“課税の適正化”がキーワード
消費税率引上げを見据え、不正還付対策を実施へ
将来の消費税率の引上げを見据えてか、平成23年度税制改正では、不正還付対策など、消費税における“課税の適正化”が1つのキーワードとして浮かびあがってくる。具体的には、@免税事業者の要件の見直し、A仕入税額控除制度(いわゆる95%ルール)の見直し、B仕入税額控除に関する明細書」の添付の義務付け、C消費税の不正還付未遂罪の創設だ。今回の改正には、「不正還付等を行う者は許さない」とする税務当局の意気込みが垣間見える。今回の消費税の改正内容を紹介する。
免税事業者、前事業年度の最初の半年間で判定
消費税法上、資本金1,000万円未満で会社を設立した場合には、会社設立後2年間は消費税を免除するという消費税免税制度が設けられている。新聞等の報道では、人材派遣会社などがこの免税制度を悪用し、脱税として告発されるなどの事例が見受けられる。具体的には、<strong>図表1</strong>のようなケースである。A社は子会社に支払う委託料について仕入税額控除の適用を受けるとともに、設立した子会社(ペーパーカンパニー)についても、資本金1,000万円未満であるため、消費税が免除されるという同制度を悪用したものだ。

給与等の支払額の金額での判定も
このようなケースを想定し、平成23年度税制改正では、当該事業年度の前事業年度(7月以下のものを除く)開始の日から6月間の課税売上高が1,000万円を超える法人等については、事業者免税点制度を適用しないこととされる(図表2参照)(本誌380号10頁参照)。この課税売上高については、給与等の支払額の金額(1,000万円超)で判定することができる。

平成24年10月1日から適用
なお、事業者免税点制度の見直しは、当該事業年度が平成24年10月1日以後に開始するものから適用される。
たとえば、免税事業者で3月期決算会社の場合、平成25年4月1日以後に開始する事業年度において免税事業者になるかどうかは、平成24年4月から9月末までの課税売上高等が1,000万円を超えるかどうかで判定することになる。
平成24年4月から課税売上高5億円以下に
現行、非課税売上げに対応する仕入については、仕入税額控除を認めないのが原則だが、課税売上割合が95%以上の場合には、課税仕入等の全額について仕入税額控除を認めている。いわゆる95%ルールだが、平成23年度税制改正では、課税売上高が5億円以下の事業者に限定する。適用は平成24年4月1日以後開始する課税期間からとなる。
平成24年4月以降提出分から適用
また、消費税の還付申告書を提出する際に任意とされている「仕入税額控除に関する明細書」については、消費税の還付を不正に受ける事業者に対応するため、その添付を義務付けるとともに、売上に関する事項や輸出取引に関する事項などを記載項目とする見直しが行われる。平成24年4月1日以後に提出する還付申告書に適用される。
平成21事務年度では不正還付は1,012件
そのほか、罰則の強化も行われる。現行、消費税課税事業者が不正還付をしようとした場合、たとえば、税務署長が途中で不正に気づき還付を行わなかった未遂のケースでは、処罰規定はないため、特に罰せられることはない。このため、不正に消費税の還付を受けようとした者を処罰する規定を創設する。
なお、国税庁によれば、平成21事務年度では、消費税の不正還付金の防止のため、消費税の還付申告を行っている1万9件について調査。このうち、不正還付があったのは1,012件で、追徴税額は27億4,700万円だった。不正還付の事例では、架空仕入などにより輸出免税制度を悪用し、国内取引を輸出取引に仮想するなどして不正に還付金を受けるケースが多発している模様だ。
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T&Amaster
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キーワード 「不正還付」⇒21件
(週刊「T&A master」384号(2010.12.27「SCOPE」より転載)
(分類:税務 2011.2.18 ビジネスメールUP!
1509号より
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