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東京地裁、評価通達194−2での評価に合理性
最高裁判示を踏まえた医療法人の出資の評価で判決
東京地方裁判所民事第3部(八木一洋裁判長)は6月3日、相続税法9条(平成19年法律第6号による改正前のもの)のみなし贈与の規定の適用があるかどうかが争われた事案で、「特別の事情の存しない限り、評価通達194−2により評価することには合理性がある」と判断。原告の請求を棄却し、税務署の相続税の更正処分等を適法であるとした(平成22年(行ウ)第133号、第134号)。今回の判決は、平成22年7月16日判決の最高裁判決(平成20年(行ヒ)第241号)を踏襲するものだ。
評価できない特別の事情がない限り
今回の事案は、医療法人の社員が死亡したことに伴い、相続人であり、かつ同医療法人の社員である原告らの出資(持分)の価額が増加したとして、税務署が原告人らは対価を支払わないで利益を受けたものであり、相続税法9条のいわゆるみなし贈与の規定の適用があるとして相続税の更正処分等を行ったものである。
出資額限度法人でも合理性は失われず
原告らは、@持分の定めのある社団である医療法人ではなかった、A持分の定めのある社団である医療法人であったとしても、社員らの出資の価額の増加については相続税法9条の適用はないなどと主張していた。
これに対して税務署は、評価通達194−2(医療法人の出資の評価)は、持分の定めのある社団である医療法人の出資の評価方法を定めており、持分の定めのある社団である医療法人が出資額限度法人に移行しても、出資を評価通達194−2の定めのある評価方法によって評価することの合理性は失われないと主張していた。
東京地裁では、本件医療法人が社団である医療法人であって持分の定めのあるものに該当するとの判断を行ったうえで、平成22年7月16日の最高裁判決と同様、評価通達194−2は、持分の定めのある社団である医療法人およびその持分の取得に係る事情を踏まえつつ、持分の客観的な交換価値の評価を、取引相場のない株式の評価に準じて行うこととしたものと解されるとし、持分の価額を適切に評価することができない特別の事情の存しない限りその評価をすることには合理性があるとした。
本件については、相続の開始時における定款の定めに基づく持分に係る地位ないし権利の内容がその後変動しないと客観的に認めるだけの事情はないといわざるを得ず、他に評価通達194−2の定める方法で定款の定めのもとにおける医療法人の持分の価額を評価することができない特別の事情があることもうかがわれないとした。
【表】主な争点と裁判所の判断
主な争点 |
納税者(原告)の主張 |
税務署(被告)の主張 |
裁判所の判断 |
| 持分の定めのある社団である医療法人該当性 |
新定款は「出資額」「出資持分」等の持分の定めがあることを前提とした文言がないことからも明らかなとおり、持分の概念を採用しておらず、社員の退社や医療法人の解散の際、資金の拠出者につき拠出金を無利息で返還することを請求する権利のみを認め、剰余金や残余財産の社員への帰属を許容していない。 |
新定款は、旧定款と同様、社員が退社時における出資持分払戻請求権および解散時における残余財産分配請求権を有していることを前提に、社員の各請求権の法人財産に及ぶ範囲を同人の払込出資額を限度とするものにすぎない。定款変更により、同じく持分の定めのある社団である医療法人の一類型である出資額限度法人となったというべきである。 |
原告らは旧定款の定めのもとにおいて当該医療法人が持分の定めのある社団である医療法人に該当することを認めている。定款変更後も医療法人の財産について有する地位ないし権利の基本的な性質は何ら変更されていない。 |
| 相続税法上のみなし贈与規定の適用の有無 |
出資額限度法人であるとしても、医療法人が定款で社員の退社時の払戻しや医療法人の解散時の残余財産分配の対象となる財産を当該医療法人の財産全体とする旨を定めることはあり得ない。 |
持分の定めのある社団である医療法人の出資を適切に評価することができない特別の事情の存しない限り、評価通達194−2の定める方法によってその出資を評価することには合理性がある。持分の定めのある社団法人である医療法人が出資額限度法人に移行しても、出資を評価通達194−2で評価することの合理性は失われない。 |
評価通達194−2は、持分の定めのある社団である医療法人の持分の客観的な交換価値の評価を取引相場のない株式の評価に準じて行うこととしたものと解される。当該持分の価額を適切に評価できない特別の事情の存しない限り、その評価をすることには合理性がある。 |
【参考】医療法人の新旧定款
新 定 款 |
旧 定 款 |
| 7条 社員資格を喪失した者は、本社団設立時等に拠出された資金がある場合、その返還を請求することができる。返還は金銭でなしても差支えない。なお、返還金に剰余金が含まれてはならない。また利子を付して返還してはならない。 |
7条 退社した社員は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる。 |
| 35条 本社団が解散した場合、剰余金を含むすべての残余財産は国又は地方公共団体に帰属する。ただし、法人設立時等に拠出された資金が残存する場合には、その資金を拠出した者に利子を付することなく返還することは差支えない。 |
35条 本社団が解散した場合の残余財産は、払込出資額に応じて分配するものとする。 |
memo
最高裁、類似業種比準方式での評価に合理性
最高裁判所第二小法廷(竹内行夫裁判長)は平成22年7月16日、持分の定めのある医療法人の出資の評価が争われた事案で、基本財産を含む財産全体を基礎として評価通達194−2に定める類似業種比準方式により評価することに合理性があるとの判断を示している(平成20年(行ヒ)第241号)(本誌364号、377号等参照)。
今回の東京地裁での判決でも、同最高裁の判決を参照する形で、評価通達194−2で評価することの合理性がある旨を指摘している。
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T&Amaster
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キーワード 「医療法人の出資」⇒50件
(週刊「T&A master」414号(2011.8.8「SCOPE」より転載)
(分類:税務 2011.10.7 ビジネスメールUP!
1597号より
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