一条工務店、控訴審でも完勝
海外関連会社へのロイヤリティの支払に「対価性あり」

 

 東京高等裁判所第1民事部(江見武弘裁判長)は平成18年3月15日、海外の関連会社へのロイヤリティの支払を巡り、仮装取引に該当するものかどうか(対価性の有無)が争点となった法人税更正処分等取消請求訴訟に対し、原審(東京地裁)の判断を全面的に引用し、「当該取引は実体を伴わない仮装のものでも、ロイヤリティが対価性のないものとも認めることができない。」とする東京地裁の判断(平成17年7月21日判決)を支持し、課税庁側の控訴を棄却した。

事案の概要
 本件は、ノウハウ使用許諾契約等に基づいてシンガポールにある関連会社(HRD社)に支払ったロイヤリティを損金に算入して法人税等を申告した(株)一条工務店が、被告(税務署長)から、上記損金算入は認められず、他に収入の計上漏れがあるなどして、法人税・消費税等の更正処分、過少申告加算税・重加算税の賦課決定処分及び青色申告承認取消処分を受けたことから、その取消しを求めている事案である。
 設立時から甲が代表取締役となっていた(株)一条工務店は、昭和53年の設立以後、木造注文住宅の販売及び施工を行っていたが、さらに、木造注文住宅の建築事業を拡大するため、昭和61年11月以降、全国各地の工務店との間でフランチャイズ契約し、「経営システム」の供与・教育指導を行い、対価として売上高を基準とするロイヤリティを受けていた。また、一条工務店と一条工務店が発行済み株式総数の85%を保有して設立されたA社との間には、A社が一条工務店にノウハウを供与する契約が締結され、A社設立後のフランチャイズ契約は、地場工務店(GC)と一条工務店とA社とが契約当事者となり、A社がGCに経営システムを供与し、その対価としてGCがA社にロイヤリティを支払うものであった。
 平成7年2月付けで、A社からHRD社にノウハウ及びデータベースを譲渡した旨の契約書が作成され、譲渡対価は20億円とされていた。
 これに対して、課税庁は適正な譲渡対価を31億円余とする法人税の更正処分等を行った(後記名古屋地裁別件訴訟)。
 なお、シンガポール共和国において設立されたHRD社は、設立時から甲(一条工務店の設立時からの代表者)が代表者であったが、甲は平成8年11月に辞任し、乙が代表者に就任した。HRD社の株式は、甲の長男である丙がその発行済み株式総数の99.99%を保有している。
 A社からHRD社へのノウハウ等譲渡後は、一条工務店とHRD社はノウハウ使用許諾契約を締結し、GC各社とHRD社はノウハウの供与等の契約を締結し、一条工務店およびGC各社はHRD社に売上高を基準とするロイヤリティを支払っていた。

課税庁の主張
 税務署長は、@一条工務店がHRD社との間で締結したとする「ノウハウ使用許諾契約書」は実態を伴わない仮装のものであり,これに基づいて支払われたフランチャイズフィーに対価性がなく、寄付金に当たると認定するとともに、Aフランチャイズ各社がHRD社に支払ったフランチャイズフィーも仮装の取引によるもので、真実は一条工務店の収入とすべきであると認定し、さらに、B一条工務店がHRD社に対して、海外人材養成及び派遣業並びに技術保証名目で支払った金額について、HRD社から役務提供を受けた事実がなく、対価性のない支出であるとして寄付金に当たると認定し、更正処分・青色申告取消処分・重加算税等賦課決定を行った。

裁判所の判示
 東京地裁民事第2部(市村陽典裁判長)は、HRD社の業務内容・ノウハウ使用許諾契約等について詳細な分析を行い、「HRD社は木造注文住宅の販売及び施工に関するノウハウを有し、これを一条グループに提供しているものと認めることができる。」と判断した上で、「ノウハウ使用許諾契約に基づく取引が実態を伴わない仮装のものでも、ロイヤリティが対価性のないものとも認めることができない。」として、一条工務店の請求を容認していた。東京高裁第1民事部においても、一審の判断が全面的に支持され、課税庁の主張は斥けられた。

海外への課税逃れを問題視
 本件訴訟及びA社のHRD社に対するノウハウ等の譲渡に係る法人税更正処分等取消請求事件(平成17年9月29日名古屋地裁判決)における前提事実を検証すれば、一条工務店は設立時からの代表者であった甲を中心とする会社であり、結果的には、国内の一条工務店グループに残される課税所得が、軽課税国と目されるシンガポールにあるHRD社(甲の長男である丙が99.99%の株式を保有)に移転されることで、我が国の当該所得に対する課税権が及ばないことになる。課税庁はこの点を重視して課税処分を行ったものであろう。しかし、ロイヤリティ支払の基になる契約に実態があるとして、課税処分は覆されることになり、地裁の判断は、高裁においても支持されることになった。契約(取引)の認定が争点となってきたこともあり、課税庁は、上告するかどうか厳しい判断が迫られよう。

 

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 キーワード 「ロイヤリティ」
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週刊「T&Amaster」157号(2006.4.3「最重要ニュース」より転載)

(分類:税務 2006.4.28 ビジネスメールUP! 841号より )

 

 
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