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被害者である法人が損害(加害者)を知った時の益金に
法人(および代表者)の行為と法人が被害者である場合は別もの

東京地裁民事第3部(定塚誠裁判長)は2月15日、原告(会社)が、社員(経理部長)の詐欺行為による外注費の架空計上を理由とした法人税の更正処分および重加算税の賦課決定処分の取消しを求めた事案について、「不法行為による損害賠償請求権は、被害者である法人が損害及び加害者を知った時に、権利が確定したものとして、その時期の属する事業年度の益金に計上すべきもの」などと判示し、外注費の架空計上が行われた事業年度での更正処分等を取り消す判決を言い渡した。

事案の概要
 本件は、原告が、法人税の確定申告をしたところ、所轄税務署長が、外注費の架空計上を理由として、法人税の更正処分および重加算税の賦課決定処分をしたことから、原告が、外注費の架空計上は原告の従業員の詐欺行為によるものであり、原告は当該詐欺行為によって架空外注費に相当する金額の損失を受けており、また同従業員に対する損害賠償請求権は回収が困難なこと等から益金の額に算入すべきでないと主張して、更正処分および賦課決定処分の取消しを求めた事案である。
 国は、「詐取行為により損害を被った法人は、損害発生と同時に、かつ法律上当然に加害者に対する損害額と同額の損害賠償請求権を取得するもの」と主張している。

裁判所の判断
 定塚裁判長は、以下のとおり判示し、税務調査で判明した外注費の架空計上等を理由とした各事業年度に係る法人税の更正処分および重加算税の賦課決定処分のうち、係争事業年度の更正処分等を取り消した。
 「一般に、詐欺等の犯罪行為によって法人の被った損害の賠償請求権についても、その法人の有する通常の金銭債権と同様に、その権利が確定した時の属する事業年度の益金に計上すべきものと考えられるが、不法行為による損害賠償請求権の場合には、その不法行為時に客観的には権利が発生するとしても、不法行為が秘密裏に行われた場合などには被害者側が損害発生や加害者を知らないことが多く、被害者側が損害発生や加害者を知らなければ、権利が発生していてもこれを直ちに行使することは事実上不可能である。」
 「権利が法律上発生していても、その行使が事実上不可能であれば、これによって現実的な処分可能性のある経済的利益を客観的かつ確実に取得したとはいえないから、不法行為による損害賠償請求権は、その行使が事実上可能となった時、すなわち、被害者である法人(具体的には当該法人の代表機関)が損害及び加害者を知った時に、権利が確定したものとして、その時期の属する事業年度の益金に計上すべきものと解するのが相当である。」

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  キーワード 「損害賠償請求権」⇒47

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登録日
資料 平成18(受)1074 損害賠償請求事件 平成20年01月28日 2008年 01月 28日
資料 平成17(受)1372 損害賠償請求事件 平成20年01月28日

2008年 01月 28日

資料 平成17(受)1440 損害賠償請求事件平成20年01月28日 2008年 01月 28日
コラム 除斥期間

2008年 01月 21日

資料 平成18(行ウ)第37号 広島地方裁判所 更正処分の義務付け等請求事件 2007年 10月 26日
解説記事 会計監査の充実・強化に係る公認会計士法等の改正の要点

2007年 08月 06日

(以上、最新順)

週刊「T&A master」248号(2008.2.25「今週のニュース」より転載)

(分類:税務 2008.4.16 ビジネスメールUP! 1113号より )

 

 
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