第2回

タックスヘイブンの存続

   日本大学教授 矢内 一好

 世界の各国又は自治権を有する地域等が独自にその国等の税制を決めることは、国家主権に基づく課税管轄権に属する事項であり、例えば、A国の法人税率が30%で、隣国のB国の法人税率が15%である場合、A国企業が租税負担の軽減を図ってB国にその本拠を移転する事態が生じたとしても、A国は、B国の税制に干渉することはできない。

  現在、世界には、タックスヘイブンといわれる国又は地域が存在する。これらいわゆるタックスヘイブンといわれる国又は地域は、所得税、法人税の税収がゼロであっても、観光収入等その他の歳入によりその国等を維持することができるから、企業の所得等に租税を課さない政策を実施しているのである。

  先進諸国は、自国の企業等がこれらの租税のない国又は著しく租税負担の軽い国等に所得を留保して租税を回避することを防止するためにタックスヘイブン税制という規定を設けてタックスヘイブンの利用を規制している。

  このようなタックスヘイブン及び特定の企業形態等に租税を軽減する課税上の特例措置は、適用可能な企業がその課税上の恩典を追って国を移動することから、その他の国の税制等に有害な結果 をもたらすとして、OECDは、この種の税の有害な競争を防止する観点から、タックスヘイブン等に対して通 常の税率による課税を行うのであれば優遇し、そうでないのであれば、投資を規制するというアメとムチの政策を発表している。その結果 として、いくつかの有力なタックスヘイブンがタックスヘイブン返上を宣言するに至っている。

  現在、国際的投資等においてタックスヘイブンが広く利用されていることから、このタックスヘイブン返上の動向に注目すると共に、各国の利害が対立することも予想されることから、今後は、国際的投資を行う場合、数年先の投資先の国等における税制の動向を勘案して計画を立てる必要があろう。

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2001.3.12 ビジネスメールUP! 128号より )

 

 
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