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定款の定めによる持分(出資額)の払戻価額を時価と認めず!
名古屋地裁、企業組合の相続税評価で、評基通196を容認

 

 名古屋地方裁判所民事第9部(加藤幸雄裁判長)は、平成15年9月18日、相続財産としての企業組合の出資の評価について、定款上に組合脱退時には払込額(1口当たり50円)を限度として払い戻す旨が定められているが、財産評価基本通達196(企業組合等の出資の評価)の定めにより、純資産価額に基づいて評価する(1口当たり1,223円)ことが合理的であり、相続税法22条に反しないとして、原告の請求を棄却した(平成15年(行ウ)第13号)。

(企業組合等の出資の評価)
196 企業組合、漁業生産組合その他これに類似する組合等に対する出資の価額は、課税時期におけるこれらの組合等の実情によりこれらの組合等の185《純資産価額》の定めを準用して計算した純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)を基とし、出資の持分に応ずる価額によって評価する。

本件定款第13条(脱退者の持分の払戻し)
 組合員が脱退したときは、組合員の本組合に対する出資額(払込済出資金額)を限度として、持分を払い戻すものとする。

剰余金の配当が予定されている以上、「株式との間で経済的実質に大差なし」と判示
 原告は、上記の定款の規定、さらに、実際に企業組合から脱退する場合に払い戻される金額は出資額(1口当たり50円)である実態を挙げて、法22条に規定する「時価」は、出資金額となることを主張した。
 判決では、本件(企業組合等の出資)持分の評価に際し、評価通達196を適用すべきかについて、(1)株式との類似、(2)消費生活協同組合との相違、(3)農業協同組合・漁業協同組合との相違、を検討し、その結果、企業組合と株式との間で経済的実質に大差がなく、企業組合が総会の決議によって自由に解散できることなどを指摘して、評価通達196を適用することは合理的と判示した。

「出資額限度法人の制度化」の議論を踏襲
 本件相続では、原告が出資持分を承継したことから、実際には企業組合からの脱退・払戻しは行われていない。実際に出資額での払戻しが行われた場合には、評価通達196の射程範囲が問題として提起されることになるだろう。しかし、承継(名義書換)する組合員に対しては、定款の規定だけでは出資額評価を認めず、評価通達の合理性を判決は容認した。
 社団医療法人の相続税評価額に出資額限度法人(本誌No.28参照)の制度化が議論されているが、本判決の判決理由は、出資額限度法人制度化の議論を踏襲したものとなっている。



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週刊「T&A master」043号(2003.11.17)「最重要ニュース」より転載)

(分類:税務 2004.1.28 ビジネスメールUP! 525号より )

 

 
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