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譲渡所得の計算上も、未経過固定資産税等相当額は譲渡収入に算入
国税不服審判所、不動産取引上の慣行を「売買条件」の一つと認定

 

不動産の譲渡に際して収受した未経過固定資産税等相当額について、国税不服審判所は、譲渡所得の計算上の総収入金額に算入すべきであるとする裁決を行った(平成14.8.29裁決)。「資産税質疑問答集」(平成12年11月改訂、清文社発売)等で明らかにされてきた取扱いを確認したことになる。

請求人は譲渡所得における明文規定の欠如を主張
 裁決事例では、請求人が、@固定資産税等は、その所有する期間に受ける行政サービスに対する応益課税であること、A不動産売買実務において、固定資産税等を売主と買主で分担する取引慣行が存在すること、B所基通33−7において、固定資産税は、資産の維持管理に要する費用と定義づけられていること、C東京高裁の昭和41.7.28判決では固定資産税等が期間コストであることを前提に、所有期間に対応する固定資産税等の不当利得返還請求権を容認していること、等を理由にして、譲渡所得の金額の計算上、固定資産税等相当額を総収入金額に含めるべきではないと主張した。
 また、調査担当者が根拠として示した「資産税質疑問答集」(平成12年11月改訂、清文社発売)には、未経過固定資産税等相当額が譲渡価額に含まれる旨の記載があるが、これは執筆者の私見にすぎず、同書の平成13年11月改訂版においては、この項目が削除されていると指摘した。
 さらに消費税基本通達10−1−6では、未経過固定資産税等相当額が当該資産の譲渡の金額に含まれる取扱いを明らかにしているが、所得税の課税に援用することはできない、と主張した。

審判所は不当利得返還権の性質を否定
 審判所は、「地方税法上、固定資産税等は、賦課期日に所有者として登録されている者に対して課されるものであり、賦課期日後の所有者の異同は、課税関係に変動を生じるものではなく、当事者間で固定資産税等の清算が行われたとしても、その性質は、売買条件の一つにほかならない。」と判断して、審査請求を棄却する裁決を行った。
 審判所は、「東京高裁の昭和41.7.28判決の当否はさておき」としながら不当利得返還請求権が発生する余地はないと判断した。請求人の主張で援用された東京高裁判決は実質的に切り捨てられているが、これは固定資産税等の法的性格から、日割り固定資産税等の不当利得返還請求権が生じないことを判示した別の東京高裁の判決(平成13.7.31判決)に裏付けされたものと考えられる。
 未経過固定資産税等の取扱いは、実務上頻繁に生じる疑問であっただけに、譲渡収入に算入するという裁決事例は今後の指針として有用なものとなるだろう。



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週刊「T&A master」042号(2003.11.10)「最重要ニュース」より転載)

(分類:税務 2004.1.21 ビジネスメールUP! 522号より )

 

 
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