固定資産税、地積の立証責任は課税庁側と判示
固定資産評価審査委の立証なく審査決定を全部取消し
東京地裁民事第38部(杉原則彦裁判長)は3月6日、約20%の縄縮みとなる蓋然性が高い状況で、土地の所有者が、固定資産評価審査委員会の審査決定の取消しを求めている事案について、「固定資産評価審査委員会は、本件各土地の各登記地積がその各現況地積を上回るものではないことについて、登記簿の記載以外の証拠に基づいて主張立証を尽くすべきものである。」などと判示し、審査決定の全部を取り消す判決を言い渡した。
事案の概要
本件は9筆の各土地の所有者が、固定資産課税台帳の登録価格を不服とし、固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をしたところ、同委員会がこれを棄却する旨の決定をしたため、固定資産評価審査委員会に対し、同決定の取消しを求める事案である。
本件各土地は、いわゆる地図混乱地域に位置し、原告は約20%の縄縮みがあると主張し、被告による実地調査で現地を簡易測量した結果、概ね同じ数値であることが認められた。原告らは、「本件各土地は地図混乱地域に位置するから、そもそもその存在すら明確ではなく、ましてや相互の筆界を確定することは不可能であり、原告らにおいて上記の各現況地積を個別的に明らかにすることはできない。」と主張し、土地使用状況申告書は提出していない。
裁判所の判断の要旨
固定資産税については、賦課課税方式が採られており、登録価格が適正な時価に当たることの立証責任は、その登録価格が適正な時価であると認定した固定資産評価審査委員会の審査決定に係る取消訴訟においては、同委員会の側にあるものというべきで、上記の登録価格が適正な時価であることを基礎付ける事実、本件についていえば、その基礎となる地積の正確性についての立証責任も、やはり被告の側にあるものと解される。
本件各土地の各登記地積がその現況地積よりも相当程度大きいものである蓋然性が極めて高いと判断することができ、(中略)被告は、本件各土地の各登記地積がその各現況地積を上回るものではないことについて、登記簿の記載以外の証拠に基づいて主張立証を尽くすべきものである。
ところが、本件では、本件各土地の各登記地積がその各現況地積を上回るものではないことについて上記のような積極的な主張立証はなく、そうである以上、登記地積を基にする本件登録価格をもって本件各土地の固定資産の価格と認定した本件各決定は違法であると判断せざるを得ない。
本件各土地の固定資産の具体的な価格について固定資産評価審査委員会に審査のやり直しを命ずるため、本件各決定の全部を取り消すこととする。
※
記事の無断転用や無断使用はお断りいたします
⇒著作権等について
T&Amaster 読者限定サイト
検索結果(注:閲覧には読者IDとパスワードが必要になります)⇒ID・パスの取得方法
キーワード 「固定資産評価 審査」⇒41件
(週刊「T&A master」307号(2009.5.25「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2009.7.27 ビジネスメールUP!
1291号より
)
|