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旺文社事件、最高裁で口頭弁論が開かれる
上告人、「増資による株主間の譲渡契約は存在しない」

 

 最高裁判所第三小法廷(藤田宙靖裁判長)は、11月29日、旺文社事件について、口頭弁論を開いた。旺文社事件では、一審の東京地裁が、「実質的にみて資産価値が移転したとしても、それが原告の行為によるものとは認められない」などと判示して、法人税法22条2項の適用を認めない判断を示し、課税処分を取り消した。一方、控訴審の東京高裁は、「両社間における無償による株主持分の譲渡は、法人税法22条2項に規定する『無償による資産の譲渡』に当たると認定判断することができる」と判示して、課税処分を容認していた。
 (株)旺文社(現商号オーブンシャホールディング(株))が控訴審判決を不服として、上告したものであるが、最高裁の口頭弁論において、上告人代理人は、上告理由全般にわたって、別紙のとおり(本誌32頁参照)、上告理由の補足を口頭陳述し、口頭弁論は終結した。平成18年1月24日に判決が言渡される。

法人税法22条Aの解釈・適用が争点
 旺文社事件上告審については、本誌No.135(2005.10.24)7頁の税務ニュースにおいてお伝えしてきたが、法人税法22条2項の解釈・適用が主たる争点となる。一審・控訴審の判断も法22条2項の適用について、全く判断が異なるものとなっていた。11月29日に開かれた上告審の口頭弁論においても、「増資決議を利用した株主間の合意」を認定した控訴審判決に対して、上告人は、「増資はまさしく会社の組織法上の行為であり、重畳的に株主間の譲渡契約が存在しているものではない。」と反発している。
 さらに、上告人は、「『資本等取引』に当たる本件増資に法人税法22条2項を適用しているのは、明らかに法人税法の解釈・適用を誤っているもの」と主張した。

株式評価がクローズ・アップも?
 最高裁において口頭弁論が開かれたことで、上告人の主張が何らかの形で取り入れられる可能性が高い。
 しかし、必ずしも争点は、法22条2項の適用だけではない。法22条2項の適用については、本件下級審の判断が分かれたように、課税処分の取り消しか容認かということになりかねないが、法22条2項が適用される場合の資産の移転額について、株式評価の問題が第2の争点となっている。上告人は、控訴審が合理的な根拠を示さないで、法人税額等相当額を控除しない(時価)純資産価額方式によって高く評価していることを問題視している。
 本件と同じ最高裁第三小法廷が平成17年11月8日判決で「法人税額等相当額の控除不適用は読み取りが不可能」との判断を示したことの射程範囲がクローズアップされることも予想されよう。

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週刊「T&A master」141号(2005.12.5「最重要ニュース」より転載)

(分類:税務 2006.1.13 ビジネスメールUP! 796号より )

 

 
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