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米国法人のスピンオフで取得した株式の所得区分を巡る裁判が確定
最高裁、所得税法上非課税と主張していた個人投資家の上告を棄却

 米国法人のスピンオフにより取得した米国法人株式が、所得税法上の配当所得等に該当するかどうかが争われていた事案で、最高裁判所第一小法廷(宮川光治裁判長)は平成23年4月21日、所得税法上非課税であると主張していた個人投資家の上告を棄却、上告不受理を決定した(平成22年(オ)1775号、平成22年(受)2148号)。これにより、米国法人のスピンオフにより取得した米国法人株式は、配当所得またはみなし配当所得に該当すると判断した東京高裁判決が確定した。

配当所得に該当すると判断した地裁判決
 本事案は、日本国内に本店をもつ証券会社の支店の外国証券等取引口座に米国法人A社株式を保有していた個人投資家が、A社がスピンオフの形式で分社化したBおよびC社株式を割り当てられたところ、これらの取得が配当所得またはみなし配当所得に該当するとして、源泉徴収義務がある証券会社が個人投資家に対して源泉所得税を請求していたもの。個人投資家は、外国法人がスピンオフをした場合の課税関係等が所得税法上明記されていないこと、米国では非課税とされていることなどを理由に、所得税法上非課税であると主張していた。
 東京地裁の高橋譲裁判長は、配当所得に該当するか否かについて、「法人が、その株主等の出資者に対し、出資者としての地位に基づいて分配した利益は、その名目のいかんにかかわらず、所得税法上の配当所得に該当すると解するのが相当である」とした。そのうえで、「割当てによって取得したBおよびC社の株式のうちA社の利益剰余金を原資とする部分は、法人がその株主等の出資者に対し出資者としての地位に基づいて分配した利益に当たるから、所得税法24条1項(平成19年改正前のもの)に規定する利益の配当として、配当所得に該当するべきである」と判示した。
 また、みなし配当については、「割当てによって取得したBおよびC社の株式のうちA社の資本剰余金を原資とする部分は、剰余金等の留保利益から成るものであって、その実態において配当利益と異ならないものであるから、A社の資本金等のうち払戻しの基因となった被告の出資額に対応する部分を超えれば、所得税法25条1項3号(平成19年改正前のもの)に規定する法人の資本の払戻しとして、みなし配当に該当するというべきである」と判示。証券会社の請求を認容する判決を言い渡した。
 個人投資家は、東京地裁判決を不服として東京高裁に控訴。東京高裁平成22年8月4日判決が東京地裁判決を支持したため、最高裁に上告および上告受理申立てを行っていたが、最高裁判所第一小法廷は平成23年4月21日、上告を棄却、上告不受理を決定している。

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週刊「T&A master」413号(2011.8.1「今週のニュース」より転載)

(分類:税務 2011.9.30 ビジネスメールUP! 1594号より )

 

 
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