第3回

電子商取引の課税

   日本大学教授 矢内 一好

 20世紀の最後の5年ほどから電子商取引が各分野で話題となり、電子商取引の実務を追い掛ける形で法的整備等が行われるようになった。最も早い時期の電子商取引への課税を扱ったものとしては、1996年11月に米国財務省が公表した国際的電子商取引の課税を扱った報告書がある。その後、各国の課税当局及び国際機関である OECD等が電子商取引の課税問題に取り組み、21世紀の最初の時期は、電子商取引の課税が国内法及び国際税務の分野において焦点となろう。

 国内法における執行については、我が国は、平成12年2月より東京国税局を始めとして、大阪及び名古屋国税局に電子商取引専門調査チームを置き、電子商取引に係る申告漏れの把握及び調査手法の開発に着手し、平成12年6月末までに、総件数で74件、申告漏れ所得で20億9400万円を把握するという成果をあげている。

 国際税務の所得税及び法人税の分野においては、インターネットを通じた電子商取引が国境を越えるクロスボーダー取引となることから、OECDを中心として、電子商取引について、租税条約に定める源泉地国における非居住者の事業所得の課税要件である恒久的施設概念の適用、電子商取引に係る対価の所得の種類、電子商取引に係る源泉地国における事業所得の算定方法等が検討されている。このOECDにおける検討は、その結論が出次第、OECDモデル租税条約のコメンタリーの改訂等を通じて、国際課税のルールとして周知されることになろう。

 また、電子商取引と消費税又は付加価値税等の間接税の関連では、外国企業が自国の消費者に直接サービスの提供を電子商取引により行う場合、消費者所在地国においてこの種の間接税の課税が難しいことから、外国企業が消費者所在地国に登録する等の国際的ルールが定着しようとしている。

 今後は、電子商取引が量的質的に大きく変貌するであろうことは周知のことであるが、このような現状を踏まえて、電子商取引に新しい形態の課税を行うことが次第に焦点となろう。

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2001.3.19 ビジネスメールUP! 131号より )

 

 
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