船舶リース事案で損益通算を容認した納税者勝訴が確定
最高裁が課税庁の上告受理申立てに不受理決定
最高裁判所第一小法廷(横尾和子裁判長)は3月27日、民法上の組合として行った船舶賃貸事業に係る収益が不動産所得に当たることを前提にその減価償却費等を損益通算して所得税の確定申告したしたことの是非が争点となったいわゆる船舶リース事案について、課税庁の上告受理申立てに対して、上告審として受理しない旨の決定を行った。
本件は納税者の請求を第一審(名古屋地裁)が容認し、控訴審(名古屋高裁)も原判決を支持しており、最高裁の上告不受理決定により、課税庁が訴訟の継続を断念した別件航空機リース事案と同様に、船舶リース事案についても、納税者が完勝して確定することになった。
事案の概要
本件は、被上告人らが、それぞれ組合員となっている民法上の組合として行った船舶賃貸事業に係る収益が不動産所得に当たることを前提に、その減価償却費等を損益通算して所得税の確定申告を行ったのに対し、上告人らが、被上告人らの締結した組合参加契約は民法上の組合契約ではなく、利益配当契約にすぎないことを理由に、同収益は雑所得であって損益通算は許されないとして、被上告人らに対し、各更正処分等をしたことから、被上告人らが、本件各処分等の取消しを求めた事案である。
ケイマンLPSは民法組合に該当
一審・控訴審ともに、民法上の組合契約として成立していることを認め、本件賃貸事業による収益が不動産所得として区分されるべきであると判示してきた。別件航空機リース訴訟との相違点ともなっていた組合契約がケイマンの特例LPSである点について、控訴審は「ケイマン法に基づいて成立された特例LPSである本件各パートナーシップは、我が国の民法における組合の要件を満たしうるものというべきである。」と判示して、第一審の判断を支持してきた。また、控訴審は「組合員が本件各船舶に係る減価償却の利益を受けることを主目的として本件組合に参加しているのは、減価償却制度を濫用するものではない。」とも判示してきた。
課税庁が航空機リース事案で訴訟継続を断念しながらも、船舶リース事案について上告受理申立てをしてきた事情には、本件パートナーシップがケイマンの特例LPSであった点などが考えられ、アメリカLLCが外国法人に該当するとした別件判決を援用する狙いがあったものと思われる。
本件船舶リース事案が上告審として受理されなかったことで、名古屋高裁のケイマンLPSについての判断手法は最高裁にも支持されたものとみることができ、また、同種の事案について、課税庁は、課税処分の取消しを含む対応が迫られることになろう。
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キーワード 「ケイマン」⇒26件
(週刊「T&A master」253号(2008.4.7「今週のニュース」より転載)
(分類:税務
2008.5.21 ビジネスメールUP!
1125号より
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