会計士試験の合格者、当面は2,000人を目安に
公認会計士の試験制度や資格取得要件が見直しへ
金融庁では、現在、公認会計士制度に関する懇談会(座長:大塚耕平内閣府副大臣)を設置。公認会計士の試験制度や資格取得要件のあり方などについて検討を行っている。
公認会計士試験の合格者が増えるなか、就職先がないなどの状況に鑑みてのもの。本年6月頃までに報告書を取りまとめる予定。なお、平成22年以降の合格者は同懇談会の報告書を踏まえた対応策が実施されるまでは、2,000人程度とするとしている。
大学卒業要件については反対の大合唱
平成18年1月施行の新公認会計士試験では、社会人を含め、より試験を受けやすくするため、試験体系の簡素化や受験免除制度の導入、試験科目の見直しなどが行われている(図表1参照)。

この結果、平成17年では1,308人だった公認会計士の合格者が平成18年は新旧の合格者の合計で3,108人、平成19年は4,041人、平成20年は3,625人と急増している(平成21年度では2,229人に減少)。
しかし、現状では、監査法人が合格者の採用を絞り込むなか、企業への就職も進んでいない(本誌316号参照)。このままでは、公認会計士となるために必要な実務経験を満たすことができないことが懸念されており、今回、公認会計士の試験制度や資格取得要件のあり方を検討することになったものである。
合格者の平均年齢上昇は企業への就職が不利に
1月20日開催の公認会計士制度部会では、日本公認会計士協会から公認会計士制度の現状と課題について説明が行われている。問題意識としては、@規制緩和による学歴要件の廃止(国際会計教育基準との不整合)、A企業内の公認会計士では監査経験は積めない(監査経験がない公認会計士の輩出)、B資格取得前の実務経験要件は3年以上が国際標準(現行制度は2年以上)が挙げられている。特に「大学卒業」という学歴要件を入れるべきとの主張が行われた模様だ。
その一方では、資格指導校・専門学校からの説明が行われている。特に学歴要件として、「大学卒業」という要件は入れるべきではないとの強い反対意見が述べられた模様だ。理由としては、「公認会計士を目指す大多数の大学生は在学中早期に受験できるからこそ挑戦する」「大学卒業要件を入れた場合には、合格者の平均年齢を上昇させ、より一般企業の就業を難しくする」などが挙げられている。
なぜ、合格者は企業に就職しないのか?
公認会計士試験の合格者が企業へ就職しない理由としては、もともと監査法人への就職を希望しているほか、一般的に監査法人の方が一般企業よりも初任給が高いといったことが背景としてありそうだ。加えて、問題なのは、現行制度で求められている資本金5億円以上の法人において原価計算その他の財務分析に関する事務を2年以上行うという実務従事要件を満たすことが難しいこと(図表2参照)や現実的に実務補習所への通学ができにくい状況にあることだ。実務補習については、現在、修業年限を原則3年とし、主に平日の夜間3時間と土曜日の昼間9時間に講義等が実施されているが、一般企業に勤めた場合には、平日に通うことはなかなか難しいというのが現実のようだ。
実務従事要件の緩和を求める
この点、資格指導校・専門学校からは、実務従事要件の大幅な要件の緩和が要望されている。たとえば、資本金1億円超の会社を対象とし、財務・会計・経理を中心とした業務に従事することや中小企業やベンチャー企業等の経済活動に携わっていれば要件を満たすべきとの意見が寄せられている。また、実務補習に関しては、カリキュラムを大幅に簡素化し、継続教育(CPE)に重点を移すべきとの意見があったようだ。
准公認会計士等の称号付与も検討へ
また、1月20日の会合では、試験制度の見直しについても検討。現行では、論文式試験に合格しても、あくまで公認会計士試験合格者にすぎないが、論文式試験に加えて面接試験等に合格すれば、「准公認会計士」などの称号を付与することで一般企業への就職を促すといった案が資格指導校・専門学校から提示された(監査を行うには実務補習+実務経験が必要)。今後、試験制度の見直しのたたき台となりそうだ。
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キーワード 「公認会計士 就職」⇒34件
(週刊「T&A master」340号(2010.2.1「SCOPE」より転載)
(分類:会計 2010.4.5 ビジネスメールUP!
1387号より
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