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強制的に土地を収用される場合と同視すべき状況とは認められない
収用等証明書が発行されていても、なれあい収用は否認のおそれ

 名古屋地裁民事第9部は平成19年5月17日、原告らがその所有する土地を名古屋市に売却した対価について、「『収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除』」の規定が適用されるか否か等が争点となっていた所得税更正処分取消等請求事件で、「本件特例が予定している強制的に土地を収用される場合と同視すべき状況にあるとは認められない。」などと判示し、収用特例の適用を否認した課税処分を容認する判決を言い渡した。
 本件では、名古屋市が所轄税務署長との間で事前協議を行い、「公共事業用資産の買取り等の申出証明書」「公共事業用資産の買取り等の証明書」および「都市計画法第53条第1項の許可をしなかった旨の証明書」を発行しており、証明書等を信頼して申告を行う申告実務に対して、改めて収用特例の実体要件の適否のチェックを求めるものとなっているので、実務家は要注意だ。

事案の概要
 本件では、原告らがその所有する土地を名古屋市に売却した対価について、措置法33条の4第1項の「収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除」の規定が適用されるか否かが主たる争点となった。
 原告から名古屋市への土地譲渡は、都市計画公園の事業予定地として指定した土地について、@原告らによる建築許可申請⇒不許可、A原告らによる土地の買取申出、B名古屋市と所轄税務署長との事前協議⇒収用等に係る各証明書の発行、C売買契約の締結⇒代金の支払いの経緯で行われた。
 課税庁は、「本件の用地買収手続は、正に都市計画法56条1項の規定に基づく買取りであるかのような外形を作出するために形式だけが整えられたものであって、その実質があるとはいえない。」などとして、収用の特例の適用を否認した課税処分を行った。

裁判所の判断
 判決は、「名古屋市の運用は、(中略)本件特例が予定している強制的に土地を収用される場合と同視すべき状況にあるとは認められない。」「事前協議がなされたことや確認書が名古屋市に交付されたことは本件処分について信義則違反を問うべき特別の事情(あるいは国税通則法65条4項に規定する『正当な理由』)に当たるとはいえない。」などと判示して、過少申告加算税を含む課税処分を容認した。
 本件は、いわゆるなれあい収用(土地買取りの当事者が形式的に収用に該当するものとして取り扱う譲渡)であるとして、収用特例の適用が否認されたが、申告の実務においては、必ずしも譲渡の経緯など(実体要件)よりも証明書等の有無(形式要件)で判断する傾向に陥りやすく、実務家が申告にあたって留意すべき点となろう。

  

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  キーワード 「土地 収用」⇒104

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登録日
資料 所得税法等の一部を改正する法律案(抄)(2) 2008年 02月 11日
資料 「『租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて』等の一部改正について(法令解釈通達)」の趣旨説明(情報)(リンク) 2007年 11月 19日
資料 信託に関する法人税基本通達等の主要改正項目について 2007年 07月 09日
資料 信託に関する法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)(平成19年6月22日)

2007年 06月 29日

資料 法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)(平成19年3月13日)

2007年 03月 23日

資料 質疑応答事例(更新分)(相続税・贈与税)

2006年 08月 04日

(以上、最新順)

週刊「T&A master」243号(2008.1.21「今週のニュース」より転載)

(分類:税務 2008.3.10 ビジネスメールUP! 1097号より )

 

 
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