特例民法法人→普通法人への移行、原則、措置法40条の承認取消し
特定一般法人への移行が見込まれる場合には弾力的運用も
公益法人制度改革に伴い平成20年度税制改正では、措置法40条の規定も見直され、譲渡所得等の非課税特例の対象が、公益社団法人、公益財団法人、特定一般法人とされた。そこで、特例民法法人が特定一般法人以外の一般社団法人・一般財団法人(普通法人)に移行した場合には、承認の取消し、譲渡所得等に係る所得課税の対象とされることになる。
一方、特例民法法人が一般社団法人・一般財団法人(普通法人)に移行した場合であっても、その後、要件を満たすことで、特定一般法人へ移行することもある。承認取消しに係る判断においては、一般社団法人・一般財団法人(普通法人)から特定一般法人への移行等について考慮される余地もありそうだ。
新措置法40条は対象範囲が狭く
現行の租税特別措置法(措置法)40条1項の規定は、公益社団法人、公益財団法人、特定一般法人(一般社団法人・一般財団法人のうち非営利性が徹底されている法人)への財産の贈与または遺贈で、国税庁長官の承認を受けたものについて、譲渡所得等の非課税の対象としている(下掲参照)。
この規定により、特例民法法人が当該非課税の対象とされない一般社団法人・一般財団法人(普通法人)に移行した場合、措置法40条に係る規定から外れることで、承認取消し、譲渡所得等に係る所得課税の対象とされることになる。
措置法40条(国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税)後段(要旨)
公益社団法人、公益財団法人、特定一般法人(法人税法別表第2に掲げる一般社団法人及び一般財団法人で、同法2条9号の2イに掲げるものをいう)その他の公益を目的とする事業(公益目的事業)を行う法人(公益法人等)に対する財産の贈与または遺贈で、当該贈与または遺贈があつた日から2年を経過する日までの期間内に、当該公益法人等の当該公益目的事業の用に直接供され、または供される見込みであることその他の政令で定める要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたものについても、また同様とする。
附則50条1項の規定は40条1項に限定
この点につき、措置法附則50条1項の規定で確認していく。附則50条1項は、新租税特別措置法40条のうち、その1項に係る部分に限定して、附則1条5号に定める日(平成20年12月1日)以後にされる同項後段に規定する財産の贈与または遺贈について適用すると規定している(次頁参照)。
つまり、現行の措置法40条1項の規定は、公益社団法人、公益財団法人、特定一般法人への財産の贈与または遺贈について、国税庁長官の承認を受けた場合、贈与等がなかったものとみなすとする規定と解することができよう。したがって、現行法では特定一般法人以外の一般社団法人・一般財団法人(普通法人)は規定の適用外ということになる。
平成20年12月1日以後の取消しに適用
次に、承認の取消しに係る措置法附則50条2項の規定をみていく。
附則50条2項では、新租税特別措置法40条のうち、1項に係る部分を除いた規定は、附則1条5号に定める日(平成20年12月1日)以後にされる新租税特別措置法40条2項または3項の規定による同条1項後段の承認の取消しについて適用すると規定している(下掲参照)。
ここで重要となるのは、平成20年12月1日以後に行われる承認の取消しについて適用するということだ。
附則50条1項
新租税特別措置法第40条(第1項に係る部分に限る。)の規定は、附則第1条第5号に定める日以後にされる同項後段に規定する財産の贈与又は遺贈について適用し、同日前にされた旧租税特別措置法第40条第1項後段に規定する財産の贈与又は遺贈については、なお従前の例による。
附則50条2項
新租税特別措置法第40条(第1項に係る部分を除く。)の規定は、附則第1条第5号に定める日以後にされる新租税特別措置法第40条第2項又は第3項の規定による同条第1項後段の承認の取消しについて適用し、同日前にされた旧租税特別措置法第40条第2項の規定による同条第一項後段の承認の取消しについては、なお従前の例による。
承認がされた時期には関係なし
具体的には、措置法40条1項後段の承認を受けた贈与または遺贈について、その承認の時期が、平成20年12月1日前あるいは後にされたかに関係なく、平成20年12月1日以後にされる承認の取消しについて適用すると解することができる。
したがって、前述のように、現行法における贈与または遺贈については、その対象が、公益社団法人、公益財団法人、特定一般法人とされていることから、特例民法法人が特定一般法人以外の一般社団法人・一般財団法人(普通法人)に移行した場合については、現行の措置法40条1項の規定に該当しないこととなり、その贈与または遺贈がなされた時期や承認の時期を問わず、承認の取消し、譲渡所得等に係る所得課税の対象とされることになる。
要件を満たせば特定一般法人に
そこで、特例民法法人が特定一般法人以外の一般社団法人・一般財団法人(普通法人)に移行した場合に、直ちに、非課税承認が取り消され、譲渡所得等に係る所得課税が行われることになるか疑問が生じる。ここで確認しておきたいのは、一般社団法人・一般財団法人は、法法2条9号の2イ、法令3条1項の要件すべてに該当することになれば、特定一般法人に移行することだ。この点、承認の取消しに係る判断においても、一定の考慮がなされる余地があると考えられる。しかし、その場合でも、普通法人から特定一般法人へと移行するための見込み(一定の目論見)を有していることが前提となろう。
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キーワード 「特定一般法人」⇒8件
(週刊「T&A master」307号(2009.5.25「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2009.7.22 ビジネスメールUP!
1289号より
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