事業承継税制、特定特別関係会社を規定し、要件見直しが実現
申請等に際しての実務負担が大幅減に
平成23年度税制改正で、事業承継税制の要件に係る見直しが実現した。改正租税特別措置法では、新たに「特定特別関係会社」を規定し、事業承継税制の適用で風俗営業会社等に該当しないこととされる会社の範囲を明確化した。この改正により、納税猶予の申請等に際して、代表権を有する者の6親等内に風俗営業会社等の支配株主に該当する者がいないことを確認しなければならないという問題が、大幅に解消される。
なお、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則」においても、新たに「特定特別子会社」が規定された。
風俗営業会社等に該当してはならない会社
平成23年度税制改正では、非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、風俗営業会社等に該当してはならない特別関係会社の範囲を特別関係会社のうち認定会社と密接な関係を有する一定の者によりその株式等の過半数を保有される会社とすることとされた(措法70条の7、70条の7の2、70条の7の4)。
平成23年度税制改正以前は、認定会社の特別関係会社が風俗営業会社等に該当する場合、納税猶予の認定対象から外れ、この特別関係会社には、認定会社の代表権を有する者の親族が当該会社の株式等の過半数を保有している場合も該当することから、認定会社の代表権を有する者の6親等内に風俗営業会社等の支配株主に該当する者がいないかどうかを確認しなければならないという問題が生じていた。
【参考】平成23年度税制改正大綱
非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、同制度の運用状況等を踏まえ、次のとおり所要の見直しを行います。
イ 風俗営業会社等に該当してはならないこととされる特別関係会社の範囲について、特別関係会社のうち次に掲げる者によりその株式等を直接又は間接に保有される会社とします。
(イ)認定会社
(ロ)認定会社の代表権を有する者
(ハ)認定会社の代表権を有する者と生計を一にする親族
(二)認定会社の代表権を有する者と特別の関係がある者 |
特定会社と密接な関係を有する会社
今回の改正を具体的にみると、措置法70条の7第2項1号ハは、当該会社(特定会社)の株式等および特別関係会社(当該特定会社と政令で定める特別の関係がある会社)のうち当該特定会社と密接な関係を有する会社として政令で定める会社(特定特別関係会社)の株式等が、非上場株式等に該当することとしている。また、同号ニは、当該会社および特定特別関係会社が、風俗営業会社に該当しないことと規定している。
「親族」→「生計一の親族」に絞り込み
上記のとおり、特別関係会社のうち特定会社と密接な関係を有する会社は、「特定特別関係会社」とされたが、具体的に、措令40条の8第7項は「特定特別関係会社」について、次のように規定している。「前項(編注:措令40条の8第6項)の規定は、法第70条の7第2項第1号ハに規定する特定会社と密接な関係を有する会社として政令で定める会社について準用する。この場合において、前項第1号中『の親族』とあるのは、『と生計を一にする親族』と読み替えるものとする」。
この改正により、対象となる親族の範囲は、改正前の6親等内から1親等〜2親等になるものと考えられ、納税猶予の申請等に際しての実務的な負担は大幅に減少することになる(図参照)。

経営承継円滑化法は「特定特別子会社」
また、中小企業庁は、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則」(中小企業経営承継円滑化法施行規則)において、新たに「特定特別子会社」を規定し、措置法改正と同趣旨の改正を行っている。
具体的には、中小企業経営承継円滑化法施行規則6条7号へでは、当該贈与の時以後において、当該中小企業者の特定特別子会社(1条9項1号中「の親族」とあるのを「と生計を一にする親族」と読み替えた場合における同条10項に規定する当該他の会社をいう)が上場会社等、大会社または風俗営業会社のいずれにも該当しないことと規定した。
なお、中小企業庁では、平成23年度税制改正で実現した今回の事業承継税制の要件見直しについて、関係者の範囲を、親族等から、後継者本人、生計を一にする親族等に絞り込むことで、要件を大幅に緩和したとしている。
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(週刊「T&A master」415号(2011.8.22「今週のニュース」より転載)
(分類:税務 2011.10.14 ビジネスメールUP!
1599号より
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