「給与の多寡」の他、「借入名義」等対外的な露出度も判断材料に
業務主宰役員は役員間の「比較」で判定
平成18年度税制改正で創設された特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入規定(法法35条)では、当該会社の業務主宰役員に対する給与のうち一定額が損金不算入とされるが、この「業務主宰役員」をいかに判定するべきかは法令等からは必ずしも明らかでない。
本誌の取材によると、業務主宰役員に該当するかどうかは、役員間の「比較」の問題であり、絶対的な基準はないものの、このたび財務省から明らかにされたQ&A(26頁参照)にある「給与の多寡」のほか、「銀行借入の名義人」など目に見える基準も判断材料になるようだ。
社長交代があった場合等では判定が困難に
特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入規定の対象となる「業務主宰役員」とは法人税法上「法人の業務を主宰している役員」とされる(法法35条1項)。ただ、法令にはこれ以上の記述はなく、財務省からこのたび明らかにされたQ&Aには「会社の経営に最も中心的に関わっている役員」とあるのみだ。
一般的には、この規定は一人会社をはじめとする典型的なオーナー会社を適用対象としていることから、誰が業務主宰役員に該当するかは、火を見るよりも明らかであることが多い。
誰が業務主宰役員に該当するのか判断が難しくなるのは、事業承継等によって社長の交代があった場合だろう。
業務主宰役員に該当するかどうかは、役員間の「比較」の問題であり、絶対的な基準はない。このため、各種の要素から、「業務を主宰している」かどうかを判断することになる。
意思決定の頻度や業務量の特定は困難
「業務を主宰している」ことに直結すると考えられるのが、意思決定の頻度だ。たとえば会社の重要な意思決定をA役員が60%、B役員40%行っているとすれば、Aが業務主宰役員であると推測できる。また業務量も「業務を主宰している」かどうかの判断基準になりうる。
ただ、実際には、意思決定の事実・頻度や業務量を確認・特定するのは容易なことではない。そこで、より客観的な判断基準が必要になってくる。たとえば今回明らかにされたQ&Aで挙げられた「給与の多寡」だ。「会社の経営に最も中心的に関わっている役員」が最も多い給与をもらうのが通常であり、その者が「業務を主宰している」と判断するのは自然なことといえる。
このほか、「銀行借入の名義人」をはじめ、対外的な氏名の露出度なども判断基準の1つとなろう。
なお、今回明らかになったQ&Aの内容は、通達には盛り込まれない方向だ。
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キーワード 「業務主宰役員」⇒26件
(週刊「T&A master」181号(2006.10.2「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2006.11.10 ビジネスメールUP!
915号より
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