滞納会社が行ったDESは詐害行為に該当すると判断
滞納会社の責任財産を減少させるもの
東京地裁民事第45部(石井浩裁判長)は12月15日、滞納会社が子会社に対して行った債権譲渡は詐害行為に該当すると判示し、租税債権を有する国側の主張を認める判決を言い渡した。
DESの直後に株式償却等を実施
滞納会社(X社)は、被告(Y社)を買収後、限度額5億円とする金銭消費貸借契約を締結しY社に運転資金を貸し付けた。
Y社は、平成18年2月4日、資本金額を1億5,640万円増額し、増額分につきX社に対し券面額5万円の株式を3,128株発行することを決定。X社は、同年2月15日、Y社に対して貸付契約に基づく貸金債権の一部である合計1億5,640万円の債権を債権譲渡の形式により現物出資し、債権を混同により消滅させるとともに、Y社から3,128株の株式発行を受けるDESを行った。
Y社は、同年2月4日、DESの承認を前提に、資本金額を175万円へ減資し、X社保有の3,528株のうち3,493株を償却。X社保有株式数を35株とするとともに、代表取締役Aに対して、600株の引受権を与えることを決定。DES後、Y社の資本金は2,890万円、発行済株式総数578株、X社保有35株、A保有533株となった。
取得株式からの利益を自ら放棄したもの
石井裁判長は、本件債権譲渡の詐害行為該当性について、@X社には、DES当時、本件債権以外にみるべき資産はなく、純資産から本件債権を除くと、債務超過となっていたと認められるところ、Y社はDESの前後を通じて、貸付契約に基づく貸金の弁済を順調に行っており、本件債権の回収可能性は十分にあったというべきである、ADESによるY社発行株式の価値を純資産評価方式で算定すると、平成17年3月期には0円、DES後の平成18年3月には323万円、株式償却後には186万円であったことに加え、換価することが困難な非上場株式であったのであるから、DESにおいて本件債権と引換えに株式を取得することは、X社の債権者の債権の行使を困難ならしめるものである、BX社がY社の唯一の株主として株主総会決定をなしたことに基づき、DESが行われた直後に株式償却等が行われ、X社がDESにより取得した株式の株式数および株式保有比率が大幅に低下したことからすれば、X社は、DESと株式償却等を一連一体のものとして行うことにより、本件債権を譲渡するとともに、これと引換えに取得した株式から利益を得ることを自ら放棄したものということができると判示。
X社による本件債権譲渡は、他に格別の資産を有しないX社の責任財産を減少させるものであり、債権者を害する行為に該当することは明らかであるとした。
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(週刊「T&A master」341号(2010.2.8「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2010.4.12 ビジネスメールUP!
1390号より
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