株主総会議事録の作成の有無は役員退職給与決議に影響せず
損金算入に対する更正処分・重加賦課を全部取消し

 役員退職給与の損金算入に対する法人税の青色申告の承認取消処分、更正処分および重加算税の賦課決定処分がすべて取り消された裁決があった。審判所は、株主総会議事録の作成の有無は株主総会の決議の効力に影響せず、臨時株主総会の議事録が作成されていないことをもって株主総会を開催した事実がないと断定することはできないと判断している(高裁(法・諸)平21第3号)。

仮装による損金算入で重課賦課決定
 事案は、請求人が前代表取締役に支払った退職給与は、具体的に退職給与の金額が確定していなかったにもかかわらず、確定していたかのように仮装して損金算入したとして、原処分庁が、法人税の青色申告の承認取消処分、法人税の更正処分および重加算税の賦課決定処分を行ったことに対し、請求人が、その処分の全部の取消しを求めたもの。
 争点は、前代表取締役に対する退職給与の額は、平成19年1月1日〜同年12月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という)の損金の額に算入できるか否か。

原処分庁、臨時株主総会の議事録なく開催事実が確認できないと主張
 請求人は、当該退職給与の額は請求人の平成19年3月30日開催の臨時株主総会において決議されて具体的に確定したものであると主張。当該退職給与の確定日を特定できる証拠として日記帳を提出し、臨時株主総会の議事録については、その作成を失念していたものとした。
 一方、原処分庁は、請求人が開催したと主張する臨時株主総会の議事録が作成されていないことから、臨時株主総会を開催した事実が確認できないなどと指摘。当該退職給与の額は、平成20年1月以降に確定したと認められ、本件事業年度の損金の額には算入できないと主張した。
 
株主総会議事録・役員退職給与に係る規定
 株主総会の議事録に係る会社法の規定、役員退職給与に係る税法上の取扱いは、次のとおり。
 会社法は、株主総会の議事録について、書面または電磁的記録をもって作成しなければならない旨を規定(会社法318条1項・会社法施行規則72条2項。下掲参照)。

 法人税法は、内国法人の各事業年度の所得金額の計算上損金算入すべき金額について、別段の定めがあるものを除き、事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額、事業年度の販売費、一般管理費その他の費用の額、事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものと規定(法法22条3項)。
 また、法人税基本通達9−2−28は、役員退職給与の損金時期について、株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度とする旨を定めている(下掲参照)。

株主総会の議事録に関する法令解釈等
 上記、株主総会の議事録に係る会社法の規定等について、審判所は、以下のような解釈を示している。
@ 会社法318条1項および会社法施行規則72条2項は、株主総会の議事については、書面または電磁的記録による議事録を作成しなければならない旨規定しているが、株主総会の議事録の作成の有無については、株主総会の決議の効力には影響しないと解されている。
A 同族会社にあっては、会社法に規定する株主総会の開催が必ずしも明確でない場合が多く、このような場合、株主総会の決議の有無は、株主総会が実質的に開催されたとみることができるかどうかにより判断すべきであると解される。
 そして、請求人が開催したと主張する当該臨時株主総会の議事については、議事録が作成されていないが、上記@Aのとおり、臨時株主総会の議事録が作成されていないことをもって株主総会を開催した事実がないと断定することはできないと指摘。
 また、請求人が証拠として提出した日記帳は、本件事業年度を含む3年間連続して使用することができるもので、3年間すべての日に記載があり、それらの記載内容が社会的事象等に合致していることなどから、日記帳の記載内容について、全体として高い信用性が認められると判断した。

臨時株主総会で決議されて退職給与の額が確定したと認める
 そのうえで、当該退職給与の支給額を決議した議事録が存在しないから臨時株主総会での決議がなかったものと断定することはできず、むしろ、当該退職給与については、平成19年3月30日に、請求人の株主3名が協議し、その支払いをすることにした旨の日記帳に高い信用性を与えることができ、同日に開催された臨時株主総会において、当該退職給与として支払うことが決議されて確定したと認定。法人税の青色申告の承認取消処分、法人税の更正処分および重加算税の賦課決定処分の全部を取り消している。

 

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(以上、最新順)

週刊「T&A master」349号(2010.4.5「今週のニュース」より転載)

(分類:会社法 2010.6.4 ビジネスメールUP! 1410号より )

 

 
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