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最高裁、「農地転用決済金」は「譲渡費用」に該当と判示
譲渡費用該当性は客観的な判断をすべきもの

 

 最高裁判所第一小法廷(泉徳治裁判長)は4月20日、土地改良区の組合員が同区内の農地を転用目的で譲渡するに当たり土地改良区に支払った決済金等は、譲渡費用に該当するものと判示し、納税者の取消請求を棄却した原判決を破棄、当該決済金等(譲渡費用)の内容を審理させるため東京高裁に差し戻した。

事案の概要
 本件は、所得税の申告において、上告人(納税者)が長期譲渡所得の金額の計算上、土地改良区へ支払った決済金等が譲渡費用に当たるとして、この金額を譲渡所得金額から控除して申告したところ、被上告人(税務署長)が更正処分等を行ったことから、上告人がこの取消しを求めた事案である。
 第一審(新潟地裁)及び控訴審(東京高裁)は、「本件決済金等は、本件土地の譲渡を実現するために直接必要な支出として実質的関連性があるものではなく、譲渡に際しての増加益のために必要な支出として合理的関連性があるものでもないから、本件土地の譲渡費用に当たらない。」などと判示して、納税者の請求を棄却していた。

最高裁の判示
 泉裁判長は、「資産の譲渡に当たって支出された費用が譲渡費用に当たるかどうかは、一般的、抽象的に当該資産を譲渡するために当該費用が必要であるかどうかによって判断するのではなく、現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきものである。(略)上告人が本件土地を転用目的で譲渡する場合には土地改良法等の規定により本件決済金の支払をしなければならなかったのであるから、本件決済金は、客観的に見て本件売買契約に基づく本件土地の譲渡を実現するために必要であった費用に当たり、本件土地の譲渡費用に当たるというべきである。」などと判示し、原判決を破棄、審理を東京高裁に差し戻した。

「譲渡費用の範囲」が争点
 本件では、所得税法33条3項にいう「譲渡費用」の範囲が争われている。所基通33-7が譲渡費用の範囲を明らかにしているものの、「譲渡のために直接要した費用」の基準が明確でないとの批判もある。本件の類似事案(新潟地裁平成8年1月30日判決)が納税者敗訴で確定しているが、当該判決で判示された「譲渡費用該当性」については、識者から批判されるものであった。
 本判決は「譲渡費用」について、「客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきもの」と判示しており、課税実務に影響を及ぼすものとなろう。

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 キーワード 「最高裁判所第一小法廷」
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週刊「T&Amaster」161号(2006.5.1「最重要ニュース」より転載)

(分類:税務 2006.6.14 ビジネスメールUP! 858号より )

 

 
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