「事業」丸ごとの現物分配は不可も、物部分の分配には適格該当余地
残余財産の分配局面等でニーズ
残余財産の分配局面等においては、個々の資産ではなく、「事業」そのものを丸ごと現物分配したいとのニーズがあるようだ。しかし、「事業」には資産だけでなく、現物分配の対象外となる負債や金銭が含まれることから、事業の分配は法人税法上の現物分配には当たらない。
事業の現物分配と同様の効果を得るには、子会社が親会社に「事業譲渡」を行い、子会社がその対価として得た現金を残余財産として再び親会社に分配する手法が考えられる。また、事業のうち、土地、有価証券などの「物」の部分を分配する場合には、適格現物分配に該当することになろう。
適格現物出資は、資産・負債の移転を前提
平成22年度税制改正により、100%資本関係のあるグループ内の内国法人間の現物分配が組織再編の一部として位置付けられ、現物分配に伴う資産移転に係る譲渡損益の計上を繰り延べる「適格現物分配」の概念が導入されたが、残余財産の分配局面等においては、この新制度を利用し、個々の資産ではなく、「事業」そのものを丸ごと現物分配したいとのニーズがあるようだ。
そこで問題となるのは、これが適格現物分配に該当するのかどうかだ。法人税法上、現物分配とは「金銭以外の資産の交付」とされているが(法法2十二の六)、事業そのものを「資産」と考えれば、一見、法人税法上の現物分配に該当するようにもみえる。しかし、「事業」には土地や有価証券といった資産だけでなく、現物分配の対象外となる負債や金銭が含まれることがあるため、事業そのものの分配は法人税法上の現物分配には該当しないことが本誌取材で確認されている。
このことは、適格現物分配と適格現物出資の定義規定を比較すればより明確となる。適格現物出資は「資産又は負債の移転を行うもの」とされ(法法2十二の十四)、資産と負債の両方の移転が前提となっているのに対し、適格現物分配では「現物分配により資産の移転を受ける者が……」と(同条十二の十五)、資産のみの移転を前提としている。
このように事業の分配が法人税法上の現物分配の対象から外れたのは、会社法上、残余財産は「債務を弁済した後」でなければ分配できない(会社法502条)こととも無関係ではなさそうだ。
事業の現物分配と同様の効果を得るには、子会社が親会社に事業譲渡を行い、対価として得た現金を残余財産として再び親会社に分配する手法が考えられる。また、事業のうち土地、有価証券などの「物」の部分を分配する場合には、適格現物分配に該当することになろう。
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キーワード 「現物分配」⇒28件
(週刊「T&A master」361号(2010.7.5「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2010.8.23 ビジネスメールUP!
1441号より
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