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所得税法上の「住所」は社会通念に照らして判断するべき
遠洋漁業船舶の乗組員を居住者と認定した決定処分等を容認

 東京地方裁判所民事第3部(定塚誠裁判長)は1月27日、遠洋まぐろ漁船を運航する外国の法人等に雇用された乗組員が、生計を一にする家族の居住地の所轄税務署長が行った所得税の決定処分等の取消しを求める事案に対し、「認定した客観的事実を総合考慮して、社会通念に照らして判断するならば、まぐろ漁船は原告らにとって勤務場所であり、生活の本拠は生計を同一にする家族が居住するそれぞれの住宅の所在地であると解するのが相当である。」などと判示して、原告らの請求を棄却する判決を言い渡した。

事案の概要
 本件は、遠洋まぐろ漁船を運航する外国の法人等に雇用された乗組員が、その乗組員として稼動して得た金員について、処分行政庁が、原告らがいずれも所得税法が定める「居住者」であり、上記金員が給与所得に該当するとして、原告らにそれぞれ所得税の決定処分等を行い、原告らは、原告らが所得税法が定める「非居住者」であり、国内源泉所得ではない上記金員に課税するのは違法であると主張して、それぞれに対してされた所得税の決定処分等の取消しを求めた事案である。

原告らの主張
 原告らは、「原告らは、遠洋まぐろ漁船内で起臥寝食をしていたのであるから、まぐろ漁船上が職場であるとともに住所であり、原告らは、所得税法施行令15条1項1号の「国外において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する」者に該当し、国内に住所を有しない者(⇒非居住者)と推定されるというべきである。」と主張した。

裁判所の判断
 定塚裁判長は、「遠洋漁業船など長期間国外で運航する船舶の乗組員は、通常その船舶内で起居し、その生活の相当部分を海上や外国において過ごすことが多いと考えられるところ、その者の生活の本拠が国内にあるかどうかの判断に当たっても、国内の一定の場所がその乗組員の生活の本拠の実体を具備しているか否かを、その者に関する客観的な事実を総合考慮し、社会通念に照らして判断するべきである。具体的には、その乗組員が、船舶で勤務している期間以外の時期に通常滞在して生活をする場所がどこにあるかなどの客観的な事実を総合して判断することが相当であると解される。」と判示し、原告らの土地建物の所有状況、住民登録の有無、居住日数、生計を一にする妻などとの生活状況などを認定した結果、原告らの生活の本拠は肩書地(日本国内)にあると認められ、居住者であると認められるとして、原告らの請求を棄却した。

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  キーワード 「所得税法 住所 居住者」⇒54

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登録日
解説記事 日本・カザフスタン租税条約および日本・ブルネイ租税条約の締結 2009年 06月 01日
解説記事 配当所得の申告分離課税制度創設の波紋とその行方 2008年 12月 01日
オフィシャル税務 租税回避目的の立証不十分で、控訴審も国側敗訴で確定

2008年 03月 31日

資料 所得税法等の一部を改正する法律案(抄)(6)

2008年 03月 10日

オフィシャル税務 「国内に住所を有していたとは認められない」と判示し決定処分を取消

2007年 11月 19日

資料 税制調査会第17回企画会合(10月12日開催)議事録

2007年 11月 02日

(以上、最新順)

週刊「T&A master」300号(2009.3.30「今週のニュース」より転載)

(分類:税務 2009.6.3 ビジネスメールUP! 1269号より )

 

 
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