置
①宅地等及び農地の負担調整措置については、令和6年度から令和8年度までの間、商業地等に係る条例減額制度及び税負担急増土地に係る条例減額制度を含め、現行の負担調整措置の仕組みを継続する。
②据置年度において簡易な方法により価格の下落修正ができる特例措置を継続する。
③その他所要の措置を講ずる。
(2)土地に係る都市計画税の負担調整措置
固定資産税の改正に伴う所要の改正を行う。
2 租税特別措置等
(国税)
〔新設〕
〈登録免許税〉
(1)産業競争力強化法の改正を前提に、同法に規定する特別事業再編計画(仮称)の認定(同法の改正法の施行の日から令和9年3月31日までの間にされたものに限る。)を受けた特別事業再編事業者(仮称)のうち一定のものが、その特別事業再編計画に基づき行う次に掲げる登記に対する登録免許税の税率を次のとおり軽減する措置を講ずる。
①合併による増資の登記
 1,000分の1(純増部分については、1,000分の1.5)
 (本則1,000分の1.5(純増部分については、1,000分の7))
②分割による増資の登記 1,000分の3(本則1,000分の7)
③事業に必要な資産の譲受けの場合における次に掲げる登記
イ 不動産の所有権の移転登記 1,000分の12(本則1,000分の20)
ロ 船舶の所有権の移転登記 1,000分の18(本則1,000分の28)
④合併による次に掲げる登記
イ 不動産の所有権の移転登記 1,000分の1(本則1,000分の4)
ロ 船舶の所有権の移転登記 1,000分の2(本則1,000分の4)
⑤分割による次に掲げる登記
イ 不動産の所有権の移転登記 1,000分の1(本則1,000分の20)
ロ 船舶の所有権の移転登記 1,000分の18(本則1,000分の28)
(2)農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律(仮称)の制定を前提に、同法に規定する開発供給実施計画(仮称)の認定(同法の施行の日から令和9年3月31日までの間にされたものに限る。)を受けた開発供給事業(仮称)を行おうとする者が、その開発供給実施計画に基づき行う次に掲げる登記に対する登録免許税の税率を次のとおり軽減する措置を講ずる。
①株式会社の設立又は増資の登記 1,000分の3.5(本則1,000分の7)
②合併による株式会社の設立又は増資の登記
 1,000分の1(純増部分については、1,000分の3.5)
 (本則1,000分の1.5(純増部分については、1,000分の7))
③分割による株式会社の設立又は増資の登記
 1,000分の5(本則1,000分の7)
④法人の設立等の場合における不動産の所有権の移転登記
 1,000分の16(本則1,000分の20)
⑤合併による不動産の所有権の移転登記 1,000分の2(本則1,000分の4)
⑥分割による不動産の所有権の移転登記 1,000分の4(本則1,000分の20)
(3)地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に規定する鉄道事業再構築実施計画の認定(令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間にされたものに限る。)を受けた鉄道事業者が、その鉄道事業再構築実施計画に基づき取得する不動産の所有権等の移転登記に対する登録免許税の税率を次のとおり軽減する措置を講ずる。
①所有権の移転登記 1,000分の10(本則1,000分の20)
②地上権又は土地の賃借権の移転登記 1,000分の5(本則1,000分の10)
(4)都市緑地法等の改正を前提に、都市緑地法に規定する都市緑化支援機構(仮称)(一定のものに限る。)が、同法の改正法の施行の日から令和8年3月31日までの間に都市緑地法等の規定による都道府県等の要請に基づき特別緑地保全地区等の区域内の土地の買入れを行った場合における当該土地の所有権の移転登記に対する登録免許税を免税とする措置を講ずる。
〔延長・拡充等〕
〈相続税・贈与税〉
(1)直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、次の措置を講ずる。
①適用期限を3年延長する。
②非課税限度額の上乗せ措置の適用対象となるエネルギーの使用の合理化に著しく資する住宅用の家屋の要件について、住宅用家屋の新築又は建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をする場合にあっては、当該住宅用家屋の省エネ性能が断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上(現行:断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上)であることとする。
(注1)上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用する。
(注2)令和6年1月1日以後に住宅取得等資金の贈与を受けて住宅用家屋の新築又は建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をする場合において、当該住宅用家屋の省エネ性能が断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上であり、かつ、当該住宅用家屋が次のいずれかに該当するものであるときは、当該住宅用家屋をエネルギーの使用の合理化に著しく資する住宅用の家屋とみなす。
イ 令和5年12月31日以前に建築確認を受けているもの
ロ 令和6年6月30日以前に建築されたもの
(2)特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度の特例の適用期限を3年延長する。
(3)個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、個人事業承継計画の提出期限を2年延長する。
(4)非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度について、特例承継計画の提出期限を2年延長する。
〈登録免許税〉
(5)住宅用家屋の所有権の保存登記若しくは移転登記又は住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を3年延長する。
(6)特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を3年延長する。
(7)認定低炭素住宅の所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を3年延長する。
(8)特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を3年延長する。
(9)マンション建替事業の施行者等が受ける権利変換手続開始の登記等に対する登録免許税の免税措置の適用期限を2年延長する。
(10)農地中間管理機構が農用地等を取得した場合の所有権の移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(11)事業再編計画の認定要件が見直された後の産業競争力強化法に規定する認定事業再編計画等に基づき行う登記に対する登録免許税の税率の軽減措置について、その適用期限を3年延長する。
(12)特定創業支援等事業による支援を受けて行う会社の設立の登記に対する登録免許税の税率の軽減措置について、適用対象となる登記の範囲から合名会社及び合資会社の設立登記を除外した上、その適用期限を3年延長する。
(13)金融機能の強化のための特別措置に関する法律に規定する経営強化計画等に基づき行う登記(東日本大震災の影響により自己資本の充実を図ることが必要となった金融機関等が経営強化計画に基づき行うものを含む。)に対する登録免許税の税率の軽減措置の適用期限を2年延長する。
(14)特定国際船舶の所有権の保存登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する。
①適用対象となる国際船舶の類型を見直す。
②適用対象となる建造された船舶を海上運送法に規定する認定特定船舶導入計画に基づき建造した特定船舶に限定した上、当該特定船舶に係る次に掲げる登記に対する登録免許税の税率を次のとおり引き下げる。
イ 所有権の保存登記 1,000分の2(現行:1,000分の3.5)
ロ 抵当権の設定登記 1,000分の2(現行:1,000分の3.5)
(15)特定連絡道路工事施行者が取得した特定連絡道路に係る土地の所有権の移転登記に対する登録免許税の免税措置の適用期限を2年延長する。
〈印紙税〉
(16)不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置の適用期限を3年延長する。
〔廃止・縮減等〕
〈贈与税〉
(1)東日本大震災の被災者が直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、次の見直しを行う。
①非課税限度額の上乗せ措置の適用対象となるエネルギーの使用の合理化に著しく資する住宅用の家屋の要件について、住宅用家屋の新築又は建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をする場合にあっては、当該住宅用家屋の省エネ性能が断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上(現行:断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上)であることとする。
(注)令和6年1月1日以後に住宅取得等資金の贈与を受けて住宅用家屋の新築又は建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をする場合において、当該住宅用家屋の省エネ性能が断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上であり、かつ、当該住宅用家屋が次のいずれかに該当するものであるときは、当該住宅用家屋をエネルギーの使用の合理化に著しく資する住宅用の家屋とみなす。
イ 令和5年12月31日以前に建築確認を受けているもの
ロ 令和6年6月30日以前に建築されたもの
②適用対象者から、東日本大震災によりその居住の用に供していた家屋又はその居住の用に供しようとしていた家屋が滅失等をした者(警戒区域設定指示等が行われた日においてその対象区域内に所在する家屋をその居住の用に供していた者又はその居住の用に供しようとしていた者を除く。)を除外する。
(注)上記の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用する。
〈登録免許税〉
(2)農業競争力強化支援法の認定事業再編計画に基づき行う登記に対する登録免許税の税率の軽減措置は、所要の経過措置を講じた上、令和6年3月31日をもって廃止する。
(3)次に掲げる特別措置は、適用期限の到来をもって廃止する。
①認定経営力向上計画に基づき行う登記に対する登録免許税の税率の軽減措置
②認定特定民間中心市街地経済活力向上事業計画に基づき不動産を取得した場合の所有権の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置
③低未利用土地権利設定等促進計画に基づき不動産を取得した場合の所有権等の移転登記等に対する登録免許税の税率の軽減措置
④特定の社債的受益権に係る特定目的信託の終了に伴い信託財産を買い戻した場合の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置
(地方税)
〔新設〕
〈不動産取得税〉
(1)都市緑地法等の改正を前提に、都市緑地法に規定する都市緑化支援機構(仮称)が、同法の改正法の施行の日から令和8年3月31日までの間に都道府県等の要請に基づき取得した特別緑地保全地区等の区域内の土地に係る不動産取得税を非課税とする措置を講ずる。
(2)地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に規定する鉄道事業再構築事業により鉄道事業者が譲渡を受けた一定の不動産に係る不動産取得税を非課税とする措置を2年間に限り講ずる。
〔延長・拡充等〕
〈固定資産税・都市計画税〉
(1)独立行政法人国民生活センターの一定の固定資産に係る固定資産税及び都市計画税の非課税措置について、対象に適格消費者団体が行う差止請求関係業務の円滑な実施のために必要な援助業務の用に供する固定資産を加える。
(2)社会医療法人制度における認定要件のうち救急医療等確保事業に係る要件について、新興感染症発生・まん延時における医療に関する基準を加える見直しが行われた後も、現行制度と同様に、社会医療法人の一定の固定資産に係る固定資産税及び都市計画税の特例措置を講ずる。
(3)関係法令の改正を前提に、消費生活協同組合等の電気を供給する事業に係る員外利用の制限の緩和等が行われた後も、現行制度と同様に、消費生活協同組合等の一定の固定資産に係る固定資産税及び都市計画税を非課税とする措置を講ずる。
(4)障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の改正後の障害福祉サービス事業について、現行制度と同様に、社会福祉法人等が当該事業の用に供する固定資産に係る固定資産税及び都市計画税を非課税とする措置を講ずる。
(5)再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法に規定する一定の再生可能エネルギー発電設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
①太陽光発電設備については、政府の補助を受けて取得した一定の設備を適用対象から除外した上、同法に規定する認定発電設備の対象外であって、地球温暖化対策の推進に関する法律に規定する認定地域脱炭素化促進事業計画に従って取得した一定の設備又はペロブスカイト太陽電池を使用した一定の設備を適用対象に加える。
②バイオマス発電設備については、出力が10,000kW以上20,000kW未満の発電設備のうち一般木質・農作物残さ区分に該当するものについて、価格に次の割合を乗じて得た額を課税標準とする。
イ 大臣配分資産又は知事配分資産 7分の6(現行:3分の2)
ロ その他の資産 7分の6を参酌して14分の11以上14分の13以下の範囲内において市町村の条例で定める割合(現行:3分の2を参酌して2分の1以上6分の5以下の範囲内において市町村の条例で定める割合)
③その他所要の措置を講ずる。
(6)流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律の認定を受けた事業者が、総合効率化計画に基づき取得した一定の家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
①適用対象となる附属機械設備にナンバープレート解析AIカメラ等を加えた上、ナンバープレート解析AIカメラ等に係る課税標準を、最初の5年間、価格の2分の1とする。
②適用対象となる一般倉庫及び冷蔵倉庫の設備等に関する必須要件に到着時刻表示装置が設けられていることを加える。
③適用対象となる倉庫の設備等に関する選択要件から貨物自動車運送事業の用に供する事務所及び駐車施設が併設されていることを除外する。
④その他所要の措置を講ずる。
(7)児童福祉法等の改正に伴い、次の措置を講ずる。
①児童福祉施設の用に供する一定の固定資産に係る固定資産税及び都市計画税の非課税措置について、対象に里親支援センターの用に供する固定資産を加える。
②社会福祉事業の用に供する一定の固定資産に係る固定資産税及び都市計画税の非課税措置について、対象に親子再統合支援事業、社会的養護自立支援拠点事業、意見表明等支援事業、妊産婦等生活援助事業、子育て世帯訪問支援事業、児童育成支援拠点事業及び親子関係形成支援事業の用に供する固定資産を加える。
③児童福祉法等の改正後の障害児通所支援事業、児童自立生活援助事業、子育て短期支援事業、利用者支援事業及び障害児入所施設を経営する事業について、現行制度と同様に、これらの事業の用に供する一定の固定資産に係る固定資産税及び都市計画税を非課税とする措置を講ずる。
(8)沖縄電力株式会社が電気供給業の用に供する一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
(9)特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律に規定する認定導入計画に基づき、電波法の規定によりローカル5G無線局に係る免許を受けた者が、新たに取得した一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を1年延長する。
(10)高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に規定する特別特定建築物に該当する家屋のうち主に実演芸術の公演等を行う一定のものについて、同法に基づく建築物移動等円滑化誘導基準に適合させるよう改修工事を行った家屋に係る固定資産税及び都市計画税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
(11)所有する全ての農地(10a未満の自作地を除く。)に農地中間管理事業のための賃借権等を新たに設定し、かつ、当該賃借権等の設定期間が10年以上である一定の農地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(12)農業経営基盤強化促進法に規定する認定就農者であって同法に規定する地域計画に位置付けられた者に利用させるため、農業協同組合等が取得した一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(13)都市再生特別措置法に規定する一体型滞在快適性等向上事業の実施主体が、当該事業により整備した一定の固定資産に対して課する固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置について、課税標準を最初の5年間、価格に2分の1を参酌して3分の1以上3分の2以下の範囲内において市町村の条例で定める割合(現行:2分の1)を乗じて得た額とした上で、その適用期限を2年延長する。
(14)河川法に規定する高規格堤防の整備に係る事業のために使用された土地の上に建築されていた家屋について移転補償金を受けた者が当該土地の上に取得した代替家屋に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
(15)特定都市河川浸水被害対策法又は下水道法の規定により認定を受けた雨水貯留浸透施設整備計画に基づき設置された一定の雨水貯留浸透施設に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
(16)新築住宅に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
(17)日本貨物鉄道株式会社が取得した新たに製造された一定の機関車に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(18)海上運送法施行規則の改正を前提に、国際船舶に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、同規則の改正に伴う所要の措置を講じた上、その適用期限を3年延長する。
(19)国内路線に就航する航空機に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(20)津波防災地域づくりに関する法律に規定する津波災害警戒区域における指定避難施設及び協定避難施設のうち避難の用に供する部分並びに当該施設に附属する新たに設置された避難の用に供する一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
(21)新築の認定長期優良住宅に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
(22)耐震改修等を行った住宅に対して、次の措置を講ずる。
①耐震改修を行った一定の住宅に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
②バリアフリー改修を行った一定の住宅に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
③省エネ改修を行った一定の住宅に係る固定資産税の税額の減額措置の適用期限を2年延長する。
(23)津波防災地域づくりに関する法律に規定する推進計画区域において、同法に規定する推進計画に基づき新たに取得等された津波対策の用に供する一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を4年延長する。
(24)東日本大震災により滅失・損壊した償却資産に代わるものとして一定の被災地域内で取得等された償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
〈不動産取得税〉
(25)社会医療法人制度における認定要件のうち救急医療等確保事業に係る要件について、新興感染症発生・まん延時における医療に関する基準を加える見直しが行われた後も、現行制度と同様に、社会医療法人の一定の不動産に係る不動産取得税の特例措置を講ずる。
(26)障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の改正後の障害福祉サービス事業について、現行制度と同様に、社会福祉法人等が当該事業の用に供する不動産に係る不動産取得税を非課税とする措置を講ずる。
(27)児童福祉法等の改正に伴い、次の措置を講ずる。
①児童福祉施設の用に供する一定の不動産に係る不動産取得税の非課税措置について、対象に里親支援センターの用に供する不動産を加える。
②社会福祉事業の用に供する一定の不動産に係る不動産取得税の非課税措置について、対象に親子再統合支援事業、社会的養護自立支援拠点事業、意見表明等支援事業、妊産婦等生活援助事業、子育て世帯訪問支援事業、児童育成支援拠点事業及び親子関係形成支援事業の用に供する不動産を加える。
③児童福祉法等の改正後の障害児通所支援事業、児童自立生活援助事業、子育て短期支援事業、利用者支援事業及び障害児入所施設を経営する事業について、現行制度と同様に、これらの事業の用に供する一定の不動産に係る不動産取得税を非課税とする措置を講ずる。
(28)医療機関の開設者が、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律に規定する認定再編計画に基づく医療機関の再編に伴い取得した一定の不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(29)中小事業者等が中小企業等経営強化法に規定する認定経営力向上計画に従って行う事業の譲受けにより取得した一定の不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(30)小笠原諸島振興開発特別措置法の一部改正により、小笠原諸島へ帰島する者が取得した一定の不動産に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を5年延長する。
(31)宅地評価土地の取得に係る不動産取得税の課税標準を価格の2分の1とする特例措置の適用期限を3年延長する。
(32)住宅及び土地の取得に係る不動産取得税の標準税率(本則4%)を3%とする特例措置の適用期限を3年延長する。
(33)河川法に規定する高規格堤防の整備に係る事業のために使用された土地の上に建築されていた家屋について移転補償金を受けた者が当該土地の上に取得した代替家屋に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
(34)不動産取得税について、新築住宅を宅地建物取引業者等が取得したものとみなす日を住宅新築の日から1年(本則6月)を経過した日に緩和する特例措置の適用期限を2年延長する。
(35)新築住宅特例が適用される住宅の用に供する土地に係る不動産取得税の減額措置(床面積の2倍(200㎡を限度)相当額等の減額)について、土地取得後から住宅新築までの経過年数要件を緩和する特例措置の適用期限を2年延長する。
(36)マンションの建替え等の円滑化に関する法律に規定する施行者又はマンション敷地売却組合が取得した特定要除却認定マンション及びその敷地に係る不動産取得税を非課税とする措置の適用期限を2年延長する。
(37)独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が取得した一定の土地に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
(38)新築の認定長期優良住宅に係る不動産取得税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。
〈事業所税〉
(39)公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律等の改正を前提に、収支相償原則の見直し等の公益法人制度改革が行われた後も、公益社団法人及び公益財団法人が行う収益事業以外の事業に係る事業所税について、引き続き非課税とする措置を講ずる。
(40)関係法令の改正を前提に、消費生活協同組合等の電気を供給する事業に係る員外利用の制限の緩和等が行われた後も、消費生活協同組合等が行う事業に係る事業所税について、現行制度と同様の特例措置を講ずる。
(41)障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の改正後の障害福祉サービス事業の用に供する施設に係る事業所税について、引き続き非課税とする措置を講ずる。
(42)公益法人等の収益事業から除外される公的医療機関に該当する病院等を設置する農業協同組合連合会が行う医療保健業の要件の見直しが行われた後も、同連合会が行う収益事業以外の事業に係る事業所税について、引き続き非課税とする措置を講ずる。
(43)児童福祉法等の改正に伴い、次の措置を講ずる。
①児童福祉施設の用に供する施設に係る事業所税の非課税措置について、対象に里親支援センターの用に供する施設を加える。
②社会福祉事業の用に供する施設に係る事業所税の非課税措置について、対象に親子再統合支援事業、社会的養護自立支援拠点事業、意見表明等支援事業、妊産婦等生活援助事業、子育て世帯訪問支援事業、児童育成支援拠点事業及び親子関係形成支援事業の用に供する施設を加える。
③児童福祉法等の改正後の障害児通所支援事業、児童自立生活援助事業、子育て短期支援事業、利用者支援事業及び障害児入所施設を経営する事業の用に供する施設に係る事業所税について、引き続き非課税とする措置を講ずる。
(44)特定農産加工業経営改善臨時措置法の改正を前提に、同法に規定する承認計画に基づき特定農産加工業者等が事業の用に供する一定の施設に対する資産割に係る事業所税の課税標準の特例措置について、適用期限を1年9月(個人の事業については2年)延長する。
〔廃止・縮減等〕
〈固定資産税・都市計画税〉
(1)農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律の認定を受けた事業者が取得した一定のバイオ燃料製造設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、木質固形燃料製造設備に係る課税標準を価格の4分の3(現行:3分の2)とした上、その適用期限を2年延長する。
(2)公害防止用設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
①産業廃棄物処理施設について、廃石綿等又は石綿含有産業廃棄物の処理施設を適用対象から除外する。
②下水道除害施設について、汚泥処理装置、濾過装置、生物化学的処理装置、貯溜装置及び輸送装置並びに現行制度において適用対象となっている装置に附属する電動機、ポンプ、配管、計測器その他の附属設備を適用対象から除外する。
(3)子ども・子育て支援法に基づく政府の補助を受けた者が一定の保育施設(特定事業所内保育施設)の用に供する固定資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置を廃止する。
〈不動産取得税〉
(4)都市再生特別措置法の規定による公告があった低未利用土地権利設定等促進計画に基づき取得された居住誘導区域又は都市機能誘導区域内にある一定の土地に係る不動産取得税の課税標準の特例措置を廃止する。
3 その他
(国税)
(1)公益信託制度改革による新たな公益信託制度の創設に伴い、次の措置を講ずる。
①公益信託の信託財産とするために相続財産を拠出した場合について、相続財産を贈与した場合等の相続税の非課税制度の対象とするほか、所要の措置を講ずる。
②公益信託から給付を受ける財産については、その信託の目的にかかわらず贈与税を非課税とする。
③その他所要の措置を講ずる。
(2)調書の電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法等による提出義務制度について、提出義務の対象となるかどうかの判定基準となるその年の前々年に提出すべきであった調書の枚数を30枚以上(現行:100枚以上)に引き下げる。
(注)上記の改正は、令和9年1月1日以後に提出すべき調書について適用する。
(3)税務署長に提出する書類について、次の措置を講ずる。
①国税庁長官は、次に掲げる書類の書式について必要がある場合には、所要の事項を付記すること又は一部の事項を削ることができることとする。
イ 特定障害者に対する贈与税の非課税制度に係る申告書
ロ 相続税法に規定する調書
②国税庁長官は、上記①イ又はロに掲げる書類の書式について所要の事項を付記し、又は一部の事項を削る場合において、当該書類について必要があるときは、日本産業規格に定める用紙の大きさに変更することができることとする。
(注)上記の改正は、令和8年9月1日以後に提出する書類について適用する。
(4)児童福祉法の改正に伴い、直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、その適用対象となる結婚・子育て資金の範囲に、同法の子育て世帯訪問支援事業及び親子関係形成支援事業に係る施設に支払うものを加える。
(5)感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の改正に伴い、医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等における医療法人の移行計画の認定要件のうち社会保険診療等に係る収入金額の合計額が全収入金額の100分の80を超えることとの要件について、社会保険診療等に係る収入金額の範囲に同法の流行初期医療確保措置に係る収入金額が含まれることを明確化する。
(6)登記機関が職権に基づいてする個人の資格に係る変更の登録に対する登録免許税を非課税とする措置を講ずる。
(7)国立研究開発法人情報通信研究機構法の改正により国立研究開発法人情報通信研究機構の資本金の額等の全部が国の所有に属することとなることに伴い、同機構を登録免許税法別表第二(非課税法人)掲名法人(現行:同法別表第三(登録免許税の非課税登記等)掲名法人)とする。
(8)奄美群島振興開発特別措置法の期限の延長を前提に、独立行政法人奄美群島振興開発基金を引き続き非課税法人(印紙税法別表第二)とし、その受ける登記等について引き続き非課税措置(登録免許税法別表第三)を講ずる。
(9)脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律に基づき設立される脱炭素成長型経済構造移行推進機構が受ける事務所用建物の所有権の取得登記及び事務所用建物の敷地の用に供する土地の権利の取得登記に係る登録免許税を非課税とする措置(登録免許税法別表第三)を講ずる。
(10)高齢者の医療の確保に関する法律の改正に伴い、社会保険診療報酬支払基金が行う同法の出産育児支援金等の徴収等の業務に関する文書については、印紙税を課さないこととする。
(11)病床転換助成事業の期限の延長に伴い、社会保険診療報酬支払基金が行う病床転換助成事業に係る業務に関する文書については、引き続き印紙税を課さないこととする。
(12)介護保険法の改正に伴い、国民健康保険団体連合会が市町村からの委託を受けて行う同法の介護情報基盤の整備に係る業務に関する文書については、印紙税を課さないこととする。
(13)都市緑地法等の改正を前提に、都市緑地法に規定する都市緑化支援機構(仮称)が都道府県等の要請に基づく対象土地の買入れ及び対象土地の都道府県等への譲渡を行う際に作成する不動産の譲渡に関する契約書については、印紙税を課さないこととする。
(14)感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の改正に伴い、社会保険診療報酬支払基金及び国民健康保険団体連合会が行う同法の流行初期医療確保措置関係業務及び流行初期医療確保措置に係る事務に関する文書については、印紙税を課さないこととする。
(15)独立行政法人日本学生支援機構法に基づき独立行政法人日本学生支援機構等が行う「授業料後払い制度」の学資の貸与に係る業務に関する文書については、印紙税を課さないこととする。
(16)国立研究開発法人情報通信研究機構法の改正により国立研究開発法人情報通信研究機構の資本金の額等の全部が国の所有に属することとなることに伴い、同機構を非課税法人(印紙税法別表第二)(現行:同法別表第三)とする。
(17)脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律に基づき設立される脱炭素成長型経済構造移行推進機構が行う一定の業務に関する文書については、印紙税を課さないこととする。
(18)二酸化炭素の貯留事業に関する法律(仮称)の制定を前提に、同法の貯留権(仮称)及び試堀権(仮称)の譲渡に関する契約書について印紙税の課税物件に加える。
(19)公益信託制度改革による新たな公益信託制度の創設に伴い、公益信託の信託行為に関する契約書(行政庁の認可を受けた後に作成されるものに限る。)には、印紙税を課さないこととする。
(20)新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置によりその経営に影響を受けた事業者に対して行う特別貸付けに係る消費貸借契約書の印紙税の非課税措置の適用期限を1年延長する。
(地方税)
〈固定資産税・都市計画税〉
(1)感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の改正に伴い、同法の流行初期医療確保措置に係る収入が、社会医療法人の収入要件における社会保険診療に係る収入金額に加えられた後も、現行制度と同様に、社会医療法人の一定の固定資産に係る固定資産税及び都市計画税の特例措置を講ずる。
(2)都市緑地法の改正を前提に、都市計画事業に要する費用に、同法の規定により都市計画事業として施行する特別緑地保全地区内の土地の買入れ及び機能維持増進事業に要する費用を含め、都市計画税を充てることを可能とする。
(3)国際戦略港湾及び一定の要件を満たす国際拠点港湾において、港湾運営会社が、港湾の脱炭素化を推進する事業により、政府の補助を受けて取得した陸上電力供給設備に係る固定資産税について、令和6年度予算措置を前提に、対象となる補助金の見直しに係る所要の措置を講ずる。
(4)建築基準法の改正に伴い、固定資産税について所要の措置を講ずる。
〈不動産取得税〉
(5)感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の改正に伴い、同法の流行初期医療確保措置に係る収入が、社会医療法人の収入要件における社会保険診療に係る収入金額に加えられた後も、現行制度と同様に、社会医療法人の一定の不動産に係る不動産取得税の特例措置を講ずる。
(6)建築基準法の改正に伴い、不動産取得税について所要の措置を講ずる。
〈事業所税〉
(7)国立研究開発法人情報通信研究機構法の改正により国立研究開発法人情報通信研究機構の資本金の額等の全部が国の所有に属することとなることに伴い、同機構が行う事業に係る事業所税について、非課税とする措置を講ずる。
(8)第一種指定電気通信設備接続料規則の改正を前提に、専ら公衆の利用を目的として電気通信回線設備を設置して電気通信事業を営む者のうち固定電話事業者が事業の用に供する一定の施設に係る事業所税について、中継電話の提供に係る接続形態の変更後も、引き続き非課税とする措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和6年3月1日以後に終了する事業年度分の法人の事業に対して課すべき事業所税について適用する。
(9)脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律に基づき設立される脱炭素成長型経済構造移行推進機構が行う収益事業以外の事業に係る事業所税について、非課税とする措置を講ずる。

三 法人課税
1 構造的な賃上げの実現
(国税)
(1)給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度について、次の措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。
①全法人向けの措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する。
イ 原則の税額控除率を10%(現行:15%)に引き下げる。
ロ 税額控除率の上乗せ措置を次の場合の区分に応じそれぞれ次のとおりとする。
(イ)継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が4%以上である場合 税額控除率に5%(その増加割合が5%以上である場合には10%とし、その増加割合が7%以上である場合には15%とする。)を加算する。
(ロ)教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が10%以上であり、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上である場合 税額控除率に5%を加算する。
(ハ)プラチナくるみん認定又はプラチナえるぼし認定を受けている場合 税額控除率に5%を加算する。
ハ 本措置の適用を受けるために「給与等の支給額の引上げの方針、取引先との適切な関係の構築の方針その他の事項」を公表しなければならない者に、常時使用する従業員の数が2,000人を超えるものを加える。
ニ 本措置の適用を受けるために公表すべき「給与等の支給額の引上げの方針、取引先との適切な関係の構築の方針その他の事項」における取引先に消費税の免税事業者が含まれることを明確化する。
②青色申告書を提出する法人で常時使用する従業員の数が2,000人以下であるもの(その法人及びその法人との間にその法人による支配関係がある法人の常時使用する従業員の数の合計数が1万人を超えるものを除く。)が、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が3%以上であるときは、控除対象雇用者給与等支給増加額の10%の税額控除ができる措置を加える。この場合において、継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が4%以上であるときは、税額控除率に15%を加算し、教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が10%以上であり、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であるときは、税額控除率に5%を加算し、当期がプラチナくるみん認定若しくはプラチナえるぼし認定を受けている事業年度又はえるぼし認定(3段階目)を受けた事業年度であるときは、税額控除率に5%を加算する。ただし、控除税額は、当期の法人税額の20%を上限とする。
(注)資本金の額等が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1,000人以上である場合には、給与等の支給額の引上げの方針、取引先との適切な関係の構築の方針その他の事項をインターネットを利用する方法により公表したことを経済産業大臣に届け出ている場合に限り、適用があるものとする。
③中小企業向けの措置について、次の見直しを行い、控除限度超過額は5年間の繰越しができることとした上、その適用期限を3年延長する。
イ 教育訓練費に係る税額控除率の上乗せ措置について、教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が5%以上であり、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上である場合に税額控除率に10%を加算する措置とする。
ロ 当期がプラチナくるみん認定若しくはプラチナえるぼし認定を受けている事業年度又はくるみん認定若しくはえるぼし認定(2段階目以上)を受けた事業年度である場合に税額控除率に5%を加算する措置を加える。
(注)繰越税額控除制度は、繰越税額控除をする事業年度において雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額を超える場合に限り、適用できることとする。
④給与等の支給額から控除する「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」に看護職員処遇改善評価料及び介護職員処遇改善加算その他の役務の提供の対価の額が含まれないこととする。
⑤その他所要の措置を講ずる。
(2)大企業につき研究開発税制その他生産性の向上に関連する税額控除の規定(特定税額控除規定)を適用できないこととする措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する(所得税についても同様とする。)。
①資本金の額等が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1,000人以上である場合及び前事業年度の所得の金額が零を超える一定の場合のいずれにも該当する場合における要件の上乗せ措置について、次の見直しを行う。
イ 本措置の対象に、常時使用する従業員の数が2,000人を超える場合及び前事業年度の所得の金額が零を超える一定の場合のいずれにも該当する場合を加える。
ロ 国内設備投資額に係る要件を、国内設備投資額が当期償却費総額の40%(現行:30%)を超えることとする。
②継続雇用者給与等支給額に係る要件を判定する場合に給与等の支給額から控除する「給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」に看護職員処遇改善評価料及び介護職員処遇改善加算その他の役務の提供の対価の額が含まれないこととする。
(3)中小企業事業再編投資損失準備金制度について、産業競争力強化法の改正を前提に、青色申告書を提出する法人で同法の改正法の施行の日から令和9年3月31日までの間に産業競争力強化法の特別事業再編計画(仮称)の認定を受けた認定特別事業再編事業者(仮称)であるものが、その認定に係る特別事業再編計画に従って他の法人の株式等の取得(購入による取得に限る。)をし、かつ、これをその取得の日を含む事業年度終了の日まで引き続き有している場合(その株式等の取得価額が100億円を超える金額又は1億円に満たない金額である場合及び一定の表明保証保険契約を締結している場合を除く。)において、その株式等の価格の低落による損失に備えるため、その株式等の取得価額に次の株式等の区分に応じそれぞれ次の割合を乗じた金額以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額は、その事業年度において損金算入できる措置を加える。
①その認定に係る特別事業再編計画に従って最初に取得をした株式等 90%
②上記①に掲げるもの以外の株式等 100%
 この準備金は、その株式等の全部又は一部を有しなくなった場合、その株式等の帳簿価額を減額した場合等において取り崩すほか、その積み立てた事業年度終了の日の翌日から10年を経過した日を含む事業年度から5年間でその経過した準備金残高の均等額を取り崩して、益金算入する。
(地方税)
(1)給与等の支給額が増加した場合の付加価値割の課税標準からの控除制度について、次の措置を講ずる。
①法人が、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が3%以上である等の要件を満たすときは、控除対象雇用者給与等支給増加額を付加価値割の課税標準から控除できることとする。
②中小企業者等が、令和7年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、雇用者給与等支給額の比較雇用者給与等支給額に対する増加割合が1.5%以上である等の要件を満たすときは、控除対象雇用者給与等支給増加額を付加価値割の課税標準から控除できることとする。
(注)雇用安定控除との調整等所要の措置を講ずる。
(2)国税(1)の見直し及び延長に伴い、税額控除制度を中小企業者等に係る法人住民税に適用する。
2 生産性向上・供給力強化に向けた国内投資の促進
(国税)
(1)戦略分野国内生産促進税制の創設
 産業競争力強化法の改正を前提に、青色申告書を提出する法人で同法の改正法の施行の日から令和9年3月31日までの間にされた産業競争力強化法の事業適応計画の認定に係る同法の認定事業適応事業者(その事業適応計画にその計画に従って行うエネルギー利用環境負荷低減事業適応のための措置として同法の産業競争力基盤強化商品(仮称)の生産及び販売を行う旨の記載があるものに限る。)であるものが、その事業適応計画に記載された産業競争力基盤強化商品の生産をするための設備の新設又は増設をする場合において、その新設又は増設に係る機械その他の減価償却資産(以下「産業競争力基盤強化商品生産用資産」という。)の取得等をして、国内にある事業の用に供したときは、その認定の日以後10年以内(以下「対象期間」という。)の日を含む各事業年度において、その産業競争力基盤強化商品生産用資産により生産された産業競争力基盤強化商品のうちその事業年度の対象期間において販売されたものの数量等に応じた金額とその産業競争力基盤強化商品生産用資産の取得価額を基礎とした金額(既に本制度の税額控除の対象となった金額を除く。)とのうちいずれか少ない金額の税額控除ができることとする。ただし、控除税額は、デジタルトランスフォーメーション投資促進税制の税額控除制度による控除税額及びカーボンニュートラルに向けた投資促進税制の税額控除制度による控除税額との合計で当期の法人税額の40%(半導体生産用資産にあっては、20%)を上限とし、控除限度超過額は4年間(半導体生産用資産にあっては、3年間)の繰越しができる。
(注1)上記の「産業競争力基盤強化商品」とは、次の商品をいい、数量等に応じた金額は、次の産業競争力基盤強化商品の区分に応じ次の金額とする。ただし、その産業競争力基盤強化商品生産用資産を事業の用に供した日(以下「供用日」という。)以後7年を経過する日の翌日からその供用日以後8年を経過する日までの期間内に販売された産業競争力基盤強化商品にあっては次の金額の75%相当額とし、その供用日以後8年を経過する日の翌日からその供用日以後9年を経過する日までの期間内に販売された産業競争力基盤強化商品にあっては次の金額の50%相当額とし、その供用日以後9年を経過する日の翌日以後に販売された産業競争力基盤強化商品にあっては次の金額の25%相当額とする。
①半導体 次の半導体の区分に応じ1枚(直径200ミリメートル換算)当たりそれぞれ次の金額
イ マイコン半導体のうちテクノロジーノード28ナノメートルから45ナノメートルまで相当のもの 1万6,000円
ロ マイコン半導体のうちテクノロジーノード45ナノメートルから65ナノメートルまで相当のもの 1万3,000円
ハ マイコン半導体のうちテクノロジーノード65ナノメートルから90ナノメートルまで相当のもの 1万1,000円
ニ マイコン半導体のうちテクノロジーノード90ナノメートル以上相当のもの 7,000円
ホ パワー半導体のうちウエハーが主としてけい素で構成されるもの 6,000円
ヘ パワー半導体のうちウエハーが主として炭化けい素又は窒化ガリウムで構成されるもの 2万9,000円
ト アナログ半導体のうちイメージセンサー 1万8,000円
チ その他のアナログ半導体 4,000円
②電動車 1台当たり20万円(軽自動車でない電気自動車及び燃料電池自動車にあっては、40万円)
③鉄鋼 1トン当たり2万円
④基礎化学品 1トン当たり5万円
⑤航空機燃料 1リットル当たり30円
(注2)上記の「産業競争力基盤強化商品生産用資産の取得価額を基礎とした金額」は、その産業競争力基盤強化商品生産用資産及びこれとともにその産業競争力基盤強化商品を生産するために直接又は間接に使用する減価償却資産に係る投資額の合計額として事業適応計画に記載された金額とする。
(注3)所得の金額が前期の所得の金額を超える一定の事業年度で、かつ、次のいずれにも該当しない事業年度においては、本制度(繰越税額控除制度を除く。)を適用しないこととする。
①継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が1%以上であること。
②国内設備投資額が当期償却費総額の40%を超えること。
(注4)半導体生産用資産に係る控除税額を除き、本制度による控除税額は、地方法人税の課税標準となる法人税額から控除しない。
(2)イノベーションボックス税制の創設
青色申告書を提出する法人が、令和7年4月1日から令和14年3月31日までの間に開始する各事業年度において居住者若しくは内国法人(関連者であるものを除く。)に対する特定特許権等の譲渡又は他の者(関連者であるものを除く。)に対する特定特許権等の貸付け(以下「特許権譲渡等取引」という。)を行った場合には、次の金額のうちいずれか少ない金額の30%に相当する金額は、その事業年度において損金算入できることとする。
①その事業年度において行った特許権譲渡等取引ごとに、次のイの金額に次のロの金額のうちに次のハの金額の占める割合を乗じた金額を合計した金額
イ その特許権譲渡等取引に係る所得の金額
ロ 当期及び前期以前(令和7年4月1日以後に開始する事業年度に限る。)において生じた研究開発費の額のうち、その特許権譲渡等取引に係る特定特許権等に直接関連する研究開発に係る金額の合計額
ハ 上記ロの金額に含まれる適格研究開発費の額の合計額
②当期の所得の金額
(注1)上記の「関連者」は、移転価格税制における関連者と同様の基準により判定する。
(注2)上記の「特定特許権等」とは、令和6年4月1日以後に取得又は製作をした特許権及び人工知能関連技術を活用したプログラムの著作権で、一定のものをいう。
(注3)特定特許権等の貸付けには、特定特許権等に係る権利の設定その他他の者に特定特許権等を使用させる行為を含む。
(注4)上記の「研究開発費の額」とは、研究開発費等に係る会計基準における研究開発費の額に一定の調整を加えた金額をいう。
(注5)上記の「適格研究開発費の額」とは、研究開発費の額のうち、特定特許権等の取得費及び支払ライセンス料、国外関連者に対する委託試験研究費並びに国外事業所等を通じて行う事業に係る研究開発費の額以外のものをいう。
(注6)令和9年4月1日前に開始する事業年度において、当期において行った特許権譲渡等取引に係る特定特許権等のうちに令和7年4月1日以後最初に開始する事業年度開始の日前に開始した研究開発に直接関連するものがある場合には、上記①の金額は、次の①の金額に次の②の金額のうちに次の③の金額の占める割合を乗じた金額とする。
①当期において行った特許権譲渡等取引に係る所得の金額の合計額
②当期、前期及び前々期において生じた研究開発費の額の合計額
③上記②の金額に含まれる適格研究開発費の額の合計額
(注7)本制度の適用において、法人が関連者に対して支払う特定特許権等の取得費又はライセンス料が独立企業間価格に満たない場合には、独立企業間価格によることとし、国内の関連者に対してこれらの費用を支払う場合には、所要の書類を作成し、税務当局からの求めがあった場合には遅滞なく提示し、又は提出しなければならないこととする。また、更正期限を延長する特例、同業者に対する質問検査権、書類の提示又は提出がない場合の推定課税その他所要の措置を講ずる。
(3)試験研究を行った場合の税額控除制度(研究開発税制)について、次の見直しを行う(所得税についても同様とする。)。
①制度の対象となる試験研究費の額から、内国法人の国外事業所等を通じて行う事業に係る試験研究費の額を除外する。
②一般試験研究費の額に係る税額控除制度について、令和8年4月1日以後に開始する事業年度で増減試験研究費割合が零に満たない事業年度につき、税額控除率を次のとおり見直すとともに、税額控除率の下限(現行:1%)を撤廃する。
イ 令和8年4月1日から令和11年3月31日までの間に開始する事業年度
 8.5%+増減試験研究費割合×30分の8.5
ロ 令和11年4月1日から令和13年3月31日までの間に開始する事業年度
 8.5%+増減試験研究費割合×27.5分の8.5
ハ 令和13年4月1日以後に開始する事業年度
 8.5%+増減試験研究費割合×25分の8.5
(4)法人が有する市場暗号資産に該当する暗号資産で譲渡についての制限その他の条件が付されている暗号資産の期末における評価額は、次のいずれかの評価方法のうちその法人が選定した評価方法(自己の発行する暗号資産でその発行の時から継続して保有するものにあっては、次の①の評価方法)により計算した金額とするほか、所要の措置を講ずる。
①原価法
②時価法
(注1)上記の「譲渡についての制限その他の条件が付されている暗号資産」とは、次の要件に該当する暗号資産をいう。
①他の者に移転できないようにする技術的措置がとられていること等その暗号資産の譲渡についての一定の制限が付されていること。
②上記①の制限が付されていることを認定資金決済事業者協会において公表させるため、その暗号資産を有する者等が上記①の制限が付されている旨の暗号資産交換業者に対する通知等をしていること。
(注2)上記の評価方法は、譲渡についての制限その他の条件が付されている暗号資産の種類ごとに選定し、その暗号資産を取得した日の属する事業年度に係る確定申告書の提出期限までに納税地の所轄税務署長に届け出なければならないこととする。なお、評価方法を選定しなかった場合には、原価法(上記①の評価方法)により計算した金額をその暗号資産の期末における評価額とする。
(5)特定事業活動として特別新事業開拓事業者の株式の取得をした場合の課税の特例の適用期限を2年延長する。
(6)認定株式分配に係る課税の特例について、次の見直しを行った上、その適用期限を4年延長する。
①主務大臣による認定事業再編計画の内容の公表時期について、その認定の日からその認定事業再編計画に記載された事業再編の実施時期の開始の日まで(現行:認定の日)とする。
②認定株式分配が適格株式分配に該当するための要件に、その認定株式分配に係る完全子法人が主要な事業として新たな事業活動を行っていることとの要件を加える。
(地方税)
(1)国税(1)の新設に伴い、税額控除制度を法人住民税に適用しないこととする措置を講ずる。
(2)国税(2)の新設に伴い、法人住民税及び法人事業税について、国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。
(3)国税(3)の見直しに伴い、税額控除制度を中小企業者等に係る法人住民税に適用する。
(4)国税(5)の延長に伴い、法人住民税及び法人事業税について、国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。
3 地域・中小企業の活性化
(国税)
(1)地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度について、次の措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。
①産業競争力強化法の改正を前提に、特別償却率及び税額控除率を引き上げる措置について、次の要件の全てを満たすことにつき主務大臣の確認を受けた場合を対象に加え、その対象となる機械装置及び器具備品の税額控除率を6%(現行:5%)とする。
イ 産業競争力強化法の特定中堅企業者(仮称)であること。
ロ 「パートナーシップ構築宣言」を公表していること。
ハ その承認地域経済牽引事業計画に定められた施設又は設備を構成する減価償却資産の取得予定価額の合計額が10億円以上であること。
ニ 下記②の見直し後の労働生産性の伸び率に係る要件、現行の付加価値額増加率に係る要件並びに現行の年平均付加価値額及び付加価値額の創出に係る要件その他現行の特別償却率及び税額控除率を引き上げる措置の適用要件の全てを満たすこと。
②特別償却率及び税額控除率を引き上げる措置の適用要件のうち労働生産性の伸び率に係る要件について、その労働生産性の伸び率を5%以上(現行:4%以上)に引き上げる。
(注)中小企業基本法の中小企業者については、現行どおりとする。
(2)給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度について、青色申告書を提出する法人で常時使用する従業員の数が2,000人以下であるもの(その法人及びその法人との間にその法人による支配関係がある法人の常時使用する従業員の数の合計数が1万人を超えるものを除く。)が、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が3%以上であるときは、控除対象雇用者給与等支給増加額の10%の税額控除ができる措置を加える。この場合において、継続雇用者給与等支給額の継続雇用者比較給与等支給額に対する増加割合が4%以上であるときは、税額控除率に15%を加算し、教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する増加割合が10%以上であり、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上であるときは、税額控除率に5%を加算し、当期がプラチナくるみん認定若しくはプラチナえるぼし認定を受けている事業年度又はえるぼし認定(3段階目)を受けた事業年度であるときは、税額控除率に5%を加算する。ただし、控除税額は、当期の法人税額の20%を上限とする(所得税についても同様とする。)。(再掲)
(3)中小企業事業再編投資損失準備金制度について、次の措置を講じた上、その適用期限を3年延長する。
①産業競争力強化法の改正を前提に、青色申告書を提出する法人で同法の改正法の施行の日から令和9年3月31日までの間に産業競争力強化法の特別事業再編計画(仮称)の認定を受けた認定特別事業再編事業者(仮称)であるものが、その認定に係る特別事業再編計画に従って他の法人の株式等の取得(購入による取得に限る。)をし、かつ、これをその取得の日を含む事業年度終了の日まで引き続き有している場合(その株式等の取得価額が100億円を超える金額又は1億円に満たない金額である場合及び一定の表明保証保険契約を締結している場合を除く。)において、その株式等の価格の低落による損失に備えるため、その株式等の取得価額に次の株式等の区分に応じそれぞれ次の割合を乗じた金額以下の金額を中小企業事業再編投資損失準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額は、その事業年度において損金算入できる措置を加える。(再掲)
イ その認定に係る特別事業再編計画に従って最初に取得をした株式等 90%
ロ 上記イに掲げるもの以外の株式等 100%
 この準備金は、その株式等の全部又は一部を有しなくなった場合、その株式等の帳簿価額を減額した場合等において取り崩すほか、その積み立てた事業年度終了の日の翌日から10年を経過した日を含む事業年度から5年間でその経過した準備金残高の均等額を取り崩して、益金算入する。
②その事業承継等を対象とする一定の表明保証保険契約を締結している場合には、本制度を適用しないこととする。
③準備金の取崩し事由に株式等の取得をした事業年度後にその事業承継等を対象とする一定の表明保証保険契約を締結した場合を加え、その事由に該当する場合には、その全額を取り崩して、益金算入することとする。
④中小企業等経営強化法の経営力向上計画(事業承継等事前調査に関する事項の記載があるものに限る。)の認定手続について、その事業承継等に係る事業承継等事前調査が終了した後(最終合意前に限る。)においてもその経営力向上計画の認定ができることとする運用の改善を行う。
(4)交際費等の損金不算入制度について、次の措置を講じた上、その適用期限を3年延長する。
①損金不算入となる交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に係る金額基準を1人当たり1万円以下(現行:5,000円以下)に引き上げる。
②接待飲食費に係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特例の適用期限を3年延長する。
(注)上記①の改正は、令和6年4月1日以後に支出する飲食費について適用する。
(地方税)
(1)外形標準課税
①減資への対応
イ 外形標準課税の対象法人について、現行基準(資本金又は出資金(以下単に「資本金」という。)1億円超)を維持する。ただし、当分の間、当該事業年度の前事業年度に外形標準課税の対象であった法人であって、当該事業年度に資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金(これに類するものを含む。以下単に「資本剰余金」という。)の合計額(以下「資本金と資本剰余金の合計額」という。)が10億円を超えるものは、外形標準課税の対象とする。
ロ 施行日以後最初に開始する事業年度については、上記イにかかわらず、公布日を含む事業年度の前事業年度(公布日の前日に資本金が1億円以下となっていた場合には、公布日以後最初に終了する事業年度)に外形標準課税の対象であった法人であって、当該施行日以後最初に開始する事業年度に資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超えるものは、外形標準課税の対象とする。
ハ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和7年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用する。
②100%子法人等への対応
イ 資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人(当該法人が非課税又は所得割のみで課税される法人等である場合を除く。)又は相互会社・外国相互会社(以下「特定法人」という。)の100%子法人等のうち、当該事業年度末日の資本金が1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額(公布日以後に、当該100%子法人等がその100%親法人等に対して資本剰余金から配当を行った場合においては、当該配当に相当する額を加算した金額)が2億円を超えるものは、外形標準課税の対象とする。
(注)上記の「100%子法人等」とは、特定法人との間に当該特定法人による法人税法に規定する完全支配関係がある法人及び100%グループ内の複数の特定法人に発行済株式等の全部を保有されている法人をいう。
ロ 産業競争力強化法の改正を前提に、令和9年3月31日までの間に同法の特別事業再編計画(仮称)の認定を受けた認定特別事業再編事業者(仮称)が、当該認定を受けた計画に従って行う一定の特別事業再編(仮称)のための措置として他の法人の株式等の取得、株式交付又は株式交換を通じて当該他の法人を買収し、その買収(一定のものに限る。)の日以降も引き続き株式等を有している場合には、当該他の法人(当該認定特別事業再編事業者(仮称)が当該計画の認定を受ける前5年以内に買収した法人を含む。以下「他の法人等」という。)が行う事業に対する法人事業税については、当該買収の日の属する事業年度からその買収の日以後5年を経過する日の属する事業年度までの各事業年度においては、外形標準課税の対象外とする。ただし、当該他の法人等が、現行基準(資本金1億円超)又は上記①により外形標準課税の対象である場合は、特例措置の対象から除外する。
ハ 上記イにより、新たに外形標準課税の対象となる法人について、外形導準課税の対象となったことにより、従来の課税方式で計算した税額を超えることとなる額のうち、次に定める額を、当該事業年度に係る法人事業税額から控除する措置を講ずる。
(イ)令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度 当該超える額に3分の2の割合を乗じた額
(ロ)令和9年4月1日から令和10年3月31日までの間に開始する事業年度 当該超える額に3分の1の割合を乗じた額
ニ その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和8年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用する。
(2)国税(1)の見直しに伴い、特別償却制度を法人住民税及び法人事業税に、税額控除制度を中小企業者等に係る法人住民税に適用する。
4 円滑・適正な納税のための環境整備
(国税)
(1)現物出資について、次の見直しを行う。
①内国法人が外国法人の本店等に無形資産等の移転を行う現物出資について、適格現物出資の対象から除外する。
(注)上記の「無形資産等」とは、次に掲げる資産で、独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って譲渡、貸付け等が行われるとした場合にその対価が支払われるべきものをいう。
イ 工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式又はこれらに準ずるもの(これらの権利に関する使用権を含む。)
ロ 著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)
②適格現物出資への該当性の判定に際し、現物出資により移転する資産等(国内不動産等を除く。)の内外判定は、内国法人の本店等若しくは外国法人の恒久的施設を通じて行う事業に係る資産等又は内国法人の国外事業所等若しくは外国法人の本店等を通じて行う事業に係る資産等のいずれに該当するかによることとする。
(注)上記の「国外事業所等」とは、国外にある恒久的施設に相当するもの等をいう。
(注)上記の改正は、令和6年10月1日以後に行われる現物出資について適用する。
(2)法人が偽りその他不正の行為により、国税若しくは地方税を免れ、又は国税若しくは地方税の還付を受けた他の法人の役員等である場合において、その役員等である法人が第二次納税義務者としてその偽りその他不正の行為により免れ、又は還付を受けた国税又は地方税を納付し、又は納入したときは、その納付し、又は納入したことにより生じた損失の額は、損金算入しないこととする。
5 その他の租税特別措置等
(国税)
〔新設〕
 農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律(仮称)の制定を前提に、青色申告書を提出する法人で同法の生産方式革新実施計画(仮称)の認定を受けた農業者等(その農業者等が団体である場合におけるその構成員等を含む。以下同じ。)又は生産方式革新実施計画の認定を受けた農業者等の同法の生産方式革新事業活動(仮称)の促進に資する措置としてその計画に記載されたもの(以下「促進措置」という。)を行う同法のスマート農業技術活用サービス事業者(仮称)若しくは食品等事業者(仮称)であるものが、同法の施行の日から令和9年3月31日までの間に、次の機械その他の減価償却資産のうち一定の基準に適合するもの(以下「生産方式革新事業活動用資産等」という。)の取得等をして、その法人の生産方式革新事業活動(スマート農業技術活用サービス事業者又は食品等事業者にあっては、その促進措置)の用に供した場合には、その取得価額に、次の生産方式革新事業活動用資産等の区分に応じそれぞれ次の償却率を乗じた金額の特別償却ができることとする(所得税についても同様とする。)。
(1)認定生産方式革新実施計画(仮称)に記載されたその農業者等が行う生産方式革新事業活動の用に供する設備等を構成する機械装置、器具備品、建物等及び構築物 32%(建物等及び構築物については、16%)
(2)認定生産方式革新実施計画に記載された生産方式革新事業活動の促進に資する措置の用に供する設備等を構成する機械装置 25%
(注)上記の「一定の基準」とは、それぞれ次のものをいう。
(1)上記(1)の減価償却資産
①その生産方式革新事業活動による取組の過半がスマート農業技術(仮称)の効果の発揮に必要となるほ場の形状、栽培の方法又は品種の転換等の取組であること等の要件を満たす生産方式革新事業活動の用に供されるものであること。
②次のいずれかに該当する減価償却資産であること。
イ スマート農業技術を組み込んだ機械装置のうち7年以内に販売されたもの
ロ 上記イと一体的に導入された機械装置、器具備品、建物等及び構築物のうちスマート農業技術の効果の発揮に必要不可欠なもの
(2)上記(2)の減価償却資産
①その認定生産方式革新実施計画に記載された生産方式革新事業活動について、その取組に係る作付面積又は売上高が認定を受けた農業者等の行う農業に係る総作付面積又は総売上高のおおむね80%以上を占めること等の要件を満たすこと。
②その取得予定価額が上記(2)の措置を行う法人の前事業年度における減価償却費の額の10%以上であること等の要件を満たす設備等を構成する減価償却資産のうち次のものに該当すること。
イ 認定生産方式革新実施計画に記載された生産方式革新事業活動を行う農業者等に対して供給する一定のスマート農業技術活用サービス(農業者等の委託を受けて行う農作業に限る。)に専ら供される上記(1)②の減価償却資産で、は種、移植又は収穫用のもの
ロ 認定生産方式革新実施計画に記載された生産方式革新事業活動の実施により生産された農産物の選別、調製等の作業を代替して行う一定の農産物等の新たな製造、加工、流通又は販売の方式の導入を図るための取組に専ら供される減価償却資産で、農産物の洗浄、選別等の作業用のもの
〔拡充等〕
(1)地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度及び地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除制度について、次の措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。
①地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度について、次の措置を講じた上、その適用期限を2年延長する。
イ 地域再生法の改正を前提に、対象となる特定建物等の範囲に特定業務施設の新設に伴い整備される保育施設等で専らその特定業務施設において常時雇用する従業員の児童の保育等を行うための施設に該当する建物等及び構築物を加える。
ロ 中小企業者(適用除外事業者に該当するものを除く。)以外の法人の取得価額要件を3,500万円以上(現行:2,500万円以上)に引き上げる。
ハ 対象となる特定建物等の取得価額の合計額のうち本制度の対象となる金額の上限を80億円とする。
②地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の税額控除制度について、次の措置を講じた上、その適用期限を2年延長する。
イ 特定業務施設の新設に係る地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定事業者の適用年度をその特定業務施設を事業の用に供した日から同日の翌日以後2年を経過する日までの期間(現行:認定を受けた日から同日の翌日以後2年を経過する日までの期間)内の日を含む事業年度とする。
ロ 事業主都合による離職者がいないこととの要件について、その判定対象となる事業年度を対象年度及びその対象年度開始の日前2年(現行:1年)以内に開始した各事業年度とする。
ハ 地方事業所特別基準雇用者数に係る措置における地方事業所特別基準雇用者数を特定業務施設における特定雇用者の増加数に達するまでの数に限定する。
③地方活力向上地域等特定業務施設整備計画に係る認定要件について、関係法令の改正を前提に、次の見直しを行う。
イ 特定業務施設の範囲に次の部門のために使用される事務所を加える。
(イ)商業事業部門(専ら業務施設内において情報通信技術等を利用して対面以外の方法により行われる販売若しくは役務提供の勧誘、販売、契約締結等に関する業務、営業管理若しくは市場調査に関する業務又は購買管理若しくは購買企画に関する業務を行う部門に限る。)
(ロ)サービス事業部門(調査企画、情報処理、研究開発、国際事業その他管理の業務の受託に関する業務を行う部門に限る。)
ロ 移転型事業に係る転勤者に関する要件のうち「特定業務施設を事業の用に供する日の属する事業年度のその特定業務施設の増加従業員数の過半数が特定集中地域にある他の事業所からの転勤者であって、かつ、実施期間を通じたその特定業務施設の増加従業員数の4分の1以上が特定集中地域にある他の事業所からの転勤者であること」との要件について、増加従業員数の過半数が特定集中地域にある他の事業所からの転勤者であることとする期間を特定業務施設を事業の用に供する日から同日以後1年を経過する日までの期間とする。
(2)カーボンニュートラルに向けた投資促進税制について、次の措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。
①中小企業者(適用除外事業者に該当するものを除く。以下同じ。)が生産工程効率化等設備の取得等をする場合の特別償却率及び税額控除率を、認定エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画に記載された次の炭素生産性向上率の区分に応じそれぞれ次の率とする。
イ 炭素生産性向上率17%以上 特別償却率50%又は税額控除率14%
ロ 炭素生産性向上率10%以上17%未満 特別償却率50%又は税額控除率10%
②対象資産である生産工程効率化等設備の範囲に、一定の鉄道用車両を加える。
③対象資産から、需要開拓商品生産設備並びに生産工程効率化等設備のうち市場に流通している照明設備及び対人空調設備を除外する。
④事業適応計画(生産工程効率化等設備の導入を伴うエネルギー利用環境負荷低減事業適応に関するものに限る。以下同じ。)の認定要件のうち事業所等の炭素生産性向上率に係る要件について、炭素生産性向上率を15%以上(中小企業者にあっては、10%以上)(現行:7%以上)に引き上げる。
⑤中小企業者以外の法人が生産工程効率化等設備の取得等をする場合の税額控除率を引き上げる措置の適用要件について、事業所等の炭素生産性向上率を20%以上(現行:10%以上)に引き上げる。
⑥事業適応計画の認定要件のうち事業所等の炭素生産性向上率に係る要件及び税額控除率を引き上げる措置の適用要件について、上記④及び⑤のほか、事業所等の炭素生産性向上率を計算する際に電気の排出係数による影響等を除外する等の見直しを行う。
⑦対象法人を令和8年3月31日までに事業適応計画の認定を受けた法人とし、対象資産をその認定を受けた日から3年以内に、取得等をして、事業の用に供する資産とする。
(注)令和6年4月1日前に認定の申請をした事業適応計画に従って同日以後に取得等をする資産については、本制度を適用しないこととする。
〔延長〕
 中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置について、その適用期限を2年延長するとともに、対象から銀行等保有株式取得機構の欠損金額を除外する措置の適用期限を2年延長する。
〔廃止・縮減等〕
(1)国家戦略特別区域において機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
①対象となる特定事業から次の事業を除外する。
イ 国際会議等に参加する者の利用に供する大規模な集会施設、宿泊施設、文化施設その他の利用に供する施設又は設備の整備、運営又はサービスの提供に関する事業(国際会議等に参加する者に係るものに限る。)のうち、集会施設、宿泊施設又は文化施設以外の施設又は設備の整備、運営又はサービスの提供に関する事業
ロ 付加価値の高い農林水産物若しくは加工食品の効率的な生産若しくは輸出の促進を図るために必要な高度な技術の研究開発又は当該技術の活用に関する事業(これらの事業に必要な施設又は設備の整備又は運営に関する事業を含む。)
②設備投資に係る特定事業に関する事業実施計画の事業実施期間の末日について設備を事業の用に供した日以後5年を経過する日(現行:定めなし)とした上、特定事業の適切な実施に関する国家戦略特別区域担当大臣の確認についてその判断基準を明確化する。
(2)国際戦略総合特別区域において機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
①令和6年4月1日以後に受けた指定に係る指定法人事業実施計画に記載された特定機械装置等の特別償却率を、機械装置及び器具備品については30%(現行:34%)に、建物等及び構築物については15%(現行:17%)に、それぞれ引き下げる。
②令和6年4月1日以後に受けた指定に係る指定法人事業実施計画に記載された特定機械装置等の税額控除率を、機械装置及び器具備品については8%(現行:10%)に、建物等及び構築物については4%(現行:5%)に、それぞれ引き下げる。
③対象となる特定国際戦略事業から次の事業を除外する。
イ 手術補助その他の治療、日常生活訓練その他医療及び介護に関する利用に供するロボットの研究開発又は製造に関する事業(これらの事業に必要な施設又は設備の整備又は運営に関する事業を含む。)
ロ 情報通信技術を利用して行われる診療に係るシステムその他の医療に関する情報システム(電磁的記録により作成又は保存される診療の記録に関するものを含む。)の研究開発に関する事業(これらの事業に必要な施設又は設備の整備又は運営に関する事業を含む。)
ハ 高度な医療を提供する医療施設又は医療設備の整備又は運営に関する事業
ニ 産業競争力強化法の産業競争力基盤強化商品(仮称)の生産に関する事業
(3)中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(中小企業経営強化税制)について、対象資産のうち遠隔操作、可視化又は自動制御化に関する投資計画に記載された投資の目的を達成するために必要不可欠な設備(デジタル化設備)から次の設備を除外する(所得税についても同様とする。)。
①農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律(仮称)の生産方式革新実施計画(仮称)の認定を受けた農業者等(その農業者等が団体である場合におけるその構成員等を含む。以下同じ。)が取得等をする農業の用に供される設備
②生産方式革新実施計画の認定を受けた農業者等に係るスマート農業技術活用サービス事業者(仮称)が取得等をする農業者等の委託を受けて農作業を行う事業の用に供される設備
(4)環境負荷低減事業活動用資産等の特別償却制度について、基盤確立事業用資産に係る措置につき次の見直しを行った上、制度の適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
①対象資産を、専ら化学的に合成された肥料又は農薬に代替する生産資材(普及が十分でないものに限る。)を生産するために用いられる機械等及びその機械等と一体的に整備された建物等であることにつき基盤確立事業実施計画の認定の際に確認が行われたものとする。
②この措置の適用を受けようとする法人は、確定申告書等に認定基盤確立事業実施計画の写しを添付しなければならないこととする。
(5)特定地域における工業用機械等の特別償却制度について、次の見直しを行う(所得税についても同様とする。)。
①過疎地域等に係る措置の適用期限を3年延長する。
②奄美群島に係る措置は、適用期限の到来をもって廃止する。
(6)事業再編計画の認定を受けた場合の事業再編促進機械等の割増償却制度は、令和6年3月31日をもって廃止する(所得税についても同様とする。)。
(7)輸出事業用資産の割増償却制度について、対象となる輸出事業用資産から次の資産を除外した上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
①食肉流通構造高度化・輸出拡大総合対策事業による交付金その他固定資産の取得等に充てるための国の補助金、給付金又は交付金でその交付の目的が農林水産物又は食品の輸出の促進であるものの交付を受けた資産
②開発研究の用に供される資産
(8)倉庫用建物等の割増償却制度について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する(所得税についても同様とする。)。
①対象となる特定流通業務施設において有していなければならないこととされている到着時刻表示装置について貨物自動車の運転者等からの商品等の入出庫に関する情報の提供機能を有するものに限定するほか、対象となる特定流通業務施設の設備要件を見直す。
②割増償却は、流通業務の省力化に特に資する施設として次の要件を満たす特定流通業務施設であることにつき証明された事業年度のみ、適用できることとする。
イ 貨物自動車の運転者の平均荷待ち時間が20分以内であること。
ロ 貨物自動車の運転者の平均荷役時間(以下「平均荷役時間」という。)が特定総合効率化計画に記載されたその特定流通業務施設における平均荷役時間の目標値及びその法人が既に有する流通業務施設における平均荷役時間を下回ること。
(9)特別償却等に関する複数の規定の不適用措置について、異なる事業年度であっても、法人の有する一の減価償却資産につき特別償却等に関する制度のうち複数の制度の適用ができないこととする(所得税についても同様とする。)。
(10)海外投資等損失準備金制度について、対象となる特定株式等から経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律に基づく独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構の助成金の交付を受けた法人がその助成金をもって取得したその助成金の交付の目的に適合した株式又は出資を除外した上、その適用期限を2年延長する。
(11)国家戦略特別区域における指定法人の課税の特例について、次の見直しを行った上、その適用期限を2年延長する。
①所得控除率を18%(現行:20%)に引き下げる。
②対象事業から次の事業を除外する。
イ 我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展に寄与することが見込まれる産業に係る国際的な事業機会の創出その他当該産業に係る国際的な規模の事業活動の促進に資する事業
ロ 付加価値の高い農林水産物若しくは加工食品の効率的な生産若しくは輸出の促進を図るために必要な高度な技術の研究開発又は当該技術の活用に関する事業(これらの事業に必要な施設又は設備の整備又は運営に関する事業を含む。)
(注)上記①の改正は、令和6年4月1日以後に指定を受ける法人(指定に係る認定区域計画に定められている特定事業に関する事業実施計画を同日前に国家戦略特別区域担当大臣に提出したものを除く。)の各事業年度分の法人税について適用する。
(12)技術研究組合の所得の計算の特例について、次の見直しを行った上、その適用期限を3年延長する。
①対象資産について、新たな知見を得るため又は利用可能な知見の新たな応用を考案するために行う試験研究の用に直接供する固定資産に限定する。
②対象資産から、電気ガス供給施設利用権を除外する。
(13)特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例における独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済事業に係る措置について、中小企業倒産防止共済法の共済契約の解除があった後同法の共済契約を締結した場合には、その解除の日から同日以後2年を経過する日までの間に支出する当該共済契約に係る掛金については、本特例の適用ができないこととする(所得税についても同様とする。)。
(注)上記の改正は、令和6年10月1日以後の共済契約の解除について適用する。
(14)中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例について、対象法人から電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により法人税の確定申告書等に記載すべきものとされる事項を提供しなければならない法人のうち常時使用する従業員の数が300人を超えるものを除外した上、その適用期限を2年延長する(適用期限の延長は、所得税についても同様とする。)。
(15)特定の協同組合等の法人税率の特例について、当該事業年度の総収入金額のうちに当該事業年度の物品供給事業に係る収入金額の占める割合が50%を超えることとの要件における物品供給事業に、協同組合等の組合員等に電気を供給する事業が含まれることを明確化する。
(16)特定復興産業集積区域において機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度について、その適用期限を2年延長するとともに、令和7年4月1日以後に取得等をした特定機械装置等につき、次の見直しを行う(所得税についても同様とする。)。
①特別償却率を、機械装置については45%(現行:50%)に、建物等及び構築物については23%(現行:25%)に、それぞれ引き下げる。
②税額控除率を、機械装置については14%(現行:15%)に、建物等及び構築物については7%(現行:8%)に、それぞれ引き下げる。
(17)特定復興産業集積区域において被災雇用者等を雇用した場合の税額控除制度について、その適用期限を2年延長するとともに、令和7年4月1日以後に指定を受けた法人の税額控除率を9%(現行:10%)に引き下げる(所得税についても同様とする。)。
(18)特定復興産業集積区域における開発研究用資産の特別償却制度等について、その適用期限を2年延長するとともに、令和7年4月1日以後に取得等をした開発研究用資産の特別償却率を30%(中小企業者等については、45%)(現行:34%(中小企業者等については、50%))に引き下げる(所得税についても同様とする。)。
(19)再投資等準備金制度及び再投資設備等の特別償却制度は、適用期限の到来をもって廃止する。
(20)震災特例法に係る特定の資産の買換えの場合等の課税の特例は、適用期限の到来をもって廃止する(所得税についても同様とする。)。
(地方税)
〔新設〕
(1)電気供給業を行う法人の事業税の課税標準である収入金額を算定する場合において控除される収入金額の範囲に、発電事業者が一般送配電事業者による託送供給により電気の供給を行う場合において当該託送供給の料金として支払うべき金額(発電側課金)に相当する収入金額を追加する課税標準の特例措置を2年間に限り講ずる。
(2)電気供給業を行う法人の事業税の課税標準である収入金額を算定する場合において控除される収入金額の範囲に、小売電気事業者等が容量市場において広域的運営推進機関に支払うべき金額及び一般送配電事業者等が電源入札等において広域的運営推進機関に支払うべき金額に相当する収入金額を追加する課税標準の特例措置を3年間に限り講ずる。
〔延長・拡充等〕
(1)国税〔拡充等〕(1)の見直し及び延長に伴い、特別償却制度を法人住民税及び法人事業税に、税額控除制度を中小企業者等に係る法人住民税に適用する。
(2)国税〔拡充等〕(2)の見直し及び延長に伴い、特別償却制度を法人住民税及び法人事業税に、税額控除制度を中小企業者等に係る法人住民税に適用する。
(3)北海道旅客鉄道株式会社及び四国旅客鉄道株式会社に係る法人事業税の資本割の課税標準の特例措置の適用期限を5年延長する。
(4)預金保険法に規定する協定銀行及び承継銀行に係る法人事業税の資本割の課税標準の特例措置の適用期限を5年延長する。
(5)新関西国際空港株式会社及び関西国際空港土地保有株式会社に係る法人事業税の資本割の課税標準の特例措置の適用期限を5年延長する。
(6)中部国際空港株式会社に係る法人事業税の資本割の課税標準の特例措置の適用期限を5年延長する。
(7)大都市地域における宅地開発及び鉄道整備の一体的推進に関する特別措置法に規定する特定鉄道事業者に係る法人事業税の資本割の課税標準の特例措置の適用期限を5年延長する。
(8)東京湾横断道路株式会社に係る法人事業税の資本割の課税標準の特例措置の適用期限を5年延長する。
(9)株式会社地域経済活性化支援機構に係る法人事業税の資本割の課税標準の特例措置の適用期限を5年延長する。
(10)電気供給業を行う法人の事業税の課税標準である収入金額を算定する場合において控除される収入金額の範囲に、卸電力取引市場において売却した電気を自ら購入する場合において当該電気の料金として支払うべき金額に相当する収入金額を追加する課税標準の特例措置の適用期限を3年延長する。
(11)電気供給業を行う法人の事業税の課税標準である収入金額を算定する場合において控除される収入金額の範囲に、一般送配電事業者及び送電事業者による小売電気事業又は発電事業の兼業が禁止されることに伴い分社化しグループ会社となった電気事業者の間の取引に係る収入金額のうち、電気の安定供給の確保のためにやむを得ずグループ会社間で行わなければならないものとして事前に経済産業大臣の承認を受けた取引を行う場合において当該取引の料金として支払うべき金額に相当する収入金額を追加する課税標準の特例措置の適用期限を5年延長する。
〔廃止・縮減等〕
(1)国税〔廃止・縮減等〕(1)の見直し及び延長に伴い、特別償却制度を法人住民税及び法人事業税に適用する。
(2)国税〔廃止・縮減等〕(2)の見直し及び延長に伴い、特別償却制度を法人住民税及び法人事業税に適用する。
(3)国税〔廃止・縮減等〕(3)の見直しに伴い、特別償却制度を法人住民税及び法人事業税に、税額控除制度を法人住民税に適用する。
(4)国税〔廃止・縮減等〕(10)の見直し及び延長に伴い、法人住民税及び法人事業税について、国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。
(5)国税〔廃止・縮減等〕(16)の見直し及び延長に伴い、特別償却制度を法人住民税及び法人事業税に、税額控除制度を法人住民税に適用する。
(6)国税〔廃止・縮減等〕(17)の見直し及び延長に伴い、税額控除制度を法人住民税に適用する。
(7)国税〔廃止・縮減等〕(18)の見直し及び延長に伴い、特別償却制度を法人住民税及び法人事業税に、税額控除制度を中小企業者等に係る法人住民税に適用する。
(8)国税における諸制度の取扱い等を踏まえ、その他所要の措置を講ずる。
6 その他
(国税)
(1)公益法人等の収益事業に係る課税について、次の見直しを行う。
①次の事業を収益事業から除外する。
イ 広域的運営推進機関が電気事業法の広域系統整備交付金交付等業務として行う金銭貸付業
ロ 国民健康保険団体連合会が次の者から委託を受けて行う請負業でその委託が法令の規定に基づき行われるものであること等の一定の要件に該当するもの
(イ)国又は地方公共団体(後期高齢者医療広域連合を含む。)
(ロ)全国健康保険協会、健康保険組合、国民健康保険組合、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合又は日本私立学校振興・共済事業団
(ハ)社会保険診療報酬支払基金又は独立行政法人環境再生保全機構
(ニ)国民健康保険団体連合会をその会員とする一定の法人
②収益事業から除外される公的医療機関に該当する病院等を設置する農業協同組合連合会が行う医療保健業の要件について、次の見直しを行う。
イ 特別の療養環境に係る病床数の割合に係る要件について、その割合が療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等における特別の療養環境の提供に関する基準に適合していることとする。
ロ 社会保険診療等に係る収入金額の合計額が全収入金額の100分の80を超えることとの要件を加える。
ハ その他所要の措置を講ずる。
(2)漁港及び漁場の整備等に関する法律の漁港水面施設運営権について、次の措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。
①漁港水面施設運営権を法人税法上の減価償却資産(無形固定資産)とする。
②漁港水面施設運営権の耐用年数をその漁港水面施設運営権の設定の通知において明らかにされた存続期間の年数とする。ただし、漁港水面施設運営権の存続期間の更新に伴い支出した金額のうち資本的支出とされた金額を取得価額として新たに取得したものとされる資産については、その更新の通知において明らかにされたその更新後の存続期間の年数とする。
③漁港水面施設運営権の償却方法を定額法とする。
(3)二酸化炭素の貯留事業に関する法律(仮称)の制定を前提に、同法の貯留権(仮称)及び試掘権(仮称)について、次の措置を講ずる(所得税についても同様とする。)。
①貯留権及び試掘権を法人税法上の減価償却資産(無形固定資産)とする。
②貯留権の耐用年数をその貯留権に係る貯留区域(仮称)の貯蔵予定数量をその貯留区域の最近における年間貯蔵数量等で除して計算した数を基礎として納税地の所轄税務署長の認定した年数とした上、その償却方法を生産高(貯留量)比例法又は定額法とし、法定償却方法を生産高(貯留量)比例法とする。
③試掘権の耐用年数を6年とし、その償却方法を定額法とする。
④その他所要の措置を講ずる。
(4)鉱業権のうち次の試掘権の耐用年数(現行:8年)を次のとおり見直す(所得税についても同様とする。)。
①石油又は可燃性天然ガスに係る試掘権 6年
②アスファルトに係る試掘権 5年
(5)国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入制度について、対象となる国庫補助金等の範囲に次の助成金を加える(所得税についても同様とする。)。
①経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律に基づく独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構又は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の助成金で供給確保計画の認定を受けた者が行う認定供給確保事業に必要な資金に充てるためのもの
②国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法に基づく助成金で再生可能エネルギー熱の面的利用システム構築に向けた技術開発等に係るもの
(6)買戻条件の付された一定の種類株式について買戻しが行われた場合における譲渡法人の課税上の取扱いを明確化する。
(7)奄美群島振興開発特別措置法の期限の延長を前提に、独立行政法人奄美群島振興開発基金を引き続き公共法人(法人税法別表第一)とする。
(8)国立研究開発法人情報通信研究機構法の改正により国立研究開発法人情報通信研究機構の資本金の額等の全部が国の所有に属することとなることに伴い、同機構を公共法人(法人税法別表第一)(現行:公益法人等(法人税法別表第二))とする。
(9)脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律に基づき設立される脱炭素成長型経済構造移行推進機構を公益法人等(法人税法別表第二)とする。
(10)社会医療法人の認定要件のうち救急医療等確保事業に係る業務を行っていることとの要件について、医療法の改正により救急医療等確保事業に「そのまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症がまん延し、又はそのおそれがあるときにおける医療の確保に必要な事業」が追加されたことに伴いその事業に関する基準が新たに設定された後も、社会医療法人を引き続き公益法人等(法人税法別表第二)とし、その行う医療保健業を引き続き収益事業から除外する。
(11)関係法令の改正を前提に、消費生活協同組合等の電気を供給する事業に係る員外利用の制限の緩和等が行われた後も、消費生活協同組合等を引き続き協同組合等(法人税法別表第三)とする。
(12)公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律等の改正を前提に、収支相償原則の見直し等の公益法人制度改革が行われた後も、公益社団法人及び公益財団法人に講じられている措置を引き続き認めることとする。
(13)公益信託制度改革による新たな公益信託制度の創設に伴い、次の措置を講ずる。
①公益信託の信託財産に帰せられる収益及び費用については、委託者及び受託者の段階で法人税を課税しないこととする。
②公益信託の信託財産とするために支出した当該公益信託に係る信託事務に関連する寄附金(出資に関する信託事務に充てられることが明らかなものを除く。)について、特定公益増進法人に対する寄附金と同様に、別枠の損金算入限度額の対象とする。
③その他所要の措置を講ずる。
(注)現行の特定公益信託及び特定公益信託以外の公益信託について、所要の経過措置を講ずる。
(14)感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の改正に伴い、同法の流行初期医療確保措置に係る収入金額が次の各要件における社会保険診療等に係る収入金額の範囲に含まれることを明確化する。
①社会医療法人の認定要件のうち社会保険診療等に係る収入金額の合計額が全収入金額の100分の80を超えることとの要件
②収益事業から除外される医師会法人等がその開設する病院又は診療所において行う医療保健業の要件のうち社会保険診療等に係る収入金額の合計額が全収入金額の100分の60を超えることとの要件
③収益事業から除外される無料又は低額な料金による診療事業等を行う公益法人等が行う医療保健業の要件のうち社会保険診療等に係る収入金額の合計額が全収入金額の100分の80を超えることとの要件
④特定の医療法人の法人税率の特例における承認要件のうち社会保険診療等に係る収入金額の合計額が全収入金額の100分の80を超えることとの要件
(地方税)
(1)感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律の改正に伴い、同法の流行初期医療確保措置について、事業税の実質的非課税措置の対象となっている社会保険診療に加える。
(2)国税における諸制度の取扱い等を踏まえ、その他所要の措置を講ずる。

四 消費課税
1 国外事業者に係る消費税の課税の適正化
(国税)
(1)プラットフォーム課税の導入
①国外事業者がデジタルプラットフォームを介して行う電気通信利用役務の提供(事業者向け電気通信利用役務の提供に該当するものを除く。以下同じ。)のうち、下記②の指定を受けたプラットフォーム事業者(以下「特定プラットフォーム事業者」という。)を介してその対価を収受するものについては、特定プラットフォーム事業者が行ったものとみなす。
②国税庁長官は、プラットフォーム事業者のその課税期間において上記①の対象となるべき電気通信利用役務の提供に係る対価の額の合計額が50億円を超える場合には、当該プラットフォーム事業者を特定プラットフォーム事業者として指定する。
③上記②の要件に該当する者は、その課税期間に係る確定申告書の提出期限までに、その旨を国税庁長官に届け出なければならない。
④国税庁長官は、特定プラットフォーム事業者を指定したときは、当該特定プラットフォーム事業者に対してその旨を通知するとともに、当該特定プラットフォーム事業者に係るデジタルプラットフォームの名称等についてインターネットを通じて速やかに公表するものとし、指定を受けた特定プラットフォーム事業者は、上記①の対象となる国外事業者に対してその旨を通知するものとする。
⑤特定プラットフォーム事業者は、確定申告書に上記①の対象となる金額等を記載した明細書を添付するものとする。
⑥その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和7年4月1日以後に行われる電気通信利用役務の提供について適用することとし、特定プラットフォーム事業者の指定制度に係る事前の指定及び届出については、所要の経過措置を講ずる。
(2)事業者免税点制度の特例の見直し
①特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例について、課税売上高に代わり適用可能とされている給与支払額による判定の対象から国外事業者を除外する。
②資本金1,000万円以上の新設法人に対する納税義務の免除の特例について、外国法人は基準期間を有する場合であっても、国内における事業の開始時に本特例の適用の判定を行う。
③資本金1,000万円未満の特定新規設立法人に対する納税義務の免除の特例について、本特例の対象となる特定新規設立法人の範囲に、その事業者の国外分を含む収入金額が50億円超である者が直接又は間接に支配する法人を設立した場合のその法人を加えるほか、上記②と同様の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用する。
(3)簡易課税制度等の見直し
 その課税期間の初日において所得税法又は法人税法上の恒久的施設を有しない国外事業者については、簡易課税制度の適用を認めないこととする。また、適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置の適用についても同様とする。
(注)上記の改正は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用する。
(4)その他所要の措置を講ずる。
(地方税)
 消費税におけるプラットフォーム課税の導入に伴い、地方消費税について所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和7年4月1日以後に行われる電気通信利用役務の提供について適用する。
2 外国人旅行者向け免税制度(輸出物品販売場制度)の抜本的な見直し
(国税)
 外国人旅行者向け免税制度については、制度が不正に利用されている現状を踏まえ、免税販売の要件として、新たに政府の免税販売管理システムを通じて取得した税関確認情報(仮称)の保存を求めることとし、外国人旅行者の利便性の向上や免税店の事務負担の軽減に十分配慮しつつ、空港等での混雑防止の確保を前提として、令和7年度税制改正において、制度の詳細について結論を得る。
(注)上記の「税関確認情報(仮称)」とは、免税店で免税購入対象者が免税購入した物品を税関長が国外に持ち出すことを確認した旨の情報をいう。
3 租税特別措置等
(国税)
〔延長・拡充等〕
(1)外国公館等に対する課税資産の譲渡等に係る免税措置について、外国公館等による免税購入表の提出及び事業者による免税購入表の保存を電磁的記録により行うことができることとする。
(2)入国者が輸入する紙巻たばこのたばこ税の税率の特例措置の適用期限を1年延長する。
(3)沖縄発電用特定石炭等に係る石油石炭税の免税措置の適用期限を3年延長する。
(4)公共交通移動等円滑化基準に適合した乗合自動車等に係る自動車重量税の免税措置について、適用対象に新たに創設される認定レベルに応じた標準仕様を満たす車両として国土交通大臣の認定を受けたユニバーサルデザインタクシーを加えた上、その適用期限を2年延長する。
(地方税)
〔延長・拡充〕
〈自動車税環境性能割〉
(1)公共交通移動等円滑化基準に適合したユニバーサルデザインタクシー(新車に限る。)に係る自動車税の環境性能割の課税標準の特例措置の対象に、新たに創設される認定レベルに応じた標準仕様を満たす車両として国土交通大臣が認定するものを加える。
〈軽油引取税〉
(2)船舶の動力源に供する軽油の引取りを行った自衛隊の船舶の使用者が、我が国と我が国以外の締約国との間の物品又は役務の相互の提供に関する条約その他の国際約束に基づき、当該締約国の軍隊の船舶の動力源に供するため行う当該軽油の譲渡に係る軽油引取税の課税免除の特例措置について、日独物品役務相互提供協定(仮称)の締結を前提に、同協定に基づきドイツ連邦共和国の軍隊の船舶の動力源に供するため譲渡する場合を対象に加えた上、その適用期限を3年延長する。
(3)自衛隊又は日豪部隊間協力円滑化協定に規定する訪問部隊として日本国内に所在するオーストラリア軍隊(以下「オーストラリア軍隊」という。)が通信の用に供する機械等の電源又は動力源に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(4)鉄道事業又は軌道事業を営む者等が鉄道用車両、軌道用車両等(日本貨物鉄道株式会社にあっては、駅の構内等において専らコンテナ貨物の積卸しの用に供するフォークリフト等の機械を含む。)の動力源に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(5)農業又は林業を営む者等が動力耕うん機等の機械の動力源に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(6)セメント製品製造業を営む者が事業場内において専らセメント製品又はその原材料の積卸しのために使用するフォークリフト等の機械の動力源の用途に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(7)生コンクリート製造業を営む者が事業場内において専ら骨材の積卸しのために使用するフォークリフト等の機械の動力源の用途に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(8)鉱物(岩石及び砂利を含む。)の掘採事業を営む者が事業場内において専ら鉱物の掘採等のために使用する機械の動力源の用途に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(9)とび・土工工事業を営む者が工事現場において専らくい打ち等のために使用する建設機械の動力源の用途に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(10)鉱さいバラス製造業を営む者(中小事業者等に限る。)が事業場内において専ら鉱さいの破砕等のために使用する機械の動力源の用途に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(11)港湾運送業を営む者が港湾において専ら港湾運送のために使用されるブルドーザー等の機械の動力源の用途に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(12)倉庫業を営む者が倉庫において専ら当該倉庫業のために使用するフォークリフト等の機械の動力源の用途に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(13)鉄道(軌道を含む。)に係る貨物利用運送事業又は鉄道貨物積卸業を営む者が駅の構内において専ら積込み事業等のために使用するフォークリフト等の機械の動力源の用途に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(14)航空運送サービス業を営む者が空港等において専ら航空機への旅客の乗降等のために使用する機械の動力源の用途に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(15)廃棄物処理事業を営む者(産業廃棄物処分業者及び特別管理産業廃棄物処分業者にあっては、中小事業者等に限る。)が廃棄物の埋立地内において専ら廃棄物の処分のために使用する機械の動力源の用途に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(16)木材加工業を営む者が事業場内において専ら木材の積卸しのために使用する機械の動力源の用途に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(17)木材市場業を営む者が事業場内において専ら木材の積卸しのために使用する機械の動力源の用途に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(18)堆肥製造業を営む者が事業場内において、専ら堆肥の製造工程において使用する機械等の動力源の用途に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(19)索道事業を営む者がスキー場において専ら当該スキー場の整備のために使用する積雪を圧縮するための特殊な構造を有する装置を備えた機械等の動力源の用途に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(20)船舶の動力源に供する軽油の引取りを行った自衛隊の船舶の使用者が、重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律、重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律、武力攻撃事態等及び存立危機事態におけるアメリカ合衆国等の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律又は国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律に基づき行う当該軽油の譲渡に係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
(21)船舶の動力源に供する軽油の引取りを行ったオーストラリア軍隊の船舶の使用者が、自衛隊に対して行う当該軽油の譲渡に係る軽油引取税の課税免除の特例措置の適用期限を3年延長する。
〈狩猟税〉
(22)鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律に規定する対象鳥獣捕獲員が受ける狩猟者の登録に係る狩猟税の課税免除の特例措置の適用期限を5年延長する。
(23)鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律に規定する認定鳥獣捕獲等事業者の従事者が受ける狩猟者の登録に係る狩猟税の課税免除の特例措置の適用期限を5年延長する。
(24)狩猟者登録の申請書を提出する日前1年以内の期間に、鳥獣の管理の目的で、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律第9条第1項の規定による許可を受け、当該許可に係る鳥獣の捕獲等を行った者等が受ける狩猟者の登録に係る狩猟税の税率の特例措置の適用期限を5年延長する。
〔縮減等〕
〈軽油引取税〉
 船舶の使用者が当該船舶の動力源に供する軽油の引取りに係る軽油引取税の課税免除の特例措置について、一定のレクリエーション(業として行うものを除く。)の用に供する船舶(いわゆる「プレジャーボート」)を適用対象から除外した上、その適用期限を3年延長する。なお、令和7年3月31日までに行われる一定のレクリエーション(業として行うものを除く。)の用に供する船舶(いわゆる「プレジャーボート」)の使用者が当該船舶の動力源に供する軽油の引取りについては、課税免除とする経過措置を講ずる。
4 その他
(国税)
(1)高額特定資産を取得した場合の事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を制限する措置の対象に、その課税期間において取得した金又は白金の地金等の額の合計額が200万円以上である場合を加える。
(注)上記の改正は、令和6年4月1日以後に国内において事業者が行う金又は白金の地金等の課税仕入れ及び保税地域から引き取られる金又は白金の地金等について適用する。
(2)公益信託制度改革による新たな公益信託制度の創設に伴い、公益信託の信託財産に係る取引については、その受託者に対し、当該受託者の固有資産に係る取引とは区別して消費税を課税するとともに、特定収入がある場合の仕入控除税額の調整措置の対象とする。
(注)現行の特定公益信託及び特定公益信託以外の公益信託について、所要の経過措置を講ずる。
(3)外国人旅行者向け消費税免税制度により免税購入された物品と知りながら行った課税仕入れについては、仕入税額控除制度の適用を認めないこととする。
(注)上記の改正は、令和6年4月1日以後に国内において事業者が行う課税仕入れについて適用する。
(4)消費税の不正受還付犯(未遂犯を含む。)の対象に、偽りその他不正の行為による更正の請求に基づく還付を加える。
(注)上記の改正は、法律の公布の日から起算して10日を経過した日以後にした違反行為について適用する。
(5)脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律に基づき設立される脱炭素成長型経済構造移行推進機構を消費税法別表第三法人とする。
(6)適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置について、一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの額の合計額がその年又はその事業年度で10億円を超える場合には、その超えた部分の課税仕入れについて、本経過措置の適用を認めないこととする。
(注)上記の改正は、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用する。
(7)漁港及び漁場の整備等に関する法律の漁港水面施設運営権を消費税法上の調整対象固定資産(無形固定資産)とする。
(8)二酸化炭素の貯留事業に関する法律(仮称)の制定を前提に、同法の貯留権(仮称)及び試掘権(仮称)を消費税法上の調整対象固定資産(無形固定資産)とする。
(9)金又は白金の地金の課税仕入れに係る仕入税額控除の要件として保存することとされている消費税法上の本人確認書類について、次の措置を講ずる。
①健康保険法等の改正に伴い、本人確認書類の範囲に、健康保険法に規定する被保険者の資格の確認に必要な書面等を加える。
②特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行規則の改正を前提に、本人確認書類の範囲に、特別児童扶養手当受給証明書(仮称)を加える。
(10)一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められる自動販売機及び自動サービス機による課税仕入れ並びに使用の際に証票が回収される課税仕入れ(3万円未満のものに限る。)については、帳簿への住所等の記載を不要とする。
(注)上記の改正の趣旨を踏まえ、令和5年10月1日以後に行われる上記の課税仕入れに係る帳簿への住所等の記載については、運用上、記載がなくとも改めて求めないものとする。
(11)簡易課税制度又は適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置を適用する事業者が、令和5年10月1日以後に国内において行う課税仕入れについて、税抜経理方式を適用した場合の仮払消費税等として計上する金額につき、継続適用を条件として当該課税仕入れに係る支払対価の額に110分の10(軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、108分の8)を乗じた金額とすることが認められることを明確化するほか、消費税に係る経理処理方法について所要の見直しを行う。
(12)社会医療法人の認定要件のうち救急医療等確保事業に係る業務を行っていることとの要件について、医療法の改正により救急医療等確保事業に「そのまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症がまん延し、又はそのおそれがあるときにおける医療の確保に必要な事業」が追加されたことに伴いその事業に関する基準が新たに設定された後も、社会医療法人を引き続き消費税法別表第三法人とする。
(13)新たなワクチン追加後の予防接種法の健康被害救済給付に係る医療について、所要の法令改正を前提に、引き続き消費税を非課税とする。
(14)次期戦闘機の共同開発に係る国際機関の設立のための国際約束の締結を前提に、その国際約束に基づき保税地域から引き取られる物品に係る消費税を免除する。
(15)健康保険法等の改正に伴い、酒類の製造免許等の取消申請書に添付する本人確認書類の範囲に、健康保険法に規定する被保険者の資格の確認に必要な書面等を加える。
(16)たばこ税の未納税引取りの範囲に「製造たばこ製造者が自己の製造たばこの製造場で試験検査の用に供するための製造たばこの保税地域からの引取り」を加える。
(17)酒類業組合等の名称例外承認申請書等の様式について、国税庁長官が必要がある場合に、所要の事項を付記すること又は一部の事項を削ることができることとする。
(注)上記の改正は、令和8年9月1日以後に提出する酒類業組合等の名称例外承認申請書等の様式について適用する。
(18)沖縄の揮発油に係る揮発油税及び地方揮発油税の軽減措置の適用期限を3年延長する。
(19)特例輸入者による特例申告の納期限延長において必須とされている担保について、内国消費税の保全のために必要があると認められる場合にのみ提供を求めることとする。
(注)上記の改正は、令和6年10月1日以後の納期限の延長について適用する。
(地方税)
〈地方消費税〉
(1)公益信託の信託財産に係る取引については、その受託者に対し、当該受託者の固有資産に係る取引とは区別して消費税が課税されることに伴い、地方消費税について所要の措置を講ずる。
(注)現行の特定公益信託及び特定公益信託以外の公益信託について、所要の経過措置を講ずる。
(2)消費税の不正受還付犯(未遂犯を含む。)の対象に、偽りその他不正の行為による更正の請求に基づく還付が加えられることに伴い、地方消費税について所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、法律の公布の日から起算して10日を経過した日以後にした違反行為について適用する。
(3)地方消費税の清算基準について、次の見直しを行う。
①消費に相当する額のうち、小売年間販売額及びサービス業対個人事業収入額について、平成26年商業統計及び平成28年経済センサス活動調査に基づき定める額から、令和3年経済センサス活動調査に基づき定める額に更新する。
②小売年間販売額について、「百貨店」、「衣料品専門店」、「家電大型専門店」及び「衣料品中心店」並びにこれらに係る「通信・カタログ販売」、「インターネット販売」及び「自動販売機による販売」の額を、「総務大臣が調査した額」とする。
③小売年間販売額について、経営組織別の統計表の「個人」のうち「小売業」の「売上(収入)金額」の欄の額を加算する。
④サービス業対個人事業収入額について、令和3年経済センサス活動調査の「自動車賃貸業」及び「学術・開発研究機関」の欄の額を除外する。
(注)上記の改正は、令和6年4月1日以後に行われる地方消費税の清算について適用する。
〈航空機燃料譲与税〉
(4)航空機燃料譲与税の譲与基準について、次の見直しを行う。
①着陸料に代えて、新たな譲与基準として「航空機の重量×着陸回数」(以下「延べ重量」という。)及び旅客数を用いる。
②各譲与基準に基づく譲与割合は、延べ重量4分の1、旅客数4分の1、騒音世帯数2分の1(現行:着陸料2分の1、騒音世帯数2分の1)とする。
③譲与基準として用いる延べ重量については、次のとおり補正する。

万t超 万t以下 補正率
  4.0 1.50
4.0 20.0 1.25
20.0 100.0 1.00
100.0 500.0 0.75
500.0 2,500.0 0.50
2,500.0   0.25

④譲与基準として用いる旅客数については、次のとおり補正する。

万人超 万人以下 補正率
  12.0 1.50
12.0 60.0 1.25
60.0 300.0 1.00
300.0 1,500.0 0.75
1,500.0 7,500.0 0.50
7,500.0   0.25

⑤次のとおり激変緩和措置を講ずる。

  令和6年度 令和7年度 令和8年度 令和9年度 令和10年度以降
着陸料割 40/100 30/100 20/100 10/100 0/100
延べ重量割 5/100 10/100 15/100 20/100 25/100
旅客数割 5/100 10/100 15/100 20/100 25/100
騒音世帯数割 50/100

(注)令和6年度以後の年度分の着陸料割は、令和5年度3月譲与時期の譲与額の計算に用いた着陸料の収入額を用いて算定する。
⑥その他所要の措置を講ずる。

五 国際課税
1 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税等の見直し
(国税)
 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税等について、次の見直しを行うこととする。
(1)構成会社等がその所在地国において一定の要件を満たす自国内最低課税額に係る税を課することとされている場合には、その所在地国に係るグループ国際最低課税額を零とする適用免除基準を設ける。
(2)無国籍構成会社等が自国内最低課税額に係る税を課されている場合には、グループ国際最低課税額の計算においてその税の額を控除する。
(3)個別計算所得等の金額から除外される一定の所有持分の時価評価損益等について、特定多国籍企業グループ等に係る国又は地域単位の選択により、個別計算所得等の金額に含める。
(4)導管会社等に対する所有持分を有することにより適用を受けることができる税額控除の額(一定の要件を満たすものに限る。)について、特定多国籍企業グループ等に係る国又は地域単位の選択により、調整後対象租税額に加算する。
(5)特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供制度について、特定多国籍企業グループ等報告事項等を、提供義務者の区分に応じて必要な事項等に見直す。
(6)外国税額控除について、次の見直しを行う。
①次に掲げる外国における税について、外国税額控除の対象から除外する。
イ 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税に相当する税
ロ 外国を所在地国とする特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等に対して課される税(グループ国際最低課税額に相当する金額のうち各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税に相当する税の課税標準とされる金額以外の金額を基礎として計算される金額を課税標準とするものに限る。)又はこれに相当する税
②自国内最低課税額に係る税について、外国税額控除の対象とする。
(7)その他所要の措置を講ずる。
(地方税)
 法人住民税の計算の基礎となる法人税額に各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の額を含まないよう所要の措置を講ずる。
2 外国子会社合算税制等の見直し
(国税)
(1)内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例(いわゆる「外国子会社合算税制」)におけるペーパー・カンパニー特例に係る収入割合要件について、外国関係会社の事業年度に係る収入等がない場合には、その事業年度における収入割合要件の判定を不要とする。
(2)居住者に係る外国子会社合算税制及び特殊関係株主等である内国法人に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例等の関連制度につき、上記(1)と同様の見直しを行う。
(地方税)
個人住民税、法人住民税及び事業税について、内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例(いわゆる「外国子会社合算税制」)等の見直しに関する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。
3 非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度の整備等
(国税)
(1)非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度の整備
①令和8年1月1日以後に報告暗号資産交換業者等との間でその営業所等を通じて暗号資産等取引を行う者は、当該暗号資産等取引を行う際(令和7年12月31日において報告暗号資産交換業者等との間でその営業所等を通じて暗号資産等取引を行っている者にあっては、令和8年12月31日までに)、その者(その者が特定法人である場合には、当該特定法人及びその実質的支配者等。(1)において「特定対象者」という。)の氏名又は名称、住所又は本店等の所在地、居住地国、居住地国が外国の場合にあっては当該居住地国における納税者番号その他必要な事項を記載した届出書を、当該報告暗号資産交換業者等の営業所等の長に提出しなければならない。
(注1)上記の「報告暗号資産交換業者等」とは、暗号資産交換業者、電子決済手段等取引業者(電子決済手段を発行する者を含む。)及び金融商品取引業者のうち一定のものをいう。
(注2)上記の「暗号資産等取引」とは、暗号資産等(暗号資産、資金決済に関する法律第2条第5項第4号に掲げる電子決済手段又は一定の電子記録移転有価証券表示権利等をいう。3において同じ。)の売買、暗号資産等と他の暗号資産等との交換若しくはこれらの行為の媒介等又は暗号資産等の移転若しくは受入れに係る契約の締結をいう。
(注3)届出書に記載すべき事項は、電磁的方法による提供も可能とする(下記②の異動届出書についても同様とする。)。
(注4)報告暗号資産交換業者等の営業所等の長は、届出書に記載されている事項を確認しなければならない(下記②の異動届出書についても同様とする。)。
②上記①の届出書を提出した者は、居住地国等について異動を生じた場合には、異動後の居住地国その他必要な事項を記載した届出書((1)において「異動届出書」という。)を、異動を生じた日等から3月を経過する日までに、報告暗号資産交換業者等の営業所等の長に提出しなければならない。当該異動届出書の提出をした後、再び異動を生じた場合についても、同様とする。
③報告暗号資産交換業者等は、上記①の届出書又は異動届出書((1)において「届出書等」という。)に記載された事項のうち居住地国等と異なることを示す一定の情報を取得した場合には、その取得の日から3月を経過する日までに、当該届出書等を提出した者に対し異動届出書の提出の要求をし、その提出がなかったときは、当該情報に基づき住所等所在地国と認められる国又は地域の特定をしなければならない。当該要求又は特定後に再びそのような情報を取得した場合についても、同様とする。
④報告暗号資産交換業者等は、その年の12月31日において、当該報告暗号資産交換業者等の営業所等を通じて暗号資産等取引を行った者(外国金融商品取引所において上場されている法人等を除く。)が報告対象契約を締結している場合には、特定対象者の氏名又は名称、住所又は本店等の所在地、居住地国等及び居住地国等が外国の場合にあっては当該居住地国等における納税者番号、暗号資産等の売買等に係る暗号資産等の種類ごとに、暗号資産等の名称並びに暗号資産等の売買の対価の額の合計額、総数量及び件数その他必要な事項((1)において「報告事項」という。)を、その年の翌年4月30日までに、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)又は光ディスク等の記録用の媒体を提出する方法により、当該報告暗号資産交換業者等の本店等の所在地の所轄税務署長に提供しなければならない。
(注)上記の「報告対象契約」とは、暗号資産等取引に係る契約のうち次に掲げる者のいずれかが締結しているものをいう。
イ 租税条約等の相手国等のうち一定の国又は地域(ロにおいて「報告対象国」という。)を居住地国等とする者(ロにおいて「報告対象者」という。)
ロ 報告対象国以外の国又は地域を居住地国等とする特定法人で、その実質的支配者が報告対象者であるもの
⑤報告暗号資産交換業者等は、特定対象者の居住地国等に関する事項その他必要な事項に関する記録を作成し、保存しなければならない。
⑥届出書等の不提出若しくは虚偽記載又は報告事項の不提供若しくは虚偽記載等に対する罰則を設けるほか、報告制度の実効性を確保するための所要の措置を講ずる。
⑦外国居住者等に係る暗号資産等取引情報の自動的な提供のための報告制度を整備する。
⑧その他所要の措置を講ずる。
(2)非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度等の見直し
①報告金融機関等について、次の見直しを行う。
イ 報告金融機関等の範囲に、電子決済手段等取引業者及び特定電子決済手段等を発行する者を加える。
(注)上記の「特定電子決済手段等」とは、次に掲げるものをいう。
(イ)資金決済に関する法律第2条第5項第1号から第3号までに掲げる電子決済手段
(ロ)物品等の購入等の代価の弁済のために使用することができる財産的価値(一定の通貨建資産に限るものとし、電子決済手段、有価証券及び前払式支払手段等を除く。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
ロ 報告金融機関等に係る収入割合要件について、投資法人等に係る収入割合の計算の基礎となる有価証券等に対する投資に係る収入金額の範囲に暗号資産等に対する投資に係る収入金額を加えるほか、所要の措置を講ずる。
②特定取引の範囲に、次に掲げる取引を加える。
イ 特定電子決済手段等(上記①イ(注)(イ)に掲げるものに限る。)の管理に係る契約の締結
ロ 特定電子決済手段等(上記①イ(注)(ロ)に掲げるものに限る。)の発行による為替取引に係る契約の締結
(注1)特定取引から除外される取引の範囲に、報告金融機関等との間でその営業所等を通じて上記イ及びロに掲げる取引を行う者の有する当該取引に係る特定電子決済手段等のうち、その合計額の90日移動平均値が100万円を超えることがないと認められる一定の要件を満たすものである場合における当該取引を加える。
(注2)報告金融機関等は、当該報告金融機関等の営業所等を通じて上記イ及びロの特定取引を行った者の有する当該特定取引に係る特定電子決済手段等の合計額の90日移動平均値が、その年中のいずれの日においても100万円を超えなかった場合には、当該特定取引に係る契約に関する報告事項については、当該報告金融機関等の本店等の所在地の所轄税務署長に提供することを要しない。
ハ 暗号資産、電子決済手段又は電子記録移転有価証券表示権利等の預託に係る契約の締結
(注)報告金融機関等は、令和7年12月31日以前に当該報告金融機関等との間でその営業所等を通じて上記イからハまでの特定取引を行った者で同日において当該特定取引に係る契約を締結しているものに係る特定対象者につき、既存特定取引に係る特定手続と同様の手続を実施しなければならない。
③社債、株式等の振替に関する法律の改正に伴い、特定取引から除外される取引の範囲に、振替特別法人出資に係る特別口座の開設に係る契約の締結を加える。
④特定法人から除外される法人に係る収入割合要件について、法人に係る収入割合の計算の基礎となる投資関連所得の範囲に暗号資産等(暗号資産等デリバティブ取引を含む。)に係る所得を加えるほか、所要の措置を講ずる。
⑤わが国及び租税条約の相手国等の双方の居住者に該当する者について、当該租税条約上の双方居住者の振分けルールにかかわらず、わが国及び当該相手国等の双方を居住地国として取り扱う。
⑥新規特定取引等に係る特定手続について、次の見直しを行う。
イ 報告金融機関等は、令和8年1月1日以後に当該報告金融機関等との間でその営業所等を通じて特定取引を行う者が届出書を提出しなかった場合には、特定対象者につき、既存特定取引に係る特定手続と同様の手続を実施しなければならない。
ロ 報告金融機関等は、特定対象者に関する事項の変更等があることを知った一定の場合には、当該特定対象者の一定の情報を取得するための措置を講じなければならない。
⑦報告金融機関等による報告事項の提供について、次の見直しを行う。
イ 報告対象外となる者の範囲に、外国金融商品取引所において上場されている法人等と一定の関係がある組合等を加える。
ロ 報告事項の範囲に、次に掲げる事項を加える。
(イ)特定取引を行う者の署名等がなされたものであることその他の一定の要件の全てを満たす新規届出書等が提出されているか否かの別
(ロ)特定取引に係る契約が報告金融機関等と複数の者との間で締結されているものであるか否かの別等
(ハ)特定法人とその実質的支配者との関係
(ニ)特定取引に係る契約を締結している者と当該特定取引に係る報告金融機関等(一定の組合契約に係る組合等に係るものに限る。)との関係
(ホ)特定取引の種類
(ヘ)新規特定取引又は既存特定取引の別
⑧その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和8年1月1日から施行する。
4 その他
(国税)
(1)対象純支払利子等に係る課税の特例(いわゆる「過大支払利子税制」)の適用により損金不算入とされた金額(以下「超過利子額」という。)の損金算入制度について、令和4年4月1日から令和7年3月31日までの間に開始した事業年度に係る超過利子額の繰越期間を10年(原則:7年)に延長する。
(2)子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避を防止するための措置(子会社株式簿価減額特例)によりその有する子法人の株式等の帳簿価額から引き下げる金額の計算を行う場合に、その子法人から受ける対象配当金額のうち特定支配関係発生日以後の利益剰余金の額から支払われたものと認められる部分の金額を除外することができる特例計算について、特定支配関係発生日の属する事業年度内に受けた対象配当金額(その特定支配関係発生日後に受けるものに限る。)についても、その特例計算の適用を受けることができることとする。
(3)外国金融機関等の店頭デリバティブ取引の証拠金に係る利子の課税の特例の適用期限を3年延長する。
(4)非居住者又は外国法人が振替特定目的信託受益権のうち社債的受益権に該当するものにつき支払を受ける剰余金の配当等の非課税措置は、適用期限の到来をもって廃止する。
(地方税)
(1)国税(1)の見直しに伴い、法人住民税及び法人事業税について、国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。
(2)個人住民税、法人住民税及び事業税について、国税における諸制度の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。

六 納税環境整備
1 GビズIDとの連携によるe-Taxの利便性の向上
(国税)
 所要の法令改正等を前提に、法人が、GビズID(法人共通認証基盤)(一定の認証レベルを有するものに限る。)を入力して、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により申請等又は国税の納付を行う場合には、その申請等を行う際の識別符号及び暗証符号の入力、電子署名並びにその電子署名に係る電子証明書の送信又はその国税の納付を行う際の識別符号及び暗証符号の入力を要しないこととする。
2 処分通知等の電子交付の拡充
(国税)
 電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により行うことができる処分通知等について、次の措置を講ずる。
(1)法令上、全ての処分通知等について、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により行うことができることとする。
(2)電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により処分通知等を受ける旨の同意について、処分通知等に係る申請等に併せて行う方式を廃止し、あらかじめ、メールアドレスを登録して、その同意を行う方式とする。
(3)その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和8年9月24日から施行する。
3 隠蔽し、又は仮装された事実に基づき更正請求書を提出していた場合の重加算税制度の整備
(国税)
 過少申告加算税又は無申告加算税に代えて課される重加算税の適用対象に、隠蔽し、又は仮装された事実に基づき更正請求書を提出していた場合を加える。
(注1)上記の改正は、令和7年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用する。
(注2)偽りその他不正の行為により国税を免れた場合等に、延滞税の計算期間から一定の期間を控除する特例が不適用となる措置について、隠蔽し、又は仮装された事実に基づき更正請求書を提出していた一定の場合が対象となることを明確化する運用上の対応を行う。
4 偽りその他不正の行為により国税を免れた株式会社の役員等の第二次納税義務の整備
(国税)
 偽りその他不正の行為により国税を免れ、又は国税の還付を受けた株式会社、合資会社又は合同会社がその国税(その附帯税を含む。)を納付していない場合において、徴収不足であると認められるときは、その偽りその他不正の行為をしたその株式会社の役員又はその合資会社若しくは合同会社の業務を執行する有限責任社員(その役員等を判定の基礎となる株主等として選定した場合にその株式会社、合資会社又は合同会社が被支配会社に該当する場合におけるその役員等に限る。)は、その偽りその他不正の行為により免れ、若しくは還付を受けた国税の額又はその株式会社、合資会社若しくは合同会社の財産のうち、その役員等が移転を受けたもの及びその役員等が移転をしたもの(通常の取引の条件に従って行われたと認められる一定の取引として移転をしたものを除く。)の価額のいずれか低い額を限度として、その滞納に係る国税の第二次納税義務を負うこととする。
(注1)上記の「被支配会社」とは、1株主グループの所有株式数が会社の発行済株式の50%を超える場合等におけるその会社をいう。
(注2)上記の改正は、令和7年1月1日以後に滞納となった一定の国税について適用する。
5 保全差押え等を解除しなければならない期限の整備
(国税)
 納税義務があると認められる者が不正に国税を免れたことの嫌疑等に基づき一定の処分を受けた場合における税務署長が決定する金額(以下「保全差押金額」という。)を限度とした差押え(以下「保全差押え」という。)又はその保全差押金額について提供されている担保に係る国税について、その納付すべき額の確定がない場合におけるその保全差押え又は担保を解除しなければならない期限を、その保全差押金額をその者に通知をした日から1年(現行:6月)を経過した日までとする。
(注)上記の改正は、令和7年1月1日以後にされる保全差押金額の決定について適用する。
6 地方公金に係るeLTAX経由での納付
(地方税)
 eLTAX(地方税のオンライン手続のためのシステム)を通じた電子納付の対象に地方税以外の地方公金を追加することとし、地方自治法の改正に併せて、地方税共同機構の業務に公金収納事務を追加する措置を講ずる。
(注)上記の改正は、地方自治法の一部を改正する法律(仮称)の施行の日から適用する。
7 その他
(国税)
(1)税務代理権限証書等の様式の整備
 税務代理権限証書、申告書の作成に関する計算事項等記載書面及び申告書に関する審査事項等記載書面の様式について、国税庁長官が必要がある場合に、所要の事項を付記すること又は一部の事項を削ることができることとするほか、「所属税理士会等」の欄の記載事項の簡素化を行う。
(注)上記の改正は、令和8年9月1日以後に提出する税務代理権限証書、申告書の作成に関する計算事項等記載書面及び申告書に関する審査事項等記載書面について適用する。
(2)個人番号を利用した税理士の登録事務等の利便性の向上
 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の改正に伴い、次の見直しを行う。
①税理士の登録事項について、個人番号を加えるとともに、その登録事項のうち「本籍」を「本籍地都道府県名」とする。
②税理士の登録申請書について、戸籍抄本及び住民票の写しの添付を要しないこととする。
③電子情報処理組織を使用する方法により日本税理士会連合会又は税理士会に対して申請等を行う者は、その申請等に関して添付すべきこととされている書面等でその書面等に記載されている事項又は記載すべき事項を入力して送信することができないものについて、書面等による提出に代えて、スキャナによる読み取り等により作成した電磁的記録(いわゆる「イメージデータ」)を送信することにより行うことができることとする。
④次に掲げる申請書等の様式について、個人番号をその様式に記載するために必要な整備を行う。
イ 税理士試験受験資格認定申請書
ロ 税理士試験受験願書
ハ 研究認定申請書
ニ 税理士試験免除申請書
ホ 研究認定申請書兼税理士試験免除申請書
⑤税理士試験に係る受験手数料又は認定手数料について、電子情報処理組織を使用する方法による申請等により国税審議会会長から得た納付情報及び識別符号を入力して、これらを送信することにより納付することができることとする。
⑥その他所要の措置を講ずる。
(注1)上記の改正はデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律附則第1条第10号に掲げる規定の施行の日から施行することとし、上記②の改正は同日以後に提出する登録申請書について、上記④イ、ニ及びホの改正は同日以後に提出する税理士試験受験資格認定申請書、税理士試験免除申請書又は研究認定申請書兼税理士試験免除申請書について、上記④ロ及びハの改正は同日以後に行う試験実施の日時等の公告に係る税理士試験について、それぞれ適用する。
(注2)上記の改正の施行の日から令和7年3月31日までの間に提出される税理士の登録申請書について、日本税理士会連合会が税理士登録のため必要があると認める場合には、従前どおり戸籍抄本及び住民票の写しを添付しなければならないこととする経過措置を講ずる。
(3)長期間にわたり供託された換価代金等の配当がされない事態へ対応するための措置の整備
 供託された換価代金等の配当について、民事の長期間にわたり供託金の配当がされない事態へ対応するための措置と同様に、次の措置を講ずる。
①その供託に係る債権を有する者は、その供託の事由が消滅したときは、直ちに、その旨を税務署長に届け出なければならないこととする。
②税務署長は、換価代金等の供託がされた場合において、その供託がされた日から上記①の届出がされることなく一定期間を経過したときは、その供託に係る債権を有する者に対し、その届出について催告しなければならないこととする。
③上記②の催告を受けた供託に係る債権を有する者が、催告を受けた日から一定期間内に届出をしないときは、税務署長は、その供託に係る債権を有する者を除外して供託金について換価代金等の配当を実施することができることとする。
④その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、民事の長期間にわたり供託金の配当がされない事態へ対応するための措置の適用時期を踏まえ、実施する。
(4)学資支給金に係る国税の滞納処分による差押禁止措置の整備
 独立行政法人日本学生支援機構法の学資支給金について、所要の法令改正を前提に、引き続き国税の滞納処分による差押えを禁止することとする。
(地方税)
(1)アメリカ合衆国の軍隊の構成員等が所有する自動車に係る自動車税等の種別割の徴収方法の見直し
 アメリカ合衆国の軍隊の構成員等が所有する自動車に係る自動車税及び軽自動車税の種別割の徴収について、証紙を用いる方法に加え、普通徴収等の方法によることができることとする。
(2)災害損失欠損金額の繰越控除の適用に係る所要の措置
 災害が発生した日から6月を経過する日までの間に終了する中間期間において生じた災害損失欠損金額につき当該中間期間に係る仮決算の中間申告書の提出により法人税額の還付を受けた場合における法人住民税の法人税割及び法人事業税の所得割について、次の措置を講ずる。
①当該中間期間の属する事業年度の法人住民税の法人税割の課税標準となる法人税額から当該災害損失欠損金額につき還付を受けた法人税額を控除し、控除しきれない額については翌事業年度以降に控除することとする。
②当該中間期間の属する事業年度の法人事業税の所得の計算上、当該還付を受けた金額の計算の基礎となった災害損失欠損金額に相当する金額は益金算入せず、当該事業年度に生じた欠損金額について、繰越控除制度を適用する。
③その他所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、令和6年4月1日以後に終了する事業年度から適用する。
(3)新築の認定長期優良住宅に係る固定資産税の税額の減額措置における申告の見直し
 新築の認定長期優良住宅に係る固定資産税の税額の減額措置について、マンション管理組合の管理者等から市町村長に必要書類等の提出があり、減額措置の要件に該当すると認められるときは、当該認定長期優良住宅の区分所有者から減額措置に係る申告書の提出がなかった場合においても、当該減額措置を適用することができることとする。
(4)隠蔽し、又は仮装された事実に基づき更正請求書を提出していた場合の重加算金制度の整備
 過少申告加算金又は不申告加算金に代えて課される重加算金の適用対象に、隠蔽し、又は仮装された事実に基づき更正請求書を提出していた場合を加える。
(注)上記の改正は、令和7年1月1日以後に申告書の提出期限が到来する地方税について適用する。
(5)偽りその他不正の行為により地方団体の徴収金を免れた株式会社の役員等の第二次納税義務の整備
 偽りその他不正の行為により地方団体の徴収金を免れ、又は地方団体の徴収金の還付を受けた株式会社、合資会社又は合同会社がその地方団体の徴収金を納付し、又は納入していない場合において、徴収不足であると認められるときは、その偽りその他不正の行為をしたその株式会社の役員又はその合資会社若しくは合同会社の業務を執行する有限責任社員(その役員等を判定の基礎となる株主等として選定した場合にその株式会社、合資会社又は合同会社が被支配会社に該当する場合におけるその役員等に限る。)は、その偽りその他不正の行為により免れ、若しくは還付を受けた地方団体の徴収金の額又はその株式会社、合資会社若しくは合同会社の財産のうち、その役員等が移転を受けたもの及びその役員等が移転をしたもの(通常の取引の条件に従って行われたと認められる一定の取引として移転をしたものを除く。)の価額のいずれか低い額を限度として、その滞納に係る地方団体の徴収金の第二次納税義務を負うこととする。
(注1)上記の「被支配会社」とは、1株主グループの所有株式数が会社の発行済株式の50%を超える場合等におけるその会社をいう。
(注2)上記の改正は、令和7年1月1日以後に滞納となった一定の地方団体の徴収金について適用する。
(6)保全差押え等を解除しなければならない期限の整備
 納付又は納入の義務があると認められる者が不正に地方団体の徴収金を免れたことの嫌疑等に基づき一定の処分を受けた場合における地方団体の長が決定する金額(以下「保全差押金額」という。)を限度とした差押え又はその保全差押金額について提供されている担保に係る地方団体の徴収金について、その納付し、又は納入すべき額の確定がない場合における当該差押え又は担保を解除しなければならない期限を、その保全差押金額をその者に通知をした日から1年(現行:6月)を経過した日までとする。
(注)上記の改正は、令和7年1月1日以後にされる保全差押金額の決定につい
て適用する。
(7)学資支給金に係る地方税の滞納処分による差押禁止措置の整備
 独立行政法人日本学生支援機構法の学資支給金について、所要の法令改正を前提に、引き続き地方税の滞納処分による差押えを禁止することとする。

七 関税
1 暫定税率等の適用期限の延長等
(1)令和6年3月31日に適用期限の到来する暫定税率(411品目)及び特別緊急関税制度について、令和7年3月31日まで適用期限の延長を行う。
(2)加糖調製品(5品目)について、国内産糖への支援の原資となる調整金の拡大のため、次のとおり暫定税率の引下げを行う。

関税率表番号 主な品名 現行 改正案
1806.10-1 ココア粉 21.7% 20.4%
1806.20-2-(1)-B ココアの調製品 21.9% 20.9%
1901.90-2-(1)-A-(b) ミルクの調製品 23.4% 22.3%
2106.10-2-(1)-B たんぱく質濃縮物 9.6% 7.7%
2106.90-2-(2)-E-(a)-ハ-(ロ)-Ⅲ-(Ⅰ) 乳糖を含有する調製食料品 23.4% 22.3%

(3)ポリ塩化ビニル製使い捨て手袋について、暫定税率を廃止する。
(4)令和6年3月31日に適用期限の到来する沖縄に係る特例措置(特定免税店制度)について、令和9年3月31日まで適用期限の延長を行う。
2 個別品目の関税率の見直し
 ルイボスの分類変更に伴い、税細分を新設することで現行の関税率を維持する。
3 輸入手続の利便性向上
 特例輸入者による特例申告の納期限延長において必須とされている担保について、関税の保全のために必要があると認められる場合にのみ提供を求めることとする。
4 その他
(1)納税環境整備に係る内国税の規定を踏まえた所要の措置を講ずる。
(2)児童福祉法の改正に伴い、所要の措置を講ずる。

第三 検討事項

1 年金課税については、少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する中で、世代間及び世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年金、公的年金を補完する企業年金を始めとした各種年金制度間のバランス、貯蓄・投資商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランス等に留意するとともに、平成30年度税制改正の公的年金等控除の見直しの考え方や年金制度改革の方向性、諸外国の例も踏まえつつ、拠出・運用・給付を通じて課税のあり方を総合的に検討する。

2 デリバティブ取引に係る金融所得課税の更なる一体化については、意図的な租税回避行為を防止するための方策等に関するこれまでの検討の成果を踏まえ、総合的に検討する。

3 小規模企業等に係る税制のあり方については、働き方の多様化を踏まえ、個人事業主、同族会社、給与所得者の課税のバランスや勤労性所得に対する課税のあり方等にも配慮しつつ、個人と法人成り企業に対する課税のバランスを図るための外国の制度も参考に、正規の簿記による青色申告の普及を含め、記帳水準の向上を図りながら、引き続き、給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討する。

4 いわゆる「老老相続」や相続財産の構成の変化など相続税を取り巻く経済社会の構造変化を踏まえ、納税者の支払能力をより的確に勘案した物納制度となるよう、延納制度も含め、物納許可限度額の計算方法について早急に検討し結論を得る。

5 自動車関係諸税の見直しについては、日本の自動車戦略やインフラ整備の長期展望を踏まえるとともに、「2050年カーボンニュートラル」目標の実現に積極的に貢献するものでなければならない。その上で、自動車の枠を超えたモビリティ産業の発展に伴う経済的・社会的な受益者の広がりや保有から利用への移行、地域公共交通へのニーズの高まり、CASEに代表される環境変化にも対応するためのインフラの維持管理・機能強化の必要性等を踏まえつつ、国・地方を通じた財源を安定的に確保していくことを前提に、受益と負担の関係も含め、公平・中立・簡素な課税のあり方について、中長期的な視点に立って検討を行う。その際、電気自動車等の普及や市場の活性化等の観点から、原因者負担・受益者負担の原則を踏まえ、また、その負担分でモビリティ分野を支え、産業の成長と財政健全化の好循環の形成につなげるため、利用に応じた負担の適正化等に向けた具体的な制度の枠組みについて次のエコカー減税の期限到来時までに検討を進める。また、自動車税については、電気自動車等の普及等のカーボンニュートラルに向けた動きを考慮し、税負担の公平性を早期に確保するため、その課税趣旨を適切に踏まえた課税のあり方について、イノベーションへの影響等の多面的な観点も含め、関係者の意見を聴取しつつ検討する。

6 原料用石油製品等に係る免税・還付措置の本則化については、引き続き検討する。

7 帳簿等の税務関係書類の電子化を推進しつつ、納税者自らによる記帳が適切に行われる環境を整備することは、申告納税制度の下における適正・公平な課税の実現のみならず、経営状態の可視化による経営力の強化、バックオフィスの生産性の向上のためにも重要である。これに鑑み、記帳水準の向上、トレーサビリティの確保を含む帳簿の事後検証可能性の確立の観点から、納税者側での対応可能性や事務負担、必要なコストの低減状況も考慮しつつ、税務上の透明性確保と恩典適用とのバランスも含めて、複式簿記による記帳や優良な電子帳簿の普及・一般化のための措置、記帳義務の適正な履行を担保するためのデジタル社会にふさわしい諸制度のあり方やその工程等について更なる検討を早急に行い、結論を得る。その際、取引に係るやり取りから会計・税務までデジタルデータで処理することで、納税者側の事務負担の軽減等及び適正・公平な課税・徴収の実現を図る観点を踏まえることとする。

8 事業税における社会保険診療報酬に係る実質的非課税措置及び医療法人に対する軽減税率については、税負担の公平性を図る観点や、地域医療の確保を図る観点から、そのあり方について検討する。

9 電気供給業及びガス供給業に係る収入金額による外形標準課税については、地方税体系全体における位置付けや個々の地方公共団体の税収に与える影響等も考慮しつつ、事業環境や競争状況の変化を踏まえて、その課税のあり方について、引き続き検討する。

10 新築住宅に係る固定資産税の税額の減額措置については、社会経済の情勢等を踏まえ、安全安心な住まいの実現など住生活の安定の確保及び向上の促進に向け国として推進すべき住宅政策との整合性を確保する観点から、地方税収の安定的な確保を前提に、そのあり方について検討する。

(編注:大綱の「塡」は「填」で表示している。)