クライアントへの非監査証明業務の同時提供を原則禁止へ
金融審・会計士試験合格者、年間2,000〜3,000名へ大幅増員
金融審議会公認会計士制度部会(部会長:片田哲也(株)小松製作所取締役相談役)は12月17日に「公認会計士監査制度の充実・強化」と題した報告書を公表した。<1>被監査企業への非監査証明業務の同時提供の禁止、<2>監査法人における関与社員による継続的監査の制限を法制度上具体化することなどを提言しており、全体として会計士にとって厳しいものとなっている。加えて、公認会計士試験につき年間2,000名から3,000名合格させ、現在1万4千人程度の公認会計士数を平成30年ごろまでに総数5万人程度の規模とする方針を出している。
一方、これに先立ち、自民党の企業会計に関する小委員会(塩崎恭久委員長)も「公認会計士法の改正における諸課題について」と題する報告書(中間論点整理)をまとめている。こちらの内容の一部がより踏み込んだニュアンスとなっている。今後の法改正で、それがどのように反映されるのかは慎重に見守りたいところである。
監査法人の交代制の議論は先送り
今回の報告書では、監査法人の外見的・精神的独立性の確保の観点から、<1>被監査企業への非監査証明業務の同時提供の禁止、<2>監査法人における関与社員による継続的監査の制限、<3>関与社員が被監査企業の幹部などに就任する場合の制限を法制度上具体化することが盛り込まれている。
このうち、特に議論となりそうなのが、<1>被監査企業への非監査証明業務の同時提供の禁止。エンロン事件で監査人がクライアントから多額のコンサルティング・フィーをもらっていたことを踏まえての提言である。
他方で、金融審議会金融分科会第一部会(部会長:神田秀樹東京大学法学部教授)は12月16日に、有価証券報告書(及び有価証券届出書)において監査法人が受ける報酬につき監査報酬とそれ以外の報酬とに分けて開示するよう政令を改正する方針を打ち出している。その規定と相俟って、監査法人の行う非監査業務へしばりをかけるものとなっている。
なお、監査法人自身の継続的監査の制限の導入については、「監査法人による寡占化のもとでの導入は、監査の実効性などに支障を生じる恐れが避けられない」という理由により結論が先送りとなっている。
自民党案では継続的監査の制限は5年
これに対して自民党案では、原則として金融庁案と同内容であるものの、関与社員による継続的監査の制限については5年程度としており、「7年または5年」とする金融庁案より若干踏み込んだ内容となっている。
また、監査法人の交代制についてもトーンが金融庁案より強いものとなっており、今後の法改正の動向が注目される。
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(週刊「T&A master」001号「最重要ニュース」より転載)
(分類:会計 2003.2.21 ビジネスメールUP!
396号より
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