第12回

『連結納税制度導入案の延期を含めた再考を!』

   筑波大学大学院教授 品川芳宣

 平成14年度にも導入が予定されている連結納税制度は、その雲行きが危うくなっているという。税制調査会が導入を予定しているアメリカ型ないしフランス型は、極めて複雑であり、税制の簡素化の見地等から甚だ疑問視していたが、最近の議論はその税収減が元凶であるという。

 すなわち、小泉内閣が掲げる"公債30兆円"以内の公約が、連結納税の導入により危うくなりかねないというものである。そのため、税制調査委員会等では、連結納税制度への加入企業に対して加入時の所有資産の時価課税を行うとか、連結会計との違いを明確にするために"連結納税"の呼称を改めること等が検討されているという。もちろん、経団連を始め企業側あるいはそれに組する専門家は、猛反発している。

 しかし、少し冷静に考えれば、連結納税制度導入の延期ないし導入案の再検討という第三の道を探ってもよいものと考えられる。もともと連結納税制度導入の要請は、同一企業集団内の課税所得の適正化にあり、具体的には、同一企業集団内での欠損金の調整(振替え)や形式的な寄附金課税の排除にあった。

 もっとも、これらの要請は、企業課税の一つの論理であって絶対視されるべきものではない。法人税の課税は、何も企業の負担能力(所得)からのみ根拠付けられるわけではなく、むしろ法人企業の権利・利得(有限責任、商取引の便宜、資金調達の便宜、労働力調達の便宜等)が、国家から法人格を付与され、国家から受ける行政サービスに負うところが大きいことに着目した収益税又は特権説あるいは社会費用配分税から根拠付けられる方が有力であるはずである(R.グード「法人税」参照)。

 然すれば、現行の法人ごとの課税方法にも理があるはずであり、殊更税制を複雑にして我国企業の国際競争力にも悪影響を及ぼしかねないアメリカ型等の連結納税制度をあわてて導入する必要はないはずである。また、早期に導入して、連結時に時価課税するとか、名称を変えるかという姑息な手段を講ぜずとも済むはずである。更に、企業側においても、国家の一大事という時に、目先の企業減税を何が何でも要求するという姿勢を押える冷静さも望まれる。

 いずれは、連結納税の導入は余儀無くされようが、その導入案もイギリス・ドイツ型のようなできる限り簡素なものにすべきであり、それこそ構造改革に趣旨にも適うはずである。

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2001.9.26 ビジネスメールUP! 204号より )

 

 
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