審判所、再任代表取締役への退職慰労金を「退職所得」で容認
合併の実質(整理統合)から特別の事実関係を認める
国税不服審判所は、平成15年6月25日、合併による役員改選により、存続会社の専務取締役から合併後の法人の代表取締役に就任した請求人が、合併前の勤続期間に係る役員退職慰労金として支給された一時金について、所基通30−2の(3)に定めるその職務の内容又はその地位が激変した者に該当し、退職所得に該当すると判断し、一部取消裁決を行った。
事案の概要
審査請求人XはA社の専務取締役であった。平成12年10月、A社は、B社、C社と合併することになった。合併契約書では、3社は対等の精神で合併し、法手続き上、A社を存続会社とし、B社・C社は解散した。A社は合併によりD社と商号変更し、本店所在地を変更した。合併3社の役員は、合併期日の前日をもって退任し、合併3社がそれぞれ合併期日の前日までを計算期間とする役員退職慰労金を支払うことになっており、Xに役員退職慰労金896万円を支給した。その際賞与に該当するものとして給与所得として源泉徴収をした。Xは合併期日の翌日、D社の代表取締役に就任した。Xは、給与として確定申告したが、上記退職慰労金相当額は退職所得に該当するとして、更正の請求をした。原処分庁は、Xが役員に再任されただけであり、実質的に退職したと同様の事情にあるとは認められないから、給与所得として課税することが相当であると主張して、「更正をすべき理由がない旨の通知処分」を行った。
審判所の判断
1.A社は形式上存続法人であるが、本件合併は、J社の傘下に入った合併3社が整理統合されたものであり、A社も実質的に被合併法人と同一視されるものである。
2.Xは、合併期日の前日をもってA社を退職し、それまでの勤務に対する報償としてA社の役員退職慰労金内規等に基づく一時金として支給を受けた。
3.そして、Xの場合、A社の専務取締役から合併の存続法人であるD社の代表取締役に就任しているので、形式的には継続していると見られる勤務関係ではあるが、実質的には、J社の傘下に入った合併各社3社の整理統合としての合併に伴う一時的かつ形式的な代表取締役への就任であって、Xの勤務の性質、内容に重大な変動があり、単なる従前の勤務関係の延長とはみられない特別の事実関係があるものと認めるのが相当である。
4.Xは、所基通30−2の(3)に定めるその職務の内容又はその地位が激変した者に該当し、XがA社の専務取締役でAあった勤続期間に係る役員退職慰労金として支払われた本件一時金は退職所得に該当すると判断するのが相当である。
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(週刊「T&A master」072号(2004.6.28)「最重要ニュース」より転載)
(分類:税務 2004.9.3 ビジネスメールUP!
611号より
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