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ゴルフ会員権の取得価額と返還預託金との差額は譲渡損失に該当せず
預託金返還に代えての和解による譲渡も課税資産の譲渡に該当

 名古屋地裁民事9部(加藤幸雄裁判長)は、7月27日、「預託金返還請求権の行使は、金銭債権の行使であり、資産の譲渡には当たらず、また、返還された預託金と取得費用との差益には課税し、差損は考慮しないとの取扱いは課税公平の原則に違反しない。」と判示して、譲渡損失に該当するものとした納税者の請求を棄却した(平成17年(行ウ)第3号)。
 さらに、同地裁同部(加藤幸雄裁判長)は、8月31日、「本件譲渡(預託金返還請求訴訟の裁判外の和解に基づくゴルフ会員権の第三者への譲渡)が虚偽表示により無効であるとはいえず、その法形式どおり、本件会員権の売買契約と評価されるべきものである。」と判示し、課税資産の譲渡等に該当するものとした消費税等の更正処分等を容認し、納税者の請求を棄却した(平成17年(行ウ)第5号)。

預託金返還請求権の行使は金銭債権の行使に他ならない
 7月27日判決の裁判では、原告(納税者)は、「本件ゴルフ会員権は、単なる債権債務関係ではなく、だからこそ資産として評価されるものである。会員は、ゴルフ場の会員募集に応じて会員になった場合も、他の会員から譲り受けて会員になった場合も資産を取得したこととなり、逆に、退会して会員ではなくなった場合も、他の人に譲渡して会員ではなくなった場合も、資産を失うこととなる。上記のうち、会員になる場合は、課税上、いずれも資産の譲渡を受けたように取り扱われるのであるから、会員ではなくなったいずれの場合も、資産を譲渡した場合と同様に扱われるべきである。」などとして、取得費と預託金の返還金との差額は、譲渡損失として取り扱われるべきものと主張した。
 加藤裁判長は、「原告は、ゴルフ会員権取引市場での市況などを勘案した上、その意思に基づいて、退会手続を取った上での預託金返還請求の途を選択したのであるから、かかる法的手段、形式に則した課税上の効果を受けることはやむを得ないというべきであり、…」などと判示し、預託金返還請求と譲渡では、法的手段、法的形式が異なること、及び当事者の選択によることなどを指摘して、原告の主張を斥けた。

第三者に譲渡するとの和解は通謀虚偽表示とは認められず
 8月31日判決の裁判では、原告(納税者)は、「本件取引(和解に基づく第三者(ゴルフ会員権業者)への譲渡)は、預託金の返還を求める別件訴訟の係属中に、これを解決する手段としてされたものであり、(中略)本件取引は、売買の形式を取るものの、その実体は預託金の返還であり、原告もそのように認識していたものである。原告と第三者(ゴルフ会員権業者)は、上記のような事情から、本件取引を預託金の返還であると了解しており、ゴルフ場経営会社もそのことを熟知していたのであって、本件取引は、通謀虚偽表示に基づいてされたものとして無効であり、本件取引は、売買契約ではなく預託金の返還なのであって、消費税及び地方消費税の課税の対象とすべきではない。」と主張した。
 加藤裁判長は、「本件取引は、資産に当たることの明らかな本件会員権の売買契約という法形式によってなされているから、その表示行為による限り、その対価が消費税の課税標準となることは疑問の余地がない。」「原告としても、投下資本をできる限り多く回収したいとの意図があり、そのためには、法形式としては預託金返還にこだわらず、第三者への売買であってもかまわないとの判断があったことは否定し難いというべきである。そうだとすると、当事者において,売買契約という表示行為に対応した内心的効果意思が存在しなかったと認めることはできない。」「最終的に、原告と第三者(ゴルフ会員権業者)との間で本件会員権を売買することによって、ゴルフ場運営会社との間の紛争を終了させることで当事者は合意している(当事者による売買契約の選択)以上,預託金の返還請求は、単なる契機としての意味しか持ち得ないというべきである。」などと指摘した上で、「本件取引が通謀虚偽表示によって無効であると認めることはできない。」と判示して、原告の主張を斥けた。

当事者の選択した法形式を尊重する加藤裁判長
 名古屋地裁民事9部の加藤幸雄裁判長は、航空機リース事件においても、当事者の選択した任意組合という法形式を尊重すべきという視点で課税庁の主張を斥けている。ゴルフ会員権を巡る上記の2つの事件では、ゴルフ会員権からの資金の回収において予定されている2つの方法(譲渡・預託金返還請求権の行使)の法的手段・法的形式の差異を指摘して、事情はともかく自らの選択した法形式への責任を全うさせており、加藤裁判長の姿勢を示した判示内容ともいえるものだ。

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週刊「T&A master」137号(2005.11.7「最重要ニュース」より転載)

(分類:税務 2005.12.2 ビジネスメールUP! 783号より )

 

 
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