一生累積課税方式

 税制改革の論議の時期が大きく前倒しされ、予算の成立も事実上固まったことから、様々な税制改革のプランが提案されている。相続と贈与を一体的に考える「一生累積課税方式」もその一つである。

  現在のわが国の相続税制は、贈与税を相続税の補完税と位置付け、贈与が相続税の脱法とならないように、相続税よりも高率の贈与税を課することを原則としている。相続開始前3年以内の相続人への贈与についてのみ相続財産に贈与財産を加えるものとして、駆け込み的な贈与を規制しているだけである。しかし、実際に相続税を負担する相続は、全死亡者の5%程度に過ぎず、一部の資産家を除けば、贈与税の負担をしてまで、贈与を行おうとする傾向はみられない。

  相続税の現状を考えれば、「一生累積課税方式」は、一定金額までの贈与を非課税とする効果を期待したものである。非課税であれば、贈与も増えて、消費意欲の旺盛な世代に財産移転が進められるということになるのであろう。

  新しい考え方だけに「一生累積課税方式」を導入するについては、問題点も多い。現行相続税の基礎控除は、相続人の相続財産を対象として、〔5,000万円+1,000万円×法定相続人の数〕となっている。贈与税は、受贈者の取得財産だけを対象としてきただけに、一体いくらの贈与まで非課税となるのかについては、制度の設計が明らかになるまでは、わからない。また、一生の間に贈与を受けた記録を、税務署も本人も本人が亡くなるまで残していかなければならないことになる。

  親の財産をあてにして、消費の拡大をはかる税制が提案されることになるとは、一種のモラルハザード(道徳感の欠如)だと思われるが、背に腹は代えられないのだろうか。

2002.3.27 ビジネスメールUP! 272号より )

 

 
過去のニュース、コラムを検索できます
 Copyright(C) LOTUS21.Co.,Ltd. 2000-2017. All rights reserved.
 全ての記事、画像、コンテンツに係る著作権は株式会社ロータス21に帰属します。無断転載、無断引用を禁じます。
 このホームページに関するご意見、お問合せはinfo@lotus21.co.jp まで