著作権等について会社概要質問・お問い合せサイトマップ

 

ストック・オプション訴訟の微妙な論点

 

「給与所得と譲渡所得の融合であれば共感できるな。」 金吉

 東京高裁の控訴審判決などで納税者敗訴が続き、論点も煮詰まりつつあるSO訴訟について、石部税理士とみどりさんが議論しています。

 「みどり、この論文(脚注1)を読んでごらん。SO訴訟では、これまで主に、ストック・オプションの所得区分が給与所得に該当するのか、一時所得に該当するのかということが争われてきたよな。でも、この論文では、SO権利行使益の“譲渡所得該当性”を検討しているんだ。」石部税理士がみどりさんを巻き込みます。

 「なるほど…。この論文は、SOの権利行使益は給与所得と資産の譲渡による所得の混合的性質を有していると言っているのね。」みどりさんもけなげです。

「この考え方は、納税者の実感に近いものではないのかな。結局、対象株式の時価が上がらなければ、SOは絵に描いた餅だろう。偶発的な所得だということで“一時所得”と主張しているけど、納税者は、株式の譲渡益じゃないかという実感があると思うんだよね。」

「でも、これまでの判決では、譲渡所得該当性は否定されてきたんでしょう?」

「そうだね。だけど、先日の租税訴訟学会の研究会で納税者側の代理人もされている山田弁護士が“給与所得”との判決を打破するためにも、“二重利得法”の考え方を検討していきたいと発言しているんだ。あの会場では、給与所得と一時所得の融合かと思ったのだけど、給与所得と譲渡所得の融合であれば、僕は共感できるな。」

「うーん…。でも、SOは、権利行使時の価額が権利行使価額以下の場合には、権利行使しないことになるし、権利行使が出来るようになるまではその権利を誰にも譲渡できないのでしょう。それでも譲渡所得と言えるのかしら?」

「譲渡所得性はあると思うよ。それだからこそ、“適格SO”の場合には、権利行使時の課税が猶予された上で、売却時に株式の譲渡益として課税されることになっていると思うんだ。SOを付与する趣旨は同じなんだから、国が、“適格”は譲渡所得だけど、“非適格”は給与所得だと使い分けた取扱いをしていることに無理があるんじゃないのかな。」

「この論文の結論は、“給与所得”だけど、二重利得法で考えると、給与所得と譲渡所得に区分して課税することになるのね。益々ややこしい事態になってきたわ…。」

脚注1「ストック・オプション判決について−資産の譲渡の対価としての性質の検討を中心に−」租税研究2004年5月号

 

 

  T&Amaster ニュース関連情報(注:閲覧には読者IDとパスワードが必要になります)ID・パスの取得方法
  キーワード 「裁判」+「譲渡所得」⇒ 2件

東京地裁の藤山雅行判事が東京税理士会で講演 2003-11-17
譲渡所得の計算上も、未経過固定資産税等相当額は譲渡収入に算入 2003-11-10

 年間25,200円でできる確かな情報武装!週刊「T&A master」のご購読はこちらまで

 

週刊「T&A master」067号(2004.5.24)「石部家の人びと−父と娘の税理士問答−」より転載)

(分類:税務 2004.7.23 ビジネスメールUP! 596号より )

 

 
過去のニュース、コラムを検索できます
 Copyright(C) LOTUS21.Co.,Ltd. 2000-2023. All rights reserved.
 全ての記事、画像、コンテンツに係る著作権は株式会社ロータス21に帰属します。無断転載、無断引用を禁じます。
 このホームページに関するご意見、お問合せはinfo@lotus21.co.jp まで