第4回

連結納税制度に思う

   公認会計士・税理士 八ツ尾順一

 平成13年度税制改正の大綱では、その「備考」で、連結納税制度について、引き続き、その導入に向けた検討を進める、と述べられている。平成13年度税制改正の目玉である会社分割制が一段落すれば、連結納税制度の具体化を検討するという。連結納税は国際的にも遜色のない、本格的なものを考えていると政府税制調査会が発表していることからも、わが国に導入される連結納税制度は、おそらくアメリカ型のものに近いと考えた方がよさそうである。

  これに対して、経済団体などは、連結納税制度の早期導入を期待している故か、あまり、その型にこだわっていないようである。簡単にいえば、子会社の赤字を親会社で吸収できさえすれば、「OK」なのである。連結納税まがいのNTTの損益振替型でも良いといわれている。NTTの損益振替型は、黒字会社であるNTT東日本が、赤字会社であるNTT西日本に対して拠出金を支出した場合には、当該拠出金は、東日本で損金経理できるという単純なものである。

  しかし、連結納税制度をもう少し次元の高いところで議論すると、単純に子会社の赤字を親会社で吸収するといった処理だけでは済まない。企業グループを一つの経済単位と考えて、その単位をベースとした所得金額を課税標準とすることが、実質的な課税を行うという税法の本来の考え方とも一致するのである。現行の形式的な法律上の法人を一つの課税単位とするよりも、親子会社を経済的・実質的な観点からみて、そのグループを一つの課税単位と考える方が、所得そのものを担税力とみている法人税課税に適合しているのである。

  連結納税制度を考える場合、これらのことを前提として議論しなければならない。そこから連結納税制度が構築されなければならないのである。今後の改正に注目したい。

2001.3.28 ビジネスメールUP! 135号より )

 

 
過去のニュース、コラムを検索できます
 Copyright(C) LOTUS21.Co.,Ltd. 2000-2017. All rights reserved.
 全ての記事、画像、コンテンツに係る著作権は株式会社ロータス21に帰属します。無断転載、無断引用を禁じます。
 このホームページに関するご意見、お問合せはinfo@lotus21.co.jp まで