審判所、社員旅行の会社負担額の多寡を民間会社の調査結果で判断
4泊5日で半数以上参加の条件を満たすも社会通念の範囲内と認めず
国税不服審判所は、請求人が実施した海外社員旅行について、1人当たりの旅行費用金額が241,300円と多額であることから、社会通念の範囲内のものとは認められないとした(棄却・平成22年12月17日裁決)。
審判所は、所得税基本通達36−30(以下「本件通達」という)の趣旨からすれば、使用者の負担額が重視されるべきであると指摘。官公庁等からの調査研究等の受託業務を行っている法人(以下「産労総合研究所」という)が会員企業に対して行ったアンケート調査の平均額と請求人が負担した241,300円とを比較し、旅行費用が高額であることから、経済的利益に該当すると結論付けた。
海外旅行費用平均額を大きく上回ると指摘
「所得税基本通達36−30の運用について(法令解釈通達)」では、社員旅行が非課税となる要件について、(1)旅行期間が4泊5日以内、(2)全従業員の50%以上が参加の2つの要件を満たした場合、原則として課税しないと規定されている。
本事案では、原処分庁が、会社負担金額が1人当たり241,300円と多額であることを主張する一方、請求人は、実施日程が2泊3日で従業員のほぼ全員が参加していることなどから、社会通念上一般的に行われている範囲内の旅行であると主張していた。
審判所は、本件旅行が本件通達にいう社会通念上一般的に行われているものに当たるか否かの判断にあたっては、旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、従業員の参加割合、使用者および参加従業員の負担額、両者の負担割合等を総合的に考慮すべきであるが、本件通達の趣旨からすれば、従業員の参加割合などよりも、旅行に参加した従業員の受ける経済的利益、すなわち使用者の負担額が重視されるべきであるとの判断を示した。
そのうえで、請求人が負担した従業員1人当たりの旅行費用の額241,300円について、産労総合研究所が実施したアンケート調査(表参照)の会社負担金額と比較すると、当該負担金額を大きく上回る多額なものであり、少額不追及の観点から、強いて課税しないとして取り扱うべき根拠はないものといわざるを得ないと判断。本件旅行については、実施日程が2泊3日で従業員のほぼ全員が参加しているとしても社会通念上一般的に行われているレクリエーション行事の範囲内と認めることはできないとし、使用人負担額は給与所得に該当すると結論付けた。

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(週刊「T&A master」412号(2011.7.25「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2011.9.21 ビジネスメールUP!
1591号より
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