冬期賞与が届出額と異なる場合、届出額通りの夏期賞与も損金不算入?
事前確定届出給与 法人の利益調整の意図がポイント
平成18年度税制改正で導入された「事前確定届出給与」に関しては、とりあえず届出だけしておき、届出額通りに役員賞与を支払うかどうかは業績を見てから決めるといういわゆる“枠取り”を行う企業が少なくないが、なかには業績不振等によりやむを得ず賞与を支払えない場合もあり得る。仮に夏期賞与は届出額の通り支払ったものの、冬期賞与が届出額と異なっていた場合、届出通りに支払われた夏期分まで損金不算入となるのかが問題になる。
当局は、“枠取り”の助長を懸念する姿勢を見せているが、そこに利益調整の意図が認められない場合には、夏期賞与については損金算入の余地もあるようだ。
当局は“枠取り”助長を懸念
税務署長に届け出た給与額と実際の支給額が異なる場合、「事前に支給額が確定していた」とは言えないことから、事前確定届出給与に該当しないこととされる。すなわち、この場合、増額支給であれば増額分だけでなく実際の支給額の全額、減額支給であれば実際に支給した額の金額が損金不算入となる(国税庁 「役員給与に関するQ&A」Q10「届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合の取扱い」)。
したがって、事前確定届出給与を夏と冬の年2回支払う場合において、夏期は届出通りに支払ったものの、冬期分は届出通りに支払われなかったケースでは、冬期の支給額の全額が損金不算入となることに疑問の余地はない。問題となるのは、届出通りに支払われた夏期分まで損金算入が否認されるのか、という点である。
この点について当局は、夏期分の損金算入を無条件に認めれば“枠取り”を助長することになることを警戒、あくまでも「届出通りの支払い」が基本スタンスであることを強調しつつも、一方で、夏期と冬期両方を損金不算入とするのか、冬期のみ損金不算入とするのかについては一律に取り扱われるものではないとしている。この点からすると、夏期分については損金算入の余地もあると考えられる。
結論的には、夏期分の損金算入が認められるかどうかは、法人に利益調整の意図が見えるかどうか等によって、ケースバイケースで判断されることになろう。つまり、届出通りに支払おうとしていたにも関わらず、業績不振によりやむを得ず冬期の支給額を減額したような場合には、夏期分については損金算入の余地があると考えられる。
いずれにせよ、3月決算法人の事前確定届出給与の届出期限となった6月末には、“枠取り”を行った企業がかなりの数に上るものと見られる。こうした状況を受け、課税当局は「事前確定届出給与」が届出通りに支払われないケースに注視していくことになろう。
※
記事の無断転用や無断使用はお断りいたします
⇒著作権等について
T&Amaster 読者限定サイト 検索結果(注:閲覧には読者IDとパスワードが必要になります)⇒ID・パスの取得方法
キーワード 「事前確定届出給与」⇒21件
(週刊「T&A master」182号(2006.10.9「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2006.11.13 ビジネスメールUP!
916号より
)
|