農地転用決済金等の譲渡費用の取扱いを変更
「譲渡費用の範囲」の見直しはさらに検討
国税庁は11月29日、「土地改良区内の農地の転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われた農地転用決済金等がある場合における譲渡費用の取扱いの変更について」を国税庁ホームページに掲載し、一定の要件を満たす農地転用決済金等については、譲渡所得の金額の計算上、譲渡費用とするよう取扱いを改めることを明らかにした(今号11頁参照)。
過去の同様事案については、国税通則法の規定に基づき、この取扱いの変更を知った日の翌日から2月以内に所轄の税務署に更正の請求をすることができる。
係争事案の確定を受けて
上記農地転用決済金等の取扱いについては、平成18年4月20日の最高裁判決および、前記最高裁判決の差戻し審である平成18年9月14日東京高裁判決において、「決済金・協力金等は譲渡費用に当たる」と判示され、課税処分が取り消されて確定した。国税庁の取扱いの変更は、上記各判決の内容を受けたものである。
平成18年度税制改正においては、国税庁長官の法令の解釈が、判決等に伴って変更され、変更後の解釈が国税庁長官により公表されたことにより、その課税標準等または税額等が異なることとなる取扱いを受けることとなったことを知った場合には、その知った日の翌日から2月以内に更正の請求をすることができると規定された。今回の取扱いの変更は、上記規定が適用されるが、法定申告期限から既に5年を経過しているものは、法令上、減額できない。
判決の射程範囲はさらに検討を重ねる
平成18年4月20日最高裁判決は、「資産の譲渡に当たって支出された費用が所得税法33条3項にいう譲渡費用に当たるかどうかは、一般的、抽象的に当該資産を譲渡するために当該費用が必要であるかどうかによって判断するのではなく、現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきものである。」との判断基準を示したうえで、農地転用決済金等の譲渡費用該当性を判示した。このため、譲渡費用の取扱いについては、所得税基本通達33−7(譲渡費用の範囲)を含め、農地転用決済金等に限定されない見直しが注目されたが、国税庁担当官は、判決の内容は所得税基本通達33−7に直接抵触するものではないとの判断を示しており、譲渡費用の範囲については、今後とも検討していきたいとしている。
現時点では、このほかの譲渡費用該当性が争われる事案で「客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であった事案」については、個別に税務署と課税上の取扱いを協議するなどの対応が求められる。
土地改良区内の農地の転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われた農地転用決済金等がある場合における譲渡費用の取扱いについて
問1 譲渡費用となる農地転用決済金等とは、具体的にはどのようなものですか。
答 譲渡費用となるのは、次の1及び2です。
1 農地転用決済金(次の@〜Cのすべてを満たすものをいいます。)
@ 売買契約で農地法の規定による農地転用の許可又は届出(以下「農地転用許可等」といいます。)が停止条件とされているなど、売買契約において、土地改良区内の農地を転用して売買することが契約の内容になっていたものであること。
A 土地改良法第42条第2項及びこれを受けた土地改良区の規程により、土地改良区に支払うことが義務付けられている償還金、事業費等(※)であること。
(※)費用の名称については、各土地改良区により異なっている場合があります。
B 転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われたものであること。
C 決済の時点で既に支払義務が発生していた決済年度以前の年度に係る賦課金等の未納入金でないこと。
2 協力金等(次の@〜Cのすべてを満たすものをいいます。)
@ 売買契約で農地転用許可等が停止条件とされているなど、売買契約において、土地改良区内の農地を転用して売買することが契約の内容になっていたものであること。
A 土地改良区の規程により、土地改良区に支払うことが義務付けられている協力金、負担金等(※)であること。
(※)費用の名称については、各土地改良区により異なっている場合があります。
B 転用された土地のために土地改良施設(※)を将来にわたって使用することを目的としたものであること。
(※)「土地改良施設」とは、農業用用排水施設、農業用道路その他農用地の保全又は利用上必要な施設とされています。
C 転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われたものであること。
(注)例えば、次に掲げるものは、原則として「転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われたもの」とは認められないことから、譲渡費用には当たりませんのでご注意ください。
・農地法第4条の規定に基づいて農地を転用した際に、土地改良区に支払った農地転用決済金等
・土地改良施設使用の再契約のために、土地改良区に支払った協力金等
※ ご不明な点がありましたら税務署の資産課税(担当)部門におたずねください。
問2 私は、3年前に農地を譲渡して譲渡所得の申告をしています。この農地は土地改良区内にあり、売買契約において農地法の農地転用許可を停止条件とし、農地の転用目的での譲渡の際に、土地改良法第42条第2項及びこれを受けた土地改良区の規程による農地転用決済金等を土地改良区に支払っています。
これを譲渡費用に加えて譲渡所得の計算をやり直せば、所得税が減額されると思いますが、可能ですか。
答 1農地転用決済金等の金額などを明らかにしていただいた上で、税務署に更正の請求の手続をしていただければ、所得税が減額されます。
(注)農業所得など譲渡所得以外の所得の金額の計算上、その農地転用決済金等を必要経費としている場合には、農業所得など譲渡所得以外の所得についても再計算をすることとなります(再計算の結果、所得税が減額されない場合もありますのでご注意ください。)。
2 更正の請求をすることができるのは、この「土地改良区内の農地の転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われた農地転用決済金等がある場合における譲渡費用の取扱い」の変更を知った日の翌日から2月以内とされています。
(注)法定申告期限から既に5年を経過している年分の所得税については、法令上、減額できないこととされています。
詳しくは税務署の資産課税(担当)部門におたずねください。
(出典:国税庁リーフレットから抜粋)
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キーワード 「農地転用」⇒10件
(週刊「T&A master」190号(2006.12.11「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2007.1.15 ビジネスメールUP!
938号より
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