著作権等について会社概要質問・お問い合せサイトマップ

 

審判所、平成21年下期分の裁決事例集を公表
LLC構成員が受ける配当に係る収入金額

 国税不服審判所は6月25日、「裁決事例集No.78」(平成21年分・下期)を公表した。
  今回のスコープでは、公表された33裁決事例のなかから、LLCの構成員が受ける配当に係る収入金額について判断した事例を紹介する(平成21年11月6日裁決・棄却)。

投資ファンドのジェネラル・パートナーであるLLCの構成員
  審査請求人は、Hグループが設立したL投資ファンド(リミテッド・パートナーシップ形態)のファンド運営に携わるジェネラル・パートナーであるM事業体(以下「本件LLC」という)の構成員である。
  本件LLCの構成員には、マネージング・メンバー(本件LLCを代表してLLC名義で活動する権限を有する)とノンマネージング・メンバーが存し、請求人はノンマネージング・メンバーとなっている。
  請求人の主たる収入は、本件LLCからのインセンティブ割合に応じたインセンティブ配分額等である。このインセンティブ配分額は、L投資ファンドの資産運用の結果、その純資産が増加した場合にインセンティブ・アロケーションとして、ジェネラル・パートナー(本事案では本件LLC)の資本勘定に再配分(インセンティブ再配賦額)されたものが、一定のインセンティブ割合に従って、それぞれの構成員に配分されるもので、各構成員のインセンティブ資本勘定に貸方計上される。

インセンティブ配分額に関する請求人の選択
  本件LLCの構成員は、毎年度末、本件LLCに対して、本件LLCの投資資本(本件LLCからL投資ファンドに投資された資本のことで各構成員に配賦されたインセンティブ配分額を含むもの)の自らの持分のうち、全部または一部をL投資ファンドから払い戻させる選択をすることができる。
  請求人は、その年分に配賦を受けるインセンティブ配分額の見込額等に関して、毎年12月(年によっては翌1月)に本件LLCの担当者から、配賦されるインセンティブ配分額およびその時点におけるクラス別投資残高の連絡、および新たに配賦を受けるインセンティブ配分額をどうクラス分けするかの問合せを受ける。
  この連絡を受けた後、請求人は、払戻金額および払戻しを行わない残額をどのクラス(円クラスまたはドルクラス)に置くかの選択をし、本件LLCの担当者に連絡している。
  本件LLC担当者は、請求人との合意内容に基づき、請求人への払戻金額の送金手続を行い、数日から数週間後、請求人が指定した日本の銀行口座に、払戻しの選択をした金額が振り込まれる。

払戻し選択時に配当金支払請求権が債権として成立と主張
  事案における争点は、請求人が各年分の配当所得の収入金額とすべき金額は本件LLCの請求人名義口座に入金された金額(インセンティブ配分額)の全額か、請求人が当該インセンティブ配分額のうち本邦内の金融機関の請求人名義口座に送金した金額(払戻額)のみか。
  請求人は、収入すべき金額について、権利確定主義の観点から、下掲のように主張した。

全額について払戻しを受けられる権利が生じた
  審判所は、まず「権利の確定」とは、それぞれの権利の特質を考慮して決定されるべきでものであり、権利発生後一定の事情が加わって権利実現の可能性が増大したことを客観的に認識することができるようになったときを意味するものであると解するのが相当とした。
  そのうえで、インセンティブ配分額について、@請求人はその年分に配賦を受けるインセンティブ配分額の見込額等に関して毎年本件LLCの担当者から連絡を受けること、A通知されたインセンティブ配分額についてはたとえL投資ファンドの成績が悪化したとしても返還する義務はないこと、B請求人は通知を受けたインセンティブ配分額について確定額の範囲内であれば払戻金額を自由に設定することができ、申し出る金額に上限はないこと、C請求人が払戻しを要求した額について、送金に応じられなかったことはないことなどの事実が認められることから、請求人には、インセンティブ配分額の全額について払戻しを受けられる権利が生じたというべきであると判断している。

収入すべき時期は翌会計年度の初日
  また、収入の計上時期については、インセンティブ配分額が、@本件LLCの会計年度の期末である12月31日までに計算され、A同会計年度の翌年度当初には、インセンティブ配分額に相当する金額の払戻しを受けることができるものであることから、インセンティブ配分額は、翌会計年度の初日をもって、その収入すべき時期とするのが相当であるとした。
  なお、本事案では争点とされていないが、米国LLCの外国法人該当性については、東京高裁平成19年10月10日判決(平成19(行コ)212)、国税庁・質疑応答事例「米国LLCに係る税務上の取扱い」がある。

 

  ※ 記事の無断転用や無断使用はお断りいたします
  ⇒著作権等について

 

  T&Amaster 読者限定サイト 検索結果(注:閲覧には読者IDとパスワードが必要になります)ID・パスの取得方法
  キーワード 「国税不服審判所 裁決事例集」⇒63

分類

タイトル
登録日

資料

税制調査会 専門家委員会 納税環境整備小委員会(第9回・5月20日開催)議事要旨

2010年 06月 08日

コラム

事業計画の有無は子会社株式の回復可能性の判断要件か?

2009年 12月 28日

資料

FROM INTERNET

2009年 12月 28日

オフィシャル税務

全部で37の裁決事例が明らかに

2009年 12月 22日

解説記事

遺留分減殺請求の効力は相続開始時にまで遡及せず 2009年 08月 24日
     
(以上、最新順)  

週刊「T&A master」362号(2010.7.12「SCOPE」より転載)

(分類:税務 2010.8.30 ビジネスメールUP! 1444号より )

 

 
過去のニュース、コラムを検索できます
 Copyright(C) LOTUS21.Co.,Ltd. 2000-2023. All rights reserved.
 全ての記事、画像、コンテンツに係る著作権は株式会社ロータス21に帰属します。無断転載、無断引用を禁じます。
 このホームページに関するご意見、お問合せはinfo@lotus21.co.jp まで