特集! 政府税調の『基本方針』を読み解く
第2回・法人課税の改革の方向性

 政府税制調査会(石 弘光会長)は、6月14日、『あるべき税制の構築に向けた基本方針』を取りまとめ、小泉首相に答申した。法人税収は、これまで行ってきた法人税率の引下げと近年の企業収益の悪化等により、著しく減少しており、法人税の国税収入に占める割合は20%台前半にまで低下してきている。また、全法人の約7割が欠損法人となっており、法人税を納付しておらず、いわゆる「法人税の空洞化」が指摘される。企業活動のグロ−バル化が進展する中で、法人税の財源調達機能を確保しつつ、経済活動の活性化の視点から法人税をどのように改革するかを課題としている。

  答申では、国際的に整合性がとれ、企業活動に対し歪みの少ない中立的な税制であることを基本とすべきであるとしながらも、政策税制を研究開発分野等真に友好な分野に重点化すべきであるとしている。一見、「中立的な税制」と「重点化」という改革の方向性は、矛盾するものにも思えるが、政府税調は、「中立的な税制」というこれまでの方針を維持しながらも、経済財政諮問会議などで強く主張される「活力重視の税制」に一定の配慮を行っているのである。

  また、答申には、具体的な法人課税の方向性として、これ以上の税率引下げを行うことは適当ではないとしている。企業の国際的な競争力の確保から、さらなる税率引下げを求める要望もあるが、答申は、法人税の財源調達機能を重視し、競争力の確保については、既存の租税特別措置の整理・合理化と真に有効な分野への政策税制の集中・重点化による対応を求めているのである。 その一方では、法人事業税への外形標準課税の早期導入が盛り込まれている。「税の空洞化」の是正を図り、努力した企業が報われる税制を確立することを求めている。中小企業者団体等の強固な反対が予想される外形標準課税導入については、具体化に向けて、今後の動きが注目されることになる。

  この他、経済社会の新しい動きへの対応として、同族会社の留保金課税、パ−トナ−シップ等に対する課税、公益法人等・NPO法人等に対する課税、寄附金税制について見直すことを答申している。

2002.6.21 ビジネスメールUP! 305号より )

 

 
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