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レポ取引の法形式(売買・再売買)を重視し、利子源泉課税を取消し
東京地裁、75億円超の誤納金等の支払判決
東京地方裁判所民事2部(大門匡裁判長)は平成19年4月17日、住友信託銀行が海外市場で行ったレポ取引に係るいわゆる「レポ差額」が「利子」に該当するとして源泉所得税の納税告知処分等が行われたことから、住友信託銀行が国に対して誤納金返還(返還請求額:約63億円)・納税告知処分等の取消しを求めていた事案について、「当該レポ差額が『利子』に該当すると解することはできない」などと判示し、住友信託銀行の請求どおりに納税告知処分等を取消し、還付加算金を合わせて75億円超の誤納金等の返還および支払いを命ずる判決を言い渡した。
事案の概要
本件は住友信託銀行(以下「原告」)が、米国所在の子会社(米国住友信託銀行)を代理人として、外国法人である各取引先との間で行った各レポ取引において、各取引先から受け入れた金額と交付した金額との差額(以下「レポ差額」)につき、所得税法161条6号の「国内において業務を行う者に対する貸付金」の「利子」に該当するので、原告にはレポ差額に係る所得税を源泉徴収し、納付する義務があるとして、所轄税務署長が源泉所得税の各納税告知処分および各不納付加算税賦課決定処分を行ったことから、原告において当該各処分に基づく税額を納付したものの、上記レポ差額は、所得税法161条6号に該当せず、原告には源泉徴収義務がなく、違法・違憲な処分であり、納付税額は法律上の原因に基づかない納付であるとして、その返還および還付加算金の支払いを求めるとともに、上記各処分の取消しを求めた事案である。
レポ取引ってどんな取引?
レポ取引とは、有価証券取引の1類型であり、一般的には、当初売買する債券などの有価証券と同種・同量の有価証券を将来一定価格で再売買するとの条件のもとで、当該有価証券を売買し、その後に当該有価証券と同種・同量の有価証券を当該一定価格で再売買する取引をいうものである。経済実態的には、有価証券の売主は資金の調達ができ、買主は低リスクで運用益が確保されることになる。
本件では、原告は米国住友信託銀行との間で、米国住友信託銀行が原告の代理人として米国債等の売買および再売買取引(以下「レポ取引」)を行うことを内容とする契約を締結した。米国住友信託銀行は、原告からの指図を受けて、原告(売主)の代理人として、各取引先(買主)との間で、レポ取引を約定し、これを実行した。本件各レポ取引においては、それぞれレポ差額が生じていたが、原告は、本件レポ差額について、いずれも、源泉所得税を徴収していなかった。
主たる争点と当事者の主張
本件では、本件各レポ差額が所得税法161条6号の「貸付金(これに準ずるものを含む。)」の「利子」に該当するか否かが主たる争点となった。
原告は、「貸付金(これに準ずるものを含む。)」とは、金銭消費貸借の対象金銭(もしくはその前提となる債権)または準消費貸借など金銭消費貸借と同様もしくは類似の法律関係の目的である金銭(もしくはその前提となる債権)に限られ、「利子」とは、金銭消費貸借および準消費貸借と同様ないし類似している法律関係から生ずる利子に限られると主張した。本件各レポ取引は、売買と再売買によって構成される取引であるから、所得税法161条6号「貸付金(これに準ずるものを含む。)」には該当しないし、本件各レポ差額がその「利子」に該当することもないと主張した。
一方、被告(国)は、「貸付金」の意義は、租税法独自の見地から決すべきであって、「貸付金(これに準ずるものを含む。)」とは、私法上の金銭消費貸借契約によるものに限らず、「利子」とは、当該期間における信用供与の対価という性質を有するものをいうと主張した。本件各レポ差額は、所得税法161条6号「貸付金(これに準ずるものを含む。)」の「利子」に該当するというべきであると主張した。
原告は私法上の法形式に基づく借用概念を、被告は経済的実態に基づく租税法の固有概念を主張する構図となっている。
裁判所の判断
大門裁判長は、「本件各レポ取引(エンド取引時における売買代金債権)が『貸付金(これに準ずるものを含む。)』に該当するか否かは、本件各レポ取引の法形式および経済的効果を踏まえ、エンド取引時における売買代金債権が消費貸借契約における貸付債権とその性質、内容等がおおむね同様ないし類似するか否かによって判断するのが相当」と判示したうえで、本件各レポ取引についての具体的検討を行った。
そして、「(前略)本件各基本契約は、倒産隔離を果たすため、契約条項において売買および再売買により構成されることを明確に定めたものであって、他方、金融的取引の側面が存在し、それを示唆するかのような条項の存在によっても、その法的性質を変容させるまでのものとはいえない。本件各レポ取引は、売買・再売買を一つの契約で実行する複合的な契約であると解するのが相当である。(中略)本件各レポ取引のエンド取引における売買代金債権が消費貸借契約における貸付債権とその性質、内容等がおおむね同様ないし類似するとは言えない。」と判示した。
さらに、「本件各レポ差額は、所得税法161条6号『貸付金(これに準ずるものを含む。)』の『利子』に該当するとはいえず、同号に基づく所得に当たらないのであるから、原告が、本件各レポ差額に係る所得について源泉所得税の徴収義務を負わない。」と判示して、納税告知書処分等を取り消し、原告が納付した約63億円の税額ならびに平成18年12月31日までの還付加算金約12億円および平成19年1月1日から支払済みまでの還付加算金の支払いが言い渡されることになった。
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(週刊「T&A master」209号(2007.4.30「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2007.6.8 ビジネスメールUP!
995号より
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