課税仕入れの区分に根拠があれば個別対応方式の法定要件を満たす
仙審、個別対応方式における課税仕入れの用途区分で裁決
仙台国税不服審判所は2月28日、消費税法における個別対応方式の課税仕入れの用途区分で争われた事案に対して、事業者が合理的な根拠に基づき、@課税売上対応分、A非課税売上対応分、B共通売上対応分とに区分していれば、これを認めるとし、原処分庁(税務署)の処分を全部取り消した(仙裁(諸)平17第9号)。
請求人は質疑応答事例を参考
今回の事案は、薬局を営む同族会社である請求人が消費税の課税仕入れを行う際に個別対応方式を選択して申告したことに対し、原処分庁が個別対応方式における課税仕入れの用途区分に誤りがあるとして行った更正処分の取消しを求めたものである。
具体的に請求人は、個別対応方式における区分において、@調剤薬品等の仕入れは、非課税売上高対応分および共通売上対応分とに区分、A他の保険薬局から仕入れた調剤薬品等は健康保険法等が適用されるため、非課税売上対応分に区分、B問屋から仕入れた調剤薬品等は、保険医等からの処方せんに基づき販売され非課税売上げとなるほか、他の保険薬局へ販売されまたは自費診療分として販売され課税売上げとなるものがあり、仕入時点では課税売上げか非課税売上げになるのか区分できないため、共通売上対応分に区分している。この点、請求人は、病院において健康保険法等が適用される診療とそれ以外の診療に使われる薬品等が仕入時点で区分することが困難であるため、その薬品等の課税仕入れを共通売上高対応分として取り扱う趣旨の国税庁の質疑応答事例を根拠に区分したと主張した。
一方、原処分庁は、個別対応方式により控除対象仕入税額の計算を行う場合には、課税仕入れの用途区分を必ず行う必要があると主張。質疑応答事例については、「病院における薬品等」を述べたものであり、調剤薬品等の仕入れとは異なるとした。
消費税法は具体的な方法を規定せず
審判所は、消費税法上、課税売上割合が95%未満の事業者に対して認めている個別対応方式において、仕入れに係る消費税額の控除が認められるためには、@課税売上対応分、A非課税売上対応分、B共通売上対応分とに区分が明らかにされていることが適用要件であると述べた。その上で、消費税法30条2項1号にある「……その区分が明らかにされている」という規定は、どの程度まで、どのような方法で、それぞれ区分を明確にすればよいのかは明記されていないとし、請求人が合理的な根拠に基づき区分している限りは、これを認めなければならないとした。また、区分する方法は、請求書等を区分しておくなど、何らかの方法で事業者がその区分を明らかにしていれば、法定要件を満たしていると判断した。
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キーワード 「課税仕入れ」⇒37件
(週刊「T&A master」175号(2006.8.14「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2006.9.22 ビジネスメールUP!
896号より
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