第12回


上様領収証

「あて名はどうなさいますか?」 「えーっと。"ウエ"でお願いします。あ、日付は入れないでね。」 ―――――飲み屋のレジなどではよく見かける光景だが、この「上様領収証」、一時期、店側が発行するのを嫌がった時があったのをご存知だろうか。平成9年の消費税率引上げの時、消費税の仕入税額控除の要件を「請求書等または帳簿」記載から「請求書等かつ帳簿」記載へ厳しくするという大きな改正がなされた時である。「お品代」はだめで「文房具ほか」の記載だったら良いなどといわれ、実務が混乱したからご記憶の方も多いことだろう。

 この改正をスムーズに運ぶため、当局は飲食業界等に間接的な指導を行い「上様領収証」の発行にプレッシャーをかけた。お店側が上様領収証を切りにくくなったのはこのような事情があったからである。ところが、現在では「上様」を断るお店はほとんどないようだ。

 上様領収証の撲滅作戦(!)が失敗したのは、法人税が消費税の要件に追従しなかったせいである。法人税は取引実態を重視しているので、「上様だから認めない」とはしなかったのである。当時の取材を思い起こしても、「消費税は消費税、法人税は本法であり実質判断」などと力強く発言する方が実に多かった。

 ところが、今や当局の人事施策・機構改革から消費税・法人税は「法人課税部門」として一体となり、いつの間にか上様領収証も大手を振っている。消費税の導入から早や13年目。お役所もお役人も税制も様変わりしてしまった。

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2001.5.25 ビジネスメールUP! 156号より )

 

 
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