青色LED訴訟、なぜ和解したの?
「裁判所が企業の経営面まで考慮すれば個人は小さな存在ね。」みどり
石部税理士は、今年も、「新年会疲れ」でヘトヘトです。久しぶりに早く帰ってきたのをいいことに、勉強に勤しむみどりさんに話しかけます。
「みどり、青色LED訴訟が遅延損害金も含めて8億4千万円で和解したな。今回の和解について、みどりはどう思う?」みどりさんと話すのが楽しみなお父さんです。
「そうねえ、地裁で「発明の対価は604億円」と認定されたときは、とても衝撃を受けたから、今回の和解は、正直、「面白くない」と感じたわ。中村教授は和解後の会見で、「日本は、適当にやっている人が有利な国。二度と日本で仕事をするつもりはない。理系でやる気のある人はアメリカに行くべきだ。」と発言したわよね。日本とアメリカを、一概に比較することはできないけど、中村教授が言うように、高裁が6億円という上限(企業の独占利益に対する従業員の貢献度を5%までとすること)ありきだったとしたら、日本の人的資本はどんどん流失してしまうと思うわ。誰だって、一度はアメリカンドリームをつかみたいもの。」みどりさんの夢は何なのでしょうか?
父「俺が最近感じるのは、日本の訴訟は、裁判長の裁量に大きく左右されるということだよ。この間の興銀訴訟でも、下級審での判断は、裁判長の顔しか見えないのさ。当然、人間が判断することなんだから、統一の基準を作ろうって言ったって無理な話だけどね。ストックオプション訴訟だって判断が分かれているし、「藤山判決」だってかなりセンセーショナルだっただろ。」
娘「でも、だからこそ上告して、最後まで争ってほしかったという意見もあるのよ。中村教授は、どうして和解に応じたのかしら?」
父「うん。中村教授は、「“和解の二文字はあり得ない”というポリシーの弁護士が、「和解しかない」というのだから、仕方なかった。」と話しているようだね。それに、200億円の支払を求める訴状を地裁に提出するための印紙代だけで、2千6百万円、高裁ではその1.5倍、最高裁では2倍(5千万円以上)もの印紙代が必要なのさ。弁護士としてみれば、「敗訴」という最悪の事態は避けたいだろうし、最後まで争っても、今回の和解金以上の成果は得られないと判断したんだろうね。」
娘「それにしても、裁判所の判断が、企業の経営面も考慮した総合的なものとなるとすると、裁判所で争う個人は、どうしたって小さな存在になってしまうと思うわ。難しい問題ね。」
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(週刊「T&A master」099号(2005.1.24「石部家の人びと-父と娘の税理士問答」より転載)
(分類:税務 2005.2.7 ビジネスメールUP!
669号より
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