目覚めよ経営者!タレコミ・内部告発から学ぶもの

 企業の器が大きくなればなるほど、企業を取り巻く利害関係者が増えてくるのが通例です。企業を利害関係者との「契約の束(たば)」と捉えるならば、「契約の束」が太くなるということです。利害関係者の数が増えてくればくるほど、利害関係者間の利益の衝突は増えてきます。経営者と株主、取引先と株主・従業員と債権者など様々なパタ−ンの利害衝突が考えられます。

  しかし、最も厳しい利害対立の構造は、同じ分類に属する利害関係者間における利害の対立ではないでしょうか。同じ業務を行う取引先企業間での利害対立・従業員間での利害対立・株主間での利害対立は、本来が競争状態にあるだけに、企業の器が大きくなるほどに厳しいものが想定できます。

 企業経営者に求められる手腕は、競争状態にある利害対立を、「企業の前進」に結び付けることにあります。しかし、競争は必ずしも企業の前進に結び付くものばかりとは限りません。

 従業員間で出世を巡っての足の引っ張り合いがあったり、ライバル企業の製品に不当なクレ−ムをつけて取引停止に追い込む場合など、合法・違法の判断もつきにくいような陰湿なやり取りが繰り広げられています。このような陰湿な競争は、従業員個人間・ライバル企業間の枠をこえて、人事であれば上司を巻き込み、企業間競争であれば、業界団体や政治家を巻き込むような場合もあります。陰湿な争いとなれば、手段が問われなくなることは世の常です。不正な競争が行われると、企業の将来を損なうばかりでなく、企業自体が巻き込まれて、それこそ大企業全体の命取りにもなりかねません。しかも、最近ではインターネットを通じて簡単に書き込みができる時代になっています。

  経営者は、企業を取り巻く利害関係者の競争状態をチェックしておかなければならないのです。
  不正・不当な競争をチェックするのに有効な情報として「タレコミ」や「内部告発」があります。あまり気持ちのいいものではないかもしれませんが、これらの情報には、一抹の真理が見られます。告発する側は、少なくとも本人の主観的な判断によれば、不正・不当な競争の被害者であるからです。
  経営者がこのチェックを怠ると、税務署へのタレコミによって予期せぬ税務調査ともなるでしょう。

  最近では、企業の活動が合法的であるか否かをチェックするコンプライアンス(法令遵守)体制の整備を行っている企業も見受けられますが、一歩進んで、公平・公正な競争を企業の躍進に結び付けられるようにしたいものです。資本(自由)主義経済は、公平・公正な競争を根底として成立しているのですから。


2002.7.17 ビジネスメールUP! 316号より )

 

 
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