第1回

会社再編税制の成立によせて

   成蹊大学経済学部教授 成道秀雄

 会社再編税制が本年の4月1日以降の会社再編に適用されることとなった。抜本的な改正であって合併、分割、特定現物出資の今までの税制が様変わりし、一体的なものとなる。たとえば合併は吸収分割と類似した組織行為であるゆえに課税の中立性からどちらかが課税上有利に扱われるようなことのないように配意されている。このたびの会社再編税制は国際競争力の維持という使命が大きい。そのためにアメリカ、ドイツ、フランス等の会社再編税制を参考にして作られた。しかしそれらの先進諸外国の会社再編税制をわが国の税制に持ち込むといっても、会社再編税制以外の既存の税制との整合性に問題がないかという点も十分に検討されるべきである。それよりもまず既存の会社再編税制は突如としてお払い箱になったが、これまでのそれらに対する議論は何であったのかという脱力感はある。清算所得課税や合併に伴う繰越欠損金の引継ぎの否認、合併法人の受入資産の評価益相当額の益金算入等についてはかなり議論されてきており、批判がなされてきたが、一斉に廃止といわれても狐につままれたようである。また、アメリカ、ドイツ等の会社再編税制を参考にしたといっても、各国の規定のなかから厳しいところを寄せ集めた感がある。

 わが国の会社再編税制では合併、分割の対価として新株の発行以外に交換差金等を幾らかでも使うと不適格な会社再編とされるが、アメリカにおいては一定の限度まで交換差金等の使用が認められている(合併の場合は合併の対価の半分の額まで)。わが国では適格な会社再編とされれば課税の繰り延べが認められるが、ドイツでは課税の繰り延べが任意である。またわが国では欠損の引継ぎについては適格合併の場合に認められるが、ドイツでは適格合併のみならず適格分割においても認められている。さらに前年に導入されたわが国の株式交換について、その非課税要件として特定子会社株と特定親会社株の交換割合が95%以上であるが、アメリカにおいては80%以上である。はたしてこのたびの会社再編税制が実施に移った段階で十分に機能するか、納税者にとって使い勝手がいいか、国際競争力を維持できるのかという危惧がある。

 会社再編税制はリース税制と同様に企業会計を先導したかたちをとっている。会社結合会計は今後どのように形成されていくのか。それに対して会社再編税制はどのように対応していくのか。また近い将来に導入されるであろう連結納税制度とはどのように整合性を持たしていくかという重要課題はこれからの取り組みとなる。

 

2001.3.5 ビジネスメールUP! 125号より )

 

 
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