未公開 裁決事例紹介
塾講師・家庭教師への報酬、外注費でなく給与と判断
課税仕入れに係る支払対価と認めず

 ○学習塾や一般家庭に塾講師や家庭教師の派遣を行う審査請求人(以下「請求人」という)が塾講師および家庭教師に支払った報酬は外注費ではなく給与等に該当するとした事例(東裁決(諸)平21第79号)

基礎事実
 請求人は、学習塾および私立学校等の教育機関等(以下「教育機関等」という)に対する授業および講座の受託業務ならびに受験生を対象とする訪問指導および学習塾の経営等を目的として設立された法人である。
 請求人が教育機関等および一般家庭に対して派遣する塾講師(以下「本件塾講師」という)および家庭教師(以下「本件家庭教師」といい、本件塾講師と併せて「本件各講師」という)はいずれも請求人の適性試験に合格し講師として登録された者である。
 請求人は、教育機関等との間で、受託業務の基本事項を定めた基本登録規約に合意している。また、本件塾講師と学習指導およびそれに付随する業務に関し業務委託基本契約を締結している。本件家庭教師の派遣先との間においては、契約指導時間、指導期間等を内容とする家庭教師の派遣に関する契約(個別指導契約)を締結している。また、本件家庭教師と、指導開始日および指導終了日、指導回数および指導時間、指導スケジュール等を内容とする家庭教師業務契約を締結している。
 請求人は、本件各講師への報酬(あらかじめ各人ごとに定められた時間給に業務時間を乗じて計算。以下「本件報酬」という)を外注費として計上し、消費税の課税仕入れに係る支払対価としていた。

争点および主張
 争点は、本件報酬は所得税法28条1項に規定する給与等に該当するか否か(当該報酬は、消費税法2条1項12号に規定する課税仕入れに該当するか否か)。当事者の主張は、次頁のとおり。

【表】当事者の主張(要旨)

原処分庁
請 求 人
(イ)本件各講師は、請求人との間の業務委託契約または家庭教師業務契約により、指導期間および従事場所等が決められ、これに従い授業等の業務に従事しているところ、@請求人に対して業務遂行状況を報告することが義務付けられ、また、A委託条件、研修内容等守秘義務が課せられた事項を第三者へ漏洩してはならない等の禁止事項が定められ、加えて、B本件塾講師は、各月の最後の指導終了日には教育機関等に勤務内容の確認を受け署名等を得た××を提出することを、本件家庭教師は、会員の署名等を得た××等を請求人に提出することを義務付けられ、これらに基づき、請求人は本件各講師への対価の額を支給しているものと認められる。
(ロ)以上のことを総合的に判断すると、本件各講師の労務の提供は、請求人の管理のもとに行われており、個人の非独立的ないし従属的な人的役務提供の対価をもった所得として、請求人から空間的または時間的な拘束を受けつつ継続的ないし断続的に行われ、本件各講師はその労務の提供の対価としての支払いを受けているものと認められる。したがって、請求人が本件各講師へ支払った報酬は所得税法28条1項に規定する給与等に該当する。
(イ)本件各講師に対する報酬は、請求人の指揮命令のもとで提供した労務の対価ではなく成功報酬であるから給与ではなく外注費である。
(ロ)本件各講師が受け取る報酬は、請求人と本件各講師の間で、請求人が教育機関等から受託した業務を再委託する業務委託契約の報酬であり、この業務委託契約は、「雇用契約」でもなければ「雇用に類する」ものでもない。
 契約の解釈を行う場合には、まず、法形式上の検討を行うべきであり、その後、実質について検討すべきである。請求人と本件各講師の契約は、形式的に業務委託契約である。経済活動は第一次的には私法によって規律されている以上、課税は原則として私法上の法律関係に即して行われるべきである。また、その実質においても、委託代金、委託期間のほか代金の支払方法、各当事者の責務、罰則等は定められているが、雇用契約に必須の勤務地に関する定め、始業および終業の時刻や所定労働時間等は一切定められておらず、請求人の従業員に適用される就業規則等の各種の定めが本件各講師に適用されることもなく、各種社会保険や労働保険の適用はされておらず、給与明細の発行もされていない。

審判所の判断
 認定事実によれば、以下のとおり、本件各講師については、(1)請求人によって場所的・時間的な拘束を受け、(2)役務の提供に継続性があり、(3)請求人と直接支配従属の関係にあり請求人の指揮命令に服していると認められ、これらを総合勘案すれば、本件報酬は、自己の計算と危険において独立して営むことによって得られるものではなく、雇用契約またはこれに類する原因に基づき非独立的に提供された労務の対価として得られるものであり、所得税法28条1項に規定する給与等に該当するものと認められる。
 イ 本件塾講師について
 @本件業務委託契約により従事場所および指導時間等が決められ、これに従い学習指導等の業務に従事していること、A請求人の承諾なしに一方的に契約期間満了前に辞任してはならないこととされていること、B学習指導等の業務に従事するためには、請求人の適性試験に合格して登録をしなければならないこと、委託条件、研修内容等守秘義務に当たる事項を第三者へ漏洩してはならないこと等が義務付けられていること等から請求人と本件塾講師との間には直接支配従属の関係があること。
 ロ 本件家庭教師について
 @家庭教師業務契約により、指導場所、指導期間、指導回数、指導時間および指導スケジュール等が決められ、これに従い学習指導等の業務に従事していること、Aやむを得ない事由以外に契約期間内において辞任できないこととされていること、B請求人の適性試験に合格して登録しなければならないこと、個々の指導についても請求人が一般家庭の要望を把握したうえで本件家庭教師に指導要点等を指示していること、定められた期間内に指導を完了しなければならないこと、業務内容および指導回数等の変更等について請求人の許可を得なければならないこと、契約条件、研修ノウハウ等について守秘義務が課せられていること等からすれば、請求人と本件家庭教師の間には直接支配従属の関係があること。

 

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登録日
コラム 所有権移転外ファイナンス・リースについて 2010年 04月 26日
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(以上、最新順)

週刊「T&A master」350号(2010.4.12「未公開 裁決事例紹介」より転載)

(分類:税務 2010.6.7 ビジネスメールUP! 1411号より )

 

 
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