レックスのMBOでの株式取得価格を引き上げた東京高裁決定が確定
最高裁、レックスHDの抗告を棄却
最高裁第三小法廷(近藤崇晴裁判長)は5月29日、レックス・ホールディングス(旧レックス)のMBOをめぐり、株主らが株式買取価格の決定を求めた事件で、買取価格を引き上げた東京高裁決定を支持し、抗告を棄却する決定を行った。買取価格を1株33万6,966円とした平成20年9月12日の東京高裁の決定が確定した(本誌275号、277号参照)。
地裁と高裁の判断が異なる
旧レックスは平成18年11月10日、アドバンテッジパートナーズが運営するファンドが100%出資する株式会社AP8による公開買付け(TOB)に賛同する旨を公表。同年11月9日までの過去1か月間の取引所の終値の単純平均値20万2,000円に13.9%を上乗せした23万円を買付価格とした。しかし、旧レックス株式は同年8月21日プレスリリースでの業績予想の下方修正により株価が暴落。株主らは裁判所に適正な価格の決定を申し立てていた。
東京地裁民事第8部(難波孝一裁判長)では、旧レックスの買付価格を妥当と判断。しかし、東京高裁第5民事部(小林克巳裁判長)では、「MBOの実施を念頭に決算内容を下方に誘導することを意図した会計処理がされたことは否定できない」などとし、買取価格を1株33万6,966円に引き上げた。
透明性が確保が必要
今回、最高裁は5名の裁判官全員一致で旧レックスの抗告を棄却する決定を行っているが、本件が会社法172条1項に基づく株式会社による全部取得条項付種類株式の取得の価格の決定が裁判所に申し立てられた初めての事案であるため、田原睦夫裁判官による補足意見が述べられている。
田原裁判官は、取得価格について、@MBOが行われなかったならば株主が享受し得る価値と、AMBOの実施によって増大が期待される価値のうち株主が享受してしかるべき部分とを合算して算定すべきものと解することが相当であるとした。
また、経済産業省の企業価値研究会が平成19年8月に公表した「企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する報告書」により、MBOの実施に際しては、MBOが経営陣による自社の株式の取得であるという取引の構造上、株主との間での利益相反状態になり得ることや、その手続上、MBOに積極的ではない株主に対して強圧的な効果が生じかねないことから、反対株主を含む全株主に対して、透明性の確保された手続が執られることが要請されていると指摘。裁判所が取得価格を決定する際には、MBOにおいて透明性が確保されているか否かの観点をも踏まえたうえで、その関連証拠を評価することが求められるとしている。
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(週刊「T&A master」309号(2009.6.8「今週のニュース」より転載)
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